安全・安心科学技術に関する重要課題について(論点案)

1.検討の背景

1-1 第4期科学技術基本計画への対応
○ 第4期科学技術基本計画の策定に向けて、昨年12月24日に取りまとめられた答申「科学技術に関する基本政策について」では、これまでの重点推進4分野及び推進4分野に基づく研究開発の重点化から、重要課題の達成に向けた施策の重点化へ方針を転換した。  
○ 第4期科学技術基本計画は、現在、東日本大震災を踏まえ、8月までに再検討を行うこととしているが、総合科学技術会議が平成23年5月2日に発表した「当面の科学技術政策の運営について」では、再検討に向けた視点及び具体的な検討事項が明示され、「復興・再生並びに災害からの安全性の向上への対応」を、グリーン・ライフの2大イノベーションと並んで重点化して推進することが示されている。
○ 文部科学省では、研究計画・評価分科会において、第4期科学技術基本計画に則り、重要課題への対応に向けた「研究開発方策(仮称)」を取りまとめることとしており、各委員会では、それぞれの所掌に密接に関連するものに関して、その達成に向けた研究開発等の推進方策について検討を行うことが求められている。

1-2 東日本大震災を踏まえた科学技術の見直し
○ 一方、上記のとおり、第4期科学技術基本計画でも検討が行われているが、平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、巨大地震及び大津波、原子力発電所の事故等の大規模広域複合災害として、未曾有の被害をもたらした。
○ 第3期科学技術基本計画では、科学技術が目指すべき大目標の一つとして「安全が誇りとなる国-世界一安全な国・日本の実現」を掲げ、これらの実現に向けて安全・安心な社会の構築に資する科学技術を推進してきたが、今回の震災を契機として、科学技術の可能性と、その潜在的リスクについて、国民は極めて敏感になっていると指摘する声もある。
○ また、安全・安心科学技術に関する検討を振り返ると、平成18年6月に総合科学技術会議が取りまとめた「安全に資する科学技術推進戦略」において、国民の安全・安心を脅かす要因が整理され、それぞれの課題について研究開発を推進してきたところであるが、その後、5年を経て、この間の社会構造の変化により新たに顕在化した危機や今回の東日本大震災により明らかになった危機もある。
○ これらのことを踏まえ、安全・安心科学技術委員会では、国民の安全・安心を確保するための科学技術に関する重要課題を検討・設定するとともに、改めて、危機の全体像を見直し、今回の東日本大震災をその中で位置付け、このような大規模複合災害への科学技術による対応のあり方について検討する。
○ なお、個別の分野については、それぞれの担当委員会において推進方策が検討されているところであり、当委員会においては分野横断的な観点に立って検討を行うこととする。

2.検討の視点

2-1 東日本大震災の検証と東海・東南海・南海地震への対策
 今回の大震災は、これまで想定していなかった様々な課題を浮き彫りにした。本委員会では、震災が提起した問題点を検証するとともに、災害対応や復興、再生に向けて、科学技術が果たしていく役割や、検証により判明した教訓や反省を踏まえ、今後30年の間に発生が予想され、今回の災害以上の被害をもたらす可能性が高いと指摘されている東海・東南海・南海地震への対策強化に向けて、安全・安心科学技術をどのように整備していくか検討する。

2-2 安全・安心を担保する社会システム構築への貢献
 今回の大震災の結果として、国、組織、専門家と呼ばれる科学者や技術者に対する信頼が低下したと指摘する声もある。それらの信頼を回復し、社会を運営する技術として信頼を担保する社会システムを構築していくために必要な安全・安心科学技術について検討する。

2-3 社会や国民の安全・安心に対する意識や対応力の向上
 自然災害を完全に防ぐのは難しく、発生した場合に災害の影響をできるだけ抑え、災害による日常生活、経済活動等の中断がない社会の実現を目指すことが重要である。たとえ、被害に見舞われても、そこから再び立ち直ることができる国民の防災・安全に対する意識や対応力をいかに高めていくか検討する。

3.安全・安心を巡る現状の検証

 3-1 東日本大震災で明らかになった課題(科学技術関連)
(主な課題例)
・地震
・津波対策
・情報通信
・医療支援
・社会的弱者への対応
・危機対応能力(危機発生時の情報対応能力) 等

3-2 災害に関する研究開発成果や科学的知見の活用
 今回の大震災では、これまで積み重ねてきた災害に関する研究開発成果や科学的知見が必ずしも有効に活用されなかった面がある。なぜ活用されなかったのか等について検証する。

4.当面の検討課題

 4-1 安全・安心な社会構築のための情報技術
 今回の大震災において、情報収集、情報共有、情報発信が大きな課題となった。情報は、我々の社会生活の中で重要な役割を担っており、今回発生した事態を分析、検証し、大規模な危機に的確に対処し、国民の安全・安心を確保するために必要な情報技術について検討する。
(必要な技術の例)
・各組織の情報通信機能を有効に連携させる広域情報通信システム
・各省庁、自治体、民間等が得ている情報の集約システム
・高齢者等にも活用の容易な情報発受信システムや危険物の測定・伝達システム

 4-2 地域社会の安全・安心を担保する総合的なシステムの構築
 今回の大震災では、地域の総合的な災害リスク管理の重要性が認識され、地域社会の安全・安心システムに対するニーズが高くなっており、安全・安心科学技術プロジェクト(地域社会分野)の成果や培ったノウハウも活用し、地域が、地域ごとの特徴を生かし、様々な事態に対応できる総合的な安全・安心システムとはどのようなものか、また、これを構築する方策について検討する。

 4-3 研究開発成果の社会へ実装化
 これまでの研究開発では、分野が細分化しすぎていたため、垣根を超えた情報・意見交換のネットワーク、対応方策がとりえなかったのではないか。構築された総合的なシステムを広く普及し、活用することにより、社会全体の安全・安心を確保するために必要な取り組みは何か、また、これに関連した人材育成方策とはどのようなものか検討する。

5.安全・安心を脅かす新たな危機

 5-1 近年の社会的構造の変化により、新たに顕在化してきた危機
(主な課題の例)
  ・限界集落
  ・生物多様性
  ・国際条約制定における地位低下
  ・テロ(新規化学物質等)等

 5-2 国民の危機に対する意識や対応能力の向上
 新たに顕在化した危機に対する国民の意識や対応能力の向上の方策とは何か検討する。

6.重要課題の推進に当たって留意すべき観点

○ 分野を超えたネットワークの構築
○ 既存の技術の活用 
○ 国際連携・協力
○ 人材育成

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科学技術・学術政策局 科学技術・学術戦略官付(調整・システム改革担当)

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(科学技術・学術政策局 科学技術・学術戦略官付(調整・システム改革担当))