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第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第4回)議事録

1.日時

令和元年9月19日(木曜日)15時30分~18時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. ナノテクノロジー・材料科学技術分野における取組について
  2. 第6期基本計画策定に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策について
  3. その他

4.議事録

【三島主査】 大体、皆様おそろいのようですので、第10期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会の第4回目を開催させていただきます。御多忙のところ、皆様方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

本日の議題は、議題(1)として、ナノテクノロジー・材料科学技術分野における取組について、菅野委員、湯浅委員、馬場委員、中山委員という豪華メンバーによるプレゼンがございまして、その後、議題(2)として、第6期の基本計画策定に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策について、これがもうそろそろまとめに掛かっていくところですので、非常に重要なところかと思いますので、そこで御議論を今から頂ければというふうに思います。

では、早速ですが、まず、事務局より委員の出欠、及び、配付資料の確認をお願いしたいと思います。竹上専門官、どうぞお願いします。

【竹上専門官】 失礼いたします。

本日の委員の出欠ですけれども、五十嵐委員、瀬戸山委員、高梨委員、納富委員、長谷川委員、吉江委員、萬委員が御欠席です。

また、当省より、局長の村田、及び、参事官の黒澤が出席しております。遅れて、研究振興局審議官の増子も参加する予定です。

次に、配付資料ですが、議事次第、1枚紙を見ていただきまして、本日、配付資料といたしまして、資料1-1から1-4として、本日の4名の委員からの御発表資料、資料2としまして、議題(2)に用います「御議論いただきたい論点(案)」、また、参考資料1、2とそれぞれ御準備させていただいております。前回資料につきましては、水色のファイルにとじておりますので、そちらも御確認ください。

資料に欠落等がございましたら、事務局までお知らせください。

以上です。

【三島主査】 資料、いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。そろっておりますれば、先に進めたいと思います。

では、議事の一つ目です。ナノテクノロジー・材料分野における取組についてということで、第6期の科学技術基本計画の策定に向けて、本日はナノテク・材料分野と異分野の融合という観点から、先ほどもお示しした、まず、菅野委員、湯浅委員、馬場委員からということと、それから、その後、ナノテク・材料分野におけるこれまでの取組の振り返り、あるいは、諸外国の動向等の観点から中山委員に、それぞれ御発表いただきます。10分程度で発表していただきまして、それぞれ10分程度の質疑というふうに考えてございますので、御協力をよろしくお願いいたします。

それでは、まず、菅野委員から、よろしくお願い申し上げます。

【菅野委員】 菅野です。それでは、トップバッターということで、お手柔らかにお願いいたします。私からは、蓄電池、材料と蓄電池というお話をさせていただきたいと思います。

蓄電池については、もう皆さん、身近なものなので、どういうものかというのは御存じですし、リチウムイオン電池がこれだけ大活躍している。そこで、次の電池として固体電池が出てくればいいという状況になっています。

ここまで、例えば固体電池であれば、材料から電池開発まで、今、うまくいっていると言い切ってしまうのはちょっとどうかと思いますけれども、課題はあるにしても、実用化に向けて進んでいます。そういう話を最初にさせていただいて、でも、その奥にはいろいろ、いろんな紆余曲折があったということで、後半はその紆余曲折のところの話をさせていただければと思います。

私自身、もともと材料屋ですけれども、蓄電池で材料開発というのを担当して、40年です。リチウム電池で40年やっているということは、現役でやっている研究者の中では多分一番古い人間かと思います。そこで、個人的な感想として、いろいろこれまで感じたこと、そういうことをここでお話しさせていただければと思います。

今更なんですが、自己紹介です。2年ほど前に、それまで大学では学部にいたのですけれども、固体電池をやりなさいということで、研究ユニットを三島先生のときに立ち上げていただくことができまして、今は研究所に所属して、こういうユニットで、固体電池を、蓄電池を主に研究しているというのが、私の現状です。

電池、サイエンティフィックには、1800年にVoltaが発明して、紆余曲折あって、1991年にリチウムイオン電池が出てきました。この電池の歴史の中では画期的なことです。これだけ性能のいい電池が出てきたというのはもうこれまでになかったことで、したがって、今、パソコン、スマホ、車にまで積まれようとしている。でも、やっぱり不満がある。じゃあ、次の電池、どうするかというのが課題です。


電池というのは正極と負極と電解液があるのですけれども、この液体を固体に置き換える。固体に置き換えるメリットは何なのかというのが、これまで固体電池の研究者はなかなか示すことができなかったのですが、ようやく示すことができて、固体になると、次の蓄電池がステップに行くんじゃないかというのが今の状況です。


固体電池の研究者としては、液体と固体とを混ぜて一つのデバイスにするというのは、何ともはやスマートじゃない。固体で全部積み上げてデバイスにするとスマートだというのが基本的な思いです。なかなかそれが理解されてこなかったというのがこれまでです。

幸いに、2011年に、液体の電解液に匹敵するような材料を見付けることができまして、それで、電池を固体にすると、ひょっとすると、リチウム電池よりも上の特性に出るかもしれないという状況になってきたわけです。2011年に、我々が、LGPSと名前を付けた、こういう結晶構造を持ったものを見付けて、さらに、今はそれよりももう少し導電率がいい状況になっています。材料開発で、世間の目から見ると、成功した例の一つと捉えられています。

2011年の材料は、リチウムとゲルマニウムとリンです。ここに示したのは、物質の導電率を示したアレニウスプロットです。この辺りが室温で、液体の電解液、それから、その見付けた固体の値があります。室温では液体と固体とがほぼ一緒ぐらい、低温では液体よりもはるかに導電率が高いので、電池でも液体に換えるとメリットがあるんじゃないかということがわかったのが2011年です。

2016年に、トヨタの加藤さんたちと一緒に小さい電池を作って、特性を調べました。ここにラゴンプロットを示します。縦軸が出力、横軸がエネルギー密度です。キャパシタは出力が取れるので左上にあります。研究中のリチウム酸素などはエネルギー密度が非常に高いので右下にあります。リチウムイオン電池はこの真ん中ぐらいにあって、エネルギーも出力も出る電池に仕上がっている。これを固体にすると、もっと上に行くことがわかりました。固体にするメリットが、本質的に電流が取れる電池に仕上げることができるというのが分かったわけです。その後、いろんなところで実装に向けての開発段階になっています。

産業側では、プロセス開発というのが進んでいます。我々の基礎研究側としては、材料の組成を変えるなど、材料の多様性を増やすことによって、イオン導電特性だけでなくて、安定性、可塑性など様々な特性を変えています。さらに、材料の組合せを選び、材料を使い分けて、固体電池として特性のいいものができないかというようなことを、日常の研究開発の現場では行っています。

蓄電池としてのロードマップを、ストレートな一直線として書きますと、基礎研究としての材料開発から、この小さなデバイスの特性の電池としての特性の確認をします。この辺りまでが基礎研究で、その後、産業に移って、これをシート化するプロセスの開発、さらには、これをパッケージにしてシステムにして、実デバイス化、モジュールにして製品として展開するとなります。一直線で書くロードマップにすると、大学での基礎研究から産業へのプロセス開発、製品化に向けての橋渡しができたということになりますが、そう話は単純ではないですよね。

私自身は、物質開拓が主な研究の課題と言いましたけれども、物質探索、新しいものを探索するという研究をしていると、新しいものというのは作ればいくらでも出てきます。でもこれは基本的には趣味の世界の研究です。研究者の個性によって新しいものを作り出していくという趣味の世界です。大きな研究費は要らないですけれども、日常的にこれを行う必要があります。

新しく作った物質、ここまでは単に物質の世界ですけれども、それが材料になるためには、例えば、あるデバイス、すなわち目的とするデバイスを見据えて研究を展開する必要があります。物質を材料にするための研究や、さらにその材料を展開する研究というのは、物質の基礎研究の世界から越えて乗り出す必要がありますし、応用のデバイスの側からも基礎の側に乗り出して材料を変えるという位置付けになります。

さらに材料から、実際にデバイスに行くにもギャップがものすごく大きい。デバイス開発のところでも、当然いろんな課題があります。最終的なデバイスの特性というのは、たとえば電池では、特性の限界は材料によって、さらには物質によって基本的なデバイスの特性は決まってしまうというのが材料、物質屋からの発想です。

ここのギャップを、乗り越えるか乗り越えないかが最初の課題ではあるのですが、たとえ乗り越えたとして、デバイス開発になった段階にも、そこでの課題を材料開発へもう一度フィードバックすることが必要です。すなわち、材料開発とデバイス開発の会話がやはり必要です。この過程が実際のデバイスを世に出すときに必須であると思います。

一方、基礎研究の立場としては、物質探索は、あくまで研究者の趣味の世界ですけれども、ちょっとは材料になるかという希望のもとで、デバイス化を横に見ながら、趣味の研究をやる必要があります。これが基礎研究から応用研究につながる研究の広がりとなっていると考えます。基礎研究、すなわち物質を扱う研究では多数の研究者が、今、日本にはいます。この多くの研究者が自由に研究できる環境をどう作るかというのが課題かと思います。

次に、大学の研究、産業の研究、デバイスの開発について、少しふれます。

電池であれば、製品となって出てきて初めて使われます。それには、開発している電池メーカーなり、車メーカーがあり、そこで電池開発をして電池評価を経て、製品になります。電池の開発には当然、大規模なメーカーが関与して、その要望を聞いて材料メーカーが材料を供給するという道筋になっています。これは非常に強固な関係で、材料特性と電池特性のすり合わせを行って実際の電池が開発されています。

一方、基礎研究では、大学は大学の中で材料開発をして、その開発した材料を用いて新しいデバイスの種を研究しています。このループは大学内・基礎研究内で閉じているわけですね。これを産業で結びついている産業側の関係にどう結び付けるか、これが非常に課題です。すなわち、この結び付けるルートはほとんど無く、細いルートがわずかにちょっとあるというだけかと思います。材料の研究を大学でやっているのであれば、材料メーカーと関係があると思われがちですけれども、実際これはほとんどつながっていない。たとえば、産業側で使う材料の開発、すなわち実際のデバイスの特性を向上させるためのすり合わせの技術開発のところで、困ったときは、産業と大学との課題解決型の共同研究が成り立ちますけれども、このテーマは当然限定的で、新しい材料の開発から新しいデバイスの開発に進むという、世間で一般的に言われている基礎研究から応用研究、さらにはデバイス開発につながるということは多分あり得ないですね。

電池というデバイスには、様々な種類の電池がありますけれども、一旦、ある特定のデバイスと結び付くと、なかなか次の電池に変わらない。例えば鉛電池の例です。鉛電池はどんな車にも入っています。そこが変わるのは結構難しい。リチウムはスマホ、パソコンと結び付いて、次、EVと結び付けるかどうかという状況かと思います。そこで新しい電池と結び付くか、リチウムと結び付くかというのが現在の状況だと思います。

すなわち、新しい電池を開発するモチベーションがあるのは、既存の電池の限界を知っているユーザーしか、そのモチベーションがないということですね。新しい電池を開発する動機は、今の電池に不満を持っているから、新しい電池を開発する。車もそうですし、ロボット、飛行機など、これから要望が出てくると思いますけれども、その要望がないと、新しい電池を開発するというモチベーションがない。不満はデバイスを動かすユーザーだけが知っています。さらに、付け加えますと、世界を変えるだけの大きな力を持っているのは、そのデバイスの市場を握っているところだけです。デバイスでの影響力のあるメーンのところが、たとえば部品である電池の不満を持っているからこそ、新しい電池を導入して、世の中を変える力が出てきます。

ということなので、今後、新しいデバイスに新しい電池が入るかどうかというと、どういう道筋で出てくるかというのはなかなか厳しいですね。世界の市場を握っていて、かつ現在の電池に不満を感じるところに、新しい電池を開発するモチベーションが出てきます。

じゃあ、どのようにして新しい電池を、新しいデバイスで出すか。中国、アメリカはベンチャーを通じて何かそういう実験をするという場があります。日本ではどうするかというようなのが、今の課題かと思います。

実際、材料をやっている立場では、どこのメーカーであっても、どこの国であっても、どこの国のいかなる企業が実用化しようと、実用化される材料にとってはハッピーなわけです。国内に限る必要はないというのが材料研究者の立場です。

我々はLGPSを見付けました。ここでは物質開発のパーソナルヒストリーを示します。リチウム導電体の開発の歴史は、1970、60年代から延々と続いています。私がこの世界に入ったのは1980年、そのときに見いだした材料はマイナス5乗、2000年にマイナス3乗、2011年に2乗、今はもうちょっと上になっています。マイナス2乗という液体の導電率を超えた材料が出たのは、長い探索の背景があってのことです。先ほどの、材料の基礎研究では趣味の世界が必要というのは、マイナス5乗からマイナス3乗の物質を開発した辺りの研究が趣味の世界に対応するからです。基礎の物質材料の研究では、こういう研究のできる母集団の大きな研究者人口があって、そこから生まれる大量の物質のなかでほんの少し、例えば海の上に顔を出した氷山のようなものが、社会に出ていく可能性があるというのが材料研究の世界です。

したがって、大学に多くの研究者がいるのは、これがやっぱり強みだと思います。この重要性が認識されているのか、されてないのか、よくわからないのが心配ですけれども、ここからいかに果実を出していくかというのが課題かと思います。

その出た果実を早くピックアップしてデバイスに持っていく。ここは大きなプロジェクトで可能になるわけです。この膨大な基礎研究の量、一見役に立たないように見えるところの研究量が落ちているということは、収穫できる果実も確実に減っているということです。地道な材料研究というのが基本であると考えます。

もう一点、新しいデバイスが出たとき、そのデバイスが出た後での材料研究、そのデバイスに関連する材料研究というのもやっぱり必須であるということをここで言っておきます。これは、後で振り返ります。

材料研究にAIを導入する。分野を魅力的にするというのが必要です。材料を地道に探索して、作ってゆくという作業は、多分、余り魅力的には見せることができない。そこを魅力的に見せるには、最新鋭のテクニックを導入して、その材料を魅力的に、材料分野そのものを魅力的に見せるというのが必要なんだろうなと思います。

産業側の課題。材料を実用化につなげることは、要するに、その分野のリーディング企業の存在、巨大企業の存在が必要です。これまでの市場を変える力のある企業が必要であるというのは、材料研究をやっている基礎研究者であっても、しみじみ感じます。

学生の課題。大学としては、教育としては、博士課程の学生の課題、これは大学にいる私の反省もあるんですけれども、自ら考える力を付ける必要があります。君、どう考えるの?といいながら育てるというのが、絶対必要なんだろうと思います。

そこでちょっと不満を言いたいのは、今、修士から博士に行く学生が減っているといいますけれども、大学側、我々の側から見ると、修士の学生をもう根こそぎ採っていく、誰も残らず採っていくというような状況になっています。博士課程に対応する年齢は、研究者や技術者として独り立ちするための修行の一番重要なとき、自分で考える力を付けるときです。企業は、そこをもうちょっと何とかしてほしい。

リチウム電池の歴史をもう一度見てみます。1991年に一旦実用化された後、基礎研究には問題が生じました。もうリチウム電池は実用化したから、基礎研究はいいやとなりました。他の国のプロジェクトや、他の国のメーカー、すなわちこれからキャッチアップする方は、日本で実用化された時点がスタートですから、基礎研究や応用研究で、そこに集中的に投資するわけです。すると、その次の展開というのはもう明らかになります。材料へのコンスタントな研究投資が、基礎研究の投資というのが必要であると考えます。

最後に、基礎研究、やっぱり必要です。どのようにして基礎研究に投資するか、何か戦略が必要というのは分かります。材料研究では、鉱物から原料になって、物質研究から材料研究を経て、製品になる材料になって世に出ます。材料の組成を変えて構造を変えて、構造制御、組成制御で特性を向上させ、デバイスに繋げる、そういう一連の材料研究開発の流れを魅力的に見せるような仕組みが必要です。

AIについて、今、盛り上がっています。材料探索に役立てるための手法の開発の段階であるという認識です。材料探索の方法を探索するという段階ですね。結局、我々は材料を探索して実際の物質を出さないといけない。実際の物質を出すためにどうするかということに苦労しています。物質を出す過程をいろいろ明らかにして、それが論文になるということは、我々にとっては、(物質を実際に作り出さなくても)その過程を見せるだけで論文になるというので結構いいのですが、でも、それだけでは材料は出てこないですね。材料を出すという、本来の目的が重要です。

異分野の融合というのはよく言います。材料はやはり材料分野で、デバイスはデバイスの分野で別の分野です。エネルギー分野の蓄電池の材料といいますけれども、蓄電池と材料というのは別の分野です。私個人は両方に専門を置いて、自分の中でミックスしてここまで持っていきましたけれども、複数の分野に立脚して研究をすすめる仕組みが必要であると思います。「合成」と「AI」、「材料」と「エネルギー」など、何か一緒に見えるのですが、これらは、明らかに別の分野です。それをまたぐ仕組み、複数の分野に立脚する研究者技術者を育てる仕組みをうまく作るのが教育の課題であり、研究資金の出し方の課題であると思います。

以上ですね。ありがとうございました。

【三島主査】 どうもありがとうございました。

それでは、蓄電池の発達、あるいは、リチウム電池を中心としたブレークスルーへつなげていくために、幾つかあるギャップをどうやって乗り越えるかというようなお話ですが、御質問、御意見ございましたら、どうぞ。はい、栗原委員、どうぞ。

【栗原委員】 今おっしゃっていたところのデバイスにつなぐところはやはり一番キーポイントだと思いますが、先生の御研究の場合には、そこのところはどういう形で接続がスムーズにいかれたんでしょうか。もし差し支えなければ、少し御紹介いただけないでしょうか。

【菅野委員】 別に差し支えはないのですけれども、材料からデバイスに持っていこうとしたときに、昔、銅の電解質で固体電池を開発したのですけれども、それは失敗しました。基礎研究のところで出た電池を、産業を巻き込んで開発したのですが、実用化には至りませんでした。もうそれは30年以上前ですね。その後、20年ぐらい前、15年ぐらい前ですかね、リチウムの固体電解質材料を出して、それを次の電池開発プロセスにつなげようといろいろ動きました。でも、当時産業側はどこも動かなかったというのが正直なところです。

基礎研究から、産業側が動いて実電池にする技術開発に繋げるためには、我々だけの、私だけの働き掛けでなくて、他の研究者の研究も進展して、いろいろとその分野の研究開発の状況が整って、ある大きなメーカーが(ここにも出席されていますが)、乗り出しました。それで、一気に状況が変わったと思います。要するに、非常に難しいということですね。

【栗原委員】 ということは、あるレベルまで御自分でなさったということですよね。

【菅野委員】 はい。いろいろ悔しい思いはいっぱいしました。

【加藤委員】 興味深い話、ありがとうございました。

原理が出て、素材が出て、実用化まで行ったというので、私は液晶の分野にいるんですけど、今、対比してお聞きしていました。

それで、液晶の分野だと、はっきり役割は決まっているのでのすね。例えば物理、化学、それから、電子工学、光学、それから、半導体。最初にこういうものに、こういう夢のような壁掛けテレビができるというのは化学と、それから、電子工学の人がやって、それから、その後、それはイギリスとアメリカだったんですけど、電卓からテレビまで持っていったのは日本なんですよ。その後、量産したのはアジアのほかの国という感じで、役割も得意な、発展のときに、得意な国も全部違うんでね。

例えば理論物理の人も液晶をやっているし、化学メーカーもやっているし、一人の、例えば先生みたいな人はいないんですよ。つまり、電池で言うところの材料からエネルギーを一人で取り出す、すなわち材料も合成して表示デバイスを一人でつくるような人が液晶だといないのですね。液晶テレビは夢だったのですけど、1960年代後半に、アメリカの企業が原理を示してから、多くの技術者が夢をつないで研究を進めて、2000年ぐらいにテレビのディスプレイに実用化されて、今、もう当たり前ですよね。

電池の場合は、もしこれを日本の、今、いろんな国がやっていますけど、また日本のお家芸にしようと思ったときは、今お話聞くと、やはり個人的な力が強いのか、もう本当に量産で、もう何というかな、試行錯誤というか、弾数撃ってやるのか、私から見ていると、電極もあるし、電解質もあるし、界面も多くあるし、セパレータもあるし、これを基礎研究から持っていくときに、液晶などと比べて考えるのですがすが、先生一人でこう持っていけるものなんでしょうか。

【菅野委員】 当然、一人では持って行けません。電池というのは非常に狭い分野でした。これまでは、研究者人口も少ない。電気化学デバイスで、一握りの電気化学の研究者、技術者の世界だったわけです。だから、進歩が非常に遅かった。その状況が一変したのがリチウム電池です。材料の研究者、技術者が大量に入り込んで、それで、研究のスピードも上がりました。状況が、完全に変わりました。

ただ、電池はやっぱり複雑系なので、電極電解質界面もあるし、バルクの材料自体も関与しているし、なかなかよく分かってない。だから、最後は、今のところは力わざです。そこのサイエンスはまだまだで、だから、これからサイエンスをやる必要がありますね。力わざでこれまでは何とかなってきた。リチウムイオン電池は、とにかく力わざで今まで最適な組合せを上げる、組合せて、実デバイスになってきた。

次の電池が、その手法で、多分あるところまではいくと思いますけれども、その次の展開を考えた場合は、やっぱりもうちょっとスマートにする必要があるでしょうね。力わざでするとなると、日本が得意か、どこかの国が得意か、というような現状かと思います。でも、そこにサイエンスが入って、基礎と応用が会話しながらやっていくためには、多くの基礎研究者、デバイス開発の技術者の関与が必要だと思います。そういう状況がうまくゆく可能性のあるのは、多分日本だと思います。

【加藤委員】 液晶ですと、例えば、産業化した例として一つとして言いますと物理とか化学とか電子工学、光学などの関係者の役割がはっきりして協力しているのでのすね。電池の場合は、私は化学分野ですが、電池は電気化学のものみたいな感じがずっとしています。すごく脚光を浴びているのですけど、例えば理論物理の人が入ってくるというわけでもないし、やっぱり複雑過ぎて扱えない複雑系だと思うのです。いま、電池は注目を浴びているので、日本の中で、先生のような本当に電池が分かった人のところに、いろんな分野の人を結集して異分野の人をどんどん入れ込むというのは今非常に良いのではないかと思うのですけど。日本、いろいろな分野で強いので。

【菅野委員】 それは必要ですね。多分、電池、電極、界面を取り扱うのは、これまでは電気化学だったのですが、固体電池での電極と電解質は半導体で、電極界面は半導体界面なので、多分、半導体デバイスの考え方が絶対必要なんですね。だから、これまでなかったのが、固体になると、今おっしゃったこれまで考えていなかったことを考える必要があります。ご指摘のようないろんな分野の人が関与する、もっと大きな分野にしないといけないと思います。

【加藤委員】 ありがとうございました。

【三島主査】 ちょっと時間が押しているんですが、じゃあ、短く、はい。

【前田委員】 すみません、ありがとうございます。

研究者が大変たくさん増えたというのはすごくいいことだと思いますが、その技術を知っている研究者が、デファクトスタンダードに持っていくとか、ロビー活動をするのがベストだと思います。しかし、日本人というのは、これらの事が余り得意じゃないと思うんですね。

本当は、技術をちゃんと分かる人で、そのようなことをできる人材を作っていくと、もっと上手にアピールし、画期的な材料を用いて、全く新しいものに作り替える等を日本の価値にしておけるはずです。もともとニカドが全部リチウム電池に取り替えられた歴史があるように、大きなステップがあるわけですから、デファクトスタンダードやロビー活動をするということに秀でているような人、なおかつ、技術が分かるというような人材を入れていくというのも大事なんじゃないかなという気がちょっとしているんですけれども。

【菅野委員】 そのとおりで、電池に関しても標準化というのは大変重要な課題です、スタンダードを日本が握るかどうかという。それも去年からスタートしたNEDOの固体電池のプロジェクトの中で、標準化についての動きが今走っています。いや、大変重要です。

研究者は研究者で、自分の研究を趣味でやっているとハッピーですから、そこから一歩出ていこうとすると、どうするかというのはなかなか。日本でベンチャーがやっぱり出てこないというのも、やっぱりそういう課題ですね。逆に言うと、基礎に閉じこもれる日本の研究者はハッピーなんですかね。ということで、すみません。

【三島主査】 それでは、最後、中山先生。

【中山委員】 手短に。質問というよりは感想なんですけど、電池というのは、昔の半導体は産業の米と言われましたけれども、もはやもう電池は産業の米というような話で、国の競争力に直結していると、つまり、材料研究がもう競争力に直結しているんじゃないかなと思います。

ただし、私、前回もプレゼンしましたけど、シェアは大幅に低下してきているというのがもう如実に出てきているというところで、もう我が国、本当に食っていくかどうかというところという感じで言えば、もう四の五の言わずにここをやらないといけないということかなと思いますね。

先生も書かれていますけど、やはり基礎研究に対する二の矢、三の矢が弱いんですよね、多分ね。大事なことは新しいことじゃなくてもちゃんとやらないといけないかなと思います。多分、新しいことじゃなくて、今までやってきたこときに対する投資の方が、派手じゃないけど、多分、費用対効果は高いんですよね。そうなんですよ。

【菅野委員】 そうです。そのとおりです。キャッチアップを許さないという。

【中山委員】 なので、そういうところはもう非常に共感するところで、戦略的に大事なところに投資し直すみたいなことも大事かなと思いました。ありがとうございました。

【菅野委員】 ありがとうございます。

【三島主査】 それでは、菅野先生、どうもありがとうございました。(拍手)

それでは、続きまして、湯浅委員からお願いいたします。

【湯浅委員】 産総研の湯浅です。本日は、スピントロニクスの中核技術であります磁気トンネル接合、MTJについて紹介いたします。

スピントロニクスは何かというと、最近、もういろんな定義が出ていまして、いろいろ人によって言うことが違うと思いますが、私が考えるスピントロニクスとは、電子の持つ電荷とスピンを量子力学的に結合して、新機能を創出するということになります。これはどちらかというと狭い定義に当たると思います。こうすることによって、例えば磁石の持つ不揮発性機能、記憶機能を半導体デバイスに入れ込むということが可能となります。

ここでいかに量子力学的な効果を使うかですが、最近、この電荷とスピンに関係した量子力学的な効果というのがいろいろと発見されたり、提唱されたりして、専門家の私でも全部フォローし切れないぐらいになっていますが、やはりこれ、一番中心になるのは、磁気抵抗効果とスピントルクというこの二つの物理現象になります。これまでのところ、実用化されているのはこの二つだけです。

磁気抵抗効果とは、固体、あるいは、デバイスに磁界を印加すると、その固体の電気抵抗が変化する現象一般を言います。これによって何がいいことが起きるかというと、磁気抵抗効果を使うと、磁気情報を高効率で電気情報に変換できます。つまり、記憶を磁気で行っておいて、必要に応じて磁気抵抗効果で電気信号を読み出して、半導体回路でプロセスできると。この全く逆の効果ができるのがスピントルクでして、これを使うと、電気情報を磁気情報に変換できます。

こういうことは古典電磁気学ですと、ファラデーの電磁誘導の法則であったり、アンペールの法則でできるんですが、非常に効率が悪かったわけです。それを量子力学的なこういう効果を使うと、格段に効率が良く実現できることになります。

磁気抵抗では重要なパラメーターは二つありまして、一つはこの抵抗の変化率、これを磁気抵抗比、あるいは、MR比といいます。もう一つは、この磁気抵抗を得るために必要な磁界でして、応用のためには、室温かつ低磁界、具体的に言うと、ミリテスラぐらいの非常に低い磁界でいかに大きな磁気抵抗を得るか、これが重要となります。ここで難しいのは、このミリテスラというと、地磁気の数十倍ぐらいの磁界ですので磁界で変化する物理量というのは強磁性体の磁化の向きだけなんです。ですから、純粋に強磁性体の磁化を回転させることだけによって電気抵抗を変化させるのが、これ、従来非常に難しかったわけです。

歴史的には、この最初の磁気抵抗は、あの温度の単位で有名なKelvin先生が19世紀の半ばに発見したAMR効果というのがありますが、これ、MR比が室温でわずか1、2%、非常に小さな現象でした。例えば鉄のような磁性体の針金に磁界を印加すると、抵抗が1、2%変化する、そういう現象です。

ただ、これが余りにも小さかったので、これが当時、実用化できるとは誰も考えませんでしたし、この小さい値が実は130年間も全く伸びなかったので、ほとんどみんな諦めかけてかいたんですが、1980年代の後半に、フランスとドイツドイツの物理学者がGMR効果という新しい物理現象を発見して、この大きさが一気に1桁増えたわけです。これの発見によって、このお二人はノーベル賞を得ています。

次のブレークスルーは東北大学の宮﨑先生によってもたらされまして、さらに、TMR効果という新しい磁気抵抗効果を室温で実現しました。これによって、更にこの磁気抵抗が数倍大きくなったという歴史があります。

このTMR効果を得るには、磁気トンネル接合、英語の頭文字を取ってMTJというものを作る必要があります。MTJは非常に薄い絶縁体の層、厚さナノメートルのトンネル障壁という層の両側を、磁石に付く金属、鉄のような金属で挟んだ、こういう構造です。両側の磁石が平行の向きに向いているときは、この抵抗が低くなって、比較的大きな電流が流れますが、この両側の磁石が反並行に向いているときは抵抗が高くなって、電流が余り流れません。これ、片側の磁石の向きを常に一方向に固定して、もう片側の磁石が外部磁界によって自由に向くようにすると、これで磁気抵抗が得られます。これがTMR効果です。信号の大きさやMR比は、通常、この抵抗率の変化をパーセントで表します。これが性能指数となります。

95年に、宮﨑先生らはこのトンネル障壁にアモルファスの酸化アルミニウムを使うということがいいということを発見しまして、両側に普通の鉄やコバルトなどの強磁性金属で挟んだ構造で、室温で20%を超えるような磁気抵抗を得たわけです。

これが磁気ヘッドとしてハードディスクの情報読み出しに広く使われるようになりましたし、この片側の磁化が例えば右か左かどっちかを向くようにしておくと、この1個のMTJで1ビットの情報を不揮発に記憶ができますので、これを使った第一世代のMRAM、16メガビット程度の小容量のMRAMが実用化されています。

このように、磁気抵抗の伸びがハードディスクの磁気ヘッドの高性能化、あるいは、小容量で不揮発性磁気メモリ、MRAMの実用化につながったんですが、より大容量でより省電力な次世代のIT機器を作るためには、もっともっと大きな磁気抵抗が必要だったと、こういう課題があったわけです。

どうやって磁気抵抗を上げましょうということですが、宮﨑先生が開発したアモルファスの酸化アルミニウムの場合、当然、アモルファスですから、構成する元素がランダムに並んでいます。せっかく鉄のような磁性体の中にはいろんな対称性を持った電子状態が存在するんですが、ここがアモルファスであるがために、全て混ざり合って流れてしまうと。こういうことが起きると、MR比が室温で100%を超えられないという限界があったわけです。

一方、このトンネル障壁を完全に結晶性の物質に変えると、この電子の軌道対称性を保持したまま、トンネル伝導が起きるだろうということが理論的には期待できます。さらに、ここを酸化マグネシウム(001)を使いますと、このΔ1と言われる対称性のいい電子だけが非常に高い確率でトンネル伝導して支配的に流れるということは理論的に期待できます。2001年の第一原理計算によると、これによって、1000%を超えるような巨大なMRが出るだろうと予測されたわけです。

ところが、この理論予測に前後して、かなり有名な実験研究者がこれを作ったんですが、全然、酸化アルミを超えるような性能が出ませんでした。当時はまだ、第一原理計算によるマテリアルデザインが成功した例がほとんどない時代でしたので、うまくいかないで、それ見たことか、また理論が間違っているぞといろいろ批判されたり、あるいは、理論はいいんだけど、理論が仮定したような構造は絶対できないよという人もいて、みんなこれを諦めちゃったわけです。

そこで、私が、JSTのさきがけ、個人研究に提案しまして採択されて、2002年頃から研究を始めました。まず、初めに、非常に小さく特殊な基板の上に、MBEというまさに基礎研究の方法を使って、MgO鉄のきれいなエピタキシャルMTJを世界で初めてきれいに作ることに成功しました。

これによって何が起きたかというと、宮﨑先生以来、酸化アルミニウムで世界中で頑張ってなかなか性能が伸びなかったのが、これを境に、酸化マグネシウムで桁違いの性能が出たわけです。研究の初期の段階では、産総研とIBMのParkinという非常に大御所の研究者が競って引っ張っていました。

こういうふうに、なかなか材料の改良だけ、地道な改良では性能が伸びないのが、基本材料を変えると桁違いな性能が出るというのが材料科学の醍醐味だと思いますが、これ、似たような例としては、例えば、これ、有名な超伝導体のTcで、やはり基本材料を変えると、桁違いの伸びが出たと。あるいは、もう一つの分かりやすい例が永久磁石の性能ですね。佐川先生のNd-Fe-B磁石で、桁違いの非常に高い性能が出たと。この酸化マグネシウムに関しても、似たような非常にいい成功例だと思います。

ただ、これ、話はここで終わりではありませんで、初期の段階で、私やIBMが開発した素子というのはなかなか量産に向いていなかったわけです。なぜかというと、これ、MgO(001)というのは、面内4回対称の結晶構造の対称性を持っていますが、実用素子ですと、面内3回対称の対称性の下地の上に積まなきゃいけないと。結晶成長の常識ですと、3回対称の上に4回対称は絶対作れないというのが常識ですから、普通に考えると、これ、実用素子の上には作れない構造だったわけです。

ところが、ここでキヤノンアネルバというメーカーと一緒に開発したコバルト鉄ボロンと酸化マグネシウムを組み合わせた構造だと、それが実は可能になったので、これが量産技術となっています。
何をやったかといいますと、ごくありふれた実用的な磁性材料のコバルト鉄合金にボロン、ホウ素をちょっと入れると、成膜直後の状態でアモルファスにすることができます。ところが、不思議なことに、その上に非常に配向性のいい配向性多結晶の酸化マグネシウム(001)が自然に成長することがまず分かりました。

さらに、アモルファスのコバルト鉄ボロンを上に積んで、250度以上で熱処理を行うと、ここの界面から結晶化が始まって、固相相エピタキシャル成長の原理で、両側の電極も、bcc(001)の結晶構造、最終的には結晶化しまして、これが鉄とほとんど同じ電子状態を持つので、こうやって作ったこの素子でも、非常に大きな磁気抵抗が出るわけです。

これを使うと、面内3回対称の実用的な下部構造の上にアモルファスを積むことによって、その上に4回対称が積めて、アニールによって固相エピタキシャル成長で上下の層まで4回対称にできてしまうということで、結晶成長の常識を打ち破るような画期的な方法なわけです。

これが任意の基板の上に、室温スパッタ成膜、つまり、量産技術で量産可能であり、これが今まさにハードディスクなどの磁気センサ、あるいは、MRAMの応用の中核技術となっています。さらに、これ、非常に簡単に作れるということで、応用研究だけじゃなくて、基礎研究でも非常に重宝されています。

このように、酸化マグネシウムができて、その量産技術までできまして、これが磁気ヘッド、あるいは、第二世代のMRAMであるSTT-MRAM、あるいは、新規デバイスで高周波発振器など、いろいろな応用の裾野が今、広がっているわけです。

ハードディスクについては今、生産されている全てのハードディスクにこの酸化マグネシウムの磁気センサが載っています。これによって、従来に比べて1桁大きな記憶密度が既に実現されています。相変わらず、ハードディスクはITクラウド社会が支えるデータセンターの主流ストレージでして、いまだに市場規模は年商2兆円ぐらいの世界市場があります。

こういうふうに、基礎研究の成果が実用化で大きな市場を得るってめったにないことなので、幸いこれは非常に高い評価を頂きまして、手前みそで恐縮ですが、私、いろんな賞を頂いています。例えば、朝日賞は宮﨑先生と一緒に共同受賞で、ちょうど山中先生と同じ年に頂いております。

次に、今、世界中で頑張っているのが第2世代の不揮発性メモリ、STT-MRAMでして、我々が2004年にCoFeB/MgOの構造を報告したら、もうすぐにソニーが飛び付いてきまして、2005年の暮れには、面内磁化タイプのSTT-MRAMを世界で初めて試作しています。

次に、ブレークスルーとしては、産総研や東芝が中心になったNEDOプロジェクトで、組み合わせる磁性体を垂直磁化、つまり、磁石の向きが膜面垂直に向いた材料を使うと非常にいいということを見出しまして、世界初の垂直磁化STT-MRAMの開発に成功しています。

さらに、2010年には、東北大のあの有名な大野先生が、ありふれた作りやすいコバルト鉄ボロンでも、薄くするだけで垂直磁化になるということを発見して、これが今、主流となっています。

現在、STT-MRAMの記録素子の構造はこうなっていまして、これはごく単純化すると、こんな感じで、見てのとおり、上から下までほとんど我々が先駆的な貢献をしています。ここで先駆的な論文をまとめていまして、先駆性が評価されて、3,000を超えるようなサイテーションを得ていますし、以前、細野先生がこの委員会で講演されたときに、論文が特許で何回引用されるかが非常に重要だよと話されましたが、例えばこの論文は特許でも非常にたくさん引用されております。大野先生の研究も含めて、非常に上から下まで全ての要素で日本が先駆的な貢献をしていると。

これは学術についてはスピントロニクスはやはり日本が圧倒的に強いと言えるんですが、さて、肝心な産業応用はというと、まず、NEDOプロジェクトの技術を移管された東芝がハイニクスと組んで、かなり大々的に研究開発を行いまして、2016年には、4ギガビットのSTT-MRAMの試作に成功しています。この時点ではもう世界を圧倒的にリードする技術だったんですが、いまだに事業化されていません。

そうこうしている間に、アメリカのMRAM専用メーカーのEverspinが既に1ギガビットのSTT-MRAMを販売していますし、今年の3月からは、SamsungがシステムLSI混載STT-MRAMの量産開始、しています。さらに、このIntelやTSMCなども、このSamsungを追い掛けて、事業化の準備中にあると。あっという間に、事業化では日本は抜かれてしまっています。Yoleレポートによると、2024年で世界市場は1,800億円ぐらい、まだそんなに大きくありませんけど、これから先、もっともっと伸びることが期待されているわけです。

なかなか産業に貢献できないで、外国メーカーをもうけさせるような形になってばっかりではまずいということで、最近、産総研では、製造装置メーカーの東京エレクトロンと大きな共同研究を始めています。東京エレクトロンは、半導体の製造装置メーカーとしては世界で3本の指に入る大手メーカーで、半導体関連メーカーとしては日本最大のメーカーとも言えます。

産総研は、冠ラボという制度を今、推奨していまして、これは何かというと、産総研に3億円を超える資金を投入すると、企業の名前を冠したラボを産総研の中に作って、自由に研究開発ができるというもので、これまでに十数件の冠ラボが立っていますが、このTEL-産総研冠ラボもその一つです。

具体的には、私の研究センターから研究員が参加して、TELから数名出向して、産総研のTIAスーパークリーンルームの300ミリメートルウエハのファブを利用して、STT-MRAMの生産技術の開発を行って、それを活用して、MRAM製造装置の開発の技術サポートを行っていると。こういうことで、何とか日本の産業力の強化に貢献しようということを行っています。

最後に、これ、おわりにというか、生意気な提言を幾つか書いていますが、まず、これまでの経験上、研究開発の成果を国内産業の強化に結び付けるのはそう簡単ではないということを身にしみております。下手すると、外国メーカーをもうけさせるだけになってしまうと。

これは何とかしなきゃなんですが、もう一つ考えなきゃいけないことは、日本の雇用や税収に結び付くなら、何も国内メーカーだけにこだわる必要もないんじゃないかと。これが目的でしたら、外資とも積極的に連携するのも検討したらいいんじゃないかなと考えています。

もう一つは、ハイリスク・ハイリターンな挑戦的な研究が、最近、どうも足りないようだと、これをもっともっと推奨すべきだと思っています。そのためには、もっと大勢の若手研究者に裁量権と中規模の資金を与えるべきだろうと思います。中規模というのは、例えばJSTのさきがけや科研費・基盤Aクラスがちょうどいいサイズかなと。

これは何かというと、失敗を恐れない年齢層に失敗が許容されるぐらいの中規模資金をたくさん与えて、もうどんどん失敗して、中に何十件かに1件でもいいけど、大成功するような研究を育てるべきじゃないかと。それが最近どうも少なくなっているように私は感じています。

巨大プロジェクトというのは、どうしても若手研究者は裁量権のない労働者として使われがちでして、選択と集中の名の下に巨大プロジェクトがどんどん立つと、こういう挑戦的な研究をできる若手研究者の裁量権がどんどん減ってきてしまうという問題が生じかねないので、この点は注意しなきゃいけないと思います。

私、若い頃から言っていることですが、本当に挑戦的な研究というのは上司に言われてやるものじゃなくて、むしろ上司の反対を押し切ってやるものだろうと。これ、若い頃、私がこういうことを言ったら、いろんなところから、産総研の若造が生意気なことを言っているといろいろ御批判を頂いたことがありますと。そんな私も、年を取って、たくさんの部下を抱えた上司の立場になりましたが、いまだに同じことを言っています。私、これはもう一生ぶれずに言い続けようと思っています。

もう一つ、最後に書いたのは、若手向けの中小規模プロジェクトでは、過度に応用を要求すべきではないと考えています。

ここで伊能忠敬はなぜ蝦夷地を目指したかと書いてありますが、皆さん御存じのとおり、伊能忠敬は江戸幕府の支援の下で蝦夷地まで行って測量を行って、日本地図を描いたんですが、伊能忠敬が一番やりたかったことって実は地球の大きさを測ることだったんですね。

地球の半径を測るには、北極星の角度を異なる緯度から測る必要がありまして、地球の大きさを正確に測りたければ、江戸から蝦夷地まで北上する必要があったと。ただ、地球の大きさを測りたいと言っても、江戸幕府から許可されるわけがありませんので、伊能忠敬は、地図を作りますということで江戸幕府の支援を受けて、結果的には、地球の大きさを0.1%ぐらいの誤差で測って成功して、個人的な探究心も満たされたし、日本地図が完成して江戸幕府も喜んだと。

私は、若手向けの研究に要求する応用というのはその程度でいいんじゃないかと考えています。ここで、私がMgOを研究したのも実は似たような話でして、実は、私がMgOをやろうとした一番の目的は基礎物理の解明でしたと。トンネル障壁がアモルファスだと物理がさっぱり分からないので、これを結晶にすれば、物理が解明できるんじゃないかと考えてやろうとしたのが一番のモチベーションです。ただ、物理解明だけじゃ、さきがけを通していただく自信がなかったので、MR比も大きなのを実現しますという一石二鳥のプランを書いて、うまく採択されて、うまくいったという経緯があります。

私、なぜこういうことを強調するかというと、どうも最近は、JSTさきがけでもかなり応用が要求されるという話を聞いておりまして、私は、さきがけぐらいだったら、応用はそんなに要求する必要はないんじゃないかと思うから、言っているわけです。特に私のさきがけの成果が応用の代表的な成功事例として強調されても困るので、私のさきがけの一番の目的は、実は物理研究だったということをちょっと最後に述べさせていただきます。

以上です。

【三島主査】 どうもありがとうございました。

それでは、湯浅委員に御質問、御意見がございましたら。はい、じゃあ、常行さん、どうぞ。

【常行委員】 大変興味深いお話、ありがとうございました。

二つあるんですけど、一つは、多分、私みたいに事情を知らない人間は、皆さん、きょう、不思議に思うと思うんですが、STT-MRAMでこれだけ先駆的な仕事をされて、これだけ世界の先頭を走っていらして、なぜ事業化がこんなに日本で遅れてしまったのか。

【湯浅委員】 これは、過去20年間の日本の半導体産業の歴史に重なる部分があるんですが、大きな投資を、リスクを負って大きな投資をする判断をできる企業がなかったということに尽きるかなと思います。

やはり本当に大きなマーケットが得られるかは確証がないのに、数千億円規模の判断をしなきゃいけないと。それを、例えば韓国のメーカー、台湾のメーカー、アメリカの巨大メーカーはできたのに、日本の半導体産業はできずに、ずるずると来てしまったというのが一番大きいんじゃないかと思います。

【常行委員】 細野先生のIGZOのときにも、何かそういう似たようなお話を聞いたような気がしますが。

それと、もう一つお伺いしたいのは、先ほどの菅野先生のお話でも、余り応用を強調するのはいかがなものかというようなことがビューグラフの中に出てきて、湯浅先生も最後にそういう応用ばかりを言っちゃいけないというようなお話をされたので、そういう基礎研究をやりながら、それでもやっぱり新しい芽を育てていくというときに、予算の仕組みとして、さきがけという例を挙げられたんですけど、さきがけはかなり特殊といいますか、本当にごくわずかな予算でしかないので、もうちょっと別のタイプのもので、こんなものがあったらいいとか、今ある仕組みでももっとうまく使えるとか、何かそういうお考えはおありでしょうか。もしそういういい案があれば。

【湯浅委員】 私は、例えば、今はもうJSTも戦略的創造研究で非常によくできた予算のピラミッド構造を持っていますし、科研費も似たように非常に長い歴史があって、採択の評価もうまくいっているシステムがありますので、その底辺に近い部分を面積を広げるだけでも、かなり効果があるんじゃないかなと私は思いますが。

【三島主査】 じゃあ、宝野さん。

【宝野委員】スピントロニクスの産業の趨勢とかを見ていますと、電池もそうだと思うんですけど、非常にクリティカルなクリエーティブな仕事は日本でなされたのに、残念ながら、電池はまだ残っていますけど、スピントロニクス応用の産業は海外に行ってしまいました。製造装置メーカーは残っていますが、これは、かつて日本で半導体の産業が盛んだったからであって、その遺産を守り続けていると思うんですね。

今後半導体やスピントロニクス製品の製造が海外に流れていくと、製造装置メーカーというのもずっと優位性を維持していけるんでしょうかね。

【湯浅委員】 そこが難しい問題でして、今まで東京エレクトロンなども日本メーカーがかなり顧客だったんですが、今、Intel、Samsung、TSMCなどと海外がメーンな顧客ですから、そこをつなぎとめるにはかなり労力が必要で、例えば、アメリカのアプライド・マテリアルズという非常にライバルの製造装置メーカーがありますけど、そことアメリカの中で勝つのは並大抵のことじゃないので、何らかの圧倒的な差別化技術がないと難しいと思いますね。

【宝野委員】 だから、そういったところに科学技術というか基礎研究がどう貢献していけるか。というのは、産業の受け手がないところで、いくら基礎研究といっても、大きなプロジェクトというのはなかなか動かないので、例えばスピントロニクスの将来展望を、どういうふうに説明していくかというのが今問われているような気がするんですね。

【三島主査】 ちょっと突然振って恐縮ですが、滝田委員が途中で御退場になるというんで、もし御発言がございましたら。

【滝田委員】 すみません。先ほどの菅野先生のお話の中で、物質探索というのは基本的には趣味の世界というか、広く薄くということで、湯浅先生のお話も大きな枠では多分そのような流れだと思うんですけれども、もう少し何か湯浅先生のお話を伺っていると、多少とも材料の部分も意識されて、基礎理論のところは大きな目標としてあるんだけれども、例えばファンドに申請するときには、もうちょっと応用の部分も意識して書いたようなお話を先ほどもされていまして、そこら辺の意識の違いというのは、例えば産総研と大学とかだと違うというようなところはあるんですか。

【湯浅委員】 産総研の一番のミッションは国内の産業の育成ですから、やはり基礎研究だけではもう産総研の中では食べていけませんね。ですから、目的基礎研究って我々は言い方をするんですけど、産業応用のための種を生むための基礎研究であって、純粋基礎研究は産総研では基本的にやってはいけないということになっております。

【菅野委員】 1点、よろしいでしょうか。

【三島主査】 はい、どうぞ。

【菅野委員】 材料、物質で新しいというのはいくらでも多分あるんですよね。でも、その趣味の世界の物質の研究に閉じこもるのはやはり、科研費を使ってやるにしても、やっぱりまずいと思います。ある程度の出口を、うそでもいいからと言うとちょっと語弊があるのですけれども、やっぱり何かの期待があるからこの研究をやる、でも、私の趣味の研究もそこで併せてやらせてくださいねという、そういう説明はやっぱり基礎研究者としてもすべきだと思います。それは物質と材料とは近いので、比較的説明しやすいですが、やっぱりそれ説明して明らかにすることは必要だと感じています。

【三島主査】 ありがとうございます。

それじゃあ、一つ、じゃあ、加藤委員、最後に。

【加藤委員】 簡単に。やはり、今、菅野先生がおっしゃいましたけど、レベルの高い趣味はやはり認めて、遊ばせる方が大事だと思います。先生もそれで生きてこられたので、最初はそうだと思います。

だから、やっぱり趣味にもレベルの高いのと低いのがあるので、そこをきっちりと見分けることも重要です。やはり金銭的価値だけではやっぱり駄目だと思うので、やっぱり非金銭的な価値でも高いものは化けることがあるので、そこは文部科学省に是非やっていただきたいなというふうに思います。

それから、さきがけは3,000万から4,000万ぐらいなんですね。

【湯浅委員】 中規模。

【加藤委員】 私、分子技術の総括をやっていましたけど、若い35ぐらいの人って、物すごく有り難くていいお金で、何も期待されないから、好き勝手できるのですね。これが本当にいいのですね。

だから、是非、先生も声を大きくして、さきがけは良かったと言っていただいて、費用対効果がすごく良いですよね。

【湯浅委員】 そうですね。

【加藤委員】 だから、日本の若い、日本の裾野をちゃんと見付けて育てれば、まだいけると思うので、是非、私も先生に同感でした。

【湯浅委員】 私も実はさきがけの大ファンなので。

【加藤委員】 それから、もう一つ、良いですか、すみません。もう一つは、産業化の話なんですけど、液晶とのアナロジーで考えてもすごく似ていて、液晶ディスプレイができたときは、大手電機メーカーはブラウン管を持っていたから、全く興味を示さなかったんですよ。それだけだったら、もう今、みんな液晶画面、使ってないですよ。だけれども、シャープ(早川電機)がブラウン管を作れなかったから、あそこに投資を踏み切ったわけですね。

だから、そのときに、先生の、もしその発明があったときに、大手メーカーはできなかったけど、挑戦する企業がなかったのは、日本の産業構造の問題なのか、例えば今言われているようなベンチャーがなかったらからなのか。大手の電機メーカーは液晶は、最初はやらなかったのですよ。そこはどうなんでしょうか。

【湯浅委員】 いや、ベンチャーに関しても、このMRAM関連のアメリカやヨーロッパのベンチャーは物すごい数あるんですが、日本が今のところ、有力なベンチャーはほとんどないと。やはりベンチャー育成もなかなか日本は得意ではないなというのが、私自身もベンチャーはやらなかったわけですが。

【加藤委員】 ありがとうございました。長々、すみません。

【三島主査】 じゃあ、最後にどうぞ、短く。

【栗原委員】 戦略創造研究に関しましては、私の属しているほかの部会の方で、プログラムを終了した次への接続をもう少し拡大する、それから、目標を大くくり化をして、基礎的なところをもう少し支援してほしいというまとめが近く出ますので、皆様、是非、応援していただければと思います。よろしくお願いします。

【三島主査】 前回のときに発表してくださった理化学研究所の加藤先生でしたっけ、もやはり同じように、若い人に要するに投資をすべきであるということをおっしゃっていたんで、ここのところ、非常にこういう意見が目立ってきましたので、是非みんなでそういうことを押していきたいなというふうに思うところです。

それでは、湯浅先生、どうもありがとうございました。(拍手)

それでは、馬場委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【馬場委員】 名古屋大学の馬場です。本日は、お時間を頂きまして、ありがとうございます。

私、ナノとバイオの融合の領域で、融合研究についてお話をせいということですが、後ほど話しますが、ナノ、バイオにプラス、AI、あるいは、量子の融合というのが近年重要になっていますので、それについて御紹介します。

前回の会議でも、議論すべき項目ということで、2025年、あるいは、それより長期の目標、研究開発、当初どこに行うかという議論が今回の主要な議論の一つだと思いますが、私、関連します医療、あるいは、ヘルスケアの分野ですと、人生100歳時代における健康長寿社会を実現するということが重要だというふうに考えています。

基本的な技術開発としては、ナノテクノロジーに特に関係あるのは、健康状態のセンシング、前回の話にもあったウエアラブルのように、例えば、今まで健康診断というと、皆さんも人間ドックとかで血を取られたりされると思うんですが、私自身は血を取られるのは絶対嫌ですので、血を取られずに健康状態を測りたいと。きょうも後ほど話しますが、それを目指して、尿とか唾液とか、将来的には呼気とか、あるいは、ウエアラブルなもので知らないうちに健康状態を調べると。

それから、もう一つは、我々の体の中だけではなくて、この皆さんが今いる空間も非常に重要でありまして、例えばバイオエアロゾルと呼ばれるような、我々の呼気の中には、皆さんが咳を1回ゴホンとやると、バクテリアやウイルスを含んだバイオエアロゾルが1万個から2万個含まれているそうでありまして、秒速8メートルで飛んでいきます。もうここに皆さん、1時間いますので、もう既に、幸か不幸か、我々はお互いのバイオエアロゾルは吸い合っていると。それをセンシングする技術がないので、幸い、我々はハッピーに会議が行われているわけですが、そういうもののセンシングが必要です。

それから、以前は医学部の先生が予防というとすごく嫌な顔をされていたんですが、現在の世界中の医療費が900兆円掛かっているそうですが、2040年にはそれが2,500兆円になるそうで、もう待ったなしに予防して医療費を減らさないと、世界中のGDPの何%分も医療費に使ってしまうということで、予防とか、あるいは、ここに書いたように、がんを治療するのに、入院もしなくてもがんが治療できるような技術というのが必要になってきます。

これをサイバーテクノロジーで融合することで、多分、2025年ぐらいには、例えば診断しながら治療するとか、個別化予防というのが非常に重要なターゲットになりますし、その先には、皆さんも認知症等の厳しい状況を御存じだと思いますが、脳機能を強化するとか、あるいは、これがいいのかどうか、私は分かりませんが、老化を逆戻りさせて、寿命が150歳になるとかいう予測もございまして、皆さん、まだまだずっと長生きできますので、そういう社会になるかもしれません。

それを実現するために、これは我々がこれまでやってきたプロジェクトのことなので、詳細は省略しますが、重要なことは、先ほどから議論になっています若手の研究者をいかに支援できるかということだと私も思います。その重要なキーワードとしては、ナノテクノロジープラットフォームに代表されるような共用事業と、もう一つは、これは名古屋大学で私がやっている様々な融合研究を進めるための仕組みを、5年に1回、リコンストラクトまではしてないんですが、企業との議論の中で新しいシステムを作ってまいりまして、その一つの成果として、新しいベンチャーができて、医学部等の協力が得られて、新しい技術開発に進んでいます。ナノテクノロジープラットフォームでも、前臨床試験とか動物実験というのが、これまで、ナノテクノロジープラットフォームの機能の中に余りありませんでしたが、名古屋大学の中に数年前に作りまして、そういうものを企業の方と今、共用しながら、研究を進めています。

一つの例は、尿からがん早期診断ということで、これは私の部屋の准教授の先生が超空間のさきがけで行ったものです。超空間ですので、ナノ構造を作るというのがターゲットですが、このときのターゲットは、診断という意味でのターゲットはエクソソームというものです。この小さい丸いやつがそうなんですが、これは皆さんの体の中に物すごくたくさんあります。1ミリリットル血液を取ると、大体10億個から100億個ございます。我々の体の中に何個あるのかまだよく分かっていませんが、これを例えば血液や尿からいかに効率良く全部取ってくるかということで、こういうナノワイヤーという技術をうまく作ることで、99%取出しできますと。

この中に、DNAみたいなのが描いてありますが、マイクロRNAという分子が含まれていまして、これが人には2,500種類あるんですが、従来はこれが600種類ぐらいしか検出できなかったのを、彼の技術で2,500種類検出できるようになりまして、このさきがけのプロジェクトが終わった時点で、5種類のがんを同時に診断できるということが分かってきました。

重要なのは、ナノ空間をうまく制御することで、こういう今まで医療分野ではとてもできなかったことができるようになったというのが大きなテクノロジーの進歩です。先ほど申し上げましたように、いかに簡単に診断ができるかというのが世界の重要なターゲットでありまして、もともとはこれは国立がん研究センターのAMEDのプロジェクトで、血液の中からマイクロRNAを検出するというのがプロジェクトでしたが、我々は先ほど申し上げましたように、血液を取るのも私自身が嫌なので、それが尿でできるとか、最近は、私の部屋の学生が唾液でもできるよということを見付けまして、どんどん、我々が知らない間に健康状態が調べられるという状況になってまいりました。

これを進める上では、異分野融合を進める上で、前回の議論にもなりましたが、大学の中では学部という縦割りがございますので、それを何とかそうじゃない状況を作ろうということで、新しい研究所を作りまして、ここに全学の研究科、あるいは、卓越大学院と、あるいは、東海国立大学機構というのが来年4月に出来上がりますが、学内外のいろんな分野の先生がここに参画する場を作ったということが非常に重要、融合領域を進める上では重要だというふうに考えています。

それから、先ほど湯浅先生が産総研の話、されましたが、名古屋大学にも同様な仕組みがございまして、様々な企業がこの研究所の中に研究室を作って一緒に働くということで、これまで企業同士であれば結び付かなかった企業さんが、名古屋大学をプラットフォームにして、産産学の共同研究も進むようになってまいりました。

それを支援するためのオープンイノベーション推進室というのもできていますし、あと、医療の分野ですと、実際にものを社会に出していくためには、最終的に認可が必要なものがございますので、その臨床試験とか、そういったものの支援組織もこの研究所のファンクションの一つとして、医学研究科の協力で、今、入れつつございまして、こういう基礎研究から応用、それから、さらには、臨床というところまでを一つのプラットフォームでできるような拠点を作ることが、こういう研究を進めていく上では非常に重要であるというふうに考えています。

名古屋はもともと大企業ばかりでベンチャー不毛の地と言われていましたが、最近はこういう名古屋大学発のベンチャーもできておりまして、つい最近、NEDO理事長賞も頂いたということで、このベンチャーの特徴は、先ほどさきがけをやっていた安井君という私の部屋の准教授が創業者の一人ではあるんですが、彼はCEOにはならず、名古屋大学の産学官連携推進本部がある企業からCEOの候補者を連れてきてくれまして、この二人をマッチングして共同創業者で、アドバイザーにはエクソソームの分野で一番有名な落谷先生、それから、AIをやられている阪大の鷲尾先生はじめ、強力なバックアップ体制で、今、研究を進めています。

例えば、先ほども申し上げましたように、2,500種のマイクロRNAを一人の患者さんから検出できますので、もう既に数百人分のデータを医学部の協力で検出できていますが、すみません、これ、皆さんのお手元にないと思うんですが、もう既に400名の検体で、数種類のがんだけじゃなくて、認知症、心臓病、糖尿病などの検査も可能で、このマイクロRNAというのを使うと、もしかしたら、全てのがんの診断ができるのかもしれません。

将来的には、これ、がんに限らずですが、発症する何年も前に予測できれば、予防できるというふうになるのではないかというふうに論理的には考えられますので、そういうところを目指していこうというわけです。

今、体の中の話でしたが、今度は体の外、我々の吐く息とか、そういうものを検出するというところでは、これ、我々はImPACTというプロジェクトでやってきまして、実用化はオープンイノベーション推進室というところと一緒に進めています。先ほど申し上げました名古屋大学の仕組みとしては、産学協同同研究講座とか指定共同研究という新しいタイプの共同研究を進めていまして、参考資料の中に詳細は記載しておりますが、こういう多くの企業と、それから、この場合は病院だけじゃなくて、環境研究所とか科警研といったふうな環境を計測されている研究所の協力も得まして、研究を進めています。

このブレークスルーになったのは、ImPACTで、これも同じく若手研究者が考えた、大気中から皆さんが吐く息の中のターゲットになるものだけをデバイスの中に取り込んで、これをナノポアという技術で検知していきます。ただ、このときに、このままでは識別能力が余り高くなかったんですけれども、基礎研究的にはこういう様々なフィジックスが同時に成り立つ系であるということを我々基礎研究レベルで明らかにして、ちょっときょう、詳細は省略しますが、かなりセレンディピティ的な発見もあって、様々なバイオエアロゾルの検出ができるということが分かります。

もちろん、そこに機械学習をはじめとしたAI、これは実際にセンサから出てきたシグナルから六十数種類の特徴量を抽出しまして、六十数種類の分類器を使って、特徴量と分類器の組合せが4,000とおりぐらいの中から、一番いい答えを出すものをまず標準サンプルの学習、教師データを使って学習させた後に識別することで、従来非常に難しかった薬剤耐性菌と呼ばれる薬が効かない菌、これが非常に我々人類にとっては重要な敵に今なりつつございまして、2015年にはWHOの総会で、この薬剤耐性菌への対策を世界中で取るということが決議されまして、2016年のG7で、首脳サミットの宣言の中にもそれが書かれていまして、そういう研究が進んでいく中で、こういう新しいセンサができるということが非常に重要です。

これもちょっと皆様のお手元にないんですが、実際に我々はImPACTで、実際の実用化される企業さんにライセンスしながら進めてきたんですが、これをサイバーテクノロジーとの融合も含めて、様々な企業群と一緒にやろうということで、オープンイノベーション推進室が昨年の11月に設置されたんですけれども、ImPACTが終わったのが今年の3月ですので、約半年の間に、もう既に10社近い企業の方と共同研究を結ぶような状況になっていまして、それ以外の企業の方にも話をしていただいて、非常に強力なタッグを組むことで、先ほどの大学で出た技術を実用化していこうという仕組みができつつありますので。

こういうところも、特にバイオの分野では、御存じのように、バイオテクノロジーは日本の企業はほかの産業に比べて非常に弱いですから、強めていくためには、既存の強い日本企業の方にこういうバイオの分野でも企業の中に事業部を作っていただくということが非常に重要であるというふうに私は考えまして、そのためのオープンイノベーション推進室というのは非常にアクセラレートしてくれるシステムだろうというふうに考えています。

最後に、我々、iPS細胞の研究でもこういうナノ材料が非常に重要だということをこれまでAMEDのプロジェクトで実証してまいりました。例えば、iPS細胞でどこかの臓器を治療するというときに、私、この研究を始めてびっくりしたのが、そもそも細胞が肝臓、例えばこれは肝臓ですが、肝臓を治したいときに、肝臓に行っているかどうか分からないと。肝臓に行ったとして、そこでどうやってiPS細胞が治療しているか分からないと言われて、まず、見える方法を作ってくださいねということで、量子ドットという材料で非常によく見える。

それから、これは臓器レベルのレゾリューションですが、組織の透明化技術というのが東京大学のグループが開発しまして、そこと共同で細胞レベルで見る。あるいは、これは生きたままのマウスの生きたままの肝臓をリアルタイムで見ているものですが、こういう様々な可視化技術を作ることで、少なくともiPS細胞等の幹細胞がどこでどう治療しているかというのが少しずつ分かるようになってきました。

ただ、まだ、例えばiPS細胞がいいことをしているのか、悪いことをしているのか、あるいは、ちゃんと治療しているかというのはまだ正確にはリアルタイムには分かりませんので、それを実現するには、ナノダイヤモンドに代表される量子センサを活用するのが非常に重要でありまして、我々量子技術の研究者と一緒に、そういう新しい材料の開発を進めています。

既に、まだ、これ、量子技術を使っていませんが、光免疫治療というのがNIHのKobayashi先生のグループと名古屋大学等の共同研究で進んでいまして、この臨床研究が治験が今年から国内でも始まると思うんですが、将来的には、我々、ここに量子技術を活用することで、最初に言いましたように、切開せずに入院しないでがん治療とかができるようになったらすばらしいなということで、研究を進めているところです。

これも、何らかの拠点がないと、この量子技術の研究者、もう特にバイオ応用をする人は非常に少ない状況ですので、これ、我が国だけじゃなくて、世界的に見てもまだ少ない状況ですので、QSTの中に量子生命科学領域というのを今年4月に立ち上げまして、私が領域長を務めさせていただいていますが、現在、このQSTだけでは物事は解決しないので、東京大学、京都大学、大阪大学、名古屋大学等の連携を深めながら、今、この中で、先ほど申し上げたような技術開発を進めるという状況です。

今申し上げたようなことをちょっと皆さんの手元にはまだ、これ、さっき作りましたので、間に合いませんでしたが、一応、文書にも書きましたので、また後ほどお送りいたします。

以上です。どうもありがとうございました。

【三島主査】 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの馬場委員の御発表に、御質問、御意見ございましたら、どうぞ。

【射場委員】 何枚か、オープンイノベーションの図があったんですけど、いずれも、大変多くの民間企業が参画しているのがすごく印象的だったんですけど、その民間企業にはコンペティティターの場合もあると思うし、垂直に連携できる場合もあって、お話の中には、必ずしも今までバイオに取り組んでない企業もあるというふうなお話もあって、その辺のマネジメントというのはどうされているのか、教えてください。

【馬場委員】 重要な御指摘、ありがとうございます。

現状は、あるプロジェクトでは競合他社は入ってない状況です。先ほどの図には競合他社が書いてありましたが、あれは別々のプロジェクトで研究所に参画していただいているという状況です。

それは、各企業の方と議論して、その企業の方が同業他社と入ってもいいよという場合には入っていただいていますが、ここに書いているのは羅列しているだけでして、例えばがん診断のプロジェクトですと、材料メーカーと、それから、計測器メーカーと製薬メーカーというような形で複数の社に入っていただいてやっているという状況です。

【射場委員】 多分みんなで一緒に議論できないですよね、企業、みんなそろえて、こういう会議みたいな場では多分。

【馬場委員】 はい。はい。おっしゃるとおりです。

【射場委員】 だから、その大学と企業、各々議論した後、どういう組み方をするかというのを考えていくという理解で。

【馬場委員】 そうです。そこが、これまで我々が数年間やってきて、そこがいろんな企業の方と話していても、最大の課題の一つだというふうに認識しています。企業の方によっては、やっぱり学を基盤として産産学の連携をもっとやりたいという企業さんが非常に最近は増えてきていますが、それをどうマネージするかというのはまだ我々も答えは見出せてないというふうに考えています。少しずつ始めているという状況です。

【射場委員】 でも、やっぱりデータがキーになっているんじゃないですか、その。

【馬場委員】 まあ、そうですね。

【射場委員】 皆さん、データを共通のプラットフォームにして連携したいと思われる。

【馬場委員】 はい。おっしゃるとおりだと思います。

それにしても、データも、例えばある製薬メーカーさんが持っているデータをそこに公開するのかとか、ちょっといろんな問題がございまして、そこは慎重に進めながら、今、準備しつつあるという状況だと思います。

あと、すみません、いいですか。オープンイノベーション機構というのは、実は、競争的領域を支援する機構で、すごく誤解を招くんですが、もうこういう名前になっちゃっているので仕方ないんですが、このオープンイノベーション推進室は、飽くまでオープンイノベーションじゃなくて、競争的領域を支援する仕組みとして、名前だけはこういう名前が付いていますので、ここは競争的領域、ここがオープンイノベーションも推進するという状況です。

【射場委員】 ありがとうございます。

【三島主査】 ほかにございましょうか。はい、武田委員、どうぞ。

【武田委員】 どうもありがとうございます。

私はウエットバイオロジーの立場から、やはりこういうナノテク分野と連携したいという思いがあって、連携先というのをずっとよく探すのですが、なかなか自分が当たれる範囲の中で、マッチング、技術のマッチング、ぴったりすることがまずないんですね。

【馬場委員】 そうです。

【武田委員】 それで、更に探したいのですけれどものそれが容易にできる場というのがなかなかなくて、結果的に大変遠回りしてやっとたどり着けたということがこれまでありました。何か仕組み上でそういうマッチングが非常に早くできるようなものがあると本当にいいんだろうなと思っています。それについて、どうしたらいいかというのをお考えを聞かせていただければと思います。

【馬場委員】 ありがとうございます。そこは我々もいつも苦労しているところでして、ちょっとミクロな取組で恐縮ですが、名古屋大学では、こういう未来社会創造機構という機構を作っておりまして、これが6年前にできています。

我々の大学にはもう一つ、高等研究院というのがございまして、これは野依先生がもう20年前ぐらいに作られているんですが、例えば、企業さんが名古屋大学なりどこかの大学のシーズを、今おっしゃったように、ナノテクノロジーで本社の応用分野に使えるものを探したいというときに、ホームページを多分ごらんになられると思うんですが、各部局に行ってもそういう情報はほとんどない。我々も、ほかの大学の先生のところを見ても、ほとんど情報、出てこないんですね。

それを何とかもっと外からビジブルにするために、例えば、この研究機構のこの研究所を見ていただくと、少なくともナノとバイオの融合領域に関わる研究者のほぼここが網羅していますよというような見え方をできるようにしようということで、数年前に始めたものでありまして、まだまだ始まったばかりであるということと、非常にミクロな取組なので、今の御質問の答えにはちょっとほど遠い状況ではありますが、そういうことが一つ重要だというふうに我々は考えていますと。

本来は、従来ですと、そういうことを学会がある程度、役割を果たしていたんですが、融合領域では学会そのものが存在しないのと、そもそも学会そのものが、私見ですが、縦割りになっていて、融合領域をある意味いつも阻害するという立場になるときがあるんですね。

したがって、原理的にやっぱり融合領域の情報を集めるというのは多分、別に日本に限らず、世界的にも非常に難しい状況だと思っていますので、できれば、こういうナノ材の委員会で、そういう取組についても議論していただければと思います。私自身の小さい経験はございますが、それでは不十分だというふうに思っています。

【三島主査】 それでは、まだあろうかと思いますが、もうかなり時間が押しておりますので、短く、最後。

【上杉委員】 ライフサイエンスのナノ材料の使い方っていろいろあると思うんですね。先生、スタンダードな使い方、スタンダードじゃないような使い方も、もう次々やられていると思うんですね。

スタンダードじゃない私が使い方だと思ったのは、エクソソームをからめ取るような、あれはどう、ナノ材料ですが、あれはどういうふうになって、私はスタンダードじゃないところにすごく興味があるんですけど、それはどんなふうに。短くですけど、どういうふうになっているか。

【馬場委員】 すみません、短く答えるんですか、すみません。

まず、エクソソームの話は、先ほど出てきた国立がん研究センターの落谷先生と議論しているときに、血液や尿からエクソソームだけを取り出す技術がない。ナノテクノロジーで何とかなるんじゃないかと言われて、私は自分の部屋の若い人に、こういう要求があるから何かやってみたらと言ったら、さっきの安井君という准教授が超空間の中でナノワイヤーという新しい材料を見付けて、それでできるかもしれないと。

そのときに、エクソソームの表面にはマイナスチャージが非常に高密度に存在するので、まずはプラスチャージでくっつけちゃいましょうと。簡単な原理で、さっき言い忘れましたが、あれは酸化亜鉛という簡単な材料なんですが、でうまくいっちゃったんですが、後々考えると、実は、そこのエクソソームとワイヤーの表面のインタラクションはそんな単純ではなくて、今それをどうやって調べるかとか、調べる方法を作って、本当のメカニズムは何かというのを調べているところなんですが、そういう意味ではこれは本当にたまたま偶然うまくいったんですが、そういうこともあります。

【上杉委員】 分かりました。

【三島主査】 それでは、馬場先生、ありがとうございました。

【馬場委員】 ありがとうございます。(拍手)

【三島主査】 それでは、次に、中山委員にお話しいただきますが、先ほど申し上げたように、中山委員からは、ナノテク・材料分野におけるこれまでの取組の振り返り、諸外国の動向等の観点からお話しいただきますので、お話を伺ったところで議題(2)に入りまして、第6期の科学技術基本計画策定に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策についてに移っていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、中山委員、どうぞよろしくお願いします。

【中山委員】 この分野の今後の施策立案と推進に関する考察という内容で、プレゼンさせていただきます。

まず始めの図、この分野でのこれまでの推進についてです。今は第5期科学技術基本計画の終了の1年~1年半ぐらい前のところにいます。第3期基本計画あたりで、ナノテクノロジー・材料分野に関する文科省の施策が活発に打たれ、第4期がつながり、この辺から余りプロジェクトが立たなくなってきて、第5期のところで空いてきて、この先、どうすべきかということを今、話し合っているという現況です。

そういう中で、やはり社会と産業のニーズを再度意識する必要があります。それをブレークダウンして示しています。これはJSTのCRDSがまとめたものですが、いろいろな分野の中で、やることがたくさんあり、社会のニーズに連結させてやっていくべきという話です。

また、SDGsという話が急速に盛り上がってきました。科学技術とSDGsをしっかり関連付けて研究開発していくべきということで、この分野でやらなければいけないことは非常に多くございます。材料だけではできないですが、材料にしかできないことは非常にたくさんあり、これを意識せざるを得ないということです。

そういう中で、次の資料を示します。これは第6期科学技術基本計画に対応するための文科省の総合政策特別委員会で、各科学技術分野の状況に関して説明したときの資料です。これには、アメリカとか中国から始まったこの技術覇権の争いを記しています。アメリカでは電子技術の復活イニシアティブとか製造技術を重視する戦略など、ドイツでは電池辺りに集中投資をするとか、中国では中国製造2025で超巨額投資がなされているなどです。半導体とか部材・材料とかデバイスのところで、各国は集中的かつ戦略的に投資を重ね、我が国としてもしっかりと対応しなければいけないということを強調しました。そういう外部の要因がたくさんあるということを、資料数枚で羅列しました。

次の資料です。日本とアメリカだけ並べていいかという議論はありますが、両国のこの分野の施策の大きな流れを書きました。日本とアメリカをよく見ていくと、施策がキャッチボールのように動いてきています。もともとナノテクノロジーは、日本で言葉としては出てきたものです。それに対してアメリカは、National Nanotechnology Initiativeという戦略を出し、アメリカ全体としてナノテクノロジーへの投資を行いました。

そういう中でアメリカは、ナノテクを支援するようなプロジェクトをずっと続けてやっていますが、日本もそれを最初はまねしました。でも、日本で良いプロジェクトが出てきて、これをアメリカが内容をまねするようになって、またそれを日本がまねして良くしてという流れです。日本の今のナノテクプラットフォームというのは、多分、世界で最も進んだ支援の体系ではないかなと思います。

そういう流れの中で、この元素戦略というものが十数年前にできて、これをアメリカがまねして、クリティカルマテリアルズ・イニシアティブというのを作った。でも、実は元素戦略を二つに分割しているのです。クリティカルマテリアルズとマテリアルゲノム、この二つが元素戦略に対応する施策でした。同時期に走り始めています。米国は日本の元素戦略を研究して、希少金属対応と研究のやり方の二つの重要な要素に分解しました。研究のやり方というのは元素戦略の肝であるマテリアルインフォマティクスの部分です。それをマテリアルゲノムというすばらしい言葉を発明して投資をしました。すごい構想力です。

それに対して、我が国は、いまNIMSでやっているデータ駆動型サイエンス等を打っていっていますが、その次の施策を大きくどのように展開するか検討中であり、切れ目のところに来ています。

今後の展開ですが、今の馬場先生のプレゼンにもありましたが、横断とか融合とか統合とか、そういうことは大事にしなければいけないです。あとは、研究開発基盤もしっかり手当てしなければいけないです。これら二つをまずは大事にしたいですが、両方ともデマケされた「分野」にこもる話ではありません。むしろ、分野をいかに横断していくかというところをしっかりと考えなければいけません。そして、強みと特性をしっかり把握すべきであることも論を待ちません。さらに大事なことは、新しいことじゃなくても続けること。この重要性は、先ほどからお話ししていることです。

横断、融合、統合というところですが、ナノテクノロジーの本質が融合・横断であることを共通認識とすべきと考えます。日本のナノテクノロジー関連施策の開始時からのお話ですが、ナノテクノロジーというのが一つの分野として扱われて、ほかとデマケして推進されたことが本当は良くなくて、科学技術の一番最先端の競争力の高いところが実はナノテクノロジーそのものであるということがちょっとここに書いています。

多分野の融合とか、多分野の根幹の共有による付加価値の向上とか競争力の向上こそがナノテクの本質であろうと思います。多くの科学技術分野で、その最先端のデバイスとか、あるいは、材料とか物質が競争力のキーになっていることは明らかであり、狭い分野にこもる話ではないです。材料の分野は極めて広いということ、あと、狭いところをここだけやれよというのも足かせになってしまうので、できるだけ大きめの設定が重要であろうと感じます。

展開すべき事例です。元素戦略への投資はこれまでやっていきました。結果も出ており、これまでの蓄積もあって、新たな取組への投資はあってもいいであろうと感じます。あるいは加藤先生のプレゼンにもあった分子技術、超空間の話など。また、馬場先生のプレゼンにあるように、こういう過去の施策でよい研究者が非常に多く育っていて、その次への準備もできていると思います。こういうところに対する投資は費用対効果が非常に高いと思います。

あとはデバイスですね。この辺は技術覇権対策でもあります。それから電池に代表されるようなエネルギー材料。この辺で我が国は今後も食っていかないといけないです。あと、バイオの材料ですね。AMEDとの関係で萌芽的な研究がなかなかしにくいような状況もございますが、こういうところに対する施策の設計もなされるべきと思います。

また、研究基盤の話ですけど、研究開発の費用対効果とか、スピードを高めていく取組は必要不可欠です。この委員会でもこの話をかなり深く練ってきて、それが今、次期基本計画の議論に色濃く反映されていると認識しています。この委員会でやって良かったなと思っていますが、さらに、この知見を外に出していくべきと思っています。一番顕著なのは、いろいろな分野が集う研究プラットフォームです。ここでいうナノテクノロジープラットフォームです。これはナノテクノロジー、ナノプラと言っているからナノテクノロジーだけみたいに思えるのですが、これは研究開発全体に対する支援であろう思います。共用設備をしっかり充実させて、費用対効果の高い研究をしましょうという、科学技術全体に亘る非常に重要な話であり施策です。

あと、肝になるのは、そこでの計測機器です。計測機器の開発と共用が好循環を起こすようになると、研究開発力や費用対効果に劇的な良い効果をもたらすと思われます。ナノテクノロジープラットフォームの中で機器を開発し、それが更に新しい共用に回っていって、それがまた日本の産業にフィードバックされるような、そういういい循環を起こすべきと思います。

あとは、スマートラボですね。これはロボットとマテリアルインフォマティクスとコンビナトリアルテクノロジーなどの高度な融合です。これはマテリアライズプロジェクトとして一部は日の目を見ましたけど、こういうことも大事です。世界的な大きな潮流にもなりつつあります。

あとは、ナノテクノロジー・材料分野の強みはしっかり認識しなければいけないと思います。今までの三つのプレゼンでも色濃くありましたが、強い研究開発の基盤があります。研究開発力、研究力は、この分野は非常に高い。もう一つは、出口産業が非常に強いということ。やはり出口産業がないと、研究をやってもやりっ放しになってしまいますが、我が国のこの分野の産業はまだまだ強いです。総じてライフサイエンスに関連する産業の輸出競争力がなかなか付いてきていないということで、出口が狭いのと対照的です。材料関連の分野というのは、輸出や産業競争力が高いところであろうと思います。

あとは、日本人の気質に合致するというところ。あと、費用対効果が高いというのは、余り多額の研究費でなくても、相当多く、かつ最先端のことができるということ。比較的広くまいて、広い多くの成果を回収するということがやはりこの分野の特性には合っていると思います。

総じて言いたいことは、これまで我が国は何で食べてきて、今後何で食べていくのかということです。今までは、材料、電子デバイス、あるいは電池などで食べてきました。でも、今後、本当にそれで食っていけるのか揺らいでいます。今後食っていくところにはしっかり投資していかなければいけないという、そういうところに戻って考えなければいけないと感じます。また、諸外国で、技術覇権の動きがございます。これの一丁目一番地が半導体・部材・材料あたりと言われています。ここに対しての投資は必要であろうと感じます。あとは、AI、量子、5G、あたりですね。そういうところをしっかり認識しながら、今後考えていくべきと思います。

あとはもう参考資料です。ほとんど今行われているファンディングを列挙したものです。JSTのCREST・さきがけの戦略目標の図が12ページにあります。ちょうど元素戦略、分子技術、空間空隙、超空間あたりがちょうど終わるかターンオーバーを迎えていて、この辺の研究者が非常に力を付けています。それらに対する手当てが大事という図です。

あとここで言いたいことは、このナノ材委員会の進め方です。ともすると、内局予算の評価とか、ここで立てた施策をどうしようかという話になりがちですが、実際には、これだけ多くの材料系のプロジェクトがあります。こういうもの、いいものをしっかりここに出してきて、全体的な推進方策を練るようにしていったら、より良い施策立案の場所になれると思います。ここが、広範な施策や良い研究成果が持ち寄られるような求心力のある場所、そして、総合性がある議論ができる場所になると、よりいいかなと思っております。

以上です。

【三島主査】 中山委員、どうもありがとうございました。

それでは、今の中山委員のお話も踏まえて、次の議題(2)に入りたいと思います。

まずは、中山委員、どうもありがとうございました。(拍手)

それでは、議題(2)の第6期科学技術基本計画策定に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策についてに移らせていただきますので、まず、事務局から、資料2で、御議論いただきたい論点について御説明いただきたいと思います。竹上専門官、どうぞ。

【竹上専門官】 失礼いたします。それでは、お手元に資料2を御用意ください。「御議論いただきたい論点(案)」として提示させていただいております。参考資料1として、前回の委員の皆様の御意見をまとめたものも用意しておりますので、御参照ください。

資料2については、前回のやり取りを踏まえまして、下線部を少し追記しております。(2)のところ、(4)のところ、(6)のところについて、具体的な取組も併せて御議論していただきたいということでございます。

なお、(4)のところは、前回、御意見が出なかったところですが、本日、中山委員から、SDGsとナノテク・材料の関係を先ほど御説明いただきましたけれども、事務局の方でも、参考資料2として資料を御用意させていただきました。これは事務局で試行的に作ったものですが、政府が近年、主に取り扱っている分野、その中心となる戦略において、ナノテクや材料、デバイスなどに関する記述を機械的に抽出した資料となります。ここから何が読み取れるのかというのは結構難しいですが、例えばセンサや計測技術といったものは、あらゆる戦略で取り上げられているといったようなことは分かるので、これ自体を御議論いただくわけではないですけれども、本日の御議論の参考にしていただければ幸いです。

また、(6)のところですが、前回の委員会では、ナノテクに代わるキーワードをどうするかに議論が偏ってしまいましたが、その社会や国民から、ナノテク・材料科学技術を身近に感じてもらうために、今、発信すべきキーワードは何か、ということでしたので、そこが明確になるように書き替えさせていただきました。

以上、よろしくお願いいたします。

【三島主査】 それでは、資料2、それから、参考資料1が前回のこのバージョンの前ですね。それと、参考資料2の今、各分野におけるナノテクノロジー・材料科学技術の貢献が期待される技術の整理ということ、これもごらんになりながら、御意見を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

はい、どうぞ。

【上杉委員】 キーワードのところなんですが、前回、ビヨンドナノテクというキーワードもありまして、それが分かりにくいという御意見もあったかと思います。それで、今の国際情勢とか、一般の方々の思っているキーワード等を考えまして、私、一つ御意見を申し上げたいことがあります。

その一つは、素材という、こういうキーワードもあるんではないかなと思いました。きょう、中山委員のプレゼンにもありましたが、やはり今まで、元素戦略のインパクトは高かったと思います。その元素戦略に代わるような、そのぐらい広いキーワードとして、素材というのを使ったらどうかなと思いました。例えば素材戦略でもいいんですけれども、ほかでもいいんですが、素材という言葉が、今、いろんなところで出てきているんではないかなと思いました。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

今の御意見に対してでも、ほかのことでも結構です。どうぞ、いかがでしょうか。宝野委員、どうぞ。

【宝野委員】 異分野融合に関してですが、先ほど中山委員が指摘されたように、近年大きな施策が立ち上がりましたけれど、いまその施策の切れ目という件ですが、拠点形成型プロジェクトというのが元素戦略を中心に試みられましたが、そういった拠点が立ち上がりますと、その問題を解決するために、基礎的な物理をやる人、理論屋、プロセス研究者、解析研究者などのいろんな分野の方々を共通のテーマに取り組もうとしますから、異分野融合には非常に効果的な方法ではないかという気がいたします。

幾つかの拠点というのが終了に近付いている中で、次、どういった分野が重要かというのは、この分野の選定、分野というか、もうちょっと広げた領域がいいと思いますけど、それを誤ると、非常に無駄な投資をすることになりますから、そこを今から慎重に選んで、拠点を形成していって、多くの方々がそこに参加して、異分野融合というのを実践していけば、次につながるような研究成果が出てくるんじゃないかというような気がいたします。

【三島主査】 ありがとうございます。

はい、中山委員、どうぞ。

【中山委員】 この分野の今後の施策立案と推進に関する考察という内容で、プレゼンさせていただきます。

まず始めの図、この分野でのこれまでの推進についてです。今は第5期科学技術基本計画の終了の1年~1年半ぐらい前のところにます。第3期基本計画あたりで、ナノテクノロジー・材料分野に関する文科省の施策が活発に打たれ、第4期がつながり、この辺から余りプロジェクトが立たなくなってきて、第5期のところで空いてきて、この先、どうすべきかということを今、話し合っているという現況です。

そういう中で、やはり社会と産業のニーズを再度意識する必要があります。それをブレークダウンして示しています。これはJSTのCRDSがまとめたものですが、いろいろな分野の中で、やることがたくさんあり、社会のニーズに連結させてやっていくべきという話です。

また、SDGsという話が急速に盛り上がってきました。科学技術とSDGsをしっかり関連付けて研究開発していくべきということで、この分野でやらなければいけないことは非常に多くございます。材料だけではできないですが、材料にしかできないことは非常にたくさんあり、これを意識せざるを得ないということです。

そういう中で、次の資料を示します。これは第6期科学技術基本計画に対応するための文科省の総合政策特別委員会で、各科学技術分野の状況に関して説明したときの資料です。これには、アメリカとか中国から始まったこの技術覇権の争いを記しています。アメリカでは電子技術の復活イニシアティブとか製造技術を重視する戦略など、ドイツでは電池辺りに集中投資をするとか、中国では中国製造2025で超巨額投資がなされているなどです。半導体とか部材・材料とかデバイスのところで、各国は集中的かつ戦略的に投資を重ね、我が国としてもしっかりと対応しなければいけないということを強調しました。そういう外部の要因がたくさんあるということを、資料数枚で羅列しました。

次の資料です。日本とアメリカだけ並べていいかという議論はありますが、両国のこの分野の施策の大きな流れを書きました。日本とアメリカをよく見ていくと、施策がキャッチボールのように動いてきています。もともとナノテクノロジーは、日本で言葉としては出てきたものです。それに対してアメリカは、National Nanotechnology Initiativeという戦略を出し、アメリカ全体としてナノテクノロジーへの投資を行いました。

そういう中でアメリカは、ナノテクを支援するようなプロジェクトをずっと続けてやっていますが、日本もそれを最初はまねしました。でも、日本で良いプロジェクトが出てきて、これをアメリカが内容をまねするようになって、またそれを日本がまねして良くしてという流れです。日本の今のナノテクプラットフォームというのは、多分、世界で最も進んだ支援の体系ではないかなと思います。

そういう流れの中で、この元素戦略というものが十数年前にできて、これをアメリカがまねして、クリティカルマテリアルズ・イニシアティブというのを作った。でも、実は元素戦略を二つに分割しているのです。クリティカルマテリアルズとマテリアルゲノム、この二つが元素戦略に対応する施策でした。同時期に走り始めています。米国は日本の元素戦略を研究して、希少金属対応と研究のやり方の二つの重要な要素に分解しました。研究のやり方というのは元素戦略の肝であるマテリアルインフォマティクスの部分です。それをマテリアルゲノムというすばらしい言葉を発明して投資をしました。すごい構想力です。

それに対して、我が国は、いまNIMSでやっているデータ駆動型サイエンス等を打っていっていますが、その次の施策を大きくどのように展開するか検討中であり、切れ目のところに来ています。

今後の展開ですが、今の馬場先生のプレゼンにもありましたが、横断とか融合とか統合とか、そういうことは大事にしなければいけないです。あとは、研究開発基盤もしっかり手当てしなければいけないです。これら二つをまずは大事にしたいですが、両方ともデマケされた「分野」にこもる話ではありません。むしろ、分野をいかに横断していくかというところをしっかりと考えなければいけません。そして、強みと特性をしっかり把握すべきであることも論を待ちません。さらに大事なことは、新しいことじゃなくても続けること。この重要性は、先ほどからお話ししていることです。

横断、融合、統合というところですが、ナノテクノロジーの本質が融合・横断であることを共通認識とすべきと考えます。日本のナノテクノロジー関連施策の開始時からのお話ですが、ナノテクノロジーというのが一つの分野として扱われて、ほかとデマケして推進されたことが本当は良くなくて、科学技術の一番最先端の競争力の高いところが実はナノテクノロジーそのものであるということがちょっとここに書いています。

多分野の融合とか、多分野の根幹の共有による付加価値の向上とか競争力の向上こそがナノテクの本質であろうと思います。多くの科学技術分野で、その最先端のデバイスとか、あるいは、材料とか物質が競争力のキーになっていることは明らかであり、狭い分野にこもる話ではないです。材料の分野は極めて広いということ、あと、狭いところをここだけやれよというのも足かせになってしまうので、できるだけ大きめの設定が重要であろうと感じます。

展開すべき事例です。元素戦略への投資はこれまでやっていきました。結果も出ており、これまでの蓄積もあって、新たな取組への投資はあってもいいであろうと感じます。あるいは加藤先生のプレゼンにもあった分子技術、超空間の話など。また、馬場先生のプレゼンにあるように、こういう過去の施策でよい研究者が非常に多く育っていて、その次への準備もできていると思います。こういうところに対する投資は費用対効果が非常に高いと思います。

あとはデバイスですね。この辺は技術覇権対策でもあります。それから電池に代表されるようなエネルギー材料。この辺で我が国は今後も食っていかないといけないです。あと、バイオの材料ですね。AMEDとの関係で萌芽的な研究がなかなかしにくいような状況もございますが、こういうところに対する施策の設計もなされるべきと思います。

また、研究基盤の話ですけど、研究開発の費用対効果とか、スピードを高めていく取組は必要不可欠です。この委員会でもこの話をかなり深く練ってきて、それが今、次期基本計画の議論に色濃く反映されていると認識しています。この委員会でやって良かったなと思っていますが、さらに、この知見を外に出していくべきと思っています。一番顕著なのは、いろいろな分野が集う研究プラットフォームです。ここでいうナノテクノロジープラットフォームです。これはナノテクノロジー、ナノプラと言っているからナノテクノロジーだけみたいに思えるのですが、これは研究開発全体に対する支援であろう思います。共用設備をしっかり充実させて、費用対効果の高い研究をしましょうという、科学技術全体に亘る非常に重要な話であり施策です。

あと、肝になるのは、そこでの計測機器です。計測機器の開発と共用が好循環を起こすようになると、研究開発力や費用対効果に劇的な良い効果をもたらすと思われます。ナノテクノロジープラットフォームの中で機器を開発し、それが更に新しい共用に回っていって、それがまた日本の産業にフィードバックされるような、そういういい循環を起こすべきと思います。

あとは、スマートラボですね。これはロボットとマテリアルインフォマティクスとコンビナトリアルテクノロジーなどの高度な融合です。これはマテリアライズプロジェクトとして一部は日の目を見ましたけど、こういうことも大事です。世界的な大きな潮流にもなりつつあります。

あとは、ナノテクノロジー・材料分野の強みはしっかり認識しなければいけないと思います。今までの三つのプレゼンでも色濃くありましたが、強い研究開発の基盤があります。研究開発力、研究力は、この分野は非常に高い。もう一つは、出口産業が非常に強いということ。やはり出口産業がないと、研究をやってもやりっ放しになってしまいますが、我が国のこの分野の産業はまだまだ強いです。総じてライフサイエンスに関連する産業の輸出競争力がなかなか付いてきていないということで、出口が狭いのと対照的です。材料関連の分野というのは、輸出や産業競争力が高いところであろうと思います。

あとは、日本人の気質に合致するというところ。あと、費用対効果が高いというのは、余り多額の研究費でなくても、相当多く、かつ最先端のことができるということ。比較的広くまいて、広い多くの成果を回収するということがやはりこの分野の特性には合っていると思います。

総じて言いたいことは、これまで我が国は何で食べてきて、今後何で食べていくのかということです。今までは、材料、電子デバイス、あるいは電池などで食べてきました。でも、今後、本当にそれで食っていけるのか揺らいでいます。今後食っていくところにはしっかり投資していかなければいけないという、そういうところに戻って考えなければいけないと感じます。また、諸外国で、技術覇権の動きがございます。これの一丁目一番地が半導体・部材・材料あたりと言われています。ここに対しての投資は必要であろうと感じます。あとは、AI、量子、5G、あたりですね。そういうところをしっかり認識しながら、今後考えていくべきと思います。

あとはもう参考資料です。ほとんど今行われているファンディングを列挙したものです。JSTのCREST・さきがけの戦略目標の図が12ページにあります。ちょうど元素戦略、分子技術、空間空隙、超空間あたりがちょうど終わるかターンオーバーを向かえていて、この辺の研究者が非常に力を付けています。それらに対する手当てが大事という図です。

あとここで言いたいことは、このナノ材委員会の進め方です。ともすると、内局予算の評価とか、ここで立てた施策をどうしようかという話になりがちですが、実際には、これだけ多くの材料系のプロジェクトがあります。こういうもの、いいものをしっかりここに出してきて、全体的な推進方策を練るようにしていったら、より良い施策立案の場所になれると思います。ここが、広範な施策や良い研究成果が持ち寄られるような求心力のある場所、そして、総合性がある議論ができる場所になると、よりいいかなと思っております。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

はい、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】 今、拠点という言葉が出ましたけど、私も良い意見だと思っていまして、やはり閉じない拠点、一つのところで閉じなくて、常に人が出入りしている拠点を作るべきだと思います。

それで、馬場先生のが良いモデルになるのではないかと。馬場先生自体が、学部とか学科とか関係なく飛び越える研究者なのですね。それで、工学部かと思えば、理学部出身で、薬にいたと思えば、何学部の人かよく分からないと。それが良いのだと思います。

また、我が国の強みは、例えば頑張るとか、粘り強いとか、しつこくやるとか、あるんですね。そういう人って口下手なんですよ。面白くないです、見ていて。

でも、そういう粘り強さとか、こつこつやるところから新しい材料とか、特に材料・ナノテクというのは試行錯誤をやらないと、出てこないんですね。余りにもパラメーターが多いから。だから、こつこつやる人が絶対必要で、そういう人が日本には大勢いるから、強かったんですね。それが日本の強みだったんです。ただ、口下手だから、何だ、おまえら、何やっているんだとなるわけです。

ですから、馬場先生のようなマネジャーがいて、そのこつこつやる人や、企業も一緒にそういうところで、そういうのを作れば、日本の良さと、それから、日本の良さが出てくる良いナノテク・材料科学技術になるんじゃないかなと、ずっと聞いて、思いました。

それで、もう一つ、日本の強みに関してですがですが、この前、ある経済テレビに出て、ある大手の素材メーカーの社長さんが、多分、文系の方だと思うのですけど、おっしゃっていました。何で日本の素材メーカーはこんな面白いものが次から次へ出るんですかとアナウンサーから聞かれたら、やっぱりそれは学界界に深い知恵と理解があるからですとおっしゃられました。日本の強みは材料・ナノテク関連の物理とか化学とか、いろんな材料とか、それから、そういったいろんな周辺分野が物すごく強くて、深い知恵とか理解があるから、ナノテク・材料が強いと。周辺分野が幅広くしっかりしているというのが日本だと思います。今はまだそれがあると思うんですね。

逆に、急速に弱くなっているのもまたそれで、頑張る粘り強い人が減っているのですから、何とかうまく日本の特徴を保っていければいいのではないかなというふうに思いました。

終わります。

【三島主査】 ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。はい、馬場先生、どうぞ。

【馬場委員】 拠点につきましては、先ほどプレゼンでも御紹介したとおり、拠点形成が非常に重要であるというのは私も異論ございません。

これ、もう実は前回も申し上げて、この参考資料にも書いていただいているんですが、例えば、大野先生とか、きょうお話になられた湯浅先生とか、いろんなうまくいっている拠点が幾つかあると思うんですけれども、そのなぜうまくいったかという情報がほかの拠点に、私から見てですが、余り行ってないと思うんですね。

私が作った拠点が本当にいいのかどうかというのも、ある意味、誰にも分からないのかもしれませんけれども、できるだけ、その拠点を作って、いろんな、自分の大学だけじゃなくて、ほかの大学の人とか企業の方がどんどん参画されるような、せっかく苦労して作った拠点であれば、そうしたいというのが我々の希望なんですが、どういうふうなノウハウがあるのかというのはなかなか情報交換なされてなくて、そういうものを、その機関の中では情報交換されているのかもしれませんけれども、情報交換をして、お互いに学ぶべきところは学んで、あるいは、失敗事例もあると思うんですけれども、そういう情報交換ができるような何らかの仕組みがあると、非常にいいなというのと。

それから、先ほども御質問のあったように、異分野融合のときは、異分野の情報を最も適切に得るのが物すごく大変なんですね。それをどういうふうにやっていくかというのを、私もちょっと、すみません、先ほども御質問に答えたとおり、答えは余り持ってないんですけれども、やっていくことが、実は多分ナノテクノロジーとか材料とか素材とか、そういうところに今後生かされるんじゃないのかなというふうに思います。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

それじゃあ、常行先生。

【常行委員】 産業の中で、今、物から事へというのはよく言われますけど、基礎で研究している人間から見ると、ますます何が求められているのかが分かりにくいようになっているような気がするんです。

それで、だから、大きな目標として何をやればいいのかというところが少しでも見えやすくなるということはとても大事なことで、例えば元素戦略プロジェクトでうまくいっているケースというのが幾つかあると思うんですけど、あれ、とても良かったのは、先ほど宝野委員が言われましたけど、私から見ると、すごく目的がはっきりしているんだけど、その中で、一体何が問題になっているかというのをいろいろ基礎研究の人に伝える努力を最初にして、例えば物理学会なんかでも3回ぐらいシンポジウムをやりましたし、そういう努力の中で、結構、基礎研究の研究者が参加できている。

そういう、何ていうんですかね、非常に大きな目的と、それから、基礎研究をつなぐ努力というのがうまくされてきたというところが非常に重要だと思うんです。そういう努力はこれからも継続が要るかと思います。

【三島主査】 そこは、宝野さん、何かこれを受けて。

【宝野委員】異分野の人を取り入れられるかどうかというのは、元素戦略の場合は、公募のときの外形基準があって、理論、解析、プロセスのグループを作ってそれを連携させろという要件があったんですね。ですから、公募時に工夫をすれば、異分野融合は実現できると思うんですね。

それで、会ったこともない理論研究者に会って、その人たちと話をして、この分野に入れる。電池研究も、昔は電気化学の人しかやってなかった。そこに物理屋が入ってきて一皮むけたように、磁石というのも、非常に狭い世界でしたが、拠点形成型プロジェクトで理論研究者がこの分野の研究に入ってきたというのは大きかったと思いますね。

それで、もう一点だけ申し上げたいんですけど、きょうの湯浅委員のお話で最も印象に残ったのが、国際情勢を踏まえた我が国の立ち位置の変化にも関係しますが、成果が必ずしも日本の産業の強化につながる必要がないんではないかと。このグローバルな時代に、例えば電池を一生懸命やっても、スピントロニクスであっても、日本から発信したけれども、使ってくれたのは外国の企業であった。それはIGZOだってそうだったと思いますが。

ですから、今、グローバルな時代に、国の産業のためだけでなければ駄目というふうに言うと、基礎研究は非常に難しくなると思います。昔、日本は欧米の基礎研究にただ乗りしているという批判を受けて、基礎研究を強めようとやってきた。日本がかつて外国の基礎研究に乗っていたように、今は海外のメーカーが日本の基礎研究に乗っているということでは。じゃあ、何をするか。その先端を行けるようなよりイノベーティブな研究の努力を続けていくしかないと思いますね。

余りナショナリスティックになっていくと、基礎研究が伸びなくなると思います。それを最後に申し上げたい。

【三島主査】 栗原委員。

【栗原委員】 はい、そうです。

中山さんのまとめていただいた年度的に今まで何をやってきたかという表は、大事にしたら良いと思うのですが、ここでくくられているテーマとしては、ナノエレとかデバイスとか、これは今、SDGsで非常に重要だと思われている課題がかなりオーバーラップしているので、今までの成果を次のフェーズにつなげるには、どう進めていったらいいのかというのはあると思います。

例えば情報とか、今のシミュレーションの力とか、そういうものをもう少しうまくこういう中に入れていくなどです。アプリケーションを作るプログラムという、シミュレーションからすると、ここに書かれている出口側につながるような活動がありますが、情報のような分野だと、非常に応用範囲が広いので、必ずしも出口に対して、情報から応用分野のプログラムが立っていくかどうかというのは、なかなか分からないところがありますよね。

だから、少し広く、次のフェーズを考えながら、従来からの科学技術を育てるのはどうしたら良いのかをもう少し考えたらと思います。施策としては、常に新しいキーワードを要求されるということと、どのような言葉にするのかということはやはり誰か得意な人が真剣に議論していただいて、キャッチボールしていただくのがいいのかなと思います。

あと、もう一点は、是非ナノプラットフォームはいい形で展開していただけたらと思います。私、先週、ヨーロッパに行っていたのですがHorizon 2020でインフラストラクチャーとしての計測は、日本のナノプラットフォームに非常に似ていて、合成と計測も、さらに、シミュレーションと加速器も入っています。更に広がっている内容なのですが、ただ、そちらはテーマで包括されていて、ソフトマターのインフラストラクチャーというプログラムが去年から始まっているんですね。

そういうものを参考にしながら、目的に多少志向性を入れる、それから、新しい技術展開を入れたようなものというのが考えられるのかなと思います。

先ほどからの拠点について、私は中山さんが挙げていただいた中の二つ活動に参加させていただいていました。GRENEと、東北発の素材技術先導プロジェクトです。GRENEが1年先に始まって、これは学のネットワークで、トライボロジーというテーマでやらせていただいて、次は、東北発の素材技術先導プロジェクトなんですけど、これは産学連携でした。ネットワークとして外に開いたものと、それから、ある程度まとまって進める形のプロジェクトで、サイズは小さいんですけれども、トライボロジー学会は、今でも会員が増えており、日本の中に対してのインパクトは非常にあったと私は思っています。

それで、プログラムとしてサイズがそれほど大きくなくてもいいから、例えば拠点とネットワークというようなものを組み合わせると、非常に広く、かつ、産学官連携ができると思います。

学の人にとって、やっぱり融合研究というのはハードルが高いので、ネットワークがあると非常に融合が進むので、それと産学連携というのを同時にやったことで、非常に総合的な研究のキャッチボールができたとも思いますし、プログラムの規模に比べては効果的であったと思っています。
拠点というような意味では、大事なテーマを幾つかそういう形でやっていくと、日本の中にうまく広げられる可能性がありますし、プラットフォームについても何か似たような視点があり得るのかなとも思います。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

それでは、射場委員、どうぞ。

【射場委員】 2点、言いたいことがあって、1点目は、大野先生とか湯浅先生の考えと同じです。

ナノテク・材料の研究分野は、中山さんの資料にもあったように、圧倒的に強いのに、民間がしっかり受け取れないことで、このナノテク・材料分野の弱みのようになっているので、そこは研究と最後の出口というのを分けて考えて、いい研究シーズが出たならば、受け取れるところは受け取って、それが日本で受け取れるか受け取れないかはやっぱり民間自身が考えることでもあるし、議論するなら、ちょっとこういう場ではなくて、むしろ経済産業省なのかなというふうに思います。

その強みのところで、一番中山さんの資料になかったのは多分人材だと思っていて、この何年、10年以上やっていますが、その中で、すごいスターの材料研究者がいっぱい育っていると思うんですよね。それは量的な話もあるし、質的な話もあって、最近では、そういう先生方がどんどん海外の民間企業と共同研究をしたり、あるいは、海外にかなりの高額の報酬でスカウトされたりするケースもよく聞くので、それも最初の話と同じで、日本での受取りが十分でないことに起因しているので、そういうことで、そのナノテク・材料分野の強みということがあんまりスポイルされないような表現になるといいのかなというのが1点目です。

2点目は、重要技術領域の話で、民間の出口戦略がころころ変わるんですよね。自動車産業なんかは、もう最近では、100年に一度の大変革とか言って、重点は「CASE」だと言って、何かもうものづくりは終焉を迎えたような物言いにも聞こえるんですけど、やっぱり物がないと事も起こらないので、私はサイエンスとイノベーションとのつながりは、風吹けば桶屋がもうかるようなものだと言って、桶屋が、昔は目薬屋だったのが、三味線屋に変わって、桶屋になっているぐらいの話で、いつも吹かす風は同じというふうなシナリオが構築されていたらいいので、そんなに民間の出口の戦略が動いていることに対して、そのナノテク・材料で取り組む領域というのは変わらないんじゃないかなと思います。

だから、領域は変わらないんだけど、そこで目指す機能特性、例えば電池だと、先ほど菅野先生のお話にもありますように、ずっとエネルギー密度を求めて研究していたのが、そのCASEの取組の中で、もっと違う、使いやすいとか、安く作れるとか、そういう方向にするためには、じゃあ、材料はどうあったらいいのみたいな、領域は変えないんだけど、求める機能のバリエーションがもっと増えるみたいなロジックは多分多くの領域で起こっていると思うんで、そこを丁寧に見ていくと、しっかりとした戦略になっていくんじゃないかなというふうに思う。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございました。

じゃあ、湯浅委員。

【湯浅委員】 先ほどの宝野さんのコメントに対する補足ですが、外資とこれからどう付き合うべきかって、産総研の中でもいろいろ議論があります。

私個人としましては、一番重要なのは、日本の税収の増大と雇用の創出にどうつなげるか、その連携相手が国内の資本なのか外資なのかはそれほど重要じゃないんじゃないかと考えています。

例えば、外資と組んで研究開発を行って、日本の非常な優秀さを見せて、まず、第1段階で、外資の研究開発拠点を日本に誘致すると。開発拠点ができれば、その次の段階として、将来的に生産拠点の誘致も狙うと。そういうことによって、税収と雇用が確保できれば、それは非常にいいんじゃないかと私は考えています。

【三島主査】 はい、加藤さん。

【加藤委員】 材料・ナノテクノロジーの難しさは、学問でありながら、この産業にも直結しているところで、学問は国境がないんですよね。だから、研究がうまくいけば、どこの国の人とも組むし、誰とでもやれるんですね。だから、もう大学の研究というのは国境がなくて、国際化しているのは当たり前なんですね。

産業にしたときに、今みたいな話が出てきて、我が国の利益をもたらすとか、それがそこのところを切り分けて議論しないと、学問も閉じたら、もうどうしようもないですし、産業は産業できちっとやらないといけないので、是非この国際化という学問の国境のない学問と日本を繁栄させるための何か施策というのがあると思うんですけど、うまく切り分けて考えるというか、そこは違うんだよということを是非理解していただきたい。

もし何か真理をつかむためには、どこの国の人だって組むし、国際的連携は当たり前ですし、ジャーナルも全部世界的で、ですから、もう学問としては、そこと今の話をうまく組み合わせるのが大事かなと思います。

それから、今お話が出たように、材料の特質は、我々がやると、すぐ役に立つとか、もうかるとかいう話になるんですけど、学問は、本当の本来はもうかるためにやっているんではなくて、知の探究をやっていて、日本がいいところは、工学部というのがあって両方うまくやれているのが強いというのがあると思うんですね。

あと、関係者には受けるんですけど、材料・ナノテクを国民にアピールするためには、ぞくぞくするとか、面白いとか、わくわくするというのを非常に作らないといけないなと思います。

だから、役に立つ、役に立つと言っても、一部の人は分かってくれるんですけど、これ以上行こうと思うと、ふーんと言われて、私がいつも思うのは、宇宙の人たちは夢を語られてすばらしいなと思うんですけど、やっぱり材料・ナノテクももっと夢を語って、わくわく楽しくしないと、小・中学生が、次、やろうとも思ってくれないし、もうかるとか役に立つ話も大事だけど、やっぱりわくわく、国民、小・中生とか国民がわくわくする話も作らないといけないなと思います。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

じゃあ、菅野委員、どうぞ。

【菅野委員】 その前に、一つ中山さんに質問なんですけれども、7ページのアメリカのクリティカルミネラル戦略というのが、どういうものかという。

【中山委員】 これは去年1年ちょっと前に、アメリカのトランプ大統領の大統領令で、クリティカルミネラルズに関して、各省庁でできることを大統領に対して報告せよという指示が出ました。中国の研究開発に対する巨額投資やレアメタルの囲い込みの雰囲気に対して、米国の産業や軍事で必要なもののサプライチェーンが分断されてしまうことに対する危機感が根にはあります。そこに対して大統領を中心に国家としてしっかり手当てをしていこうという戦略です。代替材料の開発とか、あるいは、そもそもどのくらいのものがアメリカやその同盟国から手に入るのかということをしっかり調査しろというところから始まっています。その流れで施策が構築されようとしているのが今の実態だと思います。

【菅野委員】 ありがとうございます。

2点あって、その1点は、材料というのは、先ほどの幅広い基礎的なところから、マスが必要というと、そこにマスを増やすためのばらまくための、ばらまくと言ったら言葉はおかしいですけれども、そこを支えるための何かの施策、何かいい方法がないかという、それがまず1点。

それが、そういう戦略に基づいた、ある程度底上げをするようなうまい仕組みというのが、ここが拠点うんぬんというのと関係するかもしれないですけれども、要するに、ベースを上げるというのが多分必要であろうと。

そのために、魅力的にばらまくための方策が多分必要で、それは鉱物から原料に来て、実際の使われる物質から材料に来て、それの材料への組成、構造の構築というその一連の流れをうまく魅力的に見せるようなことができれば、何かうまくばらまくための言い訳というか口実にはできるんじゃないかというのがまず1点。それは、だから、ナノの材料のこの目的にも合致しているということですね。

2点目は、材料はどこの国で、どこの企業で実用化されても、材料にとってはそれは持続されるとハッピーというので、それは日本でもなくてもどこでもいいということに、極端な話になるとそうなるんですけれども、例えばリチウム電池の場合には、基本的な材料の原理というのは、イギリスとか日本もあります。組合せは日本で実用化してある。

それが、一応世界のスタンダードになったと。そのスタンダードになっても、リチウムイオン電池というのは、ある程度、文化ですかね、電池の文化としてもう世界のスタンダードになった。それ以上、何を求めるのというのがあります。スタンダードにした以上、もうあとはいいんじゃないのという、それは基礎研究の立場ですけれども、という考えもあります。

ただ、その次のスタンダードになるべきものをやはりここから出すべきであると。それにはどういう施策が必要かということですね。リチウムイオン電池も、結局それは製品ですから、市場があって、巨大な市場が我が国とは違うところにあると。となると、それはもうここで議論することではないんですけれども、先ほど湯浅さんからありましたけれども、違う観点から議論すべきことであって、ここでは、世界のスタンダードとなるべく、その技術になる、その下支えする材料としてどう開発すべきかと、その施策をどうするべきかというのが理想的かなと思います。

【三島主査】 中山委員、何かございます?

【中山委員】 元素戦略という取組が世間や研究者に受け入れられて、いろいろな施策に展開されたのは、何か狭いことを言っているようで非常に関与できる人が多かったことが背景にあります。結果として、多くの研究の種や候補の中から良い研究を拾うことができました。よって成果が出ました。範囲が狭いと、少ない候補者や研究の種の中から選ばなければいけないので、どうしてもクオリティーは上がっていかないです。極めて広いところから選べるような、元素戦略は、社会とか、あるいは、産業とかに対しての訴求力もあって、非常にいいところだったのではないかと思います。

先ほど言われたアメリカのクリティカルミネラルの大統領令と関連文書を読むと、ほとんど日本の元素戦略の英訳ですね。見事に訳されていたなという感じです。

リチウムイオン電池の次のところはもうおっしゃるとおりだと思います。しっかり次へ向けた研究開発をしていくべきなのは論を待たないと思います。その辺は専門の先生もおられますので、お答えは違う方から頂いてもいいかもしれません。

【三島主査】 はい、じゃあ。

【前田委員】 ありがとうございます。

皆さんがお話ししている内容とすごく近いところもあれば、そうじゃないかなと思うところもあります。

まず、私、去年、海洋基本計画、5年に1回書き替えるところの策定に関わった者ですが、海洋の専門家ではない中で入らせていただくと、専門家だと当たり前の言葉になってしまうのが、国民目線であったり、一般の人から見るとよく分からないという内容の言葉を変えたりとかしますので、むしろ、専門じゃない方も入れた中で策定するということがすごく大事なのだろうなというふうに思います。いろいろな分野の方を入れようと皆さんもおっしゃっておられたので、それは一致しています。

また、異分野融合に向けてですが、私は昔、東京医科歯科大の産学連携のセンター長をやっていましたが、医学系ではないです。私、リチウム電池屋です。そのときに、本来だったら、医療機器メーカーや製薬会社の方とばかりお医者様はお付き合いするんですけれども、例えば、大日本印刷、印刷技術を再生医療の皮膚に血管をプリンティングしてしまうとか、あとは、インクジェットプリンターのあの先のノズルというのは3ミクロンぐらいの非常に均一な液滴が出るんですけれども、それを肺の治療薬に、治療の装置に使ってしまうおうかと。異分野の方が来ると、意外に、あそこにも、ここにも、ここにも使えるよねというアイデアが出てきますので、是非とも異分野の方を上手に入れてもらって、新しいアイデアを出してもらうというのはとても大事だなと思っています。

また、皆さんと非常に近い意見では、リチウム二次電池とか、やはり基礎はかなりの部分、日本で出来上がったにもかかわらず、もうけているのは、今、中国の一番大きな会社ですので、やはり私、自分でやっていた者からすると、とても忸怩たる思いがしていて、できれば、やはり日本にお金を落としたいと思っています。

そうすると、さっきのシャープの液晶じゃないですけれども、日本はどうしても大きい会社はもう守りに入っていますので、ベンチャーを支援する、でも、それは経済産業省さんの仕事なのかもしれないのですけれども、できれば、日本の大企業を追い抜くんだぞと思う気概のある方に渡してもらえたら、うれしいなと思っています。

やはり国民の税金使って研究していただくわけですから、是非とも、日本の大手になかった技術を育て、抜くんだよというような人を育てて、その人たちに渡してもらえたら、すごくうれしいなというふうに思います。

【三島主査】 ありがとうございます。ごもっともなところもございますね。

そろそろ残りが10分ぐらいになってまいりましたが、全体の方向性の御意見がもしなければ、前回から大分議論をしていたビヨンドナノに対して、きょうは上杉先生から、素材戦略という内容のものだろうというのが出ましたけど、その辺で何か御意見がございましたら、残った時間で出していただければと思いますが。はい、どうぞ。

【常行委員】 いいアイデアがあるわけでは全然ないですが、ナノテクという言葉ってちょっといろんな誤解を生むような気がしていて、個人的には、もうちょっと材料を表に出した方がいいんじゃないかなという気がしています。

【三島主査】 これ、参考資料1で、第3回、前回の委員会でのいろんな意見がここに書いてありますが、最後のところがそのキーワードですね、今、まさに常行先生がおっしゃられたように、ビヨンドナノというと材料が抜けてしまうとか、材料あるいはマテリアルを残した方がいいとか、それから、ナノテクは各産業の最先端の部分で使われる広い概念だけど、我が国では材料・ナノテクとして縦軸の分野の一つとして狭く捉えられてしまっているとか、そういう幾つか、これ、ページが付いてないんですけど、最後のページの黒丸の四つぐらいを見ていただくと、その辺の、材料という言葉が入らないとかいうようなところは確かにあると思うんですね。

それで、上杉先生のその素材戦略というのも、そういう意味では、元素戦略を受けて素材という形を出していくというところにあるかと思いますけれども、その辺を含めて、前回の意見も踏まえて、何か御発言があったら伺いたいと思います。はい、どうぞ。

【加藤委員】 私も、ナノテクノロジーは非常に良い言葉だと思うんですけど、やはり出てきてからこれまでを考えると、もう一回、素材とか材料みたいな言葉を前面に出す方がいいのではないかというふうに思います。

ナノテクノロジーっていろいろあって、もともとは、一つ言われたのは、国会図書館の資料のデータを全部、角砂糖に入れる、つまり、徹底的に微細化するという分かりやすいのがあって、それはまだ未達成の領域です。

ナノテクというのは、場合によっては、例えばカーボンナノチューブだけを連想させる時代もあったり、それから、フラーレンであったり、微粒子であったり、一部にフォーカスされていた時もあったと思います。

非常に魅力的な言葉なので、それはそれでまだまだ輝いている、いい意味であると思うのですけど、やはりアメリカが2000年ごろに言い出して、その前、日本はやっていたのですけど、アメリカが言い出して20年たって、やはりもう一回、素材とか材料に戻る手もあるかと思います。

それはなぜかというと、ナノテクだと、量子にもナノテクは入るし、バイオにもナノテクは入るし、よって立つところを考えたときに、ほかに立っている分野が絶対入れない物ですね。物がないと事が始まらないという御意見、今、委員からありましたけど、材料の重要性は変わらないので、もう一回、今、出た素材とか材料を中心にして、何かいい言葉があればなというふうに私は思います。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

じゃあ、中山委員、どうぞ。

【中山委員】 ナノテクノロジーという言葉は、よく考えると、全然、材料じゃないですよね。ただのサイズ感です。材料固有のところだけじゃなくて、まさに量子とかバイオとか、いろんなところでのそのサイズ感のところに肝があって、そこで連携と融合が起こる、横断が起こり、付加価値や競争力がそこにあるということです。

ナノテクノロジーは、融合とか横断とか連携とかということを媒介する言葉だったのです。それを材料と同一視して一つの縦割り分野にしてしまったから不幸が起こっています。固定観念を引きずっていて、極めて狭い言葉と思われているから消した方がよいかなという意見もあります。しかし、素材・材料と言ってしまうと縦割りになってしまいます。融合感がないです。私も物質も材料も素材も大事だと思っているのですが、それだと各々の材料の個別の話の集合になってしまう。融合とか横断ということをしっかり表す言葉でいかないと、その材料ごとの話とか、また、もともとの材料は鉄だ何だって、また過去の材料論争へ行ってしまいます。

素材とか材料とか、それはもちろんやるべきことですが、是非とも融合、横断による競争力の向上、付加価値の向上ということが言葉の意義に入っていてほしいというのが強い思いです。ナノテクノロジーという言葉は良い言葉で、国際的には狭く捉えられておらず、諸外国では投資が伸びているということは覚えておくべきです。

以上です。

【三島主査】 それでは、はい、栗原委員、どうぞ。

【栗原委員】 皆さん、簡単にナノは駄目だとおっしゃいますけど、ナノはいい言葉だと思っていまして、材料におけるナノの意味は、やはり原子、分子のサイズがナノだということなので、そこが根本だと思います。原子、分子で材料を考えて、それで、いい材料を作る、あるいは、先端的な材料を作るということをほかの言葉で表せれば、もちろんいいと思うんですけれども、ナノがピコになったら、サイズが違うんですよね。それで、ミクロンでも違うんですよ。

ナノだから分子、原子なので、そんな簡単に捨ててもいいのかと。もうちょっと真剣に、代案を考えてから、それと比較しないと、印象だけで、学術界としては、ナノは放り出したくないなという、その心はやっぱり原子、分子のサイズということで物事を考えていきましょうと。量子になっても、量子効果の出る材料は、原子、分子に基づいて作るんでしょうし、というふうに私はこのナノを思っています。

【三島主査】 宝野さんかな。

【宝野委員】 おっしゃるとおりなんですが、材料から特性を引き出そうとすると、もちろん、原子レベルからも必要ですが、最終的には、実装されるものというのはミクロサイズを持っていますから、実はマルチスケールなんですよね。

だから、ナノというスケールをキーワードとして入れるか?ナノテクノロジーというのは過去20年ぐらいやってきて、その成功の下に今の材料があるということを考えれば、そういったサイズのスケール、単位をキーワードとして入れる必要があるのか。

それよりも、ある施策を行うときは、それが産業化に結び付くかということを問われるというのは確実ですから、材料がその産業とかそういったものに役立つという意味を込めて、例えば材料イノベーションとか、そういったものでもいいんじゃないかという気がするんですけど。

飽くまでも、もうさんざんナノテクノロジーをやってきて、その基盤が完成に近付いたという中で、そろそろその道具を作って、材料をイノベートしていきましょうということでいいんじゃないかという気がするんですけど。

【栗原委員】 ただ、材料イノベーションで、それをみんなが納得するのでしたら、もちろんそれでもいいと思いますけれども、何となく、素材とか材料イノベーションの方がそんなに新しい感じがするのかなという気が少しします。だから、そのときには、やはり原子、分子で考えるとか、ナノスケールで考えるという説明文の方に入るのではないかと思うのです。

だから、プログラムとしてはそれが材料イノベーションでもいいと思うんですけれども、中身の中に、やはり少しそういう概念をはっきり維持していかないといけないのではないかと思うのですが。

【三島主査】 ありがとうございます。何もきょう決めようというわけでもないし、少し皆さんの意見を出し合っておいて、何せ10月18日、次回辺りがかなりまとめなきゃいけない時期が来るので、きょう、今頂いた御意見も含めて、例えば、10月18日までに何かこんなのはどうだろうというのがあれば、事務局に出していただくとかいうようなことも含めて、最後、あと一月ちょっとで、できれば何かいい形のものができればというふうに思います。そういうことでよろしいでしょうか。

それじゃあ、事務局から、今後のスケジュール等を教えていただければと思います。

【竹上専門官】 本日はありがとうございました。

次回のスケジュールですが、次回、第5回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましては、10月18日金曜日に開催させていただければと思います。第5回では、委員の皆様からこれまで頂戴した御意見等を踏まえまして、本委員会として、総合政策特別委員会に出していただく文書について御議論、御決定いただく予定としております。

もちろん、この10月のものは、総政特に出す報告、提言になりますので、この委員会では、引き続き、その後も御議論を継続的にしていただくということを予定しております。

また、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後、ホームページにて公開いたします。資料につきましても、今回配付させていただいたものをホームページにて公開させていただきます。

最後に、配付資料ですけれども、机上に置いていただければ、後日、事務局から郵送いたしますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

【三島主査】 それでは、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会、以上です。御協力ありがとうございました。

―― 了 ――

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研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

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