安全・安心科学技術委員会(第26回)の主な意見

 第26回安全・安心科学技術委員会において発表された主な意見を、以下のように6つに分類した。

1.新たな危機、2.危機対策、3.復興・再生、4.教育、5.安心の担保、6.国際関係
「2.危機対策」の項目は、さらに、「2-1.従来プロジェクト成果の活用」、「2-2.技術開発」、「2-3.その他」に分類した。

1.新たな危機

  • 複合的要因(自然災害と犯罪・テロ)による危機が国際関係へ影響する。
  • 安全保障と安全には共通点がある(犯罪・テロと自然災害は事後処理の観点で共通)。
  • 大震災では、危機の連鎖(2次被害、3次被害)が発生した。

2.危機対策

2-1.従来プロジェクト成果の活用

  • これまでに開発されてきた科学技術が今回の震災で役に立ったのかどうかを評価して、次に生かすことが重要。
  • 過去の資産でこの時期に合ったものを探すことが効率的。
  • 大震災を受けて、第一にやるべきことは東海、東南海地震への対策。安全・安心科学技術プロジェクト(地域社会)3課題(H20~H23年度)と片田敏孝先生(群馬大学)の成果を活用すべきである。
  • 片田先生の津波対策の取り組みを例として、開発したものが実際の現場でどの程度有効であったかの検証が重要。
  • 現在は、人々の意識が高まっているので、地域社会3課題の成果を展開していく上でチャンスである。熊本大学でのPDCAサイクル(例;住民と県と大学とが信頼関係を築いていくプロセス)を他の地域でもやるべき。今回の震災の教訓を取り入れて、本当に役に立つ訓練をITを取り入れながら実施するシステムを構築するべき。
  • 地域による違いがあるので、パッケージ化は難しいかもしれないが、地域社会3課題の成果をモジュール化できれば、展開が容易になる。
  • 地域社会3課題のプロジェクトや片田先生の成果を伝えたうえで、地方自治体と大学、地方の行政組織が連携した提案を公募すれば、多くの提案があるはず。
  • 地域社会3課題のプロジェクトや片田先生の成果を評価した上で、次に生かしていく提案を出していきたい。

2-2.技術開発

  • 「復興・再生並びに災害からの安全性」では、限られた時間(例えば5年)で結果を出す必要があるので、既存技術の組み合わせと適用による突発的危機への対応が必要。
  • 「中央集権から、自律分散へのパラダイムシフト」に伴い、それに応じた科学技術を考える必要がある。
  • 震災時に情報通信システムが機能しなくなった。情報のセーフティーネットが必要。

2-3.その他

  • 複合要因のシナリオを本委員会で作成することも考えられる。
  • 情報が重要。透明性、信頼性の問題に配慮しながら情報を今後いかに活かしていくか。
  • これまでの科学技術は、リスク評価に基づいた防災に力点があったが、今後は災害の発生を前提とした被害管理に考え方を変化させる必要がある。その際の情報共有が重要。
  • 行政だけではなく、民間自身の危機への備えが必要。
  • 想定外の事態への対処には、人間力(担当者の機転等)が重要。
  • 社会的弱者は、危機において被害をより被るので、対策が必要。3つの縁(血縁、社縁、地縁)から抜け落ちる人に対しては、社会保障や科学技術での対策が必要。
  • 制約された資源、状況を前提とした今後の対策が重要。
  • 視野の狭い専門家ではなく、多彩な分野の人が専門領域を超えてネットワークを立ち上げることが重要。
  • 地域コミュニティを存続していくことが、災害に強い町を作っていく上で重要。
  • 豊かさは、生物多様性に支えられている面も多く、生物多様性を維持することが重要。
  • 防災訓練のような災害の事前対策と、事後の問題への対策の両方が必要。
  • 今回の震災でSPEEDIのような予測システムが活用されたが、予測のみではなく、予測後の対策・運用を含めて考えておくべきであった。

3.復興・再生

  • 大震災では、被災地の情報が正しく迅速に伝わらず、ちぐはぐな支援が多かった。被災地からの質の高い情報を短時間で収集することが重要。例えば、自衛隊では先遣隊を先ず送り情報を収集する。
  • 被災地の現状の把握が重要。問題を列挙し対策を検討する必要がある。
  • 現場情報の収集と反映の仕組みが重要。具体的な課題がわかれば、対応技術を提案可能である。
  • 被災地の衛生環境の管理が重要。
  • 被災地からの情報量に基づいた被災地状況の可視化(見える化)が有効ではないか。
  • 放射能や二酸化炭素濃度のモニタリングを正確に自動的に行うことが重要。
  • 情報のウェイトが非常に大きくなっている。デジタルデバイド(情報弱者)対策が必要。
  • 罹災証明発行などの手続きを迅速に進めるには、情報の一元化が重要である。
  • 国の役割は、国が中心に動くのではなく、自律的に動けるところをサポートすること。

4.教育

  • リーダーの育成には経験が最も有効。ルーチンではなく魂の入った防災訓練が必要。
  • 航空機の操縦はシミュレーターで行っている。テロや事件、災害対策に汎用的に使えるシミュレーターを構築できればいい。
  • 東京大学では、ケースメソッドによる教育を行っている。例えば、ハリケーンカトリーナのケースを読み問題点をリストアップさせる。その過程で本当に重要な問題が浮かび上がる。水没可能な場所に拠点を置いたことなど、今回の震災のケースに似た事例もある。
  • 同志社大学では、地下鉄サリン事件をケースとして取り扱っており、教育・人材育成を目指している。
  • 危機管理能力については、大学の必修科目にすべきもの。このような疑似体験させるような教育プログラムをここで整備して、各大学で使えるようにするのは、日本全体にとってプラス。
  • 安全・安心科学技術プロジェクト(地域社会)の興味深い点は、実際に地域の人が関わり科学技術を社会実現しているところ。危機の際、特に想定外の事態では、人間力が重要。教育を受けた人と科学技術の組み合わせが、最も有効に機能するのでは。

5.安心の担保

  • 安心の担保には信頼が重要。今回の震災で、国、組織、専門家の信頼が損なわれた。信頼回復と共に、信頼を担保するメカニズムの構築も必要。
  • 信頼獲得には、正確な情報の迅速な提供が必要。
  • 信頼獲得には、平素からのコミュニケーションが重要。

6.国際関係

  • 今回の震災で関係国への原発事故の情報開示が遅れたことによって信頼が低下した。国際間情報開示に関するルールをデータベース化しておけば、緊急時に活用可能である。
  • 装置の国際認証による貿易障壁の例に見られるように、日本は欧米と対等ではなく常に後を追っていく立場にある。危機管理対策については、欧米よりも遅れている。
  • 復興支援によって日本の強みが構築できれば、日本の国際的地位向上に貢献できる。
  • 震災からの復興・再生のノウハウをまとめあげ国際展開することによって、日本の安全・安心ブランドが回復できるのでは。

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(科学技術・学術政局 科学技術・学術戦略官付(調整・システム改革担当))