資料5 第5期科学技術基本計画を踏まえたナノテクノロジー・材料科学技術の今後の議論の方向性について
論点
論点1
世界に先駆けた「超スマート社会」の実現(Society 5.0)に向け、「素材・ナノテクノロジー」分野の研究開発の今後の在り方とそのための具体的な方策とは?(我が国のナノテクノロジー・材料科学技術の現状(industry/Science)も踏まえた現実的な取組とは。)
前回の委員会(1/28)におけるご意見
- 我が国の強みである「ナノテク・材料」を活かしながら、超スマート社会を実現していくという観点が必要
- サイバーとフィジカルのインターフェースに焦点を当てることも重要
- インフォマティクスの推進、データプラットフォームの構築にあたっては、様々な研究機関からデータを出してもらうことも含め技術戦略を描くことが必要
参考
○ 第5期基本計画、「第2章 未来産業と社会変革に向けた新たな価値創出の取組」における位置付け。
- ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に進化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現
- 「超スマート社会」における競争力向上に向けた、基盤技術の強化、特に個々のシステムで新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術として「革新的な構造材料や新機能材料など、様々なコンポーネントの高度化によりシステムの差別化につながる「素材・ナノテクロジー」」を推進。
論点2
「科学技術イノベーションの基盤的な力の強化(第4章)」、「イノベーション創出に向けた人材、知、資源の好循環(第5章)」のための取組として、ナノテクノロジー・材料科学技術として、取り組むべき具体策とは?(例えば、「国立研究開発法人におけるオープンイノベーション推進のための仕組みの強化」に関して、取り組むべき事項とは。)
前回の委員会(1/28)におけるご意見
- オープンイノベーションを断片的ではなくよりシステマティックなものを作る必要がある
- オープンイノベーションは大学も含めた仕組みを検討し、大学院生をどのように融合型人材につなげていくか、人材を流動させるかが重要な視点
- 各研究機関が技術戦略や事業戦略を考えていく仕組み(知財を含む)を考える必要あり
- 「基礎から応用へ」、「応用から基礎へ」の循環が行われることが課題の解決、サイエンスの発展双方にとって重要。
論点3
今後の社会的課題の解決に資する基盤技術として、重点的に取り組むべき分野(領域)は何か?(例えば、企業では取り組みにくい分野や中長期的に取り組むべきものとは。)
前回の委員会(1/28)におけるご意見
- サイエンスベースでの到達点を意識しながらシナリオ設計をし、評価する仕組みが重要
- 材料が社会にどのような影響を与えるかという「システム」的な視点と特定の材料機能の特性発現を追究する「材料」的な視点を分けるのではなく融合しながら進めることが重要。その際、若手のみならずPIクラスの人材の新陳代謝、流動化を意識しながら進めることが重要
参考
○ 第5期基本計画、「第3章 経済・社会的課題への対応」における位置付け。
- 経済・社会の状況は年々変化しており、各課題の解決に向けて、特に重点的かつ緊急的に取り組むべき事項は変化しうる。
○ 第5期基本計画、「第4章 科学技術イノベーションの基盤的な力の強化」における位置付け。
- 企業のみでは十分に取り組まれない未踏の分野への挑戦や、分野間連携・異分野融合等の更なる推進といった観点から、国の政策的な戦略・要請に基づく基礎研究は、学術研究と共に、イノベーションの源泉として重要である。このため、国は、政策的な戦略・要請に基づく基礎研究の充実強化を図る。
参考 ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について<追補>より抜粋
ナノテクノロジー・材料科学技術が果たす役割
- ナノテクノロジー・材料科学技術は、我が国の基幹産業を支える要であり、高い国際競争力を有している。
- 広範で多様な研究領域・応用分野を支える基盤であり、その横串的な性格から、異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらす鍵。
- ビッグデータやIoT(Internet of Things)、Converging Technologyの台頭といった経済社会の新たな潮流を踏まえた革新が期待される。
- 第5期科学技術基本計画においても、科学技術政策体系における位置付けを明確にした上で一層の強化を図ることが求められる。
ナノテクノロジー・材料科学技術の推進に向けた基本的な考え方
(1)圧倒的な広がりのある基礎的、基盤的研究としての振興
- ナノテクノロジー・材料科学技術は、広範な分野の先端を切り拓くために必須であり、その広がりを意識した研究振興方策を取るべき
- 新たな指導原理に基づく材料開発により世界をリードし続けることが重要
- セレンディピティを生み出しやすい環境を整えることが極めて重要
- ハイリスクの研究を根気強く支援することも効果的
- 異分野融合研究の触発、若手研究者のフレキシブルな発想、能力を十分に活用
(2)広範な社会的課題の解決に資する研究開発の推進
- これまでにない応用先を開拓
- エネルギーの一層の効率的利用や医療分野への応用、社会インフラの老朽化対策等、近年顕在化した社会的課題や、昔から認識されていつつも未解決な課題・命題に革新的なアプローチを提供し、解決に導く(例として、熱電変換材料、圧電変換材料、触媒、パワー半導体、非侵襲医療、高精度診断 等)
(3)我が国の強みを伸ばす戦略的な研究開発の推進
- 機能性材料研究:機能に着目しつつ材料横断的に研究を推進
- 構造材料研究:総合的なアプローチが必要
- 情報科学と材料科学を融合した新たなデータ駆動型の材料設計技術(マテリアルズ・インフォマティクス)を確立
- 希少元素を全く用いないことのみを至上主義とせず、あらゆる元素の無限の組合せの中から未知なる革新的機能を探索
- 研究の対象材料が有する特徴や関連産業の国内外動向等に応じた適切な国際標準化戦略や知的財産戦略を持つことが重要
(4)「基礎から応用へ」、「応用から基礎へ」の循環
- 「循環研究」が行われることが、課題の解決とサイエンスの発展の双方にとって重要
- プロジェクトの初期段階・企画段階から産学官が膝詰めで議論・協働を行うことが重要
- デバイスやシステムを理解する研究者層が必須であり、産業界のみならず学術界においてもこのような人材を育成することが必要
(5)人材の育成・確保
- 広範な分野の基礎的素養を身に付け、俯瞰的視野を持った上で研究を推進できる人材を育成することが重要
- 産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを育成すること、新たな知見の創出にとどまらず社会的価値への展開を戦略的に推進するリーダーを、世界最先端の研究拠点の中でOn the Job Training(OJT)で育成することが重要
- 優れた技術支援者を育成・確保する
各研究機関における推進体制と方策
(1)大学のポテンシャルを最大限発揮する体制の構築
- 部局の壁を打破した教育研究環境を構築することが重要
- 広範な分野の基礎的素養を身に付け、俯瞰的視野を持った上で研究を推進できる人材を育成することが重要であり、分野や組織を超えた体系的な教育プログラムを構築する
- 多様なバックグラウンドの研究者が集い、互いの専門分野を超えた高度な知識や課題解決能力を修得するための博士課程教育プログラムの充実
- 双方向の人材交流の活性化等、新たな価値を創造する研究推進体制の構築が必要
- 研究推進方策の方向性を学術界から発信し、産学官における議論へと繋ぐことが重要
- ポテンシャルが高い機関同士の連携や互いの機関の強みを補完しあう連携が期待される
(2)研究開発法人を核としたイノベーションハブの構築
- 物質・材料研究機構:産学官一丸となったオールジャパン体制の構築により社会的課題や産業界の課題を科学的に深堀りし、その解決に向けた技術シーズを絶えず生み出し、課題の解決に貢献する「イノベーションハブ」へと進化することが重要
- イノベーションハブ:個々人の専門分野を超えた異分野融合・技術融合が推進される、産学官いずれにも魅力あるものとすることが重要
- 我が国の各地の中核的大学や共同研究拠点から創出される新たな研究・技術シーズや卓越した若手研究者等のポテンシャルをネットワーク化
- クロスアポイントメント制度や年俸制の導入等、制度的な整備を早急に進める
- 人材育成や先端研究設備の共用、材料データ等の情報集約・発信等、我が国の研究基盤としての機能も整備することが重要
(3)関係機関の総力を挙げた推進体制の構築
- 大学共同利用機関法人や共同利用・共同研究拠点、SPring-8やスパコン「京」等の大型共用研究施設・設備や地方が有する比較的小型のシンクロトロン等、他の共用のフレームワークも一層積極的に活用
- 組織的・戦略的に研究プロジェクトを統括できるプログラムマネージャーの育成に向けた人材育成方策
- 学術界に留まることなく、共同研究や、事業化に向けた成果展開の起業による取組等が円滑に行われるよう環境整備を行うことが必要
まとめ
第7期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会においては、基本的考え方について以下のように整理。
- 分野横断的な広がりを意識した基礎的、基盤的研究としての振興
- これまでに解決できていない課題や新たな課題等、広範な社会的課題の解決に資する研究開発の推進
- 我が国の強みを伸ばす戦略的な研究開発の推進
- 「基礎から応用へ」、「応用から基礎へ」の循環
- 人材の育成・確保
今後は、必要に応じ、これらの基本的考え方のもと、特に重点的に取り組むべき研究課題や社会的課題とそのアプローチ方策について更に精査する。
研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付