安全・安心科学技術委員会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成18年4月27日(木曜日) 15時~17時30分

2.場所

文部科学省 M1会議室(三菱ビルB1階)

3.議題

  1. 安全・安心科学技術 分野別研究開発の推進方策について
  2. その他
     ・ 米国における国土安全保障への取り組み
     ・犯罪・テロに対処するための科学技術

4.出席者

委員

 板生委員、井上委員、大野委員、岸委員、竹内委員、土井委員、中村委員、原委員、札野委員、堀井委員、松尾委員、高杉アソシエイトフェロー(説明者)、下村次長、内丸計画官、岡村安全・安心科学技術企画室長

5.議事要旨

(1)岡村室長から資料1により、今後の予定を説明。

(2)岡村室長より資料2の「1.、2.」を説明後、意見交換が行われた。
 ○委員、△説明者、●事務局

委員
 総合科学技術会議レベルで、安全・安心でまとめ直したものは出ているのか。

事務局
 「分野別推進戦略」がまとめられる過程で、安全PTから各8分野のPTに、安全・安心の重要な方向性が紹介された。その後まとめられた「分野別推進戦略」を、今度は安全PTがさらに全体を俯瞰し、最終報告書を取りまとめる予定である。

委員
 ここでまとめられているのは、総合科学技術会議で議論されていることが前提になるのか。

事務局
 そうである。

(3)岡村室長より資料2の「3.」を説明後、意見交換が行われた。

委員
 各委員会が8つある。特にこの中の「防災分野の研究開発」という委員会は、非常に関係が深い。扱う範囲は、大体決まっているのか。

事務局
 防災分野については、「地震・津波、火山噴火、気象、土砂等の大規模自然災害」をカバーする。

委員
 大規模自然災害のところが、かなりオーバーラップするということか。

事務局
 サイエンティフィックな面での取り組みは、防災の委員会に任せることがかなり多い。しかし社会的な観点、社会の脆弱性という観点の取り組みは、この委員会でさらにしっかりアピールしていくことが必要と考えている。

委員
 文部科学省が果たすべき具体的な期待される役割は、もっとたくさんあるのではないか。例えばリスク情報が社会の財産として提示されていることが大切である。それを俯瞰的に総合的な情報として提示するのは、文部科学省が果たすべき役割だと考える。また、個別具体的な問題への対処だけではなく、それをもう少し一般化した、科学技術をどのように活用して問題を解決していくのか、安全・安心社会を構築していくのかという、方法論の構築も文部科学省にしかできないことではないか。

委員
 消費者として食品の分野に関心は高いが、単なる安全や安心という技術的な問題だけではなくて、心理的な問題が非常に大きい。リスク情報の提供に加えて、たとえば心理学的など人文学的なアプローチも考えられる。

委員
 3年前の懇談会から常に念頭を離れないのは、その後の省庁横断である。決して省庁横断が有効に働いたとは言えない。人材育成は確かに文科省のプロパーな役割だが、新興・再興感染症では国立感染研という厚生労働省の下にある機関が中心。国際協力は、各省庁プロパーあるいはJICA(ジャイカ)で行っている。今後まとめていくに当たっては、方向性をもう一度確認し合って進めたい。
 人文・社会的なファクターは、非常に重要である。社会のコミュニティの問題、初等教育の問題についても記述すべき。

事務局
 省庁横断については、3年前から最近にかけて、府省連携プロジェクトが進みつつある。また、振興調整費も府省横断のものを取り扱うことが多くなってきているので、これらを活用していく。日米の協力については、文部科学省が調整機能を発揮し、各省庁の協力希望テーマを米国とマッチングしながら、「日米安全・安心な社会の構築に資する科学技術に関するワークショップ」を開催している。

委員
 取り上げられた分野が、文部科学省の立場からどのように省庁横断の取り組みがなされているのかがわかる資料が欲しい。特に新興・再興感染症は、厚生労働省とどこでマッチングをやっているのか、整合性を果たしているのか。

委員
 省庁横断については、3年ほど前から科学技術振興調整費などでもさまざまな課題の解決のために、省庁や研究機関が集合したものに特定したプロジェクトを公募している。それもまだまだ一つ一つのケースの場合だけという感じなので、最初からやっていく仕組みになっていない。そこをもう少し面的な広がりを持ってやるための仕組みを考えるのが、今回、一つのポイントになっている。安心に関わる人的ファクターの問題をこの場で議論していくことは、文科省に対する大きな期待になっていると考えている。

(4)岡村室長より資料2の「4.」を説明後、意見交換が行われた。

委員
 少なくとも新興・再興感染症の感染症分野に関しては、情報は隠さない、信頼できるリソースから、すべて情報は受け手の側の責任で流す、それが、風評被害というかパニックを抑えるには一番いい方法だと考えている。情報収集・発信の対象として、民間企業、専門家向けに加え、メディアを入れるべき。リスクコミュニケーションの受け手というのは、国民に直接行くのではなく、メディアを介するため、メディアに対するリスクコミュニケーションが、実は一番大事である。

事務局
 一般向けのところに、メディアを入れる様にしたい。

委員
 新興・再興感染症の分野でリスクコミュニケーションを維持するためにやっていることは、一般国民向けにいろいろな方を集めて公開講演会を行う以外に、例えば週1、2回メディアだけを集めて、内部の話も含めて全てを説明している感染研のグループがある。これは、非常に機能している。ネットワークの構築のところへ、そういう視点を書き入れていただくと、その人たちをエンカレッジ、オーソライズすることができる。

委員
 総合支援機能は、言葉は違うが、2年前の懇談会の報告書をまとめたときに、これに近いものを提案した。新たな事態が起きたときに適切な手が打てる、あるいは少なくともそれに必要な情報が出せる機能が一つある。もう一つは、もう少し長期的に社会の脆弱性を正確に分析しておき、どのようにすれば、それが強くなるのかということを、常時、調査・分析しておくことが非常に重要である。

委員
 「未知なる事態」は、だれもわかり得ない未知なるものである場合と、そこの現場の人はわからないが、ほかの専門家なら知っているという場合があるので、きちんと表現しなければいけない。

委員
 ネットワークセキュリティは、波及の仕方などは感染症の大規模発生と似ているが、速度に関しては違う。最近は、脆弱性が公開されると、ほぼその日のうちにアタックが来るという、ゼロデイアタック(zero-day attack)という言葉もある。だからこそ、そういう情報を短期間にシェアして、みんなで対応を考えるという部分が非常に重要になっていく。実際に、バッファオーバーフローのようなアタックを解析する(Computer Forensicsという言い方もするが)ことは、大変難しい。これができる人は、日本でも世界的にもほとんどいない。 こうした科学的な捜査の専門家を育てるのは大変に時間がかかり、また育てる良い方法もない。それを大学レベルから育てていく体制がこれから大変に重要である。

(5)岡村室長より資料2の「5.(1)」を説明後、意見交換が行われた。

委員
 安全・安心のための科学技術に対する評価も大切な観点である。安全・安心というのは、一般の人が評価するのは大変難しい。安全・安心な環境の中にいると、それが当たり前になってしまい、いかに自分たちが高い技術によって守られているのかということを認識するのは難しい。いい意味での広報、自分たちのでき上がった技術の成果の評価と、それを認知してもらうための方策も、こういう研究開発の仕組みを構築する段階から取り入れておいたほうがいいと考える。

委員
 社会から文部科学省を見たときに一番望まれる、児童や小学校の安全の議論は、ここでは行わないのか。

事務局
 前回の審議において高齢者も含んだ社会的弱者に対する安全というご意見をいただいたので、少し広く13ページに書いている。子どもの安全ということ、特に学校及び登下校中の子どもの安全という観点で、分野別推進戦略にも入れている。各種犯罪の中でも、そこに集中したい姿勢を出したい。

委員
 この問題を考えるときに、一つ必要な視点がある。つまり、危機的なオペレーションに入ったときと通常のときでは、人々の要求も違うし、して欲しいことも変わる可能性がある。

委員
 研究開発に求められる企画・運営等のあり方ということで考えると、これがほかの分野と少し違うと思うのは、この領域の科学技術のレベルを上げればいいという話ではない。個々のもので、効果があるものにしなければいけない。どちらかというと、プロジェクト的なものが幾つか走るという感じになるのではないか。従来の一般的な応募型だけではできない可能性もある。コーディネートをして、組織化をしなければいけない。その辺のやり方を、少し工夫する必要がある。

委員
 いざ何かが起きたときに、どういったことが起きるんだというものを見て、このときにはこういう被害だとか、何かが起きるということの、きちっとした地道なデータベースが、基本的には日本にはない。今、ここで新しく生み出される分野となるかもしれないと思うのであれば、データベースとか、分析に役立つのではないかというような積み上げ的なところも、忘れてはいけないと考える。

(6)岡村室長より資料2の「5.(2)1~5」を説明後、意見交換が行われた。

委員
 それぞれの担当の、委員の先生を決めさせていただいている。ぜひご協力を賜りたい。

委員
 食品については、文部科学省の中でも幾つか取り組みがあり、リスクコミュニケーションだと内閣府が行っているし、農水省と厚生労働省もかかわっている。そういったところの資料については、事務局で集めていただきたい。

(7)高杉アソシエイトフェローにより資料3、岸委員より資料4の説明後、意見交換が行われた。

委員
 目標設定は、どのようにやっているのか。100パーセントの安全を望むと、多分、いつまでも安心な社会は生まれてこない。現実の問題として、危険があるということを理解してもらうことも一つの重要な活動である。その中でどれだけの社会資本を、どこまで使うのか。それによって、国民からの安心を達成することができる。

説明者  アメリカは、とにかくリスクの高いところをまずつぶしていくという発想でやっている。どこまでリスクが下がるかというのは、そこでできる科学技術なり、科学技術でないものは、とにかく人を配置するという考え方である。科学技術をつくった上で、使用する側は民間や州政府ということもある。その人たちに、物を買っていただかなければいけない。その辺はリスク分析で、政府としての考え方としてここは一番重要です、あなた方は州政府としてこの辺に投資してくださいというような促し方である。どこがゴールかということではなく、減らすという観点のほうがふさわしいかもしれない。最後にもう一つ、ハリケーン・カトリーナの影響があり、今後は、自然災害等も含めて包括的に、プロジェクトのやり方を変えていく方向で検討しているという話である。

委員
 実際は、我々が、Homeland SecurityのノウハウやNIHの奥のノウハウやCDCの奥のデータベースなどには、全くアクセスできない。日本がやる以上は、日本は独自で徹底的にやる必要がある。

委員
 アメリカの事例は、まさに国土安全保障への取り組みの話であって、安全・安心な科学技術の話ではない。これはあくまで参考ということで、日本でどうするかを真剣に考えないといけない。

事務局
 まさに、日本の政策を考える時の参考とご理解いただきたい。NSF、NASをかなり意識して入れているのは、Granting Agencyの役割である。こういう提言もアカデミーがまとめられるという点については、今回我々が考える際に、文部科学省の立場としても非常に役立つものであろうと考えた。

委員
 米国のまねをしようとは考えていない。日本は日本で考える、そのための一つの参考資料という位置づけである。

(8)岡村室長より資料2「5.(2)6、7」の説明後、意見交換が行われた。

委員
 6、7の分野がほかの委員会では行っていないので、ここはある程度深く掘っていかなければいけないということが、この委員会での一つの方向づけだと考える。

委員
 これは児童に限るのか、児童・高齢者とするのか、あるいはもう少し範囲を広げるのかという議論がある。児童と高齢者を特にやったらどうか考えている。

(9)岡村室長より資料2「5.(2)8 9、(3)」の説明後、意見交換が行われた。

委員
 安全と安心が非常に強調される社会になって、一方で管理社会になってきているような感じもある。管理社会という部分も、少し研究対象に入れてはどうかと考える。

事務局
 相互依存性解析は、堀井先生、札野先生、御厨先生を中心にまとめていただきたく、お願いする。

(10)岡村室長より資料2「6.」について説明後、意見交換が行われた。

委員
 基本的には初等教育と中等教育が重要である。難しい部分ではあるが、キャパシティビルディングが必要なのは初等中等教育である。

委員
 大学・公的研究機関に期待される役割は重要な部分である。また大学院レベルで分野横断的な教育は極めて重要である。そのときに、安全・安心はそういう教育の最も必要な分野で、そこに社会人も加わった教育が必要である。

委員
 それに加えて、私たちも例えば科学技術倫理という新しい分野で仕事をしようとすると、その成果をどう評価するか、周りの人にどう評価してもらうかという問題がある。日本の国の中における分野横断的、総合的な仕事に対する評価システムということも、考える必要がある。

(11)岡村室長より資料2「7.,8.,9.」について説明後、意見交換が行われた。

委員
 学会システムも極めて重要である。いろいろ細かい学会に分かれて、分散している。そういうものを統括するようなコミュニティが必要である。

委員
 一つのモデルとしては、ナノテクノロジーに関しての社会的なインプリケーションがある。これは、英国政府がRoyal Academy of Scienceに諮問をして、Royal AcademiesとEngineeringが一緒になって、それに対して回答をして、また英国政府が対応をとるという、非常にうまくいったシステムではないか。そういう学界側にキャパシティを持たせるような施策も必要と考える。

事務局
 安全レベルは、科学技術の知見に基づくもので決められる。しかし、安心レベルは、伝統・文化、各国の慣習によって社会が決める。こういうものが、ヨーロッパで議論されている。科学技術の成果だけでは決まらない。そのかわり、Stakeholder involvement in decision makingというのがはやっており、そういう形でほかの国はやっている。日本は、安心という言葉を出さないといけないというユニークな分野ではないかと考えている。

-了-

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課安全・安心科学技術企画室

(科学技術・学術政策局政策課安全・安心科学技術企画室)