第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第9回)議事録

1.日時

令和3年2月12日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催

3.議題

  1. 令和3年度予算案および令和2年度補正予算について
  2. マテリアル革新力強化戦略について
  3. その他

4.議事録

【栗原主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の第9回を開催いたします。本日は、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。

新型コロナウイルス感染症対策の観点から、前回に引き続きオンラインでの開催といたします。

早速ですが、事務局より本日の会議の流れの説明をお願いいたします。

【小川補佐】 本日も先生方にはお時間いただきありがとうございます。

本日は納富委員が御欠席です。

また、当省からは黒澤参事官が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。

【黒澤参事官】 お願いいたします。

【小川補佐】 まず資料です。先日お送りしているとおり、議事次第「第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第9回)」と、配付資料としまして、資料1「令和3年度予算案及び令和2年度補正予算について」、資料2、「マテリアル革新力強化戦略(中間論点整理)(概要)」、参考資料1として、「マテリアル革新力強化戦略(中間論点整理)」、参考資料2としまして、「科学技術・イノベーション基本計画について(答申素案)」となってございます。資料に不備等ございましたら、事務局までお知らせください。

本日は、議題1としまして令和3年度予算案及び令和2年度補正予算について、また、議題2としましてマテリアル革新力強化戦略について、事務局より御説明の後、御議論いただければと考えてございます。

事務局からは、以上でございます。

【栗原主査】 ありがとうございました。

それでは、議題1の令和3年度予算案及び令和2年度補正予算についてに入ります。まず事務局より資料の御説明をお願いいたします。

【小川補佐】 まず資料1です。ナノテクノロジー・材料科学分野における令和3年度予算案及び令和2年度補正予算についてです。来年度予算案、また今年度の補正予算につきましては新たな取組が幾つかございますので、その部分を中心に御紹介させていただきたいと思います。

まず金額ですけれども、「マテリアルDXプラットフォーム構想実現のための取組」のために、令和3年度予算案は、令和2年度予算額に比べまして約10億円程度増額ということになりました。また補正予算としまして、設備を中心に70億円程度をお認めいただいております。

新たな取組としましては、後ほど細かく御説明させていただきますが、データ中核拠点の形成ということで、NIMSの担うデータ中核拠点をさらに本格的に進めていくための経費。また、「マテリアル先端リサーチインフラ(データ創出)」としまして、来年度でナノテクノロジープラットフォーム事業が10年間の期間を終えて終了する予定ですが、それにつながる事業としまして、新規でこうした取組を進めているところです。

データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトです。こちらも新たにフィージビリティスタディとして、新しい項目が追加されています。また、マテリアル革新力強化に向けた基礎基盤研究の推進ということで、こちらはデータ駆動研究を推進するというNIMSの取組に、補正予算を中心に、新規で項目が立っているところです。

2ページ目です。マテリアルDXプラットフォーム構想実現のための取組、こちらは夏の段階で先生方に事前評価いただいた中身が中心です。背景・課題につきましては、改めてということになりますけれども、マテリアル研究開発ではデータを活用した研究開発の効率化・高速化・高度化が求められているということ、また、良質なマテリアルデータを生み出す世界最高水準の共用施設・設備群、また人材が存在するということで、この強みを最大限に生かして、データを活用していく仕組みの整備が必要なのではないか。このため、マテリアル研究開発のための我が国全体としてのプラットフォームを整備していくということで、統合イノベーション戦略2020、また成長戦略フォローアップの記載も受けまして、こうした取組を進めていくということです。

繰り返しになりますが、データ中核拠点の形成ということで、これまでNIMSにおいて進めてきた材料収集の高度化、また、データ公開基盤の開発の成果を基に、日本全国のマテリアルデータを集約するためのデータ中核拠点を構築するということ。また、これまでナノテクノロジープラットフォーム事業を実施してまいりまして、こうした共用の取組によって出てくる非常に高品質なデータをしっかり蓄積していく、また、データ中核拠点とつなぐことで、全国で共有していく仕組みをつくっていくという「データ創出基盤の整備・高度化」。さらに、右側ですけれども、重要技術領域においてデータ創出・活用と理論・計算・実験が融合するデータ駆動型の研究開発プロジェクトを実施していくということで、特に来年度、元素戦略プロジェクトが10年間の期間を終えることも踏まえ、再来年度から新たに本格実施していく「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト」につきましては、来年度は、どのような課題をしっかりやっていくのかというところを検討していくためにフィージビリティスタディを実施するということで、予算をお認めいただいているところです。

ここから個別の事業に移ります。データ中核拠点の形成、3ページ目です。こちらはNIMSが開発するシステムでして、大学・公的機関の先端共用設備から出てくるデータを全国で共有していくためのデータプラットフォームを作成していくということになります。この進め方ですけれども、来年度につきましては全体の概念設計を本格的に開始し、2023年に試験運用を行い、本格実施が2025年ということでシステムを構築していくことになります。その上で、システムの中の機能ですけれども、材料データの登録を行うための認証機能、各研究者の先生方のIDなどを管理していくということ、またデータ検索機能と、行く行くはAI解析機能までこのシステムにメニューとして載せていければと計画しているものです。

4ページ目です。マテリアル先端リサーチインフラ(データ創出)事業ということで、現在、ナノテクノロジープラットフォーム事業が来年度で終了しますが、ナノテクノロジープラットフォーム事業で創出されるデータの部分につきまして、データ活用人材の配置を行うということで、令和3年度予算案では3億円をお認めいただいております。また、こうした取組を行う機関の皆様に対して、設備整備のために20億円をお認めいただいたところです。

事業内容ですけれども、今のナノテクノロジープラットフォームを発展させまして、6ハブ、19スポーク程度の新規採択ということで公募を現在実施しているところでございまして、今、審査の最終段階にあるところです。事前評価で先生の皆様に御確認いただきましたとおり、ハブ&スポーク体制ということで、重要技術領域ごとに中心となるハブ機関を設置いたしまして、そこにつながるスポーク機関を選定していくということを考えてございます。令和4年度になりますとナノテクノロジープラットフォーム事業が終了してしまうことから、令和3年度の予算案が3億円ですけれども、そこをナノテクノロジープラットフォームからつなぐということ、さらに増やしていければいいなということで、令和4年度につきましても予算当局と今年の夏から相談していくことになろうかと考えてございます。

5ページ目です。当該事業の実施体制についてです。プログラム運営委員会を置きまして、プログラムディレクター、専門委員、プログラムオフィサーの先生方と、文科省で事業全体の決定を行っていくということ。また、運営機構として、センターハブが事務局を担う、事業側のかじ取りをしていく機構を置き、センターハブ、ハブ、スポークが一体となって運営できる体制を今後取っていくということを考えております。

6ページ目です。こちらは少し触れさせていただきましたが、公募は締め切っておりまして、現在審査の最終局面になっているところです。近日中に審査結果につきましては公表できるように、現在様々な手続を踏んでおりますので、またいずれかのタイミングで先生方にも御報告できるかと思います。

以上がナノテクノロジープラットフォーム事業の後継といいますか、続きの事業でございます。

次に、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトの立ち上げに向けた検討課題ということで、最初に御説明さしあげたパワーポイントの三角形のうち、右側の事業についてです。元素戦略プロジェクトにおきましては、これまで9年間、来年度で10年目になりますけれども、新たな物質・材料基盤技術を開く戦略としまして、材料創製、電子論、解析評価、3グループ間のシナジー効果を得る、また大規模先端研究設備群のフル活用と、こうした取組を行ってきました。こちらをさらに発展させていくということもございますので、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトにつきましては、来年度からの10年間の事業計画を考えておりますが、来年度につきましては、まず10年後を見据えて重点的に取り組むべき材料領域を選定していくということ、マル1です。また、マル2、マル3とございますが、マル4として、データサイエンス的手法も取り入れることで研究開発の効率化が期待されるテーマ設定を検討課題とし、事業コンセプトとして、材料創製、計測、理論計算にデータサイエンスが有機的に連携することでマテリアル革新力を強化していくという事業を今後進めていくということを考えてございます。

8ページ目です。今後コミュニティの皆様と御議論させていただきつつ進めていく予定ですが、重点的に取り組む技術課題例としまして、来年度は公募にて、課題数4程度を見込んでフィージビリティスタディを実施していきたいと考えてございます。その際、重要技術領域の8領域を対象としてマテリアル課題をブレークダウンし、データサイエンスとの親和性を考慮して研究開発テーマを具体化していくということをワークショップ形式で実施していくことを考えてございます。

最後になりますけれども、本事業につきまして今後公募を進めていく予定ですが、フィージビリティスタディ期間においてどのような課題を検討していくかというところを、今事務局のほうで考えている案でございます。社会ニーズが高く、革新的な成果が期待され、またデジタルトランスフォーメーションによるインパクトの高い材料課題を様々なコミュニティの方々と連携して検討していく、また元素戦略で、計算、放射光、中性子の協議会ともシンポジウムなどの形で連携してきましたので、こうしたコミュニティの方々とも連携を取りながら、さらに今回、データ中核拠点、データ創出基盤と、NIMSを中心としたデータ創出の活用という論点もございますので、こうした活動も取り入れながらフィージビリティスタディを皆様と議論していきたいと考えているところです。

私のほうからは以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。新規の事業が幾つも開始されるということで、事務局の御尽力にお礼申し上げます。ありがとうございます。

それでは、今の御説明に対しまして、御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。

馬場先生。

【馬場委員】 名古屋大学の馬場です。参事官はじめ事務局の方々には、予算獲得、それから補正予算も含めて、非常にマテリアルDXプラットフォームの展開に向けて重要な施策を確立していただきましてありがとうございます。まずお礼申し上げます。

9ページ目のデータ創出活用型プロジェクトFSの今後の方向性について、2つだけコメントさせてください。

1つは、もしかしたらもう検討されているのかもしれませんが、マテリアルDXプラットフォームということで、AIの活用が非常に重要だと思うのですが、実際にマテリアルとかデバイス開発でAIを活用する上で、最近いろいろなところで、人工知能で取り組まれているXAIと呼ばれている、日本語だと「説明可能なAI」とか、「説明できるAI」と呼ぶそうですが、この観点もぜひ検討の中で入れていただければと思います。つまりAIは、特にディープラーニングとなりますと完全なブラックボックスになっていて、材料開発でAIが出した答えが例えば間違っているときに、なぜ間違えたのか全然分からないんですね。我々もデバイス開発でAIを使っていますけれども、センシングデバイスの話ですが、そのときも、なぜそのデバイスがいろいろなものをセンシングしたときに間違えた答えを出すか全然分からなくて、この「説明可能なAI」ができると、AIの情報に基づいたマテリアル開発やデバイス開発へのフィードバックが、非常に大きなマテリアル開発の迅速化とか、そういうところにつながると思いますので、ぜひこの観点を御検討いただければと思います。

2つ目は、理論計算と計測評価の観点は元素戦略で非常にすばらしい成果が上がっていると思うのですが、両者ともに非常にミクロな、量子的なところまで計測もできるし理論計算もできるようになってきていて、さらにもっと実際のマテリアルの状況を、その場で使っているところに近い、例えばオペランド計測とか、あるいは理論計算ですと祖視化のようなところも発展してきていると思うのですが、実際にその量子論的な計算とか計測が、実際のマテリアルが使われる場で行われている計算や計測とどういうふうに結びつけて、それで実際のマテリアル開発につないでいくかというところが、我々もいつも苦慮しているところで、そういうところもこういうプロジェクトの中でうまく展開できると非常にありがたいなというふうに考えています。

それから、細かいことですが、大型研究施設の活用の中に「京」が入っていますけれども、「京」はもう多分あまり使われていないのではないかと思うのと、もう一つは量子コンピュータの活用も、直近ではなかなか難しいのだと思いますが、将来的にはぜひ御検討いただければと思います。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。今の意見について何か事務局のほうからありますでしょうか。

【小川補佐】 事務局からです。今、馬場先生からお話しいただいたような点も含めて、来年度のフィージビリティスタディにおきましては幅広くいろいろな方々の御意見、方法論みたいなところも含めてお伺いしつつ、再来年度の本格実施につなげていきたいと思いますので、来年度しっかり検討していきたいと思います。

【栗原主査】 ありがとうございました。説明可能(ラショナル)なAIはやっぱり重要だと私も思っています。

常行先生、次いかがでしょうか。

【常行委員】 常行です。ありがとうございます。大変重要な課題がたくさん取り上げられていて、今後の活動を大変期待して、見守りたいと思いますが、私も9ページについて質問がございます。

9ページ、データ創出活用型プロジェクトで、下の図のほうに緑の破線で横串を刺す形で計算とか放射光、中性子というのが入っています。この横串の意味なのですが、先ほどの御説明で言いますと、これは研究会等を通してということだったと思いますので、基本的には予算を使わずに従来の活動と連携するという、そういうお考えでしょうか。個人的に意見を申し上げますと、こういうところもそれぞれの拠点で開発するものが、実は横の違う拠点の間でも役立つものがたくさんあるので、共通課題ということで多少の予算をつけるほうが効率的かというふうに感じております。ちょっとお考えを伺いたいと思います。

【小川補佐】 それでは、事務局のほうからお答えさせていただきます。こちらの体制図ですけれども、来年度、令和3年度のフィージビリティスタディの体制図です。フィージビリティスタディ自体は具体的な研究開発予算というものではなく、ワークショップ開催のためのお金として、額としては小さいのですが、4,000万円程度を今認めていただいておりまして、常行先生から今お話しいただいた、実際研究開発のタイミングで横串で見ていくような共通課題、ここにお金をどうしていくかというのはまだ、令和4年度以降の話になりますので、予算当局とも具体的な話はできておりません。ただ、おっしゃるような問題というか課題は非常に重要なテーマになると思いますので、その部分につきまして、先生からいただいた意見ですとか、また実際、戦略目標の中でもそういった取組をしようという話を聞いていますので、その辺の話も踏まえながら令和4年度の要求につなげていきたいと思います。

【栗原主査】 さらに今の点ですが、出来上がってきた方法論に関しては、この拠点の外の人たちも活用できるものも多いと思いますので、最初からではないかもしれませんけど、どういうふうに外の人にも使ってもらえるかということも最初のうちから少しずつ考えておいたほうが進めやすいのではないかと思います。

【常行委員】 栗原先生のおっしゃるとおりだと思います。

【栗原主査】 それでは、常行先生、よろしいですか。

【常行委員】 ありがとうございます。私は結構です。

【栗原主査】 では次、中山委員、お願いします。

【中山委員】 ありがとうございます。これだけ積極的に予算の措置がされて、ナノ材関係の皆様の御苦労はすごかったなと本当に思います。お疲れさまであると同時に、今後もよろしくお願いします。

意見が1つと、質問が1つございます。まず意見ですが、今の常行先生のお話にも関連することですが、新規のFSについてです。気をつけなければいけないのは施策の求心力です。採択されたところに閉じない、要はタコつぼに陥らないようにいかにやっていくかということが大事かと思います。元素戦略拠点型事業のPOをこれまでやってきて、1つ反省があるとすれば、拠点を採択した後、その拠点が固定されてしまって、その拠点の事業になってしまったこと。そうすると、採択されなかった人や周囲の人は、もう自分は関係ないよとなってしまいます。もちろん各拠点では良い仕事がなされてはいるのですが、さらに外部からより良いものを取り入れるようなことがあまり発生しませんでした。逆に、外からより良いものを採り入れていれば、もっと高みに上れた可能性もあるかなと思います。

今後新しい施策をやるときに、採択してしまったら、もうそこがしっかりとフィックスして、言い方は悪いですがタコツボに陥るようなことにならないようにしなければなりません。場合によっては途中で新たなものを採択するなども視野に入れるべきと思います。新たなものが採択されるのであれば、この施策自体が求心力を持つことになるでしょう。また、評価でよくないなというものがあれば、大胆に交代してもらうとか、緊張感を負わせる努力も必要と思います。さらに、採択された拠点も、そこがよい人をさらに呼び込むようなことも大事です。先ほどご説明のリサーチインフラのようなところでしっかり人を呼び込んで一緒にやるのもそうなのですが、施策自体にも、採択後の拠点にも、求心力を持続させる仕掛けが何より大切なのだと考えます。

よい仕事やよい人を呼び込む――呼び込むというのは、その人たちが予算を使えるとか、雇用されるとか、立場が与えられるとか、そういうことかと思うのですが――そういう新たな血が常に入ってくるような運営がなされると、よりよくなるのではないかなと思います。これから設計だと思うのですが、これまでたくさんPOとかをやってきて経験から、そういうところを気にしているというのが意見として1点目です。

もう一つがリサーチインフラのところです。評価が非常に良かった施策であるナノプラが、新しい施策に生まれ変わってさらに花を咲かせていけるということは非常に良いことだと思います。この中で、私が前からやったほうがいいなと思っていることで、何度か発言もしているのですが、新たな計測機器をここで開発して、それをここで使っていくようなことができれば素晴らしいと思います。日本は調達というのがなかなか難しいです。施策で開発しても、それが売れるかどうか分からないから企業が途中で離れてしてしまうみたいなことがしょっちゅう起こっています。ここで開発したものがここで使われて、さらに普及していくということであれば、企業も本気になるでしょう。また、諸外国と闘える最先端の成果が市販の前段階の装置によってもたらされるということです。チャレンジングなことではあるのですが、そのようなことを考えたりしているかどうかというのはちょっとお伺いしたいと思います。

以上2点です。

【栗原主査】 ありがとうございます。いかがでしょうか。

【小川補佐】 ありがとうございます。中山委員のお話は以前からもよく認識してございまして、御質問の話にはなかったのですが、FSについて求心力という話もそうですし、今回領域1つとっても、元素戦略よりもさらに幅がどんどん広くなっていく、分野的にもかなり立てつけが広い重要技術領域だと認識していますので、様々な方に入っていただけるような形を取っていきたいと思います。また、事業が実際に始まって進んでいく中でも、ステージゲートですとか、あと今、元素戦略でも少しやっているのですが、中でお金にメリハリをつけていく、そういった話をしっかりとやっていかないといけないという認識は私たちも重々持っているところでございます。

リサーチインフラの計測機器ですが、今回、今後10年間にわたって毎年、設備を導入していくという予算計画は、財務当局と相談する中で提出しているところですが、それとはまた別に、恐らく過去に先端計測事業であったような新たな計測機器を開発していくと、そういった話かと存じます。リサーチインフラ事業に限らず、今、省内にも様々な予算の立てつけがございますので、そこに打ち込んでいくということも含め、中山委員の御指摘につきまして私どもも同じ問題意識を持っていますので、今回の要求上は、予算はお認めいただいていませんけれども、引き続き頑張っていきたいと考えてございます。

【栗原主査】 ありがとうございました。先端計測は田中耕一先生がノーベル賞をお取りになったときに立ち上がって、その後なかなか継続していかないので、やはり計測機器は研究の基盤の一つとして非常に大きなものだと思うので、よろしくお願いしたいと思います。

【中山委員】 あの先端計測の施策は、なくなったというか、違う施策に吸収されてしまったわけです。でも、何らかの形で、他の施策との連携でもいいし、この施策での先導でもいいので、お考えいただければと思います。計測機器の開発のお話は、極めて大事な、しかもこの材料研究、ナノテクノロジー研究の一丁目一番地みたいなところなので、よろしくお願いします。

【栗原主査】次に射場委員、お願いします。

【射場委員】 ありがとうございます。射場です。簡潔に2点だけ意見を言います。

1つは、ずっとデータの話は意見を言わせてもらっていたのですが、既に民間ではAIを使った材料開発というのは、もうどんどん開発のところでは活用されていて、成果もたくさん出ているのですね。だけど研究フェーズはやっぱりデータが少なくあまり成果が出ていないので、ぜひ、研究ではこうやってやるのだというのをこのプロジェクトの中で見せていってほしいなというふうに思うのが1つです。もう1つは8ページ、フィージビリティで議論する最初の課題のところで、データサイエンスとの親和性というのを考慮して、と書かれていて、これはすごく大事だと思っていています。データサイエンスとの親和性を考慮してテーマを選ぶというと、1つは、既にデータがすごくたくさんあるところです。協調領域で今まで皆さんでやってきて、統合したらデータがたくさんありますよというところで、早く、まず1つ成果を見せてほしいなと。そこで成果が出れば、こういうやり方でやればいいんだと皆さん分かると思うので、まずデータのあるところはどこかを早く議論して見つけて、社会実装につながるような成果を見せてほしいと思います。

もう一つは、ずっと元素戦略や種々のプロジェクト、CRESTもあれば拠点型もあって、ずっとやってきても、やっぱり今までのやり方だと解決しない課題がありますよね。それを、「AIを使った解析で最適化できるようなことが何か」みたいなことを議論してテーマ設定をしていただくと、このプロジェクトならではの成果が出ると思いますので、よろしくお願いします。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。大変貴重な、より実効的な御意見いただいてありがとうございます。

宝野先生、どうぞ。

【宝野委員】 どうもありがとうございます。宝野です。9ページ目の拠点形成型について質問させていただきたいのですが、まず拠点形成型が2022年度以降も継続される見込みだということで、非常に御努力されたであろうと感謝申し上げます。

それで、2点あるのですが、まず大型研究施設を活用していくという、前回の元素戦略と同じような外形基準になっているのですが、このプロジェクトは2022年から始まるでしょうから、そのときに、今、東北に建設中の次世代放射光施設も入れて、そこの活用も含めて考えていかれてはどうかということが1点です。

もう1点は、8課題ある中から4課題をFSとして採択されるというのですが、それは、実際はワークショップ形式でやっていくということですから、その時点で4課題に絞るのがいいのか、あるいはもう少し広めに取って、FSの結果を見てこのプロジェクトに採択するのがいいのかというのが、質問としてお聞かせいただきたい点です。よろしくお願いします。

【栗原主査】 いかがでしょう。

【小川補佐】 ありがとうございます。1点目はおっしゃるとおりですので、その点含んで進めていきたいと思います。

2点目は中でも非常に議論になったところでございまして、もともと概算要求段階では6領域程度を見込んでおりました。予算の折衝の過程で大分減った部分につきましても踏まえると、4領域ということを今現在考えているところなのですが、この部分を逆に8領域にして、来年度1年間検討した上で、ステージゲートみたいな形で再来年度実際にどうしていくか、つまり、その段階で4領域に絞るのか、というところは中でも同様の議論がございまして、そこはある意味決めの問題といいますか、どこまで幅広く最初のタイミングで議論していくかというところなのかなと考えてございます。

そこについて明確にどちらがいいのかという結論は事務局のほうでも出ていなくて、令和3年度の検討をベースにして、令和4年度に進めていくということで、4領域ということを今考えているところですけれども、宝野委員がおっしゃるような論点は引き続き事務局のほうでも、実際公募する来年度頭までに考えていかないといけないところだと考えています。

【宝野委員】 どうもありがとうございました。

【栗原主査】 次、五十嵐委員、お願いします。

【五十嵐委員】 五十嵐です。2点、コメントさせていただきます。先端リサーチインフラの件は、先ほど中山委員からもありましたが、世の中に求められる最先端の装置開発、そういうものをぜひお願いしたいと考えております。

それからもう1点は、今議論になりましたデータ創出活用型のFSですけれども、これは元素戦略プロジェクトの後継という位置づけですが、やはり世の中の動きを見て、この重点領域というのは柔軟に考えていただきたいと思います。デバイス材料、エネルギー・変換は当然重要です。ただ、デバイス材料にしましても、今、例えば半導体基板が製造できない、TSMCで製造できないと、これの製造も止まってしまうという状況です。ですから、日本で開発した材料がデファクトになって、その材料がないとそういう開発がストップしてしまう、あるいは生産がストップしてしまう、そういうような領域って必ずあると思います。そういう世の中の動きを見て、今本当に求められている、例えば自動運転のレベル5、これをデファクト化してしまう、それに必要な技術って何だと。そういうところに元素戦略で得られた成果を生かす、あるいはさらにプラスアルファでそういうものを求めていく、そういう動きが必要ではないかなと感じます。

それから、2050年のカーボンニュートラル、これは本当に大きな命題となりましたので、カーボンニュートラルを実現するためにはカーボンマイナスの技術が必要なのです。そこの部分に触媒の技術開発ですとか、いろいろな知見を生かして、そういうターゲットに向けてFSをする。そういうことをしながら、先ほどありましたテーマの絞り込み、重点領域の中でも日本にとって本当に将来、世界のデファクトをつくれるような領域は何かと、そういう視点での絞り込みをやっていただくと、非常に日本の産業も活性化するし、学術の貢献も明確になるのではないかと思います。

以上、よろしくお願いいたします。

【栗原主査】 どうもありがとうございます。

それでは、加藤先生、お願いします。

【加藤委員】 加藤です。どうもありがとうございます。

まず、8ページの活用型マテリアル研究開発プロジェクトは非常に良い案であると思いますし、分野の分け方も非常に適切であると思います。ただ、これまで委員がおっしゃられているように、8件よくまとめられていますけど、それぞれが別々に独立しているわけではなくて、やはり関連ある分野とか、融合していったりする必要があるので、この辺は重要です。それぞれに核を持つにしても、これらが連携・融合したりしていくような、融合したり分かれてまた発展するような、常にフレキシビリティがあることが必要であると思います。

それから、これはマテリアルの委員会で、釈迦に説法になりますが、やはりマテリアルというのは非常に複雑系なんですね。合成があり、プロセシングがあり、それから単純な構造ではなくて階層構造があり、そういった最も複雑なものですので、これまでの委員の皆さんも発言いただいたように、何がこういうことをやるときに重要で、最も困難であるか、それに挑戦していくような目標を見つけて、常に必要なことに挑戦していくという方向性をきちんと議論してつくっていくというのが重要ではないかというふうに思います。

それから、既存のいろいろなプロジェクトがありますね。例えばJSTのいろいろなプロジェクト、CRESTでありますとか、文科省の新学術領域、そういったところでもいろいろ関連する研究が行われています。このプロジェクトでまずは独立していてもよいと思うのですが、やはりそういった他のプロジェクトとの連携とか融合が重要と思います。せっかく同じ目標でやっているわけで、先ほど射場委員もちょっとおっしゃったかもしれませんけど、いろいろなプロジェクトをうまく融合させたり統合させたり連携させたりする司令塔みたいなのがやはりあることでうまく進んでいくのではないかと思います。ですから、こういう領域が設定されて、こういうプロジェクトが始まったからといって、そこだけが閉じて進んでいくよりも、せっかく我が国にいろいろな研究組織ができているわけですから、そういうものを活用するということが必要であると思います。

それから、最後にもう1つだけ、ネガティブデータを集めるというのが3ページの左上のところにありましたけど、これは何かもう仕組みがあるのでしょうか。これは常に議論されて、よく言われたりもしているのですが、結局なかなか難しいところです。こういったデータとかデジタルでやっていくというときに、1つ面白いことではあるのですが、いろいろ困難さも指摘されていまして、これはどういうことをお考えなのでしょうか。

【小川補佐】 御質問のございましたネガティブデータのところです。ここの部分は実際、来年度からリサーチインフラ事業を実施していくということで、ナノテクノロジープラットフォームの事業の中で出てくる、創出されたデータについても溜め方を考えていこう、またそうしたネガティブデータをしっかりと皆さんがためていける方策をどうやって考えていこうかという話を、今からリサーチインフラの方たちと一緒に議論していく予定です。

【加藤委員】 そうですね、大学でも膨大な、うまくいかなかったデータがありますので、うまくネガティブデータを集めて、研究者が積極的にやれるようなうまい仕組みをモデルで考えていただければと思います。ありがとうございます。

【小川補佐】 ありがとうございます。基本的にやはり研究者の方々、自分たちでデータを、ネガティブなものも溜めようというのはなかなか手間もかかり難しいところもあるので、今回まずは共用設備、設備側のほうでうまくそこをさばいていけないかというところで、今後、事業が始まりますので、しっかりやっていきたいと思います。

【加藤委員】 ありがとうございました。

【栗原主査】 ありがとうございます。

それでは最後、菅野先生、お願いします。

【菅野委員】 菅野です。ありがとうございます。簡潔に2点だけ、意見を述べさせていただきます。

今もありましたけど、まずデータをためるということです。何をためるか。実際現場で今やっている限り、ネガティブデータも含めては、実行部隊としては大変困難であると。拠点として採択されたところは、それが仕事ですからやりますけれども、それを外に広げるというときに非常に困難である、現場の反発が大きくなるということを念頭に置いて、どのように対策を練るか。我々合成屋としてはネガティブデータというのはないのですが、全てがデータなのですが、その全てのデータを集めて、そこから何か生み出すというあらすじが少しきれい過ぎるように思うというのが1点です。そこはアイデアが何か必要であると。

2点目、うまくいった場合、このデータを集めて、AIによってサジェスチョンがあって、それで材料開発ができる、デバイスができる、非常にいいのですが、じゃあそれが基本的にはもうルーチンになると、問題はその後だと思います。ルーチンになって、AIに相談をして出てくる、じゃあそこからどういうアイデアを出すのかという、その知見というのが多分今後さらに重要になるだろうなと思います。

2点、以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。今お話を聞きながら、ネガティブデータの収集は具体的にはどうするのかなと思いました。

次、射場委員から手が挙がっているのですが、今の議論の中で何か付け加えたいということでいらっしゃるのでしょうか。

【射場委員】 はい。今の加藤先生と菅野先生のネガティブデータの話なのですが、随分ネガティブデータも集めようと思って、この何年間か苦労してきたのですが、菅野先生のおっしゃるとおり、先生方はネガティブと思ってデータを取られていなくて、無いんですよね。ネガティブデータが出たとしても、それは置いていないケースとかもとても多くて、集めようと思っても集まらないので、これまでの実験計画と違う、もっと幅広の、これは当然うまくいかないだろうというようなところまで広げた実験計画をつくって、新しくデータを取るしかないという結論に私たちは行ってしまうので、御参考までに申し上げました。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。

それでは、ほぼ皆さんの御意見もいただきましたし、時間もかなり過ぎましたので、次の議題2に移りたいと思います。

それでは、議題2のマテリアル革新力強化戦略について、事務局より資料の説明をお願いいたします。

【小川補佐】 事務局より御説明させていただきます。資料2、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第9回)、米印で令和3年1月19日第8回統合イノベーション戦略推進会議とございます、マテリアル革新力強化戦略中間論点整理について御説明させていただきます。

今申し上げましたとおり、この資料自体につきましては、先日1月19日の第8回統合イノベーション戦略推進会議で発表された資料です。ですので、昨年末までの議論を踏まえた中間論点整理ということになります。中身について入る前に、現在どういった検討のプロセスになっているかというところですけれども、この中間論点整理を受けまして、マテリアル戦略有識者会議におきまして、今年に入ってからも会議を開催してございます。それで年度内に、この中間論点整理をさらに発展させてまとめるという予定で進んでいるところです。次回は2月22日にまた実施するという方向で、今調整しているところです。

中身ですけれども、1ページ目、マテリアル革新力強化に向けた基本方針ということでございます。6月の文科省、経産省の準備会合を受けまして、こうした方針で議論が進められているところです。

まず、マテリアル戦略が必要とされる理由ということでございます。カーボンニュートラルに代表されますように、SDGsへの意識の高まりがある。またマテリアルにつきましては、非常に社会実装が遅い、研究開発期間も長いということがありますので、走りながら変えていく必要性があると。人材面につきましても、博士、また次世代の人材の確保・育成に、うまくマテリアルの魅力、特に産業側にしっかりとした基盤があるというところが伝わっていないのではないかという、こうした人材面での課題。また、EUにおきましてはREACHやRoHSなどの規制をうまく使っている部分もございますが、他国より先んじるために行政の規制に関する考え方が重要と、こういったことから今マテリアル戦略が必要とされるということでございます。

我が国の強みに立脚した差別化優位ということでございまして、多様な研究者や企業が多く存在していると、国内にバリューチェーンの各プレーヤー、川上から川下までが存在しておりまして、また、産学の連携、アカデミアも含めた距離感が比較的近いということが特徴ではないかと考えてございます。ですので、ハイレベルかつ多様な材料技術とバリューチェーンの各プレーヤーが1つの国に存在するということが我が国の強みの1つだと考えているところです。

こちらを受けまして、基本方針としましては3つ掲げてございます。まず1つ目です。こちらは有識者会議の座長である澤田座長が非常に強くおっしゃっているところですが、銀メダルでも出発していくのだと、技術的に銀メダルであっても迅速に社会実装を進めていく必要があるということで、産学官が共創できる社会実装プラットフォームの形成支援を行っていく、またマテリアルの特性を踏まえたベンチャー創出の強化を行っていくということでございます。

基本方針の2としましては、本質研究という記載がございますが、研究開発の世界では、やはりそうはいっても金メダルを目指していくのだということで、イノベーション基盤の強化を行っていくということでございます。その上で、Society 5.0や社会課題解決に向けた技術領域の同定、マテリアルズインフォマティクスやプロセスインフォマティクスの活用による高速かつ効率的な新規マテリアルの創出、また、SDGs視点を当初から組み込んだ、例えばリサイクルを念頭に置いたマテリアルデザイン、こうしたものを実施していくということ。

基本方針の3ですけれども、持続的発展性の確保、人材育成、規制ということでして、産学官協調での人材育成・博士支援強化、社会実装につなげる人材育成ということで、産学官が連携して人材育成を行っていくことができる分野がマテリアルではないかということでございます。

今申し上げましたのが基本的な概要になります。

2ページ目、3ページ目につきましては、そこに至る議論といいますか、補足の部分です。マテリアル戦略の目的としましては、2030年の社会像・産業像を見据えて、マテリアル革新力を強化するための総合的な政策パッケージを策定していくということです。こちらは釈迦に説法ですが、マテリアルを取り巻く状況としましては、機能性材料の出口産業の偏り、新興国とのマテリアル技術競争や価格競争の激化、ニーズの多様化・複雑化、製品ライフサイクルの短縮、さらに希少金属等の鉱物資源サプライチェーンの脆弱化といったことが挙げられるということです。学界につきましては、日本人学生の減少ですとか、人材確保について他分野との競争激化、関連学会で縮小傾向にある学会も見られるという状況です。さらに、企業の人的需要とのギャップも見られるということです。企業につきましては、ヒアリングの中で、大学等における基礎研究や学理構築に特に期待していると、一方で、アカデミアにおける成果の社会実装が不十分な部分も見られるのではないか、さらに、材料開発に数年単位の時間と多大なコストがかかりますので、スタートアップが難しい分野であるということです。

また、外部環境としましては、コロナ、カーボンニュートラル、気候変動、デジタル、さらに米中を中心とした国家の覇権争い、サーキュラーエコノミー関連の規制が、例えばEUなどでは実施されていると、そういった外部環境があるという議論の中で、次の3ページ目です。

目指すべき姿としましては、マテリアル革新力により、経済発展と社会課題解決が両立した持続可能な社会の中への転換を世界の先頭に立って取り組んでいくということで、Society 5.0への貢献ということです。また、世界一低環境負荷な社会システムの実現、さらにマテリアル領域における世界最高レベルの研究環境の確立、こうした姿を目指すということで、基本方針、先ほど述べさせていただいたような社会実装プラットフォーム、またデータ駆動型の研究開発基盤整備と本質研究の追求、さらに持続的発展性の確保ということで、産学官協調での人材育成、また博士課程学生に対する支援強化、循環型経済、サプライチェーン強靭化に向けた取組を強化していくべきではないかという方向性で、年内の議論は中間論点整理としてまとめられたところございます。

実際の文書につきましては、こちらも参考資料1としてお送りさせていただいておりますマテリアル戦略の取りまとめに向けた中間論点整理、こちらに詳細がございますので、御参照いただければと思います。

最後に、マテリアル戦略の有識者会議の構成員、4ページ目です。現在、座長として、花王の取締役会長の澤田座長、国研・大学からは橋本NIMS理事長、村山産総研理事、関谷阪大教授、一杉東工大教授、産業界からは日本製鉄の小野山副社長、JX金属の菅原執行役員、京セラの仲川統括部長と、旭化成からは山岸執行役員に参加いただいて、御議論いただいているところです。

事務局からは以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。それでは、御意見、御質問ありましたらお願いいたします。

前田委員、お願いします。

【前田委員】 どうもありがとうございます。いろいろごもっともだなという内容ばかり書いてありました。他国よりも先んじるということが非常に重要なのはもっともなのですが、世界の先頭に立つだけでなく、今回コロナのようになって世界と断絶するということもありますので、価格面だけでない、やはり日本の国が持続的にずっとやっていけるような形で、ぜひ、先頭に立つ研究だけではなく、社会実装に力を入れて、支援してあげられるようなものもきちんとずっと支援し続けられるようなふうにしていっていただけるといいなと。今回コロナになっていろいろなものが輸入できなくなった状況もありましたので、ぜひその辺のところも、先々の社会実装という面を強調して支援していっていただけるとうれしいなと思います。よろしくお願いいたします。

【栗原主査】 ありがとうございました。材料は使われてこそ材料ですから。大事な観点、ありがとうございます。

次、射場委員、お願いします。

【射場委員】 ありがとうございます。材料は社会実装が遅いというところが、もう会社の中でもいつも言われているので、物すごく刺さるのですが、それがなぜかみたいなところをこういうところではもうちょっと解析してほしいなというふうに思ったのですが、それで銀メダルを目指すとありますよね、基本方針の1に。私が常々感じているのは、材料は金メダルなのに、なかなかその後、材料でいい性能が出ても、例えばうちだと自動車に仕立てるまでに物すごい手がかかるんですよね。電池の、菅野先生のすごい材料ができても、電池になかなかならなかったり、その電池を組んでEVに仕立てるのに時間がかかってしまって、材料が金メダルでも製品の金メダルがなかなか出せないというのがあるので、材料が金メダルで、その後あまり手がかからなくて社会実装できるって、それが銀メダルかもしれないですけど、そのようなテーマで社会実装して、見せるというのも1つのやり方かなと、これも意見だけですけど、思います。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございます。社会との接点のところでかなり意見が出てきました。

次、高梨委員、お願いします。

【高梨委員】 ありがとうございます。私が1つ申し上げたかったのは、やはり学生の減少とか、それの支援を強化するというような話があったのですが、本当に今、大学にとってみると、日本人が博士課程に行かないというのは極めて深刻で、やはり日本の大学の研究力に直結、研究力の低下に直結する問題だと思うんですよね。これをどうするかというのは非常に大きな問題なのですが、単に支援といっても、もう今、博士課程の学生に対して外部的な支援というのはかなりいろいろなものがあるわけで、そういう点で、ただそれを支援、また額を増やそうというようなことだけでは恐らく物は済まない。

恐らくこれは社会構造的な問題があって、やはり博士課程まで出ても、研究者になるなら別ですけど、例えば民間なんかに行ったときに何の優遇もされないとか社会的に何のメリットもないというような話になってくると、やっぱり行こうとしないのですよね、結局。修士でもうどんどん就職してしまうのがいいというような話になってくるので、やはり博士まで行って、きちんとそれぞれの専門分野で論理的に、系統的にきちんと仕事をまとめやるというその経験が、どの分野に行っても、社会に出ても役に立つんだという意識を社会全体が持って、博士課程の学位を取るということに対してもうちょっとリスペクトするような、何か全体的にメリットがあるような方向になってくれると、そこら辺、流れが変わってくるのかなというふうに思うのですが、単に支援という、お金だけ学生に支援すればいいという問題では、もうこれ済まないだろうということを、ここで私、1つ申し上げておきたいと思います。

それからあと、今までの御意見の中で、射場委員がおっしゃっていましたけど、金とか銀とかというやつ、ちょっと私、引っかかったのは、金とか銀とかは一体どこでどういう判断で評価して金とか銀とか言うのだろうと。本当に材料として金でも、じゃあ実際、実装したときに云々とかいろいろなところがあって、どの段階で金とか銀とかっていう判断をするのかと。それによって全く変わってくるので、ちょっと私、これは、金とか銀とか言うのは簡単だけど、何なのだろうなと疑問に思いました。

それから、せっかくですので、もう一つ言わせていただくと、前の議題の議論にも関係あるのですが、材料科学がどういう方向を目指すかといったときに、10年後を見据えた重点領域が幾つか出ていましたけど、やはり日本はこれから、将来考えたときに深刻な問題って、エネルギーももちろんありますし、医療はもちろんあるけど、やはり食料という問題がありますよね。その食料というか、やはり農業に対してどれだけ、材料科学というか、材料工学が貢献できるかという視点というか、そこら辺がこれからもっと大きくなってきてもいいのかなと。バイオとか関わりがあるのかもしれませんけど、そこら辺、私、具体的なアイデアが特別あるわけではないので、抽象的なのですが、そういったところをもうちょっと、視野を広げていくべきではないかというふうに思います。

いろいろ申し上げてすみません。以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。博士課程の人材に対しては全くそのとおりだと思います。今NISTEPで集めている会社の博士課程人材に対する評価では、思ったよりよかったというちょっと変な言い方ですけど、非常に評価されているというデータが出ているので、そういうデータも人材関係の委員会だけではなく、広く共有していただけると、民間の認識も少しずつ広がるのではと期待しますので、よろしくお願いします。本当に博士課程の学生さんが増えてこないと、と思います。また、幅広い御意見ありがとうございました。

それでは次、馬場委員、お願いします。

【馬場委員】 ありがとうございます。名古屋大学の馬場です。3ページ目、基本方針のところですけれども、先ほどのデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトの議論とも関わるのですが、先ほどの議論ですと8つの重要技術領域から4つぐらいを選ぶということですけれども、これは以前の議論でも、文科省だけではなくて経産省とも連携しながら施策をつくっていかれるというふうに伺っていたと思うのですが、例えば文科省が4つの領域をカバーするのであれば、それ以外を経産省がカバーするような形というのはあり得るのでしょうかというのが質問です。

それからもう一つ、先ほどの高梨委員の御意見へのコメントですが、農業と材料の関係というのは非常に重要であると私も思っていまして、今、私、NEDOのほうのTSCのフェローも務めていますが、NEDOのほうでは今、農水省の連携というのを強く進めていまして、そちらのほうで少し検討は進んでいるようではありますが、将来的には本委員会でもぜひ農業関係のマテリアルの検討も、今後検討していただいたほうかいいのではないかというふうな意見を持っております。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございます。私も農業との関係はこれから大事だと思います。

では次、五十嵐委員、お願いします。

【五十嵐委員】 五十嵐です。先ほど社会実装が遅いというお話があったのですが、これに関して、特に今、例えば液晶テレビ、有機ELテレビ、あるいはスマホ等も、実際の製品はやはり韓国、さらには中国が強くなっていると。そういう中で、使われている素材は、ほとんどとは言いませんけれども、日本製のものがたくさんあるんです。やはりいい素材ができても、そういうシステムを押さえられる、例えばコンピュータだったらオペレーティングシステム、OSを押さえられると、もうそれでプラットフォームが決まってしまって、結局あとはもう価格競争になってしまう。それでどんどん日本の電機のそういう主要なところというのが少し衰退してしまったのではないかなと。

そういう意味で、社会実装に早くつなげるためには、やはりデバイス、あるいはシステム、モジュール化までをしっかりとデファクトにしていく、そういうものをやっていかないと、実際、素材が開発できても、そういうシステムに押さえられて、全然社会実装されない。例えば自動車は、これまで日本が圧倒的に強かったわけですが、アップルがアップルカーのコンセプトを発表して、1,000万円で10万台売るそのために今、自動車会社さんのどこにOEMするか検討している、要はファブレスでアップルは自動車を造るわけです。これはもう大変な驚異、例えばグーグルだって、なぜあんなにグーグルマップを精密につくるのかと思っていましたが、将来の街全体、あるいはもう世の中を、グーグルの車、あるいはそういう通信システムが支配する、そういう世の中を目指しているのではないかと。

これは本当に脅威で、それに向けて、日本の製造メーカーは一生懸命素材をつくるんですが、システムを押さえられたら、そのスペックに合うものをつくるしかない。ですから、付加価値が素材だけではもう全然取れなくなる、そういう世の中になるのではないかと危惧します。例えば1,000万円の車を10万台売ると、1兆円なんです。これが100万台、1,000万台となると、もう恐ろしい規模になります。

私はぜひ日本の自動車メーカーさんにも頑張っていただきたいと思いまして、コネクテッドシティの構想があって、それも進められておりますけれども、これは本当にすばらしい構想だと思います。例えば、先ほど少し申し上げたレベル5の自動運転を日本がデファクト化して、それこそ街ぐるみ、それを製造技術も含めてつくることができるようになれば、世界中をそういうレベル5の自動運転、そこに必要なインフラ、自動車、輸送機器、通信機器、全てを日本のもので押さえることができる。そういうものに対して日本の素材がどう貢献できるか、そういうような大きな構想をぜひ立ててほしいと思います。

基盤技術開発なのですが、やはり世の中が大きく変わろうとしているところですから、例えばそういう一点突破で、高速通信、あるいはそういうコネクテッドカーというようなものに関してはデファクトを日本が取るんだと、それに必要な材料開発、システム開発をするんだと、そういう視点があってもいいのではないかというふうに感じました。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。大変貴重な、将来に対しての御意見だったと思います。

次、加藤先生、お願いします。

【加藤委員】 加藤です。この中の2ページで、私は大学の人間なので、そこのマテリアルを取り巻く状況に学界のところがありますが、企業の方から見たら、大学の供給する人材と要求にちょっとギャップがあると。しかし企業さんは大学には基礎研究をやってほしいということで、多様な要望があると、この2つを同時に満たすというのはなかなか難しい面もあって、いろんな要望があるということは理解できます。

それからあと、博士に関しては、もうこれは議論し尽くされているので、今日は言いませんが、私はもっと広げて、日本全体で若手の技術者をどう教育するかということを考えないといけないと思っています。例えば企業にいる若手です。材料に関する大学でやったことがどんどん古くなっていくときに、大学と企業、それから官と一体になってどう教育していくかとか、そういう新しい仕組みを何かつくっていく必要があるのではないかというふうに思っていて、もっと全体的に、例えば合成で会社に入った人が、もう1回デジタル勉強したいときにどうすればいいのか。それで、論文博士なんかはもう無くしていく方向で来たわけですけど、それももう1回考え直すというか。どうやったら今の、まだ企業にも良質な若手がたくさんいるので、そういう人たちをどう教育して、日本全体として底上げしていくか。大学として、それから官としてどう一緒にやっていけるかというのをぜひ考えていただきたい、考えたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

【栗原主査】 ありがとうございました。人材育成は再教育もあると思いますが、そうなると、より基礎的なことを大学ではきちんと習って社会に出ていってもらって、少しフレキシブルに多様なものを、再教育となっていくのかなと思いますが、少し個人的な意見です。

【加藤委員】 すみません、よろしいですか。一言だけ。今、栗原先生がおっしゃったことが大事で、企業とか大学の利害を超えて、今おっしゃったような基礎的なことだったら協調してやれると思うので、ぜひ何かやれたらいいと思います。よろしくお願いします。

【栗原主査】 ありがとうございます。

次、宝野委員、お願いします。

【宝野委員】 まず最初に、博士課程の処遇についてですが、この書類を見ていましても、先日文科省が博士課程の学生の生活支援を行うということの発表でも、博士課程学生の処遇を改善しようとしているのは非常に望ましいと思います。しかし、この議論のときには、いつも生活支援という言葉を使われているんですね。

欧米を見ましても、大学院とは研究に従事する人材として雇用関係を結ぶ、例えばNIMSであれば、NIMSジュニア研究者として雇用関係を結んでいます。今文科省が整えようとしているシステムがどういうものか存じ上げないのですが、大学・研究期間は博士課程学生を研究者として雇用し、その方が博士を取った後に産業界で活躍していくというキャリアパスを構築していくことが必要なのではないかと思います。

それで、企業が最初から博士課程取得者を優遇すべきというのは、あまり大学から要求できることではないと思いますね。企業というのは、その方がどれだけその企業に貢献するかをもって処遇というのを考えていきますから、大学としては、ぜひ社会に貢献できるような人材を博士として育てていただきたいと思います。

もう1点、この資料見ていまして非常に違和感をもったのが、基本方針として「本質研究」という言葉が使われています。私、「本質研究」というのは、この資料を見るまであまり聞いたことがなかったのですが、この「本質研究」という言葉が、これからは使われていくようになるのかもしれませんが、どういう意味で本質研究というものが出てきたのか、事務局にお尋ねしたいのですが。

【小川補佐】 事務局です。まず、この検討自体は、内閣府のほうで有識者会議を立ち上げたところでの検討です。本質研究というワーディング自体は、私も同じように、今まであまり聞いたことないワーディングなのですが、もとは澤田座長が、社会実装を早くやっていくという概念、それはそれであるのだけれども、しっかり研究をやっていくところはやっていく必要があるんだということで、それを本質研究と座長自らおっしゃっていたので、それがここに反映されているということになります。

【宝野委員】 そうしますと、本質研究という言葉が出てくると、これから何か、末梢研究とか、そういう言葉も出てくるんですかね。

【小川補佐】 いや、そこまでの議論はしていなくて、今回マテリアル戦略の中ではこれでワーディングしていますけれども、それが第6期基本計画に載っていくかとか、それはまた別ですので、ここの中でまずは書いてあるものだと御認識いただければと思います。

【宝野委員】 はい。皆さんが同じような意味で本質研究という言葉を使えるようにどこかで定義しておかないと、ちょっと誤解を生むかもしれないなと感じました。

【栗原主査】 従来だったら応用と基礎という字句で考えていたようなことを、もう少し両方、片方は社会実装、片方は本質というふうに、少し言葉が強い、より強くなっているのかなと思いますね、今のお話で。

【宝野委員】 そうすると本質研究というのは、基礎研究も含めるわけですね。

【小川補佐】 はい。応用研究でも社会実装に行かない応用研究があり、社会実装に至るためには何段階かあるわけでしょうけれども、ですから両方とも非常に、ある意味シャープな言葉になっているという感じがしております。

【栗原主査】 次、武田委員、お願いします。

【武田委員】 武田です。今の御議論を聞いておりまして感じたのは、なぜ社会実装が進まないかという点です。私自身、特に医療や農業など、そういう分野を見ていても日頃感じるのですが、サイエンスやテクノロジーが金メダル級で、非常に素晴らしいものが実際にはあるのに、そういうものが社会での実用化に至っていないというのが結構あります。なぜ実用化できないかというと、コスト面の課題が残る場合が多いと思います。コストのことを度外視すれば、もう実現できている、しかしコストが非常にかかり過ぎるので実用性が今はない、というようなケースをよく見ます。そのときに何が足りないかといいますと、テクノロジー確立後のエンジニアリングが進まず、合理的なコストでそれを社会実装するというところが非常に弱いのではないかというもどかしさを感じております。

では、そこをどうすればいいかというと、やはり実装に向けて合理的なコストにするために、もう一つ別のテクノロジーが必要になると思います。それが意外に異なる分野のテクノロジーであったりすることもありまして、この場合は融合分野などが非常に重要になってきます。あとは大学と企業との産学連携も鍵になるのかなと思っています。社会実装を促進して、日本が強みを有するテクノロジーを社会に広めていって、Society 5.0、SDGsなどに貢献するための鍵となるのは、今申し上げましたように融合分野の強化、ならびに産学連携であったりすると思います。

そして、産学連携の中にはもちろん、今までも議論がありましたように、やはり学生さんの、人材育成やキャリアプランなども、重要な要素であると思っております。企業では、例えばインターン制度などを設けておりまして、学生さんは報酬を受けて、ある意味プロフェッショナルな研究者の一員として研究に携わるような仕組みもあるので、こういう仕組みもぜひ活用して、産学連携も活性化して社会実装につなげるというような取組ができるのではないかと思います。ぜひそのようなところの議論も進めていただけるといいと思っております。

【栗原主査】 どうも具体的な御提案、数々ありがとうございました。

次、萬委員、お願いします。

【萬委員】 萬です。マテリアル革新力強化に向けて、キーになるポイントの1つとして、ここに参画するプレーヤーの多様性が重要になると思いまして、その観点でコメントさせていただきたいと思います。

ここにも挙げられていますが、データ駆動型研究開発基盤ということで、マテリアルとデジタル技術の関係が重要となっており、このところもチャンスだと思っております。現在、AI、量子コンピュータの活用というような点に関しましても、材料がよいターゲットになっています。そちらの研究者から見ても十分な研究価値を持つ対象になっています。裾野を広げるという観点で、こういうAIとか量子の計算基盤というのが、単なる分析ツールではなくて、この領域の人たちが入ってきて、彼らの領域にも何か研究的なリターンがあるというか、成果が出せるような仕組みがあると、単純に今ある既存のAIのツールを使って分析しましたではない、もう一段上の融合的なテーマ設定ができると思います。裾野が広がることで革新力の強化につながるのではないかと思います。

【栗原主査】 どうもありがとうございました。大変貴重な御意見だと思います。

次、湯浅委員、お願いします。

【湯浅委員】 先ほどの五十嵐委員のお話の続きなのですが、液晶や有機EL、日本は、素材は強かったけど、社会実装は外国に押さえられたと、これは材料の問題というよりも、日本の半導体メーカー、電機メーカーのマネジメントが悪かったという、日本特有の問題であるようにも思えますと。ただ、そうはいっても、5Gを中心とした先端半導体というのは国家の安全保障としても非常に重要ということで、今、経産省が非常に力を入れて巻き返しを図っています。これは日本にとって最後のチャンスかもしれませんけど、かなりの投資をしています。この先端半導体戦略の材料の部分を文科省が頑張って、経産省と手を組むというのはいい話かもしれませんけど、経産省は例えばポスト5Gに関してでも研究開発に1,000億円を超える資金を投じていますので、その材料の開発をやるとなると、文科省側も相当本腰を入れてやらないと、うまくいかないのではないかとも思います。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。

次、上杉委員、お願いします。

【上杉委員】 上杉です。このようなマテリアルの戦略を練る上で、私はとても大切な視点があると思います。それは大学の状態を理解して、その近未来を予想することです。今、大学は大きな転換期を迎えていると思います。その理由は、「大学基金」がやってくるからです。この大学基金というのは、大学で大きな基金を運用してその利益を研究などに投資する米国の大学の手法です。これを日本でも始めるというのが決定されています。

なぜこういうことをするのかといいますと、アメリカで80年代から90年代に起こったことと同じようなことが日本に起こっているからです。つまり、州立大学が特にそうだったのですが、ブロックファンドという、日本でいうと運営費交付金がどんどん減っていって、それでお金がなくなったのです。それで寄附によって基金を設けて、それを運用してやっていくという方法が起こったときです。今、日本もその時期に来ています。政府から基金をもらってやっていこうということです。

さて、この基金をもらうと何をするか。それは、重点領域というのを決めて、集中投資するということが可能になります。アメリカは実際そうなっています。例えばイエール大学ですと、5つの重点領域を決めています。そして、先ほどの基金からの運用益をそこに投資しています。これは投資ですので、重点分野を決めてやっています。その重点分野というのは投資に値するものが選ばれます。ここに大体マテリアルが入っています。例えばイエール大学ですと、データサイエンスとそのほかの分野の融合が1つ。もう1つはクアンタムサイエンスとマテリアル、次がニューロサイエンスとほかの分野の融合、インフォメーションサイエンスとほかの分野の融合、環境学とほかの分野の融合となっています。全部、融合研究なんです。融合研究というのは投資に値すると思っているからです。マテリアルの分野は大体の大学で重点分野に入っていると思います。

このように、こういう大学の集中投資のところにマテリアルが入っていなければならないと思うんですね。どうして入るかというと、マテリアルに投資をしてくれる政府やベンチャー企業がいるということです。お金を出してもらえる、共感してもらえる分野だということです。恐らく日本の大学も何年間のうちにこういうタイプの戦略を練っていかなければなりません。また、こういう戦略がないと、大学とマテリアル業界はどんどんジリ貧になっていくのではないかなと思います。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。非常に、ある意味大きなフレームのお話でした。今後それぞれの大学の強みを生かすという議論がいろいろ出てくると思うので、そういうところでマテリアル系の先生方もきちんと、成果を上げつつ、議論されていかないといけないということだと思います。

次、瀬戸山委員、お願いいたします。

【瀬戸山委員】 私から言いたいのは、なぜ社会実装できないのかということ。最近考えているのですが、これは基本的にサイエンスとかテクノロジーだけの問題でなくて、1つ考えなければいけないのは、プロダクトチェインという意識がすごく必要だと思っています。物をつくったときに、それを誰が使うんだと、誰が買うんだという視点がないと、物事は先に進まないんですね。例えば化学業界で1つの素材を開発しましょうと業界の同意のような掛け声があっても、三菱も住友も三井も、みんなで同じことは普通ありえません。したがって、どちらかというと、じゃあこれを一体どういうふうな人たち/企業がどういう風に使うのかという、そちらからのフィードバックがあると、コストの意識とか、どういう技術でつくるとか、そこら辺の必要項目が見えてくるし、解決すべきサイエンス、テクノロジー上の本質的課題が遡ってはっきり見えてくるので、やはりそういう意識で物を考えることもやっていかないと、見かけ上のサイエンスとかテクノロジーだけにこだわってやっていっても答えにならないと思います。そういう機能とか仕組みが必要です。

最近よくこういうことで、例の2兆円ファンドの話、CO2利活用という話がありますけれども、今回に関して言うと、経産省のほうはかなり企業のトップに強いコミットメントを求めてきているんです。こういう技術は弊社でやっていく、作りますよと。そういう認識を持ってやらないと技術も進まないと思っていますが、更にその作ったものを誰が使うんだという確認作業が必要です。そういう意識を持ったような組み方をするのが必要ではないのかなというふうに思います。これは経済産業省でより真剣に考え行動すべきかもしれませんが、使えそうなサイエンスについてはJSTでもこうしたことをある程度、深堀する必要があるでしょう。

あとこのプログラム全体を見ていて、現状は、まさにおっしゃるとおりで、どこに強みがあるのかというところがあんまりまだ絞れていないのかなという印象があると思います。ですから大学にしてみても、日本にしてみても、この領域は強いよねというところをやはり考えていって、そこを重点化していく。広くやるのは当然あってもいいのですが、これをはっきり、日本が豊かになるための集中すべき領域だよねというところはちゃんと特定して、そこへ投資していくようなことを考えるのが1つではないのかなというふうに思います。

最後にもう一つ、人材の話なんですけど、去年たまたま化学フェスタで、博士課程の学生を応援するような講演してくれと頼まれて、自分の会社の状況を調べてみたんですね。見ましたら、リーダークラス以上になるのは博士課程の人間のほうがはるかに割合高いんです。所長とか役員になるのも博士取得者が多いんですよ。全体の数で言うと修士が多いですから、博士課程へ行って何するんだということで、恵まれていないように見えますけれども、実際はそうでなくて、本当にロジックがしっかりしていて、きちんと自分の論理を展開できる学生はすごく会社でも、重宝、じゃないな、優遇しています。

1つ面白かったのは、こういうことを会社のほうに話をしたら、採用面接の仕組みを変えたんですね。例えば博士課程の学生、院の学生を呼んだときに、彼らが今専攻している領域だけではなくて、こちらから指定した論文をどさっと渡して、それを読んだ感想を聞いたりして、その人がどれぐらいの能力があるかというのは大体そういう会話の中で見えてくるんですね。なので、そういうロジックがしっかりしていて、強い主張ができる、創造力があるような学生は企業としてもすごく優遇しますので、そういうことをもうちょっと伝えるような仕組みというのをやはり考えていけばいいのかなと、個人的には思っています。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。今、後半におっしゃったことは、私も常々申し上げているのですが、卒業生に聞くと、プロジェクトリーダーなんかになる場合は博士出身者のほうが早いというふうに聞いていますので、ぜひ瀬戸山先生、そのような話を特に学生に向かってあちこちでしていただけるとありがたいと思います。言よろしくお願いします。

【瀬戸山委員】 ありがとうございます。

【栗原主査】 今回企業からの委員の皆様には、具体的に、材料研究を進める場合の視点をたくさん、現実的な観点から御指摘いただいて、大変ありがたいと思います。ありがとうございます。

次、吉江委員、お願いします。

【吉江委員】 ありがとうございます。吉江です。私からは、先ほど武田委員、もしくはほかの皆さんからも出ていることだと思うのですが、社会実装を考えていく上では、やはりシステムというか、いろんな分野の要素を取り入れる必要があるというのは当然のことだと思います。ですが、何となく私の勝手な印象では、日本人というのは、1人で個人プレーとしてやることに対して物すごく能力のある方がたくさんいらっしゃるんだけど、分野を超えて融合していこうといったときに出だしが遅いというようなところがあるので、社会実装のスピードアップという点では、その辺りをどうやって始めるか。言うは易しで、実際に行動するのはなかなかというようなところがあるので、そこをどうやって実際に早めるかというところを次のステップとしては考える必要があるのかなというふうに感じています。

そういう意味でも、特にマテリアルという分野でいくと、融合というのは本当に分野を超えていろいろ始めないことには上手くいかないので、ぜひ海外等々も含めて成功事例というものをもう少し広く調べて、広報していただくというようなことがあるといいのかなというようなことをちょっと思いました。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。大学は従来、特に大きな大学では自前主義が大きかったと思うので、そういうものを破っていかないといけないという点では、非常に融合の推進は大事だと思います。

射場委員、どうぞ。

【射場委員】 ありがとうございます。五十嵐委員に自動運転のお話を2回していただいたので、ウーブン・シティもコネクテッドカーも会社の中ではビッグプロジェクトで、材料の担当としてはこれに絡む開発をやりたいと、いつも考えているんですよね。ですけど、もうそれは風が吹けば桶屋がもうかるぐらい話が遠くて、なかなかテーマアップができなかったり、フェーズ感が合わなかったりするのですが、先ほど湯浅先生のお話で、高速通信があって次世代とか先端の半導体があるみたいな話になると材料開発までブレークダウンできてくるのかなという、すごく大きいヒントをいただいたなという気がしていて、それは相当のビッグピクチャーになると思うのですが、そういうのを事務局の中で検討いただけると。大きい領域を設定するのは簡単ですけど、最後どうやって社会実装につなげるまでみたいな大きいピクチャーを描くことをちょっとトライしてもらうと、分かりやすくなるのかなというふうに思いました。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございました。

五十嵐委員、どうぞ。

【五十嵐委員】 射場委員、どうもありがとうございます。私も本当に期待していまして、あのプロジェクト、恐らく規制緩和なんかも必要ですから、ぜひ、文科省の皆さんというか、官庁も含めて、日本が本当に世界のデファクトを取れる領域だと思うので、全産業集まってでもやるべき課題じゃないかと私は思っています。その根源はやはりマテリアルなんですよ、システムができて、そのシステムを満足させるためにどういうデバイスが要るか、そのデバイスに使われる材料、その高機能化で材料開発、研究があるわけですから、その部分をぜひお願いしたいと思います。

それと、やはりカーボンニュートラルに向けても、現在皆さん、電気代の明細を見ると、再エネ促進賦課金というのがかかっているのを御存じだと思いますけれども、恐らく各世帯1,000円とか2,000円とか、毎月払っているんです。これを全部合わせると、先ほど国が2兆円の基金つくってやろうとしている、その根本はもう既に始まっているのだと思います。

そこの部分で私が一番感じていますのは、やはり水素社会も、せっかくFCVが、先端の技術があって実現しているわけですから、水素社会を実現するために必要なシステムづくり、法整備。水素ステーションが今160基しかない、これ1基つくるのに5億円です。これが日本中に1,000基できたら、FCV、もっと売れるはずです。それで世界をリードする。そうじゃないと、やっぱり中国ですとかアメリカと、韓国が結構頑張って、そういうのでどんどん商用車なんかにも展開しようとしています。その前にやはり日本が、グローバルスタンダードの水素社会、それを目指すために、まずは水素の供給網。

それから、水素製造は、今はまだ化石燃料が必要ですけれども、将来的に再生可能エネルギーから水素をいかにつくるか。そのための研究開発、人工光合成だったり触媒開発だったり、あるいは電気が高いというのも大きなネックですので、アンモニア燃焼が今叫ばれていますけれども、それに必要ないろいろな技術開発、それの研究開発というのを重点的にやるというのは、これから本当に日本が標榜しているような世界をリードするためには、今まさにそういう技術展開ができる領域だと思いますので、そういうところの重点化というのはぜひお願いしたいと思います。

【栗原主査】 ありがとうございました。射場委員、どうぞ。

【射場委員】 ありがとうございます。水素は、やはり車、MIRAIも2代目が出て、コストの議論が先ほども出ていましたけど、やはり圧倒的に水素のコストにかかっていると思うので、水素製造のところで材料開発という話は、ぜひ重点として必要なテーマだと思っています。

あと、ちょっとさっき言い忘れた博士の話は、先ほどの瀬戸山さんの御意見とか栗原先生の御意見ともう全く同感で、あちこちで同じような話をしていますし、化学会の論説にも書いているので、一度読んでいただくといいかと思います。

【栗原主査】 ありがとうございます。

それでは、この話題はこれで終わりたいと思いますが、それでは最後に、今期の最後の委員会ということですので、全体を通しての御意見や御感想がありましたら、今の2つの話題に対して言い残したというような点でも結構ですので、お願いします。自由に御意見、御感想等いただければと思います。よろしくお願いします。

かなり今の話題の中でも幅広く御意見いただいているので、もう御意見は今の2つの議事の中で全ておっしゃったということになっておりますでしょうか。何かあれば、ぜひ御発言ください。

常行先生、どうぞ。

【常行委員】 常行です。今回のマテリアルDXでもそうですが、文科省の中のほかの担当、例えば計算室とか量研室とか環エネ課とか、ほかとの連携が非常に重要なものが多いので、今随分努力されているのは知っているんですが、引き続き文科省内での横の連携をぜひ進めていただいて、情報交換していただくと、無駄な投資をしないでお互いに分担できるというふうに思います。コメントです。

【栗原主査】 ありがとうございます。今のような点に関して、先ほどの出口に関しての進め方等ですと、産学連携室のプロジェクト等では、出口にどうつなぐかということに関してのいろいろな工夫をされているので、何か参考になるような点があるかとも思って、私も伺っておりました。常行先生、ありがとうございます。

加藤先生、どうぞ。

【加藤委員】 先ほど、もう時間がなかったということで博士のことはあまり言わなかったのですけど、やはりこれだけ産業界の方々が言ってくださっているというのは非常にありがたいですし、施策としてもいろいろ出てきていて、気にしていただいているというのは非常にありがたいと思うので、引き続きこのような産業界の皆様の御意見もうまく外に向かって紹介したり、学生や社会にアピールできるように、私も努力していきたいと思います。引き続き産業界の皆さんもいろいろ御意見いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【栗原主査】 学生さんと、それから今ですとやはり父兄の方々、特にお母さんにというのもあるかもしれないですね。ありがとうございます。

【加藤委員】 はい。そういうふうに頑張ってやってみます。

【栗原主査】 射場委員、手が挙がりました。

【射場委員】 局をまたいだ連携、局は一緒かな。博士の話は科研費の委員会なんかでも、すごく若手重視みたいなことで博士の議論もすごくしていますし、先ほど栗原先生からもありましたが、NISTEPでも随分調査をしていますし、さらに言うとリーディングとか卓越大学院も大分成果が出てきているところなので、その辺りは文科省の中で情報共有していただくと、いろいろな施策が機能してきて、材料関係はどうするかみたいなところにもつながると思うので、ぜひ中での議論をしてほしいと思います。

【栗原主査】 進んでいる部分の情報を他の委員会の委員に少し伝えていただくというのも、いい場合もあるかもしれないですね。いろいろ議論が少し前へ進むかもしれない。

吉江委員、お願いします。

【吉江委員】 今の、それこそ博士とかの話ですけれども、本当にいろいろ施策が進んでいるようで、とてもありがたいお話だと思っています。これはこの先いろいろなところで広報されていくのだと思うんですけれども、その際、ぜひ博士の後に明るい未来が待っているというような話が続いて、一緒にセットでお話ししていただけるといいかなと思いますので、ぜひそのようにお願いいたします。

【栗原主査】 ありがとうございました。これは大学の先生たちも、博士課程はアカデミックポストだけではないこと、積極的に広い未来を、理解しつつ伝える必要があるので、大学の中での情報共有も非常に大事だと思いますので、その点我々も心がける必要があるのではないかと思います。
ほかにありますでしょうか。

では、このお二人までということで、馬場先生、高梨先生の順でお願いします。

【馬場委員】 今回参考資料でいただいたほうの5ページ目で、前から読んでいて気になっていることがございます。先ほどの博士課程の学生の議論なんですが、アカデミアの役割のところで最後の2行、文書のほうです。「大学等の研究現場では、研究手法への魅力低下とあいまって、博士課程進学者や若手人材が不足しており」ということが書いてあるんですが、これはマテリアルの分野が特に博士課程の進学者が減っているという理解をされているということなのでしょうか。あるいは、全般に博士課程は減っているというのはこれまでの議論のとおりだと思うのですが、今回のこのマテリアル革新力戦略の中で、特にマテリアル関係の博士課程について、ほかの分野と比較してさらに減っていると理解されているということなのでしょうかという質問です。

もしそうであれば、ぜひその辺も含めて、先ほどから、企業の方から心強い御発言をたくさんいただいているのは大変ありがたいと思います。工学研究科のドクターの学生は結構企業に行く人が多いので、5ページ目の一番下の2行なんですが、「大学等の研究現場では、研究手法への魅力低下とあいまって」云々と書いてあるところです。その原因も含めて、もしこのマテリアル革新力戦略の中で分析していただけるのであれば大変ありがたいなと、企業の方とか、いろいろな分野の方からの御意見もいただいて、博士課程、その支援だけではなくて、研究の魅力自体でも博士課程が増えるような施策というのがこの中から出てくれば大変ありがたいなというふうに思っております。

以上です。

【栗原主査】 ありがとうございます。高梨先生どうぞ。

【高梨委員】 ちょうど博士課程の話が盛り上がったので、最後に一言だけ言おうと思ったんです。栗原先生が最後にまとめられていたので、いいんですけど、大学ももちろん努力しなきゃいけないし、変わらなきゃならないというというところもあります。その中で、1つだけ言葉が、今回これまでに出てこなかった言葉が、リカレント教育です。そのまま学生が博士課程に行くということだけではなくて、企業に行ってからの方も大学で学び直すことができるということ、これも今、大分充実はしてきているかと思うのですが、今回ちょっと言葉として出てこなかったので、そういった点も大学としても用意するようにしないといけないなということを最後に、蛇足になるかもしれないけど申し上げたかったです。

【栗原主査】 ありがとうございます。化学や材料領域ではドクターの方々の企業への就職は、全般的にはスムーズだと思います。少しポジティブな部分も書いていただけると良いと思うので、よろしくお願いいたします。ぜひ皆さんで認識をシェアしつつ、より多くの方がそういうキャリアパスを通っていただけるようになると良いと思います。ありがとうございました。

それでは、本日の議事は以上となります。

本日の委員会をもちまして、第10期については最終回となります。それで私、今期でナノテクノロジー・材料委員会の委員を終了しますので、少し思い出話をさせていただいて、挨拶に代えさせていただきたいと思います。

確認しましたら、2007年、第4期にから当委員会の委員に加えていただき、当委員会は文科省の本格的な委員会として、最初に参加させていただいたものでした。初年度の12月にナノ材室より委員全体に、何か議論する提案とか意見を発表しないかというお問合せをいただきました。新人ではありましたが、関心を持っていた「環境ナノテク」はどうかと御連絡したら、何か発表するようにというご依頼をいただき、お正月は仲間の先生に意見を伺ったり、さらに調べたりと準備して、1月の委員会に提案いたしました。

温暖化が議論され始めた世界の流れもあり、その後、検討会ができてメンバーに加えていただき、提案した責任を感じて、世界の動向などの検索もいろいろしまして、ナノ材室の若手の皆さんが提案書を準備されるお手伝いをしてと、私はそのつもりでしたが、お邪魔をしたかもしれませんが、お役所の皆さんがより仲間となりた。その後、様々な委員会での活動の原点の活動をさせていただいたことに大変感謝しております。今後の委員会の活動の中で、委員からのより積極的な提案も大切だと感じております。また、この提案に参加したことで、個人的には大学でも、ボランティアでナノテク・低炭素化材料技術研究会という部局横断のグループを立ち上げまして、これは8部局の先生方に入っていただいたので、割と珍しい活動だと思いますけれども、定年まで分野融合促進の活動をいたしました。

この委員会には研究分野の近い、身近な先生が多いので、個人的なメッセージを伝えさせていただくことをお許しいただければと思います。文科省の委員をさせていただいて心がけていることは、一研究者としてですが、研究現場とお役所、文科省の両方をつなげる活動をということです。研究現場の思いや現状を委員会につなぐことはもちろんですけれども、委員会での丁寧な議論や役所の御担当者の思いが一行のメッセージで大学などの現場に伝えられると、なかなか分かりにくい場合もあると思います。これにはお手伝いできたかどうかわかりませんが、気持ちでは何とか丁寧さが伝えられればと願っておりました。

またこの間、計算科学とか放射光、先端計測あるいはネットワークなどの活動による学術の進展に関しては、こんなこともできるのだということを早く、より広い研究者コミュニティに伝えたいと思い、編集委員をしております化学会のカレントレビュー誌に何冊か、取り上げさせていただきました。

形は様々だと思いますが、科学技術あるいは学術の先端の進展のために、引き続きこの委員会、そして委員の皆様が御貢献いただければと願っております。また、最後なので、ちょっと先輩めいた口調になったことをお許しいただければと思います。活発な御議論、大変な御尽力、ありがとうございました。私、まだ少し現役で研究を続けられる形になっておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

では、最後に事務局から一言と、事務連絡をお願いいたします。

【杉野局長】 失礼いたします。文部科学省の研究振興局長の杉野です。委員の皆様におかれましては、第10期全体にわたりまして審議に御参加をいただきまして、ナノテクノロジー・材料科学技術分野の発展に向けて毎回熱心に御議論いただきましたことに対しまして、御礼を申し上げたいと存じます。また、栗原先生におかれましては、物質・材料研究機構部会の主査もお務めいただきながら、会期途中からこの委員会の主査も御担当いただきました。本当にありがとうございました。

本日の議題でもございましたマテリアル革新力強化戦略につきましても、この委員会での御議論を土台として、おかげをもちまして、今まさに内閣府を中心として、政府全体の戦略としての最終的な取りまとめが行われようとしております。Society 5.0の実現、そして社会全体のDXが必要とされている昨今、ナノテクノロジー・材料科学分野は、その基盤技術としてますます重要になってきているものと私どもも実感をしているところでございます。

次の第11期の委員会におきましても、このマテリアル革新力強化戦略も踏まえまして、研究開発戦略の改定など、この分野の発展に向けた御議論をいただくことになるかと思っておりますけれども、先生方には引き続き御指導いただきますようお願いいたしまして、簡単ですけれども、私からの感謝の御挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。

【栗原主査】 どうもありがとうございました。

【小川補佐】 それでは引き続きまして、事務局より御連絡いたします。

本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成して、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後に、ホームページにて公開いたします。また資料につきましても、議事録同様、ホームページに公開させていただきます。

本日は長い時間にわたりまして本当にありがとうございました。

【栗原主査】 それでは、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会はこれで閉会させていただきます。皆さん大変活発な御意見いただきまして、本当にありがとうございました。

―― 了 ――
 

お問合せ先

研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)