第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第3回)議事録

1.日時

令和元年8月29日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 東館 15F1会議室

3.議題

  1. 前回委員会における書面審議の結果及び第6 期科学技術基本計画策定に向けた今後のスケジュールについて
  2. ナノテクノロジー・材料科学技術分野における取組について
  3. ナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策について
  4. その他

4.議事録


【三島主査】 皆様、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから第10期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会の第3回目です。開催させていただきます。本日は御多忙のところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。一旦ちょっと涼しくなってから暑くなられると、またこたえますね。

それでは、本日の議題ですけれども、議題表をごらんいただきますと、まず議題1が、前回委員会における書面審議の結果及び第6期科学技術基本計画策定に向けた今後のスケジュールについてです。議題の2つ目は、ナノテクノロジー・材料分野の取組についてということで、理化学研究所の加藤先生、大阪大学の関谷先生から御発表いただくということになっております。先生方、よろしくお願いいたします。それから、その後、議題3として、ナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策について、自由討論をいただければと思います。

それでは、早速ですが、事務局から委員の出欠並びに配付資料の確認をお願いいたします。高橋さん、よろしくお願いいたします。

【高橋補佐】 恐れ入ります。

本日ですけれども、五十嵐委員、射場委員、常行委員、前田委員が御欠席です。

また、当省において人事異動がございました。新たに、研究振興局長として村田が、参事官付の専門官として竹上が着任いたしました。

村田局長より一言御挨拶させていただければと思います。

【村田局長】 7月9日付で研究振興局長に就任いたしました村田です。どうぞよろしくお願いいたします。

委員の先生方におかれましては、大変御多忙な中、出席をいただきまして、まことにありがとうございます。この委員会で担当していただきますナノテクノロジー・材料科学技術は、2001年から2010年にわたります第2期、それから、第3期の科学技術基本計画におきまして、重点分野として位置付けられ、また、2011年からの第4期及び第5期基本計画におきましては、基盤技術として、その重要性がうたわれているものです。第9期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会におきましては、社会の変革を強力に牽引するマテリアルによる社会革命、マテリアル革命の実現を目指したナノテクノロジー・材料科学技術研究開発戦略をおまとめいただいているものです。今般の第10期におきましては、それを踏まえつつ、第6期の科学技術基本計画に向けて本格的な検討を行うべく、当該分野の研究開発が進むべき方向性について、様々な御意見、御助言を頂いていると承知してございます。

先生方におかれましては、ナノテクノロジー・材料科学技術分野におきまして、この先どういったことに取り組んでいくべきなのかという、今後とも重要な課題につきまして、様々な御指導、御助言を頂ければ幸いと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【高橋補佐】 続いて、配付資料の確認に移らせていただきます。まず資料1-1といたしまして、科学技術・学術審議会、第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第3回)、右上ですが、ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について(第1次案)として、資料1-1。資料1-2として、次期基本計画策定に向けた今後の検討スケジュール、資料1-3として、ナノテクノロジー・材料科学技術委員会における次期基本計画に向けた今後の検討スケジュール、資料1-4といたしまして、第5期科学技術基本計画の概要、また、統合イノベーション戦略2019(概要)、資料1-6として、総合政策特別委員会における中間取りまとめの概要、続いて、資料2-1と資料2-2で、本日のヒアリングを受けます加藤先生、関谷先生の資料、最後に資料3として、「御議論いただきたい論点(案)」というものを入れさせていただいてございます。

欠落がございましたら、事務局まで御連絡をお願いいたします。

【三島主査】 資料の御確認よろしいでしょうか。

それでは、早速、議事の議題1から進めたいと思いますが、まず、前回委員会における書面審議の結果及び第6期科学技術基本計画策定に向けた今後のスケジュールについてということでして、事務局から、まずは御報告を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【高橋補佐】 それでは、第6期科学技術基本計画に向けた今後のスケジュール及び前回委員会における書面審議の結果について、事務局より御報告申し上げます。

まず、前回委員会における書面審議の結果ということで、お手元の資料1-1をごらんください。

資料1-1ですが、最終的に書面審議という形で皆様から御意見を承りつつ、今後の推進方策のうち、主にシステム改革に関する事項について第1次提言として検討したものという形でまとめさせていただいたものです。

内容については事前に書面審議において協議させていただいてございますが、改めてその結果の報告として、総合政策特別委員会の方に提出させていただいたものの中身を報告させていただきます。

こちらの紙の1ページ目です。ナノテクノロジー・材料科学技術分野ですが、今後も少子高齢化、都市部一極集中、労働力不足といった我が国が抱える社会課題、SDGsに示される人類共通の課題を、先頭を切って解決していく分野であるということは間違いないと。また、周辺状況を見れば、自動車産業や素材産業の輸出における比率が高まり、我が国が誇るすり合わせ型の「ものづくり」が、世界的にも高いプレゼンスを発揮し、高い強靱性を持つことを証明しているという状況があるのではないか。また、Sosiety5.0やSDGs等の実現に向けた長期的な視点を持ちつつ、我が国の強みであるナノテク・材料科学技術と関連する応用開拓とを戦略的に推進していくことが次世代の日本の趨勢を決定付けると言っても過言ではないと。

これまで、平成20年代、第4期、第5期と、ナノテク・材料分野は「共通基盤」としての位置付けがなされてきました。これは他の分野を横断的に支える重要かつ不可欠な分野であるという共通的な理解の下で諸施策が実行されてきたということにほかなりませんが、一方で、我が国の競争力の源泉である科学技術とその強力な推進力を主導的に発揮する機会を喪失する結果となり、政策的に停滞してきたとの反省を持って総括するのがよいのではないのではないかと。

昨年8月、産業振興と人類の「幸せ」の両方に貢献する「マテリアルによる社会革命」の実現を目標とした「ナノテクノロジー・材料科学技術研究開発戦略」の策定をし、こちらを皮切りに、政策的な流れが本委員会から変わりつつあるというふうに書かせていただいてございます。

また、「ナノテクノロジー」というところですが、これについても改めてイントロの部分で、約20年にわたる継続した投資、ナノテクを我が国の強みとなる世界トップレベルの基盤技術として育て上げるということになったということは言えると思いますと。その結果、ナノを解明し、ナノに起因する機能開拓を目指すという草創期における使命は十分に果たし、体系化されたツールとなり、イノベーションの基盤となったと。

同時に、これからは進展した計測技術等のレベルの向上と相まって、ナノテクをどう使い画期的な成果を出していくかというところが競争として始まりつつあると。異分野融合によるイノベーション創出に向けて、この資産を積極的に強化・活用すること。それにより、量子、AI、バイオのような新たな必須のキーテクノロジーを提供・牽引する役割というのが、分子・原子レベルの物質設計の根本となるナノテクには期待されているのではないかというふうにまとめてございます。

全体としては、「ナノから量子」への発展や「ナノからマクロ」の包括的な理解により、「ナノ」を超え、異分野融合を牽引していくことを目指す、仮称ではございますが、「ビヨンドナノテクノロジー」といった、狭く見える対象をより広げていくコンセプトを本委員会から発信し、ナノテクの更なる深化と異分野融合を積極的かつ総力的に牽引していくことが新たな使命ではないかと書かせていただいてございます。

続いて、具体的なシステム改革の内容ですが、3ページ目の上段をごらんください。こちらに、ナノテクノロジー・材料分野の科学技術システム改革のポイントといたしまして、大きく2つ、研究開発の効率化・高速化・高度化を実現するラボ改革といたしまして、共用の重要性をうたう形で、①「ビヨンドナノ」を目指す時代にあることを認識し、これまで蓄積されてきたナノプラの先端機器と技術専門人材にストックしたノウハウ・技術力を最大限精査・活用した上でのビヨンドナノ材料・ビヨンドナノデバイス創出のための最先端共用ネットワークの設計・構築が必要であろうと。

また、MIの活用は当然になっていますけれども、データプラットフォーム基盤の整備というところはやっていくべき。また、スマートラボラトリ、これは研究開発戦略の方にも目玉として書かせていただいてございますが、そちらについてもやるべきであるという話。

最後に、「プロセスサイエンス」として、革新的な材料・デバイスを世に送り出すというところに着目した基盤の構築というところが重要であろうというところを、この後、4ページぐらいにわたって、個別各論で説明させていただいてございます。

資料1についての説明は以上です。

続きまして、今後の第6期科学技術基本計画も含めたスケジュールについて、事務局の竹上より報告いたします。

【竹上専門官】 失礼いたします。7月に参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付に着任しました竹上です。よろしくお願いいたします。

では、私の方から、資料1-2から1-6、これまで一度御説明させていただいている資料が多いですけれども、改めて、今後のこの委員会のスケジュールと今の周辺の審議状況について御説明させていただければと思います。基本的には、この秋に向けて、今、高橋の方から説明しました報告書をブラッシュアップしていただく形で御議論いただきまして、10月に再び総合政策特別委員会において、この委員会としての考え方、提言を出していただくということが基本的な流れになろうかと思います。


4月に一度、委員会を開催させていただいた以降、久しぶりの開催となりますので、まずは資料1-4の基本計画について、基本的な認識のところから、今回の検討の背景のところを説明させていただければと思います。

御案内のとおり、現在、第5期基本計画が始まって4年目となります。ナノテク・材料につきましては、第2期、第3期では重点4分野の一つとして振興がなされてきました。基本的に基本計画というものは、研究開発を重点化するというのと、システム改革をどう進めるか、この2本柱が置かれていまして、その前者の方ですけれども、第4期からは重点課題ではなくて、いわゆる課題達成型というふうに変わりまして、要は、ターゲットを定めて、そこからバックキャストで重要な取組を掲げていくというやり方になりました。

第5期の基本計画が資料1-4になりますけれども、裏面、第3章のところに、同じように課題達成型ということで、幾つかの社会課題を掲げまして、ここに必要な取組は何かというやり方を第4期に引き続いてやっております。

加えて、第5期で大きく新しく打ち出された内容が、資料の表面になります、既に御案内のとおり、Society5.0というものが掲げられ、加えて、未来創生型と当時呼んでおりましたけれども、不確実性に対応するために、重要技術をしっかりと振興していくという新しい考え方が第4期の考え方に加わりました。資料の右下、(3)「超スマート社会」における競争力向上と基盤技術の戦略的強化とあります。ここに、2つの技術が車の両輪で必要であるということが掲げられておりまして、1つ目が、いわゆるサイバー技術、超スマート社会サービスプラットフォームに必要となる技術のところで、AIやIoTといった技術がまず1つ目の柱。2つ目の柱が、いわゆるフィジカル技術です。ロボットであるとか、素材・ナノテク、光・量子、センサ、こういったものが2本目の柱として重要であるということが打ち出されたというのが4年前の状況でございました。

資料1-5、こちらは今年の6月に統合イノベーション戦略2019として発表された資料です。この戦略は昨年から作成され始めまして、毎年、第5期基本計画をローリングする戦略であると認識しておりますけれども、右側を見ていただきますと、現在、重要な技術分野として、AI技術、バイオテクノロジー、量子技術、この3つだけが出ている状況です。

また、応用分野に関しては、環境、安全・安心、こうしたものが出ている状況でして、恐らくナノテク・材料といったものは、このAIやバイオの右側に、横串的に横断する技術として本来あるべきところなのかなとは思うのですが、やはり、この委員会で夏に出していただいた報告書にもあったように、若干政策的な議論が停滞してしまっていることは否めないところでありまして、今こういう状況の中で、ナノテク・材料というものをどう振興していくかということがこれからの議論の主要議題であると思っております。

第6期に向けて、しっかりとマテリアル、ナノテク・材料、デバイス、こうしたところの重要性を打ち出していくべきではないか。そうしたことが、議論の背景にございます。もちろん第6期基本計画に関しては、今後全く新しい政策体系で作られ、議論もこれから進められるところですけども、まずはこの委員会で重要性を打ち出していただくということが大事ではないかと考えております。

資料1-2に移っていただきまして、こちらがスケジュールになります。これは従来出していたスケジュールを、最新情報を踏まえて改訂したものですけれども、6月にこの委員会で報告書を出していただきましたが、その報告書については、一度、総合政策特別委員会で議論していただいているところです。

総合政策特別委員会の中間とりまとめに関して、現時点での概要紙を1-6でお配りしていまして、基本的には目指すべき姿とシステム改革の議論を中心にまとめております。

資料の一番下にもありますように、我が国の強みを生かした研究戦略の構築の在り方については、引き続き議論が必要ということで、10月以降、3月の最終取りまとめまでに向けて、総合政策特別委員会の方で検討を行う予定にしていますので、まさにここの検討にしっかりと乗っかるように、この委員会でひとつ方向性を出していただく。先ほど高橋から説明しました報告書を、今、システム改革のところだけの記載になっておりますけれども、具体的な研究開発戦略、あるいは日本の科学技術イノベーション政策全体の中で、このナノテク・材料領域をどう捉えるか、重要性も含めて打ち出していただくということが基本的な流れになろうかと思います。

なお、2020年3月の最終取りまとめ以降は、ちょうど今月、内閣府の方でも基本計画専門調査会がキックオフしましたので、並行して議論することになりますけれども、来年末には、第6期基本計画が定まりますので、そこに向けて継続的に、この委員会でも御審議いただくということになろうかと思います。

現在の全体の流れは以上です。

また、後ほど、最後の自由討議の前に、資料3を説明しようかと思っていたんですけれども、これから先生方にプレゼンを頂く前に、若干触れさせていただいた方がよいかなと思ったので、先に資料3「御議論いただきたい論点」について説明いたします。昨年、研究開発戦略を出していただきまして、今年6月には報告書のたたき台を出していただきました。こうした経緯もございますので、最終報告書を策定するに当たって、本日御議論いただきたい論点ということで6点挙げております。ですので、これからのヒアリングも、この論点も意識していただいた上で意見交換していただけると、事務局としては非常にありがたく思っております。

最後に資料1-3、今後のスケジュールということで、本日、ヒアリングをやらせていただきまして、9月19日、来月にまたヒアリング、これは委員の先生方、何名か、これからお願いさせていただきまして、ヒアリングをさせていただきます。

その後、10月18日に、検討結果取りまとめについて御議論いただく、そのようなスケジュールを予定しております。以上です。

【三島主査】 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの議題1について、今の御説明に対して、御意見、御質問等ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。はい。馬場委員。

【馬場委員】 ビヨンドナノテクノロジーというのがなかなか私は魅力的な名前だなと思っているんですが、まだ概念がいま一つよく分からないところもあるというところなんですけども、もともと事務局で作られたときに一番肝になるといいますかね。どういうことを重視されて、この言葉を作られたんでしょうか。

【高橋補佐】 ありがとうございます。基本的には、先ほどの資料1-1の2ページ目で書いているとおりです。これからはナノテクノロジーというネーミングも含めて、改めて考えていく時代であり、特に共通基盤という位置付けに第4期、第5期科学技術基本計画の中でなっていたという状況を踏まえたときに、そこから脱皮する、そこから更に強化していく上で、テクノロジーの核として上がるのであろうと。

そうなったときに、どのような形のものが捉えられるか、技術の進展というのを、例えばCRDSの方、皆様からも、以前のナノテクノロジー・材料科学技術委員会でも報告を頂きましたとおり、やはりナノテクノロジーというのを今後は使いこなす時代になってくるのであろうと。そのときに柱としては、異分野融合も含めた観点であったり、ナノからマクロ、メゾスケールも含めてのマクロ分野の包括的な理解というところを全体として捉えていくような、そういう部分というのが重要ではないのか。ナノの上をということでのビヨンドナノテクノロジーという表現にさせていただいた次第です。

【馬場委員】 ありがとうございます。以前、半導体の分野で、ビヨンドCMOSとか、ビヨンドムーアとかいう言葉もあったと思うんですが、それに近い概念だというふうに理解していいんですか。

【高橋補佐】 あくまでも、例えばムーア則の何ナノの先だとかそういったところにこだわるものではないのですけれども、概念としては、更にナノテクノロジーという下の土壌は十分培っており、その上に何を成果として出していくかというところを強調していくことが重要と考えています。

【馬場委員】 ありがとうございました。

【三島主査】 ほかにございませんか。はい、どうぞ。

【栗原委員】 今、馬場先生が御指摘になった点は、私も非常に大事で、重要な概念だと思うのですがが、特に分子や原子を操るという意味でのナノテクというのは、仮に今後、量子になってもその基本になる原子を操るというところは残ると思いますし、更にナノからマクロというところはまだまだ達成できていなくて、今、マテリアライズもそういうところを目指しているわけですけれども、そのような点において、ナノテクノロジーが非常に大事だと思うのでのすが、今回、2の14ページには、CRDSからの報告の中には、社会産業の変遷とナノテクノロジーの進化ということで、プログレスナノとか、フュージョンナノとか、システムズナノという言葉が書いてあって、これらの言葉とどういう位置付けになるのかということを少し考えておくといいのかなと思い、拝見しました。

【三島主査】 ありがとうございます。やはり原子、分子レベルのテクノロジーという意味から、もうちょっと上に広いビューを作っていこうというようなイメージだと思いますので、いろんなところで、このビヨンドという言葉は使えるし、いろんな見方をこれからみんなでしていこうということだろうと思います。でも、いいネーミングを高橋さんがね。どうぞ。

【高橋補佐】 まさに三島先生おっしゃったとおりのところと、栗原先生の御指摘のところがございますので、まず、そのフュージョンナノも含めて、どういう概念設計をしていくかというような今後の御議論もさせていただきます。同時に、あくまで、まだ仮称ではございますので、何か更なる新しい概念なり、ネーミングがあれば、是非お寄せいただければ幸いです。

【三島主査】 はい、どうぞ。

【加藤委員】 最初にナノテクノロジーが出始めた20年ぐらい前は、まずサイズだったんですね。ナノはサイズです。原子、分子の大きさがナノサイズだから、それを操るということで、ナノテクノロジーになったと理解しています。ですから、ビヨンドナノというのはいい言葉だと思いますが、今度は時間とか空間とか座標とか、ただのサイズではなくて、もう少し違う軸が入る。ナノのサイズが原子、分子が操るのが根本ですけど、そういったのが入るのかなと思って聞いていたのでのすよ。単純なサイズだけではなく、20年掛けて進化したんですけど、そのようなところでしょうか。

【高橋補佐】 あくまで今、書かせていただいているのは例示です。ですので、時間制御の面も含めて、いろいろな点が今後含まれてくると思います。

【三島主査】 はい、どうぞ。

【中山委員】 名前はなかなか難しいところですが、ナノテクノロジーというのが始まったときに我が国は多分ちょっと間違えたのだと思います。ナノテクノロジーということを材料に閉じ込めてしまったのです。だから、我が国では、材料≒ナノテクノロジーみたいになってしまいました。でも、本当はナノテクノロジーという言葉だけを見ると、全く材料ではないのです。大きさですよね。本当は各科学技術分野や出口分野の最先端に分野横断的にナノテクノロジーがあるというのが、正しいポジショニングなのだと思います。材料も横断的なものなので、レイヤーとしては似ています。ナノテクノロジーは各分野の研究競争力あるいは産業競争力そのものであって、そこに投資することによって、最先端のところに効率よく投資が配分されるという上手なしかけであったんですね。また、本質的に分野融合と横断を意図しています。各分野の切れ味鋭い最先端の刃がナノテクノロジーで、そこにさえ投資しておけば世界と戦えるというのがナノテクノロジーの国際的な認識だと思います。

諸外国はそういう認識と運営がなされているから、いまだに投資は維持されており、場合によっては伸びている国もあるという中で、我が国は、縦分野の一つとして、ナノテクノロジー・材料とやってしまって、ほかの分野とのインタラクションがなくなった。さらに、他の分野と融合すべきというような、二次的に融合させましょうというような奇異なことが起こってしまった。我が国はこのようなコントロールミスが起こって、いまだにナノテクノロジーというと、狭義のものとして捉えられているのかと思います。だから、もし新しい言葉というのであれば、より広い概念と、広く研究と産業競争力の最先端に置こうということを最初から考えていないと、また失敗して、失敗と言ったらまずいんだけど、効率的な施策が打てなくなってしまうと考えます。もう少しよりよくするにはそうした方がいいだろうと思います。

もう一つ、ナノテクノロジーとか材料は、融合で基盤だよという扱いで、少し虐げられてしまったようなニュアンスが書かれていますが、それはそのとおりだと思います。ナノテクノロジーに関する融合というのは多分2種類あります。1つは、ナノテクノロジーというのは物理とか化学とか生物とか情報とか、その他いろんなもののディシプリンベース、若しくはサイエンスのところでしっかり融合がなされているうえで結果がでるということ。2つめは、出口のところでは他の成果をしっかり使い、融合させ、競争力とか付加価値を付けて、我が国の産業も科学技術も振興させていきましょうということ。このように、ナノテクノロジーに関する融合にはレイヤーが2つあります。融合という言葉は、現況ではかなり重視されていますが、この2レイヤーを意識してやれば、みんな迷っている融合的な研究や開発への答えが出せると思います。反対から言えば、これをしっかりとやらないと、我が国として大事なもの、強いところも失われてしまうよということをしっかり考えて考えいかないといけない。

世間の典型的な視点は、先ほど竹上さんが言われた資料1-5にある、統合イノベーション戦略における強化すべき分野での展開にあります。基盤的技術分野で大事にすべきものとして、AIとバイオと量子。こう言われてしまうと、本当に強いものは何だろうと考えこんでしまいます。でも、これらもすべて縦割りで語られているのですが、バイオテクノロジーの最先端はまさしくナノテクノロジーである、AIもナノテクノロジーの成果である最先端の半導体、メモリ、その他デバイスの上に乗っている。量子だってその上に乗るだろうと思います。我が国の強みを生かしたこと、生かすことをやるべきだとここで言われるのであれば、その最先端や横串にナノテクノロジーや材料があるとしっかり言わないと、我が国は本当に食っていけなくなってしまうのではないかと感じます。こういうことを丁寧に議論ができればいいかなと思います。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。10月のときの開催までにいろいろ議論を重ねて、それを政策委員会に出すわけですから、そこまでに今のようなことを頭の念頭に置きながら議論をしていって、ビヨンドでもいいかもしれないけれども、何かもっといいものがあればというようなことをおっしゃったかと思いますので、よろしくお願いいたします。

ほかに何か御意見ございますか。

それでは、議題の2に参ります。第6期科学技術基本計画の策定に向けて、本日は、今後のナノテクノロジー・材料分野を担っていく若手、中堅の研究者の先生からのヒアリングを行おうということで、理化学研究所の加藤雄一郎先生、大阪大学の関谷毅先生にお越しいただいております。

御発表いただく内容、先ほど竹上さんから御説明がございましたが、後ほどの議題3における第6期基本計画策定に向けた推進方策を検討する議論の中でも重要になろうかと思いますので、聴講をさせていただきたいと思います。

それでは、それぞれの先生に15分程度で御発表いただいた後、それぞれに質疑の時間を設けますので、よろしくお願いしたいと思います。

それでは、まず加藤先生からどうぞよろしくお願いいたします。

【加藤先生】 御紹介ありがとうございます。理化学研究所の加藤雄一郎です。

きょうは、自分はナノ量子フォトニクスというものの研究をしているんですけども、それにいかにナノテクと材料が大事なのか。それから、自分が研究室を立ち上げたときは、東大で立ち上げたんですけれども、そのときにナノテクネットと、それから、ナノプラットに非常に助けられたので、その昔話もしたいと思います。

最初に自己紹介なんですけれども、僕、生まれは東京ですけど、小さい頃、ニューヨークに住んでいて、それから、小学校は香港で、中学校はまたニューヨークに行って、高校と大学は日本で、大学院はUCSB、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で、物理学でPh.D.を取りました。その後、スタンフォード大学でポスドクをやって、その後、日本に戻ってきて、東大で研究室を立ち上げました。現在は、理研の主任研究員です。

ちなみに、今回、若手の人に発表ということで言われたんですけど、もう自分は若手じゃないと思っていて、もう理研の主任なので、立派な中堅だと思っています。本当に若手の話を聞きたいんだったら、もう一サイクル下の人を呼んでお話を聞くべきだと思います。

最初に、スピンの関連の方々もいるので、大学院生のときに何をやっていたかというのをちょっとだけ。僕は、UCSBの物理学科で、David Awschalomという、半導体スピントロニクスの研究をやっている研究室にいて、そこで、スピンホールホール効果といって、電気を流すとスピン流が生じるという、そういう現象を発見して、論文を書きました。この後、スタンフォードでポスドクをやるわけですけど、そのときは全然違うことを始めまして、こういうカーボンナノチューブを使ったデバイスの作り方をスタンフォード大学の化学の研究室、Hongjie Daiという先生のところで、こういうものの作り方を学んできました。このときに、ナノチューブがはやりだったんですけど、これはすごく難しい材料で、いろいろ課題があるなと。じゃあ、自分で研究室を立ち上げて、こういう課題をクリアしていこうということを考えたわけです。

東大で、当時29歳だったんですけど、そのときは准教授に研究室を持たせて運営させるというプログラムが工学系研究科で動いていて、今もそれは続いているんですけど、ちょっとグレードダウンしているかもしれないんですけど、続いていて、部屋を与えられて、ポンと一人で放り込まれて、あと、スタートアップの予算を付けて、さあ、自由にやってみなさいと、そういうプログラムです。

そうすると、全然お金なんかないので、スタートアップのお金だって、これを工事するだけで終わっちゃいますし、でも、すごくよかったのが武田先端知のクリーンルーム、これがナノネット、それから、ナノプラットで、共同利用設備としてオープンに使っていいよ、担当の三田先生が「使って、使って」と言ってくれて、実際、フルに活用させてもらいました。これがなかったら今やっているような研究はできなかっただろうと思います。3年ぐらいたつと工事も終わって、実験設備も整って、研究室のメンバーもそろってきて、しっかり研究ができるようになります。

最初にやったのは、単にチューブを合成できるような、基板の簡単な加工ですね。本当にシリコン基板に溝を掘るみたいな。それで、ナノチューブの基本的な光学光特性を測って、論文を書くと。やっぱりこういうスーパークリーンルームがすぐ近くにあって、歩いて30秒ぐらいのところにあるんですけど、これをフル活用して、どういうことができるかというと、こういった1本のナノチューブを組み込んだFET、これはスタンフォードでやっていたことをとりあえずできるようにしようという感じで始めたんですけども、こういうデバイス、それから、ちょっと進化したようなデバイス、こういうのを思い立ったらすぐ作れる、そういう状況で、いろいろとこういうものを作ってきて。それから、もう一つ、これは新しい方向性で、光構造に興味を持っていて、これはUCSBにいたときからずっと興味があったんですけど、フォトニック結晶とか、隣の研究室でやっているところがやっぱりあって、使ってみたいなと言って、作ってみて、これをナノチューブと組み合わせる。こういった微小共振、光共振器を使って、小さい物質の発光特性を制御する、あるいは明るくするみたいなこともやってきて、こういうのを1本のナノチューブレベルでやり始めたのは、僕らが最初でした。

スタンフォードから東大に来て、何を解決しようとしていたのかというのをサイエンティフィックなバックグラウンドをお話しします。

これはナノ材料一般に共通する課題でもあるんですけれども、ナノチューブのこういうチューブがあって、グラフェンシートを丸めた格好をしているんですけれども、この巻き方というのは無数にあって、六角形と六角形を重ねるように巻くと筒ができちゃうわけですね。ところが、その2つを選ぶ選び方というのは無数にある。ベクトルで言うと、このnとmの整数の組み合わせ、この組み合わせの選び方はたくさんある。

もう一つ、困ったことに、この巻き方がちょっと違っただけ、だから、こことここと重なるように巻いても、隣と重なるように巻くと、金属が半導体になっちゃったり、半導体が金属になっちゃったり、物性が全く変わってしまうと。当然、合成するときにはそんなのコントロールできないので、全部混ざったまま、ぐちゃっとできる。ぐちゃっとできて、その混合物を研究者は一生懸命測るということをやっているわけです。すごく難しい材料で、当時は、こんな構造なんて混ざっていて、どれになっているかよく分からないけど、多分こうだろうみたいな論文がいっぱいあるわけです。それで、『Nature』何とかみたいなのがいっぱいあって、それってどうなんだろうというのがやっぱりこのナノチューブの業界でも課題でしたし、これはナノ材料一般に言えることだと思うんですね。原子レベルで全く同じ構造をもう一回、手に入れようと思っても、どうしても一期一会の世界から抜け出せない。

ナノチューブの業界では、発見されてから20年余り、やっぱり材料科学の研究は非常にみんな頑張っていて、当初は絶対不可能だと思われていた、カイラリティを選んで合成する。こういうことができるようになっています。本当に驚きなんですけど、やっぱり特殊な触媒を使って、これは北京大のグループなんですけど、できるようになっています。それから、カイラリティの分離。分離の方はもうちょっと昔からスタートしていて、いろんなやり方があるんですけど、遠心分離を使った方法、クロマトグラフィを使った方法、それから、最近はやっているのはあれですね。Aqueous two-phase separationといって、溶液中で二相分離を使って純度を高めていく。ここら辺もすごい進んでいて、今だと、金属と半導体の分離だと、フォーナイン、だから、99.99%、半導体とか、そこら辺の分離ができるようになっています。それから、単一のカイラリティ、つまり、こことここ、このnとmの組み合わせというのが巻き方なんですけれども、このnとmは、単一という、シングルカイラリティの分離も99%レベルででできるようになっています。これは考えてみればすごいことです。

そういうふうに、材料面での研究というのはすごく大事で、それは進んでいて、やっぱりきれいにするとどんどんデバイスとかの性能がよくなってくるというのも来ているんですけども、僕はもともと物理の出身なので、材料はよくなるだろうと。よくなったときにどんなパフォーマンスが得られるのかというのを示すのが自分の役割だと思っていて、1本のナノチューブを持ってきて、きちんとカイラリティを同定して、それでパフォーマンス、あるいは物性を測る、そういうことをずっとやってきました。

どうやってやっているかということなんですけど、こんな感じで、さっきもあったんですけど、シリコンのチップに溝を切って、触媒をすぐ隣に置いて、化学気相成長法で合成します。ナノチューブはいろんな方向に生えるんですけど、運がよければ、こういうふうに引っ掛かるやつがいると。こっち、電顕写真ですね。ちょっと薄い細い線で見えているのはナノチューブです。こういうふうにチップ上に無数に何千本もチューブが生えています。これをレーザでスキャンして、見ていきます。レーザをこの溝に沿って走らせて、位置の関数として、スペクトルをプロットしたのがこの二次元のカラープロットです。青い点がピコピコピコッと見えると思うんですけれども、これ、一個一個個が、一本一本のナノチューブです。

発光波長がそれぞれ違うのは、これは巻き方が違うものなので、全部ここに混ざっている。合成のときは制御できないので、30種類ぐらい、ここに混じっています。でも、一本一本測ることはできるので、この一本、こいつを見つけて測ろうとイメージを取って、測定することはできます。

このように、励起分光スペクトルといって、励起波長の関数としてスペクトルを1本のナノチューブに対して取ると、こんなデータが取れます。これは、要するに、吸収の共鳴がこのエネルギーになって、発光はこのエネルギーである。この2つのエネルギーが決まると、この巻き方というのを分光的に特定することができます。なので、こういうスペクトルが取れたら、これは(8,7)だと。だから、これは原子レベルでもう構造が一意に特定できているわけです。違う巻き方だと、こういうふうに違うところにピークが出てくるわけです。

こういうふうにして、一本一本測るわけですけれども、これは手作業でやっていくのは大変なので、全部自動化して、機械の力を使って解決すると。そうすると、何千本ぐらい、ちゃちゃっとデータを取って、こうやってまとめられると。こういうふうに離散的に島があるのは、それぞれ別々の巻き方のもので、この島にいるやつは(9,8)とか、そういうアサインメントができるようになります。そうすると、もう原子構造で、原子レベルできちっと構造の分かったチューブを一本一本拾ってきて、測るということができるようになります。

これはもうチップ上のどこにいるのかというのは、位置、巻き方、それから、どういうふうに掛かっているか、角度、それから、長さですね。こういうのを自動でデータベース化しておいて、きょうはこのカイラリティが測りたいなといったら、そこに行って、測るということができるようになっています。なので、合成する段階ではめちゃくちゃなんですけど、測る段階では、狙ったカイラリティをオンデマンドで測定できる。そういったことを東大にいた間に開発して、できるようになっています。

こういうことができるようになると、何かちょっとおもしろいことができるんじゃないかなと思って、今、理研で研究しているんですけれども、やっぱり半導体、量子ドットとかだと、原子レベルで同じ構造をもう一回欲しいとかなると、なかなか難しくて、逆に、化学の分野だと、有機合成で、有機半導体の分子をきちっと作る。純度の問題はありますけど、それはできると。でも、完全に同じものができても、それをデバイスに組み込むとなると、やっぱりすごく難しくて、カイラリティが分かっているチューブを使うことで、原子レベルでもう構造がきちっと決まった物質を使って、デバイスを作ることができる。長さ方向はミクロンのスケールであるので、簡単に電極を付けたり、さっきの光構造にくっつけたりと、そういうことができます。だから、単なるナノテクから、僕が作った言葉なんですけど、アトミカリー・ディファインド・テクノロジー、もう原子レベルで構造が定義されたような、そういうデバイスができるようになっていると。

そうすると、何がいいの? 何がおもしろいの? というところなんですけど、基本的なこととして、やっぱり構造がきちっと原子レベルで分かっていたら、物性が予測可能で、やっぱり同じ構造を使って、再現性が確認できる。こういうところがやっぱりナノサイエンスの分野では、同じものなんか手に入らないからといって、いいかげんな論文が多いんですけど、これがきちっとできるようになる。やっぱりよく分かってくると、デバイスの物理もよく分かってきて、かなりいろんな理解が進んできています。こういうナノ世界の物理法則は量子力学なので、よく分かってくると量子物性が使えるようになってきます。ナノチューブの場合なんですけど、室温で光るし、通信波長帯で光るし、シリコン上でも合成できるので、本当に使えるものがそろそろできるんじゃないかと思って研究しているわけですけども、きょうは1例だけ、室温で動作する単一光子源が作れますよというお話をします。

これは実際、ナノチューブを測ったものなんですけど、こういうふうにアンチバンチングバンチングが見えていて、未加工のナノチューブからちゃんと単一光子が出ているよと。それから、これをちょっと工夫してドーパントを入れているんですけれども、フォトニック結晶の上に乗っけると、もうさっきのデータより大分性能アップしている感じが見られると思うんですけれども、非常にクリーンで高輝度のオンチップの室温で通信波長帯の単一光子源ができるよというような状況になっています。

今後、じゃあ、原子レベルで同じぐらいきちっと作ろうと思ったら、どういう材料があるのかなというのを並べてみました。今、はやりの二次元材料ですね。ここら辺は、例えばhBNは、先週ぐらいの『Nature』にNIMSの谷口さんのアーティクルが出ていましたけど、hBNは今、NIMSで作ったやつが一番よくて、そこでしか作れないみたいな状況もありますし、日本はTMDCとか弱いと言って、岩佐先生とかいつもブツブツ言っていますけど、こういう材料もやっぱり原子レベルで決まるので、こういうのを組み合わせていく。それから、やっぱり分子ですね。分子1個だけだと思っていたんですけど、ナノチューブの表面で1個の分子が制御できるようになったら結構おもしろいことができるんじゃないかなと。これだけ小さいところできちんと定義された構造を使うと、室温で量子効果がちゃんと使えるようになっていくんじゃないかと、そういうふうに考えて研究をしています。

では、まとめのスライドはこれです。微細加工はやっぱり基盤技術なので、若手にとっては、こういう誰でも入って、何でも試せるみたいなクリーンルームはすごく大事です。これまでのナノテクノロジーを超えて、原子レベルで本当にデバイスが作れるとなってくると、きょうお見せしたように、新しい量子デバイスが多分見えてくる、実現してくると思います。こういう進歩があったのは、やっぱり材料科学の進歩がすごく大事で、それにエンカレッジされながら、一本もののナノチューブの研究をやっていると。一本のナノチューブ、いつまでたっても使い物にならないよと言われるんですけど、材料の方で画期的な進歩があるので、お互いにエンカレッジしながら進んでいる。

最後に、文科省に来るのは初めてなので、言いたいことを言って帰ろうと思って、このスライドがあります。日本に帰ってきてからやっぱり、日本は借金がいっぱいあって、お金が全然ない、ない、ないという話ばかり聞いて、本当かなと思って調べてみると、別に、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスより、むしろいいぐらいということが分かって、何でケチケチしているんだろうなと。やっぱり未来に投資してほしい。研究も教育も20年後、30年後にリターンがある投資なので、そこはケチらず、ドカンと投資してほしいなと。特にやっぱり基礎研究は何が当たるか分からないんだから、やっぱり選択と集中が多い気がして、もっと分散して、投資してほしいなと。

例えば科研費の予算が全部で2倍とかになるだけで、景色が大分変わると思います。あとはモノより人ですね。アメリカの研究費の審査とかやると、ほとんど人件費ですね。学生、ポスドクにお金をあげる。そこら辺は別に貧乏じゃないんだから、そのぐらい、アメリカ、ドイツと同じぐらいきちんとサポートしてほしいというのが思っていることです。これは分野に限らずだと思いますけれども、特に材料、ナノテクの分野でも大事なことだと思っています。

以上です。

【三島主査】 どうもありがとうございました。大変若々しいお話を聞かせていただきまして。いろいろ挑戦なさっているし、お仕事の内容も非常にすばらしいと思います。それから、これが今、やっぱり日本の研究力をどうやったら強くなるかの非常に大きなヒントだろうと思うので、大変いいサジェスチョンを頂きました。ありがとうございました。

それでは、皆様、御質問、御意見ございましたら。

【馬場委員】 すばらしいお話、どうもありがとうございます。単一のカーボンナノチューブを非常に厳密に制御して分子を作られて、その中から量子効果を導き出されるということで、非常にすばらしいと思うんですが、私、化学なんですが、単一のカーボンナノチューブをどれぐらい、ピュリファイするというか、制御する必要があるんでしょうか。例えば、名古屋大学の伊丹先生みたいに、一個一個のベンゼン環から全部、まだカーボンナノチューブはできていないんですけれども、一から全部合成しようという試みもありますよね。ああいうのが必要なのか、あるいはもう既に今あるいろんなテクノロジーで十分に使えるんでしょうか。

【加藤先生】 そうですね。カイラリティ選択合成ができるようにはなっているんですけれども、できるのは、今のところ、3つのカイラリティで、歩留まりも非常に低いです。やっぱり条件をギューッと絞って、1つしか生えないようにして、それで作っている。なので、本当にカーボンナノベルトからデザインした巻き方のチューブだけをギューッと生やせるようになったりすると、もう画期的ですね。多分応用が効いて、別々のカイラリティが全部コントロールできるようになる。それは本当に画期的なことだと思います。

【馬場委員】 あと、先生が量子効果と言われているのは、具体的にはどういう効果を言われているんですか。

【加藤先生】 僕がイメージしているのは、きょう、単一光子源の話をしましたけれども、例えばそういうことですね。フォトンを1個だけ、あるいは電子ホールペアを1組だけ、そういうレベルの話ですね。例えばチューブに1個だけ分子をくっつけて、そこに局在した励起子状態、1個だけを検出することができるようになったら、単一フォトンレベルの光電変換とかそういうようなレベルの話ですね。やっぱり電子1個、フォトン1個、そういうものが作り出せたり、検出できたり、そういう世界が来るんじゃないかなと。これはやっぱりエネルギースケールの問題なので、小さくすればするほど、エネルギースケールがでかくなっていって、室温でもちゃんとできるようになる。今でも低温だったらⅢ-Ⅴ族の半導体を使ってできるんですけれども、やっぱり室温となると、もう全部、ぐちゃぐちゃになっちゃうのでできない。それを実現するためにやっぱりすごく小さいところにデバイスを作っていかないといけないんじゃないかなと、そういう考えです。

【馬場委員】 ちなみに、1.5ミクロン帯というのは通信帯としても重要なんですが、バイオアプリケーションでも極めて重要なので。バイオアプリケーション。1.5マイクロメートルが体の中を一番通るんです。なので、是非そちらにも御興味を持っていただければと思います。

【加藤先生】 はい。

【三島主査】 ほかにございますでしょうか。では、まず加藤さん。

【加藤委員】 おもしろい話をありがとうございました。それで、今の馬場先生にも関係するのですけど、やっぱり最初の頃のナノテクというのは、物にみんな閉じていたんですね。カーボンナノチューブの人はカーボンナノチューブのみやっていて、フラーレンの人はフラーレンのみやっていて、ナノ微粒子の人はナノ微粒子をやっていて、それぞれ独自の分野が分かれていて、これがナノだったわけです。基礎としてはすごく面白く重要ですし全然問題ないのですけど、今の馬場先生のお話のように、例えばバイオとの融合を考えるとか、それから、化学だとセンサとか考えられます。光量子のコンピューティングだけではない広がりのある展開、すなわち、この委員会でも融合が重要なのですが、そういった展開・広がりというのはどうお考えでしょうか。

【加藤先生】 これは、僕が理研に移ったのが3年前なんですけど、東大にいたときはあんまりそういうインタラクションはなかったんですけど、理研に行ったら、そういうインタラクションがありまくりなので、もうちょっとずつ考えています。やることができる環境も整っていて、理研はそういうインターディシプリナリーなプロジェクトに対する予算というのがあるので、いろいろ考えて、少しやり始めてはいます。

【加藤委員】 是非そういうふうに広げていただきたいなと思います。

【加藤先生】 はい。

【加藤委員】 それから、前の委員会でも、私も発言したのでのすが、3番目、大賛成で、やっぱりこれはただ単に学生を喜んでもらえてて、そのときの研究が進むだけではなくて、必ず将来、それが国にリターンしてくるので、私も是非こうしてほしいと思っています。

【三島主査】 それでは、納富委員、どうぞ。

【納富委員】 共用のクリーンルームが非常に役立ったという話を聞いたのですけれども、その前はアメリカで研究されていたんですよね。アメリカにも共用のクリーンルームとかあるのかなと思ったのですが、そういうパブリケーションのファシリティーに関して、アメリカから日本に帰ってきて、どういう印象でしたか。

【加藤先生】 もうまさにそのとおりで、UCSBもスタンフォードも、向こうのNNIN、今、名前はちょっと変わっていると思うんですけど、向こうのナノプラットの中に入っていて、もうそういうのがあるのが当たり前なところに僕はずっといたんですけど、東大に移ってきて、最初に入ったときは、やっぱりアンダースタッフで、人が少ない。設備や面積もすごいんだけれども、ちょっとまだスペースが残っていたり、中で作業している人の数が少ない。えっ、こんなのでよく運営できているなと思ったんですけど、そこから10年たって、三田先生の努力の賜物なんですけど、装置がかなり充実してきて、今、もちろん利用率もすごく高くなってきて、現状は、僕が10年前にいたスタンフォードとかUCSBとほぼほぼ同じぐらいの環境が整えられています。だから、移ってきた当初は後から追っ掛けていたんだと思うんですけど、今はもう同じレベルでやれるような環境になっているというのが僕の考えです。

【納富委員】 共用のクリーンルームというのは、メンテナンスをするスタッフが非常に大事だと思うのですけれども、その辺も米国と同じぐらいの印象でしょうか。

【加藤先生】 正直なことを言うと、東大のクリーンルームの場合は、三田研の学生と研究員の献身的なサポートに頼っている面があって、もうちょっと技術の人をずっと雇っていけるような長い予算がちゃんとあって、人をそこでずっと雇っていけるような、そういう状況だと更によくなると思います。だから、今は頼っているというか、学生さん、研究員に甘えている。ある意味、彼らの研究時間を奪っちゃっているので、そこはきちっとお金を付けてあげるとうれしいと思います。

【三島主査】 栗原さん、先に。

【栗原委員】 大変すばらしい御発表ありがとうございました。大変印象深く拝見したのは、10ページのExcitation energyとEmission energyのマッピングで、これをされるのには多分こちらの全自動顕微分光装置がないと、とてもできない御研究だと思いますが、これを作るときに、どういう思いで作られたのかなと。今、若い人が、ショートレンジのゴールで研究する人が多いというようなことが割と課題だと言われていますが、これはその先の、どういうところを見通してこれをやろうと思っていたのかということを、差し支えなければお伺いできればと思います。あとは、その研究をサポートしたグラントとかそういうのはどういうものだったのか。

【加藤先生】 僕はもともとこういうのを作るのが大好きなんですよ。なので、学生のときも、スピントロニクスの研究のデータもすごく自動化して、夜中の間に勝手に取っていて、朝来ると、きれいなデータが出てきて、これって楽で楽しいみたいな。なので、もともとこういうのは大好きでした。好きだから、そこから始まったというのもあるんですけれども、長期的なところを見据えてというと、やっぱり人が何か一生懸命根性でやるというのは、もうずっと続かないことは分かっているので、それでやっていると、中国とかに負けちゃうんですよね。なので、こういうのはすごく大事だなと。最初から、学生のときからも思っていたし、PIになってからも思っていました。

こういうことをやっていたのは、予算面では、僕は最初にJSTのさきがけがあって、その後、科研費の若手もあって、あとは総務省のSCOPEとか、いろいろな予算で若手向けの予算をつなぎ、つなぎやってきたんですけれども、結局、最終的には、いいサイエンスをやりたい。だから、そこを考えてやっていて、さきがけのアドバイザーというか、総括がすごくいい方で、長期目線でやってくださいと。さきがけの間に何も出なくてもいいからという、そういうメッセージをもらって、よし、じゃあ、ちゃんといいサイエンスをやろうといって、やれたというところですね。

【栗原委員】 この指数付けというのは簡単にできるのでしょうか。

【加藤先生】 ここら辺、インデックスを付けるのは、理論と、それから、実験の過去のデータがやっぱりあって。

【栗原委員】 そういうのを全部突き合わせてやる。

【加藤先生】 一番最初はやっぱりどれがどの巻き方なのかというのは理論家が計算して合わないとか、いろいろ議論があったんですけれども、ある程度、こうやったら説明できるというのが理論的に分かってくると、もうアサインメントはきちっとできます。

【栗原委員】 ありがとうございました。

【三島主査】 それでは、ちょっと時間が押しておりますので、最後に湯浅委員。

【湯浅委員】 大変若々しさを感じさせる発表で、ありがとうございました。先ほどからビヨンドナノという言葉が議題に上がっていますけど、このカーボンナノチューブでビヨンドナノに相当するような展開というのは、まあ、単一光子は一つあるとして、ほかにどういうことがありますか。

【加藤先生】 難しい質問ですね。やっぱり小さい方向に行く量子物性を使う。1個の電子、1個のフォトン、一個の励起子、そういう方向が一番相性としてはいいんじゃないかなという気はしますね。

【湯浅委員】 どちらかというと量子計算の方向に近付くようなというイメージでしょうかね。

【加藤先生】 そうですね。計算ではないと思います。計算はやっぱり非常に高品質なキュービットが必要なので、どうしても低温でコヒーレンス時間が長い。そういう方法で、それはもうⅢ-Ⅴ族Ⅴ半導体とか、超伝導とか使ってやってくださいという感じです。

多分、今あんまりみんなが考えていないのは、量子物性を、ちょっと質が悪いかもしれないけど、室温で我々の何か身近なところで利用できるケースがあるんじゃないか。そこは多分あんまり誰も考えていないので、そういうところにニッチが、チャンスがあるんじゃないかなと思って、いろいろ試しています。何ができるかは、できてみてからじゃないと分からないみたいな言い方ですみません。

【湯浅委員】 今後の発展を期待します。ありがとうございます。

【三島主査】 それでは、加藤先生、どうもありがとうございました。

では、続きまして、関谷先生、よろしくお願いいたします。

【関谷先生】 では、始めさせていただいてよろしいですか。

【三島主査】 はい、どうぞ。よろしくお願いいたします。

【関谷先生】 大阪大学の関谷と申します。このたびは大変貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。

本日、大変貴重な時間を15分、御紹介の時間として頂きましたので、私の取組、それから、それを更に一般化したときに、材料、ナノテクノロジーに一体どういった取組が、まあ、私なりに求められているかについて御紹介させていただきたいと思います。

タイトルは、少し大きなタイトルですけれど、これまでの小さな信号よりもはるかに小さな信号、すなわち何百万も何千万も掛けないといけないような小さな信号を数百円、数千円でIoTで手軽に測れる。そういった微小信号計測のための材料開発と、それによって導き出される新しい産業創生について、少し大きなタイトルですけど、御紹介させていただきたいと思います。

私、3日前ですけれど、大阪大学の総長補佐を仰せつかりまして、企画戦略室室長も仰せつかりまして、大阪大学の新しい目線で研究を計画していく立場に立たせていただきました。また、前JST理事長の中村道治先生が、今、日本工学アカデミーの副会長をしておられますけれど、中村先生の御指導の下、私、日本工学アカデミー若手委員会の委員長を仰せつかっておりまして、これもやはり若い目線で国へ提言する、そういった取組をさせていただいております。きょう御紹介する技術を使いながら、これはまさに文科省、文部科学省の管轄でありますJST、センター・オブ・イノベーションのプロジェクトの中で新しい技術を開発いたしまして、それでベンチャーを作りまして、そのベンチャーの取組をさせていただいております。

また、最後に、PE研究会と書かせていただいておりますけど、これはものづくりコンソーシアムでして、現在、120社の研究会を主催させていただいております。

まず最初に、産業科学研究所をしっかりと紹介してくるようにと、所長からの命を受けておりまして、1枚だけですけれど、産業科学研究所で取り組んでおります取組について御紹介させていただきまして、その次に私の研究、自己紹介とさせていただいて、内容へと入っていきたいと思います。

産業科学研究所は、名前のとおり、産業に資する科学の研究をしておりまして、今や研究開発の速度が非常に早くなっておりまして、原子とか、それよりも小さな電子等を制御して、その技術そのものが、昔でしたら、30年たって、初めて社会に実装するという世界だったわけですけれど、今やそれが2年や3年ですぐに産業に使われるようになる時代になっております。そういった科学研究をすぐに産業に生かす取組をさせていただいておりますのが、産業科学研究所で、最先端の研究を推進し、成果を一刻も早く社会に還元するという、高いビジョンを掲げて取り組ませていただいております。

私はその中で、27研究分野ある中で、先進電子デバイス研究分野を担わせていただいておりまして、現在、60名の研究者とともに取り組ませていただいております。キャッチフレーズは、「真に社会の役に立つモノづくりを誰もが手にできる大きさとコストで実現する」と。すなわち、IoTとAI、これをいかに実現するかという取組を研究対象としております。

私自身は、5年前に東京大学から大阪大学産業科学研究所に移ってまいりまして、東京大学時代には、染谷隆夫先生とともに、助手、助教、准教授まで、11年、染谷先生と一緒にやらせていただきまして、その間にフレキシブルエレクトロニクスの研究開発を染谷研究室の台所で作らせていただきまして、実際、私がファーストオーサーとして、書いてきたフレキシブルトランジスタ、伸縮性のトランジスタ、メモリ、ディスプレイ、生体計測用のアンプ、世界最薄膜のトランジスタ、LED、光センサ、磁気センサ、そして、脳内へ埋め込む取組といった、柔らかいこそ実現できるトランジスタの研究開発をしてまいりました。

このような柔らかい、私自身は東京大学の物理工学科で学位を取りました後に、実際に助手、助教、それから、電気電子工学科に移りましてから、講師、准教授と。その間には加藤先生とも御一緒させていただいておりまして、一貫して、柔らかいエレクトロニクスの研究開発をしてまいりました。2014年には、トムソン・ロイターから、それから、2018年には、クラリベート・アナリティクスから、Highly Cited Researchers、世界で影響力を持つ科学者にも選出いただきまして、2014年の段階では、材料科学で、2018年、去年は、クロスフィールドと呼ばれる異分野融合のところで選出いただきました。

私自身の研究開発は、材料を原子レベルで高くフィルムの上に制御することで、柔らかいエレクトロニクスを実現するとともに、それだけではIoTの世界にかないません。そこから薄膜の電池、通信技術、それから、ADコンバーター、それから、それをかき集めて、一つの大きな基盤にして、ビッグデータ。その情報をリアルタイムですぐに可視化するAI技術、これらを全て融合する研究に今、取り組ませていただいております。実際にまずそれで何ができるのかという取組を御紹介させていただきます。

まず国プロで私が研究開発責任者、東京電力ホールディングスが事業化責任者といたしまして、こういった、これは小さく見えますけど、横軸が10メートルございまして、この大きなフィルム型の炭素で作ったセンサに、振動センサ、それから、歪みセンサ、塩化物濃度センサ、pHセンサと、こういったフィルム型のAIを搭載したセンサをコンクリートにペタッと張り付けることによって、コンクリートの劣化状況をマルチモーダルで計測するとともに、そこから出てきた信号をより分けて、ここが危ないから、ここは保守・管理した方がいいというふうな、中央制御の部屋に情報を届ける。そういったシート型の構造物ヘルスケアセンサを実現しておりまして、現在、東京電力の管内の地下にあります洞道と呼ばれる電力伝送部の500キロの一部に、我々のセンサを10メートル置きに実装して、コンクリートの状況計測を国家プロジェクトでやらせていただいています。これはなかなか見る機会がないわけですけれど、もう一つは富山市の神通大橋の下、左岸に我々のセンサが幾つか付いておりまして、これによって、橋梁の耐久性、それから、堅牢性を計測する、人手に頼らない構造物のヘルスケアセンサの取組をしております。

もう一つ目は、これが東京電力管内なんですけれど、この電柱の表面に振動センサ、それから、カメラではなくて、まちの状況を差分で計測する。いわゆる超音波を出して、反射してくる情報量から、例えば洪水が起きていると。それから、避難者はどういうふうな方向で歩いていくとか、この電柱というインターフェースを利用いたしまして、そこにシート型のセンサを付けることで、災害時にどういうふうなアクションを取るかといった研究プロジェクト。これもやはり国家プロジェクトとして、東京電力グループで取り組ませていただいています。

こちらはAMEDのプロジェクトですけれど、脳の中に埋め込むプロジェクト、それから、カテーテルの表面、医療機器の表面にセンサに搭載するプロジェクト。これは心臓の表面にフィルムを張り付けることで、心臓の動きを見たり、これもやはり医療機器としての取組をしております。もう一つは、最近、NHKでも取り上げていただきましたけど、ペタッとシートを妊婦さんに張るだけで、おなかの中の赤ちゃん。まさにNHKのウエブページとかホームページにも掲載されているんですけど、これを張り付けることによって、常位胎盤剥離と呼ばれる、お子さんがおなかの中で危ない状態になるというものをいち早く見つけて、遠隔医療の取組をさせていただいておりまして、これは3日前に、NHKのウエブページに上がったんですけど、既に100万件、ヒットしたということで、非常に大きな注目を集めているとNHKのプロデューサーからも言っていただきました。

これがペタッと心臓に張り付けるだけで、これは心電を正確に測るわけなんですけど、そういったものは花盛りでして、世の中にたくさんあるよとおっしゃられるかもしれませんけれど、これはノイズをキャンセリングする機能を1ミクロンフィルム上に搭載しました。すなわち、体を動かしながら、日常生活を送りながらでも、心電を正確に計測する技術でして、まさに2週間前、最新号の『Nature Electronics』の表紙も飾らせていただきまして、単なるフィルム型のセンサではなく、ノイズを自分で低減させる、ノイズキャンセリング技術も搭載したフィルム型のセンサになっております。

これがまさにJST、センター・オブ・イノベーションプロジェクトで創出いたしました脳波計でして、一体どんなものなのかと。これはペタッと張るだけで、認知症の予測をしたりとか、脳の活動を非常に手軽に計測することができます。これを医療、マーケティング、それから、様々、言葉を発しなくてもコミュニケーションがとれる。ブレインマシンとは別の民間ですけれど、官民ファンド、それから、民間から5億円近い資金を頂戴いたしまして、このベンチャーが立ち上がっております。ペタッと張り付けるだけなわけなんですけれど、時間の関係で、これは省かせていただきます。

この奥底には何があるかというと、柔らかい電極、それから、小さな信号を増幅するアンプが搭載されています。体の信号の中で一番小さな信号は、脳波と、それから、おなかの中にいる胎児心電なわけですけど、その0.1マイクロボルトという小さな信号を数千円の技術、手軽に測って、出てきた信号を読み取って、社会に役立てる。すなわち材料技術から出来上がったシート型のセンサを使って、それをAIですぐに読み解くことで、おなかの赤ちゃん、認知症の発症といったものを予測いたします。すなわち、今の技術は、小さな信号が正確に測れるだけではなくて、その信号をすぐに意味あるものに読み解くことができる。分析等、掘削の能力が極めて優れた社会になってまいりましたので、いよいよそういった技術が研究室の中だけでなく、病院で使われるような時代になってまいりました。

そのときに非常に小さな信号でして、心電とか筋電と比べて、4桁、小さな脳波となると、朝と夜でも違ってまいりますし、常に揺らいだ小さな信号になってきます。その小さな信号を既存の開発である既知のデータから、仮説、観察、実験、検証、そして、知識に置き換えておくと、脳波といった揺らいでいる信号を取ろうとしたときに、実験と検証が非常に難しくなります。そのときにまさにSosiety5.0の世界ですけれど、データ駆動型の研究開発が非常に重要でして、低コストな脳波計をたくさんの方に使ってもらうことで、統計的にその振動を扱う。すなわちデータ駆動型の中で扱っていくビッグデータが日本はございます。

今まさに健康管理、体温計とか血圧計のように健康管理したり、それから、医療の現場で使っていまして、既に京都大学がこの脳波計を使って、認知症の計測、それから、張り付けるだけで健常なのか、認知症なのか分かる。そういった論文を発表しておりまして、京都大学、東京大学、それから、大阪大学との共同研究の中でたくさんの医療の取組をさせていただいています。

これは手前みそで大変恐縮なんですけど、こういった取組をする中では、まことに著名な方たちの中で、私も人の感情を可視化する脳波デバイスのスペシャリストと選んでいただきまして、一介の材料の研究者ではありますけれど、これを脳波といったビッグデータ、新しい研究開発に生かすことで、大変大きな社会的な期待があるということを感じました。

ここでのポイントは何かというと、縦軸が価格指標です。横軸は小さな信号です。心電、脈波、筋電といったものは大体1ミリボルトから0.1ミリボルトでして、最近ですと、大体数百円、数十円ぐらいのテクノロジーで測れるようになってまいりました。

一方で、脳波、胎児心電、コンクリートの劣化といったものは、それよりも更に3桁、小さな信号ですけれど、一方で、それが測れると認知症が測れるとか、コンクリートの劣化が予測できるといった、極めて社会的なニーズが高い信号ほど、小さな小さな信号であるということが分かります。現状は、それを測ろうとすると、巨大な装置、それから、非常にコストも掛かる装置が必要になってまいりますので、我々の取組は何かといいますと、今はコストと時間が掛かっている小さな信号をいかに低コストで計測するかという研究開発に注力しております。実際に信号の選択性、低ノイズ化、そして、小さな信号ですから、増幅するという3つの機軸の下に、先ほどの構造物ヘルスケアセンサ、脳波計、心電計、胎児計、それから、埋め込み型といったセンサを開発しております。

残りの時間に、じゃあ、今の私が取り組んできた研究開発をもっと材料とテクノロジーに一般化したときに一体どういった開発が必要なのかについて、御紹介して、終わらせていただきたいと思います。

まず取り組みたいのは、病院に行かないといけないとか、専門性の高いコンクリート診断士じゃないと診断ができないといった世界ではなくて、誰でも安全・安心に暮らせる社会を実現するときに、非常に小さな信号ですけれど、コンクリートの劣化の信号を捉えたり、脳波、それから、おなかの中の赤ちゃん、それから、呼吸だけからがんを検出したり、非常に微弱な変調から、心筋梗塞を予測したり、いずれも極めて小さな信号、ノイズにかき消されるような小さな信号にこそ大きな価値がある。それを更に一般化すると、先ほど、横軸は電圧でしたけど、今度はたくさんのフィジカルパラメータに焼き直しております。縦軸、コストと時間、横軸が小さな物理量、化学量です。

今のIoTビジネスは、筋電とか心電はここです。ミリボルト、それから、様々な計測器、ナノアンペアとか、1時間当たり1デブリの加速度計測、リッター当たりのナノモルリットル、ppm、こういった計測を実現することで、心拍や心電、ガスセンサ、こういったものが今、IoTのビジネスの中心です。

一方で、先ほどから申し上げておりますとおり、更に3桁小さい信号に目を向けると、ここにマイクロボルト、ピコアンペア、1時間当たり10のマイナス2乗deg、それから、ppb、リッター当たりのピコモルリットル。もし今より3桁小さな信号が手軽に計測できると、認知症が測れる、構造物の劣化が分かる。そして、大学の取組は、更にその3桁小さいところに今取り組んでいますが、今、ビジネスとしては、ここの従来のIoTよりも3桁小さい信号を手軽に取るという取組がまず進んでいます。

その目標は何かというと、小さな信号になればなるほど、材料の品質と微細な構造の歪みとか、エネルギーの歪みとキャリア密度の歪みがてきめんにノイズになります。実空間からセンサ、アンプ、ADコンバーター、デジタル信号処理、サイバー空間へとつながる、この一連のシーケンスの中で、ADコンバーターをクリアした後、デジタル信号処理をしてしまえば、基本的にはミドルとかクラウド、エネルギーがあって、CPU、GPUがあって、非常に立派なAIがあるわけなんですけど、私が一貫して取り組んでいますのは、ここはユーザーとして使っております。その前にあるこの電極とか配線をいかに信号ノイズ比を上げてやれば、すなわち電極のように見えるけれど、実はそれが信号とノイズを選択したり、ノイズを除去したり、信号だけを増幅する、そういった材料の世界。一言で何かと言えば、ノイズを低減する材料の品質とか、構造の揺らぎを抑えたりとか、それから、もう一つは、増幅器、この2つを同時に研究開発することで、物すごく品質の高い、信頼性の高い信号をAIに送り込むことで、リアルタイム性の高い機械学習を実現する。そういった取組をしております。

すなわち、一貫して取り組んでおりますのは、信号ノイズ比を飛躍的に向上させる材料なり、構造設計技術でして、これを今、マテリアルで一生懸命研究しております。そうすると、この材料じゃないと測れないとか、そういった小さな信号は、例えばもう構造物の劣化とかになってまいります。

時間の関係で、ここはもう省かせていただきます。ただ、小さな信号を測るという世界動向の特許分析を見ますと、もう20社のうち、ほぼ18社、19社、全部日本の企業でして、この一番大きく見える1位がすごいどこか違う企業のように見えますけど、これはもう潰れてしまったとか、小さなベンチャーとかですね。もう特定できないものを積み上げることになります。すなわち、この1位の特許数は、全く架空のものでして、2位から見ますと、全部日本の技術ということが分かります。

次に、小さな信号を測る論文分析ですけれど、これも見ていただきますと、ボリュームの大きい中国やロシアは置いておいて、その後、3位からは東北大あるいは東大、東工大、大阪大学。論文だけ見ても、小さな信号を測る技術、アカデミア、産業界、いずれも日本に非常に強みがあるということが分かります。

これは縦軸が世界市場です。328.1兆円です。横軸が日本の持つシェア。これはアメリカが持つシェアです。見ていただきますと、青い玉は最終製品です。緑の玉が部品です。材料です。アメリカは、最終製品をたくさん持っているということが分かります。とりわけ、こういうスマホとかアップルとかああいったところが研究開発しているわけですけれど、こちら、日本に目をやると、もう明らかな産業構造が見えてまいりまして、100億円くらいの、いわゆる材料とか部品メーカーがアメリカと比べて徹底的に多い。すなわち、日本には、非常に優れた材料とか部品を持っている会社が、アメリカと比べて圧倒的に多いということが分かりました。

こういった材料を私自身、たくさん使わせていただくことで、脳波計とか構造物、ヘルスケアの技術へとつながっております。インフラ点検産業、脳波産業、バイオセンサ、DNAチップ、そして、様々な、アップル社とかの部品。製品に入っているフレキシブルな配線板も軒並み日本の製品なんですけど、小さな信号を測るという市場は、軒並み国内だけでも3兆円市場となっておりまして、小さな信号をIoT技術で測るというところに、非常に大きなターゲットがあると考えております。

実際に脳波のマイクロボルト、バイオマーカーとか電流、あと、それから、脳磁とか、フェムトテスラが必要だったりとか、こういった小さな小さな信号を測っていくことによって、人の感情を可視化したりする。それから、ヘルスケア、がんの初期の検出とか、環境のモニタリング、インフラとか建物のモニター、それから、将来、お年寄りがたくさんいる世界なわけですけれど、作業員のサポートシステム。ドローンの革新的な姿勢安定によって、輸送手段が安全かつ高効率になる。いずれもSDGs、17項目に合致するということが分かります。

最後に、じゃあ、どういう取組をするのかというと、低温・低エネルギーのプロセスで、高い結晶性の材料が必要になります。小さなノイズというのは、イコール純度が高い。結晶性が高いということを意味します。すなわち、結晶性が高い材料ほど、小さな振動が起こります。では、SiO2とかムービーとかああいったものを使えばいいんですけど、エネルギーとコストが掛かります。いかにして低エネルギーで高い結晶性の材料が得られるかというところが重要なんですけど、我々、トランジスタの界面に自己組織化単分子膜を利用することで、最表面だけ非常に高い結晶性を実現することで、低ノイズ性を生み出しています。あと、そういったもので構造を制御したり、キャリア密度の揺らぎを抑えるためのナノ界面制御材料の開発をしたり、それから、差動増幅アンプといった様々な信号増幅技術を利用しております。

すなわち、高い結晶性材料、それから、それを用いて、信号増幅技術、この2つを実現することによって、これまで測るのが非常に難しかった脳波、それから、構造物といったものを実現しています。

ちなみに、私の研究室は、テスターのように簡単に物質のノイズが測れるテスターを開発いたしました。通常は、こんな巨大な1億円以上するプローバーで、カチッと針を当てることでノイズが測れるんですけど、我々、これを一般化しまして、これはテスターのように見えますけど、この中で材料のプローブをすると、その物質がどのぐらいのノイズ密度を持っているかというのを測る。そういったテスターを持つことによって、ああ、この実装すると、物すごくノイズが高いねとか、ああ、この配線だとよかったね、そういった取組もたくさんしております。

最後になりますけれど、この材料の構造、純度を高い制御を保つことによって、私の研究室では、非常にノイズの低い材料に、それから、プロセス群、デバイス群、材料群というものを開発して、今、脳波計とか構造物、ヘルスケアへと。私は日本工学アカデミーの若手委員会の委員をさせていただいていまして、新計測技術への挑戦と題して、今、提言書をまとめさせていただいています。我が国が強い材料技術を基盤に、新しい科学や豊かな個人生活、安全・安心な社会の実現につながる革新的な計測技術の創生に向けた提言書を、あと3か月以内にまとめるということを取り組ませていただいています。そういう2つの骨子が作れればと思っております。

最後にですけれど、私たち、第二次ベビーブームの最後の年なんですけれど、私が75歳になると、2050年ですね。非常に大きな課題であると聞いております。そういった2050年の日本の材料技術を世界のエコシステムに投入することで、豊かな社会を作っていきたい。材料、ナノテクノロジーを中心に、世界のエコシステムに持っていきたいという思いで、こういう研究開発をしております。

少し長くなりましたけど、以上になります。

【三島主査】 どうもありがとうございました。大変エネルギッシュな研究を展開されて、Society5.0というか、安全・安心といったようなものに貢献をされているということで、大変すばらしいお話だったと思います。

それでは、御質問を。はい。

【高梨委員】 すばらしいお仕事をされているなと。非常によく分かりました。一つお伺いしたいのは、材料というのを非常に何回も強調されていたんだけれども、話を聞くと、デバイス化、システム化、そういうところが非常に強い感じがして、それで、材料というところがどういう立ち位置でやっておられるのかなというのがちょっと疑問に思ったんですね。

例えば、こういうもっと性能のいい材料が、特性のいい材料が欲しいといったときに、全く新しい材料で物質開発をするというところから先生のところでおやりになっているのか、あるいは、そういうのは別なところと協力してやるとかそういうスタンスでおられるのか。最後の方で結構触れられていたので、先生のところでもおやりになっているのかもしれないのですが、のですが加えてお聞きしたいのは、材料開発から、デバイス化、システム化というのをそれぞれ、役割分担してやっているのか。あるいは、ある目的に対して材料開発から全部システム化まで一つのグループで一貫してやっておられるのか。そこら辺の方法論も含めて、教えていただければと思います。

【関谷先生】 ありがとうございます。まず私自身は、自分自身で材料開発はできません。これは自己組織化単分子膜の研究開発をしております東京工業大学の福島孝典教授の自己組織化単分子膜を今は使わせていただいております。私自身、材料は作れないんですけれど、そこから先の集積化のところは、私の研究室で材料のプロセスからデバイス、設計、そして、システム、情報処理まで、全て私の研究室でやっています。

ターゲットになるのは、やはり小さな信号を測ろうとすると、まずターゲットを決めないといけません。なぜかというと、小さな信号を測りたいからといって、とことん純度を突き詰めていくと、どんどんコストが上がっていくだけで、結果的には、一般的に使えない材料になってしまいます。私たちの場合は、まず脳波を測りたいと。御家庭で手軽に脳が測りたいとなると、0.1マイクロボルトが数千円で測れないといけないという、この2つの束縛条件を準備しますと、じゃあ、0.1マイクロボルトをいかにバックグラインドノイズを下げるための材料というのを選んできます。

実はきょう、細かいところを御紹介する学会とは違うなと思ったので、細かい話は外してきたんですけど、実は何をやっているかというと、伸びる電極ですと、シルバーのナノワイヤーを作った後に、それをフラッシュアニールによって、こういう材料を一瞬溶かしてメッシュ化いたします。こういったメッシュ化させることによって、伸ばしても特性が全く変化しないようなフラッシュアニールによってノイズを低減するとかですね。あと、金属のナノワイヤーですと、シルバーのイオンマイグレーションによってノイズが発生いたします。通常、マイクロボルトのノイズで、そんな小さなノイズはほとんど誰も気にしないんですけど、脳波ですと信号がコンパラになります。そのときに1ナノ以下の非常に小さな、いわゆるメッキをいたしますことによって、イオンマイグレーションをコンファインするといったプロセス技術。

それからあとは、金属というのは見ると、一瞬単結晶のように見えますけど、中は非常に小さなブレインバウンダリがたくさんございます。そのブレインバウンダリを電子が飛ぶときに、いわゆるショットノイズに近いノイズになるんですけど、それがキャリア密度の揺らぎを起こして、フリッカノイズですけど、それを抑え込むためのスパッタ装置の開発とか。先ほど福島教授の話を出させていただきましたけど、中にはトランジスタがたくさん集積化されています。トランジスタの界面で、伝導界面でキャリアの密度が揺らぐと、これがフリッカノイズになりまして、大体、我々が見たい100ヘルツ以内に非常にその大きなフリッカノイズが出てまいります。ですけれど、我々、自己組織化単分子膜によって、この配向をSPring-8で正確に計測することによって、分子を正確に配向させて、いわゆるキャリアの密度の揺らぎを徹底的に抑えます。分子膜で、かつ、自己組織化しますので、塗って、150度の温度を掛けるだけで、わずか2ナノですけど、最表面に完全結晶体ができます。この上をキャリアが走ることによって、バックグラインドのフリッカノイズを0.1マイクロボルト以下に抑えることに成功しておりまして、これが脳波計が作れる一つの理由になります。

【高梨委員】 そういうプロセスは先生のところがおやりになると。

【関谷先生】 全て私のところでやります。

【高梨委員】 元の材料開発みたいなのはどこか協力して。

【関谷先生】 これが共同研究です。

【高梨委員】 そういうことですね。

【三島主査】 では、宝野委員、どうぞ。

【宝野委員】 非常に多岐にわたるセンサの応用に材料研究がクリティカルだということをお話しいただいて、非常に心強く感じました。IoTのセンサ研究で、今よく言われていますのが、自律型電源が必要という話があり、いろんな自律型電源の研究が進んでいます。一方で、ボタン電池があれば十分だとおっしゃる方もおられます。そこで、自律型電源が必要であれば、どういった材料研究が真に求められているのか。その辺の御意見をお伺いしたいんですけど。

【関谷先生】 ありがとうございます。もうあらゆるエレクトロニクスは電源がないと動きませんので、我々、エレクトロニクスを開発するときに、一番最初に電池を決めます。例えば脳波計を作るときには、おでこの表面で火が出たら、もう全てが台なしですので、じゃあ、もう電池は絶対に火が出ないコイン電池にしようというふうに電池を決めるんですね。ですので、我々の、今、生体に張り付けたり、お医者様に提供して、何百人、何千人というデータを取っているあらゆる電池を、今、リチウムイオン電池でやらせていただいています。それはお医者様の要請なんですね。

一方で、我々、テクノロジーサイドに立つと、やはり電源をどうしようかというのは常に課題でして、やはり太陽にさらされているような環境であれば、太陽電池を使うのが一番ですけれど、実際には、コンクリート構造になると、電源が今はない状態なんですね。我々、東京電力との共同研究の中では、東京電力は売るほど電気が持っていますので、あんまり電気には困っていないんですけど、例えば災害時の電柱に付けたら、あれは地震が起きると停電します。3日間もたせるために一体どんな電源を積むのかというのを、今、東京電力と一生懸命研究開発をしています。

そのときに重要なのは、3日間もたないといけない。かつ、50年に一度のイベントに対応できないといけないんですね。そうなってくると、途端にセラミックとか、50年の寿命を持ちながらも50年に一度のイベントにも備えたいと。もうそうなってくると、やはり無機物の電池、特に固体電池ですね。ああいったところに大変大きな構造物ヘルスケアの場合、期待を持たせていただいております。私自身は電池の研究はできていないんですけれど、エレクトロニクス、IoTの世界ではもうどんな電池があるのかというのが今、非常に大きな課題です。

いい答えになっていませんけど、太陽電池とか、体から放ついわゆる温度発電、振動発電、こういったところを、今は少しずつ活用しながら自律型へと向けていきたいと思っております。

【三島主査】 ほか、いかがでしょうか。では、加藤さん。

【加藤委員】 最後に。私はケミストなので、白川先生の導電性高分子から始まって、四十何年でここまで来たかなと感動して聞かせていただきました。先ほど材料の質問もあったので、ひとつお聞きしたいのは、やはり人材育成という面です。最初に先生のところに60人おられると言われていて、大学の附置研究所だと、学生はあまり多くはおられないと思いますので、多分ポスドクとか様々な研究者、様々な国から来られると思うののですけど、どうやって育てて、どうやって最先端を研究して、どうやってキャリアアップして、出していくかという、その辺を教えていただけますか。

【関谷先生】 まだまだ私には大きなお題なわけなんですけれど、私自身は、先生がおっしゃるとおり、附置研ですので、学生が採りにくい立場にはあるんですけれど、一方で、今、学部学生からも頂戴しておりまして、トータルで学生自体は今、20人おります。そのうち、学部学生から入ってくる。それから、ありがたいことに、大学院は大体2人から3人、内部からしか上がれないんですけど、外部からたくさん、今年も6人受験してくれまして、何人受かったかと、まだ言えないんですけれど、外部からたくさんの大学院生が受けてくれるというところがまず非常に重要でして、我々附置研にそういった研究開発をしたいという高いモチベーションで入ってくる学生というのは博士課程に進みました。

【加藤委員】 博士も行ってくれますか。

【関谷先生】 はい。

【加藤委員】 先生は資金をお持ちだから金銭的に学生をサポートできるのですか。

【関谷先生】 今はまさに様々な学術的なサポートを頂いておりまして、先ほども御紹介させていただきましたとおり、例えばセンター・オブ・イノベーションのプロジェクトの中で、研究員や技術員を雇わせていただいておりますし、それから、先ほど加藤先生もおっしゃっておられた、私がやはり大阪大学、それから、東京大学のナノテクプラットフォームを最大限活用させていただいておりまして、シリコンのトランジスタの開発、それから、あとはセンター・オブ・イノベーション、COIプロジェクトの中でたくさんの研究員を雇わせていただいているおかげで、それから、クリーンルーム自体もCOIのプロジェクトです。そういうふうに共通基盤をたくさん、既に御準備いただいているおかげで、今いただいている国プロの研究費をなるべく人件費に私は使わせていただいていまして、その中では、学生にRAとしてサポートしてもらい、学生がこれまで夜な夜なバイトに行っていたんですけれど、そういった時間を研究に充てることができるようになって、まさに、先ほど、手前みそで恐縮ながら、つい先日出た『Nature Electronics』ですね。これはドクター1年の学生が書きました。やはりこれまでバイトしていたのを研究に充てることで、すごく一生懸命に。そういうふうに、国からの御支援というのは非常に、人件費に使うというところが目的でした。

【加藤委員】 ありがとうございました。非常にいいお話だと思います。

【三島主査】 それでは、時間が押しておりますので、最後は瀬戸山委員からどうぞ。

【瀬戸山委員】 応用のアウトプットということと、その量と、研究のスピードという点ですごいと思います。今の研究インフラの情報を見た場合、これから達成すべき目標を実現するために、どのようなインフラをこれから整えていけばいいか。インフラとしての人と設備でどのようなものが必要かという視点でどうでしょうか。先ほど公共設備の話がありましたけれども、それで十分なのか。あるいはまだインフラを整備すればもっと成果がでるのかという点でどうなんでしょうか。

【関谷先生】 ありがとうございます。もちろん、やはり人、場所、物といったところを準備することで、様々な取組ができるようになりますので、そういった研究支援というのはまだまだ頂ける形であれば、頂きたいというふうに思っております。

特に今、先ほど来御紹介させていただいていますとおり、クリーンルームとかそういったものはやはり電力を食うからということで、どうしても、少し下火に捉えがちな部分があるんですけれど、我々そういったプラットフォームを活用させていただくことで、こういった、着任してすぐに、私、東京大学から大阪大学に移って丸5年になるんですけれど、もう1年目からたくさん論文を書くことをさせていただきました。それはもう既にたくさんのプラットフォームを御準備いただいていたからということなので、私、それであぐらをかいて、先輩に、いや、こんないいプラットフォームがあったら、自分はとことん研究しますのでと言ったら、いや、それは先輩たちが整えてくれたプラットフォームで、次は自分で整えて、次の後生を育てないとだめだということで、厳しい御𠮟責を頂いて、総長補佐をお受けする覚悟に至った次第でして、しっかりその覚悟を持ってですね。

先ほど加藤先生がおっしゃったとおり、私も今、42ですけれど、もうさすがに少し次の、特にこのファーストオーサーと書いた杉山はまだB1ですけれど、とてつもなく頭がいいんですね。やっぱり次から次へと後生はすごいなと思いますので、そういった後生をしっかり育てるような教育プログラム、それから、そういった優秀な学生を見出すとともに、アルバイトも大学の研究としてのアルバイトであったりとか、そういったところをしっかりと我々担っていきたいというふうに思っています。

【瀬戸山委員】 10年前のアメリカ並みになったんじゃなくて、多分まだまだやれる余地はある。インフラとしてはまだ金をつぎ込んでいけば、人を育てればまだまだ伸びるという理解でいいですか。

【関谷先生】 はい。特にそれが強みを更に生かすというところによさがあると思っておりまして、日本は、御存じのとおり、昨今のいろいろなニュースを見ても、もう間違いなく材料が強いというのがはっきりとしていまして、例えばディスプレイ産業、エレクトロニクス産業で、300兆円の産業ですけれども、それがわずか数百億とかそういった材料が川上にあって、それがないと、何百兆円という産業が動かないという構図が見えている中で、いかにして、この材料を更に強みを生かしていくかという取組に目いっぱい取り組んでいきたいと思っていますし、その材料の本質なり、純度が如実に表れる取組が、まさにこの小さな信号を狙ったときだと思っておりまして、徹底的に小さな信号を測ろうとすると、途端に日本の材料じゃないといけないねというふうな世界になりつつあると思っています。

その一番いい例がアイフォンでして、実はこのアイフォンも、こんな狭いところにフレキシブルの配線板が山ほど入っているんですけど、このフレキシブル配線板というのは全部日本が提供しているんです。海外で買うと、すごく安いんですけれど、アップル社はなぜ日本の高い配線板をわざわざ買いに来ているかというと、こんな狭いところに閉じ込めても、クロストークしないし、ノイズが少ないんですね。すなわち、小さくなればなるほど誤作動しやすいエレクトロニクスを安定的に動かすための材料とプロセスを日本は既に持っていて、それがこれのいい例なんですけれど。すなわち、そういったものをこのアップル社のビジネスだけではなくて、むしろ、日本のこの材料を出さないと、こんな産業できませんよみたいな、そういったぐらい強気な戦略の材料研究開発というのをやはりしていくことで、将来の世界の大きなエコシステムの中で、日本の材料が輝くんだと思っています。

【瀬戸山委員】 ありがとうございます。

【関谷先生】 すみません。長くなりました。

【三島主査】 それでは、まだあろうかと思いますが、ここまでにしたいと思います。どうもありがとうございました。

【関谷先生】 ありがとうございました。

【三島主査】 それでは、議題3のナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策についてということですが、何と、あと15分ぐらいしかないという状況で、しかも、資料3の「御議論いただきたい論点」を見ながら、たくさん、6つの論点がありますが、恐らく、お1人3分で、5人か6人というところで時間切れになるかと思いますが、大変すばらしいお話をうっとりとして聞いていたものですから、つい遅くなりました。

ということで、どんどんお手を挙げて、どんな切り口からでもいいので、御意見がございましたらどうぞ。

では、宝野委員、どうぞ。

【宝野委員】 先ほどのビヨンドナノテクノロジーの議論の延長になりますが、現在、ナノテクノロジー・材料となっていますが、先ほど2件のお話を聞かせていただくと、やはり材料が非常に重要であるということが分かります。一方、ビヨンドナノと言ってしまうと、材料という言葉が抜けてしまうんですね。これはでいいんでしょうかね。

ですから、ビヨンドと言うのであれば、例えばビヨンドナノマテリアルとか、材料という言葉をどこかに付けないと、日本にとって材料は重要でないと聞こえてしまいます。今日のお話からすると、材料が新しいデバイスの開拓につながっていくわけですね。そういう点でも是非、材料あるいはマテリアルというのを残すような形で考えていただかないと、ちょっとまずいんじゃないかなという気がいたします。

【三島主査】 ありがとうございます。どうぞ。

【高橋補佐】 大変ありがとうございます。今の点、まさにごもっともでして、今回の提言の中では、あくまでナノテクノロジーというものを捉え直したときということで書かせていただいたというところの趣旨でして、材料の重要性はもちろんです。

【三島主査】 次はどなたでしょうか。では、長谷川委員。

【長谷川委員】 ありがとうございます。きょうの加藤先生と、それから、関谷先生のお話も伺って、いろいろと考えていたんですけども、例えば、我が国の強みということで、材料という一言の中に、きょう思ったのは、材料の素材も必要ということで、材料と素材。例えば私はケミストなので、分子で特許を取ったりするんですが、なかなかペイをしないと。非常に収率が低くて、高く付いているというのが現状なんですが、材料として、そのパーツの一部になると、非常に有用になるし、高く売れると、非常に経済効果も出てくるということを、きょう改めて思った次第です。ですから、ナノテクの中の意味には、恐らく素材と材料と、そして、本当にエレクトロニクスでしたらエレクトロニクスという形の応用に特化した、目の前にある新しい未来のこれまでになかったものということの認識がこれからも必要なのかなという印象を受けました。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

それでは、武田委員、どうぞ。

【武田委員】 関谷先生のお話に関連するのですが、この議論の中で、異分野融合と各セクターの役割ということを考える必要があると思います。まず異分野融合において例えば関谷先生の技術がヘルスケア分野で非常に有用だということは分かっているのですが、そういう分野間の融合の仕方と、それから、大学と企業、すなわち、アカデミアと産業界の連携という機関の間での融合があります。アカデミアで研究開発されたたすばらしい技術を早く社会実装し、社会にイノベーションを起こすという意味で、よりタイトな産業界とアカデミアの連携というのが必要になってくると思いました。

先ほど、人材育成のお話の議論を伺っていて感じたのですが、例えば、関谷先生の研究室の分室をそういうヘルスケアの分野の企業の中に作るとかですね。そのくらいの融合、あるいは、もちろん逆のパターンも恐らくあるのかとは思いますけれども、やはり企業側でもで、どんどんアカデミアの研究員を受け入れて、本当に一つの研究室の中で一緒に社会実装を加速するなど、そういうアクションというのが今後、科学技術を社会に役立てていくという観点で重要であると感じました。

【三島主査】 ありがとうございます。

それでは、湯浅さん、どうぞ。

【湯浅委員】 先ほどの関谷先生の話にもありましたように、日本の強みはやはり電子材料あるいは部品にあることは明らかだと思うんですが、ただ、それを束ねた大きなシステムを組むのがどうしても弱いですよね。今、一番もうけているのは、IT、クラウドシステムを牛耳っているGAFAのような巨大プラットフォーマーですが、せっかく日本で育んだ優れた技術で、おいしいところはそういうプラットフォーマーに持っていかれないようにするための何らかの施策が非常に重要だと思います。

【三島主査】 ありがとうございます。

ほか、いかがでしょうか。では、まずどうぞ。

【上杉委員】 きょうはお二人のお話をお伺いして実感したのは、やっぱり共有設備というのが重要だなと思いました。特に若い方々、若しくは研究者を始めた方々が何か思い切ったことをやろうと思うと、機械を買うのにお金ばかり集めるよりも、そういうところに使って、関谷先生はそのお金を人材に回すことができると言われましたし、加藤先生のところは、クリーンルームを使えて、すごい助かったと。

ということで、私が思いますには、若手の方々が独立して活躍するためには、まず共用設備は大切だと思います。そして、今回の議論するところにありますものの一つに異分野融合というのがありますけども、ほかの分野の人たちが、例えば材料を使おうというときも、やっぱり材料の共用設備がないと入ってこれないわけですよね。だから、異分野融合、そして、若手の方々が独立してやる。この2つに共用設備というのは間違いなく重要だと。日本はこれはかなり遅れていると思います。私がアメリカで研究室を始めたときにやっぱり共用設備を使って、もうすっからかんのところから始めましたので、思います。

今、中国の状態を見ましても、中国の方が多分日本よりも共用設備は進んでいると思います。ですから、もう既にこの部分については、第一次案に書いてありますけども、もっとこの辺を工夫して書いたらどうかなと思います。ビヨンドナノテクだから、これはもうビヨンドナノプラでもいいですし、今のナノプラは成功しているので、この後、これを核として、もっと広げてもいいんじゃないかなと。このナノプラの部分が日本全国に広がって、ほかの分野でも広がって、共用というのが日本全国でもっと広がっていけばいいなと思いました。

【三島主査】 ありがとうございます。ラボ改革のお話ですね。

ほかにいかがでしょうか。では、お願いします。

【中山委員】 2度目ですみません。材料は強いと言っているのですが、その材料も、十分な投資と時間を掛ければ、どんどん他国が追随できますよね。そのような中、他国が材料に非常に大きな投資を始めている中で、我が国としてどうしようかという状況にあります。材料は強いと言っていますが、シェアが上がるものはほとんどなく、低下しているものが多い。例えば電池のシェアなんてどんどん下がっています。皆さんが思っている以上に電池のシェアは劇的に下がっていますからね。日本の企業が会社ごと売りに出して、中国の企業になってしまったようなのも含めると相当ですよね。技術もどんどん流出しています。

我が国が強くて、そこで食っていると思っていたところが今後は競争に負けて食えなくなるような状況に向かいつつあるという危機意識はしっかり持たないといけないと思います。と同時に、各国ともサプライチェーンの重要性ということを重視し始めて、投資戦略を練っています。先ほど説明にあった中国製造2025も、このサプライチェーンの中核を中国が握りたいというところから来ていて、半導体とか部材とかにしっかりと投資して極めて高いシェアを握ろうという戦略です。それに対してアメリカも半導体、部材、材料を極めて重視し始めている。特に軍を中心として、その根幹を支える半導体や部材・材料を他国に握られてしまえば、アメリカは立っていられないという強い認識があります。サプライチェーンをしっかり意識し、自分の国、あるいは自分の同盟国の中で重要なものは調達できるようにしょうという戦略を取っています。

日本は少し敏感ではないかもしれないと感じます。もう一点、先ほどプラットフォーマーのお話が出ましたが、プラットフォーマーはスマイルカーブの末端側末端でお金をもうけてきたのですが、そのスマイルカーブの反対側反対の末端がデバイス、材料なのです。そこに気付き始めて、各プラットフォーマーはそこに対する投資を非常に加速させています。だから多分、ソフトバンク等も電池に投資するんでしょうし、半導体のアームなどを買収したりしています、みんな半導体とかデバイスや材料・部材の方に注目し始めている中、我が国として、そこの戦略をどうしようかというのをまさしくこの委員会で練らなきゃいけないと考えます。思うので、そういう趣旨で、事務局の御説明には書かれていると思うので、非常にいいストーリーだと思います。国際的に我が国としてどうやって食っていくか、勝っていくかということ。勝ってきたもので更に勝てるのかどうかということまで含めて、考えていくべきかと思います。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。では、菅野先生、どうぞ。

【菅野委員】 いつも電池が不十分で申し訳ありません。この発言その問題ではないんですけれども。材料の開発のモチベーションとデバイス開発のモチベーション、それから、産業にするときのモチベーション、それはそれぞれ違うんですよね。きょうお話しいただいた、うまくいった例というのは、デバイスのモチベーションに優れた個人研究者研究者と、材料のモチベーションに優れた人の個人的なつながりでうまく回っています。すそれをシステムとしてどう構築するかという、そこが一番大きな問題かと思います。

【三島主査】 ありがとうございます。

滝田先生、どうぞ。

【滝田委員】 ビヨンドナノというコンセプトなんですけれども、コンセプトとしては非常に分かりやすいとは思います。ただ、私、一般の新聞で、日々の新聞作り、編集長をしていますけれども、やはりナノという言葉だけでも、なかなか人によってイメージするものが違い、更にそこにビヨンドが付くと、一体何を言っているのかというのが一般の国民の受け止めだと思いますので、このコンセプトはコンセプトとして、もし仮に外に打ち出していくのであれば、何か新しい、もうちょっと分かりやすい具体的なイメージは必要かと思います。

それで、こういうコンセプトがしっかりしたものがなくても、ナノであるとか材料というのはやはりこの基盤技術として非常に必要であり、ここに国が投資していくのは当然だと思うんですけれども、政策上、こういう何かまとまった言葉がないと、6期の中でまた地盤沈下してしまうという不安があるのかなという、そこら辺は政策的なものなのかもしれませんが、その場合、打ち出していく方向性としてはやはり2つ、先ほどレイヤーがあると中山先生もおっしゃいましたけれども、その理学の部分と物質に非常に近い部分と、それから、産業応用に近い部分があって、その産業応用に近い部分で言えば、クロスアポイントメントなど、今は制度としてはありますが、大学と研究機関のクロスアポイントメントが多いと思いますが、これをもうちょっと民間企業とも広げていくというのが政策の延長線に立ってもいいのかと思います。

それからもう一つは、これも先ほどもお話ありましたけれども、国際情勢を踏まえてということですが、やはり材料というのは、その国の安全保障上にも非常に重要なものであり、材料そのものがどこかに偏在していて、それを握られてしまうと、もう産業にも非常に大きな影響がありますし、安全保障上も懸念が多いと。特に米中がそこに目を付けて、関税を掛け合って対立しているような中で、日本としても自分の強みがないと、やはり巻き込まれて、損をしてしまうということがあると思いますので、そのあたりはしっかり安全保障上の重要性というものも6期の中では位置付けた方がよろしいのではないかと思っております。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

では、瀬戸山委員。

【瀬戸山委員】 研究の質という意味で言うと、CRDSの報告書を見ていても、それなりに健闘していると思うんです。投資が減った分だけ小さくなっているだけという印象があって、それは仕方がないので、だから、増やしてほしいんですけども。片方で、じゃあ、何で日本が弱くなっているかというと、多分スピードがついてこれなくなっちゃっている。だから、研究開発を進めるスピードが弱くなっていて、そこがはっきり問題化しているんですよね。だから、きょう、全体の話を聞いていると、アカデミア側で言うと、そういうプラットフォーマーの話があって、そういう設備を作るのはいいんだけれども、じゃあ、中でどんなふうに研究を加速するかというときに、人の話と、もう一つは方法論の話があるはずなんですね。だから、ここのところをどうやって強化していって、多少、人が減ったんだけれども、研究のスピードがガッと上がって、アウトプットがでかくなっていくんですよというような形で変えていかないと、中国みたいにあんなふうにどでかい人と金とか、勝てないんですよ。

だから、それは人でカバーできない分は方法論みたいなことをしっかりやっていって、ナノテクを作り直すということをやっぱり視野に入れなきゃいけないんじゃないのかなと。企業にいてやっていると、特に、こんなことを思っているんだけど、できないよな。人が足らん、スキルが足らんというのはいっぱいあるんですよ。それは大学でも一緒のことで、そういうふうなスキルとスピードをどうやって変えていくかということがすごく重要じゃないのかなというふうに思っています。

以上です。

【三島主査】 ありがとうございます。

ほかにございますか。じゃあ、吉江委員、どうぞ。

【吉江委員】 きょう、いろいろ御議論いただいて、一々ごもっともだと思いながら聞いていたんですけど、一つ、あんまり出てきていない視点として、異分野融合ですとか、我が国の強みみたいなものというのは、今あるもののベースの上に乗っかっていくような、比較的応用思考の視点に立っているような気がします。特に材料で新しいものを作るときには、海のものとも山のものとも分からないようなところに対するチャレンジが必要かなというような部分がございますので、是非そういう新しいものに対する、より、ある意味、研究者が一定の遊び心を持ってやれる部分が残るよう、その辺を是非何か加えていただけるといいなと思いました。よろしくお願いします。

【三島主査】 ありがとうございます。

では、栗原委員。

【栗原委員】 簡単なことですが、菅野先生がおっしゃった、材料からデバイスということが非常に大事だと思いますが、私が最近、幾つか聞いた例ですと、非常にすばらしい材料が国内でできて、だけど、デバイスの研究は外国でやって、それで『Science』、『Nature』に出ているという例は結構数多く聞いています。それは出口に近いところは外国でやるということになると、材料の視点からは残念だと思いますので、もちろん国際共同研究は大事なんですけども、そういう組み合わせが非常に多く聞くようなので、少し気を付けるべきところかなと思います。

【三島主査】 ありがとうございます。

馬場委員、どうぞ。

【馬場委員】 きょう、関谷先生と加藤先生にすばらしいお話を聞かせていただきまして、まず異分野融合に関してですけれども、お二人の先生とも、もう既に異分野融合をやられているんですが、こういうふうな成功例の中で、何が一番、異分野融合を進める上で重要な施策として、文科省としてやるべきことかというのが、きょうの議論だけではなくて、今後の議論の中でうまく抽出できたらいいんじゃないかと思いました。

それから、各セクターの役割と政府の取組ということで、先ほど加藤先生、異分野融合は東大より理研の方がやりやすいとおっしゃっていたので、そこはそれで東大にというのがあるのかもしれませんが、そこでもやっぱり本当に研究をやられている先生方がいろいろな新しい取組をするときに、いかに大学とかNIMSとか、あるいは民間企業がどういうふうな連携ができるかとか、どういう仕組みを作ると、そこがうまく進むのかというのも、もう少し分かるようになればいいんじゃないかと思うんですが、例えば私自身がその質問をされると、そこはあんまり人に話したくないなという気持ちも若干あり、関谷先生と加藤先生も一緒かもしれないけども、意外とそこがうまくいくから成功しているという人が多くて、それをなかなか共通化するのは難しくて、でも、それをこの委員会で是非やれると、ナノテクノロジー材料を今後どういうふうに進めたらいいかというのがより明確化できるのかなと思いながら伺いました。

【三島主査】 はい、どうぞ。

【高梨委員】 いいですか。

【三島主査】 いいですよ。

【高梨委員】 いや、時間があるなら。今、ちょっと蛇足になるかもしれないんですけど、まさに東大よりも理研の方がという話もあったので。関連してちょっと私も申し上げたかったんだけど、まさに異分野融合で、物質開発で興味を持ってやるのと、産業化までと、そこを結び付けるシステムを作らなきゃいけない。そういうような異分野融合を考えても、やっぱり大学の研究科というのはなかなかそういうのが難しくて、そういう意味では、国立研究開発法人の方がいろんな意味でやりやすいというところは絶対あると思うんですね。

あと同時に、いつも手前みそみたいに言うのであれですけど、やっぱり大学の附置研究所、これは恐らく産研におられると、やっぱり研究科とは違うものは感じられると思うんですね。そういうようなもの、基礎と応用としてもそうだし、異分野融合という観点でも、研究科ではなかなか壁が高いものが、これは国立研究開発法人なり、大学の附置研究所なりをうまく利用して、そういうことをエンハンスしていくということは十分考えられると思います。

【三島主査】 それでは、大体時間が来ましたが……。

どうぞ、加藤先生。

【加藤委員】 材料で、90年代とか2000年頃は、産業界、すり合わせという言葉があって、エレクトロニクス産業と素材産業が協調して、素材産業がエレクトロニクス産業にこうやってくれと鍛えられて育ってきたのでのすけど、今はエレクトロニクス産業が少し弱くなって、きょうのお話はそのエレクトロニクス関係でした。今は、すり合わせという言葉はほとんど使われなくなりました。しかしながら拝聴すると、アカデミアにはなかったすり合わせを、アカデミアを巻き込んでできないかと考えました。

先生方みたいな新しいものを作ろうとしている人たちがいて、まだ素材も強いですね。ですから、国全体として、新しいすり合わせみたいなものをするシステムというのができたら良いなと思いました。

【三島主査】 ありがとうございます。

それでは、委員の皆様、非常にコンパクトなコメントをしていただいたので、5人、6人じゃなくて、たくさんの御意見が寄せられたと思います。ありがとうございました。

それで、これはやはりある程度方向性を出していかなきゃいけないので、きょうの今の先生方から出た、委員の皆さんから出たコメントと、これを対比させた資料を作って、それで、委員の皆様に送っておいていただけると、次の議論をするときにいいかなというふうに思いましたので、それをお願いしてよろしゅうございましょうか。竹上さん。

【竹上専門官】 分かりました。論点については、基本的には今後もこの論点を中心に議論を継続いただきますので、そのようにしたいと思います。

あと一点、本日は、名前の議論、ビヨンドナノの議論がかなり出ていましたけど、我々としては、名前を変えれば何とかなると思っているわけではなくて、やはり今後の科学技術イノベーション政策の全体像の中で、ナノテク・材料、デバイスといったものをどう位置付けていくか、研究開発を新しい時代に沿った形でどう進めていくかというのをしっかりと議論していただくことが第一で、その結果として、もしナノテクに代わる新しい言葉があれば、そして、それによって現場を勇気付けることができるのであれば、ひとつ言葉を作りたいなというふうに考えているところですので、そこの点だけは誤解のないようによろしくお願いいたします。

【三島主査】 分かりました。

それでは、事務局から、次回等の御連絡だけ頂いて、終わりにしたいと思いますが。

【高橋補佐】 本日はありがとうございました。

次回の第4回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましては、9月19日木曜日の開催を予定させていただければと考えてございます。

また、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後に、ホームページにて公開いたします。また、資料につきましても、今回配付させていただいたものをホームページに公開させていただく予定です。

本日の配付資料につきましては、封筒にお名前を書いて机上に置いておいていただければ、後日、事務局から郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

【三島主査】 このCRDSから出していただいた資料は、これはどう。

【高橋補佐】 参考資料という位置付けですので。

【三島主査】 参考資料ですね。

【竹上専門官】 今日、本当は少し説明をしようかなと思っていたのですが、時間がなかったので、また適宜、今後議論になったときに、必要に応じて説明したいと思います。

【三島主査】 分かりました。それでは、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会は以上です。御協力、どうもありがとうございました。先生方も本当に御講演ありがとうございました。

―― 了 ――




 

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研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)