安全・安心科学技術委員会(第28回) 議事録

1.日時

平成23年6月30日(木曜日) 14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省15階 科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 安全・安心科学技術に関する重要課題について
  2. その他

4.出席者

委員

板生 清 主査、岸 徹 主査代理、青木 節子 委員、河本 志朗 委員、篠村 知子 委員、奈良 由美子 委員、堀井 秀之 委員、村山 裕三 委員

文部科学省

常盤 豊 科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官
大山 真未 科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(調整・システム改革担当)
沼田 勉 科学技術・学術政策局政策課課長補佐

5.議事録

【板生主査】  開会

 本日は、当面の検討課題としている地域社会の安全・安心を担保する総合的なシステムの構築に関連して、群馬大学大学院工学研究科片田敏孝教授、東京大学生産技術研究所目黒公郎教授にご出席いただいている。

【沼田補佐】  配付資料確認

 

<議題1.安全・安心科学技術に関する重要課題について>

【板生主査】  本日は、片田先生から、東日本震災に関する釜石市での社会実装について、目黒先生から、安全・安心な社会都市・地域の構築についてご説明いただき、その後、これまでの審議経過の整理及び平成24年度概算要求に向けた新規事業の事前評価についてご審議いただく。

【片田教授】  資料1に基づき説明。

【板生主査】  大変すばらしいご活動を熱心にお話しいただき、ありがとうございました。片田先生には、以前にもお話を伺ったことがあり、そのときは片田先生の活動の成果をどうすれば日本全体に広げることができるかという議論をした。先ほど教員の講習をするという説明があったが、この辺に関しては、どう考えているのか。

【片田教授】  人間は自分の死というのを明確に意識しないものである。だから、「あなたの命を守りたい」と言っても、全然これは当事者感が相手に伝わらない。そこを乗り越えて、どう教えるかはほんとうに難しいと思う。
 少し嫌な話をするが、病院で余命1カ月だと言われるととてもショックである。これをあと1年、3年、5年、10年と延ばしていくと、僕は今50歳だが、あと50年だと言われたら、100歳までかと、うれしかったりする。しかし、50年と1カ月、さらに細かく延ばしていったときに、これはハッピーなのかアンハッピーなのか、その差の境はどこにあるかを考えると、どうやっても境界が見つからない。例えば30年と言われたとしても、誕生日のたびに1年寿命が縮まったという話になり、毎年憂うつになるわけである。つまり自分の死というのは明確にされることが嫌だし、津波は絶対来るとわかっていても、それを直視したくないという思いがある。だから、教育だとか防災をやっていくためには、人間にはリスクに向かい合う姿勢がないということをまず教える。それを乗り越えるだけの、極めてハイ・インテリジェンスな行為が避難だということを教えなければならない。自然に向かい合って謙虚に生きるとか、自然に向かい合う姿勢を教えるようなことだろうと思う。
 僕は、どうやってもコミュニケーションチャンネルが築けないという中で、幾つかの工夫をしている。それは、子供を介したお母さん。お母さんは、自分の命だったら客観視できないが、子供の命は逆方向にバイアスがかかるぐらい心配するので、そこにまず乗っかった。また、学校の先生方には、この辺の理屈をわかっていただく。今回、僕らがやったのは、弾み車を回しただけで、釜石市3,000人の子供たちを教育してくれたのは学校の先生方である。だから、教育の現場の方々に知識を与えるだけの教育ではなく、姿勢を与える教育の必要性をご理解いただき、ご協力いただく態勢を築くことが一番早いと思う。そういう面で、防災教育は重要であるということは確かだが、我々がやるというよりも、学校の先生方の姿勢をつくっていくということのほうが早道だと思っている。

【村山委員】  学校で防災教育をやるときに、真正面から防災教育をやらないで、算数の授業に組み込むとか、非常におもしろい発想だと思うが、これはこういうところから醸成していったほうがより心に深くしみるということか。

【片田教授】  いや、それ以前に、防災教育という時間をとることができないからである。先生方は、それでもやはり教えたいと思う意欲があるから、何とか教えようと思って、道徳の授業で「稲むらの火」を使うとか、算数の授業でこれをやるとか、地図を見る勉強など、ありとあらゆるシーンの中で津波を教えることはできないかと主体的に考えてくれる。だから、1つは、先生の意欲のあらわれということである。

【村山委員】  逆に、先生の意欲があらわれてこそ、効果が上がるということか。

【片田教授】  そういうことである。あとは、いろいろな課目の中で防災が教えられ、日常的な会話の中で津波という言葉が語られ、いつも意識する。それは、まとめて「怖いぞ」と話されるのではなくて、いつもここは津波の危険がある場所だということを、日常的に入ってくる状況としてつくり上げたということが、ひとつの効果かもしれない。

【板生主査】ハード面の安全だけでは人間の安心は得られない。そのためには人間の側に立った訓練や教育が大切であることを改めて教えられた。

【板生主査】  それでは、次に、目黒先生より説明をお願いする。

【目黒教授】  資料2に基づいて説明。

【板生主査】  大変豊富なデータとアイデアをいただき、ありがとうございました。質問があればお願いしたい。

【岸主査代理】  個々の防災となると、おそらく地域ごとにかなり独特なものがあると思う。地方自治体が何かやるとすれば、それに対してアドバイザーが要るとか、個別のファクターが入ってくると思うが、その組み立てができる人が大勢いるのかということを含めて、どのようなものになるか。

【目黒教授】  個々の地域で防災対策は違うが、それをつくる上で忘れてはならない視点とか、見落としてはいけない考え方とかは、かなり共通しており、標準化できる。その標準化がうまくいくと、それにのっとって地域特性の違いを踏まえた計画をつくっていただくとか、具体的な防災対策をつくっていただくということは可能だと思う。そうしたスタンダードの考え方があまり周知されていないところがむしろ問題になってきている。特に、災害対策基本法に基づいて、国は基本計画をつくるし、県は県、市は市で地域防災計画をつくる。これがかなり金太郎あめになってしまっており、地域の特性が活かされていない。

【岸主査代理】  そういう地域の条件をどう入れるかということはとても大事ではないか。

【目黒教授】  そこがポイントで、その部分をきちんと踏まえていただきさえすれば、あとは地元の人たちで逆につくらなければならない。抱えている課題をきちんと認識して、課題を解決する計画や防災マニュアルをつくる非常に貴重なタイミングであるが、お上指導型で「さあ、これがおまえがやることだ」とやってしまうと、その重要なチャンスをスキップしてしまう。

【河本委員】  要するに地域の住民や社会が主体性を持って計画をつくっていく必要があるということだと思うが、それを巻き込むにはどうすればよいか。

【目黒教授】  損得勘定に直結する情報を出すことだと思う。災害イマジネーションと呼んでいるが、災害状況をきちんと認識できる人間を育成することがより大切である。我々人類は、自分が想像できないことに対しての準備は絶対できない。ところが、防災教育と称してやっていることの中で、「災害状況をきちんと認識する」ということは一切教えていない。災害の状況を把握する、認識できる、時間の経過とともに自分の周りで何が起こるかということを想像できる人間を養成しないといけない。政治家から始まって、行政も我々研究者の仲間もマスコミも一般市民も、それぞれのレベルで災害イマジネーション能力を高める環境を整備していかないといけない。

【河本委員】  さきほど説明いただいたアーカイブシミュレーションは、まさにそこを達成しようというツールなのか。

【目黒教授】  そうである。

【奈良委員】  7ページ目からの資料のWeb3DGISについて、質問がある。1つ目は、これはフリーでだれでもどこの自治体でも使えるのか。2つ目は、導入事例についてお伺いしたい。3つ目は、ある特定の自治体で導入されるに当たって、目黒先生はじめ、大学の先生方がお手伝いに入るということは必要だったのか。

【目黒教授】  1つ目の質問だが、この構想は民間企業が入ってくれて、商品にもした。自治体から直接の相談があった場合は、相談に乗って、もっといいものをつくりませんかというのをやっている。無償なのかというと、彼らの応分な利益が出る形で進めていると思う。ただ最近では、こういう仕組み全体がオープンソース型になってきており、むしろそこにどんな付加価値を乗せるかというところで勝負しようということになりつつあるので、全体としてはいい方向に進んでいると思う。
 2つ目の質問、導入事例としては、品川区など幾つかの自治体で実施している。つくり終えると何か達成した感じになってしまうので、そういうところを変えていかないといけない。
 3つ目の質問、例えば私が委員等をやっている幾つかの自治体では、被害想定の手続に注意して、最終的に道筋をつくるということをやっている。例えば、今までの被害想定のメソッド自体、だれが何をするとこの被害がどのように減るかという因果関係が結ばれていないので、そこを全部、「こうなってこうなるから、この被害になる」という道筋をつけて、自分が何をやったときの効果がどのようになるかをわかっていただけるようにしている。
 関連して、数値目標で、私が心配しているのは耐震化率である。既存不適格建物の耐震化率が高まっているという結果が世の中に出てきているが、それはミスリーディングではないかと思っている。耐震化率というのは、耐震世帯数なので、古くて弱い建物が耐震化されなくても例えば100戸、200戸の建物が新しいものになると、耐震化率が大きく上がるように見える。今まで耐震化率を高めようとしてやっていたのは、新しい大きな建物を建てることと、それほど問題でない建物だけを選択的にいい方向にしていたことで、ほんとうに耐震性指標の低い建物は、いつになってもよくならない。さらには、一定の耐震性指標を超えないと、数値目標の中には全く反映してこないので、ますますほったらかしにされてしまう。

【板生主査】  今日のお話は、既存不適格の建物をどう建てかえるか、非常に大事な提案をされている。

【目黒教授】  この対策をやっていただければ、被害も大幅に減るし、公的な予算も使わなくて済む。今、一般論で一生懸命議論されているのは、弱い家に住んでいて、被災した後でお金をいっぱいあげましょうという制度。もっとひどいのは、その基準になるり災証明・被災証明を出す人たちが、構造のプロでない人であること。現場ではどういうことをやっているかというと、まず「半壊」「大規模半壊」「全壊」を確認するが、住民からクレームがきたときに、行政の人たちが「ここで甘くしてあげることは行政サービスだ」などと言い出したりする。だから、一生懸命きちんと基準にのっとっている人たちが悪者になってしまうような状況がある。生活再建支援制度は、被害を抑止することにゼロ貢献の防災制度である。また、莫大な財源が必要になってくる。

【板生主査】  これから、審議経過の整理、及び平成24年度概算要求に向けた新規事業の事前評価の審議に移る。事務局から資料の説明をお願いする。

【大山戦略官】  資料3-1, 3-2, 3-3, 3-4, 4に基づいて説明。

【板生主査】  当面取り組む課題と、もっと長期的に国レベルで考える必要のある課題があるが、後者については、後半の議論の中でやっていくということで、本日は特に資料3-1の「今後取り組むべき当面の課題」のところを中心に議論いただければと思う。

【河本委員】  5ページ目の「想定されるテーマ」のところで、「社会的弱者」について、ここでの議論では、「社会的弱者」そのものがこういうときにまさに弱者になってしまうということで、社会的弱者の援護という話をしてきた。「警告」という言葉だけではなく、避難の誘導とか、その後のケアとか、全部含めた形で全体的な援護をしていく、という意味で「援護」という言葉があったほうがいい気がする。

【板生主査】  目黒先生の発表の最後のほうに、「災害情報のマネジメント」というのがあったが、どのように災害情報のマネジメントをやればいいのか、ぜひご意見をいただきたい。

【目黒教授】  災害情報をどうマネジメントするかというのは、だれがどんな情報をどう管理して、どのように必要な人のところへ配るかということだと思う。ところが、繰り返しになるが、災害イマジネーションがないので、計画段階でそれがあまりうまくいっていない。実際に災害対応を行った方々のところに行って、どういう行動をしたかということを片端から聞く必要がある。計画時にいろんな部局の人が、発災からの時間経過を追って、「こういう情報があれば自分たちは活動できる」と思っていたわけだが、実際、全然足りない。これだけ必要だったということが後になってわかる。そこで、どう対策をたてるかというときに、いろんな部局の人に、災害の前から後まで、どういうことをあなた方は求められますか、というのを大きな業務単位で聞いていく。そうすると、「僕たちはこんなことをやらなければならない」と大きな業務を抜き出してくるので、それはどんなサブ業務・サブサブ業務からはじまるのか、ということを聞いていくと、最後、アクションになる。このアクションになれば、「そのアクションをする上では何が必要か」と聞けば、皆さん答えていただける。そのときに求められる精度は、時間と空間と数量の精度で、直後だったら多少粗くても使えるが、もう少し後になったら使えないとか、霞が関と現場の人たちは空間分解能が全然違うとか、そういうのを決めておく。
 ここからがポイントで、そうすると、必要な情報Aというのは、ここにもあって、ここにもあって、ここにもあるという話になる。その後、いちどに変換すると、最初求めたかったものが求められる。すると、ある町や市の災害対応業務で、発災から12時間後に何人ぐらい、何部局ぐらいが避難に関する情報を使っているかを見ると、道路に関する情報は12時間の段階で20ぐらいのグループが使う、ということがわかる。つまり、その情報のほうから行動をトレースできるようになってくる。こうなれば、「いついつまでにこの情報を入れておかないと困るから」と計算機のほうから言わせればいいわけで、最初求めていたような管理のマネジメントがうまくできるという話である。

【堀井委員】  「今後取り組むべき当面の課題」のところは、安全・安心科学技術プロジェクト(地域社会)でやってきた成果をうまく取り込んだ記述になっていると思う。「想定されるテーマ」の最初にある「災害対応システムの構築」というところが、とくに対応するところだと思うが、それに付加する形で都市/防災計画の策定とか避難計画の策定とか書き加えている。これはこれで正しいが、最初の災害対応システムの構築というところが少し薄まっている感じもある。災害対応システムというのはどんなシステムが良いのかについては、平常時から機能するようにするだとか、地域と一緒に実装していくプロセスが重要であるとか、我々の報告書の中に書き込まれているようなことを使っていただくと、この安全・安心科学技術委員会らしさが強調できると思う。この委員会の持っている強みを生かした書き方にしていただくとよいのではないか。

今日お話しいただいた片田先生の話も目黒先生の話も、安全・安心科学技術プロジェクトも、目指しているところや趣旨はかなり整合的であるので、まさに目黒先生のやっておられるようなことを活かすような提案にしていただくと、うまくいくと思う。

【岸主査代理】  5ページ目にある「テロ(新規化学物質等)」というは、言葉としては唐突な感じがする。これからのテロということになると、生物剤だとかが新規で出てくると思う。また、最近話題になっている、核セキュリティだとか、あるいは、原子炉、原子力関係のというのも若干入ってきている。

【大山戦略官】  ここの表現は修正する。

【目黒教授】  先ほどの「想定されるテーマ」のところで、自治体の連携システムや、災害情報の共有システムの重要性が指摘されて、実際そういう研究も私自身しているが、技術的にはいろいろな仕様で、もう既に走っているデータ同士を統合することは確実にできる技術もあるし、相乗りできる。ところが今、何が問題かというと、そのデータを共有して使おうとすると、もともとそのデータをとった経緯の目的外使用みたいな話になり、使えないというところに直面して、せっかくのものが全然活用されない状況にある。そういうところに対して、文科系、理科系、両方の知恵を合わせて、問題解決するということを、この委員会で提案していただくといいのではないか。技術の話ではなく、制度や法律的な問題。それを使ったほうが合理的だということが、シミュレーションとか図上訓練で確実にわかっているが、実際に使おうとすると、「これはだめです」と言われてしまう。それをそれぞれの自治体がそれぞれのレベルで解決することは、ものすごく重複があって、無駄なことになると思うので、どこかでまとめて、何段階かのやり方で、「こういう課題については、こういうことを事前に約束事として取り交わしておけばいける」とか、そういうのをうまく整理できないかと常々思っている。

【板生主査】 そういう事例は世の中にたくさんあり、今のデータの話に関しては、少し深掘りして、そういう形の議論ができればそうやっていただきたいと思う。

【岸主査代理】  具体的には、例えば個人情報の保護とか、そんな話か。

【目黒教授】  例えばそれだったらば、どこまで情報をマスクすれば使ってもいいかとか、そういうことを具体的に示していかないと、現場レベルで判断しようとしても絶対に難しい。それをある程度統一的なルールでいけるという、網をかけるようなことをどこかでやらないと、せっかく技術的にも解決して、それがいい成果に結びつくこともわかっているのに、使えないという状況は不幸な感じがする。

【板生主査】  資料4の「事前評価結果」についてはいかがか。

【堀井委員】  基本的にはこれでよろしいと思うが、資料3-1「今後取り組むべき当面の課題」、それから先ほど議論になった「想定されるテーマ」とこれが結びついていることが望ましいと思う。そういう意味で言うと、課題名の「自然科学と人文・社会科学を融合した実践型研究開発」は、具体的にどういうことにフォーカスが当たっているのかが見えにくい。
 「課題概要」のところを見ると、「ロバストかつサステナブルな社会を構築」、「安全・安心な都市・地域づくり」ということだが、何かもう少し、例えばさっきの「想定されるテーマ」で言うと、「災害対応システムの構築」というような、具体的イメージがわくような課題にしたほうがいいのではないか。2段落目のところも、「中長期の視点に立った社会インフラのロバスト化や市民・社会の災害・リスクリテラシーの向上」ということだが、これも対象が相当大きな話である。それよりは、繰り返しになるが、片田先生の話や目黒先生の提案、あるいは安全・安心科学技術プロジェクト(地域社会)でやったような、自治体と地域と研究機関が組み合わさって実際に機能するシステムというのを各地、各地域でやっていくことが重要だということ、そこで得られた知見とか成功事例みたいなものを、東海・東南海・南海地震の被害が想定される地域で、それに備えるために実装していくというような、具体的イメージがわくほうがよいかなと思う。

【板生主査】  私も意見としては、こういう安全・安心の分野は、人間の行動や感情と人工物との関係をきちんととらえてやっていくことが大事だと思っている。そういう意味では、あんまり人工物的な話になると、どこか別の委員会でやっている話になってしまうので、ここの表現をもう少し工夫したほうがいいかと思う。

【大山戦略官】  おっしゃるように、文部科学省がやるとすれば自然科学、人文・社会、それで人間という側面を融合した取り組みで、科学技術というのを生かした研究開発要素があるという面が重要。その辺も書きぶりを工夫させていただき、何らかのイメージがわくようにしたい。

【板生主査】  文部科学省としては独自の人間の行動というものを科学的に分析しながら、または科学的な裏づけのもとで安全社会というものに組み込んでいくということかと思う。

【大山戦略官】  おっしゃるようにハードだけというよりも、ソフト面からのアプローチが重要だということも書いている。

【篠村委員】  片田先生の、文化として根づかせるというキーワードが非常に心に響いた。安全・安心の科学技術を、地域に文化として根づかせるようなところまで考えて、そのための仕組みを含めて我々がやることこそが、単なる箱をつくるというのとは違うという形で、どこかに入れていただくといいと思う。

【岸主査代理】  資料3-1で、なお書きで「当面、今次震災の被災地域等を対象とする研究開発に重点を置くが」ということが書かれており、アクションプランのほうにも震災関係のことが出てきているので、資料4でも、触れられたほうがいいかと思う。

【村山委員】  資料3-1にも資料4にも、「地域のステークホルダー」という言葉が出てくるが、具体的にだれかというのが書いていないので、具体性に欠ける感じがする。もう少しステークホルダーをはっきり示せば、具体的な提案につながりやすい感じがする。

【河本委員】  片田先生は、先ほど「正常化の偏見」とか、いわゆる災害心理学の観点からご指摘をいただいたが、要は「危ない から逃げなさいよ」と言っても逃げないのをどうするかという議論である。そこは人間の心理的な問題や、あるいは行動原理とか、そういうところにまで着目して、それを動かすための仕掛けを考える必要がある。そこが、この委員会で議論している深みがあると思う。もう一つは、細かいワーディングの話で、「ロバストな社会の構築」というところだが、「ロバスト」というのは「強靱」とか「頑健」とかという意味があるが、アメリカやイギリスにおけるテロ対策においてよく使われる言葉にレジリエントというのがある。ダメージをまず受けないようにすることが「ロバストな社会にする」という意味だと思うが、ダメージを完全に防ぐことはやはり難しい。そうすると、ダメージを受けたときに、いかに適切に迅速に復旧・復興していくかということも大事になってくるので、そういう意味での「レジリエントな社会」という言葉も入れてはどうか。

【大山戦略官】  「ロバスト」とか「レジリエント」とか「サステナブル」とか、その辺がキーワードになるのかなということは考えてもいるので、よりふさわしい言葉を模索している途上に今あるというのが正直なところである。

【河本委員】  レジリエントという概念もあまり悪くはないのかなという気がする。「復元力のある」とも日本語では訳したりする。

【板生主査】  それは考えましょう。

【板生主査】  それでは、本日いただいた意見を踏まえ、本案を修正いて、721日開催予定の第37回研究計画・評価分科会で報告させていただければと思う。修正については、私にご一任いただければと思うが、よろしいか。ありがとうございました。
 新規事業の事前評価についても、総合評価を記入した上で、825日開催予定の第38回研究計画・評価分科会に諮りたいと思う。この票の内容についても私にご一任いただければと思うが、よろしいか。ありがとうございました。

 【大山戦略官】   9月以降の委員会の開催予定については、またご連絡をとらせていただいて、調整したいと考えている。

【板生主査】  第28回の安全・安心科学技術委員会を終了する。

── 了 ──

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(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調整・システム改革担当))