安全・安心科学技術委員会(第32回) 議事録

1.日時

平成24年7月12日(木曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省15階 科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. (1)安全・安心科学技術プロジェクト(テロ対策分野)の評価について[非公開]
  2. (2)安全・安心科学技術に関する施策の現状について[公開]
  3. (3)その他

4.出席者

委員

板生 清 主査、岸 徹 主査代理、青木 節子 委員、河本 志朗 委員、篠村 知子 委員、奈良 由美子 委員、橋本 敏彦 委員、堀井 秀之 委員、村山 裕三 委員

文部科学省

大山 真未 科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(調整・システム改革担当)
沼田 勉 科学技術・学術政策局政策課課長補佐

5.議事録


【板生主査】  開会
 本日は安全・安心プロジェクトテロ対策分野の昨年度終了した課題の評価について審議いただき、また、安全・安心科学技術に関する施策の現状について、御報告をいただきたい。
 なお、安全・安心科学技術プロジェクトの評価については、機微な技術情報があり、個別利害に直結する事項に関わる案件となるので、委員会運営規則第3条第3項により、非公開とする。事務局から、配付資料の確認をお願いする。
【沼田補佐】  配付資料確認

<議題1.安全・安心科学技術プロジェクト(テロ対策分野)の評価について>
[非公開]

<議題2.安全・安心科学技術に関する施策の現状について>
【板生主査】  まず昨年10月に本委員会で取りまとめた報告書を踏まえて、本年度より開始された科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」について、社会技術研究開発センター企画運営室の斎藤尚樹室長と古屋貴司アソシエイトフェローに説明をお願いする。
【斎藤室長、古屋貴司アソシエイトフェロー】  資料2-1、参考資料3に基づき説明。
【村山委員】  地域をベースに社会の実装を目指すということだが、最終的にはどこまで実装することを期待しているのか。
【斎藤室長】  標準的なプロジェクトの期間として、3年間を想定している。一からスタートするようなプロジェクトであると、3年で実装の段階まで入り込んでいくことはなかなか難しい。提案の段階で、既にいくつかの地域で先行する取組があり、それを更に全国に広げていくようなプロジェクトの場合には、実装の段階に踏み込んでいくこともなくはないが、数としては非常に少ないと思う。
 実際は、RISTEXのプロジェクトのよくあるケースとして、PDCAサイクルを1回は回すようにしている。つまり、まずは仮説的あるいは暫定的なモデルを、実際の社会実験なり検証作業を通じて現場で使っていき、それによって出てきた問題点を取り込んで、改良型のモデル、プロトタイプに当たるものをつくる。このあたりまでで大体3年の終わりに近づいてくる。
 その場合の実装をどうするかという点について、研究開発領域の予算とは別に、RISTEXに成果実装支援プログラムというものがある。金額的には、研究開発プロジェクトの最大年間3,000万円ぐらいの予算に対して実装支援プログラムは年間500万円ぐらいが目安で、額としては大分小さくなる。しかし、これを活用して、最大3年間更に全国に向けた実装を支援することができる。それに採択されれば一番スムーズに、都合6年間の支援ができるが、それ以外の場合にも、例えば自治体からの予算を何とかいただいて、3年終了後の実装につなげていくというようなケースもある。あるいは民間とタイアップして何らかのベンチャーをつくって実装を図っていくとか、NPOを設立して、会費や収入を得ながら回していくというようなケースもある。
 ただ、NPOをつくる場合は、実装段階の運営で皆さん苦労されている。特に社会的にメリットがあり公益に資するようなプロジェクトだと、逆に言うと、なかなか有償でサービスを提供してお金をいただくことが難しい面がある。「安全・安心な都市・地域づくり」というテーマに照らすと、恐らく主たる実装の主体は自治体等になると思う。逆に言えば、提案の段階で、できれば自治体の専門部局や関係者にもがっちり入っていただいて、2年目、3年目にかけて、自治体で予算化することも視野に入れ、プログラムの検証や実証を進めてほしいという期待もある。
【岸主査代理】  それは結局、プロジェクト終了後の持続の可能性という話か。
【斎藤室長】  はい。
【岸主査代理】  基本的に、応募する段階から、ここのところはかなり具体性を持ったことが要求されているプログラムと考えてよいか。
【斎藤室長】  そうである。参考資料3の募集要項の18ページに審査基準、選考基準がある。選考の際の基準の一つとして、新規性や実施体制と合わせ、終了後の持続可能性という項目も入れている。あとは実施体制として、研究者、地域の関与者の参画があり、終了後の発展も視野にその協働の方法が示されているかという項目もある。ただ、それぞれの項目をどこまで審査で重視するのかはなかなか難しい面がある。
【板生主査】  これは間口が相当広いので、たくさんの応募がある可能性があると思うが、逆に絞り切るのは結構大変なのではないか。そうかといって予算がそんなにたくさんあるわけではないとなると、ジャストアイデアであるが、例えば、本研究をやる前に、全部予備研究だけ採択して、それで1年やらせてみて、それから絞ることも考えられるが、難しいだろう。
【斎藤室長】  「プロジェクト企画調査」というカテゴリーで、予備調査的なものを別途募集することにしているが、御指摘のとおり、最大限、課題を増やそうと思えば、企画調査をたくさん採り、本採択は2年目以降というやり方もある。一方で、すぐ取り組むべきテーマも多数あり、文部科学省からはリスクコミュニケーション関係をしっかりやってくれという提起があるので、本件についてはできれば本採択を一つ以上すべきかと思っている。企画調査もできるだけ活用したい。
【板生主査】  次に、本年度3年目を迎える科学技術戦略推進費の「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラム」について、プログラムオフィサーを務められている岸委員に説明をお願いする。
【岸主査代理】  資料2-2に基づき説明。
【村山委員】  これは、今日評価した大阪大学の安全・安心科学技術プロジェクトの後継という位置付けか。
【大山戦略官】  必ずしも後継ではないが、安全・安心科学技術プロジェクトは文部科学省の内局の予算でやっていて、いわば文部科学省だけでやっていたような面があった。戦略推進費の方は各省連携が特徴になっている。まさにニーズ省庁と組んで、どこにニーズがあるかを最初に聞いた上でテーマを立てているので、出口のところで必ず実用化され、調達されることを強く意識して立てたプログラムである。
【村山委員】  テーマ的には重なっているのか。
【大山戦略官】  重なっている部分もある。
【村山委員】  つまり、本プログラムの特徴は、各省連携ということと、より実用化を重視することという理解でよいか。
【大山戦略官】  そうである。
【板生主査】  こちらの方が予算が大きくとれることもなかなか大きな違いだと思う。
【大山戦略官】  戦略推進費というフレームワークでやっており、その予算は総合科学技術会議が各省を連携させ、俯瞰(ふかん)し、先導的に取り組む事業に充てるので、方針は総合科学技術会議が決める。ただし、実際の予算は文部科学省予算ということで、文部科学省で課題の選定や管理や評価はやっており、その実施にあたってはJSTに一部委託をしているという性格のものである。
【河本委員】  前の事業では実装化に向けていろいろ課題があったところが、かなり改善されることが期待されるということか。
【大山戦略官】  そう思っている。
【板生主査】  明確に各省連携になっている。
【岸主査代理】  前の事業では3年でばさっと切れていたのが、このプログラムでは実証期間としてあと2年ついている。そこで各省と連携して、実際に使える方向に持っていくというようなスキームになっている。
【板生主査】  各省、例えば国交省がユーザーということか。
【岸主査代理】  はい、明確には少し違うところはあるが、そういうことである。
【板生主査】  ユーザー省庁を逃がさないようにしないといけない。せっかく、ニーズを出した以上は、きちんと使ってくれよという圧力をかけないといけない。文部科学省はその責任があるので、よろしくお願いしたい。
 次に、長崎大学のバイオセキュリティ分野における調査研究について、長崎大学熱帯医学研究所の竹内勤先生と長崎大学国際連携研究戦略本部天野修司氏から昨年度の調査研究結果と、今年度の調査研究結果について説明をお願いしたい。
【竹内教授、天野助教】  資料2-3、参考資料4,5に基づき説明。
【青木委員】  日本側からの研究者には、天野先生のように社会科学系の方がいらっしゃることはわかるが、アメリカは自然科学者が中心なのか、社会科学系で制度設計の研究をしている方や法律をやっている方はいるのか。
【竹内教授】  アメリカで開催した場合は、例えばホワイトハウスの大統領の科学顧問、国務省の日本担当、保健省や国土安全保障省から制度設計や薬剤のナショナルストックパイルの推進役の方、それから保健省でCDCやNIHやその他の研究所も横並びで統括する次官補等もおいでいただき、アメリカの薬剤の開発、ワクチンの開発、そのマーケティング、副作用のバックアップ等々を包括的にお話しいただいている。
 ただ、我々の政府の枠組にはそのような人材がいないので、自然科学系、要するにウイルスの診断や治療に特化したメンバーで日本側は構成しているということ。本音を言えば、そういう政策面で米国と対応できる人がどこかに出ないかと日頃考えているが、なかなか難しいというのが本音である。
【青木委員】  参考資料5を『国際安全保障』で拝読したが、この論文がすばらしいと思うのは、類書が見当たらないこと。この分野は本当にやっていらっしゃる方が少ないので、ぜひこれを機会にこういうところを進めていただきたいと思う。
【堀井委員】  大変すばらしい御活動をされているということで、大変感服したが、例えばアメリカ等と比べると、研究体制という意味ではどうしても大分差があるかなと思う。企業、研究機関、NPO、NGO、関係省庁とのコラボレーションという図があったが、何か大学のネットワークを日本ではつくれないものなのか、そのあたりはどうか。
【竹内教授】  正直言って、現時点ではまだできていない。一つ、ただ、長崎大学が中心になって推進していることに、バイオセーフティーレベル4(BSL4)の施設がある。BSL4は、出血熱や天然痘のウイルスを扱える施設であるが、長崎大学の構内へ誘致しようとしており、完成すれば日本の大学の関係リソースが全て集まるだろうと、大学間連携あるいは企業やその他のリソースも入ってこられるということをもくろんで、文部科学省と交渉に入っているところであるが、現時点ではどうなるかまだわからない。ただ、研究費の立て方について、日本ではテロ対策という枠組で横並びにクロスカッティングな研究費の出方をしないので、アメリカに比べると、2006年の最盛期にはアメリカでは約1兆円、日本では約10億円というような差が出ている。
【村山委員】  これは日米同盟関係から考えても重要な試みと思うが、今のところ、シンポジウムをやって意見交換されているが、将来的に日米で共同研究という形に発展する可能性はあるのか。
【竹内教授】  米国にはテキサス大学のガルベストン校に最新のBSL4があり、メリーランド州の郊外のフォート・デトリックにBSL4を中心にした世界最高の施設があり、それからロッキーマウンテン・ラボラトリーがあるが、何年か前から私はロッキーマウンテン・ラボラトリーのカウンターパートである博士に、日本人をBSL4でトレーニングし経験を積ませてくれと申し上げてきた。今年初めてロッキーマウンテン・ラボラトリーでシンポジウムをやるという意味は、実は、このラボは例外的にアメリカ政府の持っているラボで最も日本人にオープンになっているラボであること。おそらく7,8人の日本人が今でもBSL4を使って研究をやっている。軍の施設であると、セキュリティクリアランスでほとんどの日本人は引っかかるが、ここだけは非常に好意的である。今回はフォーマルに初めてここで会議をやらせていただき、ロッキーマウンテン・ラボラトリー側の意向を確かめた上で、今後の研究展開を図りたい。
【村山委員】  追加で文部科学省に聞きたいことがあるが、文部科学省とアメリカで、安全・安心も含めたホームランドセキュリティ的なもので、包括的に取り決めをまとめられ、日米で話し合っていこうという枠組をつくられた。その中で、おそらくこれが一つだと思うが、他の分野でもこういうものは進んでいるのか。
【大山戦略官】  率直に申し上げて、多くの分野でスタートはしたが、現時点で動いているのはもうこれだけになってしまっている。担当課が省内いろいろな課に分かれているが、残念ながら、ほかは現在は休止してしまっているというのが現状。

<議題3.その他>
【沼田補佐】  次回の委員会については、改めて御連絡させていただきたい。
 また、机上配付資料の2と3は回収させていただく。
【板生主査】  以上で終了する。

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(調整・システム改革担当)

電話番号:03-6734-4051
ファクシミリ番号:03-6734-4176
メールアドレス:an-an-st@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(調整・システム改革担当))