第12期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第2回)議事録

1.日時

令和5年12月1日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省会議室(※Web開催)

3.議題

  1. ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について
  2. その他

4.議事録

【宅間参事官】 定刻より10分ほど遅れ、大変恐縮です。ただいまより会議を開催させていただきます。
それでは、菅野主査代理、進行をお願い申し上げます。

【菅野主査代理】 菅野です。少し遅れましたけれども、ただいまより第12期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の第2回を開会いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところ、御出席いただき、誠にありがとうございます。
本日はオンラインのみの開催となります。
それでは、事務局より、委員の出欠及び本日の会議の流れの説明をお願いいたします。

【柴田補佐】 文部科学省研究振興局ナノテクノロジー・物質・材料担当参事官付の柴田でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、出席者の出欠確認を行わせていただきます。本日は、高梨主査、上杉委員、また長谷川委員が御欠席と伺っております。
また、説明者及び総合討議への参加者として、科学技術振興機構研究開発戦略センターより、永野フェロー、眞子ユニットリーダーが御出席いただいております。
また、マテリアル先端リサーチインフラ事業の曽根PD、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトの栗原PD、また、材料の社会実装に向けたプロセスサイエンス構築事業の松原PDが御出席されています。
また、当省より、研究振興局長の塩見、ナノテク担当参事官の宅間が出席しております。議事の御紹介の後、御挨拶申し上げたいと思います。
次に、資料の確認に移ります。本日の議事は議事次第のとおりでございまして、2つございます。
また、配付資料も議事次第のとおりですが、不足等ございましたら事務局まで御連絡ください。議事の途中でも結構ですので、事務局までお知らせくだされば幸いです。
また、本日の会議の流れでございますが、議題1、ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策において、ナノテクノロジー・材料科学技術分野の動向等及び文部科学省のナノテクノロジー・材料科学技術分野の事業の進捗、今後の展望の説明を踏まえまして、総合討議を行うことを予定しております。
会議の進め方でございますけれども、本日はオンラインのみの開催となっておりますので、回線負担の軽減と雑音防止の観点から、御自身の御発言以外はマイクをミュートにしていただきまして、また、ビデオはオンにしていただくようお願いいたします。
また、御発言を希望される際は挙手ボタンにて御発言の意思を御連絡ください。
御発言の際は、議事録作成の関係上、お名前を一言おっしゃっていただいてから御発言いただきますと大変助かります。
事務局からは以上でございます。

【菅野主査代理】 ありがとうございました。
それでは、議題1のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策に入ります。
本件につきましては、まず初めに事務局より全体の進め方について説明いただきます。
それでは、まず、事務局より検討の進め方について説明をお願いいたします。

【柴田補佐】 ありがとうございます。事務局より御説明させていただきます。
資料1-1及び机上配付資料、また、すいません、当日で恐縮なんですけれども、私のほうから1点、議論の円滑のために画面共有をさせていただきます。
こちら、画面共有させていただいておりますのは、文部科学省の概算要求の資料でございますけれども、特にナノテク・材料分野の概算要求の際に用いております全体像の資料でございます。
本日は、まず、科学技術振興機構の研究開発戦略センターよりナノテク分野の動向等を御説明いただきます。その後、文科省の事業についても御説明させていただきます。特に、内局事業といたしましては、データ創出というところでマテリアル先端リサーチインフラ事業、また、データ統合として、NIMSにおけるデータ中核拠点の形成ということですが、本日はこちらの説明は割愛させていただきます。加えて、データ利活用という点で、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトになります。
また、材料の社会実装に向けたプロセスサイエンス構築事業は、前回の会議でこちらの中間評価を行いましたので、本日、詳細の説明は割愛させていただきますが、主にこの3点が文科省ナノテクで担当しております内局事業になります。
それでは、説明に戻らせていただきます。資料1-1の御説明に移ります。本日の検討内容でございますけれども、第6期科学技術・イノベーション基本計画及びマテリアル革新力強化戦略等を踏まえました文部科学省としての今後のナノテク分野の研究及び開発に関して、文科省において実施している既存事業の進捗状況ですとか、戦略に関連するその他事業の実施状況を踏まえて検討するということとさせていただければと考えております。
今後のスケジュールといたしましては、第2回、本日ですけれども、こちらで事業の動向について等、御説明をさせていただいた後に総合討議を行います。
続きまして、年明け、第3回において、有識者からの話題提供、また、2から3月頃に開催できればと考えております第4回、でも有識者からの話題提供を踏まえまして、総合討議を2度ほど開催させていただきまして、最後に少し取りまとめをするような形を想定しております。本日はその1回目になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
また、机上配布資料につきましては、あくまで本日の検討のために作成しておるものでございまして、完全な資料ではございませんので、あくまで委員の先生方限りでお願いできますと幸いでございます。
また、似たような資料が数枚続きますけれども、左上に年度を記載してございます。2023年度時点が1枚目になりますけれども、2枚目以降、2024年、1年後、2025年が2年後という形で、年を追うごとにだんだんと今ある事業が減っていく形になりますので、そういった時系列的なところを見ながら、今後、どういったところに事業を手当てしていくべきかというところを少し参照していただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事の途中になってしまうんですが、先ほど御案内いたしましたとおり、本日は研究振興局長の塩見が入室しておりますので、一言塩見から御挨拶させていただきます。
塩見局長、よろしくお願いいたします。

【塩見局長】 研究振興局長の塩見でございます。説明の途中での御挨拶となりまして、大変申し訳ございません。
本年8月に研究振興局に着任しております。第2回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げます。
まずもって、本日はお忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。マテリアルは、我が国の最先端の科学技術・イノベーションを支える大変重要な基盤技術であり、文部科学省といたしましても、マテリアル革新力強化戦略に示された政府全体の方針のもとでその振興に取り組んでおります。
戦略策定から間もなく3年が経過し、文部科学省において実施している事業につきましても、中間評価等の見直しの時期を迎えているという状況にございます。
今説明をさせていただいておりますとおり、マテリアル分野におきまして、文部科学省で実施しております事業の進捗や今後の展望につきまして、本日は、事業を担当されているプログラムディレクターの皆様から御紹介をいただくということになっております。
また、あわせまして、昨今の動向を踏まえましたマテリアル分野全体の今後の推進方策につきましても御議論をお願いできたらと思っております。
前回の会議では、自然科学のみならず人文社会科学も含めた総合知の活用につきましても御意見を賜ったと伺っております。委員の皆様には、本日もぜひ幅広い観点から、ナノテクノロジー・材料科学技術政策の今後の進め方につきまして闊達な御議論をいただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【柴田補佐】 文科省事務局でございます。局長、御挨拶どうもありがとうございました。
事務局からは以上になります。よろしくお願いいたします。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。塩見局長、どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
それでは、ただいまの事務局からの説明内容、今後の進め方について、御質問がもしありましたら、挙手ボタンをお願いいたします。
よろしいでしょうか。
それでは、続きまして、眞子ユニットリーダーより、ナノテクノロジー・材料科学技術分野の動向について、御説明をお願いいたします。

【眞子ユニットリーダー】 それでは、「ナノテクノロジー・材料分野の研究開発動向と今後の課題・論点」というタイトルで、JST、研究開発戦略センターの眞子より説明させていただきます。
今日の講演は、この分野の過去・歴史からスタートして、その後、分野の現状と将来という構成にしています。
最初にお示ししたのが、マテリアル(ナノテクノロジー・材料)に関連した内外の政策の大きな流れです。
2000年から2020年にかけての流れの中では、2000年が一つの大きな変化点となりました。これは、米国の国家の「ナノテクノロジーイニシアチブ」がクリントン政権下で開始したことによるものです。日本ではそれ以前からナノテクノロジー・材料に関しての国家戦略が走っていましたが、世界全体にナノテクノロジーという概念が浸透したのは、このアメリカの戦略が契機であることは間違いなく、欧州も中国もそれを追いかけるようにナノテクノロジーの取組が開始しました。
次に、大きな変化が来るのが2010年頃からで、またしても、アメリカがデータを起点とした材料開発を目指した「マテリアルゲノムイニシアチブ」をスタートさせたのがきっかけになりました。データ中心の取り組みは、2010年代を通じて各国で始まり、日本ではは2015年のMI2I拠点というが開始していますし、欧州もHorizon2020の中にマテリアルインフォマティクスを大々的に取り扱うものが始まっています。また、中国でも、中国版MGIというのが開始するというように、2010年代はデータを基軸とする研究開発が世界中に浸透しています。
他に着目すべき動きとしては、欧州で2000年代初頭から拠点整備を推進しています。IMECであるとかMINATECといったような巨大なナノテクノロジーの拠点はこの頃から整備が始まって、現在では、非常に大きな成果を上げる拠点となっています。
中国に関しましては、2000年の初めの頃から非常に科学技術力をつけ始め、2010年代になる頃には、いわゆる自国のレアアースなどの資源を、国際的な競争力にするというようなことによって世界中のマテリアルの政策に影響を与えてきています。
最近では、2020年代に入ったぐらいにいろいろな国際社会の変動がありまして、それによって経済安全保障の影響がマテリアルの分野の前面に出るようになったというのが大体の流れになります。
ここで、最近の話題を1つ紹介いたします。これはアメリカの大統領科学諮問会議がナノテクノロジーイニシアチブ(NNI)に対する評価を今年の8月に公開したものです。アメリカのNNIは法律の下で実行されているプログラムですが、定期的にこのように評価と見直しを行っています。今回の評価の中では提言が3つ挙げられています。1番目は、2000年初頭につくられた研究開発法を大幅に改正し、求められる状態に合わせて、時代に合わせたナノテクノロジーの研究にするべきだということ。2番目が、この運営に関しては、引き続き国家がリーダーシップをとるようにすること。3番目は、先端技術の発展、あるいは労働力の創出のために、教育などのプログラムも強化していくことということが挙げられています。
さらに、今回の評価で特徴的なところは、NNIがどういう成果を上げてきたかということに関して、具体的な例を挙げて示している点です。カーボンニュートラルや、COVID-19のワクチンなどにもナノテクが貢献したという点について、定性的なコメントだけではなくて、例えば2017年には3,700の事業が17万人の雇用を生み出して420億ドルの収益を計上したといったような、非常に定量性のある評価を行っていて、それを公開するということが特徴的です。
日本の関連施策の流れを、もう少し詳しく見ていきたいと思います。このスライド(スライド5)に示した日本の20年間の、マテリアル関連の主要施策は、上のほうから、内閣府主導のもの、経産省・NEDOのもの、そしてJSTと文科省のものと並べております。
非常にたくさんのことを行ってきました。この中で、科学技術基本計画第2期、第3期が2000年から2010年にあたりますが、この期間に関しては、ナノテクノロジー・材料分野というのは、重点の4分野の中の1つに入って、分野別推進施策というものがつくられておりました。
第4期からは、ナノテクノロジー・材料分野は、ほかの分野の横断的基盤技術として働くものと位置づけられました。第4期以降、社会課題が起点の計画と変わったために、ナノテクノロジー材料分野に関する分野別の推進施策というのはつくられておりません。
第6期になりまして、先ほどからも何度もお話が出ておりますマテリアル革新力強化戦略というものがつくられて、再び、マテリアル分野に関しての戦略が練られたことになります。これは2006年のときから15、6年ぶりにつくられた戦略ということになり、今実行フェーズに入っております。
この20年間の研究成果の事例を目立つものを挙げさせていただきました。もちろんこれだけではなくて、もっとたくさんあると思いますけれども、紙面の関係上、10個ほど挙げさせていただきました。
既に産業に応用されているものとか、応用される直前のもの、あるいは新しい科学技術の分野をつくったもの、学理の構築に非常に大きな役割を果たした成果などが非常にたくさん出ているということが分かると思います。
このような歴史の中では、ナノ材委員会が取りまとめてきた「研究開発の推進方策」というものが非常に大きな役割を果たしてきたということを少しお話ししたいと思います。
2001年にナノテクノロジー・材料科学技術委員会が設置されまして、2002年に、第2期でどういうことを行っていくかということに対して、このような提言書、報告書を出しています。
この報告書は、物質・材料研究に関して「5つの重点領域」、また、ナノテクノロジーに関して、「20年後までに実用化・産業化を展望した研究に係る25領域課題」を選定した、100ページにわたる大きな報告書でした。
それ以降も、推進方策として、第3期にから第6期まで、5年ごと、あるいは、大体次の期が始まる前にはナノ材委員会としての取りまとめを発表しております。
第6期に向けてのとりまとめが、現在のマテリアル革新力強化戦略をつくる上での1つの礎になったと見ております。
2002年に発表された推進方策は、「20年後までの実用化」という視点が明言されており、今現在、20年が経過したということから、CRDSでは、これにする振り返りを試みました。
25のテーマについて、個別に「これができた」、「これができていない」というようなものを列挙するものではなくて、「このような方針をつくって、それがどういうふうに働いたか」などに関して、有識者の先生方にインタビュを実施し、以下のような見解を得ています。
1つは、異分野融合を目指したような大きな施策とか、あるいは個々の領域を力強く推進するものといったものが多彩にやられてきたということ。
また、この20年間で、非常にたくさんの人材を育てることができたこと、また、それを育てるためたに、中長期的な施策展開というのが重要であったことなどのご意見が寄せられておりました。
これによって広がった研究開発の裾野が、2002年の時点ではまだ存在しなかったような例えばグラフェンや、無機有機ペロブスカイトなどが発見されたときに、すぐにそれに対して対応できるという強さにつながっていったということが指摘されております。
また、今後、新しい施策をつくるために何が重要かということに関しましての御意見としては、このように予測できないものというのは必ず出てくるということで、フレキシブルで、かつひろがりと厚みのあるような基盤をつくれるような施策が重要だろうということや、最初から小さな目標ではなくて、チャレンジングな目標を立てることが重要ではないかというようなものがあげられました。
また、大事なことは、柔軟で強固な科学技術と人材の基盤を築いていくことを今後の施策にも入れていくべきだということも挙げられておりました。
ここまでで過去のパートは終わりまして、今から現状の話をさせていただきます。
まず、マテリアルを取り巻いている世界環境です。これは何度もいろんなところで皆さんも御覧になっているようなことです。詳しくは述べませんけれども、1つは、国際情勢が不安定になって、経済安全保障の視点から、サプライチェーンの再構築や、、特定国への資源の依存低減といった動きが世界中で同時に行われております。
また、将来に向けた研究開発が重視され、先端科学への投資の強化も進んでいます。量子、先端半導体、次世代電池に関しての積極的な投資が各国、各地域で行われています。
同時にまたSDGsの実現に欠かせない基盤技術として、例えばエネルギー技術やリサイクル関連の技術、こういったものに関しても世界協調と競争の両面から活発に研究開発がなされているという状態になっています。
この中で、日本の状況を見てみます。まず、日本の輸出総額において、概ね半分以上を、ミディアムハイテクノロジーとハイテクノロジーが占めています。ミディアムハイテクノロジーというのが、ナノテクノロジー・材料、マテリアル分野のほとんど全てが含まれる分野になります。つまり、いまだに輸出に関して日本は、マテリアル分野に大きく依存しているということです。
現在は、半導体、量子、電池などの経済安全保障にも関連の深い国の重点施策は日本にも立ち上がっておりますし、今日もお話が出ますマテリアル革新力強化戦略が実行フェーズに入っています。
また、GteXやALCA-NEXTといった環境・エネルギー分野に関する多面的な大規模投資もなされている状態にあります。
一方で、経済的には新興国の経済・技術力の発展によってプレゼンスが低下をするということがかねてから言われておりますし、相対的に研究開発力が低下しているというようなことが課題として挙げられております。
これは私たちが研究者数として、その年に発行された論文に1回でも名前が載った人をカウントしたグラフであります。これを見ますと、日本は研究者数がこの10年間で減っているわけではありませんけれども、他国、特に中国が非常に研究者数を増やしている背景の中では少しずつ埋没している感じに見えるということになります。
また、論文数を見ていましても、日本の総論文数は減ってはおりませんけれども、世界的には増えているところが多いということで、埋没感があります。トップ10%の論文数というのは、このスケールで見ても少し分かるぐらい減っているということもありまして、やはり研究開発力の相対的低下というのが、論文を調べてもそういう統計からも示されております。もちろん論文だけが研究開発力の指標ではありませんが、研究会は強くの低下を裏づける1つの傍証にはなっていると考えられています。
マテリアル革新力強化戦略に関しましては、今日もいろいろお話があると思いますので、詳しくは述べませんが、データをためるところ、データをつくるところ、そしてそれを活用するところという三位一体での活動が動き始めております。マテリアルの分野は、ほかの政府戦略、AI、量子、バイオという、政府戦略の、基盤になっているため、ほかの戦略を支える意味でもマテリアルの戦略というのは非常に重要だということが、戦略に明記されております。
ここで、今年の春に私たちが発行しました研究開発の俯瞰報告書の内容を少し紹介させていただきます。これはこの分野を私たちがどのように見ているかということを表す俯瞰図です。私たちは、マテリアルの分野を、応用の出口である「環境・エネルギー」、「バイオ・医療」、「ICT・エレクトロニクス」、「社会インフラ」という4つの区分と、それを支える技術である「物質・機能の設計・制御」の区分、さらに、加工や計測、計算といったような、「共通科学技術基盤」の区分の合計6つの区分に、ELSI/RRIや、人材育成を含む「共通支援策」の区分を加えて7つの区分で捉えて俯瞰をしております。 俯瞰報告書の中では、近年、どういった研究開発のトレンドがあるかということについても、それぞれの区分の中でのトピックスという形で挙げております。具体的などういうものがあるかということは報告書を御参照下さい。
我々は、ここまで述べましたような取り巻く環境、日本の状況とか、世界的な動向の観点を踏まえまして、さらに有識者によるワークショップを何度も繰り返すことによって、今後、日本にとって重要な12の研究開発の方向性を例示しております。この12個の研究開発が具体的にどういうものかということが本文には書かれております。
この12個の選定の際には、「社会の変化がもたらす新たな科学技術への要請」、「科学技術の新たな潮流出現に伴う戦略的投資の必要性」、「日本の産業競争力と安全保障の観点で重要な技術確保」という3つの観点からテーマを選んでおります。
最後に、今後の戦略を考えていく上での重要な論点であると、私たちが考えているものを紹介させていただきます。
日本の科学技術全般に共通する論点として以下の4つがあると思っています。
1番目は、研究力の低下。先ほども述べましたけれども、国際的に存在感が低下していること。特に注目論文を創出する能力が低下しているとか、あるいは有力な国際学会での招待講演や論文誌の編集者の数が非常に少なくなっているということにも表れています。
2番目は、イノベーションを起こして、産業に研究成果をつなげることができていないこと。日本はテクノロジーの中でもエンジニアリングとかインテグレーション力が不足しているのではないかということが挙げられております。
3番目は、研究開発人材自体が非常に不足してきていると。特に学生にとっての理工系とか研究開発職の魅力というものが非常に低下しているのではないかと言われております。また、海外からの研究開発人材を引き寄せるような魅力も日本には足りないのではないかと指摘されることが増えております。
4番目は、多くの人が集まってくる学問部分とそうでない部分との間の差が非常に激しい、また、重点化によってすごい勢いで淘汰される学問分野があるということ。これは必ずしも悪いことばかりではないのかもしれませんけれども、まだ産業的には強みを持っているにも関わらず、基本的な学理をやっている大学、が、ほとんどなくなっているというようなところが幾つも見られるようになっています。
これらは、日本科学技術の全般に共通する論点ですが、マテリアルの分野に関しましても、やはり以下のようにあらわれています。まず、研究力に関しては全般の傾向と同じような状況にあります。産業競争力に関しては、先ほど述べたようにまだ強くて日本の輸出も支えている産業であるにも拘わらず、若い人がやってこない状況があります。ほかの分野、例えば、AI等の分野には志望する学生数が増えていても、マテリアルを選ぶ人が非常に減っているとか、その結果、大学の研究室自体の数も減っているというような状態で、スパイラル状に人材が不足しているというのがマテリアルに特に顕著にあるのではないかと思います。
また、かつて強かった鉱業ですとか、金属精練、石油化学みたいな分野も、大学の研究室が減っておりまして、日本の中からこういった学問が消えようとしています。昨今の世界的な動きの中で、日本も半導体の研究開発を再興しようとしていますが、この20年の間に、半導体を教えている大学の講座ですとか研究室の数が減っていて人材供給に大きな障害となっていることが明らかになっています。
こうした、半導体の例から学ぶとすると、ある学問分野が、本当に日本からなくなってもいいのかというのをきちんと吟味した上で、それに対してどういう手を打っていくかということを、今、考えていかなければならないのではないかと思っております。
以上です。

【菅野主査代理】 眞子様、どうもありがとうございました。海外から、取りまとめたお話をありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関して、もし御質問ありましたら、挙手ボタンでお願いしたいと思います。最後に総合討議がありますので、それで御発言いただいても結構です。今の説明に関しての御質問、もしあれば、お願いしたいと思います。
じゃあ、馬場先生、お願いいたします。

【馬場委員】 名古屋大学の馬場でございます。どうも詳細な御説明ありがとうございます。このページの前のページですかね、12のテーマ、これ、非常によく考えてまとめていただいていると思いますが、2ページ前の俯瞰的な調査結果、これと12のテーマの関係といいますか、全部網羅しているのか、あるいは、この中から特に重要なものを12のテーマとして選んでいらっしゃるんですか。

【眞子ユニットリーダー】 そうですね。この俯瞰図をつくる段階では、もちろんこの中に全部の材料が載っているわけでは、御覧になって分かるとおり、ないんですけれども、割に広く目につくものものを広く見ようということで見ております。この中で、先ほども言いました、ほかの日本の状況ですとか、あるいは世界的な状況とかいったものから、この中で特に今、次にやるべきはどういうことだろうということを選んだものが、12のテーマがこれになります。
ですので、この中から、これを俯瞰していろんな調査をした上でこちらを選んだという形になっております。

【馬場委員】 分かりました。ありがとうございます。

【菅野主査代理】 ほかにはよろしいですか。
では、中山委員、お願いいたします。

【中山委員】 眞子さん、ありがとうございました。多少補足的なこともあるんですけど、2ページ目を出していただけないでしょうか。

【眞子ユニットリーダー】 多分ここは補足していただいたほうがいいと思います。

【中山委員】 2ページ目につきまして、よく委員の先生に見ていただきたいところがございます。各国の施策がキャッチボールのように行われているというところが重要です。例えば日本で02年にナノ支援プロジェクトが始まっていますが、その後にナノテク共用ネットワークを米国が開始しています。米国は前身のプロジェクトもあるのですが、日本のナノ支援の内容を見ながらナノテク基盤ネットワークがつくられています。さらに、それを見ながら日本はナノネットをつくり、ナノテクプラットフォームをつくり、それを見ながらまた米国でNNCIが動き出しているというような、そういうキャッチボールのようなことが行われています。諸外国から相当見られているし、また見ているということですね。
あとは、元素戦略です。中国がもうレアメタルを外に出さないと言い出して全世界でレアメタルショックが起こるわけですが、日本は元素戦略をそんなことになる前からやっていて相当先行していました。それを見ながら、米国DOEがクリティカルマテリアル戦略を元素戦略が立ち上がった4年後の11年につくっている。これは中国が禁輸した後ですね。明確に日本が先行した動きを行っています。ここで米国は、日本の元素戦略への対応でもあるので、希少元素対応だけではなくて、マテリアルゲノムというのを並行して開始しました。元素戦略というのは、原子レベル、あるいはさらにそれよりも小さいところでしっかりと設計して元素の機能を最大限に発現させるというプロジェクトなので、その真意を考えて、米国はマテリアルゲノム戦略を作りました。これらクリティカルマテリアル戦略とマテリアルゲノム戦略の2つでもって元素戦略に対抗したんですね。で、マテリアルゲノム(MGI)ののような流れは今も続いています。このあたりは、我が国が先行してやりながら来ているというのがご理解頂けると思います。
あと、我が国が先行しているという意味で言えば、今のデータ駆動型の一連の施策群の
中でのARIMですね、設備の共用とデータ駆動の連動というのはまだ諸外国ではほとんどやってないところで、我が国としては、相当アドバンテージがあり、ノウハウをためていっているところです。でも、絶対それらはアメリカや欧州に見られているので、多分それに対応する施策が出てくるのではないかなと思います。
そういう我が国が先行するところもありますが、例えば量子の分野などを見ていただくと、我が国は後手を踏んでいます。あとは、環境対応の各種重要施策で、バッテリーの話とかも遅れをとっていたり、先手と後手を繰り返していったりしています。そのような中で、「じゃあ、次、何をやろうかな」という話がナノ材委員会の主たる議論になっていくのだと思います。もうちょっと図や表を分かりやすく書ければよかったのですが、このように過去と現在をよくよく見ながら、これからやるべき事を考えていきましょう。もうちょっと我々としても精査しながら分かりやすいものを書いていくつもりです。
あと大事なのは、3ページ、4ページ目はNNI、ナショナルナノテクノロジーイニシアティブですね。米国は、まだしつこく一生懸命やっている。しかも重点化しています。このずっとやり続ける力というのはすごいなと思います。
あと、7ページ目です。ナノ材委員会も一生懸命に報告書や戦略文書を作ってきて、次の第7期基本計画の決定まであと2年数か月、というところで、今後どうしていこうかというのを真剣に考えることは必要と思います。これは、ナノ材委員会の大事な仕事になってくるのではないかと思っています。
以上でございます。

【眞子ユニットリーダー】 ありがとうございます。

【菅野主査代理】 ありがとうございました。
じゃあ、折茂先生、お願いできますでしょうか。詳しいことはまた最後に御議論いただくとして、折茂先生、眞子先生のご説明に関してお願いできればと思います。

【折茂委員】 ありがとうございます。東北大学、折茂でございます。御説明ありがとうございました。
5ページの日本のマテリアル関連主要施策の流れ、大変分かりやすい図だと思いました。ありがとうございます。この中で、恐らく、文科省あるいはJSPSが進めておりますいわゆる新学術領域研究とか、あるいは学術変革(A)、その辺り、入れ込んでいただくというのも重要かなと思いました。
今、中山先生、諸外国がやっていない先手ということでは、そういった学術変革(A)とか、新学術というのはかなり先手を切って進めているという認識だと思います。そういった発出的なところから、少し施策的なボトムアップからトップダウンに移っていくという流れも含めて、キャッチアップしておくことが非常に重要かなと思いましたので、機会ありましたら、ぜひ、学術変革(A)、新学術領域をプロットいただければと思いました。ありがとうございます。

【眞子ユニットリーダー】 ありがとうございます。相当に小さくなってしまったので、もちろんそこを今入れてないなという思いはあるんですが、それを何とか入れた形を考えてみようと思います。

【折茂委員】 よろしくお願いします。

【菅野主査代理】 よろしいでしょうか。すいません。まだあるかと思いますけれども、後ほどの総合討論のところでお願いいたします。
それでは、続きまして、マテリアル先端リサーチインフラ事業の進捗、今後の展望等について、曽根PDより御説明いただきます。よろしくお願いいたします。

【曽根PD】 曽根でございます。マテリアル先端リサーチインフラ、ARIMの取組について御説明したいと思います。
次のページお願いします。先ほど述べられていたように、R3年度に政府から打ち出されたマテリアル革新力強化戦略に沿って、文科省のほうでここにあるようなマテリアルDXプラットフォーム構想が打ち立てられたわけです。ここでは、データを「つくる」、「ためる」、「つかう」という視点で、ここにある3つの組織が連携をとってプラットフォームを構成していくと。それで日本の研究開発をサポートしていくという構造になっています。この中で、ARIMは「つくる」という機能を中心に役割を果たしてまいります。
次のページをお願いします。そのような中で、ARIMが一体何を目指そうとしているのか、その概略をここで説明したいと思います。ARIMは、マテリアルDX時代にふさわしい先端設備、さらにはそこから生まれるデータの共用事業ということを目指してR3年度に文科省のプログラムとしてスタートしております。
先端設備の共用事業という意味では、ナノテクノロジープラットフォーム事業が10年間にわたって推進されてきました。ARIMでは、ナノプラ事業が積み上げてきた多くの実績、また、特に、その間に築き上げられてきたユーザーからの高い信頼を受け継ぐ、それと同時に補正予算等を活用して、新規設備の導入、あるいは老朽設備の更新によってマテリアルDX時代にふさわしい自動化、リモート化、デジタル化、そういうものに対応可能な設備共用事業を目指してまいります。
今回、ARIMは2つの新たな課題に挑戦します。1つは、データという新たな価値をつけて、付加して、マテリアルDX時代にふさわしいデータの利活用サービスを行うという試みです。これは設備の共用事業で生み出される大量のデータの収集、構造化、蓄積、それを日本の研究コミュニティーに利活用いただくという試みです。
2番目は、政府戦略にもありました、日本の将来にとって重要な7つの技術領域、ここの領域の底上げを行うことです。これはARIMが単なるユーザーの要望に従った研究開発支援の枠を超えて、重要技術領域の強化という強い意思を持って研究開発の支援活動を行っていこうというものでございます。
これらによって、日本のマテリアルの研究開発力、あるいは部素材産業、そのような部分をARIMが下支えしていくという、重要な役割を担っていくのだという強い確信を持っております。
次のページをお願いします。ARIM全体の活動に対して今申し上げたことをどういうふうに実行していくかということですけども、ここにありますように、全体的なマネジメントとその業務支援を行うプログラム運営委員会、運営機構、それからセンターハブ、その下で、25の法人によるARIM参画機関、それが実際の支援活動を行っていくという構造で実施してまいります。
基本的には支援に当たっては、利用者の要望に対して、保有する設備、それを動かす高度な技術スタッフによりまして、要望に対して最高のパフォーマンスで応えていくというのがARIMの基本的立場でありますけれども、ここに示すように、7つの重要技術領域、高度なデバイス機能から始まって、マルチマテリアル、高分子マテリアル等々、個々の重要技術領域に対して、ハブ、スポークの体制を構築して、その推進に対応してまいります。これらのハブは、ARIM全体を代表して、担当する重要技術領域を推進する役割を担っております。
それでは、次のページをお願いします。ARIMによる技術支援内容、具体的には、ここに掲げてありますように、技術相談から始まって、機器利用、技術補助、技術代行、共同研究、ここまではナノテクノロジープラットフォームと同様なのですけれど、これに新たにデータ利用、すなわちこ蓄積したデータの利活用を行う支援活動が加わったということでございます。
次お願いします。データをどう利活用していくかということですけども、先端のインフラの装置、設備から続々とデータが上がってきます。それらはNIMSにあるデータ中核拠点のRDEというデータ構造化を行う共用化システムのほうに次々と登録されていきます。RDEでは、上がってくるデータに対して必要なメタデータを付与して、データをAIなどに適用可能な形に変換、構造化する役割を担っていますが、これを自動的に実行していくというものです。
それから、もう一つ大事なデータ構造化の中身は、どのような趣旨の実験データなのかの情報です。すなわち、サンプルの情報だとか、そういったものを手入力でフォーマットに従って入れていくわけです。それによって、構造化を実行して、ここに書いてありますように、特定のテーマに沿って収集されたデータセット、データ群の塊であるデータセットという単位で蓄積していくということです。
現在までに25機関で315台の共用設備が既にRDEに接続され、自動的な構造化が可能になっております。
次のページをお願いします。これはARIMにおいて、どういうふうにデータ共用、利活用していくのかということを示した図でございます。
最初に、データを登録した後、最大で2年間というエンバーゴの期間を設けております。これはデータを取得・登録した研究チーム内に限ってそのデータにアクセスでき、編集できる、あるいはその研究チームが許可した他の研究チームもそこに加わっていろいろそこを編集したりすることができる、そういった期間です。
その後、エンバーゴが解除された後、ここに書いてありますように、ARIMの事業内共用というステージに入っていきます。これは広域シェアと我々が呼んでいるわけですけども、ARIMのセンターハブのほうからアクセス権を付与された方がこのデータにアクセスできるようになります。どのようにデータのアクセス権を付与するかというと、まずはデータを利用したいとの要請を行った利用者が所属する産官学の機関が保証する研究者に対して付与されます。保証するというのは、外為法等々の規制対象内に該当してないですよということを保証された研究者、技術者に対して、センターハブのほうからアクセス権を付与する、アカウントを付与するという形になっています。
事業内共用が進むと同時に、その中でそのデータが論文等で公知化のステージに入ったものは、NIMSのデータ中核拠点のほうに移して、そちらのほうからの利用も可能にしていきます。
現在、ARIMとしては、約款、運用のルールを定めておりまして、設備利用に関しては、昨年、2022年の4月、データ登録は今年の4月から開始され、次々と今データが登録されているという状況です。
データ利用はこれからということになります。まさに12月、今月の中頃に約款が制定され、その後、最初は試行運用からスタートさせていただきますけれども、順次本格運用のほうに向かって進めていくという状況になっております。
次お願いします。これはARIMの実際の活動を示した指標です。R3年度はナノプラと並走する準備期間ということですので、R4年度から本格的に始まって、そこの実績が上がってきております。それをまとめたものです。
25法人、そこでARIM事業に参画するメンバーは859名、そのうち技術スタッフが425名、これは日本最大の技術スタッフ集団であると認識しています。また、残り四百数十名、この中には研究者も多く含まれておりまして、単なる設備を使った研究支援だけではなくて、研究のステージにも踏み込んだ多様な支援を行っていくということでございます。
それから、現在、年間活動資金は、文科省の委託費としての17億円、それに加えて、各法人の提供する供出分、それから、非常に重要となる利用料の収入から成っています。これはある意味で活動の大きさを示す1つのバロメーターであると認識しておりまして、既に、ARIMが本格的に始まったのがR4年度ですけども、この時点でナノプラ時代を20%強上回る利用料になっております。
アウトプットのほうは、ここに書いてありますように、ARIMを利用される方は5,200名、膨大な数に上がっておりまして、そこで走っている研究の課題数は2,500件を超えております。
基本的にARIMの活動では、利用内容に関しては、利用報告書という形で公開していただくことが前提です。まず利用課題を申請した段階で、今回のARIMの趣旨に沿ってデータを供出していただけるかどうか、利用者の判断を仰ぎます。現在のところ、データ利用が開始されたばかりであり、データがどういうふうに利用されるのか、若干わかりにくいところもあってか、利用課題の申請者が慎重になっている面も見受けられますが、それでも3分の1強の方にARIMの趣旨に賛同していただき、データの登録を行っていただいております。
ほかの指標はそこに書いてあるとおりです。
次のページをお願いします。これはARIMの先ほどのR4年度の設備の共用実績を項目ごとにまとめたものです。重要技術領域に関しては、ここに書いているような7つの領域に関してこのような活動がなされております。
また、重要技術の横串となる横断技術として、加工、計測、合成というものがあり、この横断の技術力に関しても、重要技術領域が縦串に対して、横断技術が横串という形になりますけども、そちらのほうでもしっかりとしたサポートを行っております。そこの内訳はこんな形となります。
利用形態は、ここに書いてあるように、基本的には、研究者が参加機関のほうへ来て、先端機器を利用する機器利用、実験の作業そのものも含めて参加機関の技術スタッフに任せる技術代行、そこら辺のところが主体となっております。
利用者の所属に関しては、ここに書いてあるとおり、企業がおよそ20%程度の利用になっております。ほかは、大学、国研ということになります。
以上、示してきたのがARIMの現在の状況です。この後、我々が、どういう方向に向かってARIMの活動を発展させていこうと今考えているかをお話しします。まず先端設備の共用事業としての発展です。これは非常に重要です。世界でのマテリアルに関する技術競争に勝つためにも、先端設備の拡充、特に持続的な予算措置、こういったものが非常に重要になってきます。これに関しては国にぜひお願いしたいと考えております。
それから、ARIMの事業の中で導入した装置だけでは限界があります。ARIM以外の事業で導入した設備、それらもARIMの活動の中で登録されているわけですけど、そういうものによってARIMの活動を強化する必要があると考えています。
続いてARIMの2つの課題です。データ利活用に関しては、この12月からデータ利活用を、試行的にスタートさせていただきますけれども、そこではまだ提供できるデータの数も限られております。今、今年度、データ登録がスタートしてから既に5,000件を超えるデータセットがRDEのほうに登録されていると聞いております。これらが次々と、エンバーゴが解除された後にデータの利活用のステージに入っていくわけです。そのような膨大なデータを利用者が非常に効率的に利用できるようなデータカタログをつくる。そのためには、データ人材のさらなる拡充が必要ということと同時に、利用者がデータ活用に魅力を感じるユースケース、こういうものを多く提示していくことが重要となります。
ARIMの情報サービスの高度化、すなわち各種のITツール、解析、検索、編集等々できるITツールを充実させ、ユースケースを非常に豊富なものにして、利用者が魅力を感じて利用すると同時に登録のほうも続々と進む、そういう環境をつくっていきたいと考えております。このためにはデータ科学研究者とARIMとの共創というのが非常に重要になると認識しています。
重要技術領域に関しては、ARIMだけで成果をつくることはできません。成果はユーザーと一緒になってつくっていくものです。そういう意味で、重要技術領域に関しては、各領域の先導的な研究者、研究機関、そことのコラボが非常に重要になってきます。この後、御紹介があると思いますけど、DxMT、あるいはほかのマテリアル関連の重要プロジェクト、そこでARIMのサービスを利用していただくことと同時に、共同研究等を通じてリッチなコンテンツをつくっていくということがこれから非常に重要になっていくと認識しております。
とりあえず私の発表は以上です。どうも御清聴ありがとうございました。

【菅野主査代理】 曽根様、どうもありがとうございました。
質疑は、この後まとめて執り行いたいと思います。

【曽根PD】 はい、分かりました。

【菅野主査代理】 では、続きまして、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトの進捗、今後の展望等について、栗原PDより御説明いただきます。
栗原先生、よろしくお願いいたします。

【栗原PD】 では、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト、DxMT、これディーマテと読むんですけれども、の取組について紹介させていただきます。
今日何回も御紹介にありましたけれども、文科省で進めておられるマテリアルDXプラットフォームの中で、ためる、データ中核拠点、DICE、つくる、今御紹介いただいたARIMに対して、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトということで、従来の研究手法にデータ活用という要素を入れて、より日本全体の材料分野での研究手法の革新をしたいというプログラムでございます。
背景については、今日御紹介いただいているんですが、日本で重要なマテリアル分野の研究を革新していくということで進められているマテリアル革新力強化戦略の中のマテリアルDXプラットフォームについて、データ利活用までを担っている部分でございます。
事業の概要としては、材料研究の革新のため、データを有効に活用し、迅速に社会実装につなげるための研究を、社会実装モデルを確立して、拠点内外へ展開すると。実際にマテリアルDXプラットフォームをフルに生かすデータ駆動型研究を取り入れた次世代の研究手法の構築とともに、社会像・産業像に貢献する5つの材料分野における実践で革新的な機能を有するマテリアルの創出を目指すということで、下の図にお示ししているように、従来の試行・経験型の研究にデータ駆動型の研究手法を取り入れることで、設計・予測を加速し、このプログラムとしては新しい、そのような研究手法、そして、それに基づく新材料を提供することで、マテリアルデータによる材料研究の革新をもたらした。さらに、この分野としては、10年先を見据えた4つの社会像・産業像に貢献したいということで、カーボンニュートラル、Well-being、Society5.0、安全安心がレジリエンス国家構築ということでテーマを設定しております。
右にお示しするような5つの拠点と、その拠点活動をつなぐデータ連携部会というものが構成しております。
このプログラムは、今ここに書いてある年度表は9年になっておりますけれども、令和3年度にフィジビリティ・スタディーをやった後に、新たに公募し、採択されたこの5拠点が、まず、主に材料研究者から成るチームですので、それぞれの拠点の持つテーマのDX化を最初のフェーズでやり、次のフェーズで成果をさらに創出すると。それから、拠点横断データ活用による成果創出というようなことを意識しながら進めるということになっております。
ここにお示ししますのは、5つの研究拠点になりまして、東京大学は、カーボンニュートラルを目標として、蓄電池、水電解の課題に対して取り組んでおります。
また、NIMSは磁性材料、東工大は半導体の研究でSociety5.0に貢献し、東北大学は構造材料ということで国土強靱化、京都大はバイオアダプティブ材料ということでWell-beingに貢献するということで、それぞれの研究機関がそれに基づいた研究課題を設定し、特にこのプログラムでは、始める公募段階で産業界からの応援のコミットメントをいただくということを求めておりまして、ここに掲げたような産業界からコミットメント、ステートメントをいただいておるところです。ただ、現在はさらに産業界との連携というのが広がっております。
成果について、研究手法の革新という観点から分かりやすいものを幾つかお示しいたしたいと思います。
東大拠点での、これはデータをうまく材料機能の可視化をしたいということで取り組まれている課題です。放射線X線タイコグラフィによって、セリウムの価数を3次元化したデータが左側にございますけれども、このデータを、このまま見ただけではあまり意味がよく分からない。そういう場合に、特徴を記述するような整理をして、グループ分けすることで、このグループに基づいて色分けするとより見やすいイメージに転換できるということで、未知の相関性を可視化できるのではないかというような取組が始まっております。
そういうことで、材料研究者の気づきを促すというようなものでございます。
次は、よりデータ研究としては分かりやすい例ですけれども、京大拠点は、クモの糸の構造たんぱくデータベースというSILKOMEというのを従来から持っていらっしゃいまして、そのビッグデータを機械学習して、特性予測ができるようになった。例えば強度向上するためのモチーフを特定して、それを構造たんぱく質の中に入れて、モチーフ改変することで、今、拠点長の沼田先生がおっしゃっているのは、1つの特性、例えば強度というものは自由に改変できると。ただ、相反するような特性をうまく最適化するのにはまだ今後努力が必要と伺っています。
これはデータ活用の例ですけれども、それ以外に、データ活用するためには新しい実験技術というのもいろいろ必要でして、これはコンビナトリアル材料合成の新しいアプローチでございます。従来、コンビナトリアルというと、スパッタで元素をスパッタしてコンビナトリアル薄膜材料をつくるというようなことがよくやられているんですが、バルク材料をコンビナトリアルでつくるという試みはあまりないと思っています。
それに対して、東北大拠点では、自由な組成の粒子をつくる技術を持っていらして、その粒子を熱処理して、さらに凝固組織をつくるということで、かなり自由に組成を変えた材料がつくれるというような、こういうような試みもされております。
今のが分かりやすい例と思って挙げさせていただいたものですけれども、それ以外にも、NIMS拠点での磁気記録媒体の成膜プロセスの最適化とか、半導体の特性のよりいい、高移動度、高安定な半導体の開発というような例もございます。
このプログラムでは、新しく始まったデータ活用というもので、さらに人材を育成する、あるいは産業界との連携が大事だと考えて、各拠点、取り組んでおりまして、人材育成に関しては、普通の講習会やセミナーは全拠点でやっておりますけれども、それぞれの実施機関で持つユニークな取組との連携もスタートしております。
例えばNIMSですと、連携拠点推進制度。東工大の場合は、これはJSPSの卓越大学院で東工大は物質掛ける情報ということで進めていらっしゃる教育活動との連携、あるいは、学内の教育プログラムとの連携や、博士進学予定の修士学生へのRA制度の実施というのもございますし、また、今東大では若手研究者からの研究課題提案の募集をされております。
このようなデータ活用ということで、非常に若手の方々の活躍が目立っておりまして、拠点のシンポジウムで、ドクター課程の学生さんが講演するというような例も散見されております。
また、産業界との連携に関しましては、一般の講習会、セミナー等の開催と同時にアドバイザリー招聘や共同研究、会員制フォーラムや協議会も、いろいろなところで今推進されているところですし、NIMSでは従来からなさっている磁性MOPでの共同研究も進んでいます。
特にここでの特色として、各拠点の活動の横串を刺すということで、データ連携部会が研究手法や研究開発ツールの共同開発や共用化、普及活動ということで活動しておりますし、データを取り扱うという新しい活動ですので、知財とかデータを取り扱う上でのルールというようなところが皆さん悩んでおられて、そういうところの全員で相談しながら議論しながら取り組むというようなことを行っております。
最近は、理論計算グループ間、あるいは計測グループ間での横断活動もありまして、例えば「富岳」使っている皆さんが各拠点から出て、計算にどういうふうにデータが活用できるかというようなことを議論するというふうなことも行っております。
ここの中核機関が中心とするデータ連携部会ですけれども、さらに普及展開や各事業との連携も今後進めていきたいと考えております。
これはプログラムの運営体制で、特に専門委員としてマテリアル研究者、データ研究者、産業界から入っていただいて、非常に活発なコメントをいただいているところです。各拠点と連携しながら新しい研究スタイルのものをよりいい形で推進したいということで進めております。
各拠点には従来からの材料創生や理論計算、計測評価データ化に加えて、データ活用推進のグループを4グループ置いて、グループリーダーを置いて、研究推進して、それからそれぞれのテーマに対して研究課題が、また縦串、横串というような関係で各課題にプロジェクトリーダーを置くという形での推進となっております。
これはプログラム委員会の構成になります。
まとめですが、繰り返しになりますので、特に、少しもたもたしましたので、御説明しませんが、今、本格実施の2年目が終わりのほうに近づいておりまして、各拠点はデータを着実に蓄積し、データ駆動による物質研究が立ち上がって、成果が出始めてきまして、来年度の中間評価を目指して頑張っているところでございます。
また、データ連携部会での活動も活発になってきております。
来年度、中間評価に向けては、より明確なはっきりした成果を出すとともに、次のフェーズではどういうところを強化したらば、より活動が加速できるかというようなことをきちっと提示できるようにしたいと考えておりまして、また、それに対する御議論、コメント、御支援等をお願いできれば幸いでございます。
最後は、私が拠点の皆さんに申し上げていることなんですけれども、新しい要素を含む材料研究ということなので、独創と共創、それからデータベースをつくるというような意味では協働が非常に重要だということで、新しい形のチームリサーチができればいいのではないかと申し上げています。
私は、個人としてPDをお引き受けしたところで、チャレンジができる、よい連携が進むようにと願って活動しているところでございます。
以上でございます。ちょっともたもたして時間を使ってしまって申し訳ございませんでした。

【菅野主査代理】 栗原先生、どうもありがとうございました。
それでは、これまでの説明を踏まえまして、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について総合討議を行いたいと思います。先ほどの眞子ユニットリーダー、曽根PD、栗原PDからの説明の後、質問時間をそれほどとることできませんでしたので、その質問も含めて、総合討議で御意見いただければと思います。
いかがでしょうか。
宝野委員、よろしくお願いいたします。

【宝野委員】 宝野でございます。ARIMについて質問ですが、将来的にはARIMの事業以外で購入した各研究機関が持っている設備を活用できれば非常に充実してくるんじゃないかというお話だったんですけど、確かにそのとおりだとは思うんですが、その場合、各機関が持っている設備をARIMの共用用に出した場合、何かインセンティブが与えられるような仕組みを持っていらっしゃるんでしょうか。

【曽根PD】 実際には今そういう形で登録されている設備というのは相当あります。インセンティブというか、むしろ、そういうところで、より広く活用していただきたいという、それを提供する研究者、特に定年になろうとしている先生方からの積極的な意思があります。

【宝野委員】 いえいえ、ですから、それを出す研究機関のインセンティブは何か。

【曽根PD】 研究者のインセンティブね。それについては特に今、ARIMからは考えてはいません。

【宝野委員】 ですから、例えば、我々も時々議論するんですけど、この装置、ARIMで広く使っていただければいいねと言ったときに、これを出すことによって例えばそれを管理する方の人件費等が出るんだったら出してもいいけれども、負担が増えるだけだから出さなくていいねという結論になってしまうことが多いんですね。
ですから、その辺りの仕組みを考えていただければ、もっとARIMで活用いただける装置が増えるんじゃないかと思いました。

【曽根PD】 分かりました。いろんな装置を利活用していく光熱費ですとかスペース代、装置を管理する技術スタッフの人件費、そういったものはARIMから拠出しており、今、宝野さんがおっしゃったように、これはとっても、いろんな措置を使い回すということはとても重要なので、いろいろ考えてみたいと思います。御意見ありがとうございます。

【宝野委員】 はい、どうも。

【菅野主査代理】 他にいかがでしょうか。
折茂先生、お願いいたします。

【折茂委員】 御説明ありがとうございました。曽根先生が御説明されたARIMの中で、研究支援人材の話がございました。7ページだったと思います。専門技術人材が425名いらっしゃると。これはすばらしいことだなあと思っております。
質問でございますが、この専門技術人材、例えば、年齢構成ですとか、あるいは専門性ですよね、そういったこととか、あるいは、もう少し深めて、例えばどういった形で各拠点で採用されているかというところは何か把握していらっしゃるでしょうか。

【曽根PD】 基本的には、これはナノプラのときの資産を受け継いでいます。そこで活躍されていた技術スタッフの方々が継続して。ただ、やはり新しく新規になるということで、任期の問題、これはかなりシリアスな問題になりまして、ARIMとしてもいろいろ各大学の上層部にお願いしたこともありますけれども、やはりそれが難しくなっていく。さらに、別の見方をすると、新陳代謝も必要でしょうから、新しい人もということで入替えも行っております。
専門に関しては、装置の計測、加工、合成、そういった専門性を持った方々がそこには入っているわけですけど、同時にこれからデータを活用していかないといけない。データ人材も新たに今導入、採用しているわけですけども、そこもなかなか追いつかない。さらに言うと、実験の研究者が、新しい時代に向かって、データを高度に利活用できる、そういうスキルを持っていただきたいということで、既存の技術スタッフへのそういう教育の機会もいろいろ設けております。そういう形で新しい時代に対応できるような形の技術スタッフにしていきたいなと思っております。

【折茂委員】 ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりだと思います。こういったARIM事業を継続的に進めていくためには、やはり研究支援人材をやっぱり長期間、長期的に、ある意味バランスよく専門性を考えて配置していくということが非常に重要なってくると思います。各大学あるいは研究機関でこういった技術支援部門を維持するというのはなかなか難しくなってきておりますので、国がそういったところを先導していただいて、研究支援人材というのを、年齢層も含めて、あるいは専門性も含めてバランスよく採っていただければと思っている次第でございます。

【曽根PD】 ありがとうございます。日本最大の技術スタッフ集団を抱えているということで、そこの責任は重々感じております。

【折茂委員】 よろしくお願いします。
すいません。もう1点、人材ということで、最初に御説明いただきました眞子先生のところの18ページのところでございます。最初のナノテクノロジー・材料の研究開発動向と今後の課題・論点の18ページでございますが、よろしいでしょうか。質問といいますか、コメントございでございます。
実は今、東北大学の中でまさに今週、国際会議を進めております。海外からの研究者の生の声を聞く機会が最近多くなっております。これの3番目、3ポツのところの2つ目のポツ、海外からの人材は日本より他の先進国を選ぶというところで、確かにそういう傾向が非常に強くなってきていると思っています。1つが、やはり給料の面ですね。同じぐらいのスキルで同じような年代の方で、恐らく欧米に対して、今、日本の若手研究者に対する給料は恐らく6割ぐらいになってきていると思います。いろんな為替の問題とか、いろんな制度の問題がございますので。その中でも日本に来てくれる外国人研究者のモチベーションが、研究の自由度があることだとよく言っています。
ですので、給料が低い、あるいは、なかなかやっぱり海外から来にくい、コロナの問題もありますので、そういったところを埋めるための1つの方策としては、彼らに研究の自由度、モチベーションを持って、自分の裁量である分野を切り開いてもらうということを託すということもとても大事かなと思っております。
そういった形で、一定数いる、非常に優秀であって、モチベーションが高い外国人研究者を日本にぜひ呼び込めるような形でこの分野の研究力を高めていければと思っているところでございますが、これに関して何か、逆に御意見いただければと思っております。
私からは以上でございます。ありがとうございます。

【菅野主査代理】 眞子さん、いかがでしょうか。

【眞子ユニットリーダー】 私からでいいですか。

【菅野主査代理】 どうぞ。

【眞子ユニットリーダー】 この部分に関しては皆さん御意見あると思うんですけど、私の資料でお話をいただいたのでそうかなと。まずちょっと口火を切らせていただきます。確かに、インセンティブの中に非常に給与という問題、非常に大きな因子を占めるんだと思っています。ただ、外国人の研究者だけに高い給与を出すというのは、逆に日本の研究者は一体どうなるのという話にもきっとなってしまうんだなあと思っていまして、折茂先生言われたような、日本ならではの魅力を出すというのは1つの手かもしれないんですが、基本的にはやはり全体的な問題なのかもしれないなとは思います。それを認めてもらうには相当な、多分海外からの人材を入れるためにはこれが本当に必要なんですよというのを説得力を持って、これがないと駄目なんですよということをアピールしていく必要があるんじゃないかなとは思います。

【菅野主査代理】 いかがでしょうか。折茂先生、よろしいでしょうか。

【折茂委員】 ありがとうございます。給与体系自体は、やはり日本人、外国人で変えることができませんので、そこはおっしゃるとおりです。
ですので、外国人研究者を採用するときは、特に研究の自由度を少し重点的にアピールすると海外から来やすいのかなというところの私の最近の経験でございました。どうぞよろしくお願いします。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。給料が下がっても、日本に来て、そこで腕がふるえるという魅力的な環境をつくるというのが非常に重要でしょうね。
それでは、次、高村先生ですかね。

【高村委員】 北陸先端大の高村です。発表ありがとうございます。JSTの眞子さんにお聞きしたいんですけれども、論文だけでなく、今、データを予算を頂いたときの報告書に記載できるということはヨーロッパなどの国で先行して行われていて、彼らはデータも全部公開するようにということが何年も前から行われています。そういったデータがどのように活用されているかみたいなことは調査されているんでしょうかというのが私の質問です。

【眞子ユニットリーダー】 国のお金を使っているものに関してはデータを出さなければいけない。日本の中でもそういう例が増えてきているような気がするんですけれども、現時点でどのぐらい活用されているか、特に他国の場合というのはよく分からないです。ただ、枠組みとして全部をためていって、ある程度の量がたまっていくと何かができるんじゃないか。ヨーロッパなんていうのは特にそういう、どんどんそれをためていって大きなデータベースをつくっていくみたいなプロジェクトがヨーロッパで走っていますので、具体的にそれで新しく何ができたかというのは、逆にちょっと、そこまでは把握し切れていませんけれども、そういう蓄積とそれを使いやすくするための環境をつくっているというというところを引き継いだところとかがそういうことをやっているような気がしています。具体的な例はちょっと分からないですけれども、ある程度たまらないとできないことというのはあるのかなとは想像しています。

【高村委員】 ただ、イギリスとかドイツでは相当前からそういう公開が義務化されていて、ただどのように公開するかというのは研究者に任されている面があります。フィグシェアとか、そういったものを使っている人もいれば、ボックスにためるのでもいいと言われている人もいるということで、研究者に聞くと、それがその後どのように活用されているのか、あまり例を聞いても分からないという人が多いんですね。
だから、日本がその分野、そういったデータを利用することに関してアドバンテージを持てるとしたら、もっと戦略的にやって、ARIMなんかはそういう側面があるのかもしれないですけれども、もっとどうやってそういう他人がとったデータを利用できるのかということを考えていく必要があるんじゃないかなと思いました。

【眞子ユニットリーダー】 おっしゃるとおりだと思います。もちろんこれは私がお答えするよりもほかに曽根さんとかのほうがよろしいのかもしれませんけども、ARIMがためているデータ、それがNIMSのデータ中核拠点にためていくこと自体が今非常に議論されて設計されているところではないかなと思います。それを使えるような形でためていく、それを真面目に取り組んでいるというのが多分日本のマテリアルDXのいいところだと思いますし、それがうまく動き出したら多分まねされるんだろうなと。先ほど中山さんのお話にありましたけど、そういうことになるんじゃないかなと考えます。

【高村委員】 それと計算データで先行しているアメリカのMGIとかでその後データベースが最終的にどうなったか、どれだけの研究がそこから生まれたのかということも併せて報告していただけると何か参考になるんじゃないかなという気がしました。以上です。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。それでは、次、堅達先生、お願いいたします。

【堅達委員】 文系の私にも分かりやすい御説明をありがとうございました。3点ちょっと質問とコメントがあるんですけれども、ほかの全般の科学技術の分野でも言われていることですが、やはり研究力の相対的な低下という問題に本気でどう取り組んでいくのかというのは結構今分岐点に来ているなと感じて、このままじり貧になっていってしまうのか、それともちゃんと巻き返せるのか。人材育成が本当に鍵だなと思いまして、先ほどの話にもありましたが、本当にちゃんと研究者のインセンティブが保てるだけの十分な予算が確保されているのかということと、昨今、例のmRNAワクチンなんかでも、ダイバーシティーのある研究環境でこそ新しいイノベーションが起きているというようなことを考えたときに、実際、先ほどの研究者、海外からの移民も含めた研究者を受け入れられるような環境が果たしてあるのかとか、あるいは日本の女性の理系志望者がやっぱりどうしても少なかったり、将来展望が持てなかったりするということで、各国に比べると遅れているというようなこともあって、その辺りが、全般のお話になるかもしれませんけど、奨学金とか、さっき、どうやって全体の給与体系の中で、根本から変えるにはもっと違うところから勝負していかなきゃいけないんでしょうけれども、少なくともプロジェクトベースでできることほかに何かないのかというようなところをしっかり検討していくことが大事だなと思ったのが1点と、これは質問なんですが、2番目には、今、生成AIとか、こういったものが急速にこの半年、1年で伸びてきているわけですけれども、今、様々な研究分野にもこうしたものを利用することが想定されているかと思います。日本、残念ながらDXの遅れがかなり激しくて、申し訳ない、ウェビナー会議をやるのにどうしてこんなにいろんな時間がかかってしまうのかも疑問もあるんですけれども、生成AIに対するナノテクノロジー分野、マテリアルの分野でのお考えというのがあったらちょっとどなたか教えていただきたいというのが2点目で、3点目は、せっかくすばらしい日本発の技術、ペロブスカイトとかもそうですけれども、あっても、その後、社会実装のところで実は後で追い越されてしまう。イギリスとか中国に追い越されてしまうという事象を私も見聞きしているんですが、カーボンニュートラル、今世界中で競争が続いていますけれども、非常に重要だと思いますので、ぜひ社会実装についてどういう戦略があるのか教えていただければと思います。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。これは多分全般的なお話ですが、生成AIに関してはどうしましょうかね、栗原先生、今のプロジェクトにおいてはどうでしょう。

【栗原PD】 生成AIについては、もちろん皆さん関心があるんですが、具体的に、それがデータ活用の1つの手法として使えないかという取組をされている研究者もいらっしゃいます。ちょっとまだそれがどういう形になるのかというところまでは御紹介できないですし、そこまで伺ってないんですけど、何かうまく使って、よりいい形で、簡単な形とか、データ活用をしていきたいとおっしゃっています。
それから、先ほどの人材育成のところでも、私たちのそれぞれの拠点でいろいろ人材育成に関しては非常に配慮しておられるんですけども、非常に若い人たちが、やはりDX化ということですと、関心を持って積極的に取り組んでいただいているということがあるので、そういう意味で、理系人材とか、人材育成とかいう意味で、やっぱり新しい研究活動を推進していくというのは非常に大事なんじゃないかと感じております。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。研究力低下、人材育成、それから社会実装へのギャップというのが、先ほどの質問の中でありましたが。

【栗原PD】 そうですね。そういう意味では、私どものところ、社会実装のところも少しお答えできるかと思うんですけれども、今、非常に産業界、DX化は関心が材料分野でも高く、シンポジウムをやりますと、半数ぐらいの参加者が産業界からです。それぞれの拠点でも、私どももコンソーシアムを全体としてつくりたいというような議論をしておりまして、各拠点でもそういう準備活動というか、具体的に拠点別の先ほど申し上げたような協議会とか、フォーラムとか、ニーズをうまく受け止めるような活動も意識して進めております。
以上のことでお答えにはなっているかどうか。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。なかなか正解はないと思いますが、先ほど眞子先生から、とりまとめ、論点を提示されたところと課題は重なっています。課題提示をされて、何かここで思うところがもしあれば、お願いできればと思います。

【曽根PD】 曽根ですけれども、生成AIの件について、非常にこれから時代を変えていく大変な技術が生まれてきているのだなという認識を持っていますけど、AIに関してはやはり、高度なIT技術と並んで、良質のデータがどれだけ集まってくるのか。これARIMをやって、私、最近、非常に強く思っているのですけど、1人の研究者が自分の実験で得られるデータの量なんて、考えてみると、今の時代のスタンダードでいくと限られているんですよね。それがいろんな人が似たような実験をやっている。そういう実験から得られるデータを集めて、それがうまく利活用できたらすごいポテンシャルあるなと本気でそう思っているんですけど、そのときに、今までのデータというのは、論文なんかでパブリッシュされて、ある意味で、お見合い写真と言ったら言い過ぎになるのかもしれませんけど、研究者が自分の論理を介して結論を出したい。その意図に沿ってデータを集めていく。そのデータが論文として公開されているわけですね。今、ARIMは全く新しい形のデータの収集をやろうとしていて、ワーキングデータというか、日々の研究活動の中で生まれてくるデータ。そのデータの中にはそれを取得した研究者の意図とは違った非常に貴重な情報も入っているかしれない、見方を変えると、そういうものが重要なデータとして利用可能になる。そうすると、それはまさに、データを出した人じゃなくて、それを使う人の能力に依存して、とんでもないことを生み出すのではないのかな、そういう新しい時代に入っているのではないのかなと思っています。その一形態として生成AIみたいなものが出てきている。マテリアルの分野でもすごいことが起きる可能性があるのではと個人的には思っています。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。時間が迫ってきていますので、次、吉江先生、御意見いただけますでしょうか。

【吉江委員】 ありがとうございます。吉江です。私も今日最初に頂いた眞子さんの資料についてなんですけれども、この資料、ナノテク材料の研究環境を今俯瞰するのにとてもいい資料になっていると感じておりまして、この先もずっと参照させていただきたいなと思っているところです。
これの最後にあった論点と課題提示のところですけれども、最初の、先ほどから話題になっております国際的な研究、存在感の低下、あるいは論文数が増えていかないというか、1人当たりの論文数でいうと減っているというような現状についてですけれど、私自身の実感として、あるいは周りの近しい人たちの行動を見ていて、今、研究者と言われる人たち、皆さんすごく忙しい。何かすごく忙しいような気がするんですね。実際に多分統計データとしては研究時間が減っているというようなデータもあるんじゃないかなと思います。
減っている要素の中には少しワーク・ライフ・バランスみたいなものを重視したというような風潮もあるとは思うんですけど、一方で、例えば週末の土曜、日曜でもメールを書けばすぐ返事が返ってくるとか、オンラインの会議がいっぱい入っているとか、そんなようなことを考えると、実は仕事時間自身は減ってなくてむしろ増えているんじゃないかなというような実感があったりします。
こういうような状況が見えると、これ、今のこの課題の3番目にある研究開発人材がなかなか増えていかないというところにも絡んできて、学生にとって、多分私たち研究者って、研究自体が充実しているということ、あるいは楽しいという思いはすごくあるし、学生にもそれは十分に伝わっているような気がするんですけど、それに増すぐらい、研究者という仕事がしんどそうに見えてしまっているのではないかな。そういうことが見えるので、研究を続けるとしても、こういう公的な機関、いわゆるアカデミアではなくて、企業で続ける。その企業で続けるのでいうなれば、私たちの分野でいくと、ドクターは必要なくて、マスターを出て就職がいいかなというような思いにつながっていくんじゃないかなと考えています。
それで、これはあまりこの委員会の議論の対象ではないかもしれないんですけど、1つお伺いしたかったのは、なぜ研究者がそもそもそんなに忙しくなっているのかというのは、例えば文科省さんなんか、あるいはCRDSさんなんかで調査されていたりするんですかね。もちろん大学の仕事もありますけれども、学会の仕事、あるいは今日のこの会議を含むような公的なお仕事、研究費を取りにいく仕事、あるいは、人によっては、地域貢献とか、中高生支援とか、いろんな様々な各種の業務があって、私自身もその業務に実際のところどのぐらい取られているのかって自分でもあんまり計算したりはしてないんですけども、そういうようなところをもうちょっと深く分析、どなたかが分析して警告を発していただける、もしくは改善策を示していただけるといいなと思うんですけど、そういうことをできるのって、1大学とかではなかなか難しいので、学会あるいは社会活動が絡んでくるので、やっぱりこういう全体俯瞰できる立場の方にやっていただけるといいなと思うんですけど、その辺いかがでしょうか。

【菅野主査代理】 文科省から。

【宅間参事官】 文部科学省からお答え申し上げます。参事官の宅間でございます。研究力の低下につきましては、分野に限らず共通的な問題で、直接担当していないので、今確たるデータで申し上げられないんですけれども、例えば科学技術・学術政策研究所等での調査においても、研究者の研究時間が少なくなっているというようなデータがあったと思います。先生のお求めの粒度に合っているか分かりませんが、もし御必要でしたら関連のデータ等も次回以降でお示しできるとよろしいかなと思いました。

【吉江委員】 ありがとうございます。そうしていただけると大変助かります。ただ、本当に、皆さん、忙しいとは思っているけど、何がどう忙しいのかというのを自分でもつかみ切れてないところがあるんじゃないかなと思っていて、あと、研究者がやっている仕事が、本当に研究者がすべき仕事なのかどうかという観点をもうちょっと考えたほうがいいような気がしていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【菅野主査代理】 ありがとうございました。それでは、馬場先生、お願いいたします。

【馬場委員】 名古屋大学の馬場でございます。中山委員に伺いたいんですが、先ほど、眞子さん、CRDSのほうからの御説明で、非常に分かりやすかったんですが、先ほど中山委員が追加で、2ページ目の内外政策のところで、ナノ支援とか、元素戦略とか、ARIMがいろんな国に先行した非常に優れた施策になっているという御指摘でしたけれども、私もそのとおりだと思っております。それに当たっては、7ページにあります、本委員会がまとめた研究開発推進方策というのが非常に重要だったのかなと思うんですが、中山委員、その辺で御意見、あるいは過去の統計に基づいて御説明いただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。

【中山委員】 ありがとうございます。馬場先生が言われることは、まさにそのとおりです。今後、我が国としての推進戦略をまとめていくことは、まずは極めて大
事なことだと思います。その作成に当たっては、諸外国のこともしっかりと調べるのは当
たり前のことでしょう。JSTが持っている知見もそうですし、文部科学省にいろいろ集まっている知見、あるいはナノ材委員会を含め各最先端で御活躍されているような、情報の感度が非常に高い先生方の意見を入れて練っていって、ナノ材委員会とか、日頃のナノ材参事官付とのディスカッション、その他多くの方々と一緒に練りながらつくっていったということです。
ただし、何かを諸外国に先んじてやるということは、なかなか難しいことです。我が国というのは諸外国でやっているからやるべきだという論理の施策が非常に多い中で、極めて難しいのを実感しています。何でやるのと言われたときに、どこもやってないのであれば後回しというのが通常です。偉い人も含めてみなさんの固定概念もかなり強いです。ただし、ナノ材分野に関しては、ナノ材ということが比較的新しかったのと、そもそも我が国として強いところだったので、より攻めることができた気がします。割と先んじてやるというマインドが高かった。だけど、先んじてやるということは、すなわち誰もやっていないことで失敗するかもしれないのですが、そういうことに果敢にチャレンジするという気持ちがあったというのがやはり大事だったかと思います。
将来に向けてということであれば、そういう守るところと新たに攻めていくところをしっかりと考えながら、諸外国を見つつ、それらの先には何があるんだろうということを冷静に考えていくべきでしょう。あとは、最近は先行するところがどんどん先に領土をとってしまうような面も強くなっているので、先んじてやる、機敏に動く、長くしっかりやるなど、ポートフォリオで対応していくような戦略を練っていくということが極めて大事だと思っています。
馬場先生とかも長くナノ材委員をされていて、議論もさせていただいています。こういう流れを皆さんに十分理解頂いた上で、我々も、ナノ材参事官付の皆様も、一緒にいろいろ考えて作ってきました。今後も是非とも一緒に考えさせていただければと思います。ありがとうございます。

【馬場委員】 ありがとうございます。

【菅野主査代理】 ありがとうございました。現在のAI、MIを利用する手法の試みは、もう多分10年後には一般的になっていて、その次にどうするかですね。AI,MIを当たり前に利用するその次の段階ではどうするかを議論するのが多分一番重要かもしれないですね。
次、御質問、加藤先生。これで時間が来ますので、最後にしたいと思います。加藤先生、よろしくお願いいたします。

【加藤委員】 加藤です。いろいろありがとうございました。私も先ほどの中山さんとか眞子さんのところで思ったのですけど、政策的なことがあって、それでいろいろ考えていくというのは、やはり延長線上にあることが多いので、それはそれで大事だと思うのですけれど、折茂先生がおっしゃったように、科研費で上がってくるボトムアップとか、先端的なところにも目を配って、それで外から拾い上げていくというのも重要なのではないかなと。つまり、こういうところに合うか合わないか分からないけども、学者の上げてきたような、そういう科研費のような基盤的なものが実は、このような政策のヒントになるのではないかと思いますので、ぜひそっちのほうにも目を向けていただきたい。
例えばクリントンがナノテクノロジーイニシアチブを始めたのは2000年ぐらいですけど、90年代の終わりに国武先生が高分子・ナノ組織体という重点領域研究をやられて、ナノという言葉を日本が使っているのですね。そういうふうに日本の基盤的な研究のところも十分に活用できるようにしていただくとありがたいかなと思います。
以上です。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。活発な御意見、御議論、どうもありがとうございました。予定の時間から過ぎてしまいましたので、本日はここまでにしたいと思いますが、いただいた御意見、事務局に取りまとめて、次回以降、引き続き検討を進めていくことにしたいと思います。どうもありがとうございました。
続いて、議題2、その他に移ります。事務局より説明をお願いいたします。

【柴田補佐】 文科省事務局でございます。まず初めになんですけれども、本日は運営の不手際がございまして、冒頭、なかなかスムーズに会議等を進められなかったこと、また会議中につきましても、資料共有等、スムーズにいかなかったことをおわび申し上げます。大変失礼いたしました。
次回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましてですが、令和6年の1月19日の10時から12時30分を予定しております。詳細は追って事務局より御連絡をさせていただきます。
また、本日、総合討議のほうで、非常に時間も限られておりまして、参加者の先生方多ございましたので、御意見賜れてない先生方いらっしゃると思います。既に瀬戸山先生からはメールで御意見賜っておりますが、ほかの先生方でも御発言足りないところが、不足していると感じておられるところがございましたら、メールでもいただければ、また事務局のほうで整理の上、次回御紹介させていただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
ただ、1月15日の会議でも総合討議の時間は予定しておりますので、そちらでの御発言で代えさせていただければ、あるいはそちらで御発言をどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成しまして、委員の皆様にお諮りし、菅野主査代理に御確認いただいた後にホームページにて公開いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。

【菅野主査代理】 ありがとうございます。
それでは、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――