安全・安心科学技術委員会(第21回) 議事録

1.日時

平成21年8月25日(火曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省 16F1会議室

3.議題

  1. 安全・安心科学技術プロジェクト平成21年度採択課題について
  2. 安全・安心科学技術プロジェクト進捗状況の報告
  3. 平成22年度概算要求について
  4. その他

4.出席者

委員

板生 清 委員主査、岸 徹 委員主査代理、青木 節子 委員、大野 浩之 委員、四ノ宮 成祥 委員、奈良 由美子 委員、札野 順 委員、堀井 秀之 委員、村山 裕三 委員

文部科学省

泉 紳一郎 科学技術・学術政策局長
中岡 司  科学技術・学術政策局政策課長
岡谷 重雄 科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(推進調整担当)
竹内 英 科学技術・学術政策局安全・安心科学技術企画室長

5.議事録

<開会>

・  事務局人事異動について。中岡政策課長と竹内室長の着任の紹介と挨拶を行った。
・  配布資料確認。

 

(1) 安全・安心科学技術プロジェクト平成21年度採択課題について

・  安全・安心科学技術プロジェクトの今年度の新規公募の選定結果について、資料1を用いて竹内室長から報告を行った。
・  審査委員長であった板生主査から、「安全・安心科学技術プロジェクトは社会実装ということを重要視している。採択課題は技術が一番確実であり、また実用に供する点で、これを応用して具体的に使っていきたいということの筋道が非常にはっきりしている。この課題に大変期待をしている。」との補足があった。

 

(2) 安全・安心科学技術プロジェクト進捗状況の報告

・  安全・安心科学技術プロジェクト推進委員会の位置づけについて、資料2を用いて竹内室長から説明を行った。
・  安全・安心科学技術プロジェクトテロ対策分野課題の進捗状況について、推進委員会テロ対策分野の委員長である岸主査代理から、資料3、4を用いて報告を行った。
・  安全・安心科学技術プロジェクトは社会実装を目指しているので、実証実験が必要不可欠である。平成19年度採択課題については、実証実験へ移行しつつある。平成20年度採択課題については、どこまでできるかはっきりしないところも若干ある。

【村山委員】  プロジェクトの形として、ほとんどのところに大学と企業が入っているが、社会実装をするときには企業が製品化する構図か。製品化も重要だが、できた製品に価格競争力があるかどうかというのも重要である。メーカーがコスト面もチェックする体制になっているのか。

【岸主査代理】  コスト面も計算はしているが、競争力という意味では、まだしっかりはやっていないと思う。それともう一つ、国際的な標準との兼ね合いも最終的な実装の部分では問題になると思う。

【札野委員】  安全・安心科学技術にかかわる人たちのネットワークを広げていくためには、こういう課題に応募した人、落ちた人たちも含めて、成果の発表会を開いて情報の交換をやっていったほうがいいのではないか。

【竹内室長】  ネットワーク化、関係者が情報を交換することは非常に重要である。東京ビッグサイトが主催するテロ対策特殊装備展(本年度は10月21日から23日まで)に、文部科学省もこういう情報を含めて提供し、関係の企業にも参加いただく。そこでは内閣府の総合科学技術会議もセミナーを開催する。そういう場を活用したい。

 もう一つ、安全・安心科学技術企画室の委託事業で、科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)で関係者の情報交換、ネットワーク化を行っている。バイオ関係のネットワーク化については慶應義塾大学の竹内勤教授のところにお願いしている。それらのネットワークで、まず情報交換をしていくことを考えている。

【板生主査】  バランス的にこれでいいのかという議論があると思う。本来ならば、もっといろいろなことをやらなければいけないのではないか。社会実装を目指しているが、限られたリソース、予算の中でこういう形になっており、必ずしもまだ十分でないものが見られる。その辺をどうしていくかということは、推進委員会の課題でもあると思うが、採用されて実際に実証実験まできちっとやって、さらには市場的に競争力があるのかないのかというところまで行かないといけないとするならば、課題はたくさんある。

【四ノ宮委員】  開発である程度使い勝手が決まったものに関して、実地の使用の場を提供する枠組みはあるのか。テストという形で研究室の中でできるものもあると思うが、実際の現場に持っていってやってみないとわからないものの場合はどうなるのか。

【岸主査代理】  実際には実験室の中ではなく、その現場的なところに持っていく形にしている。例えば日立の場合を例にとると、テロ対策特殊装備展のゲートで、実際に見学に来た人を全部通してチェックするとか、あるいは空港の現場でやってみるとかである。実験室の中の条件はかなり緩いものなので、きつい現場でやってみる。それは研究年度中にということで頼んでいる。

【板生主査】  応募の段階で、どこで実証実験をやるのかまで聞いて、できるだけ具体的にわかるところまで確かめている。

 

・  安全・安心科学技術プロジェクト地域社会分野課題の進捗状況について、推進委員会地域社会分野の委員長である堀井委員から、資料5、6を用いて報告を行った。

【札野委員】  3つの案件とも推進委員会のコメントの中で、社会科学系の研究者の参画について触れられており、熊本大学は明確な形で対応がなされているが、他の課題に関してはどうか。

【奈良委員】  推進委員として発言すると、「時空間処理と自律協調型防災システムの実現」課題には既に行動心理学の研究者を入れている。

【札野委員】  具体的にどういうことを行動科学の方がやっていらっしゃるのか。

【奈良委員】  まだ私も報告を伺っていないが、要は、住民に動いていただけるように、こういうシステムが自分たちの安全・安心に不可欠だと説得をしなくてはいけない。どういう説得の方法がいいかということを考えていただいて、あとは避難のときに迅速に動いていただくための方策を考えていただく。その2局面をねらって社会科学系の方を入れていると理解している。

【板生主査】  社会科学系の研究者の参画は大事だが、どうそれを一般論化して、一つの方法論や成果にしていくかが非常に難しい。

【堀井委員】  実際入っていただいてうまく機能するというのは難しく、責任機関の中にそういう方がいるかどうかが重要だろう。熊本大学については行動心理学の研究者がいて、研究対象としてもこの事案自身が非常に興味深いテーマなので、うまく機能すると思う。

 推進委員会としては、この3つの事例で、安全・安心の事業がどう実装していくのかという、こうすればうまくいくとか、こういうメカニズムが機能したからうまくいったという方法論化をすることが大切で、そうしないと、いつも場当たり的にうまくいったりいかなかったりということになってしまう。

 だから、各プロジェクトが実装に向けての指標、例えばワークショップへの参加者数、防災リーダー数、それが増えていくのかというような指標を提案して、それに基づいて計測し、実装ということを強く意識し、かつそれを方法論にしていくような働きかけをしている。

【板生主査】  社会学というか、こういう分野をサイエンスにしていくというのは大変難しい。そういうことをどこまでできるかという事例をいろいろつくっていって、その中から一般論に持っていくのと、トップダウンで考えていくのと両方あると思う。

 日本においては水害や地震のいろいろな事例があるが、各チームで、どう対応できるようになっているのか。

【堀井委員】  理想的に言えば、例えば推進委員会のメンバーが、起こった事柄をウオッチして、こういうことが必要だとか、これはうまく機能していたとか、あそこでやっているものをここにやればうまくいっただろうとかいうような分析ができればいい。

【板生主査】  学問的なことだけやっていると何だかわけがわからなくなってしまうので、その辺のところは推進委員会でよろしくお願いしたい。

【大野委員】  研究を開始して1年たっているので、英語でのページを含めたホームページをつくるなど、情報発信が重要と思う。

 もう一点、大規模災害時や予期せぬ事態における情報通信システムを考えるとき、従来は情報通信インフラが災害でぼろぼろになってしまって、生き残った人々がどうやって情報交換しようかというモデルで議論してきたが、最近の鳥インフルエンザのパンデミックなどは逆で、インフラ正常、人ぼろぼろというモデルになってきていると思う。そういうことまで考えると、ここで使われている技術がそのまま適用できない局面もある。

【村山委員】  ビジネスの分野では、ビジネスコンティニュイティープラン(BCP)というのをつくって、人がぼろぼろになったときに、いかにしてうまく回すかというプランをつくる。そういう人のシステムとこういう情報のシステムをいかに合わせていくかというのを、将来的には考えなければならない。またこれはまだビジネスの分野でしかやっていないので、これから地域、大学で考えていかなければならないだろう。

【堀井委員】  この3件の中で、例えばユビキタスの減災情報システムのケースで言うと、だれでも情報入力ができて、それに対応するべき行政が情報を入手できるようなシステムを目指している。それが実際うまくいくためには、使う人がほんとうに情報を入力できるようにならないといけないのでハードルは高いが、来ない人間がどういう理由で来ないかという情報がとれるようになると、対応する側もそういう情報に基づいた対応ができるようになると思う。

【大野委員】  従来僕も安否情報登録検索システムはさんざんつくってきたが、高熱でうなされた状態のときを考えた安否情報システムは、少しスタイルが違うと思っている。

 

(3) 平成22年度概算要求について

・  平成22年度概算要求について、資料7、8を用いて竹内室長が説明した。政府が出口機関、ユーザーとなる技術領域について、ニーズオリエンテッドの実用指向で開発をする取り組みを考えている。

【札野委員】  このシステム全体をうまく使って、人材を育成することも考えていくべきではないか。ニーズの把握の段階から、実際に研究開発を行って、その実証検査をして実装するところまでを見ておかないと、全体を見ることができる人材が育っていかないのではないか。

【岡谷戦略官】  我々が考えているプログラムは、関係府省に存在している、研究開発に携わっていなかったような現場の実装の方々が、研究開発の現場の中に入ってきて、そこにおいて、ディマンド側に人材を育成していく効果があると考えている。

 あわせて、サプライ側である研究開発機関、大学、企業においても、現場のほんとうのニーズがどこにあるのかがわかってくることによって、人材育成がなされるものと思う。

 さらにもう一つ、技術動向に関する国際調査については、いろいろな先進国と協力をしていくことを念頭に置いており、そのやりとりによって、さらに広い人材のネットワークができ上がっていくと考えている。

 このプログラムを通して、今まで距離のあったサプライ、ディマンド、それから外国の人たちが、一種のネットワークを組めるようになることを効果として期待している。

【札野委員】  大学は、いろいろなところでインターンシップの制度をつくり上げようとしている。大学のような教育機関が、将来こういう領域で活躍できる人材をつくっていこうとしたときに、このシステム全体の中にインターンとして何人かの人たちを入れていただくことが可能になれば、将来的にそういう道があることを若い人たちに知らせることによって、安全・安心科学技術に関しての軸が育っていくのではないかと思う。

【岡谷戦略官】  ご趣旨はわかった。これは振興調整費という非常に使い勝手のいい予算でやろうとしているので、特任教授や任期つきで採用されるポストも要求することも可能である。その辺を踏まえて予算をこれから折衝するわけだが、検討させていただく。

【青木委員】  実証技術の海外協力の時点と、製品の輸出のところまでが視野に入っているが、例えば海外との協力の時点でかなり機微な技術を扱うので、技術取引に当たってしまう場合があると思う。

 まだ施行はされていないが、今年、外為法の改正が22年ぶりにあり、海外調査や協力も難しくなる場面もあろう。また輸出ということになると、今度は武器に該当してしまう場合もあると思う。かつて地雷の検知器を武器輸出三原則から外すために官房長官談話という方法を取ったが、今回は、国際協力による開発を可能にするために、どういう方法を考えているのか。

 輸出の方法と、また実証に至るまでの国際協力の部分の2つのお考えを教えていただきたい。

【岡谷戦略官】  国際協力の部分では、特に米国がこういう分野については非常に先進的である。例えば空港の爆発物の探査装置については、米国国土安全保障局(DHS)の運輸保安庁(TSA)の認証が世界のワールドスタンダードになってきているところがある。我々としてはそういうところと政府間協定を結ぶことができれば、こういう協力が前に進むのではないかと考える。政府間の枠組みがなければ、ややもすれば機密に該当するような情報のやりとりというのは難しくなるのではないかと私たちも認識している。

 それから輸出規制の話については、経済産業省とも話をしているが、どんなものがテーマで挙がってくるかまだ決まっていない。外為法で、輸出の段階でどうなるのか、経産省と協力しながら前へ進めている。

【村山委員】  武器輸出三原則とも絡んでくるが、ケース・バイ・ケースのグレーゾーンというのがある。おそらくそこに入ってくると思うので、そこを白黒つけるような形に持っていっていただければ、輸出に結びつけやすい。こういうことが突破口になるといい。

 これは非常によくできた計画だと思うが、実際にプロジェクトをやる側から考えてみると、出口機関、支援機関が入ってきて、それを一緒にマネージして形にしていくというのは、かなりの力量が要る。

 だからこれは今までの申請の方式ではなく、組織のイノベーションのような形で、これを動かすためにはどういう組織的な対応をするか、という面も見られるようなシステムにしたほうがいいと思う。もう一つが一番の大きなネックだった実用化への死の谷の克服のためにどういう方法をとるとか、そのあたりも公募のときに条件に入れられれば、一度にクリアできなくても、何かいい方向に行くような気がする。

【竹内室長】  まず2点目について、出口側機関を巻き込んでやっていこうというシステムは、まさにこの死の谷を越えるためにつくってみたものである。コストや現場で導入するに当たってのニーズをしっかり踏まえた上で、研究開発推進チームと研究開発機関が協力してやっていくことによって、死の谷を越えていくというものである。

 最初の1点目については、研究開発をうまく進めていくだけでも、簡単ではない上に、研究開発推進チームの助言や、研究開発の管理も聞きながらやっていくというところで、しっかりとした中心人物のマネージは必要だと思う。

 関係省庁の技術側推進チームに入っていただく方については、応援の意味を含めて助言、管理をしていくという体制で、参加いただければと思っている。

【村山委員】  応募される方は、出口側の関係機関を最初から巻き込んでプロジェクトを立ち上げるのか、それとも最初は大学、企業で立ち上げたら、それに関係する人はどういうメカニズムで入ってくるのか。

【竹内室長】  まず関係省庁、出口側機関が集まって、課題の明確化を行い公募する。公募するときに研究開発機関のほうは、自分たちのほうが出口側機関とくっついてというよりは、その公募されたテーマに自分ならこういうことができるというのに手を挙げる。それに対して関係機関がサポートをしてやっていく。

【岡谷戦略官】  この体制でやろうという話で、既に関係省庁と連絡会をやっている。資料8の3の候補課題はそこから上がってきている。あとは予算が通れば公募をして、どういうことをやっていくのか。実施部隊として企業と大学の連携体を選んで、我々が関係省庁と連携しながら見ていく。そのときに外国の情報などは、多分表へ出すことはできないので、この関係府省連絡会、あるいは技術開発推進チームの国家公務員の範囲の中で閉じるという構想を考えている。

【板生主査】  現実のものとするためのいろいろなアドバイスが出ていると思う。人材を育成すること、マンパワーをある程度大きくしていくこと、組織そのものを取りまとめる強力な人をどう養成するのか、またはどういう組織にすればうまくいくのか、そういう実行論において、いろいろな工夫がなされる必要があるのではないか。実行の段階でさらに検討されて、現実的な形で踏み出していただきたい。

 

(4)その他(報告書について)

【板生主査】  前回までの委員会で検討した報告書について、中間まとめという形で6月30日に報道発表を行った。当初は9月末をめどに最終報告をまとめる予定だったが、拙速は避け、次回以降じっくりと議論して、この年度内くらいに最終報告をまとめたい。

 第4期の科学技術基本計画について議論している基本計画特別委員会には、この中間まとめの形で提出することにしたい。中間まとめの中の1番目に、国家レベルの安全確保のための科学技術の研究開発体制の整備については、ただいま検討させていただいたように、具体的に来年度の新規プロジェクトに取り入れた形となっている。

 2番目の国民レベルの安全確保のための科学技術の実装への取組、それから3番目の安全・安心科学技術の共通基盤の強化の2つについては、今後具体的な問題点の抽出や国の施策のあり方について議論していきたい。

 社会的イノベーション創出に向けた取り組みはかなり議論をしていただくことになると思う。技術は開発されても社会に実装されない物をどういうふうにして社会に根づかせていくか、技術を根づかすことによって社会がさらに安全・安心になっていく、それに対する阻害要件は何なのか、対策等の提案についても重要なテーマと考えている。

【札野委員】  科学技術振興機構社会技術研究開発センターが、「分野横断的な取組のための中核となる機関の確立とネットワーク構築」のようなことをやっているが、これの今までやってきたことに対する評価、さらにこの安全・安心という領域で進めていくこと、改善策を考えることを議論してもいいのではないか。

【板生主査】  社会イノベーションを創出する上で、どういうことが本来必要なのかという基本的なところも、あわせて議論していただきたい。

【堀井委員】  「分野横断的な取組のための中核となる機関の確立とネットワーク構築」を具体的な施策にしていくときに、どんなプロジェクトが有効かということを考えたほうがいい。

 具体的に「分野横断的な取組のための中核となる機関」というのは一体どんな機関なのか。特に人材育成ということなら、大学に中核となる仕組みが必要ではないか。

 どういう政策的な誘導によってそういうものができるようになり、分野横断的な研究が特に文理融合という形で進み、そこで人が育ち、そういう人が社会の中でどういう役割を担っていくのか、どういう職種があり得るのかということを描かないと、絵にかいたもちに終わってしまう。

【札野委員】  米国ナショナル・アカデミー・オブ・エンジニアリングは、エンジニアが解決すべき課題というのを掲げて、それに向けてエンジニアを動かしていこうとしている。英国ロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングでも同じような試みが行われている。そういったことを日本でもやっていく必要があるのではないか。

 とにかく安全・安心科学技術が重要なのだということを、いろいろなセクターの人たちが認識したときに、こういう組織をつくるための基盤ができ上がっていくのではないか。いろいろなところで安全・安心という言葉が使われながら、まだまだその重要性に関しての認識が、それほど根づいていない、少なくともアカデミックな世界においては根づいていない。それを変えていく方法が必要。

【堀井委員】  スタンフォード大学では学長主導で、分野横断的な教育研究プログラムを3つ選定したそうである。3つのうちの1つがエンバイロメントで、縦のディシプリンはエンジニアリングやロースクールの幾つかのスクールである。インスティテュートが横型で、そこが学位の教育プログラムを提供する。

 教員は全額そこで雇われているのは数人で、あとはディシプリンの縦、スクールが半分、インスティテュートが半分金を出す。審査はそれぞれの教授会にかかって、両方で可ならば通る。分野を超えた研究プロジェクトについては、大学がシーズファンドを提供する。 

 そのかわりそれが発展して競争的資金を取ってきたら返すしくみだが、大体つけた額の4倍ぐらい取ってきている。非常に人気があって発展しつつあるという話を聞いた。

 日本の大学の縦の学科専攻の組織とは別に、分野横断的に学位が出せるような学位プログラムがあって、そこは人気に応じて大きくもなり小さくもなる、トータルは一緒だがその分縦の部分が少しずつ減るようなことを実験してみてうまくいったら増やせばいい。そうすると古いディシプリンが少しずつ減っていく。そういう分野横断的なものに、安全・安心というのはあるかもしれない。

 そのときにどういう教育プログラムで何を教えて、その教育を受けた人がどんなところでどんな職について、どういう活躍をするのかが思い描けるなら、そういうものをつくるというのはあり得ると思う。

【札野委員】  国家的なニーズがあるとうたっているわけだから、国家がそういう人材を活用していくことになるのではないか。

【堀井委員】  何々省のどういうところでどんな人がいて、その人はどういう知識を持っていて、どういうスキルを持っていて、どういう能力を持っていて、どんな政策を扱って、どんなことをするのかというところが描けて、この省だったら何人、会社だったら何人、全部足してみるとこのぐらいの数、だったらつくりましょうかという話。そこのところを詰めずにやると失敗する可能性がある。

【板生主査】  社会は今、いろいろな意味で閉塞状態にあって、うまく進んでいかない。いろいろなことが起こっているわりには、特に省庁間の壁があって国民のレベルでは解決されていない。それによって安心ではなく不安になっているという問題は、多数存在すると思われる。

 そういうようなことを文部科学省が中心になって省庁の壁をとにかく崩して、国家としてやるべきことをやっていく、そんな社会イノベーション、課題を列挙して、そういう中で我々は具体的な提案をしていきたい。

【大野委員】  安全と安心を小学校ぐらいから伝えるようなメカニズムも必要。アカデミアとは違う小中高の先生方に学校におけるセキュリティーの基礎を伝え、その先生方が問題意識を持って、小中高の生徒に伝えるというメカニズムも準備する必要がある。

【四ノ宮委員】  科学技術の悪用・誤用の防止という観点からは、テクノロジーが進歩して、それが悪い方向に使われて、それを克服するためにさらに検知技術を高めて、という循環になっている。いかにそれをまたうまく処理していくかという方向ではなく、さらにもっと健全な方向に進めるというのはなかなか難しい。

 大学の学生が組織したSTeLA、サイエンス・アンド・テクノロジー・リーダーシップ・アソシエーションというのがあるが、日本のリーダーシップを担うような学生がどういう立場でものを考えていくかを、学生みずからが考えて問題を解決していくということを、国際協力の枠組みの中で考えているらしい。そういうリーダーシップを目指しているような学生に何らかの形で支援をするとか、科学の情報や技術の健全なあり方をいろいろな教育のレベルから身につけてもらう努力も、安心・安全の素地を全体的に広げるので重要ではないか。科学技術のいろいろな支援の枠組みの中の1つに考えていただいて、何らか取り組めるような形があればと思う。

 教育の場を提供するとか、教育のプログラムを考えるとか、あるいは技術そのものというよりも社会的なところの枠組みを全体的に形成していくところから考える必要がある。

【奈良委員】  社会的イノベーションの話が国民レベルの安全確保のところに入っているが、つまり技術的なイノベーションだけでは、安全は担保できても安心が実現できないということがここに込められていると思う。

 生活者の不安には、不信がそこにはある。きちんと安全対策がやられているということを知っていれば、体感的な不安は下がるわけで、行政や専門家はちゃんとやっているということを伝えることが大事と思う。

 一方でマスコミのリスク情報の伝え方というのは大きな問題があり、危険だということを言って不安をあおる。でもその規制が難しいのであれば正攻法で、教育しかないという気がする。きちんと学校、社会人教育といった形で教育でやっていくということがまず一つ。

 あともう一つは、リスク管理がやられていることを知っていれば不安が減るのであれば、自分たちがやればいいわけである。安全・安心は専門家につくってもらうだけではなく、自分たちもつくるんだという考え方を広げるような社会的な仕組みとか仕掛けをやるということも、一つの社会的イノベーションかと思う。

【岡谷戦略官】  今回出したテロのほかにも、振興調整費でまさに社会的イノベーション創出のため、こういう実装に向けたさまざまなプログラムをスタートしようということになった。その一つに医療分野がある。新薬の規制をどうやって乗り越えていくのか。安全サイド側でみずから規制研究をしていくレギュラトリーサイエンスという考え方があるが、それを一体的にやっていく。それから実際に現場で起きたいろいろな症例を、今度は基礎研究へフィードバックしていく。こういう知の循環という新しいプログラムを立ち上げた。

 実はこれは総合科学技術会議から指示が出ていて、こういうプログラムを第4期の科学技術基本計画の中で増やしていこうという話があり、来年度予算要求でその知の循環は入っているが、そのほかにも、第4期が本格化したら出てくると思われるものに、防災がある。例えば防災ではそれぞれの情報源の統一化をするプログラムは考えられないか、あるいは遠隔医療で、例えばインターネットでどこまでできるのか。これは通信法、医療法をどうやって乗り越えていくのかという問題があるわけである。そういう社会イノベーションにつながっていくようなものに、第4期になってから振興調整費を本格的にシフトしていこうという話をしている。

 その中で、どのようにして生活者の観点を盛り込んで社会イノベーションのシステムをつくっていくことができるかを今後考えていくので、素材、題材をいただければと思う。

【板生主査】  遠隔医療はじめ、過疎地の対策としてのオンデマンドバスシステムの社会実装など課題がいろいろある。どうやったらできるという対策までを議論して、それを答申にまとめていくことができればいいのではないか。次回あたりに社会イノベーションをするためにこういう必要がある、ここが閉塞状態になっているということを提案いただければありがたい。

【岸主査代理】  情報管理の話で、機微情報のレベル化が日本は必要かと思う。(機微情報の適切なレベル化を行い、)レベルの低いところの機微情報を知って活動する人は多く必要で、高度な機微情報を知る人は少ないということであればうまくいく。人材育成をするという意味からも、機微情報ということで多くを制限すると、そこに入り込む人数が少なくなってしまう。だからレベル毎の人材育成もやって、その分野を拡大する。(そして、その中から、さらに高いレベルの人材を育成することが必要である。)先ほどのシステム構築のところでも、やはりレベルを考える必要があると思う。

【村山委員】  社会イノベーションは前面に押し出してやってもいい。日経新聞に堀井委員が書かれていたが、日本のイノベーションの考え方自体おかしい、金もうけだけになったらだめだと。本来は、社会イノベーションをやったら利益が上がるべきことである。というのは、社会のニーズに合ったことを開発したら利益が上がるというのはビジネスの基本である。そこが忘れられているので、基本をもう一度見直して、今の状態ではいきなり社会イノベーションをやって利益が上がるという世界ではないので、政府が後押しして、そういう世界が来るように持っていく、そういう大きな方向性を打ち出せたら非常に意義がある。

【泉局長】  中間まとめを踏まえて、22年度の予算要求をさせていただいている。

 文科省として今やっている第4期基本計画に向けての重要施策についての議論は今年中にはまとめたいと考えており、この秋の基本計画特別委員会にここでご議論いただいたことも持ち込んでいきたい。

 これまではライフサイエンス、情報、ナノテク、環境、そういう技術のほうから、ねらいを定めて重点化ということをやってきたが、今度は、当面の課題、科学技術でやるべきイシューとして大体2つのキーワードとなっている、低炭素化社会づくり、健康長寿の課題に対して、どういう技術、あるいは融合をやっていかなければいけないか、分野の重点化を図る方向になっていくのではないかと考えている。

 もちろん可能性のある技術シーズをきちっと固めることも重要だが、より課題オリエンテッドな重点化ということを次期基本計画においては考えており、まさに安心・安全というのは課題オリエンテッドである。

 安心・安全は、技術で開発すべき課題が広いと思う。ここでのご議論を基本計画にぜひうまくつなげていきたいので、またよろしくご指導願いたい。

 それから所感であるが、現実に起こっている災害について、研究途上にある活動としてコントリビュートできることはないのかと感じた。

 また、テロ対策技術のスペックというのは、研究の過程でどのぐらいをオープンにしながらやれるのか。研究を円滑に進めるためには、ある程度オープンにしないといけないが、オープンにし過ぎると今度はテロリストにそれを超えるような方策を与えることにもなってしまうので、研究開発をするときにはその辺のところも考えていかなければいけない。

【板生主査】  今のいろいろな議論、ご意見を踏まえ、次回はさらに具体的な対策等についての話をさせていただくことにしたい。

── 了 ──

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