第8期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年6月24日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3F1特別会議室

3.議題

  1. (1)今後のナノテクノロジー・材料科学技術分野の方向性等について
  2. (2)その他

4.議事録

【三島主査】
  おはようございます。それでは、定刻になりましたので、審議官等、後からお見えになるということですので、始めさせていただきたいと思います。
  第2回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会です。御多忙のところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
  きょうは今後のナノテクノロジー・材料科学技術分野の方向性等について、各委員等からのプレゼンもありますので、積極的に御議論をよろしくお願いいたします。このナノテクノロジー・材料をどういう形でもっと強くアピールしていけるかということが鍵だろうと思いますので、そういう観点からいろいろ御議論いただければ幸いかと思います。
  それでは、委員の出欠確認、配付資料の確認等を、吉元係長からよろしくお願いいたします。

【吉元係長】
  おはようございます。本日、射場委員、岡野委員、北川委員、高梨委員、馬場委員、福島委員、湯浅委員、吉江委員が御欠席です。
  配付資料の確認です。本日、ちょっと資料が多くなっております。資料1-1として、科学技術基本計画中間取りまとめ、資料1-2として、科学技術イノベーション総合戦略、資料2-1として、「今後のナノテクノロジー・材料科学技術に関する論点」、資料2-2として、CRDS永野フェローからの「システムとして実現するナノテクノロジー材料」、資料2-3として、瀬戸山委員提出資料、資料2-4として、栗原委員提出資料、資料2-5として、小池委員提出資料、資料2-6として、岡野委員提出資料、参考資料として、科学技術基本計画に向けた中間取りまとめ、参考資料2として、科学技術イノベーション総合戦略、参考資料3として、CRDSの俯瞰報告書、参考資料4として、日本学術会議のロードマップ、参考資料5として、CREST・さきがけ研究提案募集です。CREST・さきがけについては、JSTの方からは革新的触媒の創生や常行先生総括のマテリアルズインフォマティクス、それから、医療関係になりますが、AMEDですが、「メカノバイオロジー機構の解明と医療応用に向けた基盤技術の創出」ということで、ライフとナノ・材料融合領域が立ち上がっております。
  配付資料に欠落等ありましたら、事務局までお知らせください。
  以上です。

【三島主査】
  ありがとうございました。
  資料、よろしいでしょうか。
  それでは、議題表を見ていただきまして、まず、今後のナノテクノロジー・材料科学技術分野の方向性等についてということでます。ここに書いてありますような順番でまず資料の御説明等をいただきまして、ディスカッションということにいたしますが、間でもし一つ一つのプレゼンに対する御質問がありましたら、お受けしたいというふうに思います。
  それでは、まず、内閣府から科学技術イノベーション総合戦略等について御報告いただきたいと思います。守屋調査官、よろしくお願いいたします。

【守屋政策企画調査官】
  内閣府の守屋です。きょうはよろしくお願いいたします。
  それでは、お手元の資料で、1-1と1-2を中心に御説明させていただきます。それぞれ基本計画中間取りまとめと総合戦略の本体部分はお手元の参考資料1と2としてお付けしております。時間があるようでしたら、そちらにもちょっと触れますけれど、まずはこのパワーポイントの資料の方で御説明をさせていただきたいと思います。
  それでは、資料1-1です。まず、具体的な説明に入る前に、この二つの関係を少しだけお話しさせていただきますと、御存じのように、基本計画は、来年度から始まる5年間の科学技術の方向性を示すものとして今、策定している途中ですが、総合戦略2015というのは基本計画の5年間に先立つ準備のための1年、つまり、2015年の今回の総合戦略から次の5年間が始まるという発想をしております。総合戦略を、基本計画の新しい5年間が始まるため具体的なアクションとして策定したということですので、総合戦略2015の方がより短期的な視点で全体の政策がまとめられております。
  それでは、基本計画の中間取りまとめの方の資料です。全体の背景といたしまして、こちら、表面に書かれているような幾つかのデータも提示させていただいておりますが、まず、私どもの方で捉えましたこの次の5年を迎えるための前提として幾つかの背景をここに記載させていただいております。
  まず、1.には従来の「総合科学技術会議」に「・イノベーション」が付いたということで、より社会に実装されることを想定した計画としていこうという発想です。
  2.に書かれておりますのは、様々な組織間ですとか、国境の間を遮る「壁」が最近イノベーションを邪魔しているんじゃないかということが書かれております。
  3.といたしまして、ICTの飛躍的進展等を受けた「第4次産業革命」とも言うべき大変革時代が到来して、当然、科学技術もそれに対応していくべきものであるということが書かれております。
  5期基本計画の基本的な考え方として、その次に書かれております。三つの重要なポイントとして、一つは、大変革時代を先取りする未来の産業創造と社会変革に向けた取組をしていこうということです。この中では、共通基盤的な技術を更に強化するべきだということも指摘しております。二番目のポイントとしましては、経済・社会的な課題の解決に向けて先手を打つような取組を進めていくこと。特に急速に進む人口減少についてのその危機感、あるいは、安全・安心といった諸課題の解決という点を強調しております。三つ目のポイントとしましては、若手・女性の育成・流動化、あるいは、世界と戦える基礎研究力の強化ということをうたっております。加えまして、人、それから、資金の好循環を誘導するイノベーションのシステムの構築ということもうたっております。
  裏面に行かせていただきます。左上が全体の重要な事項を整理したものでして、4.に書かれておりますのは、そういう中で具体的にどういう施策を中心に進めていくかということが書かれております。4.としては、「未来の産業創造と社会変革に向けた取組」ということで、ここでは幾つかの科学技術がチャレンジすべきテーマを掲げております。いずれも超スマート社会と呼ばれているその次の望ましい社会を作るために、世界に先駆けて目指していくものとして記載されております。
  矢印で幾つか指摘させていただきますが、まず、日本発の「ゲームチェンジ」を起こさせるようなチャレンジングな研究開発を各省に対して展開するよう求めていくと。それから、我が国の強みを有する研究や技術を取り込み、システム化するということです。システム化すると言っているのは、単に技術開発を、研究開発としての成果を得るだけではなくて、それに伴ってサービスや商品、あるいは、製品といったものにつなげて社会にバリューを提供するという意味です。
  それから、3番目の矢印にありますが、共通基盤的な技術の強化を図り、新産業を創出していくということです。こちらの記述の中に、IoT、ビッグデータ解析、数理科学等と並びまして、センサ、素材、あるいは、ナノテクノロジー等といった幾つかの技術分野を掲げております。これにつきましては、実は今回の中間取りまとめの段階ではまだ十分に内容が記載されていないという認識を持っておりまして、右の*印にありますように、年末を予定しております最終答申に向けて、更に具体的な記載をこの中に入れ込んでいこうということで現在準備中ということです。
  5.にありますのが経済・社会的な課題の解決ということでして、これはトーンとしては第4期基本計画の課題解決型の記載に近いものです。1から5までの幾つかの重要課題を掲げておりまして、エネルギー関連、それから、健康長寿の関係、産業競争力の関係、それから、国家安全保障上の諸課題といった国民の安全・安心の確保の関係、それから、最後に環境問題等世界的な課題への対応ということになっております。
  例として幾つかの具体的な課題名が書かれておりますけれども、こういう中に当てはまるナノテク、あるいは、材料関連の幾つかの個別の技術につきましてはそれぞれの中に例示的に掲げております。
  それから、6.、7.、8.、9.といったところは4期計画でいうシステム改革と言われていたような分野の項目になると思いますけれども、更に次の5年に向けて議論を深めてまいりまして、その中で人材の育成ですとか、あるいは、オープンイノベーションのための枠組み、大学改革や研究資金改革についても踏み込んで今回は書いております。それから、国際展開、さらには、社会との対話の必要性等も掲げております。
  それから、10.は最後、司令塔機能の強化ということで、これは私ども科学技術・イノベーション会議そのものの機能を更に高めていこうということですけれど、この中では第4期で掲げておりました5年間の研究開発投資総額の目標値などをこの第5期においてはどうするかということをこれから検討する課題として掲げております。
  以上が基本計画の中間取りまとめということでありまして、先ほど申し上げましたように、幾つかの項目についてはまだ内容が十分にそろってなく、もう少し更に検討する必要があるということで、年末に向けてまた関係の機関ですとか、皆様にいろいろな御意見をちょうだいして、更に内容を詰めていくということになっております。
  これが先週の総合科学技術・イノベーション会議本会議、6月18日に承認された中間取りまとめということです。
  続きまして、資料1-2の方で、総合戦略についても簡単に御説明します。
  こちらにつきましては、先ほど申し上げましたように、基本計画の大きな方向性にのっとって、それを今後、短期的にどういうふうに進めていくか、具体的な施策も掲げながら、行動計画として掲げたものです。表面につきましてはその全体の位置付けですとか方向性が書かれておりまして、先ほど、基本計画の方でも申し上げましたように、大変革時代に対応する必要があるですとか、5期基本計画の始動に向けた先取りとして掲げているという点が書かれております。
  真ん中の黒い四角のところに、科学技術基本計画の始動に向けた三つの政策分野ということで記載しておりますけれども、その一番左側、大変革時代における未来の産業創造・社会変革に向けた挑戦ということで幾つかの重点的な取組を掲げております。
  ここでは、チャレンジングな研究開発への投資、人材強化といったことでImPACTの更なる発展というようなことも指摘しております。また、我が国の強みを取り込み、サービスや事業のシステム化に係るプロジェクトの実施ということで、経済・社会的課題への取組を記載しておりまして、ここには例示としては高度道路交通システムですとか、ものづくりシステムが新しい社会を実現するためのシステムとして記載されております。それから、一番下に、「超スマート社会」の実現に向けた共通基盤技術や人材の強化ということで、素材、ナノテクノロジーなども例示されております。
  そのほか、この3つの政策分野ということでは、「地方創生」に資するイノベーションの推進、あるいは、オリンピック・パラリンピックの機会の活用ということが書かれております。ちなみに、このオリンピックの機会の活用ですけれども、ここで書かれておりますのは、オリンピックというのが2020年に開催されますけれども、そこが最終ゴールではなくて、そこでの一つの目標を達成することによって、そこから先、2020年以降の経済の好循環を引き起こすような、そういうプロジェクトとして今回9つのプロジェクトを立ち上げたいということです。
  裏面に参りまして、イノベーションの連鎖を生み出す環境の整備ということが左に書かれております。こちらにつきましては、環境の整備ということ、タイトルのとおり、人材の関係、あるいは、大学改革・研究資金改革、それから、基礎研究の強化といったところが書かれております。当然ながら、世界トップレベルの研究開発拠点の形成などもこの中では指摘させていただいております。あるいは、オープンサイエンスの推進といった新しい観点も書かせていただいております。研発法人の機能強化、あるいは、中小・中堅ベンチャー企業の挑戦の機会の拡大ということで積極的にこういう人材ですとか中小企業についての支援もしていくということが書かれております。
  右側に行きますが、こちらが経済・社会的課題の解決に向けた重要な取組ということです。こちらが、先ほどシステム化という概念を御説明いたしましたけれども、あるべき経済・社会システムを構想し、SIPを含め、研究開発を組み合わせ、産業競争力を生み出す価値の連鎖を形成するという考え方で、以下のようなシステムを作っています。研究開発から社会に価値を生むところまでを一つのパッケージとして考えていくということです。
  その中に、大きく5つの分野がありまして、エネルギー、それから、健康長寿、インフラ、さらには、IT等を活用した新産業の育成、最後に、農林水産業ということでして、特にナノテク・材料に関してということでは、4.のITを駆使した新産業の育成の3)の統合型材料開発システムという一つのバリューチェーンを今回提案させていただいております。こちらでは、高信頼データを活用し、要求性能に応える材料、製法を予測し、短期間で新材料を市場投入するということを目的にしております。繰り返しになってしまいますけれども、材料を予測するところで止まらずに、それを市場に投入していって、実際にその材料、素材産業、あるいは、その素材を使う最終製品の製造業が実際にその価値を享受するというところまでを目指すということをコンセプトとしております。
  そのほか、エネルギー関連のナノテクの個別技術等はエネルギーバリューチェーンの中に入れ込まれていたりとか、あるいは、社会インフラの維持管理のところに、その構造に活用される材料の研究なども要素技術としては埋め込まれておりますので、一つのバリューチェーンを形成するナノテクの技術という点では、先ほど申し上げました4.の3)の統合型材料開発システムのところだけのように見えますけれども、要素技術で言いますと、様々なものがこの総合戦略の中で記載されているとお考えいただいて結構です。
  ちなみに、農林水産業というのは4期計画のときには余りハイライトされておらず、今回こういう独立の項目で出てきたというのは一つの新しい試みではないかと思っております。
  以上です。参考資料のには、後ほど、恐らく文科省さんの方からの論点の中で適宜引用はされるのではと思いますので、私の説明は一旦ここで終わらせていただきます。ありがとうございます。

【三島主査】
  御説明、ありがとうございました。
  それでは、二つの科学技術基本計画の件と、それから、科学技術イノベーション総合戦略2015、この二つについての御説明でしたが、何か御質問がありましたら、どうぞ。どうぞ。

【瀬戸山委員】
  この会議、この目標なんですけれども、どちらかというと国内の産業、科学をどうするかという視点がすごく強いように見えて、この後、じゃあ、発展して、世界の中で日本の科学とか経済がどういうようになっていくかという部分みたいなものってほとんど中にはないようにも思うんですけども、そういう視点というのは入る余地があるんでしょうか。
  だから、10年後、15年後、世界の経済の中で、日本はこういうふうにありたいというようなビジョンがあって、それに向けてこういうふうに強化しますよという何か将来像みたいなものがあってもいいんじゃないのかなという気がするんですけど。

【守屋政策企画調査官】
  ありがとうございます。産業創造ですとか経済の発展という具体的なそのバリューチェーンを考える際には、国際競争力というのは様々なそのバリューチェーンの中で意識して考えてきておりますけれども、科学技術という点に関しまして言うと、基本計画の中間取りまとめの中の8.国際展開という中で、これまで国内に閉じてきた研究開発を海外の研究拠点との連携を更に進めるですとか、より海外のチームを日本の研究に取り込んで全体のレベルを上げるといったことが今回かなり手厚く書かれておりまして、そういう意味では、視点としては4期計画のときに比べると、随分その海外に対する意識は高まってきているというふうに私どもでは認識はしております。

【瀬戸山委員】
  資料1-2の第5期科学技術基本計画、こう三つ、大きな柱がありますけど、これ三つとも何となく内向きじゃないのかなというように見えるんで。

【三島主査】
  総合戦略、これですね。総合戦略の中の第5期のところ。

【瀬戸山委員】
  三つの政策分野というのが国内の問題であって、これが、だから、その後、どういうふうに発展するかというのが何か少し入っているといいのかなという気もしなくもないんですけれども。

【守屋政策企画調査官】
  総合戦略の方は、正直申し上げて、政府の成長戦略の中で科学技術の果たす役割を中心に考えておりますので、確かにここの三つはいずれも内向きといいますか、国内の経済を発展させるという方向で考え、まとめられているような色彩が出ているというのは確かにそのとおりだと思います。だたし、より長期レンジで考えていく基本計画の方ではかなり国際化というところは意識していますので、そちらは長期的な取組ということで考えられていると言ってよいかと思います。

【三島主査】
  長我部先生、どうぞ。

【長我部委員】
  総合戦略2015の位置付けについて質問いたします。第5期の計画を今年度でまとめるわけですが、16年度の具体的なプロジェクトはもう議論しなければいけないので、そのために第5期の方針にのっとって16年度にスタートアップすべきものをここで決めるという理解でよろしいですか。

【守屋政策企画調査官】
  はい。

【長我部委員】
  そうすると、1枚目に書いてある三つの政策分野が始動に向けてと書いてありますので、16年度にはこの三つの分野は推進すべしということだと理解しました。用紙の裏にあるイノベーションの創出に向けた二つの政策分野は始動に向けたではなくて、ちょっと別な書き方にここにでてくるというのはどういう意図があるのでしょうか。もっとロングレンジで5期全般にわたって取り組みなさいとか、そういう位置付けで分けてあるのんでしょうか。

【守屋政策企画調査官】
  特にそういう、より長期とかより短期とかという考え方でこの二つを分けているわけではありませんで、ある意味、特に今すぐ着手しなければいけない重要な政策分野として表面の三つを掲げております。要はタイミングとして今このタイミングにすぐに着手しなければいけないということです。
  そういう意味では、裏面に書かれている二つの政策分野も今すぐ着手しなくていいというわけではないのですが、2016年度の施策をこれから優先付けをしていく中で特に重点をおくものとして、掲げてはおります。

【長我部委員】
  そういう意味で、順位付けみたいな意味ではないわけですね。

【守屋政策企画調査官】
  そうですね。始動の順位付けという意味ではないです。

【長我部委員】
  というか、順位というか、どっちが急ぐとか、そういう話ではないと。

【守屋政策企画調査官】
  はい。

【長我部委員】
  分かりました。

【三島主査】
  ほか、よろしいでしょうか。
  それでは、きょうの今の御説明にもありましたけれども、いろいろな施策がこれから第5期の科学技術計画で盛り込まれるわけですが、やはりナノテク・材料という切り口だけでは非常に、先ほどのバリューチェーンにつながるというようなことから見ても、どうももう少し見えやすい切り口というようなものが提示できて、この中に盛り込んでいけないかという、ナノテクノロジーがどこへどう生きていくのかというようなことがもう少し見せる手段みたいなことを考えていかなきゃいけないんじゃないかということになりますが、その辺りについては第1回でも御議論いただき、それから、6月11日に委員の有志の方にもお集まりいただいて意見交換をしたところです。そこで少し議論して、それをまとめて今私が申し上げたような意味のきょうのナノテクノロジー・材料科学技術に関する論点、これを整理していただきましたので、資料2-1を長野参事官から御説明いただければと思います。

【長野参事官】
  資料2-1に基づきまして御説明申し上げます。
  今、三島主査がおっしゃいましたように、前回の委員会でも議論のキックオフとして幾つかの論点を上げながら、こちらの委員会の方で御議論いただいたところですけれども、今、内閣府の方から御説明がありましたように、基本計画につきまして、第5期の基本計画につきましては中間取りまとめということで、今後、年末に向けて最終的な答申の詰めをしていくという状況で、その中で、このナノテクノロジー、あるいは、物質・材料科学技術についてどういった具体的な事柄が反映が可能かということで御議論いただければというふうに思っております。その際の論点としてここに四つ上げております。
  一つ目が、先ほどの話にもありましたように、未来の産業構造、あるいは、社会変革に向けた取組といった中で超スマート社会というものが取り上げられております。この超スマート社会の中で求められるナノテク、物質・材料研究についてということで、今の中間まとめの中ではちょうどその今の資料1-1の裏側の方にありますけれども、の左の真ん中の方にもありますけれども、他の基盤技術とともに、ナノテクあるいは素材というのが基盤技術として取り上げられております。この基盤技術としてのナノテク、素材の在り方についてどう考えるかということ、それから、そういった全体としてIoT、あるいは、人口知能といった流れの中で、具体的にナノテクノロジーに求められるものは何かといったことを論点として上げさせていただいております。
  この下の方に参考として上げておりますのは、先ほどの御説明もありましたけれども、具体的な基盤技術としては、ほかにセンサ、ロボティクス、先端計測、光・量子技術、素材、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーといったものが同様に上げられているということが記述されております。それから、そのまさに次期の基本計画の実施に向けて、具体的な推進方策については検討を進めるということになっておりますので、こういったところに反映ができればというふうに思います。
  それから、次の2番目の論点ですけれども、超スマート社会の検討の中で、システム化あるいは統合化といったキーワードがあります。こういったシステム化・統合化というのは恐らくいろんなフェーズであるのかと思われますけれども、そのシステム化・統合化の中で求められる物質・材料分野の研究の在り方というのをどう考えるかということで上げさせていただいております。
  これまでいろんな委員会の意見交換の中で上げられたことを中心にここでピックアップしておりますけれども、例えばバックキャストとフォアキャストの均衡、すなわち、システム側からの要請とともに、材料側が主導するいわば材料の機能からのシステム化と、そういったものも必要ではないかという点。それから、システム化とすることによって、革新的な材料から具体的にどのような新しい社会を切り開けるのか。また、その物質・材料研究においてシステム化が有効な具体的事例というものがどういったものが上げられるか。それから、最後に、そのシステム化の観点から、現在の物質・材料研究の体制・推進方策等に不足しているものは何か。また、今後、具体的にどのような取組が必要になってくるのかということです。
  3番目の論点としましては、第1回目の委員会でも示しましたけれども、情報科学、ライフ、ライフサイエンス等とナノテクノロジーとの融合についてということで、様々な融合が求められる局面があります。その際の具体的な領域設定、あるいは、進め方について御意見賜ればと思います。
  このほか、物質・材料研究が目指していくべき方向性についてということで上げております。
  こちらの論点に限らず、本日の委員会で御議論を深めていただければと思います。よろしくよろしくお願いいたします。

【三島主査】
  御説明、ありがとうございました。
  という論点でこの後、関連する委員からのプレゼンをいただきながら議論をしてまいりたいと思いますが、この論点について何か御質問、何か御指摘があれば伺いますが、いかがでしょうか。
  それでは、早速、委員からのプレゼンをお願いしたいと思います。初めに、資料2-2です。システムとして実現するナノテクノロジー・材料ということで、CRDSの永野フェローから御説明いただければと。どうぞよろしくお願いいたします。

【永野フェロー】
  CRDSの永野です。長野参事官に続いての御説明、前回混乱を招いたようで大変申し訳ないのですが、よろしくお願いいたします。
  資料2-2です。「システムとして実現するナノテクノロジー・材料」ということで、私どもでふだん世界の動向を調査分析している中でどういう概念を考えているか、又は、世界でどういうことが共通認識としてあるのかということをちょっと全体的なことを御説明、御紹介させていただきます。
  2ページ、ナノテクノロジー・材料は「先鋭化」、「融合化」、「システム化」という三つの技術世代が複合的に共鳴して進化するものです。ナノテクノロジー・材料におけるシステム化というのは、一つの定義として要素の集積を通じて高度なシステム機能を生み出し、他の技術と統合されて実用化・産業化へ向かう過程あるいは結果であるというふうに定義をしてみるということなのですが、こうした概念は国際的なナノテクノロジーあるいは材料のコンセプトであるとか方向性を議論する場ではほぼ共通項として十分同意というか合意されているような考え方であるので、これ自体は何か日本だけが特別に考えが違うのかとか、そんなことはないであろうし、研究の現場でもそれぞれこういう三つの技術世代が複合的に取り組まれるべきであろうというふうに考えております。
  めくっていただきまして、3ページがそれを絵にしたものですけども、過去を見てみますと、ナノテクノロジーの黎明期からいわゆる技術を極限追求していくような先鋭化というのはもう行われてきており、それが2000年代に入った世界でのナノテクノロジーの国家イニシアチブ、こういうものが数十か国で進められるようになってくると、様々な要素技術を融合化させて新しい例えばデバイスに主として実現するとか、そういうことが盛んに行われるようになり、さらに2010年代以降を考えると、それをより具体的なシステムとして社会あるいは産業の場で実装していくと、そういう3階層です。
  ポイントは、では、これからシステム化だけをやればいいのかというと決してそのようなことはなく、先鋭化は不断の開発努力が必要でありまして、当然それらを融合化していくという流れも決して切らしてはいけない。この二つがなければ、次なるシステム化というのは訪れないという考え方を持つことが大事で、すなわち、これを統合化していく、これを英語ではConvergenceというようなキーワードで議論されているというものであります。
  4ページ、これはちょっと字が多いですので個別の御説明は避けたいと思いますが、是非お読みいただきたいと思うのですが、先鋭化、融合化、システム化、それぞれが関係を持ちながら進化していくところ、例として下の方に幾つか書かせていただきましたが、この二つだけ御紹介させていただきます。
  まず、一番左の真ん中、例えば計測技術というのはあるわけですけども、これはデバイスや素材の問題点を解明する、あるいは、そこで何が起きているのかを理解するという上で当然こんなのは当たり前に重要なわけですけども、計測技術の最先端の部分では、これまでのマクロスケールのバルク結晶を見るというようなことから、今ではもう原子、分子、個々の分解能のレベルで見ていくようになっています。それによって、そこから初めて実はこうなっていたと分かったことで、新しい材料の設計、あるいは、デバイスの設計アイデアへの創出へとつながってきた。こういう部分があって、初めていろんなことが実現できるんです。
  今度は、逆に、一番右下のシステム化、ナノエレクトロニクスの例ですけども、先ほど、守屋調整官や長野参事官から超サイバー社会、こういう話がありましたが、超スマート社会を実現していきたいというビジョンは、皆さん、かなりの部分、合意されるところはあると思うんですが、一体何でどうやって実現するのかといったときに、メモリ、演算、通信、センシング、イメージング、エネルギー供給と、こういった多様な機能を複数のチップで実現して、それらを3次元的にヘテロ集積したような一体化システム、こういうものがなければ、そういうものは実現できないですよね。それを小型の人工知能を搭載したロボットや生活を支援してくれるナビゲーターのシステム、こういったものが初めて可能になってくるでしょう。これが一つの例であります。
  5ページ、これはアメリカのNSFが実施しているEngineering Research Centerという拠点施策の中で一つ、Nanosystemsというのが推進されているわけですけども、これが一つのイメージ例として、例えば生体情報をリアルタイムで計測して解析して、それで何が必要かをフィードバックする、そういうようなのをシステムとして想定して、それを実現するデバイス、そして、材料までを一体化した上で研究開発を進めようというような拠点があります。
  ちょっと参考資料も少しだけ御紹介させていただきたいのですが、7ページは、ナノデバイスからナノシステムへという、これはスタンフォード大学のMitra教授が先月行われた国際ナノテクノロジー会議で御紹介いただいた資料を拝借しているんですけれども、真ん中の括弧で掛かっているところ、上から、Promisingなデバイス技術、そして、それを作っていく過程で、ユニークなfabrication、加工技術、さらに、そこに例えばSensing機能のようなものを組み合わせて、それらを階層的に一体化させた、統合化したものが、これは具体的な個別のナノシステムの事例であろうということです。
  こういった考えが、8ページの、これはNSFのsystems nanotechnologyというレポートにMihail C.Rocoが掲げている資料ですけれども、こういった概念をかなり早い段階からアメリカではナノテクノロジーのシステム化、それを最終的には2020年代以降は様々な社会実装の中で実現していくプラットフォームとしてやっていく。そのいわば実行準備段階に当たるのがこの2010年代であるというようなことがこういったところに示されています。
  9ページ、これはカリフォルニア大学のNanoSystems Instituteという、これも研究所ですけども、ここでは具体的なナノシステムの研究というのが推進されておりまして、日本の研究機関とも様々な共同研究が行われているわけですけども、例えば、片岡先生は大変お詳しいと思うのですが、この右上に、これはドラッグ・デリバー・システムの一つの考え方ですけども、ペーハーによってふたが開いたり閉まったりすると、それでふたが開いたときだけ必要な薬剤がこの丸い中から放出されるとか、そういった研究開発が行われています。
  最後、10ページ、これは欧州のHorizon2020で推進される議論の中で、KETsという、これはKey Enabling Technologiesというのが右側の四角で六つ特定されているんですが、そのほとんどはナノテクノロジーあるいは材料のことが書かれておりまして、具体的なイメージとして、例えば自動運転の自動車、IoTというのを掲げたときに、それを実現する側のデバイス、ハード、これは圧倒的に足りないですよね。むしろ議論の中心は今そのハードをどうやって実現するのかという方に移っているわけでして、ちょうど先週も欧州最大のナノテクノロジーの会議、Euro Nano Forumというのが行われたのですけども、その議論の中心はもうハード、材料だということが徹底的に議論されているという状況なんですね。
  なので、ここで我々がちゃんと考えなくてはいけないのは、超サイバーとかスマート社会、これは大事だし、それを目標として掲げることはいいのだけれども、それをどうやって実現するかを担保するための議論をする場はやはりここであろうということであります。
  以上です。

【三島主査】
  御説明、ありがとうございました。
  ナノテクノロジー、ナノシステムの考え方として、アメリカで進行中の考え方、それから、このKETsというのはヨーロッパとおっしゃいましたかね。

【永野フェロー】
  はい。

【三島主査】
  ということで、例として御説明をいただきました。
  何か御質問ありますでしょうか。
  それでは、特にないようですので、次に参ります。次は、瀬戸山委員からの資料、資料2-3を御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【瀬戸山委員】
  ちょっとこれ、バージョンが古いんですけれども、併せて説明します。
  私は産業界の方から見て、実用化についての考察という話です。2ページ目に、これは富士キメラの有名な絵なのですけれども、日本の産業の国際競争力と市場規模と市場シェアとなっています。現在、日本のナノテクに当たるものは右下の高収益だが小粒という領域がほとんどです。
  この領域がなぜこうなったかというと、各企業がほとんど事業を寡占化できるので、自分のところがもうかるという構図がすごく作りやすい。そういう部分があるので、かなりエゴが働いたような、そういうマーケットを形成します。全然シナジーが効かなく、なかなか大きくならないということがこれはあると思っています。
  それで、その中で、上に大きな、世界的に見て大きくて力があるので見ると、日本でいうと自動車というのはやっぱり大きくて、この自動車というのは自動車業界の腕力がすごく強くて、こういう一個一個のナノテクの要素をシステム化できた、できていると、そういう状況があって、こういうのが作れている。
  日本の産業全体を大きくしていくのであれば、こういうふうな大きな世界的に見て規模があるようなものを作っていかなきゃいけないということがあって、それに使えるような新しい仕組み、自動車業界が単独でやったようなことを仕組みとしてやるような視点ができるか、取れるかどうかと、そうふうな観点で考える必要があるのではないかと思っています。
  1枚めくっていただいて、では、ナノテクとはどういうことなのかということで、今これから中心になっていきそうな輸送機械、自動車ですね、エネルギー、情報電子・通信、ヘルスケア・医療みたいなところを考えていくと、それぞれの事業領域、産業領域が大きくなっていくには、例えば輸送機械だったら、エネルギー変換効率をどんどん上げていく。エネルギーだったら、化石資源主体だったものを再生可能資源に変えていくと。あるいは、情報電子・通信だったら、これまで以上に利便性とか省エネを追求していく。ヘルスケアだったら、高齢化社会に対応したものを考えていく。
  こういうふうに見たときに、これって自分自身の産業が大きくなっていくという見方を一個一個やっていくと、ほかの領域と結構重なってくるのがすごく増えていきます。ボーダーレスになってきていて、そこのところの技術というのは情報の事業領域に、産業領域に共通になってくる部分がすごく多いと思っています。
  なので、ナノテクの多重構造化とかシステム化と書きましたけれども、そういうふうなところを狙っていくという考え方をすると、外れが少ないといいますか。将来、だから、その分野ってやっぱり大きくなるだろうという見方ができるのではないのかなというふうに思います。
  過去のナノテクについて考察したのが4ページ目なんですけれども、とにかくいろいろやったんですけれども、ナノテクというのは基本的に理想系を議論した部分を語って楽しかったのだけれども、実際それが作れたかというと、なかなかそうならなかった部分も結構あるということが一つと、もう一つは、ロードマップがなくて、できたらいいねというので終わってしまったという部分があります。ですから、先ほどの繰り返しなんですけど、新しい研究開発のコンセプトとか仕組み作りが必要じゃないのかなというふうに思います。
  5ページ目ですね。ここ、何かキャッチコピーのようなものが何かないかということで、「ナノNetworking」ということをちょっと考えました。方法論としては、ナノテク・材料を複合化して、差異化された機能とかシステムとかデバイスを設計するということではないかと思っています。
  どんなことを考えればいいのかなということで、方法論と書きましたけれども、例えばナノテクについて、ナノテクの素材、こんなふうなすばらしいイノベーティブなものがある、こんなふうなすぐれた合成法がある、ナノ加工ですね、評価方法等の最先端科学で日本が位置するもののグルーピングみたいなものをして、その中で情報共有が図れるような仕組みまで一個作るのが最初のステップ。
  将来必要とされる製品に要求される機能を発現するための基本的なデバイスとかプロセスとか、そういうことを実現するための課題抽出、これをBack Cast的な課題設定と書きましたけれども、だから、将来こういうふうな商品が出てくるんだったら、こんなふうなものを考えなきゃいけないということがあります。
  こういうふうなものを実際課題を実現するための仕組みとして見ると、上にあったこの最先端科学のグルーピングの中で、使えるものをネットワークでピックアップして、その中でいろいろ考えていく、プロジェクト化するような仕組みが多分要るのではないか。「ナノNetworking」と書きましたけれども、ここの段階では違う意味でシステム化という言葉を使っていて、要するに、いいものを組み合わせて新しいものを作っていくような仕組みがやっぱり要るのではないのかなと。
  それでやっていって、新しいテクノロジーを作っていく。Synergy型、さっきから書きましたけれども、これ、いっぱい技術が入ってくるんで、一個一個じゃないです。個別の企業というのは一個のいい特許があると、それを囲い込みます。なので、グリップが効かなくなるんですね、日本の科学産業の。なので、そこを考えていくと、幾つか複合化してくると、これ、グリップが効きにくくなって、出口以外の波及効果が強くなってきます。ですから、国内だけにとどまらず、外にものを出していくときなんかにもやっぱりこれが使えるかな。そういうのをこの企業開発に変えていくということで、最後が「日本発ナノInnovation」というふうに書きました。
  これを絵にしたのが次のページの絵で、だから、こういう、まず、右側の育成事業というふうに書きましたけれども、国家戦略としてやっぱりこういう、これは今、今回もうまとめていらっしゃいますので、そういうことがあって、その中で、新しい未来商品、未来にこういうものが欲しい、あるいは、必然的にこうなるというようなものが幾つかある。そういうものに対して、今、最先端科学の中で、それに対してこういうふうな作り方になっていくよねというふうな、「ナノnetworking」と書きましたけれども、そういうふうなところとBack Castが一緒になっていく、こんなふうな仕組み。もう一つは、研究のステージアップということで考えていくと、アカデミア、この文科省主体の方からだんだん経産省に移って産業界に移っていく、こういうふうな仕組み自身もやっぱりちゃんと考えてやっていくべきかなと。
  この差異化の多重化と書きましたけれども、これをやると、やっぱり日の丸知財が作れるんですね。結構強い日の丸知財が作れていくと思っています。なので、こういうふうなことをやっぱり考える必要があるのではないのかなと思います。
  最後のページ、次のページは、これ、私がざっと思い付いたもので、Back Cast型の課題とか、Nano ScienceのGroupingと書きましたけれども、今言ったもので具体的にはこんなことを考えればいい、これは一例だけですが、こんなふうなことをやればいいかな。この中で必要なのは、基本的な要求機能例と書きましたけれども、具体的にこういうふうな性能を満たさなきゃいけないという辺りはやっぱりもうちょっとクリアにして、できればいいね、こんなものじゃなくて、具体的にやっぱりここまで数字化して落とし込むようなことが多分必要じゃないのかなというふうに思います。
  それで、あと、ちょっと付け加えで、私は気候変動の問題を結構いろいろやっている立場で言いますと、この8ページのIPCCの報告書なんですけれども、その中で言っているのは、今後15年間でエネルギー革新をしようと言っているんですね。だから、15年の間で新しい産業を興せと言うのに等しいんです。これって実際、このIPCCの報告書の次の9ページにありますけれども、これで世界の投資がどう変わってくるかというと、いまみたいに石油掘って、天然ガス採ってというのではなくて、全産業領域での省エネ技術という部分がこれから大きな投資対象になっていくでしょうということをはっきり世界の中では見ていて、ヨーロッパなんかはこれ、しっかりやっていると思うんですけど、こんなふうな見方ができる。
  次のページは同友会に移られた小林さんの資料ですけれども、今の日本企業を取り巻く課題と書いてありますけれども、この中で、下の電力コストと原料コストというのは、小林さんはこれをハンディキャップと書いたのですけれども、これがあるから全ての産業が浮かばないという部分がやっぱりあって、ここの問題というのはすごく重要だと思っています。
  なので、今、経産省の発表と違うことを考えていますけれども、まず、サイエンスとしてここの問題を解決するようなことってすごく重要で、それが後々効いてくるので、一つの領域としてこの資源とエネルギーに関する問題に関して、本当に日本が世界で勝っていけるようなところを先導研究としてやっていくということは必要ではないのかと思っています。
  私の方からは以上です。

【三島主査】
  ありがとうございました。
  ナノテクノロジー・材料、これを可視化してというか、どういうところに生かすべきかというようなことで、やり方としてはBack Cast型で、なおかつ、資源・エネルギーに関するところで明確な何か目標といったようなものを立てて、ナノテクノロジーを組み合わせていくというような御趣旨かと思いますが、何か御質問ありますでしょうか。どうぞ。

【山本委員】
  3ページの資料のところで、ナノテクが融合を進めるみたいなイメージだと思うんですけど、質問です。そのナノテクの融合という話でいうと、ナノテクノロジーの分野がこういったそれぞれの例えばヘルスケアと融合するとか、情報電子と融合するというのがまず一つある。だけども、それがナノテクがつなぎになって別の二つの分野を融合化させるという力もあると、そういう意味で捉えてよろしいですか。

【瀬戸山委員】
  そういう意味でもありますが、一つには、一つの産業領域からだけナノテクというのを見たときに、やっぱりそれって限界があると思うのです。産業そのものが膨らんでいくというのは、新しい産業領域というのは多分そういうものが合わさったような領域って結構増えてくる。そのときに、こっちの産業領域でもこういうものを欲しい、別の産業領域でこういうものを欲しい、これって共通項だよねという部分が結構あると思っていて、そういうふうな部分を称して、こういう融合領域って私は呼んでいます。
  ですから、そうなってくると、どっちにも使えるから、カスタマー、要するに買う人が一つではないんですね。ですから、ずっと安心感がある、広がりがある、そういうことを……。

【山本委員】
  安定したビジネスもなるしと。

【瀬戸山委員】
  そうです。そういうふうに思います。

【山本委員】
  すごくいいなと思いました。つまり、ナノテク業界としてどうというだけじゃなくて、そのほかの業界をどんどん広げていくときの媒介として、ほかの分野にも貢献するんだというような切り口が、国の科学技術の全体を考えたときなんかにもマッチするのではないかなと、そんなふうに思いました。ありがとうございます。

【三島主査】
  ほか、いかがでしょうか。どうぞ、常行先生。

【常行委員】
  ナノネットワーキングというのは大変いいと思うのですが、これ、もうちょっと具体的にどうやって、どこが、誰がこれを実現するとか、そういうイメージはありますでしょうか。

【瀬戸山委員】
  これ、産学連携型のプロジェクトみたいなイメージになるのではないかなと思うんですね。ですから、今のERATOとか、経産省がやっている幾つかのこういう産学連携のプロジェクトがありますけれども、ああいうふうなやり方がベストじゃないのかな。そのときに誰が主体かというのはやっぱりその領域で一番力を持っている人がやればいいんで、それは大学の先生とは限らないし、企業かもしれないしという。とにかく、そこを混ぜ合わせて、一番大きな力が発揮できるような仕組みを、産学あるいは産官学の形で考えるということじゃないのかなというふうに思います。

【三島主査】
  よろしいでしょうか。

【常行委員】
  はい。

【三島主査】
  今のところは特に、先ほどの資料2-1の論点の整理のところの二つ目の丸のシステム化・統合化の中で求められる物質・材料研究の在り方について、今、特にバックキャスト型ということがありますけれども、これとフォアキャストというか、材料から始まっていく、先ほどの永野フェローのでいうと、何でしたっけ、融合の前の辺りですね。その本当の材料の評価とか、ああいったようなものの技術からスタートして、材料の特性を上げていくというフォアキャスト型のもの、ボトムアップのもの、それとの均衡が必要ではないかというようなことで、材料側が主導する材料の機能からのシステム化というようなこと、そのやり方についての議論かというふうに思います。ありがとうございました。
  ほかはよろしいでしょうか。
  それでは、次は、栗原委員に、6月11日の、先ほどちょっとお話ししたところでも話題提起していただいたのを、少しまたブラッシュアップしていただいたと思いますので、よろしくお願いいたします。

【栗原委員】
  それでは、資料を説明させていただきます。
  このナノのシステム化ということで、第1回の委員会のときに、橋本先生がロボットの例を何かシステム化で考えろという宿題を出されたのですけれども、私どもは今、機械と材料・ナノテクの融合の研究というのをさせていただいているので、何かやらないといけないのではないかということで少し考えさせていただきました。
  今まで、先生方がおっしゃった分野融合と統合化、それから、その基盤というような考え方で考えました。まず、ロボットというのを考えて、それを色々な要素技術に、つまり高いレベルの要素として分解する、例えば動力で電池とか、それから、構成部品とか、その動かすときのセンサとか、それから、設計制御するためのITとかがあるだろうと。
  それで、それをさらに分解していって、私どもは構成部品のところの摩擦をやっているので、そこについてだんだんズームしていくような形で作成しましたので、例えばITですと、前回、永野さんから御紹介いただいたエレクトロニクスについての階層性というのが成り立つでしょうし、また、電池についてはいろいろな電池について同じような絵が描けると思いますが、それについては3層目ぐらいまででちょっと止めました。私どものところですと、これを上から構成部品として分解した要素と、それから、下の材料から見て、いろんな材料がナノテク・材料というような素材と、計測評価というようなものがあったところで、その上の階層に書いてあるのは機能が出る単位までまとめた形で機能を考えて、それを部品になるというような形で考えていた絵です。
  従来この一番下のナノテク・材料というところは横串ということで評価法とか材料とか合成とかで横串となっていて、それで、下から二、三層目ぐらいまでを従来ですと対象として横串、縦串とやっていたと思うのですけれども、これを更にシステム化するためには、この階層間と階層の間のいろいろな連携を必要とするということで、実際の研究の在り方としては、基盤に近いところでも、私どもは機械の人たちと材料・ナノテクの融合ということをやっていますと、結構その基盤に近いところでも距離があるという意味では距離もありますし、融合できていくというところもあると思うので、いろいろな融合を考えながら、やっぱり上下、それから、階層内でのスムーズな連携というのがすごく必要だと思いますので、かつ、新しいものも入れていくということも必要だと思っています。
  今まで活動してきた拠点とかネットワークというのは縦横に対してあるわけですけれども、そういうものを更に統合していくような、だけれども、進化が必要なので、対象が変わっていくと、やっぱり基盤から考えていかなきゃいけないような要素もたくさんあるので、そういうところをもう少し強化しつつ、ゴールに向かって、新しい材料を作ったり、新しい技術が革新できるような活用を考えるのだというふうなイメージで書いたものです。
  もちろん、上からのニーズからの、下からのニーズからの革新というのも、例えば新しい材料ができれば新しい技術ができるとか、評価も、原理や指針が発見できれば、従来とは全然違う技術構成ができるというようなこともあるということは実感しておりまして、それと同時に、実際の最後の製品で、例えばこの場合だったらロボットですけれども、それをイメージしないと、なかなか開発するための範囲というのが見えないので、そういうところを意識しながらやっていくということが大事ではないかと思っています。
  上のロボットのところの例なのですけれども、この前、割と普通のロボットばっかり書いてあるねと言われたので、少し医療用ロボットとか、診療や治療をする形を少し広げて考えて、今ないロボットというのはもっとあると思うのですけど、ここは広げて将来型のロボットと従来あるようなロボットをあげています。
  この絵を描いてみて非常に感じましたのは、このロボットのすぐ下の要素の部品で動力とか構成部品とか設計・制御とかいうのは今までやっていた先端技術とか先端材料のまさに開発そのもののところが統合される統合技術、エンジニアリングだということを強く感じました。
  前回のときに、現在、ナノテクの位置付けって学術から見たらどうなのだろうかということを思いましたので、雑誌の雑誌数の伸びということから調べてみました。
  「ナノテクノロジー分野における学術雑誌数の推移」ですが、実はトムソン・ロイターのデータベースを見ますと、「nano science&nano technology」分野に区分されている雑誌数の経年変化というのが出てきます。これが2ページ目のグラフになります。これでやはり雑誌数が非常に伸びています。
  この雑誌のグラフですが、初めは刊行年に対するものかと思ったのですけど、そうではなくて、レジスターする何か基準があって、その基準に合ったものを登録して、何社あるというような形になっています。そこで、2014年に登録されている78誌について、研究室の人に協力してもらって、発行年を調べまして、それを積み上げて、何年に出て雑誌数が増えていったかというのを調べましたのが3ページ目のグラフになります。
  やはりナノテクは最近10年ぐらいに非常に伸びている分野で、さらに、これが雑誌の発行年ですので、学術として基盤ではあるのですけれども、先端であるということがこのことからでも非常に明らかですし、世界中で振興されているからこそのこういう雑誌数の推移があるのではないかと思って、御紹介させていただきます。
  以上です。

【三島主査】
  ありがとうございました。
  ただいまのはロボットの例でナノのシステム化ということでお話しいただきましたけれども、御質問、御意見ありますでしょうか。じゃあ、片岡さん、どうぞ。

【片岡委員】
  さすが栗原先生で、非常に真面目というか、非常にきれいにまとまっていると思うのですけども、ちょっと懸念があるとすると、これ、こう行くと、何かナノテク・材料というのはほんとの下請みたいな感じになっていますね。だけど、例えば内燃機関というんですかね、科学エネルギーを運動エネルギーに変えるという点では内燃機関と人間の筋肉は同じことをやっているわけですよ。だから、システムとしては同じなんですよね。要するに、センシングしてプロセッシングをしてオペレーションしている。だから、今あるロボットの形がこうあって、それを部品に分解してこうやっていくとこうなるという解析的なやり方と同時に、やっぱりロボットの持っている機能というのを抽出したときに、この間をすっ飛ばせるかという。

【栗原委員】
  それはそうですね。大事だと思います。

【片岡委員】
  ええ。だから、やはりそういう軸ももちろん時間が掛かると思いますね。すぐに例えば5年後にそんなものはできないかもしれないが、この委員会は文科省の委員会だと思っていますし、やはり両方の軸が必要なんじゃないかなと。そうすると、今あるこのものを分解していって、もちろんこういうものを考えることもすごく重要だと。
  ただ、一方においては、やっぱりこれをすっ飛ばしてしまうといいますか、もう材料の中にシステムが入っているという。だから、そういう道筋もあるんだろうということはやはりどこかに何か入れておいた方がいいんのではないかなというふうに思いました。

【三島主査】
  ありがとうございます。

【栗原委員】
  さっき私が口頭で言った新しい材料の創生や原理の発見から、技術が革新というようなことをちょっと言ったのは、こういうただ単に分解じゃなくて、階層の飛躍はあり得ると思うので、それはそのつもりでした。ありがとうございます。

【三島主査】
  それでは、じゃあ、五十嵐先生。

【五十嵐委員】
  私もこの栗原先生のこのナノのシステム化は非常に分かりやすいんで、これを例に、日本の強み技術はどこかといったときに、やっぱり部品から下のナノテク・材料のところ、ここは、例えば非常にブレークスルー技術、シーズ技術がたくさんあって、いいものができると。ところが、なかなかシステム/アーキテクチャーのところで世の中にものが出ていかないと、そういうジレンマがあるのではないかなと思っています。
  ですから、ここをいかに強化するかと、今そういう議論ですけども、例えばパワーデバイス、SiCからシリコンカーバイドに変えて、高温化、小型化を狙っていますけども、そのSiCの基盤がいいものができた、あるいは、高温実装のためのワイヤ、配線用のワイヤですとか、そのハンダに代わるようなペーストですとか、そういう素材は開発できているんですけども、その次のデバイス化のところでやっぱり足踏みしまして、そうすると、日本の強みが生きないまま、その技術がよそに持って行かれてしまうような、そんな危険を感じていまして、そこは是非こういう場でもっと議論していただきたいなと思います。

【三島主査】
  ほかに御意見ありますか。
  それでは、後で総合的に討論したいと思いますので、先へ進ませていただきます。資料2-5ですが、小池委員から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【小池委員】
  私のきょうの御提案は、8Kシステムということで、ちょっと動画とかありますので、少し拡大されてしまっていますけれども、これを使ってお話をさせていただきたいと思います。
  前回の委員会、欠席で申し訳なかったのですが、6月11日のディスカッションのところで、長野参事官ともお話をさせていただいて、それから、また、きょう、もうお一方の永野フェローから融合とシステム化とありましたが、今回はナノテクが主役でありながら、それをどういうふうに積極的にシステム化していくかという融合の部分として、8Kシステムへの貢献ということを具体的な例としてお話しさせていただきたいと思います。
  これ、今、8Kの医療システムで、実は日本が一番初めに先駆けて、これ、ちょっと下のところが隠れていますけども、杏林大で去年の11月の下旬に初めて8Kによる手術を行ったんですね。この8KというのはKというのは千ですから、実際に見ているこの画素数が8,000ということでありまして、これは視力にすると4.3に相当しますので、肉眼で見えないものが見えてくるという、本当に手術の革命になるポテンシャルを持っています。
  これまで不可能であった内視鏡手術が可能になる。それから、4.3ということは、拡大しても肉眼で見えなかった従来のものが見えるということは、がんの初期の初期が見付けられる、そういう予防医学、そういったことへのポテンシャルがあります。
  これ、実際にちょっとお借りした写真でありますけれども、今までの最高精細の画像、医療というのは2Kなんですけれども、これが8Kになると、今言った視力4.3、肉眼で見えなかったものが見えてくるという大きな医療、それから、IT医療の革新ということが目の前にあります。
  しかしながら、現状の液晶のディスプレーでは、これは角度を変えてしまうと、ここのダイダイ色が現状品ではピンクに見えてしまう、こういったカラーシフトということは、これは半導体の画素数を多くするだけでは解決できないことであって、実はこの中に実は液晶は数枚のフィルムが入っているんですね。そのフィルムのナノ、10ナノといったところの複屈折だとか散乱だとか、そういうことによってこの色むらが出てしまうんです。
  したがって、今、この8Kというのは中国のBOEとか韓国、台湾、大攻勢を掛けられて、今、日本は完敗してしまいましたけども、これらは従来の方式の色むらというところが改善されないまま、今、8Kというものの開発が進んでいます。
  それに対して、日本ではこういった、私どものFIRSTのプロジェクト等もそうですけれども、ゼロ複屈折のフィルムであるとか、光散乱のフィルムであるとか、そういうことをすると、従来の液晶ディスプレーの方式ではないものを今提案してきています。そうすると、そういった色むらであるとか、そういったものが材料の機能によってシステムが変わってくる。ここがすごく難しいところです。従来のシステムの延長でやっていこうとすると、それはロードマップ、企業も書きやすいんのですが、そこに不連続性が出てきます。しかしながら、そういうことを進めることがこのナノ材料の一番重要なところではないのかと。
  それから、実はこれは医療で8Kというものをやろうとすると、実は舞台裏はこれだけの銅線の配線が入ってきます。これはただ配線だけではなくて、もう100ギガを超えるデータがもうすぐ手術室の中でやり取りしなくてはいけない。そういうことが起きてきますと、いかに電磁ノイズをなくすためにということでアルミ箔をするとか、膨大なそういったことが行われています。これがこの複雑怪奇な配線群になっているわけですが、これは誤動作という問題もあって、今非常にこれ、重要な問題になっています。ちょうどここに私が書いたところが今見えてないんですけども、EMIですね、電磁ノイズが本質的な問題になっています。
  そういうものに対して、これからは光の時代、光ファイバー、私たちはそういったものを高速のプラスチック光ファイバーで進めているものですが、ここでまた一つのナノテクの大きなこれからの重要性が出てきました。これは実はガラスの光ファイバーで映像を流すと、実はこういったモードノイズというものが発生してしまいまして、これのマジックみたいなものなのですが、このガラスの光ファイバーをナノで制御されたミクロなわずかな不均一構造を持っているプラスチック光ファイバーにすると、このノイズが完全に消えます。これはほんとにファイバーを代えただけのことなんです。
  どういうことが起きているかということはまだその全容を解明されていないんですが、実はこれ、すみません、これがナノの領域なんですが、こういった領域というのは科学の技術としては極めて興味深い領域でありますけども、しかし、学問的に未開な領域であって、まさにちょうどここがナノとかそういう領域になりますけども、そういったところの本質的な解明が、これらの医療や、リアルな色を出す、それから、ノイズをなくすという本質的なことの解に、こういったナノテクノロジーがあるというふうに思われます。
  8Kディスプレーの開発において画素数は増加しますけれども、現状の液晶ディスプレーではリアルなカラーを実現できない。それから、こういった煩雑な電磁ノイズ、これは従来の電線から光ナノテクノロジーへのパラダイムシフトということを意味するものと思います。これは「ナノテクノロジーが主役となる積極的なシステム化」と書かせていただきましたけれども、この8K時代へ向けての課題は、従来の液晶ディスプレー、配線技術では解決不可能です。リアルな色を出せない原因というのは実は材料の「複屈折」だとか「光散乱」といった光の本質にあるということが分かってきて、これはまさにナノテク材料の機能化によってリアルな色の新しいシステムのディスプレーができてくる。それから、電磁ノイズ、膨大な配線の解決、これも従来のその延長上では限界がある。これは電線から光ナノ技術へのパラダイムシフトということを意味すると思います。
  時代は光の本質に迫るイノベーションというものを求めていて、実はこの下に今書いたことは、光を制御するディメンションというのは、今お話ししたように、まさにナノのオーダーがその本質の光の制御をするところであります。
  以上の日本から生まれたオリジナル技術によって、他の追随を許さない世界最高の8K医療システムを世界に先駆けて構築するということ、これはがんの初期の初期が分かってくるとか、内視鏡の手術であるとか、医療の革命であるわけでありますが、ここで開発したものはそっくりその技術というのは2020年の東京オリンピックの大きな裾野として、今、日本が完敗したディスプレーのこの産業を取り戻す大きなチャンスであり、その到来を前に今、最後に書きましたのは、ナノテクの材料が主役になりながら、もちろん融合をしながらですけども、我々が主役になりながらシステムを提案していくという、そういった時代にこれから入っていく必要があるのではないかということで書かせていただきました。
  以上です。

【三島主査】
  どうもありがとうございました。
  ナノテクをどこへ使うかということで、非常に医療へということの新しいナノテクの、ナノテク材料のすばらしさを提示するための一つのエグザンプルとしては非常に面白い御発表だったかと思いますが、何か御質問ありますでしょうか。どうぞ。

【瀬戸山委員】
  これ、出てくる課題というのは研究開発を進めながら出てくるのか、一番最初からそこそこ分かっているのか。多分、僕は前者じゃないのかなと思うんですけれども、そこをどういうふうにマネージするかということですね。

【小池委員】
  そうです。ですから、今までのシステム延長でいうと、ロードマップも非常に書きやすいわけですね。ところが、そういうロードマップからは、例えばブラウン管のときに液晶が出てくるロードマップは見事に外れて、突然の、もう何ていうんですか、不連続な非破壊的な提案が材料側の液晶からというものが出てくることによって、大きなこの産業が出てきた。
  そうすると、そのナノテクからの提案というのは、100個のうち100個全部うまくいくかというとそうではなくて、そうじゃない、そこにはまさにイノベーションというもの、だけど、それが当たったときには大きなポテンシャルがある。それは残念ながら、マネジメントとして今までのシステムの延長で考えていくと、それは予測できないものである。
  だけど、そういうものの非常にファンダメンタルズな材料のナノの研究から生まれてきた機能が突然出てくる。それがシステムに結び付くところの融合、それをどういう形でやるかということが非常に重要なものであって、それは一人の研究者がダブルメジャー的にそこのことを学ぶこともあるでしょうし、あるいは、同じ屋根の下でそういうことの人たちとの融合というものが、今まではそれがなされてなかったというところが。

【瀬戸山委員】
  多分そういうことじゃないかと。ですから、やり方をどうするかというところをどう考えるかという部分を何かすごく触れる気がしますね。

【三島主査】
  ありがとうございました。
  ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。どうぞ。

【五十嵐委員】
  すみません。今は最先端の医療というお話だったのですが、実は鉄鋼材料も成熟産業なんですけれども、実はナノテクが不可欠だというお話をさせてください。
  中国はいろんな材料、高品質なものを今どんどん作れるようになっているんですけれども、絶対に日本製を使う材料というのがあります。それは例えば耐食性能を要求されるステンレスとか鋼・合金なのですけども、20メートルのパイプの内面に5ナノメートルの耐食皮膜を付けます。それを、5ナノメートルを20メートルの延長でプラスマイナス1ナノメートルで制御すると、そういうものづくりの技術を今持っております。
  これは同じ材料を同じようなプロセス、設備で作っても実現できない、そういうノウハウが実はありまして、それが分かったのも、例えば収差補正TEMですとか、あるいは、原子レベルでその酸化物の構造を決定する、そういうナノテクがそういう技術として実際に生かされているんですね。
  それで、これから更に、ナノレベルじゃなくて、もっと原子レベルでそれをどう制御するか、例えば酸化物の酸素欠損はマイナス幾つまでよいとか、そういうところに今、技術は踏み込もうとしていますので、そういう意味で、成熟産業と考えられているそういう社会インフラですとかそういうものに対しても、競争力の源泉がナノテクにあるというのを感じております。

【三島主査】
  ありがとうございます。構造材料でももちろん、例えば超々臨界発電用の耐熱材料なんかでも日本じゃないとできないものは随分ありますし、そういう観点からも、ナノテクが実際にどこに生きているかというものをどうやって見せていくかが一つの重要な分野だろうと思います。ありがとうございます。
  それでは、もう一件、「ナノテクノロジーと薬学・医学との融合」という御説明を、資料を頂いております。きょう御欠席の岡野委員からですが、A4の文章と、それから、図面が3枚あります。
  それで、ちょっとこれは私、専門外なので、片岡先生にでもまたコメントしていただければと思いますが、要点は、上から、最初のパラグラフの真ん中のちょっと下に図1というところがありまして、ここには何を描いてあるかというと、「最先端テクノロジーを産業分野のみならず、医療分野に積極的に応用」して、「これまで以上に高度な医療技術の確立が可能になると期待される」と。「とくに、分子から分子集合に至るボトムアップ技術と物理的、機械的に微小化する技術は、ナノレベルの大きさの領域でそれぞれの限界に直面し、その解決のための融合に向けて新しい挑戦が始まった」ということで、それが図1の絵に対応するものです。
  それから、図2はドラッグデリバリーですので、がん部位のみに抗がん剤を作用させる標的治療ですね。これも、先ほどもちょっと出ましたけれども、これに関する説明図が図2です。
  それから、3ページ目が細胞シート工学ということで、「細胞を培養して増やしても、それらを培養皿から剥がすためには酵素が必要である。これにより、細胞の膜タンパク質を破壊し、機能低下した細胞しか利用できないため、細胞治療に限界があった」けれども、これに「培養面にナノレベルで制御して温度応答性高分子を導入」して、うまく細胞シートを作製する技術が開発されていると。こういうことで、「世界初の患者の再生治療を次々に成功させている」というようなことですが、これ以上の説明を、もし、片岡先生よりコメントをしていただければと思いますが、いかがでしょうか。

【片岡委員】
  岡野先生が大変きれいにまとめられていますので、1件だけ。
  ここにはちょうどナノキャリアですね、高分子ミセルと出ていますけど、これは重要なことは、この中に入っている薬は既存薬なんですね。もう既にある薬です。ただ、これはもう今、臨床第3相の最終段階に二つ行っていますが、いずれも新薬で全て承認プロセスの、治験などが行われています。
  ですから、結局これは今まで新薬というとみんな無意識のうちに新規化合物というふうに思うのですけれど、実際、患者さんが、自分が患者さんになって病院に行ったときに、新規化合物、いかがですかと言われて、はいと言う人は余りいないですね。だけど、新しい機能の薬があるけど、どうですかと言うと、ああ、それは是非使ってくださいと。ただ、実際は我々が思っている新薬というのは新機能なんですね。
  ですから、ある意味ではこういうものというのはつまり今までの薬の要するに化合物である、それが新薬であるという概念を変えるという意味で、さっき、システム化という話が出ましたけど、そういうシステムができることによって、薬の要するに定義が変わっていく。
  だから、私自身はドラッグデリバリーシステムという言葉はそろそろもう終わりじゃないかなと思っていて、これはやっぱり薬というのが前面に出ているのですが、むしろそうではなくて、体の要するに必要なときに必要な場所に必要なものを単に届けるだけではなくて、そこで環境をセンシングしてオペレーションするという、もうそういうところまで今どんどん進んでいこうとしていますので、そういう点では違うステージに入っていくんのではないかなと思います。
  それから、細胞シートは岡野先生の独自な方法論で、客観的に見てこれの非常に重要なことは、さっき、やはり階層構造がいろいろあるんですね、部品とか何とかと。だから、従来の考え方はそれを一個一個こうやっていくのを、要するに、細胞を最初からシート化してしまって、それをぽんと置けば、ものがシステムとしてできてしまうと。
  だから、そういう点では、解析的に行ったというより、機能を見て、そして、ナノテクノロジーの方法論を使ってすっ飛ばしたわけですかね。そういう点で非常に重要だと思いますし、やはりそれは今後、医療がブティック医療といいますか、つまり、幾らお金掛かってもいいから治してくださいという状況から、最先端の医療はやっぱり経済合理性というのがすごく重要になってくると思うんですね。だから、そういう段階になってくると、こういった方法論というのはすごく重要になってくるのではないのかなと思います。

【三島主査】
  ありがとうございます。
  今のところでは何か御質問がございますか。どうぞ。

【小長井委員】
  きょう、いろいろ皆様方の話を伺っていて、ナノのシステム化、あるいは、ナノシステムといったときにちょっと二つの考え方があるなというふうに思いました。
  最初にCRDSの永野さん、御説明いただいたものは、海外の例としてはほんとにナノシステムで、いろいろな機能を一つにまとめて、やっぱりナノのレベルで小さいシステムを作るという、そういう何かお考えが多かったのかなというふうにも思ったのですが。
  あとは、もう一つは、これから超スマート社会を支えていくときに、ロボットやディスプレーやいろいろなものが必要なんですけど、それの構成員の一つとしてナノの技術がいかに生かされているかという、それもシステム化と……。

【三島主査】
  そうです、そうです。

【小長井委員】
  二つあるような気がして、両方とももちろん大事なことだと思うのです。
  医療の方だと、やっぱりほんとにナノのロボットみたいなものをという感じがするんですけど、だから、そこでちょっと議論を分けた方がいいかなというふうなちょっと感じがしました。

【三島主査】
  医療、ナノで作るもの。

【小長井委員】
  いわゆる、ええ、ナノシステムといった場合に、ナノだけで光の機能や電気の機能、センサ、いろんな機能をまとめて一つにまとめ上げるというような、アメリカの例だと、そんなふうに捉えたんですけど、そうですか。

【永野フェロー】
  小長井委員の御指摘のとおりの理解でよろしいかと思うんですが、ただ、そこは厳密に議論を分けるというのは多分難しくて、多分ほとんどの場合、それが重なって起きるんですね。なので、そこは例えば海外ではそこを何か分けて議論しようというような感じは全然なくて、ただ、論理と構造としてはおっしゃるとおりだと思います。ありがとうございます。

【三島主査】
  ナノテクノロジーそのものがというよりは、むしろ融合、ほかの技術と融合した中で、非常に今までにない性能が期待される。ですから、ただし、その根幹にナノテクノロジーがあるということのようなのが多分今の後者の方ですよね。

【小長井委員】
  そうです。

【三島主査】
  それ、その中で、今のアメリカ的な考え方のようなものも、自然にやっぱりそういう取組をしていると、ナノだけの組合せによる機能発現もあるでしょうけれども、どちらかというと今の第5期の科学技術基本計画のような中に盛り込んでいくにはやはりもう少し融合型のものを中心に考えた方が考えやすいのかなという気がしますが、その辺は橋本委員に少し御意見を伺いたいなと思いますが、ちょっと後で総合のところでお願いしたいと思います。
  それでは、総合に入りますが、ちょっと時間が押しておりますけれども、ちょっと参考資料4の学術会議の科学・夢ロードマップの総合工学分野のところ、これ、小長井先生がおまとめになっていらっしゃるので、ちょっとこれ、関連したところで御説明をいただければと思います。

【小長井委員】
  それでは、手短にちょっと紹介させていただきます。
  前回いろいろ議論していたときに、現状までの技術的な流れはよく描かれているんだけど、やっぱりちょっと将来見通しといいますか、ロードマップ的なものが余り描かれていないということを発言させていただいて、それでしたら、今、学術会議あるいは学会を中心にしてまとめたものがありますので、それをちょっと参考として御紹介したいなということです。
  私は応用物理学会でこういう活動もしていたわけですけれども、今、学術会議と学会が連携して夢ロードマップというものを作っております。これはもう既に第1回作りまして、昨年、その改訂版ということで第2回目の夢ロードマップ2014というものになっているわけです。これ、大変厚い冊子になっていまして、きょうは図面しか出してはいないんですけど、これ、それぞれに対して説明が付いております。理学・工学分野でやっておりますので、あらゆる分野に対してこういうロードマップができております。その中でも私はちょっと応用物理なので、このナノテクノロジー・材料に近いということもありまして、それに関連したものを作っております。
  総合工学というのは大変広い分野で、そのうちの一つが応用物理になっておりますので、この応用物理でちょっと見ていただくと、開いていただきますと、応用物理の、(0)と書いてあるものですけれども、応用物理学の科学・夢ロードマップということで、2013年から2040年について各技術がこれからどういうふうになっていくかということですけど、飽くまでも最終的にはデバイスの高機能化・高性能化/統合・システム化によって、人が快適で自然と調和する持続可能社会を実現する、これがやっぱり大きな目標になっていて、そのために何をすべきかというブレークダウンした形になっています。
  ここでは技術的にはシリコンテクノロジーから有機ですね。それから、フォトニクス、プラズマ、スピン、バイオ、超伝導、医療、環境等々に分かれて書いてありまして、応用物理学が得意とするところは大変さらにブレークダウンして丁寧に書かれております。
  これはちょっと後でごらんいただければと思いますが、例えばその下のページの(1)のところはシリコンテクノロジーのロードマップでありまして、これから先、どうなっていくかということですね。それに対して、将来、2020年、30年、40年になるに従って、どういう新しい分野が開けていくかという観点で書いているわけであります。
  それとか、次のページへ行きますと、これは有機エレクトロニクスですね。先ほどのディスプレーの話もありましたですけども、そういうものを含めて、2040年までを見た技術の流れ、ロードマップになっています。
  あとは、そうですね、ぺらぺらとめくっていただきますと、今、応用物理の分野で一番これからの展開が期待できるものとしてスピントロニクスというものがありまして、(5)を見ますと、スピントロニクスのロードマップが書いておりますけども、スピントロニクスというともう今まで分野がかなり制限されていたか、制限されているというふうに思われがちだったんですけど、いや、この分野はかなり分野がこれから広い分野に展開しまして、通信だけじゃなくて、メモリからいろんな分野に、もしかしたら冷却ということも、冷房とかそういった分野にも掛かってくるかと思いますけど、いうことで、こういうまとめたものがあります。
  これ、ほとんど指すのはこれ、全部ナノテクノロジーなんですね。いうことがありまして、これから将来像を描いていくときにはこういったものもちょっと御参考、参考にしていただければということで、簡単に御紹介いたしました。
  細かい説明は冊子になっておりますので、それも全部無料でダウンロードできますので、そちらを是非ごらんいただければと。

【三島主査】
  どうもありがとうございました。これだけのこの応用物理分野でのロードマップを見ても、個々のナノテク材料が満載されているわけですけど、それを今度の第5期の科学技術基本計画のターゲットになっているものに落とし込んだような形でやっていくのがいいのかなというふうにも思いますが、その辺のところ、全体のディスカッションを残りの時間でさせていただければと思います。どうぞ。
  橋本委員から最初に少し議論の方向性をちょっと言っていただいて。

【橋本委員】
  いえいえ。方向性をお示しできるわけではないのですが、今お話をちょっと伺っていて、この今議論していることの目的というか出口ですけれども、先ほど長野参事官から御説明いただいた資料2-1では、今後の材料研究とか、こういうナノテクとか材料の研究の体制について議論するというのが一つ挙げられていますよね。
  もう一つは、さっきから何度か座長が繰り返し言っておられるように、第5期の計画の中に、端的に言うと、ナノテクの研究者としてはいかにそこのナノテク関係のものをしっかりと書き込んでもらうようにするかということで、こういう二つの視点でいいですね。

【三島主査】
  はい、そうです。

【橋本委員】
  その後者について、第5期にどうやって書き込んだら、どうやればもっと大きく書き込めるのかなと思いながら、私もナノテクの研究者に属する人間としてずっと考えていたんですけども、なかなかちょっといいアイデアがなくて。今の取りまとめの中にどういうふうに入っているかというところですが、長野さんの方から発表された2-1の参考1というところに書いてありますように、「『超スマート社会』の実現に向けて」とあり、これがすごく実はもともと強調されていました。でも、それだけでは駄目で、みんなここを狙っているんだから、やっぱり我が国の強みがどこにあるかということを明確にして、例えばナノテクなどがあるのだから、そういうことを入れてはどうかというふうなことを、私、これを結構そういうようなところで言って、全くそのとおりだという賛同は得たんです。ですが、その結果、ナノテクだけじゃなくて、センサも強いし、ロボティクスも強いし、先端計測も強いし、光量子技術も強いしと、みんなどんどん、どんどん入ってきたんですね。でも、これが実態で、事実なんです。材料とかナノテクだけが強いわけじゃなくて、ほかの技術もみんな強い。みんな強い、強いと言いますしね。
  なので、大きな社会変革、技術変革がある中で、先ほど瀬戸山さんが言われた20年先、30年先、どういう社会のどういう技術を狙っていくのかということは随分今も議論されています。それを第5期の頭に書くのか後ろに書くのかということで実はちょっと意見がいろいろあるんですけども、いずれにしても、そのキーワードはここに書いてあるように、やっぱり超スマート社会に大きく変換していく、そういう中において、我が国はどういうところで戦っていくんだと、こういう位置付けになるんですね。
  それで、ナノテクは必ず残るわけですけれども、それを更に広げるためにどうすればよいのかと、ちょっと今の話を伺っていても、アイデアがうまく浮かばなかったのですね。皆さんがおっしゃっているとおりなんですけど、では、どう言えばほかの技術・分野よりもここの部分を浮き立たせられるのかというのは、なかなかちょっと今浮かばなかったんですね。是非その辺はまたアイデアを頂ければと思います。
  一方で、今後の研究開発体制ということについては、今のお話を伺っていてかなり明確に意見の共有ができているような気がしています。やはり今まではボトムアップ的な研究をばんばんやっていたわけです。一方で、産業界なんかでこういうことが必要だというブレークダウン的な、トップダウン的な研究もやってきた。しかし、そこの結び付きが弱かったわけです。産業界が求めていることだけをやるというのでは、大きく飛躍するようなものはできないから、それとは関係なく、まさに純粋学問的な興味でもどんどん研究しなければいけないんだけど、でも、そういうことを知っておくことはすごく重要なんですよね。
  なので、そのトップダウン型とボトムアップ型の研究がちゃんとそのお互いが知れるような場の設定が重要になる。これは今の国全体の流れでいうと、官民対話の重要性ということを総理もこの前の会議でずっと言っておられて、技術の場合はさらに、産学官対話という言い方もされますが、これは一つのキーワードになっているんですね。
  そういうのをきちっと政策の中に位置付けるということが今後重要になってきます。まさにここの材料・ナノテクの研究等はその典型的なところだと思うので、そういうのを前面に打ち出していくと、今の大きな流れとも一致しているし、いいのかなと思います。現実に、本当にボトムアップ的な最先端の世界で競って研究をやっている人たちが、そこだけではなく、実はどういうことが20年先に求められているのかということを知った上で自分の研究をまたやるというようなことにつながるし、逆に、そういう産業界のいろいろ開発をやっている方がどういう新しいものが出つつあるのかということを知れば、そこにアクセスすることによって、その方向をもうちょっと産業界に寄せてもらうみたいなことができると思うので、そういうようなことを是非とも積極的にここで打ち出していくということは重要かなという気がいたします。
  それは何かうまい仕組みを作ることができるんじゃないでしょうか。ただ、それを、掛け声だけに終わるのではなくて、国の官民対話は11月ぐらいに投資先をどこにするかというのを政府主導でやるということがもうほぼ決まって、今後すぐ決まると思いますけども、それと同じような形で、もっと積極的にこの委員会においてもその官民対話に相当するようなものを明確に位置付けて出していくというとはかなり重要だし、それから、政策的にも乗っていることかなという気がいたしました。
  それと、別の視点で、ちょっと議論されている内容のことについて申し上げたいと思います。きょうのお話は、融合化と、システム化と、もちろんそれは、今の社会の要求、それから、研究の流れの中で非常に重要なんですが、もう一つ、実はきょう全く出てこなかった視点で、今、研究方法自身が大きく変わりつつあるということがあります。これは、生産方法だったらIoTであったり、あるいは、研究であれば、ビッグデータとIoT、ITが組み合わさったマテリアルズ・インフォマティクス等が今動くわけですけど、これに更にAIが入っているんですよね。
  ビッグデータとITにAIが入ると全然違ってくると思うんで、まだそこの部分が実は我が国はできてないですよね。常行先生がやられるのも、ビッグデータと、それから、IT……。

【常行委員】
  インフォマティクスです。

【橋本委員】
  インフォマティクスですけど、AIは入ってないですよね。これ、やはりAIをどうするのかという議論は必要だと思うのです。そんなすぐできることではないのですが、でも、これは明らかに次のものとして動きますよ。もう水面下ではいろいろなところで動いているみたいですけれど。
  なので、そういうような研究、それは研究手法であり、かつ、IT、IoTになってしまうと全部バリューチェーンまでつながることまで行くのかも分からないのですが、そういう何か、我々の研究しているナノテクとか材料の周りの技術で物すごく大きな進展がある部分について、それをどうやってこのナノテク・材料研究に入れ込んで最先端を走るのかという視点での議論は必要じゃないかなというふうに思いました。
  以上です。

【三島主査】
  ありがとうございます。
  今、先ほどの資料、最後の方の資料にありましたけども、マテリアルズインフォマティクスが常行先生の方で進んでいるというふうに思いますが、何か今の点でコメントを頂ければと思いますが。

【常行委員】
  マテリアルズインフォマティクスは、先ほど御紹介ありましたさきがけが動くのと、それは私が研究統括するのと、それから、NIMSの方も、はい、イノベーションハブというのはまた御紹介、いずれあると思いますけども。
  それで、ちょっと手探りしながら進んでいるところですが、AIに関して言うと、AI、私もこれに関しては素人なんですけど、AIの技術としては要素技術としてはその中で開発されてきたものがインフォマティクスの中で使われる部分はあることはあるので、それをもうちょっと皆さんがイメージされる、橋本先生がイメージされるAIとちょっとどうつなげていくのかというところは、今ちょっと、今、宿題として伺いました。ありがとうございます。

【三島主査】
  分かりました。ありがとうございます。
  それでは、どうぞ。

【長野参事官】
  今ちょうどNIMSのマテリアルズインフォマティクスに関するイノベーションハブの話がちょっと言及されましたので、補足させていただきます。
  JSTのイノベーションハブの事業で、研究開発法人が中心となりながら、産学官のいろんな国で求められる研究開発に対してのハブの機能を果たすといったものについての選定がありました。選定結果は先日発表されましたけども、その中で採択されたのはNIMSの、名称としては「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ」という形ですけれども、それとJAXA、この二つが選定されております。
  このNIMSのハブにつきましては、まさにその物質あるいは材料のそれの探索をしながら、その材料の設計をしながら、社会で求められる物質・材料の開発の加速化をしていきます。そのときには、当然、そのデータをデータドリブンで何らかの形のプラットフォームを用いながら、データと、それから、いろんなアプリケーションと併せたような形でプラットフォームを築きながらやっていくと、基盤としてやっていくということですけれども、その際には、機械学習をはじめとした人工知能も入れていくということで、今、鋭意準備を進めて、立上げに向けて準備を進めているというふうに聞いております。
  また、可能であれば、次回の委員会には、その立ち上がりつつあるところでもう少し詳細にNIMSの方から報告を求めようかと思っております。

【橋本委員】
  いいですか。

【三島主査】
  どうぞ。

【橋本委員】
  そういうことですね。やはりこれはまた、実際の研究開発体制の話と、それから第5期の話なんですけど、研究開発体制のほうについては、私は絶対そこはいろいろな形でしっかり強化しないといけないと思います。しかも、マテリアルの人とインフォマティクスの計算の人だけがやっているのでは駄目なので、それをやらないといけないと思います。
もう一つの第5期の方に書き込むという話は、これは結構キーワードになります。やはりそこの部分に対して、いろんなところで今起きているビッグデータの話、IT化、そういう大きな情報をAIなんかと組み合わせて、それによる相乗効果で急激に進む可能性があるという、何ていうか、そういう息吹を感じているわけですよね、みんな。
  そういうところに日本が非常に強いマテリアルを組み合わせて、そこはたくさんの情報もあるし、それに一つ新しいものを入れて次の段階に行くんだというようなことは第5期としては一つの目玉になるかも分からないですよね。

【三島主査】
  ありがとうございます。

【橋本委員】
  いや、だからといって、私、自信を持って引っ張ると言っていません。単に一委員としてここで材料を出しているだけですけど。

【三島主査】
  いえいえ。そんな、御心配なく。
  それでは、残り時間余りは少ないですが、どうぞ、加藤先生。

【加藤委員】
  今のマテリアルズインフォマティクスにも関係するのかなと思ってお聞きしていたんですけども、きょう、システム化というと何かそういう情報なんかも含めていろんな技術を製品にする、バリュー、社会にバリューを与えるというところで、それがゴールだという話で終わっていて、何かもっと物質の材料の観点から言うと、それを循環させるというようなところが、それはいろんなものを利用していくということとも含めて、社会全体からは循環的な、物質循環の観点があってもいいんじゃないかなと思ったので、そういうところは入っているのでしょうか。
  ナノテク材料の、ナノテクノロジーの中でも、そんな短期の技術ではないかもしれないけれども、自己再生能を持ったようなシステムになる前のエッセンスを、エレメントを作っていくということは重要なんではないかなというのはかねがね思っているんですけど、そういう、それだけに限らず、取りあえずリサイクルという意味、大ざっぱな意味ではなくて、物質循環的なのがナノ材料を扱っている観点からの視点としてあっていいんじゃないかと思いました。

【三島主査】
  その辺、永野フェロー、そういう考え方というのは、前回の委員会で出していただいた資料も材料の研究の俯瞰の絵もきょう付いていますけれども、その中にそういうものって入っております?

【永野フェロー】
  ありがとうございます。当然入っているし、入っていなきゃいけないと思っておりますが、今、加藤先生がおっしゃったのは、その物質循環というのはいわゆる本当にマテリアルフローとしての物質循環という意味と、研究開発が社会に実装されていって、それをまた研究者がそこで何が起きているのかということを見ながら、新しい研究開発、サイエンスとして取り込んでいくという、そういう二つの意味の循環があると思うんですけども、前者を言われたと思ってよろしいですか。

【加藤委員】
  そうですね。多分この長野参事官の方からのきょうの論点とかいうところで、あと、システム化では何かもっと視点かあるかとかいう、そういう課題があったので、そういうところの意味で、社会に言うのにナノ・材料のものはつまり使い捨てではないという、そういう意味の物質循環の観点が入っていいのではないかなと思ったと、そういうことであります。

【永野フェロー】
  それは大変重要でありますし、これは特にこの文科省のナノテクノロジー・材料科学技術委員会で過去10年来議論している元素戦略というもので象徴的に進めてきたものが、これは当然、ここで終わっていいはずがないわけでありまして、やっていかなきゃ。その議論は、小長井先生が座長をされている内閣府のワーキンググループでも継続的にこの議論はされておられますよね。そういう意味では当然入れていかなきゃいけないと。

【栗原委員】
  今の点では、小長井先生は応用物理の総合工学の応物のロードマップを出されたのですが、科学委員会の方のロードマップにはそういう視点がかなり強く出ているものがありますので、また次回のときには紹介させていただければと。

【三島主査】
  そうですね。ではそうしていただければと思います。ありがとうございます。
  ほかに、どうぞ、山本さん。

【山本委員】
  橋本先生がおっしゃった第5期とナノテクを絡め、どう絡めるかというところで、私の意見です。
  取材してきた、化学分野を取材してきた立場としては、きょうのみたいな研究の、何というか、進行を俯瞰した形ですかね。融合だとかシステムとかバックキャストという話に、私自身は面白いなと身を乗り出してしまう面があります。でも、一方で、記者として一般社会にアピールするということを考えると、それよりも、やっぱりビッグデータとかAIとかIoTにナノテクがどう絡んでいるのかということを書きたいと思いますし、そうしないと、伝わりにくいんだなと思います。
  それで、どんな視点に切り口があるのかということを、今、まだ簡単には出てきてないところですけども、その意味で、マテリアルズインフォマティクスのような、ちょっとこれは私もちょっと聞いただけという感じなので、例えばやっぱりこちらの委員会でも少し具体的な話が伺えると、こういうことでビッグデータをナノテクとつなげられる、だったら、こういう、これとAIはどうだろうかみたいに少し広がるのかなというふうに思いました。

【三島主査】
  分かりました。先ほど、長野参事官がおっしゃったように、次回ぐらいに一度、そのマテリアルズインフォマティクスの話をここで伺いたいと思います。
  ほかにありますでしょうか。御手洗委員。

【御手洗委員】
  ちょっと話を戻してしまうかもしれないんですけれども、先ほど加藤先生がおっしゃっていたシステム化、統合化というところで、トップダウンで企業からの要求といったときの企業というのが、例えば素材メーカーさんであったりするのかなとは思って聞いていたんですけれども、もう一つ、最近、その素材を実際に使って、プリントして使っているユーザー、エンドユーザーの方と話をすると、非常に最先端の材料は今までの材料と違う高機能があってすばらしいんだけれども、それで、メンテナンスとかリペアとかを考えたとき、今までの材料だったらリペアができるんですけれども、本当にそういう新しい材料はリペアができるんでしょうかとか、そういうことを考えて素材の設計されているんでしょうかというお話を伺いましたので、そういうことも含めた何かシステム化とか統合化といったような考え方が必要なのかなというふうに思いました。
  以上です。

【三島主査】
  ありがとうございます。
  ほかに御意見ありますでしょうか。もう少し時間かありますので、何なりと。どうぞ、長我部さん。

【長我部委員】
  IoTやAIのナノ材への適用に関して発現させてください。AIの一つの適用の形は、IBMのWatsonのような文献知識を総合化して、人間が読めないぐらいの文献を読んで、その中から必要な知識を抽出する。例えばお医者さんに、ある症候があったときに、どんな病気が疑われるかというのをWatsonがやるといったような使い方から、先ほど参事官からお話が出たように、機械学習等によって膨大なビッグデータの中からモデルを自動的に組み立てて、それで、物理の本質を解明し材料の設計指針を導くというような、いろいろな確かに使い方があると思います。
  既にマテリアルインフォの中にいろいろ取り込まれていると思いますが、材料の研究にIoT的な考え方を生かそうとすると、研究データをどうやって取り込むかというところと解析がセットになっていないとなりません。また、論文やデータを導き足した実験のクオリティなどデータの室に関わる数々の問題が出て参ります。
  また、コンビナトリアル・ケミストリに代表される、一括してデータを取ってしまうというような発想もありえます。例えばこの中でキーワードに出ているような強みである計測はデータの入り口であり、これをIoTのデータ収集にあたるところに繰り込んでビッグデータを蓄積し、AIを使って研究として進めていくような、日本の得意分野を集めた方法論というのはあるんじゃないかなと思いましたし、そこには当然ながら計測だけではなくてシミュレーションが入ってきて、データアシミレーションというか、リアルデータとシミュレーションをあわせて実際の減少を再現しようという動きも気象なんかの分野ではあると思いますので、そのような得意分野を一体的に集めて新しい研究方法をナノにクリエートするというのがあるような気もします。

【三島主査】
  ありがとうございます。
  何か御意見ありましたら。

【常行委員】
  大変重要な御指摘だと思います。それで、ちょっといろいろ問題になっているのは、データベースとか、例えば企業で持っているデータ、膨大なデータをその研究に使えるかというところが結構引っ掛かっていまして、多分、NIMSの方で検討されているはずなんですけど、私が伺った幾つかの会社では、もう絶対出しませんというところもありますし、それはもう企業の命ですとかいうふうに言われまして。それから、あるところは少しずつ出してみます、うまくいきそうだったら次も出します、ただし、それを使った結果はこちらで頂きますという感じですね。非常に仕組みの上で考えなきゃいけないところがたくさんあると思います。

【橋本委員】
  ある意味ではまだまだですからね。

【三島主査】
  ほかに何かありますでしょうか。
  それでは、ないようですので、いろいろ御意見、ありがとうございました。
  最後に、前回の委員会において事務局から説明がありました今年度の研究開発の中間評価についてお話し申し上げます。
  今年度は元素戦略プロジェクト1件の中間評価が予定しております。これにつきまして、次回以降の本委員会において審議することになりますけれども、このやり方としては、それに先立って検討案を作成することになります。その検討案の作成につきましては具体的な検討の進め方について私に御一任をいただくということで進めさせていただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
  それでは、そのようなことで準備をさせていただきます。
  それでは、その他の事務連絡を事務局からお願いいたします。吉元係長、お願いいたします。

【吉元係長】
  事務連絡ですが、第3回、次回、第3回になりますが、8月19日、10時から12時を予定しております。議題については詳細については追って事務局より御連絡させていただきます。
  また、本日の配付資料については封筒にお名前を書いていただければ、後日、事務局から郵送いたします。以上です。

【三島主査】
  それでは、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会、以上で閉会させていただきます。御協力、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

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