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安全・安心科学技術委員会(第20回) 議事録

1.日時

平成21年6月9日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 旧文部省庁舎 第1会議室

3.議題

  1. 安全・安心科学技術の課題の検討
  2. 取りまとめ案の検討
  3. その他

4.出席者

委員

板生清委員主査、岸徹委員主査代理、青木節子委員、大野浩之委員、四ノ宮成祥委員、土井美和子委員、奈良由美子委員、橋本敏彦委員、札野順委員、堀井秀之委員、村山裕三委員

文部科学省

泉紳一郎 科学技術・学術政策局長
岩瀬公一 科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官
戸渡速志 科学技術・学術政策局政策課長
岡谷重雄 科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(推進調整担当)
西田亮三 科学技術・学術政策局安全・安心科学技術企画室長

オブザーバー

片田敏孝 群馬大学大学院工学研究科社会環境デザイン工学専攻教授(説明)

 5. 議事録

1) 安全・安心科学技術の課題の検討

 群馬大学大学院工学研究科社会環境デザイン工学専攻の片田敏孝教授が、資料1を用いて、研究開発と社会システムの改善、それに連動した社会イノベーションの創出に向けた取り組みの事例として、「災害犠牲者ゼロを目指した社会技術研究」と題した説明を行った。

【板生主査】  先生は多分いろいろな経験をお持ちで、また逆にたくさんの課題をお持ちだと思う。社会的イノベーションという形で議論をさせていただきたい。今、先生がおやりになっていることに関して、特に一番課題であるということがあったら、お話しいただきたい。

【片田講演者】  安全・安心という問題に対して我々研究者として貢献するということは、実効性をどう高めるのかということに尽きる。そこを標榜しながらやる研究にはいろいろあって、ハザードの研究、つまり現象面の研究、対策の研究というのももちろん必要なことではあるが、エンジニアの世界、工学の世界、理学の世界のほうばかりに研究が偏重していくという傾向が強い。ただ、このシミュレーションでわかるように、犠牲者をゼロに持っていくというところになると、社会的な対応、社会状況、過去の経緯、住民の心の問題、コミュニティーの問題、心理学的な問題、いろいろな問題が入ってくる。研究のウエートの問題として、もちろん現象を勉強することも重要ではあるが、その一方で、最終的な目的関数は何なのだということを明確に意識したときに、全体の効果を高めるというところに研究の視点を持っていく必要があるのではないかと思う。

【札野委員】  2つ質問がある。1つは、先生が一緒にやっている学生とか、この領域での先生の後進というか、先生と同じような仕事ができる人をどうやって育てていけるのかという点。今おっしゃったように社会の中でこういう問題に対しての認識というのがまだまだ低い中で、先生がやっていらっしゃるような仕事を自分の専門としてやっていけるような若い人たちをどうやって育てていけるかというのがまず1つの質問。もう1つは、先生がやられたシミュレーション技術というのは、いろいろなハザードに対して生活者の認識を高めるために非常に重要だと思うが、これを一般化するために、もっとほかの災害に対して同じような手法というのは適用可能なのかという点。

【片田講演者】  まず2つ目のご質問であるが、他の災害に適用できるかということについては、容易に可能である。というのは、GISのイメージで考えていただくとわかるが、津波というのは一つのレイヤーにすぎない。ここの災害を変えてやるだけで、洪水への展開、テロ、いろいろな展開が可能である。

 若い人の育成は非常に難しい問題である。私の研究室に、国土交通省から何本か仕事をいただけるようになっているが、仕事としてやるというよりも、研究との連動というのは強く意識している。若い人たちには研究論文が書けるかどうかというのがすごく重要なポイントになっており、研究論文にならないと判断するものについてはお受けしないという中で動いている。若い人を育成するためには、社会的にどういう体制が欲しいかということでは、例えば、今のような研究論文、技術開発をしたところについては論文として通るが、これをこのように適用しました、そしてこんな効果がありました、その中で住民とこんなコミュニケーションをしましたというところに対して論文を書いても、特にエンジニアリングの部門の論文については、それは単なる適用でしょと片づけられてしまう。ほんとうにテクニカルな開発の部分しかアカデミズムとして認めてもらえてないというところに、若い人を育てるときの非常に大きな障害がある。彼らも、こんなに頑張って、こんな効果があるにもかかわらず、何で論文を書いても通してもらえんのかということに対する不満は非常に大きいと思うし、それが若い人を参入させることに対しての僕の抵抗要因でもあり、彼らは意義を感じつつも自分のこれからのアカデミックキャリアという面において不安を抱いているということも事実だろうと思う。こういった問題を、例えば文部科学省のこういうところでその研究は意義があるのだということを認めていただいて、彼らがそれを自信としていけるような、そんな状況を整えていただけると、若い者の育成というものはできるのではないかと思う。

【岸主査代理】  インセンティブをつけるという意味で一つご参考になるかと思うのは、私の分野で法科学というのをやっていたが、基本的に論文発表する場がないということで、最終的に学会をつくってしまった。日本法科学技術学会という学会をつくって、そこで発表する場をつくったというようなことがあるので、人数にもよるかとは思うが、受動的ではなく、積極的に何かできる方法があればと思う。

【片田講演者】  ある程度の人数の規模がないと学会という形にまでは持っていけない。

【堀井委員】  ただ、社会技術研究論文集にぜひ投稿していただきたい。

【片田講演者】  それにとっていただければ、一つ大きな動機づけにはなる。

【板生主査】  工学の問題と社会との問題というのは必ず今おっしゃったような課題があり、それを論文としてまとめるには、私の知っているところでは機械学会の「技術と社会」部門のようなところで発表するのも一つの方法である。新しい学会をつくるということもあるが、今、既存の中でだんだん学会自身が変わってきつつあるので、そこをできるだけ開拓・革新をしていくことが必要かと思う。

【堀井委員】  片田先生の研究も発展して、かなり社会実装のフェーズに入ってきているが、活動の中のある部分はもっと行政がやるようになることが望ましい。片田先生が住民のところまで行って何度もワークショップをするというのはすばらしいことだが、むしろ自治体でやる人に対して片田先生がワークショップを開いて、あとはその参加者が各地方自治体でそれぞれやっていく仕組みができないとなかなか難しいと思う。

【片田講演者】  今、そういう動きに転換している。まずはファシリテーター育成講座、我々のつくったシミュレーションのプレゼンテーション資料をそのままお渡しして、住民に対してどういうコミュニケーションをやればいいのかというようなことの講座をやり、ファシリテーターが住民のところにこのシミュレーションを持っていき、これが終わったところで一度集まって、どんな問題が生じたのか、コミュニケーションはこういうところが難しかったということに対して私がアドバイスをしていくというような動きを展開し始めている。ただ、人を説得するという話なもので、なかなか円滑にはいかないという感じは持っている。

【堀井委員】  ファシリテーター育成講座のようなものが法的な枠組みの中で位置づけられて、だれかが頑張らなくても社会の仕組みとして続いていくような方向性を目指さなければいけないと思うが、だれがどうやったらそうなるのかは課題か。一研究者が考えれば済むことではない。

【片田講演者】  私もそうは思うが、今は自分としてできることをとりあえずは精いっぱいやっている。

【板生主査】  大学がそういう専門的な人材を育成する専門職大学院のような機関を持つなどして、安全・安心プランナーのような専門家を育成する機関をつくり、そういうところで片田先生のような先生がどんどん学生を指導していくというような、研究者育成ではなく、専門職社会人学生の育成という仕組みがきちっとできれば、またそれは一つ答えになるのかもしれない。

【四ノ宮委員】  これは行政とかなり密接にかかわることであり、それから住民の中でどういうふうにして輪を広げていくかという問題がある。工学的な面のシミュレーションで展開していくという手法プラス、それをいかに住民の中に根づかせていくか、住民の輪を広げていくかという別の側面からの手法と合体させてやると非常に効果があると思う。先生ご自身ではそれを全部やるというのはなかなか難しいと思うが、行政、あるいは住民の参加とか、いかに広げていくか自体の研究開発というのも必要ではないか。

【片田講演者】  こういうシミュレーションを開発しようということで自治体に持ちかけると、まずは引いてしまう。こんなシミュレーションを見せたら、えらいことだと。行政どうしてくれるんだという住民からの要望ばかりになって、我々だけでこたえられないというようなことで、このシミュレーションをつくることそのものに対しての躊躇が生じる。まず最初にやらなければいけない仕事は、行政の説得である。しかし、事実としてこういう状況にあるというところから始まって、住民とのやりとりは任せておけ僕が責任とってちゃんとやるからと責任の所在をこちらに置きながら、恐る恐る行政が入ってくると、意外に効果があって、なおかつ住民の行政依存意識というのが断ち切れていくという中で、これは行政のほうもできるぞという思いを強くして徐々に回り出していく、それを隣の町が見て発展していくというような、こういう拡大が見られている。どう広げるかということの研究は必要だろうと思う。

【大野委員】  システム的には末端にユーザーが見える部分があって、その後ろにバックエンドエンジンがいて、その後ろにそのエンジンが使うGISデータとかがある。つまり、地域が変われば、エンジンとユーザーインターフェースは変わらないかもしれないが、地域の情報に応じてデータを変える、ここはどのぐらいの手間がかかるのか。例えば、新しい町があってそこに適用することが決まりました、行政も協力的です、いろいろな情報をもとに後ろのデータを用意しないといけませんという作業が始まるときに、どのぐらいの人がどのぐらいかかるものなのか。

【片田講演者】  これは、専門に3人ぐらいに開発担当させているが、大体1カ月ぐらいでつくってくれる。メインの担当1人とサブの担当が1人入って、データ整備で外注に出したりするが、2人ぐらいで大体1カ月というイメージである。

【大野委員】  それは、例えば1,000の町でやりましょうということになると、単純に1,000倍になる作業なのか。それとも、どこかで縮約できるようなものなのか。

【片田講演者】  単純には1,000倍にはならないと思う。というのは、例えばシミュレーションの精度の問題として、津波のシミュレーションだと、50メートルメッシュで粗くやってしまう。ところが、人間の行動と整合あるレゾリューションでやらないといけないものだから、その分、津波の計算をやり直すなどという操作が結構大変になる。つまり、住民が見るということが大事なものだから、波が追ってくるのと人間が動くのが同期がとれるような形のシミュレーションで、そういうところにお金がかかってくる。そうなってくると、津波のシミュレーションみたいなものをある地域をまとめてデータをとるところをどんとやっていただければ、単純に1,000の町をやるから1,000倍になるというものではないと思う。

【大野委員】  こういうふうにめったに起きないことで、人々はそれをやったって特にお金もうけにならないと思っていたが、少し立ち上がってきた分野に情報セキュリティの分野があると思う。コンピュータなんて、使っていたって別にいいじゃん、怖くないよと思っていたのが、ウイルスとか、ワームとか、アタックとかがいろいろあって、企業ではそれで甚大な被害が起きるというので、少しずつ人をつくったりとか、技術的な対応をするとか、制度的な対応をするとかしてきている。いろいろな人たちが例えば学校をつくったり、学科をつくったり、世界的な取り組みであったりとかいうのは行われていて、でも、その一方で企業はそれに幾ら投資をしてもお金はもうからない。もしかすると情報セキュリティの側も、今回のような取り組みを見ると、自分たちのアクションについて新鮮な刺激を受けるかもしれないし、情報セキュリティの専門家たちがやったことがもしかすると参考になるかも知れない。

【片田講演者】  昨年、秋葉原で大きなセキュリティ関係の会議があって、セキュリティの方々に人はなぜ危機に備えないのかという津波の話をした。日経BPというところが記事にして今でもホームページに載っていると思う。

 

2)取りまとめ案の検討

 西田室長が、資料2「安全・安心に資する科学技術の推進について(中間まとめ案)」について説明した。

【堀井委員】  私は、人材の育成というのはかなり重要だと思っている。基本的な考え方の中では、「安全・安心を軸とした分野横断的取組のマネジメントができる人材の育成」ということが書いてあるが、推進方策の中で、その人材の育成というのがどこでカバーされているのかというと、(3)の共通基盤の強化というところの頭書きのところに「人材育成や」という言葉が一応挙がっているが、どういうふうに人材を育てるのかというところはあまり具体的に書き込まれていない。その(3)の中の1)の分野横断的な取り組みのための中核となる機関の確立とネットワーク構築ということだが、機関をつくるときに、その機関が何を担うのかということの中に人材養成、教育というのを位置づけたらどうか。社会のいろいろなセクターの中で安全・安心にかかわる専門家というか担当者というのはたくさんいると思うが、なかなか、安全・安心について知識をふやすとか、ほかの分野でどうやっているかとか、分野横断的な物の考え方とか、あるいは基本的な考え方のところにある分野横断的な取り組みのマネジメントというようなことを実務の中で学ぶという仕組みはないのではないか。そういうものを提供する、社会人教育というようなことがあってもいいかと。そこで分野横断的なカリキュラムを提供して、いろいろな分野の知識を集積していくというようなことができるようになるのではないか。

 前のバージョンでは「人文・社会科学の知見を」というような文言があったが、今回のバージョンでは見受けない。人文・社会科学は片田先生のお話にもあったように極めて重要な部分で、どうやってそれを取り込んでいくのかということは考えていかなければいけないと思う。一番現実的な方法としては、分野横断的な取り組みのための中核となる機関で教育プログラムをつくる中で、人文・社会科学の知見を安全・安心に生かしていく、カリキュラムの中に生かしていくというのは、一つの方向ではないか。

 それと、片田先生のお話の後半のところにつながる話だと思うが、社会の仕組みとして行政の中に安全・安心科学技術として開発された技術が組み込まれていくためは、安全・安心にかかわる政策提言、施策の立案を安全・安心という視点で分野横断的にできるようになってないといけない。実施の行政の部分が縦割りになっていると、分野横断的な安全・安心科学技術をせっかく開発しても、それを各行政の末端のところで生かすということが難しい。だから、やはり分野横断的に安全・安心にかかわる政策研究みたいなものをどこかでやらなければいけない。分野横断的な取り組みのための中核となる機関ができて、そこが教育をメインとして、安全・安心に関する政策研究みたいなことも視野の中に含めればいいと思う。

【板生主査】  最初の基本的な考え方の中でも分野横断的な取り組みを推進するということが明記されているので、ぜひこれをもう少しブレークダウンしていきたい。今回は中間まとめなので、その次の段階でさらにその辺の話が入ってくるだろう。

【村山委員】  私は研究開発体制から入っていきたい。欠けていると思うのは、企業の役割だと思う。この手のレポートを読んでいると、大体3つに分かれていて、最初は研究開発機関で大学・研究所があって、それを具現化するものとして企業があって、ニーズがあるものとして出口機関があって、その3者の連携が重要ですよという議論である。このレポートは、企業の視点というのが薄い感じがする。特に日本のことを考える場合、やはり企業が非常に重要な技術を持っているので、それをいかに引き上げるか、この前の委員会で議論した両用技術の、民間のいいものをこの分野に引き込むかというのが重要になると思う。

 (持ち込み資料の配付)2例お話したい。最初は空港に置いてある、ペットボトルを検査する機器で、どこが開発したかというと、東京ガス・エンジニアリングという会社である。別にテロ対策をやってきた会社ではない。私が注目するのは販売価格が262万5,000円、200万円台であること。実績で345台が売れているということで、ある意味でマーケットにのったわけである。企業がやったから、こういう形で社会に実装できた。そういう面でもこういうところを取り込むというのは重要。

 もう1つは、ダイキンが鳥インフルエンザのウイルスを除去する技術を開発したという話で、これはもともと空気清浄の技術である。それをやっている間に、これはいろいろなものが取り除けるということで、最終的に、鳥インフルエンザとかも取り除ける技術を開発したということである。「感染の恐れがあるウイルスなどは、社内では取り扱えない。つてを頼りに全国の大学や研究所など協力機関を探した。鳥インフルエンザウイルスでは、ベトナム・ハノイの国立研究所に半年近く掛け合い、共同で実証した」ということで、大学、研究所がかかわらないとこういうのはできない。これはベトナムに行かないで国内でできたら非常に結構な話なので、こういうところを入れ込むような枠組みをぜひともここでつくっていただきたい。

 ビジネススクールで教えていると、こういう事例がたくさんある。ところが、安全・安心をやる人というのは、企業内では端に追いやられているような状態である。それを何とかうまくこういうところに取り込んで実現すれば、相当いろいろなものが出てくると思う。だから、この研究開発体制ではぜひそういうところでも企業を入れ込んで、実装できるようなところまでやっていただきたい。

 もう1つ重要なのは、堀井先生が言われた3つ、大学・研究所、企業、出口機関、その橋渡しができる人材、これがやっぱりかぎとなるというふうに、いろいろな文献に書かれている。DARPA(註:Defense Advanced Research Projects Agencyの研究開発投資)もそう。DARPAが成功したのは、そういう人がいたからである。それを、例えばトランスファー・ファシリテーターとか、そういう言い方をしている。技術移転をファシリテートできる人。その人材がほんとうにかぎを握ると言っているので、堀井先生が言われた、そういう人材を育成するというのは、この体制を回すためのかぎとなるということだと思う。

【板生主査】  民間と大学、産官学で一体になって取り組んでいくという、姿勢をどうつくっていくか、仕組みをどうつくるか。既に文部科学省の安全・安心プロジェクトにおける公募に、応募されている中には民間の方もいらっしゃる。そういう活動をもっと活発にしていく必要がある。

【村山委員】  明確に打ち出して、というのは、今、まだそうした情報が回っていないようなところがある。だから、もう少し広報活動をやっていただいて、文部科学省としては企業も取り組むんですよということを言っていただければ、非常にそういうインセンティブはあると思う。

【西田室長】  我々もテロ対策関係の研究開発で民間の方々とお話をしている。彼らも、技術は持っているけれども、ニーズがどこにあるかはっきりしない、あるいは市場が狭いということがあって、なかなか参入するハードルが高いという意見を持っている。今回の報告書の中で行政ニーズの明確化を図るというのは、国としてこういったものが欲しいんだというのをきちんと明確化することで、それを見て、これならうちの技術も使えるぞという形で民間企業が参入してくるというようなことも期待していて、そういう形での、国、大学、民間、それから出口機関という、3者のつなぎ、連携というのを今後つくっていきたいと考えている。

【奈良委員】  堀井先生のご指摘のとおり、教育の部分について書きっぷりが弱いということが1点。

 もう1点は、(2)、1)の生活者のニーズを出発点とする取り組みのところだが、ニーズ抽出のフェーズについてはかなり書いているが、実際に安全・安心の技術なり政策を生活者が自分たちの生活システムに取り込んでくれるかということもまた多様なわけである。だから、その部分をちゃんと書いた上で、国民の理解、納得を踏まえた安心を実現するために、生活者が自分たちの生活システムの中に安全・安心技術や政策を取り込むフェーズにおいても、十分に話し合いをするとか、リスクコミュニケーションを図るとか、そういったことを書いていただけるといいかと思う。

【板生主査】  ニーズを抽出するところをどういうふうにやるかということが非常に大きな問題になるということ以上にですね。

【奈良委員】  ニーズ抽出だけではなくて、実際にそこででき上がった技術なり政策なりを生活者が自分たちの生活に取り込んでくれるかというのは、また別問題である。欲しいというものと実際に自分たちが入れるということは違うので、それをやってくれるように、それこそまさに今日の片田先生のお話にあったように、1軒1軒の生活状況などを見ながらやれるかどうかという部分が大事なので、その点についても目配りをしていただきたいということ。

【村山委員】  人材育成について、文部科学省からお金を取ってきて、例えば5年間やる。5年間はすごく盛り上がって、お金もあっていいが、その後の継続性という問題になる。安全・安心というのはかなり長い間続くので、その5年間だけではなくて、より長く継続するような拠点、10年たっても、安全・安心の拠点はここだと、そういうことを目指したところができれば、物事が動くと思う。そういう継続性というのも人材育成の面では重要かと思う。

【岡谷戦略官】  横断的な形での安全・安心分野の人材育成を、平成15年から5年間かけたプロジェクトを、東京大学で、振興人材育成でやったが、横断的にやったがゆえに拡散してしまい、人材が育たず、失敗したケースがある。あまり手広くやって一度失敗している。そこのところをもう一度分析し直して、どういう形で人材養成をしていけばいいのかというのを再構築していく必要があるのではないかと思う。

【土井委員】  拠点の話だが、安全・安心に限らず、いろいろなものが実証実験ということでお金がある間だけできて、お金が終わるとその設備も全部撤去しなければいけないという形で、国内でやるとすると、拠点となる地方自治体がその後もきちんと支援、継続するというような意思がないと、難しいと思う。

 産業的に難しいのは、脅威を感じている間は企業は安全・安心に投資するが、経営状況、世の中の景気が悪くなってくると、一番最初に削られるのがそこへの投資である。今までセキュリティ関係ということで監視カメラの市場が随分出ていたが、今年になって随分冷え込んできていて、企業で見直している。なので、日本の国の中だけで考えていくとなかなか難しい部分もあるので、どこまで可能かどうかわからないが、例えばODAとうまくやって、アジアにもそういう拠点をつくるようなやり方があるのではないか。日本の国内の拠点というのも大事だと思うが、グローバルに考えていくところで、最終的には標準化などが絡んでくるので、そういうときに、日本だけでやるよりは、アジアも一緒になってできるように、拠点をアジアにつくっていく考え方も必要なのではないか。先ほどから指摘があるように、ロングタームの話である。ロングタームの話だからこそ、グローバルな拠点をつくっていく、特にアジアにつくっていくというのが大事なのではないのか。

【札野委員】  これは中間まとめなので、今まで先生方が議論なさったことも含めて、安全・安心に資する科学技術というものの位置づけを、学協会も取り込んだ形で、学協会の中に安全・安心に資する科学技術というのが非常に重要な課題だということを意識させる施策みたいなものが必要なのではないか。ナショナル・アカデミー・オブ・エンジニアリングというアメリカの組織があるが、ここが、21世紀のエンジニアが取り組むべき課題、グランド・チャレンジズ・フォー・エンジニアリングということで14の課題を挙げている。これは、分野横断的に、とにかくエンジニアである限り、こういう領域に自分がどう貢献できるかというのを考えるべきではないかというのを挙げており、太陽発電を経済的にするというところから始まって、サイバースペースにおけるセキュリティの問題とか、あるいはニュークリアテロをどう防ぐかといったことを14の課題の1つとして掲げて、エンジニアリングの分野を超えてそれをどう解決すべきかというのをみんなで考えましょうというのをナショナル・アカデミーが動かしている。文部科学省や総合科学技術会議が中心となって第4期の科学技術基本計画が出てくるわけだが、そういう行政側の動きだけではなく、学協会、現場のエンジニアの人たち、あるいは研究者の人たちにこれを重要課題であるということを認識させるための施策を今後やっていく必要があるのではないか。

【板生主査】  ここの中に文言として書き込まれているものをいかに学協会まで浸透させるか。

【大野委員】  情報交換、あるいは情報通信ネットワークにおける予期せぬ非常事態というのもいろいろなパターンがあるが、そういうのに全然興味がなかった人に、こんな問題があって、こんな対応をしているんだよということの話をしようとするときに、少しずつ本は充実してきている。昔の情報セキュリティというのは、暗号の本だったり、コンピュータウイルスに対する解説書だったりしたが、今では技術面だけではなく、制度、運用を含めて広い面で網羅的に書いた教科書というのが何冊か出始めていて、参考文献として挙げられるようになって、興味のある人はそれを見て、僕が教え切れなかったことを補足できる状況になってきている。安全・安心も同じように、有力な本が何冊かあれば、それを見ることでこういう問題空間があるんだというのがわかって、例えばあそこの大学に受けにいってみようとか、あるいは、遠隔講義にジョインしてみようという感じになると思う。本というのは、ある先生とか、ある研究グループの成果をまとめたアウトプットでもあるので、学生から見たときに、それを受け入れてスタートする環境がそろってきているような気がする。それの安全・安心版ができるといい。そうすると、仮に話が広がっていても、きょうは第何分冊の第何巻の話ねと言えばいいようになる。

【板生主査】  PRや教育的な視点から、いろいろな情報を発信していく必要があるのではないかということ。

【四ノ宮委員】  最先端の技術の解析はもちろん重要だが、最後のステップとしていかにうまく応用していくかという実学的なところへのアプローチというのを、もう少し明確にどこかに組み入れていただければと思う。

【青木委員】  社会実装については地方自治体が主としてかかわるべきだということをどこかに明確に入れていただきたいと思うし、また、科学技術外交と言っているからには、日本が拠点を海外にもつくるというところはすごくいいと思うが、主要な部分は日本が握っておくような仕組みをきちんとつくっておくということも、今後必要かと思う。

【橋本委員】  まだ中間まとめということなので、今までの議論にあった瑣末な情報ももっと盛り込んでおいたほうが、これからの議論のためにはいいのかと思う。具体的な基盤技術に関してはこんな技術も必要だというのは議論の中でいろいろあったし、そういうものは残しておいて、これってどうなんだということを、もうちょっと議論をしていくというような形があってもいいかと思う。

【板生主査】  確かに全般的になっているのでアクセントはまだあまりついてないかもしれない。最終的なまとめまでにはだんだんアクセントをつけて詳細なものを、何回かまたお集まりいただいて、お話をしていく。

 第4期の科学技術基本計画に何らかの形で反映させるような形で、縦割り分野の推進ではなく分野横断的な取り組みを強調するべきであるというお話もあったが、安全・安心科学技術分野の研究、または開発というものは、まさに分野横断的な取り組みを行っているので、これをいかに次の科学技術基本計画や、いろいろ大きな政策の中に組み入れていくか。そのためには、社会システム、社会技術、そういうものまで含めた技術と社会とのインターフェースをどこまで追求していくか、そこをいかにやっていくかということが非常に大事なことになってきていると思う。一方、国家のレベルでの安全・安心というのは、当然ながら非常に大事な、我々が提案すべきことでもあるので、国家基本技術および、社会全般に関するインターフェース的な横断的な技術と、両方に関してまとめていく必要がある。今回の中間取りまとめは全体的なことを書いているので、最終的にはどのような仕組みをつくるべきとか、どのような開発プロジェクトをつくるべきとかさらなる深掘りが必要になる。

【札野委員】  例えば、こういう中間まとめをいろいろな学協会に送って、それぞれの学協会のレスポンスをもらうといったことは可能なのか。2006年に学術会議の「科学者の行動規範について」というのをつくったとき、4月の段階で暫定版をつくって、それを日本のすべての学会、研究所、大学に送ってコメントをいただいて、10月に最終的な行動規範を声明として発表したという経緯がある。それをすることによって、学術会議が当時何を考えてきたかというのをある程度、日本の学協会や研究所にわかってもらえたのではないかと思う。そういうプロセスをとることによって、国、あるいは国際的に見て、いろいろな領域の研究者が取り組むべき課題であるんだということを認識してもらうことができるという気がする。

【板生主査】  大変いい提案だと思う。中間まとめはプレス発表をするのか。

【西田室長】  その予定である。

【板生主査】  プレス発表したものに関して、どういう形で学協会にご意見をいただくか検討をしていくということは、必要だと思う。

 

 本日の意見も踏まえ、事務局で修正案をつくって後ほど委員の先生方にはお諮りして、最終的に取りまとめとしていきたい。その最終取りまとめは、私に一任いただくことでよろしいか。

 今回の中間まとめに関する審議としては、本日が最後になる。

【泉局長】  3月以来、4回にわたってご会合いただき、中間取りまとめとなった。これをさらに反映させていくべき一つの重要な先として、次期科学技術基本計画への反映に向けた文部科学省としての取り組みというのがある。資料3の科学技術基本計画に向けた検討のスケジュール(予定)というところで、6月2日に基本計画特別委員会の第1回会合を行い、これから月に一、二回のペースで12月までに基本計画特別委員会での取りまとめをお願いし、この秋以降本格化する、総合科学技術会議における、科学技術基本計画のご議論に反映させていく。

 安全・安心という分野は、今の第3期、それから第2期でも、科学技術政策の政策目標の第3番目の柱として掲げられているわけで、分野横断的、かつ単に研究開発をしてそれなりの成果を出すということだけでなく、それを社会実装という言葉で言われている普及に向けた取り組みが非常に重要である。もちろん今までも重点4分野、推進4分野ということで進めてきたが、それらをさらにどうやって普及させていくか、この中間報告書でも言及していただくことになったが、社会実装、社会的価値、いわゆるイノベーションに向けてどういうふうにつなげていけるかということが重要だと思う。安全・安心という領域でご議論いただいているわけだが、科学技術の研究開発と社会への実装・普及というものを、もう少しより普遍的な形で科学技術政策、イノベーション政策につなげていくいき方も必要ではないかと感じた。

 ともあれ、先生方のご尽力により、非常に包括的で、かつわかりやすい中間取りまとめになったと認識している。これを、基本計画特別委員会のご議論、あるいは研究コミュニティーへの問題提起というような形でも投げかけながら、基本計画等の具体的な政策に上げていくように引き続き努力したい。

 

3)その他

 西田室長が、今後の予定について、文科省における次期基本計画に向けた検討に対し、安全・安心科学技術委員会の取りまとめを入れ込むべく、7月から9月にかけて重要研究課題等の議論をする予定であることを述べ閉会した。

―― 了 ――

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(科学技術・学術政策局 安全・安心科学技術企画室)

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