第12期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第6回)議事録

1.日時

令和6年6月17日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省会議室(※Web開催)

3.議題

  1. ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について
  2. その他

4.議事録

【高梨主査】  定刻を過ぎましたので、ただいまより第12期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会、第6回を開会いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は、文部科学省会議室及びオンラインでのハイブリッド開催となります。
 それでは、まず事務局より委員の出欠及び本日の会議の流れの説明をお願いいたします。
【柴田補佐】  ありがとうございます。文科省ナノ材担当参事官付の柴田と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、出欠確認を行わせていただきます。本日は、菅野委員、長谷川委員、関谷委員、加藤委員、納富委員、湯浅委員が御欠席と伺っております。また、瀬戸山委員、高村委員、武田委員の3名の先生方がオンラインで御参加されております。それ以外の委員の先生方は現地で御参加いただいている状況です。
 次に、資料の確認に移ります。本日の配付資料は議事次第のとおり、資料1-1、資料1-2、参考資料1、2。また、委員の先生方には机上配付資料を2点、配付しております。
 また、議論の参考に、過去の委員会の資料を委員の皆様に事前にお送りしております。現地出席の方々におかれましては、お手元にはタブレットに格納しておりますので、適宜御参照ください。
 不備や不明点がございましたら、議事の途中でも結構ですので、事務局までお知らせいただきますようお願いいたします。
 次に、会議の進め方に移らせていただきます。本日、オンラインの参加者の方々におかれましては、雑音防止の観点から、御自身の御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただき、またビデオはオンにしていただくようお願いいたします。御発言される際は、議事録作成の関係上、お名前をおっしゃっていただいてから御発言いただきますようお願いいたします。
 次に、会議の流れについてご説明いたします。本日の議題は「ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について」です。初めに全体構成について御説明した後に、前回御議論いただいた(1)DXと(2)振興領域の修正箇所について、次に(3)研究力と人材育成の内容について、順に御意見を頂戴し、最後に推進方策全体についての総合討議を予定しております。
 事務局からの説明は以上です。
【高梨主査】  ありがとうございます。それでは、議題(1)の「ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について」に入らせていただきます。
 まずは全体の構成の説明と、続いて(1)のデータ駆動型研究開発の促進、それから(2)のマテリアル分野において今後振興すべき領域につきまして、前回いただいた御意見を踏まえた修正内容の御説明をお願いいたします。
 事務局からの御説明の後、(1)(2)について皆さんの御意見を頂戴したいと思います。
 それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
【柴田補佐】  ありがとうございます。今から御説明させていただく内容の参考資料といたしましては、まず資料1-1、それから参考資料2、それから、委員の先生方におかれましては、机上資料といたしまして資料1-1の前回の会議からの見え消しのバージョンを準備しておりますので、そちらを御覧いただけますと幸いです。
 それでは、まず、資料の構成について説明いたします。資料1-1を御覧ください。
 まず推進方策ですが、目次といたしまして、1ページ目に「はじめに」、また、2ポツに具体的に取り組むべき事項ごとの柱といたしまして(1)(2)(3)、また最後に、全体の具体的な取組についてまとめをする、3ポツの「まとめ」を構成の柱としています。
 1ページめくっていただきまして、1ポツに「はじめに」。これまでこちらのほう記載がございませんでしたが、今回、全体の構成といったことで、「はじめに」の部分を追記しております。
 赤い記載になっておりますのは、新しく記載が入った箇所です。
 また資料をめくっていただきまして、3ページに四角囲みがございますけれども、こちらはもともと3月におまとめいただきました論点と検討の方向性における記載内容を、議論の助けにしていただくために今は残しておりますけれども、最終的な推進方策としてまとめる際には、この四角囲みの部分は削除する予定です。
 この後、私のほうから(1)(2)について御説明させていただいた後に、(3)について一旦時間を分けて御説明させていただく予定です。最後に20ページ、机上資料のほうですと21、22ページになりますが、3ポツの「まとめ」というところについて、こちらは(1)から(3)の具体的な取組に書かれた内容を最終的にまとめて抽出して書くところです。、今回はまだ議論の途中ということで記載しておりませんでしたので、今回の御議論をまとめた上で、最後に記載させていただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、1.「はじめに」及び、(1)(2)の記載について、御紹介させていただきます。
 まず、「はじめに」のところですが、まず、これまでの推進方策の議論で、マテリアルが置かれている現状や、特にこれまでのマテリアル革新力強化戦略が策定されて以降の変化、我が国がその強みを有しているところなど、そのような箇所を中心に記載をしてはどうかということと、あとは、全体的な流れを分かりやすく記載するべきではないかという御意見等々ございましたので、そちらの内容について記載しております。
 初めにマテリアルの重要性を含みつつ、マテリアルの他の分野の中でも横断的な基盤であるというところをしっかり位置づけながら、現在の我が国の状況について、1ページ目に記載しております。
 また、マテリアル革新力強化戦略を受けた動きを少し補足した後、昨今のAI技術の進展等々、技術的な進展についても少し触れた形で記載しております。こちらが「はじめに」の構成になっております。
 続きまして3ページ以降、(1)データ駆動型研究開発の促進(マテリアルDXプラットフォームの推進)ということで、委員の先生方のお手元にあります机上資料では、赤字になっているところが前回からの修正点です。参考資料2、横書きの資料のほうに、前回の御指摘事項がございますので、そちらも参考いただきながら御覧ください。
 まず、4ページ目ですが、DXの意義について少し追記をしております。
 次に5ページ目に移りますが、5ページ目の下段以降、海外動向について記載をしております。こちらが6ページの中ほどまで続いております。
 7ページを御覧ください。こちらの修正ですが、中ほどに情報分野等の材料分野以外の研究者の参画について追記しているとともに、マテリアルDXプラットフォームの推進体制について追記しております。
 また、8ページの中ほどですが、セキュリティーの確保や、データ駆動型研究の手法導入に当たっての人材育成、セミナーやシンポジウムにとどまらないということで、インセンティブのところを少し追記した形にしております。
 次に9ページについてですがデータ駆動型研究手法の進化が途上であることに鑑み、引き続き具体的な検討を進める必要があるということで、今記載されていることだけではなく、技術の進展が早いため、そちらについても注視しながら進めていくということで、語尾を追記しているところです。
 (1)についての修正は以上です。
 次に(2)マテリアル分野において今後振興すべき領域についてです。
 こちらについて、まず、もともと経済安全保障の取組と内容について少し記載しておりますが、それに加えて、地球温暖化などの社会課題について、冒頭、追記をしています。
 また、DXの手法についてですが、こちらが単なる実験の効率化というところだけにとどまらず、高性能、あるいは低消費電力や、まさに省エネにもつながるというところを、10ページの下段のほうに追記しております。
 次に11ページ目ですが、上段部分につきましては、諸外国の政策動向について追求をしています。
 また、11ページの下段では、戦略的な自立性あるいは不可欠性についても追記をしています。
 次に12ページ目では、これまで我が国で進められてきた元素戦略の取組について、少し追記しております。
 次に13ページに移りますが、中ほどにございます、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーだけではなくて、ネイチャーポジティブ等、昨今の問題意識についても追記しております。
 それから、こちらはちょっと修正が多いため要約して御説明させていただきます。15ページ目冒頭では、自動・自律実験について、少し状況を追記しております。こちらは、もともと現状認識のところで各国の状況等を追記しておりますが、そちらを受けた内容を少し追記しているところです。
【宅間参事官】  今のところは14ページです。会議資料上では14ページで、お手元の見え消し版で15ページのところです。
【柴田補佐】  ありがとうございます。
 具体的な取組の内容に移りますが、会議資料では15ページ、お手元の見え消し版では16ページになりますが、前回の会議で「模倣困難」という言葉の使い方のところで、先生方から様々御議論いただきましたが、そちらについて見直しをしておるところでございますので、こちらについてもぜひ御意見いただければと思います。
 それから、会議資料では15ページの終わりから16ページの頭にかけて、また、見え消し版の資料のほうでは17ページになりますが、社会実装の加速に向けた取組ということで、プロセスサイエンスを含む形で全体の構成をしているところです。
 ここまでが(1)(2)の修正、また「はじめに」の構成についての御説明になります。
 以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【高梨主査】  ありがとうございました。
 それでは、御説明のあった内容について審議したいと思います。御意見、御質問がありましたら、挙手をお願いいたします。また、オンラインの方々におかれましては、挙手ボタンをお願いしております。
 なお、他の委員の発言中に補足等がございましたら、御自身のタイミングで構いませんので、適宜マイクをオンにして御発言ください。それでは、どなたからでも、何か御意見、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。
 どうぞ、折茂委員。
【折茂委員】  折茂でございます。「はじめに」のところの出だしは、すごく心強く、力強くなったなと思っています。すごく、「これこれの源泉であると言える」というところとかも含めて、非常にこの分野を、ある意味で研究者をエンカレッジできる文面だと本当に思います。非常に納得感がある文章だと思います。まずこれをコメントさせていただきたいと思いました。
 それで、「例えば」のところなのですけど、日本の強みとして例を出していただけるようでしたら、例えば電池とか燃料電池という言葉も入れた方がよいのでと思いました。
 申し上げたいのは、この「はじめに」の第1パラグラフは非常に力強い文面かなと思いました。
 すみません、以上です。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。燃料電池を入れるとすると、半導体とかそこら辺のところで検討ということですか。
【折茂委員】  そうですね、「例えば」のところで、AI、バイオと書いてあります。例えばエネルギー分野、電池とか、そういった言葉はどこかに入ってもいいのではと思いました。
【高梨主査】  分かりました。検討ですね。
 ほかにいかがでしょう。オンラインの方でも。
 どうぞ、上杉委員。
【上杉委員】  京大の上杉です。全体を短く言えば、基礎研究は重要だけども実用化も重要だということだと思います。僕が前から申し上げているのは、それをつなげるような書き方もあると思うのです。
 スタートアップを早い段階でつくれば、基礎研究に集中できます。だからスタートアップをつくるというのは、「実用化」という書き方だけじゃなくて、「基礎研究を促進させる」という様な書き方もできると思います。
 そのようであれば、何か2つの矛盾することを記載するのではなく、1つの方向性を記載しているのではないかと思います。
 以上です。また記載の仕方を工夫されたら良いのではないかと思います。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 今のご意見によろしいですか。どのように工夫するのかが難しい課題だと思います。
 先生はこれまでもスタートアップのことをかなり強調されておっしゃっていたが、この「はじめに」のところで、スタートアップをうまく入れて、基礎研究と社会実装とが……どのように言えばよいのだろう。
【上杉委員】  多分、皆さん感覚的にお分かりだと思うのですが、アメリカは基礎研究が強い一方で、応用研究もできています。それはなぜかというと、早い段階にスタートアップに持っていっているからだと僕は思っています。
 これはすごく大切な点だと思うのです。だからこそ、このスタートアップのところに記載されても良いと思うし、基礎研究のところにスタートアップについて記載されても良いし、スタートアップのところに基礎研究について記載しても、どちらでもよろしいのではないかと思います。
【高梨主査】  分かりました。そのような視点で、何か文書を加えるということですね。
 具体的に今すぐどこにこのような文章を記載するか考えるということではないが、確かに重要な御指摘だと思いますので、うまく文章を考えることができればよいと思いますが、いかがでしょうか、事務局。
【宅間参事官】  おっしゃるとおり、スタートアップについて記載はあるのですけれども、基礎研究に集中できるという観点でも重要だという視点が少し抜け落ちているかなというのは理解できました。
 どこにそういった趣旨を追記するかというのは、また主査とも御相談させていただいて、検討できればと思います。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、オンラインで瀬戸山委員より手が挙がっていますので、瀬戸山委員、どうぞ。
【瀬戸山委員】  今さらなんですけど、これ、誰に対する文書でしたっけ。という観点で疑問があって、これ、内容そのものは簡単に読むことができると思いますが、読み手について考えた時に、もう少し何か記載の仕方に工夫があって良いのではないかと思います。
 専門家が見たら、「ああそうだな」って読めると思いますが、それでいいのかなという疑問が残ります。
 先ほど、例えば電池の話とかがありましたが、そのようなトピックスを入れるとか、何かそのような工夫があるほうが、多分一般の人とかは読みやすいのではないかという印象を受けました。
 以上です。
【高梨主査】  事務局どうぞ。
【柴田補佐】  文科省事務局でございます。こちらの文書、誰向けにということですが、将来的に、まずは今後の概算要求に向けてということと、それから、少し先のことでございますが、第7期の基本計画に向けて……。
【宅間参事官】  委員の御質問にまずお答えすると、これはあくまでも審議会における御議論になりますので、基本的には行政機関の長に対する有識者の御意見をまとめていただくという位置づけのものになると思っています。
 なので、誰に対して読ませるかというと、先生方から文部科学省に対しての御提言をいただくという形になると思っておりますが、それを我々が受け取った後の使い道としては、今、柴田が言いかけておりました、例えば来年度、再来年度以降の予算要求でありますとか、第7期科学技術・イノベーション計画等、これから長期の政策の議論も政府の中で予定されておりますので、そういったところに我々として考えを示すための指針にさせていただくといったような使い方になると思っております。
【高梨主査】  ありがとうございました。
【瀬戸山委員】  それだったらそれでいいと思いますが、やはり、簡単に読め過ぎていると思うので、何かメリハリがあったほうがいいような気はします。
【宅間参事官】  ありがとうございます。位置づけとしては先ほど御説明したとおりであるものの、公開資料になりますので、一般の国民の皆様にも分かりやすいような内容にしていただくというところは、重要な視点だと思っております。
【高梨主査】  どうも。概算要求とかそういうところに使われるということになると、財務省や場合によっては政治家の方になるのでしょうか。あと、もちろん文部科学大臣はそうなのだろうけど。
 そういう方々も、読んで何か訴えられるものがあるようなものにしたいということですか。
【宅間参事官】  そうですね、はい。
【高梨主査】  そういう意味では、確かに瀬戸山委員のおっしゃるような、何かもう少し事例のようなものがあると、より分かりやすいかもしれません。どうもありがとうございます。
 どうぞ、堅達委員。
【堅達委員】  前回申し上げて、ネイチャーポジティブとかいう言葉も入っていたらどうかということで、たくさん入れていただいてありがとうございます。
 入っていることはとてもうれしいのですが、逆に4ページとか、見え消し版でも6行ぐらい追加してあるところに、「我が国が今後マテリアル分野での国際競争力を維持・強化するために必須であり、ネイチャーポジティブやウエルビーイング等に資する」というふうに書いてあるのは、全部書く必要があるかは別として、カーボンニュートラルとかサーキュラーエコノミーの記載がなく、ネイチャーポジティブとウエルビーイングだけ書いてあるのはなぜなのだろうとか、この2つに意味がつき過ぎてしまうと思うので、くどくなってしまうかもしれないが、ほかの要素もバランスよく記載しておいたほうがいいのであれば、最低でもカーボンニュートラルなどは書いておいたほうが良いかなと思います。
 ほかにたくさん書いてあるので、整理の問題になると思いますが、ここだけ書くと何か革新的マテリアル分野とネイチャーポジティブだけに、狭く取られてしまうという書きぶりの問題として申し上げておきたいというのが1点と、今お話を伺って、これは誰のために、何のために出すのかといったときに、実際本当にナノテクノロジーとか材料科学技術の分野で、ちゃんと世界に伍して戦っていける戦略をこれからつくれるのかといったときに、ああしたい、こうしたいということももちろん大事ですが、私も一般的な文系のメディアの立場から言いますと、この間国立大学のトップの方が、もうお金がなくて大変なんですと言って、涙ながらに限界ですと訴えているような、そういう現状ですばらしい研究なんかできるわけがないわけです。
 そこの危機感みたいな、ちゃんとそういうところは、しっかり国としても、ますます重要になってくるこの分野において、基礎的な研究をしっかり続けていくための土台が揺らぎかねない状況になっているということの危機感は、もう少し強く訴えておくべきではないかと、個人的に思います。
 為替の問題や、原材料費の高騰、人件費の高騰などで、涙ぐましい、どうしようもない状況があるのは漏れ伝わってくる状況ですので、そのようなことで日本の科学であり、このナノテク材料科学分野が世界と戦っていけるはずもないので、きちんとそこは、我々からの意見ということなのであれば、むしろしっかり記載しておくべきではないかなと思いました。
 以上です。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 重要な御指摘と思いますが、事務局から、いかがですか。
【宅間参事官】  御指摘ありがとうございます。もう少し先生方の御意見として、そういったところを追記するべきといったところで、また御意見をいろいろいただければと思います。またちょっと案文を考えてみたいと思います。
【高梨主査】  確かにおっしゃるとおり、少し危機感がにじみ出るような感じが出るといいのですけど。そこら辺がね、非常にうまくまとまってしまっていて、ちょっと、確かにそういう工夫ができればいいと思います。
 どうしようかな、オンラインで先に手を挙げていらっしゃる方があるので。
 じゃあ高村委員、オンラインのほうで、どうぞ。
【高村委員】  高村です。私が気になったのは、前の委員の方のお話にもあったかもしれませんが、例えば元素戦略のところで「多くの興味深い基礎的な成果が創出された」とだけ書いてあるところです。もっと具体的に書いたほうがいいのではないかと思いました。
 あと、基礎的な成果が得られた後、社会実装されるまでに、10年単位でかなり時間がかかると思うのですが、そこをどうするのかという話もなく、元素戦略のコンセプト定着に向けた今後のサポート体制の懸念が示されている、みたいなことが書いてあります。プロジェクトで得られたすばらしい材料を、後どうやって時間をかけて社会実装しいくのか、とか、そういった展望なく、このプロジェクトはこのプロジェクトでもう終わってしまって、懸念けが示されている、という感じに書かれてしまっているのが、ちょっと残念です。
 こういった事例に関しては、後のほうでも、研究成果として得られた優れた材料が必ずしも社会実装されるわけではないとか、他国のほうが先に社会実装してしまった、などと書かれていますが、そういった案件に関して、難しいのかもしれませんが、もっと具体例を挙げていただけるとよろしいのではないかと思いました。
 社会実装されるまでにすごく時間がかかると思うので、そこの部分をどうサポートするのかということに関しても、先ほどのスタートアップにもっと投資するという話も関連するの、書いていただけるとよろしいのではないかと。
 企業の研究成果では、社会実装されるまでには何十年という時間をかけているケースが多くあると思うので、10年限りの元素戦略みたいなプロジェクトで社会実装まで行く例は大変珍しいのではないかと思います。逆に、そういう例があったら、強調しておいたほうがいいと思うのですが、いかがでしょうか。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおりだと思いますが、事務局、いかがでしょう。どうぞ。
【柴田補佐】  ありがとうございます。検討させていただきます。
【高梨主査】  確かに、そうですね、特に成功したプロジェクトに対して、本当に基礎から社会実装まで、具体的な例がどうだったのかということ。
 前にも具体例の話はありましたけど、全体的に確かにもう少し具体例があると、より説得力のある文章になるかなというふうに思います。ありがとうございます。
 それでは平田委員、すみません、お待たせしました。
【平田委員】  トヨタ自動車、平田です。すごく重要なテーマ、これを、先ほどもありましたけど、誰に向けてのメッセージかってすごく大事だと思っています。
 書きぶりを見て、私の感覚が皆さんとずれているだけかもしれませんが、まだまだ技術力があって、国際競争力があるのだというふうに書いているように、何となく感じました。
 でも、本当にそうなのかというと、もう現実問題、負けていると認識していますし、1月にもお話ししましたが、研究開発はまだ私たち、日本でやっていますけど、別に、来年からもう日本はやめてアメリカでやると言っても、何も驚かないです。
 そういった現実を、本当に企業が持っている危機感を、先生方であるとか、いわゆる官僚の方々であるとか、どれくらい認識されているかというところがちゃんと伝わっているかなというのが、ちょっと疑問なところがあって、負けているならもう負けているというのを認めた上で、じゃあどうやって勝つのだという話をしたほうがいいんじゃないかなというふうに感じました。
 ただ、あくまでもこれは一企業の一部署の人間が言っている話ですので、全体的にそうかということは分かりませんが、何となく、少なくとも私が持っている危機感と、書きぶりが随分違うかなというように思いました。
 すみません、感想みたいになってしまいました。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 どうぞ、吉江委員。
【吉江委員】  東京大学の吉江です。先ほどから出ている危機感のところですね、少し言葉を換えて、私が思っていることをお話しさせていただくと、この、今出来上がっている文章というのは、例えば具体的にいうとさきがけ、CREST、創発、Eratoとだんだん上っていくようなものを使って、すごくとがった技術を開発する制度としてすごくよくできているなと、そういうのを目指すところとして非常によくできているなというふうに感じているんです。
 一方で、とがった技術というのは、たとえてみるならスカイツリーみたいな形で建っているようなイメージがあって、それって実は平らなところから急に建つというのはほとんどなくて、やっぱり裾野が必要だと思うんです。
 その裾野というのが、多分この先に出てくるところの人材、(3)のところには人材育成というようなところで出てくると思うのですが、恐らくその人材育成のところの危機感のところが、あまり具体性を持って書かれていないのではないかというような気がいたします。
 前のほうの「はじめに」の中には、論文数の国際シェアの低下とか学会員数の減少とか、ごく少数のトップのところがすごく頑張っても変えられないような、もうちょっと平均値を上げないとどうしようもないようなことが書かれていると思うのですが、その平均値を底上げするような策が少し弱まっている。
 先ほど出てきたように、大学の運営費がどんどんなくなっていて、大学で黙っているだけでは回ってくる研究費がない、それ以上にもう運営が回らないというような状況になってきていて、別に何もしない人にたくさんお金を配ってくださいというようなことを今の状況の中で言いたいつもりはないのですが、それにしても最低ラインのいろんな、時間も含め、研究ができる環境も含めというものが、必要最低ラインを割ってきているんじゃないかというのが、少し危機感としてあります。
 その辺をちょっと考えて、どういう状況かというのを、私ども大学人がそう言ってもあれですので、客観的な目で見ていただいて評価したものを書いていただけるといいかなと思います。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 今の平田委員、吉江委員、危機感という問題ですけど、関連して、どなたかございますか。
 どうぞ、中山さん。
【中山委員】  中山でございます。ありがとうございます。今の吉江委員が言われたことにちょっと近いかもしれませんが、戦略的自律性とか不可欠性など、前回発言したので記載いただいている部分もあるかと思います。ここで、何か施策を打とうとすると、ついつい狭く、シャープになりがちなのが通常ではないかと思います。施策立案って、結構そういう面があるので。しかし、絞らずに広く考える視点も重要です。
 負けているという意味では、情報分野などはかなり負けが込んできていて、ライフサイエンスも、なかなか予算規模でも海外には勝てず、いろいろな指標を見ても負けが込んできています。日本としては相当つらい状況になってきており、それはエネルギーとかの面でも同様です。
 材料の面でもそのような面はあるかもしれないですが、材料は、そうはいっても我が国としてここで食べている重要な領域であることは紛れもない事実であり、部材などは世界的にも非常に強く、力強い面もあるからこそ、我が国はやっていけているのではないかと思います。でも、それでも負け込んできているので、しっかりとやらないといけないのではないかと思うところです。
 材料は、情報とかライフサイエンスなどに比べて、まだ点でなく面で戦えているところだと思うので、少し広めの施策を考えたほうがいいかなと思っています。
 基礎研究に近い施策をつくるのでも狭いところに行ってしまいがちなところを、そうではなく、広い対応も考えるべきでしょう。サプライチェーン対応とか、そういうのはいいと思います。広く考えられるから。
 元素戦略の施策の時も、代替するものを探しましょう、減量するものを探しましょう、そのためにはしっかりと新学理を考え、基礎的なところもしっかりやりましょうということで始めました。そこからいろいろなものが花開いていきました。例えば、今日も宝野先生がいらっしゃいますけど、広い視点からディスプロシウムがないような磁石の開発にもしっかりと対応できて、それが世界の中で生きているというに結実しているなど、重視すべき事項だと思います。そういう広い視点から施策を立案し、しっかりと推進してほしいと思います。
 吉江委員が言われた裾野の広さとかも大事です。誰にでもお金をまけばいいという話ではないですが、裾野を広く、基礎研究でもある一定のスリットというかクライテリアで戦略を立ててお金を付けて、それらの横断とか融合とか、今でいうDXとか、そういう総合力で成果を上げていくとか、大事にしたいお話と思います。過去のこともしっかりと参考にしながら、狭くならずに、材料全体を我が国として強くして、そこで競争力をより高めて、国として食べていきましょうというような論旨であってほしいし、施策の立案であってもほしいかなと思っています。
 ちょっと観念的なお話をしてしまって恐縮なんですけど、吉江委員に刺激されまして。以上です。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 整理すべき点と思うのは、そういう意味では、もう今、日本は学術とか研究開発全体が危機的な状態だというところもあって、そういう危機感を意識することは重要ですが、また、これはナノテクノロジー材料の答申というかそういうところもあるので、やっぱりそこに落とし込んでおかなければいけなくて。
 「はじめに」のところで、そういう全体的な危機感みたいなものが出てくるような形で、もうちょっと文章は直す必要があるのかなと思いますが、一方で、このナノテクノロジー材料という観点で今度どうか。
 それももちろん危機だということですが、一方で、それはやっぱりかなり日本は強みを持ってきていて、少なくともこれまでの強みというあたりは、きちっとそこはそこで書いて、その強みを生かしていくというか、持続していくというか、そういう観点も必要だと思うので、両方うまくそこら辺をかみ合わせた形で、もう一回全体をブラッシュアップというか、考え直してみるというところですかね。
 ちょっと、うまくまとめられたかどうか分からないんですけど。
 事務局のほうで、どうぞ。
【柴田補佐】  「はじめに」のところで、全般的な危機感、一般的な危機感については、もう少し記載を工夫させていただくことを検討させていただこうと思っておりますし、ちなみに、文科省の中でも、全体的な研究力をどう向上させていくかというところは、別途議論あるところでございますので、そちらとのつなぎで御紹介できるような、入れ込んでいくことができる内容がございましたら、それと併せて紹介させていただく形にしようと思います。
 主査、追加で御質問させていただいてよろしいでしょうか。
【高梨主査】  はい。
【柴田補佐】  平田委員からまさに御説明のあった危機感のところなのですが、そちらの御認識について、ぜひほかの委員の先生方の感覚といいますか、御意見もお伺いしたく思っておりまして、それによって、日本として、我が国として今後、何で手を打っていくべきなのかという方向性にも関わってくるところかと思うのですが、ぜひ、平田委員にいただいた御意見に対する、ほかの先生方の感触も伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
【高梨主査】  ぜひそれは伺いたいと思います。
 瀬戸山委員、どうぞ。
【瀬戸山委員】  私も平田さんと同じような意見なのですけども。基本的に私、今の日本の状況を説明するときに、相対的な地盤沈下だと思っています。だから、自分たちでは少し上に上がっているんだけども、世界の中で見たらやっぱり相当沈んじゃっている。経済もそうですけども、科学技術なんかでも完全に負けています。
 それはだんだん、自分たちは先に進んでいるんだけども、世界のスピードに対して負けているということで、それがもうナノテク分野でも表れてきているから、だから世界に対してどうやって発信するかというような手法を入れていかないと、自分たちでこの分野は強いと言ってみても、多分答えにならないと思いますよ。私の意見です。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょう。
 じゃあ、宝野委員からどうぞ。
【宝野委員】  平田委員の御意見、非常に興味深いんですけど、日本の企業が研究開発を日本でやめてアメリカに持っていっても全く不思議ではないという話ですが、じゃあ、日本に何が欠けているのかということをお尋ねしたいんです。
 何が悪いのかということに基づいて、じゃあこれから何をすればいいのかという議論が始まると良いと思いますが、いかがでしょうか。
【平田委員】  そうですね。長期目線でお話をすると、やはり人材の確保、エンジニア・研究者の確保そのものが難しくなってきている。相対的に人が減ってきているということが、まずは1つ目の切り口かと思います。
 あと併せて、特に我々だと米国とヨーロッパ、ベルギーに研究所を持っていますが、そういうところと比較して、やはりスピード感が――恐らくこれは先生方の研究のスピード感というよりは、様々な手続であるとか事務的なことに関わる、そこに起因していると思いますけれども、スピード感、この2つが大きく負けているところかなと思っております。
 特に、人の件に関しては本当に難しくなってきていると思っていますし、そもそも人が減っているというのもありますので、この辺りをどうやって盛り上げていくかというのはすごく大事な話かと思います。
【高梨主査】  どうぞ。
【宝野委員】  このペーパーでも後ろのほうに人材育成ということが書かれていますが、それであればこの辺りを強調する、あるいは具体的に何をすればいいかということを書いていくというのが重要だと思います。
 実はNIMSにおいてリスクマネジメントというのをやっておりますが、その中で我々も優秀人材確保というのを最優先リスクと位置付けています。つまり、NIMSが今後も存続していくためには、優秀な人材を確保しないと競争力をなくし将来的に維持できなくなるということを明記しています。
 では、なぜアメリカなら優秀な人材を確保できるかという問いが次に来るわけです。それは、アメリカには優秀な人材が来て、その人たちがアメリカ人になっていく。GAFAの創設者の一部も移民であるということを考えれば、日本は今後、これまで日本人だけで快適だったところを、人材確保のためにもっと開放していかなきゃいけない、優秀な外国人が来たいと思うような国にしなきゃいけない。今、これだけ円が安い状況でやっていくのは極めて難しいけれども、それをやらないと、日本の研究機関あるいは大学にとっても将来がない。
 国際卓越研究大学の構想においても、世界中から人が集まるような仕組みを考えておられるようですし、そこを強調して書いていくということも必要じゃないかというふうに思いました。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。確かに、非常にそこは重要なところだと思います。
【宝野委員】  あとスピード感に関しては、企業の方がそう感じるのは企業のほうにも責任があるかと思います。外国の大学にお金を出すときは契約ベースで大きな金額で出すのですが、日本の大学に出すときというのは、何というか、最終的には人のつながりを持ちたいからというので、少額、本当に桁が違うような額しか出さない。それだとスピード感を持って大学の先生も取り組まない。
 だから、企業と共同研究をやるときは、ちゃんと契約の概念を持ち込んで、いつまでにこれをやる、きちんとデリバラブル(成果物)を明確にして、いつまでにこれをやってくださいねということを大学の先生にも要求されて、大学側もそれを承知の上でやっていくという、もう少し緊張関係を持って産学連携を進めていただければいいんじゃないかなと思います。
 それで、それをやるためには当然人も必要になってきますから、例えばヨーロッパなんかに行くと、プロジェクトをやるというとき、Ph.D.の学生の人件費をまず計上するんですよね。先々週、CNRSに行っていたんですけど、そこで話していると、じゃあプロジェクトをつけてやるよと。何をつけてくれるのかなと思ったら、Ph.D.の学生2人つけるという話なんです。
 ですから、研究は人がやるわけですから、博士課程の大学院生の人件費を含めて検討していく。それを日本の企業も理解して大学に出していくようにしないと駄目だと思います。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。全くごもっともです。
 どうぞ、馬場委員。
【馬場委員】  馬場です。今の議論にも関連して、見え消し版の5ページ、6ページなんですが、国際的な動向を詳細に調べていただきましてありがとうございます。非常によく理解できました。
 これらの国際的な動向と、今、ナノ材室が打っているマテリアルDXプラットフォームで比較したときの強みと弱みを少し分析いただいて、弱いところがあるのであれば、それを課題に、まず今後の取組の方策の中に少し入れていただくのがいいのかなと思っています。
 ここに記載していただいているものはデータ駆動型の研究開発ですので、例えば米国にもヨーロッパにも、装置共用事業は同様にございましたので、その辺との関係とか、それとマテリアルDXプラットフォームとのを強み弱みというところを少し分析していただけると、大変ありがたいなと思います。これは、その後のマテリアル全般の(2)に関しても同様だと思うんですけども。
 それともう1つは、国際連携の視点はどうしますか。共通の課題は結構たくさんあると思うんです。アメリカ、ヨーロッパ、我が国と。その辺の連携をどういうふうにして、我が国の強みをさらに伸ばしていくかというところも、少しこの推進方策の中に盛り込めると、もう少し展望が開けてくるのかなというふうに考えています。
 量子分野でも、かなり国際連携を強く言っていますので、同志国との連携という観点から先ほどの我々の強み弱みを分析した上で、国際連携、どこを中心に連携していくかというところを、もう少し今後の取組として出していただけると、より分かりやすいのかなというふうに感じました。
 あとは、先ほど平田委員、宝野先生も言われたように、人材の問題はこの後議論されるのだと思いますが、日本の若手研究者の国際的な視認性がやっぱり落ちているというのが、JSTなどの分析でも明確なので、この施策の中でそういうものもちゃんと向上できるような形の取組ができると、少なくともこのナノテク材料分野で、より我が国のプレゼンスが高まると思います。
 以上でございます。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 いろいろ御議論ありがとうございます。ほかに。オンラインはございますかね。ないですか。あと対面の方々では。
 どうぞ、萬委員。
【萬委員】  やはり今、ナノテク材料領域は、総体的にはまだ競争力があるという立場を私は取りたいと思います。ほかの情報とか、もっと広い理学工学分野を見渡しますと、もっと地盤沈下が起きていて、かなり競争力が落ちているなと実感するところもあります。そのような領域にナノテク材料の出口となるべきところも含まれていて、結局国内でなかなか盛り上がりにくいのかというようなことも背景にあるのではないかと感じます。
 ですから、地盤沈下の傾向にあるという危機感を持ちつつも、まだまだ、どう修復していくかというようなことを考えるべきにあるんじゃないかなと思います。
 やはり人材がいないというのは、私は今量子の分野を中心でやっていますが、ここはもう本当にいなくて、まだ材料のほうがいるんじゃないかなと思います。
 とはいえ放っておくと材料系もそのようになってくるのではないかという思いはあります。世界中で非常に戦略的に動きがありますので、人の奪い合いになっている中で、何かしらのインセンティブ、何でもいいんですけども、施策を打たないと確保は難しいと思います。
 国際連携に関しても、国際連携をせねばというところは当然イエスなんですけれど、必ずしも本当にその現場の研究者や先生がやりたい連携をやっているかどうかというところが、少々ギャップ感があるような気がしております。国際連携をやるべしで、何をやるかというところで意外とつまづいていないかなというのが、これまで私の周辺で活動していて感じるところです。
 以上です。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 貴重な御意見を多くいただきまして、どうもありがとうございます。
 これ、人材のところはこれからまた議論をさせていただきたいと思います。
 あとスピード感については、企業と大学との関係あたりは、そこら辺はここで入れられるかどうかというのは、検討させていただければというふうに思いますが。
 あと、今日、通して幾つか意見が出てきた中では、やはり具体例をもう少し入れるとかそういったところはありますので、そのような箇所も検討して、この文章のブラッシュアップをさせていただければと思いますが、ちょっと私――もう時間が大分来ているのであれなんですけど、私は、もし御意見があったらお聞きしたいと思ったのは、これ、事務局が結局よく入れてくれたのは、自律・自動実験というのがかなり強調してここに入っていて、それで、私も不勉強であまりよく存じ上げなかったんですが、これはかなりお金が――カナダかな、海外で相当巨額のプロジェクトが走っていて、日本はやっぱりこういうのも出遅れちゃうかなというところがあるんだけど、それは、もちろん大学側がどんどんそういうのは提案していくべきだとか、あるいは国から逆にトップダウン的に、こういうのをどんとお金を出してやっていく指導をすべきだとか、いろいろ考え方はあると思いますが、そこら辺は何か御意見ある方いらっしゃいますか。
 これもやっぱり非常にこれから重要なところだと思いますが、このまま進んでいくと、完全に遅れてしまっているなという感じが、しているんですけど。
 どうぞ。
【平田委員】  平田です。自動・自律実験はそうですね、おっしゃったようにカナダ・トロント大学が二百数十億円であるとか、あとイギリスも相当金を出していますし、やっぱり数百億円という規模でぼんとお金を出さないと、そもそもロボット自体にお金がかかりますし、それぐらい思い切って出すということをしないとなかなか進まないんじゃないかなというふうに思います、あと、併せて非常に重要なのが、自動・自律実験はマテリアルの人だけではできないので、当然ロボティクスの専門家であるとか、あとは我々、生産技術と言いますけれどもシステムインテグレーションの話であるとか、あとはAI分野の方、データサイエンス分野の方、こういった方々を含めて、やっぱり専門分野横断的なチームをつくってやらないとできないと思います。
 そういうところも、割と諸外国に比べると、日本人のほうが控え目なのかどうか分かりませんが、進んでいない気がします。
【高梨主査】  苦手なところですよね、恐らく日本の。ありがとうございました。
 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】  伊藤でございます。今、平田委員が言われたことにちょっと付け加えて申し上げますと、確かに海外においていろんな事例が発表されているのですが、あくまで内層の領域というか、過去にデータがあったものを最適化していくとこういうものができるよということを、いかに早く実験するかということをやっているのですが、外層領域に踏み込んだ発見AIまでには至っていないんじゃないかと思うので、日本においては、やはり高精度化というか、データをリアルにしっかりと取れるところが日本の強みだと思うので、そこの部分で外層のところにいかに踏み込んでいけるのかというところには活路があるのではないかというふうに、個人としては考えております。
 あと、先ほどから少し議論されている、学理を私たち企業が機能に昇華させて、それを産業に普及させていくわけなんですけれども、そのイノベーションエコシステムといった中での大学の在り方、そして企業の在り方、あと先ほど上杉先生が言われたようなスタートアップはそれにどういうふうな形で連携してくるのかといったところも、例えばこの自律実験の例を取ったとしても、いろんなエコシステムというのがずっとあるんじゃなかろうかといったところが、今までの通り一遍なエコシステムでないようなものというのをこれからつくっていく必要が、恐らくあるのではないだろうかというふうに思っております。
 以上でございます。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 どうぞ、事務局。
【柴田補佐】  関連して、菅野先生のコメントを。
【高梨主査】  どうぞ。菅野先生が今日は御欠席ですが、コメントをいただいているので、それを事務局から紹介させていただきます。
【柴田補佐】  ありがとうございます。
 今の自動・自律実験の例示のところで、必ずしも1年後、この分野の進展が目覚ましいので、1年後、この例示が画期的だと言えるのかどうかというところがちょっと疑問だというところはいただいていたので。
 事務局としては、とはいえ最新の動きということで、今この例示を挙げさせていただいておりますが、例示としてこれが妥当なのかどうかというところ、ほかにももっとこういう事例を挙げたほうがいいんじゃないかというコメント等ございましたら、ぜひいただければ幸いでございます。
【高梨主査】  これは今ですか。
【柴田補佐】  後でも結構でございます。
【高梨主査】  何か今ございますか。この流れの中で。大分この話題では時間が過ぎてしまって申し訳ないんですけど。
 どうぞ、折茂委員。
【折茂委員】  折茂です。恐らく自動化と自律化は、少し分けて考えたほうがいいのかなと思います。
 今、伊藤委員からお話がありました、恐らくビル丸ごと、もう自動化の研究をしているというのが、中国とかヨーロッパの流れであります。
 一方で、自律化に関しては、まだそこまで行っていないのかなと思っています。そういう意味で、もし先行して日本が投資する、あるいは人材を育成していくということでしたら、自律化を含めた人材育成ということなのかなと思いますので、改めて、自動化と自律化は少し分けて考えたほうがいいのかなという気はします。
【高梨主査】  分かりました。どうも貴重な御意見ありがとうございます。
 よろしいですかね。とりあえず今、ここの議論はここで区切らせていただいて、貴重な御意見をいただきましたので、そこをうまく反映して、また文章を再検討したいと思います。ありがとうございます。
 それで、既に話題が出ていた、今度は人材育成の部分の議論に入りたいと思いますが、(3)研究開発力の強化と人材育成についてということで、こちらのほう、事務局から御説明よろしくお願いします。
【柴田補佐】  ありがとうございます。ページといたしましては、傍聴の方々含め配付している資料といたしましては16ページ、委員の方々に机上配布でお渡ししております資料といたしましては17ページからが、(3)の該当箇所になっております。具体的な現状認識ですとか取組は、17ページまたは18ページを御覧ください。
 既にこれまでの中でも御議論がありましたが、研究者、研究人材、また研究支援人材をどのように確保していくべきか、また、確保するだけではなくて、そういった方々が活躍し、さらにその活躍が目に見えるような形で海外にもプレイアップできていくような形として、どんな取組があるのかというところについて記載しておりますが、どちらかというと、そもそも一般的な人材の確保というところは、全般的な取組の内容になってしまう部分もありますので、なかなか十分な記載になっていないところがあるかもしれません。
 特にマテリアル分野の特殊性といたしまして、文科省で現在取り組んでおりますDXプラットフォームの一環のARIMの取組の事業などを紹介した形の記載がございます。
 また、国際的なプレゼンスの強化につきましては、トップ研究コミュニティーの参画を促し、世界で活躍できる人材を育成するといった内容について記載してございますが、こちら、その全般につきまして、ぜひ御検討いただければ幸いでございます。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 ということですが、いかがでしょうか。この文章を御覧になっていただいて、御意見あるいは御質問等ございましたら挙手をお願いいたします。どなたからでも。
 どうぞ、宝野委員。
【宝野委員】  18ページです。「マテリアル分野の研究開発を志す学生が減少しており」と書いてありますが、これは、大学のマテリアル系の定員自体は変わっていないはずです。それとも定員自体が減っているということでしょうか。
【高梨主査】  マテリアル分野の研究開発……この、学生の減少というところですか。
【宝野委員】  「研究開発を志す学生が減少しており」と。
【柴田補佐】  全体的な流れとして博士課程を志す学生数が減少しておりまして、マテリアル分野においても同様の傾向だというところでございます。
【宝野委員】  だから、博士課程の学生ということですか。
【柴田補佐】  はい。
【高梨主査】  定員ということではなくてということですね。
【宝野委員】  じゃあ、「博士課程の学生」と書いていただいたほうがいいような気がします。学部の学生の定員なんて減っていないですよね。
【高梨主査】  それは変わってないでしょう。いや、私も今大学にいないからはっきりしませんけれど。
【宝野委員】  それとも、志す高校生が減っている、つまり、第1志望じゃなくて第5志望ぐらいで入っているとか、そういうことを意味しておられるのか、あるいは、博士課程に行く学生がいないということなのか、そこを明確に書き分けていただけると分かりやすいと思います。
【高梨主査】  マテリアル分野の研究開発を志すというところには、恐らく事務局としては、もう博士課程、いわゆる研究者になることを志すという意図だったと思うんですけど。
【宝野委員】  でも、今の日本では、修士課程を出て、企業ではどんどん研究開発に携わっているんですから。
【高梨主査】  そこら辺はどうなんでしょう。あまり変わってない。修士で企業に行く学生の数というのは……。
【折茂委員】  学部の状況は、私ちょっと分からないです。
【折茂委員】  博士課程の学生さんが減っているのは確かです。
【高梨主査】  それは間違いない。
【宝野委員】  一般にそういわれてます。それであれば、ここで「博士課程の学生」とはっきり書いていただけるとよろしいかなと。
【宅間参事官】  事務局からすみません。一般論として、研究者を志す学生が減っているといったところで書いてしまったところがあります。
 実は、事務局で確認できる数字では、理学・工学とかの大きいくくりでは、修士課程への進学率、博士課程の進学率というデータがあるんですけれども、理学の中でさらに化学とか材料科学という細かいところまで、私もデータを当たったんですけれども、そこまで細かいデータが当たれませんでした。
 なので、マテリアル分野だけが特に減っているのかというと、そのエビデンスは事務局としては持っていないのですが、ただ、いろいろ先生方と意見交換させていただく中では、例えば材料系でせっかく修士課程まで進んだものの、より給料が良い、例えば情報系に就職してしまった話なども聞きましたので、現場の方々の実感として、化学分野、材料科学分野に人をとどめておけないというのが実感としてあるのかなというのを感じておりました。
 そういったところで、少しふんわりしたエビデンスで書いてしまったところが正直ございました。実態を、もしよろしければ教えていただければ、より現場に即した書き方にしたいと思います。
【高梨主査】  あるいは現状のデータをもう一回見直していただければ、そこら辺はあるのではないかと思うんですよね。
 明らかに、確かに情報とかに学生さんが行ってしまうという話は、もう、それは前からあります。最近も言われていることなのでそれは明らかだと思いますし。
 あと、今、理と工の話がありましたが、私が大学にいたときの記憶だと、理学部は結構博士課程まで行きますよ、日本人も。でも工学系は、博士課程、日本人が非常に減っているというのは顕著な傾向としてあったという記憶はありますけども。
【宝野委員】  同時に、「マテリアル」という定義が広がっていますから。ですから、過去には物理とか化学と言っていたものが、今マテリアルに。「自分はマテリアルです」とおっしゃる方が増えていますので、その辺も。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【永次委員】  東北大学の永次です。研究所ではありますが、学部の状況を見ていると、そんなに進学率が落ちているというのはないと思いますので、皆さん修士課程までは行かれると。私が属しているのは理学部の化学ですが、やはり博士が減っているのはもう工学部と同じで、かなり減っています。特に日本人は、ほとんど行かないと言ったほうがいいかなと思います。
 その現状をどうやって変えるかというのは、もう今、学部というか大学のほうでもかなり色々な努力をして、一番手っ取り早くは、やっぱりドクターコースの学生さんにお金を出すというので、何とか今確保しようとはしていますけど、やはり外国人が多いというのは現状としてあります。
 もう1つ、この中であまり語られていないような気がするのが、教育と研究という観点なのですけど、やはり研究をやるには教育が必要で、教育研究ということで、今さっき、ちょっと言われていた、大学において研究費がすごく減っていて、研究分野によってはもう本当に、4年生、修士に関してもなんですけど、研究ができないような研究室も出てきたりしていて、そうすると、分野に限らず教育を受けられないような大学の研究室というのもあったりして、その辺はかなり、やはり見直さなければならないのではないかというふうに思っています。
 1つ質問なんですけど、この17ページのところ、今いただいているやつで、「研究支援人材の職能制度を導入し」というところが具体的にイメージできなかったのですが、どういうふうなことをイメージされているのかなと。先ほどの話題とは違うんですけど、お聞きしたいと思いました。
 以上です。
【高梨主査】  事務局、どうぞ。見え消し版だと18ページかな。
【堅達委員】  見え消しではない17ページの下から2行目。
【宅間参事官】  見え消しのほうだと20ページのあたりに、優秀な人材のところで書かせていただいています。
【柴田補佐】  主査、よろしいでしょうか。御説明させていただいて。
【高梨主査】  はい、どうぞ。
【柴田補佐】  こちらの職能制度ですが、今、文科省が実施しているARIM事業の中で、技術支援人材の職能制度を導入しておりまして、例えば装置の改善に向けた提言ができる人たちをエキスパートの人材としてランクづけをしたり、そういった様々な能力に合わせた職能制度を導入しているという事例がございまして、そういった取組を広げていくといいますか、ほかのところでも活用していけるというのが一つあるのではないかということで書かせていただいております。
【永次委員】  ありがとうございます。まさにそういう職能制度というのを、逆に言うと大学のほうの、いわゆる研究者として育てていく学生さんに、そういう選択の余地もあるんだよというのを言っていただけるとありがたいなと思います。
 それは実は学生だけではなくて、現在教職員として勤務されている方々にも、そういう情報があると非常にいいかなというふうに思いました。
 以上です。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 オンラインのほうで武田委員から手が挙がっていますが、すみません、武田委員は次にしていただいて、上杉委員、じゃあ関連で、どうぞ。
【上杉委員】  すみません。見え消しの20ページのところです。一つの解決方法として、優秀な外国人の取り込みということが書いてあります。ダイバーシティーを上げるということですよね。
 女性の研究者を増やすというのもダイバーシティーを上げることなので、是非書いていただきたい。いかに材料で女性の研究者が少ないかというのは、吉江先生がよく御存じのはずです。
 例えばアメリカでさえも、外国人の教員と女性の教員を材料からほとんどのぞくと、日本の状態みたいになると思いますよ。なので、女性も含めるのが大切かと思います。
 以上です。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 それでは武田委員、オンラインからどうぞ。
【武田委員】   武田です。人材育成のことで、研究者とか研究支援の技術者のことに100%集中して議論されてきましたが、別の意味で技術系でない研究支援の人材というのも私は非常に重要だと思っています。(2)のほうの議論で、海外と日本はやはり違うし、日本企業が海外の大学を支援したり、共同研究を結ぶ傾向があるという話がございましたが、まさにそうでして、海外の大学は共同研究の話や研究支援の話をするときに、研究者同士が話をしなのです。最初のトリガーは研究者同士のこともあるかも知れませんが、必ずオープンイノベーション推進の専門スタッフが出てきて、彼らが中心的に話をして、自分の大学の研究をいかに発展させるか、いかに企業からの支援を得て実装していくかということを、専門に推進する人材がいます。日本の大学ではそういう人材がかなり不足しているように感じます。日本の大学でもオープンイノベーションを推進する組織というのはあると思いますが、自分たちが率先して推進する立場ではないと思っている場合が多いように思います。
 日本の大学では、最初から最後まで、研究者同士で会話をしてというようなことが多いので、別の意味での研究支援人材、または、そのような組織を形成するという環境を整える話になるのかも知れませんが、そういう間接的な研究推進の人材や組織が求められます。ひいては、やはり研究の発展のため、研究者が研究に集中できる環境が海外と比較して不十分で、競争力が弱くなっているのではないかと思います。
 ベンチャーとスタートアップに関しても同じことが言えて、日本は非常に発信力が弱くて、ベンチャーキャピタルと話をすると、日本のスタートアップには全然魅力を感じなくて、投資が米国に集中してしまう傾向があるかと思います。自分の研究がいかにすばらしいかということを発信することのトレーニングを受けていないことが課題であると思います。そういった点での、間接的な研究支援人材の育成というのも、一つ重要なのではないかと思います。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。大学だと最近、URAの話かなというふうに思いますけど、これ、大学の先生方で何かコメントというか、今のことに関してはいかがですか。
 恐らくURAで、今、制度はできているけど、まだ十分に機能しているとは言えないという状況かなという感じは、確かにします。
 どうぞ。
【折茂委員】  おっしゃるとおりで、URAの方のキャリアパスをもう少ししっかり考えてあげるということがポイントかなと思いました。
 今のところ、やっぱりそういったキャリアパスがまだしっかり出来切っていないので、なかなか、例えば5年とか10年いてくださって、その先、大学にそのままいることができればいいんですけど、その先を考えたときに、少し御苦労されている方が結構多いかなと思いました。コメントです。
【高梨主査】  どうぞ。
【平田委員】  トヨタ、平田です。これ、私のごくごく狭い経験でしかありませんが、私たちとして、今はやっていないんですが、一時期研究公募という形で、お題を決めて日米欧で研究テーマを公募していることをやっていました。
 日本の先生は、ほぼ全て先生お一人で応募されてこられます。一方、アメリカなんかですと、多分コーディネーターがちゃんといて、全然学部横断で、もう何人か、いろんな人のチームで「こういうことをやります」と。要するに、我々が提案したプラスアルファの提案をされてくるので、結果としてアメリカの提案を採用してしまうという形で、どんどんどんどん海外シフトが進んでいったというようにも感じています。
 そこのサポートであるとか全体のコーディネートが、すごくアメリカの大学はしっかりしているように感じています。ヨーロッパもそうですけれど。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。確かにそういうコーディネーターの存在というのは、日本は非常に弱いかなというふうに思います。
 そういう方も当然学位を持って、ある程度研究のこともよく分かっていてということだと思うんですけど、そういう方の育成、武田委員の言葉でいくとそういう方の育成というのも、少しそういう観点も、単にテクニシャンというか技術者ということだけではなくて、そういう方の育成というのも、うまく入れられるといいのかもしれないというふうに思いました。
 何かございますか。
 じゃあ順番に。どうぞ、伊藤委員から。
【伊藤委員】  デンソー、伊藤でございます。マテリアルDXプラットフォームといった中になったときに、どういう人材が必要で、そのためにどの人材を育成していくかという観点でもう少し書かれたらいいのかなというふうに、今お話を聞いていて思った次第なのですが。
 従来でいく、例えば合成屋さんであったり、分析屋さんであったり、CAEをやるような方だったりも当然おられるんですが、マテリアルDXプラットフォームとなってきたときにはソフト人材、情報系の人材とかが必要になってくると思うのですが、その方々を、例えば端的に言えば情報系の専門の方をこの中に入れ込んでくることを考えるのか、あるいは内部でマテリアルをやっていった人たちが、そういうデータサイエンティストになれるように教育をしていくのかというような書き方もあるだろうし、先ほど言われていたようにコーディネートして、大きくこのプラットフォームをプロジェクト化していくというようなところの人材というのも当然必要になってくると思うので、どういう人材を短・中・長期にかけて育成していくのかという切り口にすると、もう少し、より分かりやすくなるのかなという気がいたしました。
 以上でございます。
【高梨主査】  ありがとうございます。どういう人材を育成するかというのを少し整理してということですね。
【伊藤委員】  そうですね。そのほうが分かりやすいのかなと。
【高梨主査】  分かりました。ありがとうございます。
 じゃ順番で、折茂委員、どうぞ。
【折茂委員】  ありがとうございます。今おっしゃっていただいたことの関係と、あと別の話があります。
 今おっしゃっていただいたところでは、恐らくAI技術ですとかデータサイエンスに関係する技術は、半年するともう次の技術になってきますよね。
 ですので、恐らく材料科学者がそっちに入っていくというのは少し難しくて、それは別置きでそういった方を育てて、材料科学者とマッチングを図るというのが……。
【伊藤委員】  コラボレーションしたほうがいいかなというのは、私も思います。
【折茂委員】  そうですね。私も思いました。ありがとうございます。
 もう1点、先ほどの博士課程の人材の話ですが、博士課程へたくさん来ていただいて、ドクターを取っていただいて、その先の就職先を考えたときに、やっぱり大学とか国研だけでは賄い切れないと思います。その辺りはやっぱり、もっともっと産業界でドクターを持った方を受け入れていただくという構造にしていかないと、若い方がなかなか入ってきづらいのかなとは思っています。その辺りはいかがですかね。
【平田委員】  トヨタ、平田です。私自身もドクターを取ってからトヨタに入社していますし、トヨタとしてはドクターの方の採用もしています。
 あとは、来られる方がそれぞれの会社に興味を持ってもらえるかということと、あと、それぞれの会社のカラーがあるので、そこにちゃんとマッチできるかということがすごく大きいかなとは思います。
 ちょっと横道にそれてしまいますが、例えば私が面接官でドクターの採用をしますと、必ず聞くのは、工場実習行けますか、車販売店に行って車売れますか。やっぱり車会社ですので、製品をつくるであるとか売るということを知らないと、いい商品はつくれないでしょうと。
 だからそういう、恐らく会社さんで考え方は違うと思うんですけれども、そこにマッチした人が来てくれるかどうかという、そこがすごく大きいかなとは思います。
【高梨主査】  ちなみに、ドクターを取っていることによって、給料はどのぐらい違うんですか。
【平田委員】  変わらないです。
【高梨主査】  それはやっぱり変わらないんですね。
【平田委員】  同じ年次であれば、学卒でも同じ年齢だったら一緒です。あとはその中で、相対的に仕事ができるかどうかで決まります。
【高梨主査】  今、博士課程に日本人が行かないというのは、会社に行くならば、別に修士で出たって全然問題ないじゃないかとそういうふうにやっぱり学生は考えるのは当然かなという感じがするんですよね。
 どうぞ。
【宝野委員】  それについて、文科省はインセンティブを持たされたって聞きましたけど。
【宅間参事官】  文部科学省では、文部科学大臣の下、博士課程に進む学生を増やすということでプランのようなものを定めていて、例えば産業界の方々には、今御指摘のあったような、博士を取られた学生さんの、積極的に、例えば雇用であるとか、そういったところをお願いするというようなことをしているといったところはございます。
 少しそういったようなところも意識して、見え消し版でいうと20ページのところになりますが、人材育成のあたりには、一番上にありますが、産学官が連携したキャリアパスの形成とか、安定した雇用環境の整備というようなことも、少し書かせていただいたというところがあります。
 あとは、ドクターの学生と企業さんのマッチングといったところでは、ジョブ型のインターンシップというような施策もあって、企業さんとの人事交流というか、そういう経験をすることをもって、よりよいマッチングにつなげるところの取組もしているところではございますが、これも、少し冒頭に御意見のありました研究人材、支援人材とか研究者の育成という話というのは、この分野に限らずすごく共通的な課題で、非常にどこの分野で議論しても必ず問題になるところです。
 おっしゃっていただくことは全てごもっともだなと思って聞いておりますが、現状認識としてそういったことを記載しつつも、その具体的な取組としてこの委員会で御意見をおまとめいただくときには、どうしても、先ほど主査がおまとめいただいたような形で、ナノ材分野の取組に落とし込んで報告書をまとめるといったところが少し悩ましいところでございまして、ただ、御指摘いただくような、この分野だけにとどまらない全体論というものは、非常に重要な視点だと思っております。
 なかなか、そこに個別の分野からアプローチし難いところもどうしてもありまして、具体的な取組のところでは、我々の事業でやっている、例えば先ほどの職能制度の話であったりとか、そういったところにどうしても落とし込んでしまっているところがありますので、ちょっと、先生方からすると物足りない書き方になっているかなというところは自覚してはございます。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 これ、産学官が連携したキャリアパスの形成のあたりは、もう少し踏み込んでもいいのかなと思います。そういう意味では。やっぱり博士課程の学生を増やしたい、これは文科省としてもそうだし日本も必要だと。先ほどの宝野先生の質問でもあったように、やっぱり博士課程の学生なんですね、ここで今……。
【宝野委員】  文科省が必要ではなくて、大学が必要なんです。大学の研究力が落ちているというのは、そこじゃないですか。
【高梨主査】  まあ、日本が必要ということで。さっきの研究開発する人というのは、結局博士課程の学生でしょうというところになってくるので、だからもうちょっと、この「博士課程の学生」というところが具体的に見えるような形で、少し文章を具体化していくということは、してもいいのかなというふうに思っています。
 どうぞ。
【折茂委員】  その博士課程の学生さんは、日本人だけではなくて、やっぱり外国人もイメージしないといけないですね。
【高梨主査】  そうですね。それも非常に重要ですよね。
【宝野委員】  人口が減っているわけですから。
【高梨主査】  海外から選んでいただくということが。日本はね。そういう観点ですよね。
 どうぞ、堅達委員。
【堅達委員】  まさに今のお話で、本来、そもそもの研究の土台だったり、今、全体的に地盤沈下している話を、じゃあ、この審議会でやらないのだったら、みんなそうやってたこつぼのところで、これは全体の話だからうちは関係ないと言って書かずにいたら、ずっと失われた30年みたいになって、私は外部の人間としてすごく危機感を感じているのは、もう多分、農業とか林業も全部、今、日本は駄目になっていっているんですけど、研究人材をちゃんと獲得できない人材育成の観点も、今、分岐点に来ていると。まさに本当に瀬戸際に来ていると思うんですよね。
 それを誰かが変えてくれる、制度を変えてくれるからといって、ナノテクの分野のことだけでもし書いていたら、永遠に、何て言ったらいいのか、じゃあその本丸は誰が決めるのという話なので、まあ、主査の書きぶりにはよるとは思うんですけど、「はじめに」でしっかり書くとか、まとめてのところでしっかりメッセージを出すとかで、やっぱり人材育成は、これは本当に今もう分かれ道に来ている重要な問題なんだというところと、あと、先ほどから話が出ている、やっぱり変革のスピード感だと思うんです。
 ほぼ同じ話、10年前から出ていると思います。こうなっちゃうよ、このままでは、というのが。でも変わらずに今日まで来ている。
 せっかく博士を取っている人がリスペクトされないし、それなりの処遇も受けないというような問題もずっと続いているし、ロジスティック、研究するのに環境が整っていない。外国の研究者に比べたら余計な雑用がいっぱい多くて、なかなか研究に集中できないということだって、ずっと10年以上前から言われていて、あまり改善がなされないどころか、為替の問題とかでどんどん、より悪い方向に行っているというのは、一回やっぱり立ち止まって、危機感をしっかり記載するということはやらなきゃいけないし、だんだん本当に賃金が上がっていないから日本が魅力的な国でなくなって――そんなことまでこの報告書で書けとは言いませんけれども――あと、教育全体にお金が入らないから、みんなほかの、大学を無償化でやっている国と戦わなきゃいけないとか、奨学金の問題一つ取っても戦わなきゃいけない。それも別にナノテクのあれに全部書けとは申しませんが、何か、そこはしっかり危機感は、やっぱり人材育成については書いたほうがいいと、強く、今もお話を伺っていて。
 その中で、じゃあロジスティックの整備をナノテクの分野で独特でやれることは具体的に何かないのか。今のキャリアパスとか職能の問題、それは書けることがあったらぜひ手厚く書いていただきたいと思いますし、私もよく、別の業界かもしれませんが、沖縄のOISTさんとかがすごく成果を出しているというときに、じゃあ運用の仕方、限られた条件ではあっても、何か新しい運用の仕方とか、魅力的に学生が感じられる仕組みを構築することで、このナノテクノロジーとか材料科学の分野にもう少し、もっとチャーミングに、学生が参入してくれたり、やりやすくなるということが、プロじゃないので分からないのですが、そういう運用面での人材育成のアイデアみたいなものも何か盛り込めたらいいのではないかなと、2点感じましたので、部外からの意見で恐縮ですが、本当に今ピンチなんじゃないかなと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 ちなみに、事務局のほうから補足してもらえるのかもしれないが、全体からいうと、この委員会の上位に研究計画評価分科会というのがあって、研究計画評価分科会というのがあって、それは私も出るんですが、そこは一応、分野横断的というか、さらにその上位が科学技術・学術審議会になって、全体的なことからいうと、全ての分野に共通することは、そこから本当は指令というか――指令というべきなのかな、があるべきところでしょうね。
 
 文科省の方にもやっぱり、最終的には科学技術・学術審議会のほうできちっとやっていただければというふうに思います。ありがとうございます。
【宅間参事官】  チャットで、瀬戸山先生から御意見があります。もう御退出されてしまったところなんですけれども、読み上げてよろしいですか。
【高梨主査】  どうぞ。
【宅間参事官】  「学生の意識も変える必要があると思います。内向きで新技術に飛び込む勇気がない人が多いです。個人的には、スタートアップにいきなり入ってみたいという若者が訪ねてきて、『ほう』と思いました」というチャットが入っておりました。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 どうぞ、吉江委員。
【吉江委員】  すみません、ちょっとそもそも論的になるので、もし、あまり適切でなければ聞かなくてもいいんですけども、先ほど、学部の状況みたいなお話が最初のほうにありまして、私ども東京大学、御承知のとおり2年生の後半から学科に所属するというところで、いわゆる新振りというので学科所属で、学生も、それから学科側も熾烈な戦いをある意味するのですが、その様子を、私はもちろん研究所に所属しているので、直接的というよりは間接的にちょっと一歩引いた感じで見ている感じでいくと、材料系、マテリアル系、特に私がベースにしている化学系は、決して楽観視できるような状況ではないと思います。学生の志望という意味では。恐らく、学科を志望する高校生もそれに近い、別に悲観するほどではないにしても、楽観できるような状況じゃないような印象を受けております。
 それでもう1つ、学生もしくは高校生のマインドとかを見ていると、やっぱり高校って今、教科別、化学と物理というふうに、完全にその分野の、しかも化学なら化学らしいことしか、物理は物理らしいことしか教えないような状況になっていて、先ほど宝野先生の御発言の中に、マテリアルも広がっているとおっしゃった、あそこにヒントがあるような気がしています。
 特に、今日の議題の一番はじめのマテリアルDXプラットフォームは、化学でもありながら情報のマインドもあるわけで、情報が好きな子でも化学の中でやりたいことができるはずだというようなことが、どんどん広がっているはずです。
 そういうところを、ぜひ広報というか、高校生レベル、あるいは若手の、まだ大学の初年度ぐらいの学生とか、若いほうに向かって、このマテリアルの広がりみたいなものを話せるような、伝わるような機会というのが増えていくと、少しマテリアルとしてはいいことが起きたらいいなというふうに思うところです。
【高梨主査】  ありがとうございます。学会なんかでも随分やっているんですけどね、そういうのは。
【吉江委員】  はい、そうですね。
【高梨主査】  なかなか。
【吉江委員】  でも一番は、多分、高校の先生のマインドだと思います。
【高梨主査】  瀬戸山委員からも、学生のほうも変わってほしいみたいな話があったが、そこまで来ると、今度は初等中等教育もセットで考えないといけないことになってきて、話は本当に広がっていくんです。
 
【柴田補佐】  今の、いろんな人が入ってこられる観点ということで、先ほど上杉先生から御提案のあった女性の研究者ですとか、女性の方がマテリアルに入ってくる間口もぜひアプローチしたほうがということで、研究全般に言えることで、マテリアルに限らないことだと思いますが、仮にマテリアルに限定した場合、ほかの分野よりも、今のマテリアルだからこそ女性が入りやすい条件といいますか、魅力といいますか、もしそういうものがあればぜひ教えていただければと、少し御意見いただければと思うんです。
 今、1つ吉江先生から挙げていただいたような、情報の関係だということであると、どうしても、まだ女性の場合は、いろいろなライフイベントの中で一旦研究を離れなくちゃいけないということが現実的にはあると思うので、そういった場合に、情報的なアプローチで、遠隔でいろいろできるとかというのがもしかしたらあるのかなと思いながら、今聞いていた次第です。
【高梨主査】  いかがでしょう。今の観点。
 どうぞ。
【伊藤委員】  伊藤でございます。多分ですけれども、化学系は、ほかの研究領域に比べると女性比率は高いんです。情報系のほうがむしろ少ない。機械とか電気とかも少ないので、そういうところに比べると、化学、生物とかは比較的、農学系でも女性が多いと思うので、その方々が専門性を維持したまま居続けてもらうためにどうするかという、門戸のほうは比較的、もう大分入ってきているのかも分からないなと。
【上杉委員】  女性が多いとは言えないです。比較的多いとしかいえないでしょう。
【伊藤委員】  ほかに比べたら多いかなと思います。
【上杉委員】  文部科学省のほうで、ほかの国々の化学における女性の割合を調べてみてください。多分、日本が最低に来ると思います。
 他国では、化学は割と女性に人気のある分野なんですよね。なぜ日本でこれだけ――まあ、比較的ましなんですけども……。
【伊藤委員】  ましですよ。(笑)
【高梨主査】  いや、だから材料でも、化学より物理寄りの材料をやっているところはもっと少ないですから。はるかに少ないですから。
【伊藤委員】  応用物理とかだと少ないので。
【上杉委員】  それはなぜかというのを考えるといいと思います。しかし、、またさっきの高校とか中学の議論になってしまいます。
【伊藤委員】  吉江先生のお話に、多分つながってくると思います。
【吉江委員】  いろいろやっぱり偏見があるのではないかなと思います。無認識のうちにいろんな偏見があって、例えば女子中・高生というのは、資格が取れるところにすごく志向が向いているような気がします。資格ということは、だから医療系であるとか、薬剤師のようなものであるとかいうところに、優秀な理系の女の子の目は比較的向きがちかなというふうに思います。この話をすると、また全然違う方向に話がどんどん行ってしまいそうなので、この辺にしておきますけど。
 その辺の、だから十分に化学の世界でもキャリアとしていいキャリアを積める――化学だけじゃないですね、それこそマテリアル、私的には工学系全般に対して、女性でもすてきなキャリアを積めるよというようなことは、うまくお伝えしていったほうがいいだろうなというふうに思っています。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 どうぞ。
【馬場委員】  人材育成のところ、見え消し版21ページで、国際的なプレゼンスの強化のところなのですが、ここにも少し何らかの形で、国際プレゼンスを強化した人にインセンティブが与えられるような仕組みを、ぜひ文科省で考えていただきたいんですけども。
 卑近な例ですけれど、国際プレゼンスを高めるためには、例えば国際会議の委員になるとか、ジャーナルのアソシエートエディターになるというのがすごく分かりやすい例だと思うんですが、何のインセンティブもないですよね。
 結局、若い人が、我々がそういうのをやっているのを見ていると、ただ苦労しているだけじゃないかとしか見えないと思うので、そこを何かうまくインセンティブが。これも、ここの委員会だけの話じゃないと思うんですけども、そこもできればここに少し盛り込んでいただけるとありがたいなと思います。
 それから、見え消し版の19ページの、課題の2行上のところにサンフランシスコ宣言を入れていただいたのは大変すばらしいと思うのですが、これ、もう一歩一方踏み込んで、より積極的にこれを各大学が締結すること、みたいなことは書けないのでしょうか。
 まだごく少数の大学・国研しか、これを締結・署名していないですよね、我が国の場合は。これ、すごく評価とも関わるし、人材育成とも関わる重要なところだと思いますので、それをぜひ御検討いただきたいなと思います。
 それから、先ほど上杉先生が言われたスタートアップを、この人材育成のところにも少し――さっき上杉先生も言われたかもしれないけど、人材育成としても、産学官が連携するだけじゃなくて、スタートアップで。若い人がスタートアップに入るとめちゃくちゃ成長するんですよね。それは間違いないので、スタートアップと、産学官と、言われれば、産の中にスタートアップも入っていますよと言われればそうなのですけども、それも少し意識して、今後の取組の方向性で入れていただけるとありがたいなと思います。
 あと最後に、細かいことなのですが、見え消しの18ページ目の、現状認識の3行目に、「研究者が想像力を最大限に発揮するための」と書いてあって、これは意識的にこの言葉を使われているんですか。
 これまでの例だとクリエイティブなほうの「創造力」を使うことが多いなと思って。わざとこれを使っているのか。2回出てくるので。19ページにも最後のほうに出てくるので。
【堅達委員】  クリエイティビティなのかイマジネーションなのか。
【高梨主査】  これはクリエイティブのほうの間違いではないか?
【宅間参事官】  どちらもあり得るかなと思ったので、間違えたつもりではなかったのですけれども、確かにクリエイティブのほうが……。
【馬場委員】  どちらも間違いではないと思うんですけれど。どちらがいいのかなと。
【宅間参事官】  はい。どちらが、どうでしょう、御意見に従ってここは修正いたします。
 要するに、創造的な研究をするための時間確保という意味で書いていましたので……今の言い方ですと、やっぱりクリエイティビティの創造のほうが合っているかもしれません。
【馬場委員】  あと、最後に産学官の話ですが、最近、文科省が産学官の連携事例集というのを出されていて、それはオープンイノベーションの取組だと思うんですが、先ほど平田委員が言われたようなことも、日本でも僅かながら始まりつつありますと。コーディネーターがいて、コーディネーターが企業に、大学の複数の研究者のこういうシーズがありますよというのを送り込んで、いわゆる組織対組織の産学連携につなげているところが、少しずつではあるけれども増えてきていると思います。全般に広がっているとは言えないです。
 それと、その仕組みを子会社化して――名古屋大学もしましたし、それから産総研もしましたし、理研も一部やっていますね。そういう取組を進めることが、多分、企業の人から見て、日本の大学は小粒の提案ばかりでやる気にならないよねと思われていると、私もいつも思っていますが、そうじゃない提案ができるような仕組みができてくるのかなと思うので、我々だと、マテリアルの中でそういういい事例があると、それを現状認識の中で少し記載していただけると、それを広げるというイメージが出てくるのかなと思います。
 以上でございます。
【高梨主査】  ありがとうございます。
 実はこれ、(3)の議論ということで今、ここまで来ているんですが、その後に、全体の総合討論という形で実は時間も取ってありまして、ただ、もう今、こうなってくると完全に区別もなくなっているかなという感じもしますので、もう(3)だけに限らず、残った時間で全体的な討論をさせていただければというふうには思いますが。
 あと、いかがでしょうか。もちろん(3)のことでもいいんですが、(1)(2)も含めた上でも結構ですので、御意見等いただければと思いますが。
 どうぞ。
【宅間参事官】  すみません、事務局からよろしいでしょうか。馬場先生の言っていただいた国際連携のところのインセンティブというのは、例えば現状の書きぶりだと、やはり研究評価とかでそういう活動も評価するというようなところでは書けているかなと思ったのですが、具体的に有効なインセンティブというと、どういったものを想定されておりますでしょうか。
【馬場委員】  残念ながら私にはあまりアイデアはないのですが、少なくともこれまではインセンティブがほぼ何もなかったということが現状だと思いますので、それを……上杉先生、どう思います? どういうものがあり得るか。
【上杉委員】  僕は今、『ACS Central Science』のアソシエートエディターをやっていますが、アメリカからはインセンティブがあります。
【馬場委員】  それはアメリカで評価されているのであって……。
【上杉委員】  でも、ACSだけかもしれません。でも、僕がやっているのはなぜかというと、日本のプレゼンスを下げないためにやらせていただいているところが多いと思います。
 そういうのが評価される軸があればいいですね。例えば何らかの大学の評価の中の何らかの新しいインデックスがあれば、各大学のインデックスのつけ方ができます。そういう独自の評価があったらいいんじゃないかなと思います。
【高梨主査】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。
【馬場委員】  私もアメリカ化学会のジャーナルのアソシエートエディターをしていましたけど、もう国際会議に行くと、アメリカ化学会の人間としての扱いになるんですよ。
 日本のデリゲートだったら誰も思ってくれないので、やっぱりそれは、少なくとも文科省の施策としては、そういう人たちをちゃんと、ACSのジャーナルであっても、うまくインセンティブというか、少なくとも評価する仕組みを考えてもらって……。
【高梨主査】  やっぱりその組織、大学や研究所なりできちっと評価する仕組みが。評価して……どうするんだろう。給料上がるとか? どういうものになりますかね。
【宝野委員】  エディターとして謝金を受けているのだったら、所属機関が特に金銭的にインセンティブを与える必要はないとおもいます。エディターをやったというのは研究者としての履歴に載るわけですから、社会から結果として評価されることになるので、それを何か特別に文科省としてどうのこうのということにはならないんじゃないですか。
【高梨主査】  ちょっと1つだけ、私もコメントすると、ちょっと思っているのは、この上位に研究計画評価分科会というのがあると申し上げましたけど、そこにはそれぞれの、こういう委員会の人たちが来るわけです。主査が。それだと、情報通信とか環境とか原子力とか、やっぱりいっぱい分かれているわけですよね。
 だけど、材料は全部に関わるんですよ。出口で全部、委員会が分かれているけど、材料だけは出口じゃないんですよ。それが同じ列で議論できるのかなというのは、ちょっとこれは思ったりするんです。
 だからといってマテリアルを上位にしろとはなかなか言えないですけど、ちょっと何か、同じ列ではないよな、ということは、上位の委員会に出ていてしばしば感じることですので、これはちょっと文科省さんのほうでも検討してもいいかもしれないというふうに思います。
【宅間参事官】  今の件に関して言いますと、政策的な考え方としては、科学技術・イノベーション計画第3期ぐらいまでは重点4分野という考え方がありまして、ライフ、情報と並んで、ナノテクノロジーというのは1つの分野として扱われていました。
 第4期以降は、おっしゃっていただいたように「横断的な技術ですよね」という位置づけになって、少し位置づけがその他の分野と違うという形にはなっています。ただ、委員会の構造は並列のまま引き継いでいるということで、少し不自然なところが、確かにおっしゃるとおり、あるかなというふうに思っているところです。
 そこで関連して、すみません、前回の御意見で、伊藤先生だったと思うんですけれども、マテリアルの、いろいろ高度化したことによって原子・分子レベルの構造とかが明らかになって、そういったものが物質設計とか機能・制御に生かされるようになったということを踏まえて、この委員会はナノテクノロジー委員会でもあるし、ナノテクノロジーといったところに基盤技術としてフォーカスしてもいいのではないかというような趣旨で御意見いただいたというふうに理解しております。
 そこを受けて、今般、見え消しでいうと16ページの辺りですとか、そこに伴う14ページぐらいの現状認識のところ、課題のところとかで、そのようなところを少し書いてみたつもりでございまして、恐らく、社会課題に対応みたいなバックキャスティング的な考え方から、ナノテクノロジーというテクノロジーじゃなくて、マテリアルという物に意識が行ったことによって、今のマテリアル分野というふうに広くなっていると思うのですが、折茂先生から、より広く捉えるという御意見があった一方で、マテリアル分野において、また、いま一度その原子・分子レベルの機能の制御だとか、そういったところが非常に重要になっているといったところがあるのかなとも、この間の議論で思いまして、今回ナノテクノロジー、ナノサイエンスという言葉に少し言及してみたところがあるのですが、今の議論と両方存在してよろしいか、どっちかの方向で、より広げるのか、よりミクロに捉えるべきなのかといったところで、もし何かいただいておくべき御意見があれば、次回までに修文を考える上でお伺いしたいなと思いました。
【高梨主査】  いかがでしょう。
【折茂委員】  例えば、言葉の問題になってしまいますが、「プロセスサイエンス」、これは非常に重要なワードです。それを本当に外から見られて、それが「マテリアル」に含まれるかどうか、あるいは含めるかどうかというのは、ちょっと慎重な議論がもしかしたら必要かもしれません。
 すなわち、プロセスサイエンスというのは、それこそいろんな学問分野に広がっていきますよね。ですので、そこも融合するような「マテリアル」というところの定義があれば、ほかの分野にもっとかぶっていけるのかなという気がしました。
 答えになっていないんですけど、感覚的にはそう思います。
【高梨主査】  ありがとうございました。
 オンラインで高村委員から手が挙がっていますが、高村委員、どうぞ。
【高村委員】  高村です。先ほどから、マテリアルの定義とか、マテリアルサイエンスとかマテリアルエンジニアリングの定義って何だ、みたいな話と、人材育成のところで、学生が減っているといったときに、マテリアル分野、マテリアル専攻はどうか、という話を聞いていて思ったのですがテリアルサイエンスあるいはエンジニアリングという学問の性質上、それぞれ全然違う名前で呼ばれている、例えば物理とか化学とか電気電子とかも、材料研究をしている人がいます。そちらではニーズ志向の研究をされていて、マテリアル関連の専攻では、シーズ志向で、何かこの新しいマテリアルで新しい分野を生み出していこうという人がいたりするのかな、と自分が学生の頃は思っていたのですが、それも最近では、だんだん境界があやふやになっているように思います。学生さんからどう見えているのかは分からないのですが、我々がどう捉えているかというのを、この文章で示せるといいのではないかと思いました。
 ただ、先ほどからのお話にあるように、今後ロボティクスとか情報とか、そういった分野も全部取り込み、マテリアルの総合知が形成されていくのかもしれません。が、一方で、何でもかんでもマテリアルなんです、というふうに書いてしまうのがいいことなのか分かりません。この辺り、どう書いたらいいのかすごく難しいなと思いました。感想になってしまうのですけれども。すみません。
【高梨主査】  いえいえ、ありがとうございます。
 どうぞ。
【宝野委員】  よろしいですか。マテリアル分野が重要だというときは、日本の素材産業、例えば輸出の35%は素材産業であるといった事実。それから半導体においても、マテリアルではいまだに世界で支配的であるとか。やはり産業があるから、そこに基礎研究、基盤研究が必要という論理になると思うんですよね。
 ですから、素材産業に関するものが、マテリアルになるのではないでしょうか。ここから逸脱してしまうと、そもそもなぜ国でマテリアルをこのように特化して扱わんければいけないんだということになると思います。だから、そこがアイデンティティーになるんじゃないでしょうか。
 そうすると、素材産業というのは化学もあるし、伝統的な鉄鋼だってあるしということになるかと思います。
【高梨主査】  貴重な御意見ありがとうございます。そのとおりだと思います。
 ほかにございますか。もう大分時間が過ぎています。
 
【高村委員】  今ある素材産業というのはもちろん重要ですけど、これから立ち上がる産業のための材料みたいな視点の研究も多分必要なので、例えば、ナノスケールマテリアル……。
【宝野委員】  応用に広がるということが一つなんじゃないですか。
【高村委員】  そうですね。あと、そういう次世代マテリアルも重要だと思いました。
【高梨主査】  それはおっしゃるとおりですね。どうもありがとうございます。
 どうぞ、中山委員。
【中山委員】  1つだけよろしいですか。今の皆様のお話で、1ページ目の「はじめに」の1パラ目なんですけど、「国際競争力の源泉と言える」のところは、例えば「国際競争力と産業競争力」と入れるのはいかがでしょうか。国際だけでなく産業の基盤となっているところで、それが素材や部材産業だけでなく、その先の多くの産業に波及するところが材料の肝のところなので。これは先ほど萬委員も言われていましたが、産業競争力の根幹、源泉というのはまさしくそうだと思います。また、他の分野の負けが激しい中で、材料はそこそこ戦えているという現状であり、かつ我が国の雇用や、そもそも輸出を支えているというのは、宝野委員が言われたように数値でも明らかです。我が国を支えるための科学技術であり、支えているところにお金を出さないと支えられなくなってしまうというような内容だと思うので、そういうのは色濃く出たほうがいいかなと思いました。
 以上です。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、大分時間も過ぎてきてしまっておりますので、一応、今日はこれで、この議論はここで区切らせていただきたいと思います。よろしいでしょうかね。
 あと、ほかにさらにまた議論がございましたら、御意見ございましたら、事務局宛てにメールをお送りいただければありがたいと思います。闊達な御議論、どうもありがとうございました。
 それでは最後に、その他の事務連絡を、事務局よりお願いいたします。
【柴田補佐】  ありがとうございます。それでは、事務局より御連絡いたします。
 本日お伺いできませんでした御意見につきましては、後日メールで紹介させていただきます。委員の皆様の御意見を踏まえて、推進方策の修正案を作成いたします。
 また、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りした上で、高梨主査に御確認いただいた後に、ホームページにて公開いたします。
 また、次回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会は、7月31日の15時からになってございます。引き続き、ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について議論していただくとともに、31日のほうはDマテの、今実施しております事業の中間評価についても議論していただく予定になってございます。
 事務局からは以上です。
【高梨主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会、これにて閉会とさせていただきます。どうも長い間ありがとうございました。お疲れさまでした。
―― 了 ――