第11期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第8回)議事録

1.日時

令和4年11月24日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省会議室(※Web開催)

3.議題

  1. 研究開発課題の事後評価について
  2. 「マテリアル先端リサーチインフラ」の取組状況
  3. 「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト」の取組状況
  4. その他

4.議事録

【高梨主査】定刻となりましたので、ただいまより第11期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の第8回を開会いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、文科省の会議室とオンラインを併用したハイブリッドの開催といたします。
 早速ですが、まず事務局より、本日の会議の流れの説明をお願いいたします。

【江頭参事官】文科省参事官の江頭でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 まず、事務局メンバーの交代がございましたので、先にそれを御紹介します。
 まず、今遅れておりますけれども、研究振興局の審議官、木村という者が8月に着任しております。後で御挨拶させていただきたいと思います。
 それから、ナノ材の補佐に長田が着任しております。一言だけ、よろしくお願いします。

【長田補佐】8月12日付で補佐に着任しております長田といいます。皆様、よろしくお願いいたします。

【江頭参事官】以上、事務局の変更でございます。

【長田補佐】それでは、本日の議事の確認をさせていただきます。
 最初に、本日の委員の出欠の関係でございますけれども、本日は、大久保委員、尾崎委員、吉江委員、萬委員が御欠席となっております。納富委員と高橋委員がオンラインで入られる予定ですけれども、遅れていらっしゃるという状況でございます。当省からは、先ほど御挨拶しました江頭参事官と、あと審議官の木村がこの後参加させていただきます。
 資料につきまして、お手元にございますとおりです。オンラインの先生方には事前に送らせていただいたとおりでございまして、資料1-1から資料3-3までがメインの資料となります。もし欠落等ございましたら、議事の途中でも結構ですので、事務局までお知らせいただければと思います。
 本日は、まず議題1としまして、研究開発課題の事後評価として、元素戦略プロジェクトの概要について事務局から御説明した後、事後評価票の案につきまして、当該事業の事後評価検討委員会の委員である平田委員より御説明いただきまして、皆様に御議論いただくこととしております。
 次に、議題2としまして、令和3年度より開始しましたマテリアル先端リサーチインフラの取組状況につきまして、本日、小出運営機構長に来ていただいておりますので、御紹介いただきます。
 また、議題3としまして、今年度より本格実施を開始しましたデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトについて、最初に簡単に事務局から事業概要を御説明した後、採択拠点のうち2拠点の研究代表者であります東京大学の杉山先生、物質・材料研究機構の大久保先生より、研究内容について御紹介いただくこととしております。
 なお、本日は、文部科学省内の会議室とオンラインのハイブリッド方式での開催としております。オンラインで御参加の方につきましては、回線負担の軽減や雑音防止の観点から、御自身の御発言時以外はマイクをミュートにしていただくとともに、この後はビデオもオフにしていただいて、御発言のときにオンにしていただく形で結構でございます。また、御発言を希望される際は、挙手ボタンにて御発言の意思を表明ください。御発言の際は、議事録作成の関係上、お名前を最初におっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。
 それでは、以降の議事進行につきまして、高梨主査のほうにお願いいたします。よろしくお願いします。

【高梨主査】ありがとうございます。それでは、議題1の「研究開発課題の事後評価について」に入ります。本件につきましては、平成24年度から令和3年度までの10年間実施しました元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>について事後評価を行うものでございます。
 既に外部有識者から成る事後評価に係る検討会を開催し、事後評価票案を作成いただいておりますので、当該事後評価票案について御報告をいただいて、本委員会において質疑応答、討議を行い、事業評価票案についての検討、取りまとめを行いたいと思います。取りまとめた事後評価票案については、研究計画・評価分科会への報告を経て決定ということになります。
 なお、参考資料1の「第11期研究計画・評価分科会における研究開発課題の評価について」におきまして、分野別委員会等で利害関係者の範囲について明確に定めることとされていますが、当委員会の利害関係者については、7月に開催した第6回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会で、研究計画・評価分科会と同様の範囲と決定されております。参考資料1を御覧になっていただければと思いますが、評価対象課題に参画している者、それから、被評価者(実施課題の代表者)と親族関係にある者、利害関係を有すると自ら判断する者、分科会において評価に加わらないことが適当であると判断された者ということであります。
 本日御出席の委員のうち、瀬戸山委員、中山委員、宝野委員については、本事業に参画されており、利害関係者に当たると申告をいただきましたので、評価に係る御発言は控えていただければと思います。それから、実は私も利害関係者に当たりますので、本議題に関しましては、意見は一切申しませんで、司会進行に徹したいと思っております。
 その他利害関係者に当たる方はいらっしゃいますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、事後評価票案の御報告の前に、まず事務局より、当該事業の概要について御説明をお願いしたいと思います。また、事後評価票案については、本事業の事後評価検討会の委員である平田委員より御説明をお願いしたいと思います。
 それでは、事務局より事業の概要について御説明をお願いいたします。

【谷口調査員】ナノ材の谷口です。本日、事後評価の対象となる元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>について、概略を御説明いたします。
 第6回ナノ材委員会で決定したナノテクノロジー・材料科学技術分野研究開発プログラムとなります。今回の事後評価対象である元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>は、この中で左下の「広範な社会課題の解決に資する研究開発の推進」のプロジェクトとして位置づけられております。
 次のページです。こちらはプロジェクトの概略です。御存じのとおり、レアアースなどの希少元素は様々な先端産業製品に利用されております。しかし我が国は、世界的な需要の急増や資源国の輸出管理政策によって、深刻な供給不足を経験しました。その一方、元素の秘めた機能を自在に引き出せれば、材料の高性能化、そして産業競争力につながるということが分かっております。そこで、当プロジェクトの目標は、希少元素を用いない新しい代替材料の創製とされました。そして、産業的に重要な4つの材料領域を特定し、トップレベルの研究者を募りました。
 画面左下ですけれども、その体制の模式図です。アカデミアの分野の壁を打破するために、元素の機能の理論解析から新材料の創製、特性評価までを一体的に行う研究拠点を形成しました。電子論グループでは基礎科学に基づいた新材料の提案、材料創製グループでは、その作製、解析評価グループでは新材料の特性評価を行います。1つの拠点で、これら3つのグループが一体となって研究を推進いたしました。さらに、省庁の壁を打破すべく、内閣府SIP、経産省・NEDOとのガバニングボードを開催し、連携体制が構築されました。また、NEDOのレアアース関連プロジェクトも並行で立ち上がっておりました。
 次に、画面右下ですが、4つの材料領域と拠点設置機関は次のとおりです。磁性材料はNIMS、触媒・電池材料は京都大学、電子材料は東京工業大学、構造材料は京都大学となっております。本日御紹介いたします様々な成果は、このような体制の下で得られたものであります。なお、事業期間は2012年度から2021年度までの10年間で、予算総額は約217億円でした。
 以上となります。

【高梨主査】どうもありがとうございました。
 では、続いて平田委員より、事後評価票案について説明をお願いいたします。

【平田委員】お手元資料の9ページ目からになるかと思います。評価結果の達成状況等につきまして、要点をかいつまんでお話しいたします。
 まず課題の達成状況ですが、各拠点が事業開始時に設定した目標は、それぞれ達成されました。また、拠点の形成についてもおおむね成功しました。
 各拠点の達成状況です。まず、磁性材料拠点です。電気自動車の駆動モーターなどに使う高性能磁石を、ジスプロシウムフリーを目標に研究活動を行い、ジスプロシウムフリー磁石及び究極的高性能ネオジム磁石への指針導出。拠点終了後の産学連携研究の仕組みとして磁石MOPを設立し、国内主要磁石メーカー4社と2022年4月1日、活動を開始しました。
 触媒・電池材料研究拠点に関してです。希少元素を節減あるいは代替した高性能触媒・二次電池の開発、指導原理の解明を目標に研究を進め、世界で最初のPGMフリー三元触媒を理論先行で開発し、電池分野におきましては、ナトリウムイオン電池フルセルの試作に成功したなどの成果が得られました。
 次に、電子材料研究拠点です。エレクトロニクス産業を支える電子部品を中心とした幅広い分野において、多存元素を使用した材料設計コンセプトの創出、フラットパネルディスプレイ用半導体材料や、パワーエレクトロニクス用高安定高誘電体材料の産業界への移転のような、社会実装につながる成果がありました。
 次に、構造材料研究拠点に関してです。現在大量に使用されている希少元素を抜本的に削減した代替材料の開発を目指し、強度と延性が両立する材料の開発に必要な学理構築と産業応用への貢献、構造欠陥(ミクロ)と機械的強度(マクロ)の関係の学理を追究するに当たり、データ駆動型研究と最新の解析装置を組み合わせ、新概念「プラストン」の制御により、添加元素に頼らない材料開発を実現しました。
 次に、必要性に関してです。希少な元素資源を用いない革新的な物質・材料で持続的な社会を構築するという元素戦略のコンセプトは、資源の制約を受けやすい我が国にとって必要なものであり、カーボンニュートラルやEV化の流れへの対応も概ねなされ、産業ニーズに適切に目標を反映させたと言えます。
 有効性に関してです。全体としては十分に事業目標が達成できました。政策研究大学院大学の林教授が論文を解析したところ、本事業の論文は、科研費の論文では見られなかった化学・物理分野と材料工学の共著が多いことが判明しました。これにより、拠点形成の目標であった3つのグループ機能、電子論、材料創製、解析評価の融合が成功したことが示唆されました。また、大規模研究施設、SPring-8、J-PARC、KEK-PF、「京」、「富岳」とも密な連携を図り、多数の論文が発表されました。
 続いて、効率性の評価です。明確な運営指針の基本方針の下、効率的な運営体制が築かれました。プログラム運営委員の半数以上が企業出身だったことから、社会や産業界のニーズを取り込めたと言えます。ただし、社会全体の成果とするためには、よりオープンな仕組みを作る必要があるという議論になりました。
 続きまして、(2)科学技術・イノベーション基本計画等の上位施策への貢献状況です。本事業の目標である希少元素の使用量削減・代替の実現は、科学技術・イノベーション基本計画の「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱な社会」における持続可能性、強靱性の両方に貢献します。得られた成果は、「革新的マテリアルの開発と迅速な社会実装」とも、重要なマテリアル技術・実装領域での戦略的研究開発の推進を進める点でよく整合します。
 続きまして、中間評価時の指摘事項とその対応状況に関してです。主な指摘事項として、事業全体に係る指摘、例えば元素戦略の学理構築や、事業終了後も人が集まる拠点を残してほしいなどの要望に対して、各拠点とも真摯に対応できたとしています。
 その下は概要が書いてありまして、最後に、(4)総合評価に移ります。
 総合評価に関してですが、何よりも世界で起きていた物質科学におけるパラダイムシフトを先頭に立って我が国に導入し、成功事例を残した功績は大きい。事業目標は妥当であった。いずれの拠点の事業目標も、希少な元素資源を用いない革新的な物質・材料で持続可能な社会を構築するという元素戦略のコンセプトに沿っていた、さらに、カーボンニュートラルの流れへの対応もおおむねなされていました。
 事業目標は全体として達成されました。ただし、海外向けにはもっと積極的にアピールすべきであった点もあるとの指摘もありました。また、各拠点とも、若手人材の活用、リーダーの育成、拠点出身者の活躍が見られました。
 拠点運営に関しては、運営メンバーから各拠点に適切な指示が行われていました。その結果、研究グループの組替えなど体制の最適化を進め、情報伝達の一本化を図るなどの対応が取られていました。
 次に、評価概要です。各目標に関しては、全体としては達成されました。対外発信に関しては、国内の学術界においては十分なされたと言えます。また、若手研究者の活躍、リーダーが育成されました。知財戦略の遂行においては、分野の性質もあり、拠点によって特許出願数に差がありました。ただし、特許出願しやすいテーマ、例えば触媒や電池と、しにくいテーマ、構造材料などがあるため、件数だけで見るべきではないとの意見もございました。
 続きまして、指摘事項です。知財戦略、研究成果の何を特許化すべきか、オープン・クローズ戦略についての議論が不明瞭であった、ただし、特許化するとなると、事業後の維持費などの面で国の支援も必要である。元素戦略というキーワードは定着したが、この概念の真の実現には、かなり長い時間が必要であり、今後どのようなサポートができるかが大きな検討課題となります。
 続きまして、今後の展望です。高性能な材料が多数得られたので、一日も早い社会実装が期待されます。また、材料カタログとして公開し、ユーザーに材料を選ばせるような仕組みもあり得ます。構造材料の電子状態や特性がセットとなったデータも多く蓄積されていると推定されるので、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトへの引継ぎ、そこでの発展を期待します。拠点の成果を事業外にオープンするための共通した施策が望まれます。今後プロジェクトを運営する上でもこれらは課題となろうということが、今後の展望として述べられております。
 早足ですが、ざっとこんなような感じになりました。

【高梨主査】どうもありがとうございます。それでは、ただいまの説明内容に関しまして、御意見、御質問等ございましたら、挙手ボタンをお願いします。あるいは、対面の方は直接、手を挙げていただいて。
 では、まず対面のほうで、馬場委員、よろしくお願いします。

【馬場委員】馬場でございます。詳細な御説明ありがとうございます。2つ教えていただきたいんですが、1つは中間評価の対応で、終了後の拠点形成について、各拠点進められているという御説明でしたけども、何か具体的な例がありましたら教えていただければと思います。
 それからもう一つは、これだけのものすごい成果が出ている事業ですので、最後の今後の展望にもありましたけども、今後、データ創出・活用型のプロジェクトに限らず、様々なところでデータとか成果を活用していくというのが、本当の意味でこの元素戦略を実現していく上で重要だというふうに思いますけども、そういった取組というのは。これで国費がなくなってしまうので、なかなか難しいのかもしれませんけども、どういうことを検討されているかというのがもしありましたら、教えていただければと思います。

【谷口調査員】では、事務局からお答えしてよろしいでしょうか。どのような事業に引き継がれているかの例ですけれども、例えば触媒・電池拠点の電池側のほうは、先ほどありましたデータ創出プロジェクトの方で、東京大学の電気化学拠点に同じ研究者が集まっているというふうになっております。あと他には東工大の元素戦略・マテリアルDX拠点というのが引き続き存在していまして、こちらで研究を続けていくと聞いております。

【中山委員】本件POとして発言させていただきます。物質・材料研究機構が、すなわち宝野委員のところですが、事業の成果をしっかりと受け止めて、さらに展開するような組織を機構の中に作っていただいています。同じく構造材料の京都大学も、学内に元素戦略と名前のついた研究組織を残してさらに続けているということで、これらをしっかり継続しようという動きは続いております。また、本施策の終了を受けて、元素戦略という戦略目標が文部科学省から発せられて、JSTでその傘の下に研究領域が設定されて動いているというような、さらにつないでいくことがしっかりと行われていると認識しております。補足でした。

【江頭参事官】事務局です。さらに補足でございますけれども、後でデータ創出・活用型の新しいプロジェクトの中でも御説明がありますけども、やはり材料研究開発プロジェクトの中で出てくるようなデータなどは、これからはある程度、その後のことも考えて共有して、残して、しっかりそれを後で使えるようにという、それは反省点の一つでもあります。ですので、新しいプロジェクトにおいては、研究開発プロジェクトなんかで出てくるようなデータ、これは我々ナノ材のプロジェクトに限られた話ではないですけれども、重要なものについては、例えばNIMSのマテリアルデータプラットフォームの中に収めるとか、そのためにデータの構造化のルールを合わせるだとか、そういったことを検討しながら、ナノ材のプロジェクトを今、走らせようとしているところでございます。
 以上です。

【馬場委員】ありがとうございます。

【高梨主査】よろしいですか。どうもありがとうございます。
 それでは、他にというところで、今、オンラインの方で五十嵐委員の手が挙がっていますが、五十嵐委員、どうぞ。

【五十嵐主査代理】御報告ありがとうございました。元素戦略のこのプロジェクトが始まるときに、やっぱり10年間の長期のプロジェクトを組むと、そのときに、我が国の資源リスクを回避できるような、従来の延長線上にないチャレンジングな研究に取り組んでもらう、そういう発想で始まったと思うんですね。ですから10年間、実際プロジェクトが運営されて、様々な成果が出て、それで今回の評価に至っているわけなんですけども、実際、実施者の方、それから支援した方々、官僚の皆さんも大変な御苦労あったと思うんです。
 ですから、今回の事業評価には、そういう苦労がやっぱり染み出るような表現を使っていただきたいなと思うんですけども、評価概要、指摘事項、今後の展望のところにあるんですけども、例えば、体制の最適化も行われた、知財戦略の遂行においては分野の性質もあり特許出願数に差があったと、これだけ言われると、多いところはできたけど、少ないとこは駄目だったと、そうじゃないんですよね。例えば論文が5,000報出ましたと、本来論文に書くのは、新しい事実を見つけたら、全て論文になるわけです。そういう事実をいくつか組み合わせて、それで特許が出ると、新規物質が開発されたら必ず特許できます。ですからそういうことはきっちりやられていると思うんですよね。その上でも特許数、数が出ないところはあるんです。それから、中間評価でも指摘のあった、知財化価値のあるものは特許化を進めていただきたいと、これができましたかというのが事後評価で、それについては全て特許化できましたと言っていただけると、非常に納得感があるんですよね。
 それが1点と、あと今後の展望の最後にある「拠点の成果を事業外にオープンにするための共通した方策が望まれる」と、これはやっぱり繰り返し言われているんですが、今回のプロジェクト運営でも、途中ででも、プロジェクト運営委員会、プログラム運営委員会等で議論された結果、それでもなかなかできなかったと。多分何か難しいことがあったんだと思うんですよ、トライしたけども駄目だったとか、やはり性格上できなかったとか、そこを書かないと、何か定性的に、オープンにできなかったと、拠点に閉じてしまったと言われてしまうと、せっかく10年間積み上げて、新たなことにも取り組もうとしているのに、それで少し価値がぼやけてしまうんじゃないかなというふうに危惧します。
 あと2点、ちょっと個別にはなるんですが、磁性材料のところで、レアアース濃度の低い新規磁石化合物を開発したとあるんですけども、これは具体的に、例えばこれでレアアースを従来の10分の1に削減できるとか、そういうことは成果として上がっていないんでしょうか。さらには触媒のところで、自動車排ガス用のパラジウム含有量を1~2割にまで削減できたとあるんですけども、これは、1割まで削減できたんだったら、10分の1になったと明確に言えないんでしょうか。この2点は、どうなんでしょうかという質問です。
 以上です。

【高梨主査】ありがとうございます。どうしましょう、質問にはどなたが答えるのが一番適切でしょうか。

【長田補佐】事務局のほうで幾つか答えさせていただいて、細かい成果のところは、もし、今日いらっしゃるPOなり、ほかの事務局で補足あればと思います。
 御指摘ありがとうございました。特許の関係に関しましては、前の委員会の場でも、単純に数だけで議論するのはいかがなものかというような趣旨もあり、議論がありました。それも踏まえて、そこを配慮するような記載もしておりますが、今、委員からいただいたように、もう少し踏み込んで、こういう表現で、駄目だったというような感じで受け取られないように、実際に知財化すべきものはしたのか、そういったことを書けるか、そこの辺り改めて検討させていただきたいと思います。
 あと2点目の、拠点の成果を事業外にオープンにするための共通した方策というところでございます。これはやはり事業の切り口で、どういったところを共通的にやるかということが重要だと思っていまして、今後に向けて、次のデータ創出事業のところで、データを活用した研究手法、もしくはデータそのものをいかに横展開して連携していくかという切り口でいけば、各拠点の研究内容が、拠点によって様々な分野で、分野の一定の性質の違いがあっても、横串的にやはり仕組みをつくれるのではないかということで考えています。具体的には、データ連携の関係の横串的な議論をしたり、また対外的に発信するような部会をつくるというようなところを今検討して、動き始めているところでございます。そういった一つ共通的な切り口という観点で、データに着目するのがよいのではないかなということで、今後に向けて検討しておるところでございます。
 すみません、私からは以上です。

【五十嵐主査代理】2点、承知しました。ありがとうございます。

【高梨主査】では、どうぞ中山委員。具体的な質問になっているので、お願いします。

【中山委員】POとして、知っていることをお答えします。まずは最初の質問です。もう少し書きようがあるんじゃないかというところ、例えばこのプロジェクトが始まったときには、電子論と解析評価と実験をしっかりと連携させて推進しましょうということにつきまして、10年以上も前にプロジェクトが計画されたときには、当然ですが全然みんなやっていないわけです。そのようなハードルをまずは越えて、今では当たり前のことを当たり前にするのが大変でした。あるいは、府省連携について、今は普通にやっていますが、昔はそんなこと全然できていませんでした。その当たり前のことを最初にやって、すごいハードルを越えて、活性化エネルギーを越えて、今はその越えた先にあるということです。目的を達成するためにやらざるを得なくて、ハードルを越えてしっかりやったというところも、委員がおっしゃるようなことと同時に大事なことだと思っております。
 あと最後の、レアアースやパラジウムの件です。これは、ジスプロシウム等のレアアースを削減する方策はつくりました。ただし、それをどういうところに使っていくかということは別問題です。方策は提示したが、ジスプロシウムが高く希少でも使いたいという企業もおられるでしょう。それで全部減ったかというと、そうではなくて、あとは方策を提示された産業界が、それを使えるところには使っているという状況です。それは元素戦略の過去の成果であるパラジウムやプラチナ等の貴金属も一緒です。目的に合わせて、もちろん減らしている自動車はたくさんありますが、高くても効果をよりたくさん出したいから、やっぱりたくさん使うというところもある。だから単純に全部減ったというわけではないですけど、明示的にここから出てきた知見で一段階減らしているということは確かだと思われます。ただ、それをちゃんと定性的に、どれだけそれで完全に何割減ったよというところまでは、それは産業界次第なので言えないという状況だと思っています。
 以上です。

【五十嵐主査代理】承知しました。

【高梨主査】すみません、湯浅委員からも。関連してだと思うので。

【湯浅委員】私も事後評価委員の一人としていろいろ議論しまして、特に特許の件も、私もいろいろ意見を言わせていただきましたが、やはり拠点によって特許が、論文数に比べて少ないと言わざるを得ないところはあるという意見は述べました。ただ、委員会として、単純に数じゃないよという、ちゃんとコメントはしてあると。ただし、極端に少ないところは、やはりなぜ少なかったか、それが妥当だったかという説明をしていただかないと、これ以上のことは事後評価委員としてはフォローしきれない部分もありますよね。ちゃんとこれで妥当なんだという説明が実際の委員会でなかったわけで、これ以上のことはちょっと書きようがないように私は思います。

【五十嵐主査代理】分かりました。御苦労があったというのはよく分かったんですが、やっぱりプログラム運営委員会があったわけですから、そこで責任持って、特許はこれで全て書けたとか、例えば構造材料1件だけ、さん然と輝いていますけど、この特許が普遍的な、本当に誰も真似できない特許であれば、1件でいいと思うんですよ。そういう議論まで拠点の中でやっていただいていたんだったら、それでいいかなと思います。
 以上です。

【湯浅委員】いや、構造材料の説明で、特許に関する言及が全くなかったため、我々としても、それ以上はちょっとフォローしきれない部分あります。

【五十嵐主査代理】承知しました。すみません、長くなりまして。ありがとうございます。

【高梨主査】どうもありがとうございます。取りあえず他にございますか。
 どうぞ、長谷川委員。

【長谷川委員】長谷川です。御丁寧な説明ありがとうございました。全体として本当に、この10年間で、そしてコロナ禍の大変な中でもコンスタントにすばらしい研究を出し続けるということでは、本当にすばらしいことだなと思って拝見しておりました。
 私からは2点あるんですけども、今の特許のことにも関連するんですが、幾つか出されている特許の中で、実装間際あるいは実装した成果というのはあったんでしょうか。それからもう一つは、拠点間、幾つかの拠点、今5つの拠点が主に挙がっていますけれども、この拠点間での連携によって、新たな視点ですとか相乗効果みたいなのは見られたんでしょうか。

【高梨主査】どなたに御回答いただきましょうか。
どうぞ、中山委員。

【中山委員】ありがとうございます。実装に関しては、先ほどと同じで、例えば磁石の中のレアアースを減らしたよというのは、産業界がそれを受け取って、ジスプロシウムが削減された磁石が世に出回りつつあると思います。各種の製造業、もしくは自動車会社等でしっかりとそれを受け止めて、減らすものは減らして、ただ使うものはさらに目的を持って使っているというような状況だと認識しております。

【長谷川委員】もう実装ということで。

【中山委員】はい、実装ということでも、ちゃんと産業界は受け止めていると思います。

【長谷川委員】ありがとうございます。

【湯浅委員】若干その点、補足、よろしいですか。

【高梨主査】はい。湯浅委員、どうぞ。

【湯浅委員】なかなか特許は、有効期限20年ですけども、最初の10年で広く社会で実施されるというのはめったにないことでして、やはり後半の10年ですよね。ですからまだ、これが広くメーカーによって使われるのはこれからだと思います。

【長谷川委員】そうすると、今のこの10年間の研究期間のうちの後のほうに、やはり実装に近いものが出てきた傾向があるということですかね。

【湯浅委員】なかなか特許出願してから実際に社会で使われて実施されるというのは、やはり20年のうち後半の10年に固まる傾向がありますので、なかなか現時点で幾ら使われたかというのを評価するのは困難ではないかと思います。

【長谷川委員】評価というか、現状としてどうかなと思いました。ありがとうございます。

【高梨主査】どうぞ、平田委員。

【平田委員】使い手側から申し上げると、新しい材料が出てきて実際に社会実装されるまでには、やはり10年、20年かかります。これは、材料ができれば良い訳ではなく、当然製造プロセスも含まれていますし、製造のために設備投資をしていますので、結局、新しい材料が出てきたから、資源を低減しているから安いかというと、設備の減価償却まで考え、減価償却しきらないうちに新しい設備を入れてというのはトータルコストで損をしてしまうので、新しい技術ができて来るということと、社会実装されるというのは、やはりタイムラグがあります。ですので、設備投資であるとか製造プロセスであるとか、その他もろもろの環境まで踏まえてということになると思います。ここで得られた知見が確実に産業界で使われていくと思いますので、今すぐというより、10年、15年先になると思いますが、どうすれば良いかという指針が得られたのが非常に重要だと考えています。

【長谷川委員】ありがとうございます。楽しみです。

【高梨主査】長谷川委員の御質問は、他にはなかったでしたか。今のでよろしいですか。

【長谷川委員】もう一つは、今、磁性ですとか触媒・電池といった形で、拠点ごとの。

【高梨主査】連携の話ですね。拠点間の連携。

【長谷川委員】はい。インター拠点みたいなことです。

【高梨主査】それについてはどうですか。

【江頭参事官】拠点間の連携ということでもないんですけども、冒頭の事務局の説明からありましたとおり、文科省の元素戦略プロジェクトだけではなくて、当時レアアース問題への対応ということで、経産省のいろんなプロジェクトが同時並行的に立ち上がっています。それをばらばらやらないで、最終的には産業界のほうで社会実装につなげるという政府全体の方針の下にガバニングボードを設置しまして、例えば構造材、あるいは電池、それから蓄電池、こういった拠点については、経産省でも同じような材料の新しいプロジェクトが当時走っておりましたので、そこをまたぐ形でリーダーを置き、ガバニングボードを設置して、成果をスムーズに、例えば経産省のNEDOプロジェクトに移管することや、あるいはそのチームそのものが経産省のプロジェクトに入って貢献すること、そういった連携を当時積極的に行われていたというところでございます。
 拠点間で、材料分野が異なる中での具体的なノウハウの共有は当然行われておりましたが、この研究とこの研究の何かがこうということでは、特に、ちょっと今御説明できるものは手元にないというところでございます。

【長谷川委員】分かりました。ありがとうございました。

【高梨主査】ありがとうございます。他にいかがでしょうか。

【菅野委員】菅野ですけれども、1点よろしいでしょうか。

【高梨主査】はい、どうぞ。

【菅野委員】この評価に参加していましたが、知財に関して、大学で知財を出しやすくするような、元素戦略のプロジェクトの枠を超えた仕組みが何か必要ですね、という議論がありました。
 以上です。

【高梨主査】ありがとうございます。よろしいでしょうか。

【長谷川委員】ありがとうございます。

【高梨主査】それでは、あとオンラインの方で納富委員から手が挙がっております。よろしくお願いします。

【納富委員】報告書の方で情報発信について、国内向けの学術界においては十分なされたが、海外向けには積極的にもっとアピールした方がいいというのがあったんですが、この分析はどんなふうになっているのかなというのをお聞きしたいと思ったのです。というのも、やっぱりコロナの後、肌感覚として、海外での日本の、特に産業界の発表が減っているような気がするので、そういうのが背景にあるのかどうかというのをちょっとお聞きしたかったということです。
 それに関連して、この期間中にコロナがあって、いろいろ想定と変わっているというか、世界の意識もいろいろ変わってきていると思うんですけれども、そういうものでいろいろ変更を考えていること、対策を考えたとか方針に変更があったとか、そういうところがもしありましたら聞かせてください。
 以上です。

【高梨主査】事務局、ないしは平田委員かな。私があまり言うべきではありませんが、分析ということは恐らくないと思いますけれど、あとコロナの影響というのは議論に出ていましたでしょうか、そこら辺は。

【高梨主査】  今そこは事務局が確認いたしますので、すみません。ちょっとお待ちいただければと思いますが、他に。
どうぞ、中山委員。

【中山委員】調べていただいていますけど、まずプロジェクトの広報について発言します。ある程度予算も措置して、ホームページ等も作って、一部は外国語にしながら発信し、そこをポータルサイトのようにして、いろいろな材料関係の情報も集めてしっかりと広報しておりました。また、経産省や内閣府と共同でのシンポジウムを行っていたということ。ただし海外向けということになると、文部科学省から、あるいは各拠点から積極的な広報ということはなかなかできておりませんでした。もちろん国際的な論文は発表されているんですけど、広報という意味ではしていませんでした。
 ただし、ちょうどレアメタル、レアアースあるいは希少金属、希少元素への対応が各国で叫ばれている中、日本とアメリカとヨーロッパの三極会合という公的な枠組みができて、これは今でも続いていますが、それを十何年ずっとやってきています。そこでは毎年、文部科学省からも経済産業省からもプレゼンがなされています。文部科学省からは元素戦略プロジェクトを中心として、しっかりと世界に発信しています。そういう行事があったときには、各国での報道などが行われ、我が国としてしっかりと対応していることを世界に対して印象づけるということはなされていたかと思っています。
 我が国の動きは国際的にも認知されていて、この元素戦略プロジェクトがあったからこそ、アメリカのマテリアルゲノムやクリティカルマテリアルへの対応の動きが出てきています。米国でマテリアルゲノムイニシアティブやクリティカルマテリアルイニシアティブのできる過程で、これを検討するワークショップ等が米国で行われて、元素戦略プロジェクトを参考にして立案されてきているので、政策的には海外に対してアピールできていたかと思っています。
 以上です。

【高梨主査】ありがとうございます。あと事務局から何かありますか。

【江頭参事官】国際的な情報発信について、レアアース問題に端を発するもので、しかも産業界とのコラボのプロジェクトでしたので、あまり進捗状況、個別具体の成果について国際的に情報発信というようなプロジェクトでもなかったのかなというふうに思っております。

【高梨主査】ありがとうございます。いかがでしょうか、納富委員。

【納富委員】分かりました。やっぱり最近、海外の国際会議での日本のプレゼンスが下がっている気がするので、そこはある程度積極的に考えていただければと思いました。ありがとうございます。

【高梨主査】どうもありがとうございます。

【江頭参事官】少し補足ですが、当時のやり取りの中でも、今では議論が最近盛んになっている経済安全保障の観点から、対外的な情報発信、国内も含めて、そこは少しというのが当時あったことは事実でございます。

【高梨主査】ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 他に御意見。
 前田委員から手が挙がっていますね、よろしくお願いします。前田委員、どうぞ。

【前田委員】どうもありがとうございます。ちょっとピントがずれてしまっているのかもしれないですけれど、産業界の気持ち、立場からしますと、もちろん世界に、アカデミアの世界に認知してもらう、発信してもらうってとても大事だとは思うんですけれど、やはりリチウム電池とか、どうしても中国にどんどんシェアとかを取られていっている現状の中で、いかに日本の産業界にこの成果をがっつりと使ってもらうというか、どう橋渡しをするかというところが非常に重要なんじゃないかなと思っているんですね。それこそ経済安全保障という観点で、日本の企業に今までの研究成果をきちんと産業化してもらえるような道筋をどうつくっていったらいいんだろうというふうなものが何かあれば、とても日本が生き残るためにも大事なんじゃないかなと思って、聞かせていただきました。
 アカデミアの感覚から言うと、世界へどれぐらい発信されているんですかというのはもちろんあると思うんですけれど、せっかくレアメタルのところなど、いろいろ成果が出ているので、それをどうつないで産業化していただくのかというのをもうちょっと強力に、この後があるといいななんて思いながら、聞かせていただきました。

【高梨主査】今後の展望に関するコメントですね。ありがとうございます。
 それからあと、オンラインで加藤委員から。よろしくお願いします。

【加藤委員】加藤です。御説明ありがとうございました。総合的に非常によく進んでいることが分かりました。それで、いろいろ御指摘もありましたけど、そういったことが今後また先へつながっていって、この分野がますます発展していけばと思います。
 それで、具体的な質問としましては、若手研究者の活躍とかリーダーが育成されたというのが評価概要にありまして、ちょっと全部フォローできていないかもしれないですが、具体的な例とか、例えば、10年ありますから、最初、発足ぐらいで入った人がその分野のすごく中心的な人材に育ったとか、そういった例とか、あと定量的な指標とかで計っておられるところはあるのでしょうか。これが質問です。

【高梨主査】ありがとうございます。これは定量的なデータというのはございましたか。具体例はいろいろあったと思うんですけど。

【長田補佐】具体的に事後評価の結果、委員会の場で各拠点からのプレゼン資料の中に、そういった基となる根拠データ等を示されていたことを受けて、このような結果を書いていただいております。その具体的な数字等は、そのプレゼン資料が手元にないので確認中ですけれども、そのような背景でこういったことを書かせていただいています。

【加藤委員】分かりました。そういうのがあって、もし間に合えば教えていただければなと思うのですけど、ありがとうございました。

【高梨主査】分かりました。もし後ででも、そこら辺があれば補足していただくということで。

【江頭参事官】たしか元素戦略プロジェクトのパンフレットの中でも、こういう若い人たちがたくさん生まれていますというのはアピールしておりましたので、そこは間違いないというところです。今、各拠点の中で具体的な事例があれば、この会議の中で御報告させていただきたいと思います。

【加藤委員】よろしくお願いします。

【高梨主査】どうもありがとうございます。あとよろしいでしょうか、そろそろ時間ではございますが、何か。よろしいですか。
 そうすると、本日いただいた御意見を基にして、評価票案、もう少し具体的なものを入れることも検討していただいたほうがいいのかなと思いますが、ちょっと修正検討するということでどうでしょう。拠点間の連携とか、あと特許の話とかいろいろ、若手の活躍の具体例というのはなかなか、一つ一つ入れるのは大変かもしれないですが、やっぱり評価案ではあっさり書かれ過ぎているのかなと。もう少し具体的な例を入れていただくという方向で修正を御検討いただくということでよろしいでしょうか。
 それで、これを修正していただくと、私が利害関係者であるために、修正については主査代理の五十嵐委員に御一任いただくということになりますけれど、それも含めてよろしいでしょうか。
 特に御異存がないようでしたら、そういうプロセスを踏ませていただきたいというふうに思います。どうもありがとうございます。
 なお、修正した事後評価票案については、1月下旬に開催する予定の第84回研究計画・評価分科会において、ナノテクノロジー・材料科学技術委員会として報告をさせていただきます。

【長田補佐】ありがとうございます。事務局として一度、今日の御意見、整理をさせていただいて、五十嵐委員に御相談させていただく形でお願いいたします。

【高梨主査】そういうことで、よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。よろしいですね。

【江頭参事官】今、審議官の木村が到着しました。一言だけ木村の方から御挨拶させていただきます。

【木村審議官】すみません、皆さん。9月1日から研究振興局担当審議官として着任いたしました木村と申します。もう11月になってしまって、まだまだいろいろ勉強している最中でございますけど、また今日の御審議も含めて、私も一緒に勉強させていただきたいと思いますし、ぜひ貴重な御意見を伺えればというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【高梨主査】よろしくお願いいたします。

【湯浅委員】すみません、1点だけよろしいですか。

【高梨主査】どうぞ。

【湯浅委員】修正案はやはり事後評価委員会にも見せていただかないと、我々の知らないところで修正されても責任持てませんので。

【高梨主査】これはプロセスとして、それはあって当然かと思うんですが、よろしいでしょうか。

【長田補佐】最終的には、この委員会で決を採るに当たっては五十嵐委員に当然御相談させていただきますけど、事務的には、この素案をまとめていただいた先生の方々とも御相談させていただきつつ、知見をいただきながら、最終的な形でナノ材委員会としてまとめて、上に上げられるような手続を取らせていただければと思います。よろしいでしょうか。

【高梨主査】はい、そのようによろしくお願いします。

【江頭参事官】すみません、先ほどの、どういう人が育ったかという具体的な事例で、一番代表的なのは、東工大の、当時の細野先生の拠点ですけども、その当時若手のグループリーダーの一人という形だった神谷先生は、文科省の新しい後継プロジェクト、データ創出・活用型のプロジェクトの東工大拠点の拠点長ということで今回選定されて、まさに拠点全体を引っ張るリーダーになっていただいたということが一番分かりやすい事例かなというふうに思っております。あと、元素戦略プロジェクトの成果のパンフレット、ウェブで見られますけども、これにこういった若い人たちがたくさん出ておりますというのが紹介されているページがございます。補足でございました。

【高梨主査】ありがとうございます。そこのページをまた御参照くださいということですね。よろしいでしょうか。
 では、どうもありがとうございます。それでは、大分時間も来ましたので、次の議題に移らせていただきますが、議題の2番目、マテリアル先端リサーチインフラの取組状況ということでございます。マテリアル先端リサーチインフラの小出運営機構長より御説明をお願いいたします。

【小出機構長】それでは、マテリアル先端リサーチインフラの今の取組状況を説明させていただきます。
 この第1ページ、文部科学省マテリアルDXプラットフォームの構想図を示しています。これは私たちのマテリアル先端リサーチインフラのホームページにも掲載されております。御存じのとおり、NIMSのデータ中核拠点、そして右側のデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトと、マテリアル先端リサーチインフラの装置共用事業からデータを集積し、利活用へ持っていく、この3つの三位一体にてマテリアルDXプラットフォームを構築していくという形となっています。
 マテリアル先端リサーチインフラはR3年度に発足いたしました。その特徴は、7つの重要技術領域と横断技術領域(計測、加工、合成)及び、25法人のハブ&スポーク機関体制にあります。プログラム運営委員会の、ガイドの基に、全体を運営機構という形で運営し、7つの重要技術領域に対応して6つのハブ機関とスポーク機関が組織されています。NIMSは2つの重要技術領域を担当しているために、6つのハブ機関があり、そしてNIMSは全体をコーディネートしていくようなセンターハブの役割も持っています。
 英語名は「Advanced Research Infrastructure for Materials and Nanotechnology」、ARIMという形に決めさせていただきました。そして、ロゴマークも左のような形で決めさせていただきました。
 運営機構の組織と委員会体制を整備いたしまして、このような形で運営しております。年4回の全体の運営機構会議に対して、各委員会を5つ設定しています。左側の2つが主にデータ共用に関する委員会で、データ連携基盤委員会の方が、大きなデータに関する収集、その利活用あるいは規定等々の大きな構想を練る委員会。それからデータ構造化委員会の方は、実際の現場の技術者、技術スタッフの方々ともテクニカルな技術を議論する委員会。そして右側の2つが設備共用に関するもので、共用推進委員会としていろいろな、25法人全体の共用の進め方、利用料金の設定等々の委員会。そして、横断技術領域委員会では、横串を設定する計測、加工、合成の中の委員会。そして最後の5つ目が評価委員会、ここは評価の仕方、あるいは予算を運営機構案として定めるような委員会として動いています。大体これまで委員会は5回から10回ぐらいを、発足以来、開いてきています。
 25法人がいますので、情報交換をしながら円滑に運営していくという形で、運営機構業務実施者を選定して、組織体制を整備しました。各ハブ拠点に1名ずつ、それから横断技術領域の責任者のところにも1名ずつ、補助者も配置して業務実施者として、15名程度の体制を組織しています。そしてNIMSのセンターハブのところに総括担当を1名置いて16名、私、運営機構長が責任者として、17名で運営しています。やはりこれだけの機関を動かしていく、情報交換を共有しながらまとめていくということで、連絡会はこの業務実施者と責任者が一体になって、これまで週1回、22回開催し私も皆勤して、この議論には参加しています。同時に定例会として月1回、PD、SPD、POが参加する形でやっております。更に月報を出していただく形で、全員で共有して、どういうことが現場で起こっているかということも含めて進めております。
 ここから、現時点にてデータの構造化戦略がどこまで行っているかということを説明させていただきます。
 データ構造化は、できる限り人を介さずに実行できる環境を整えるということで、このようなシステムを構築してきました。この図の真ん中のNIMSが契約しているクラウドAzureの領域の中に、マテリアル先端リサーチインフラ、ARIMが事業を担当している部分があって、ここに補正予算で措置させていただきましたデータ構造化システム、アプリと書いてありますが、そことセンターハブ、ハブのデータを蓄積する領域が設定してあります。この中で広域シェアする形のデータ利活用を進めるというコンセプトです。データの収集は、共用装置群、あるいはそこからコンピューターとセキュリティー機器を通して構造化システムへ自動的に収集するというシステムを既に、現に動かしております。試行的に今チェックしているところです。
 データ構造化のやり方は2つございまして、1つは装置のメタデータ、数値化、可視化というような形で、自動化、自動翻訳ツールで行う形。もう一つは、試料のメタデータも非常に重要ですので、ここは手入力項目なんですけども、テンプレートという言い方をしておりますが、ウェブからHTML方式で、なるべく汎用化させる形でつくる方式。この2点でデータ構造化を進めております。
 共用設備から、今どのような進捗状況かと申しますと、左上のところに、ARIMで共用装置は全部で1,150台登録がありますが、アンケートを実施して、その中でも各機関で共通・横断的に取り組めるような上位12種目から各1機種を対象として、そこにございます12機種を選定して、158台、これをまず進めていくという形で進めています。例えば電子ビーム描画装置ですと15台ありますし、NMRですと16台という形で、非常に稼働率も高く、使用頻度も高く、共通性も高いというような形で158台選定いたしまして、既に自動翻訳対応を、この9月の時点で150台、完了しております。これを今、データ構造化システムに、試験的に動かしながら、来年1月からどんどん試行的に、データを自動的に蓄積するようなことを開始しながら、2023年度の試行運用に向けてまずは動いているというところでございます。
 ここまでの計画でございますが、2021年~2022年、構造化目標の線表を下に書かせていただきました。データ構造化システムは21年度末で納入されまして、2022年度の半期で所内テストを完了して、既にこの10月から一部動き出しております。説明会を開催して、10月の2回の説明会で延べ200名が参加いただきました。25機関の中の技術スタッフを含めて、かなりの方に現場のレベルで説明会を実施しております。そして今後、ハブ&スポークの技術領域においても説明会を進めていく予定にしています。
 データ構造化は、まだ新しいコンセプトであるため、現場の技術スタッフの方でも自動化、テンプレート、あるいはPython利用法が実践できる形で、勉強会をどんどん進めることを計画しています。
 一方、フィージビリティースタディとして、XPSの構造化のフィージビリティースタディには15機関が参加していただいていて、これも精力的に進めております。加工プロセスに関しては、装置からというよりは、加工装置群のデータセットという形でのデータの収集方法の希望が多いので、データ構造化システムに接続する方法を検討しながら、試行的に実践的にこの10月から進めております。
 最後になりますが、ARIMのセンターハブ、データ中核拠点、データ活用プロジェクトの中にデータ連携部会ができていると思いますが、この連携支援体制を構築するように動いております。データ中核拠点とARIMのセンターハブの中のデータのところ、それからデータ連携部会の運営チームとの密接な連携を図って、連携が取れるように、今この図の体制で動こうとしているところです。
 あとは参考資料として、いろんな具体的な資料もつけさせていただきました。
 以上です。

【高梨主査】ありがとうございます。それでは、ただいまの説明内容に関しまして、御意見、御質問等ございましたら、挙手ボタンをお願いいたします。あるいは挙手を直接していただいても結構ですが、いかがでしょうか。
 どうぞ、宝野委員。

【宝野委員】どうも御説明ありがとうございました。非常に組織が大きいですから、データの構造化といいましても様々な御意見が出ると思いますが、その辺は一本化に向けて、調整は進んでいるんでしょうか。

【小出機構長】基本的に、NIMSで開発しているデータ構造化システム、RDEシステムと呼んでいますが、これにデータを集約していくという形と、後の利活用、使ってもらうという形も含めて、このシステムで基本的にやるということで進めています。特に加工グループの方々は、一個一個の装置から収集するよりは、やはりセットにしてプロセスで、一連の装置を使いながら一つのセットとしてデータを収集したい、あるいは利活用したいという希望が多いので、それに対してもこのRDEシステムは、一応NIMSの方でも既に実践をしていますし、可能な方策もあります。それを今加工ワーキンググループの委員長、副委員長とともに議論しながら進めているところです。具体的活動を10月から実践的に進めているところでございます。

【宝野委員】どうもありがとうございました。とても大切な部分ですから、ぜひよろしくお願いします。

【高梨主査】ありがとうございます。他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 オンラインで、五十嵐委員、どうぞ。

【五十嵐主査代理】ありがとうございます。五十嵐です。1点教えていただきたいんですが、これはできるだけ人を介さずにデータ収集するというのはいいと思うんですが、例えばメタデータの情報が不足しているとか、データの質が違う場合があると思うんですけども、そういうやつのフィルタリングみたいなことは一切しないんでしょうか。

【小出機構長】御指摘ありがとうございます。それも議論点でございまして、データのクオリティというか、やはり最初は、ARIMで技術スタッフ、もちろん教員、現場のスタッフは非常に優秀ですので、技術スタッフから、まず試行的にはそこから集めていくデータ群、セットが重要になると思っています。ここからスタートし、技術スタッフがユーザーから来るデータを、いわゆる選別するとか、チェックするとか、もちろん駄目データ、生データも保存していきますけども、そういうようなクオリティを確保するというところは大きな課題で、まずは技術スタッフの方々のデータ収集から、そしてユーザーからのデータも徐々にチェックしながら入れていくということかと思います。

【五十嵐主査代理】分かりました。駄目データとおっしゃった、それが別の用途で生きるような場合もあるので、ぜひ生データとフィルタリングの仕組みと両方並行で考えていただけたらなと思います。どうもありがとうございます。

【高梨主査】どうもありがとうございます。
 どうぞ、馬場委員。

【馬場委員】馬場でございます。私はARIMの参画者ですので、今、小出機構長から御説明いただいたことはおおむね理解しているつもりですが、先ほどの元素戦略の評価とも関連して、元素戦略の中で、こういうデータ駆動型の材料開発の先行例がきっとあると思うんですけども、もしそういうものがありましたら、ぜひARIMのほうにも、可能な範囲で結構ですから、情報共有していただけると、ARIMの成果も最大化できるような形になるんじゃないかと思いますので、その点も含めてぜひ今後、御検討いただければと思います。
 私からは以上でございます。

【高梨主査】ありがとうございます。いかがですか、今の御指摘に対して、何かコメントありますか。

【江頭参事官】事務局でございます。このARIMの事業そのもので集まるデータだけではなくて、先ほど申し上げたように、別のプロジェクト、それから過去のプロジェクトで、実質的には、後々そこから出てきているデータというものが後で再利用するということがあまり考えられずに行われたデータ、だけども重要だというものがいろいろございまして、それは実は別の観点で、内閣府としてある程度調べております。そういったものも当然、それを持っておられる大学・機関、研究室との、これから調整になりますけども、ある程度構造化ルールみたいなことを統一化できて、場合によってはマテリアルデータプラットフォームの中に入れて運用するということを希望されるようなところがあれば、また相談して、可能な場合には対応するということを今、調整を始めているところでございます。

【馬場委員】ぜひよろしくお願いいたします。

【高梨主査】どうもありがとうございます。他にいかがでしょう。
 平田委員、どうぞ。

【平田委員】既に十分考えられていると思いますが、我々のような例でありがちなのは、例えば半導体の研究者、電池の研究者、触媒の研究者が居る場合、それぞれ皆さん同じ装置を使ってデータを集めていても、半導体の研究者が着目しているスペクトルのデータの範囲と、電池のデータ範囲、触媒のデータ範囲が必ずしも一緒とは限らず、いざデータを使い回そうとすると、肝腎なデータが抜けていて、使えない場合があります。その人にとっては無駄でも、全域集めておかないと使い回しが利かないねということはすごく身に染みて感じていて、そういったところまで含めて、皆さんで共通して、もうこれは絶対的なルールですということを決められているのでしょうか。

【小出機構長】共用事業から出発していますので、7つの重要技術領域もございますが、各機関、非常に幅広く、地平線のように広がるようにテーマを受けています。共用事業ですので、年3,000件の件数は非常に多岐にわたっています。今回ARIMでは7つの重要技術領域をハブ&スポーク体制にて集まっています。そういう意味では各機関、特にハブ機関など大きなところは連携の基に非常に幅広くデータを集めることが可能で、半導体から電池から蓄電池からバイオからいろんなデータを集めています。現場のスタッフの方も含めて経験があって、NIMSの本体のデータ中核拠点の方々もデータが異なる分野においては重要になるというのもよく分かっておられます。幅広くデータを取るということは、まだ議論もしていますし、今御指摘いただいたところはごもっともで理解しています。ありがとうございます。

【平田委員】我々、しまったなと後から後悔したことがいっぱいありましたので、ぜひそうしていただきますと産業界も使えるかと思います。

【高梨主査】どうもありがとうございます。
 それではオンラインで、菅野委員、お願いいたします。

【菅野委員】ありがとうございます。菅野です。御説明どうもありがとうございました。
 今、文科省で、この次に説明があると思いますが、データ創出・活用のプロジェクトや、マテリアライズなどのプロジェクトも走っています。他のプロジェクトとの連携も当然あると思います。それについて何かコメントはありますでしょうか。

【江頭参事官】事務局でございます。後の文科省のデータ創出の方でも説明ありますけども、このARIMの事業、いわゆる設備共用という、ネットワークを介して収集するデータだけではなくて、材料研究開発プロジェクトの中で出てくるデータ、これは今、委員おっしゃったように、マテリアライズ、本年度含めてあと4年走りますけども、こういった材料系の国プロから出てくるようなデータについても、まさにデータ創出プロジェクトのところで今、NIMSを中心に議論しています。うまく構造化を図って、マテリアルデータプラットフォームの中に入れられるものはしっかり、利用するユーザーが異なりますので領域を分けて、収納できるものは収納していくという思想の下に、並行して進めているというところでございます。

【菅野委員】ありがとうございます。材料とプロセスとは、前回も議論になりましたが、両方、似ているようで違ったところがあるので、そういうのをうまく取り込めるといいなと思いました。
 以上です。

【高梨主査】ありがとうございます。他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

【武田委員】武田でございます。よろしいでしょうか。

【高梨主査】武田委員、どうぞ。

【武田委員】今御議論あったオリジナルなデータに加えて、他のプロジェクトのデータや、論文などのパブリックデータなども取り込み、融合してナレッジの創出・利活用プラットフォームとして、将来的にこの仕組みを作り、ARIMをそのように使っていくというような計画もございますか。

【長田補佐】すみません、事務局の長田といいます。これは両事業の連携という意味もあるんですけども、もともとNIMSのほうでやっているデータ中核拠点というところでクラウド上のシステムをつくって、そこにARIMから出てきているデータを入れたり、またデータ創出事業から出てくるデータを入れたりという形で、NIMSのシステムをハブにして皆さんに展開するというような形になっております。NIMSの方では、もともとマテリアル関係の、それこそ論文関係も含めて多様なデータをデータベースとして整理され、それの拡充みたいなこともやられていて、そういったものを活用したデータ駆動型研究も、このデータ中核拠点の中で皆さんに共有してやっていただくということを進めていただいてもらっています。
 そういった意味で、あとはそれ以外にも、様々な事業から出てくるデータ等をどこまでここで集約できるかとか、今後の進め方はぜひ議論が必要ですけれども、できる限りこういった共通的なシステムで、マテリアル分野の研究者の皆様に幅広いデータを使っていただくということが重要かと思っています。

【武田委員】ありがとうございます。ぜひそういう統合的なプラットフォームというのが必要になるかなと思いました。

【高梨主査】ありがとうございます。多数の機関が関わって、本当に多岐にわたる分野で大変だと思うんですけど、今日いろいろ御意見が出たものを参考にして、また進めていただければというふうに思います。
 1点、おっしゃっていたかもしれないですけど、今現在、試験運用で、それで、いわゆる本格運用、計画上本格的に運用するのはいつ頃というふうに考えておられますか。

【小出機構長】本格運用は2025年度。データ構造化システムの稼働調整は現在進めていますが、来年の1月中旬ぐらいから各機関のデータをどんどん試験的に登録し始めて、データ提供を開始するのも2023年の10月ぐらいを予定しています。もちろん規定を含めて整備した上で、2023年の10月、秋ぐらいにデータ提供を試験的に開始するような形に持っていく計画です。いわゆるまだ試験的な運用ですけど、ユーザーを含めて本格的には2025年という形です。

【江頭参事官】事務局です。マテリアル革新力強化戦略、昨年政府でまとめたものですけども、その中でも、このマテリアルデータプラットフォームの一部運用開始は2023年度で、本格運用開始が2025年度ということで明記しておりますので、今そのスケジュールにのっとった形で進めているということでございます。

【高梨主査】分かりました。どうもありがとうございます。
 よろしいでしょうか。大体時間もいいところに来ておりますので、どうもありがとうございます。またよろしくお願いいたします。
 それでは、議題の3に移りたいと思います。データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトの取組状況ということでございますが、まず事務局より、このプロジェクトの本格実施の概要について御説明をお願いいたします。

【小椋調査員】文科省のデータ創出・活用型プロジェクトの事務局を担当している小椋と申します。オンラインにて失礼いたします。これから事務局より、本プロジェクトの進捗状況について、手短ながら説明させていただきます。
 本プロジェクトは、先ほどの小出機構長の話にもありましたが、マテリアルDXプラットフォームという大きな構想の下で、特に次世代の研究方法論を実施して、それに基づいて革新的機能を有するマテリアル創出を目指すということで、次世代のデータ駆動型の研究手法を用いて材料開発を行うというプロジェクトになります。
 本事業体制の特徴です。各拠点におきましては、研究代表者の下に構成されておりますが、まずマテリアル創出に関する研究課題に応じてプロジェクトリーダーを設置しております。それに加えまして、研究を進めるに伴って必要な研究要素であります材料創製、理論計算、計測評価、データ活用促進という4つの研究要素に、それぞれグループリーダーを設けております。このように研究課題ごとに応じたプロジェクトリーダーと、各研究要素に応じたグループリーダーを有機的に連合させることで研究を進めるというような設計にしております。
 本事業は昨年度1年間で、フィージビリティースタディということで、研究方法論を具体化するというようなことを1年間実施しました。それが3月末で終了いたしまして、5月末と6月にかけて、本格実施に向けて公募を行い、審査を行いました。公募は新しく、新規公募で行いましたけども、審査の結果、御覧の5機関、5拠点が採択されました。それぞれ分野として、東大拠点は蓄電・水電解の分野、NIMSは磁性材料分野、東工大は半導体分野、東北大が構造材料分野で、京都大学がバイオ・高分子、バイオアダプティブ分野ということで、マテリアル材料の幅広な各分野の代表となるように5拠点が選出されております。その研究代表の機関に基づいて、多くの連携機関が参画しており、また公募では、産業界からのコミットメントと、実用化に向けたコミットメントを求めております。それに各研究課題に応じて大手企業からコミットメントを多数いただきまして、中には実際に連携機関として参画していただいている企業もございます。
 事業体制は、プログラム運営委員会から拠点に向けて指示、報告というような体制を取っております。ここで特徴的なのは、データ連携部会、次で説明いたします各5拠点を横串活動でつなげた拠点を設けております。その中核機関の取りまとめ機関としては、公募によって採択機関の中から選出いたしまして、審査の結果、NIMS拠点が採択されております。
 本事業の特徴の一つでありますデータ連携部会について説明させていただきます。復唱になりますが、中核機関を中心に、全機関が拠点ごとに閉じるということはなく、拠点同士がつながるように、横串活動を行うためにデータ連携部会を設置しております。具体的には、中核機関を中心として、5拠点に対して、各拠点が開発する研究手法や研究ツールの共有または共同開発と普及活動というようなことや、各拠点が独自に行うマテリアルデータ人材の育成などを共有する、また共同で行うというようなこと、さらには、拠点ごとに扱う材料のDMP、データマネジメントプラン等がございますので、それに対する取扱いの共通化やそれらの共有というような対応ということで、それを中核機関を中心として、5拠点各拠点が独立で行うことはなく、共有しながら事業を一体として進めるというようなプログラムを組んでおります。
 またさらに、このデータ連携部会には一般会員枠を設けておりまして、例えばデータ駆動研究を学びたいというような研究者が参画することも可能にしております。そこで、中には、分野が近い拠点がありましたら、有機的に連携が組めるというふうに判断できた場合には、拠点に将来的には参画して連携していただいたりとか、そういうようなことで、裾野を広げることができるような設計にしております。
 このようなデータ連携部会、中核機関を中心として、本事業は、拠点プロジェクト内に閉じることはなく、開発された手法・ツールについて、内外の研究機関、研究者等に展開するというような試みや、また関連する企業や大型施設のシンポジウムと連携をするということ、さらには文科省外の内閣府や経産省などのプロジェクトと連携していくということで、プロジェクトの中で閉じることなく、プロジェクト外に成果をどんどん普及していくというようなことに重点を置いております。
 以上になります。

【高梨主査】どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、まず、電気化学分野の拠点長である東京大学の杉山先生より御説明をお願いいたします。

【杉山拠点長】東京大学の杉山でございます。それでは、簡潔で駆け足になってしまいますけれども、我々の拠点の概要と取組について御紹介させていただきたいと思います。
 それでは、先ほど文科省のほうから御紹介いただきましたとおり、我々はこのような、再生可能エネルギーの最大導入に向けた電気化学材料の研究開発拠点ということで、電池の方は、先行する元素戦略のアクティビティを取り入れつつ、水電解を加えまして、再エネの大量導入という視点で、新たに有力な研究者を束ねまして活動を行うところでございます。
 その目的でございますけれども、今後のグリーントランスフォーメーション、カーボンニュートラルの主役となります太陽光、風力等の電源は全て、時間とともに発電量が変動いたしますので、電力を貯蔵し、また電力だけでは賄うことができない燃料セクターへの転換を担う水電解、そして水素製造、これらについての元素の制約を打破していこうというのが目的でございます。そこに、先ほどプロジェクトの大枠の目的にもございましたように、データ活用型の新しい研究手法を取り入れまして、また人材育成、横方向展開も図っていこうといったことを考えております。
 課題となります蓄電池と水電解ですけれども、詳しいことは省きますけれども、現在、電解質が液体であるタイプと固体であるタイプがそれぞれ存在しており、社会実装もなされているところですが、それぞれに問題を抱えております。特に、蓄電池であればリチウム、コバルト、ニッケル等の元素制約、そして水電解でありますと、特に固体電解質型、燃料電池に近い固体膜型の、ポリマー型の燃料電池に近いタイプでございますと、イリジウムの使用が非常に問題になっています。こうした課題に対応するために、私たちは、課題1、蓄電池、課題2、主に液体系の水電解、そして課題3は、主に固体電解質と固体電極との間を、学理究明を含めて目指す、そうした3つの課題を設定いたしました。
 それぞれにつきまして、蓄電池については、元素戦略で蓄電池をリードしていた本学の山田教授がリーダーに就きまして、水電解の方は私が担当し、また、データ活用、理論計算、計測評価で第一線を走っている先生方を取り込みました。特に計測評価につきましては、さっき御紹介がありましたARIMのエネルギーマテリアルの拠点がまさに東京大学にございますので、こちらとの密接な連携を図り、また界面の学理究明に関しましては、今般東京大学に来られました一杉先生に加入いただいております。全般的には、東大、NIMSだけではなく、幅広い大学、研究機関からの研究者を集結して、かつ企業との連携も密に取りながら、あと社会科学系の、特にエネルギーシナリオの策定等を行っているユニットとも連携を取りながら活動を進めているところでございます。
 我々の電気化学材料ですけれども、特徴といたしましては、界面が議論の中核を担っているということ、また、特に電気化学系におきましては、界面がそれぞれ変化していく、電池においては界面が変化することが機能の本質ですし、水電解におきましては、むしろ界面が変化することは機能劣化につながります。いずれにしても、このようなダイナミックな特性を持った界面に対して、このような異分野融合の取組を進めていくということが我々のミッションとなっております。
 その中で、データをいかに使っていくかということですけれども、我々の今までの議論におきましては、データ活用型の電気化学材料という、かなり複雑系に対してのアプローチに対しまして、速いループと、かなり複合的な、時間がかかるループという2つが存在するであろうということを考えております。まず速いループというのは、先に実例をお話ししたほうがいいかと思いますけれども、要はロボット実験の活用でございます。ただし電気化学系におきましては、電極の合成等、かなり時間のかかる作業が入ってきますので、速いループ、つまりロボット実験を効率的に回すことができる系というのは限定的になります。
 その一つの好ターゲットというのが蓄電池、そして水電解におきます電解液の探索でございます。こちらに関しましては、既にNIMSで蓄電池用の電解液探索のロボットが動いており、これを水電解の系にも現在拡張しようとしているところですけれども、一遍に100近い実験を行うことができ、また全く疲れませんし、非常に均質なデータが手に入ります。このようなロボット実験をまず行い、そこから出てくるデータを機械学習により解析して、次の実験計画を立てるというループを回すことによって、高速に大量の、かつ均質なデータ空間を張りまして、そこから目的とする電解液の組合せを探していくということになるわけですけれども、この中で、単なる、今まで用いられてきたような、目的に向けてわりかし一直線に進んでいくようなベイズ最適化だけではなくて、もう少し広範な空間を探索できるような機械学習手法というものを我々、データ科学者と密接に連携して、現在開発しているところでございます。
 それから、先ほどの遅いループと申します、より時間のかかる実験が介在していて、ある意味狙いをしっかり定めてから次の実験をしていく必要がある系につきましては、我々は階層的な機械学習というものを試行しております。これはどういうことかと申しますと、従来のように、例えばある組成、分子物性をパラメーターといたしまして、そこからデバイスの特性を直接関連づけていくというような機械学習だけではなくて、実はこのような複雑系には様々な階層が入っているわけです。この中で、実験で求められるものもありますけれども、その多くは計算を併用してパラメーターを得ていく必要がございます。ですので、このようなそれぞれの階層を区切って、それぞれの階層同士の相関を機械学習で探っていくというような、新たなデータ活用型の材料探索、あるいは相関関係を探る手法を投入していこうということを考えているわけです。
 一つの例として、非常に簡単にお話しいたしますと、リチウム電池の特性を左右いたしますリチウムの溶解析出効率につきまして、要は行って帰ってが何回できるかというのが効率になるわけですけれども、その中で、いろいろな電解液との組合せにおいて溶解析出効率が大きく変わるということが分かっておりますが、実はこれはリチウムの溶解析出の電気化学的な標準電極電位に大きく相関しているということが、まずこれよく定義された実験から分かりました。
 次に、標準電極電位が一体何に依存しているんだろうかということを、先ほど申し上げました階層的な機械学習により分析した結果、分子の電解質の異分子の構造因子が非常に大きな役割を果たしているということが分かりました。これは今後の電解質開発において非常に大きな指針となるものでございます。
 少し駆け足で分かりにくいかもしれませんけれども、このような形で、巧みに計算と機械学習を実験と組み合わせた形での開発を行っていきます。そして課題1では、冒頭に申し上げましたように、元素戦略における、ある意味膨大な、かつ質が高いデータベースを既に持っていますので、これらにつきまして、データ科学的な次元圧縮等の作業を行いまして、人間の新しい気づきを促すような試みを進めてまいります。これにより新しい材料探索を可能にしていこうというふうに思っておりますし、また、こちらに示すような水系の電解液、電解質なども含めた次世代のシーズへの展開を探っていこうと考えています。
 また、水電解に関しましては、まずアルカリ水電解系では、とても強いアルカリで、装置が非常に、周りの補器等が膨大になってしまい、高コストにもなってしまうということがございますので、これらの問題を解決するために、より中性に近い領域で、かつ安定に動作するような複合系の金属触媒を探索していく必要がございます。これに関しては既に我々かなり指針が見えておりまして、電極材料と、それから電解質との組合せが非常に重要であるということで、先ほど申し上げましたような機械、ロボットを使いました材料、電解液探索も可能ですし、また、こちらの固体の電極の方につきましては、先ほどの広範なループで階層的な機械学習も含めた材料探索を進めていこうということになっております。
 また、最後の課題3の固体同士の界面、すなわち固体電極と固体電解質の界面におきましては、水電解用には、現在非常に注目を集めているアニオン交換膜、そして蓄電池に関しましては、全固体電池を狙ったような複合系の材料開発を進めてまいります。
 最後に、こうしたデータ活用の取組に関しまして、非常に様々な質のデータが出てまいります。例えば、先ほどのロボット実験による電気化学的なデータ取得に関しましては、ある意味非常に質のそろった多数のデータが出てきますので、こちらは拠点の中に、まずは全て系統的に蓄積して、その活用を考えていくということを狙っております。一方で、各研究室で展開されます、例えば電極の材料開発、構造開発等に関しましては、非常に膨大なデータが出てきますので、必ずしもそれぞれの電気化学測定を行った生データを蓄積するというよりは、そこから、ある意味データのキュレーションを行いまして、特徴点を抽出して、今後の機械学習により有用に使えるような、意味のあるデータセットというものを2次データとして取得し、それをまずは蓄積していこうということを考えております。そして、この二次データを基に構築される学習モデル、これが三次データになってくるわけですけども、こうしたものを企業さんからのデータを取り込むプラットフォームとしてうまく活用していけないかと。すなわち、企業さんは、なかなか生データそのものを出すことには抵抗がある場合が多いんですけれども、そこから特徴点抽出を行ったデータ、そしてその結果として得られるモデルであれば共用していき、それをさらに拡充するために新しいデータを追加することに企業も協力してくれるのではないかというようなディスカッションしまして、こうした形での新しいデータ活用型の材料開発について産学連携を進めていこうというふうに考えているところでございます。
 以上です。どうもありがとうございます。

【高梨主査】ありがとうございました。それでは、ただいまの説明内容に関しまして、御意見、御質問等ございましたら挙手ボタンをお願いいたします。あるいは、対面の方は挙手をお願いします。よろしいですか、どなたか。
 馬場委員、どうぞ。

【馬場委員】杉山先生、詳細な御説明ありがとうございます。馬場でございます。解釈可能なAIというのは極めて重要ではないかというふうに思うんですけれども、先生、すみません、もう少し詳細に教えていただければ幸いです。

【杉山拠点長】基本的に、先ほどの例といたしまして、リチウムの溶解析出の絶対電位、標準電極電位がどこにあるかというときに、例えば電極はリチウムですけれども、そこに対しましていろいろな電解液が存在するわけです。では、この電解液の組成パラメーター、あるいは様々な因子たちを、ある意味我々が、組成であるとか、分子同士の混合割合であるとか、そうしたものだけをパラメーターにして相関づけようとすると、実はなかなか電位と組成等とのきれいな相関を取ることが難しいわけです。それに対しまして、今回申し上げましたとおり、それぞれ考える、ここにある水色の電解液に対しまして、まずMD等の計算を行いまして、原子間の距離等の構造因子を計算により明らかにするわけです。そしてまた、各種の分極であるとか、そうした物性因子も同時に計算で出てきます。それらのものを相互に階層を追って、構造因子、それから次の物性因子というような形でお互いに相関させていく。そういう中で、例えば因子解析を行いますと、構造因子というのがリチウムの回収効率に本質的な相関を持っている、標準電極電位と非常に相関が高いということが見えてくると。
 例えばこんな事例がございますので、要は、やみくもにインプット、アウトプットで対応させるのではなくて、ちゃんとある程度メカニズムが分かるような形で、ただそれは人間に必ずしも実験結果として与えられるものだけではないので、計算をうまく併用しながら、間をちゃんと刻んでいくような形で相関を取っていこうというのが、今こちらで進めているアプローチでございます。

【馬場委員】ありがとうございます。特徴量を理論とかこれまでの実験データに基づいて、ある程度幅を決めるというイメージでいいんでしょうか。

【杉山拠点長】そうです。インプットパラメーターを単に、仕込みで分かるものだけではなくて、もう少し計算等で1枚剝がしていって、その中に入っている構造パラメーターであるとか分極率であるとか、そうしたものも含めてパラメーターとして、しかもそれをうまく段階を追って相関させながら機械学習をしていくということであります。

【馬場委員】あと、この考え方は他の材料にも当然展開できるように思うんですけども。

【杉山拠点長】もちろんそうであると考えていて、しかも電気化学系、非常に複雑系でございますので、ある意味、この系で有効性が見えれば、他の全く違うアプリケーションでも、こうしたアプローチというのは十分有効であるだろうということでありますので、この手法自体が電気化学に特有なものというよりは、電気化学で、他の系に比べてもさらに複雑なターゲットである中で、まずこのような、より深掘りしたような機械学習の有効性を示していこうではないかということを今考えているという状況です。

【馬場委員】ありがとうございます。すばらしい成果につながることを期待しております。よろしくお願いいたします。

【杉山拠点長】ありがとうございます。よろしくお願いします。

【高梨主査】ありがとうございます。他によろしいでしょうか。手は挙がってはいませんか、大丈夫ですかね。
 ちょっと私、1点だけ御質問、産業界の連携の仕方というか、そこら辺が私、完全には理解できていないんですが、最後のところでおっしゃっていた二次データから三次データに上げる、そこら辺のところで、これは産業界からもデータを提供していただいてということですか。

【杉山拠点長】そうですね、やはり産業界から、つまり我々の拠点の中で集めたデータを産業界に利用していただくだけだと、相補性がないといいますか、我々のデータを持っていってもらうだけという感じにもなってしまうので、それも日本の強みと言えば強みになるかもしれませんが、それよりは結局、こうしたデータ活用の材料探索を進めていく上では、質のそろったデータがたくさん存在しているということが非常に重要ですので、産業界から、実はこうした電池業界とかはたくさんデータを持っているわけで、それをいかに出してもらうかということが非常に重要なわけです。
 ですので、まずは我々の拠点の中でできている学習モデルと、これから作っていく学習モデルとをまずは利用していただいて、それは彼らにとっても、つまり企業さんにとってもメリットがあるということを感じていただいて、そういう中でやはり、そうか、この基になる二次データがもっとたくさんあれば、このモデルがさらにリファインされていくんだなということを実感していただいて、なるほど、データというのはディスクローズしたほうがいいんだなというのを産業界の人にもマインドセットを変えていただくと、そういったことで、このデータの蓄積を進めていこうというふうに考えていると。
 ただそのときに、例えば企業の中にある、直接測った電位、電流のデータを全部持ってくるかというと、それを全部そろえたところでどういう機械学習できるか、まだちょっとよく分からないところもあるし、また、そういう生データ自体は企業さんは出したがらないというところもある、あるいは、そんなもの恥ずかしくて出せませんというふうに言う企業さんもいる、本当かどうか分からないけれども。なので、そこから我々として、いかに1次データ、つまりアナログ的なデータから、この特徴点がありますと、これはこれからいろいろ見ていくわけですけども、こういう特徴点がありますというところの、いわゆる特徴点抽出の仕方というものを開発しておいて、特徴点だけだったら出してもいいですよというような企業さんをぜひたくさん集めていきたいと、今のところこのように考えておりまして、この手法というのをぜひ、有効であるということを示していけるように、さらに深掘りしていこうと考えているところです。

【高梨主査】分かりました。どうもありがとうございます。
 他に何か、よろしいでしょうか。
 じゃあ、どうもありがとうございます。杉山先生、ありがとうございました。

【杉山拠点長】ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

【高梨主査】それでは、引き続きまして、磁性材料分野の拠点長である物質・材料研究機構の大久保先生より御説明をお願いいたします。

【大久保拠点長】それでは、NIMSの大久保から、データ創出・活用型磁性材料研究拠点について報告をさせていただきます。
 冒頭にありましたけども、元素戦略拠点、磁性材料拠点として10年間、NIMSでは磁石の開発をやってきまして、昨年度、この3つの取組の中のデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトのFSとして、10年後のニーズを見据えた手法検討というものをさせていただき、今年度の本格研究に対して、我々のところは新規の機能性磁性物質の探索、それからオンデマンド永久磁石の開発、軟磁性材料・デバイスの開発という3つを提案し、採択をしていただきました。この中では、NIMSの磁石MOPというものを通した産学連携も進めていきますし、データ連携部会を介して、この輪の中で連携も進めさせていただいていくということになっております。
 一般的なデータ創出、蓄積、活用の例は、元素戦略の拠点の後半から始まっていますけれども、比較的シンプルな方法というのは、もう既にいろんな方法があるわけです。我々の拠点の中で特にユニークなのは、このような大規模施設を使った非常に大量のデータですとか、非常に最先端の計測データ、こういうものをマルチスケールでたくさん出すことできる。そういうものを物理現象の理解というところを行いながらデータを蓄積していきますが、その際に、マルチスケール、多種多様なデータをどのようにして機械学習に活用するのかというのが問題になります。
 それをどうするかということですけども、従来であればシンプルに、2つ、3つのパラメーターを最大限、最大化するような材料開発をすることになります。今回はそれに加えて、例えば電子状態ですとか組織情報ですとか構造情報という一般的には多次元の情報をどうやって組み込むかということですけれども、まずはこういうデータの類似性を見るということを行います。このような解析を行って、類似するグループだけを選んで、例えば主成分分析をやるということで特徴量を抽出すると、このテーブルに特徴量が入ってきます。これはX線回折の例ですけども、同じようなことをやれば、電子状態とか組織的なパラメーターを、全てこの材料、一つのサンプルとひもづけることができるということで、どのようなデータが来ても一元的に蓄積することができまして、これによって機械学習が可能になるということになります。
 このようなデータを、例えば永久磁石でため込んで、軟磁性データもため込んで、他の材料でもため込んでいくということで、拠点の中では大きいデータのテーブルを作ろうということを考えております。これを合わせていったときに、こういう対角のところはデータがないわけですけども、共通するデータを抽出するということで、これをできる限り埋めていくということをやりますし、解析の手法によっては、材料が異なっても共通の、同じような項目のデータを持つことができますので、こういうものを共通するデータとして埋めていってあげて、拠点全体でこういうデータセットを作っていきます。
 これは拠点の中の話ですけども、ある程度プロジェクト全体が進んでいったときに、拠点間のデータについても、例えばここはNIMS拠点、東大拠点、東工大拠点、いろんな拠点のデータをこういうさらに大きなテーブルにしていくということができると、さらに面白い利活用ができるんじゃないかということを期待しています。こういうデータ連携は、NIMSが中核拠点として採択されましたデータ連携部会の中でやっていけたらいいんじゃないかと考えております。
 先ほど既に御説明がありましたので、簡単に説明させていただきますけども、このデータ連携部会の中では、共通の課題に対する技術開発・支援を行う、人材育成、広報を担当する、それからARIM他の関連事業との連携も行っていくということを予定しております。
 我々の拠点の中の3つの課題の最初の課題1ですけども、これは新規磁性物質の探索を行うということで、どうやって新しい物質を探していくかという話を簡単にさせていただきます。これは先ほども言いました類似性をマッピングした図になりますが、こういうのがありますと、内挿によってこの中で新しいものを探すということが可能ですが、これだと限られた範囲しか探索できませんので、これを広げるということをまずはやっていこうと思っています。広げるためにこの周りを埋めたいわけですけども、それには放射光ですとか最先端の解析を行って、実験的にデータを埋めていくことと、それプラス、シミュレーションによるデータ拡充、スパコンを使ったり、新しい手法を使ったり、データ同化というような手法を使って、周りにどんどん点を埋めていきます。そういうことができますと、この新しい空間の中で内挿することで新しい物質につなげるということをやっていきたいと思っています。
 次の課題2では、AI駆動型オンデマンド永久磁石ということで、まず行いたいのは、データ駆動型の磁石シミュレーターを開発していきます。これは組織解析の結果、分かった組織から、マイクロマグネティクスのモデルを使って、これで特性を計算して、機械学習を繰り返すことによって、組織を与えると特性が出てくるようなものをつくるというのが第1段階で、その次の段階では、たくさんデータを積み重ねていって、今度は逆問題を解くこと。すなわち、必要な特性を提示すると、どういう組織が必要になるかを提示するようなものを作っていって、プロセスインフォマティクスを使って材料を作っていきます。さらに、次の段階では、いろんなデータがたまってきますので、これらのデータを使って、磁気特性に加えて、電気特性などのいろんな特性を予測するものを作っていきます。実際には、応用上、非常に多岐にわたる要求がありますので、これらの複数の目的変数を同時に最適化するようなことを可能にしたいと考えておりまして、それによってオンデマンドの磁石開発を行うことを予定しております。
 3番目、これは軟磁性についてですけども、時間の都合で割愛しますけども、モーターコア、パワエレ、いろんな応用の上で軟磁性が重要になっていますので、やはり同様にデータ駆動型の材料開発を行っていこうということを考えております。
 こちら最後ですけども、時間ですので、これで終わりにします。

【高梨主査】どうもありがとうございます。では、ただいまの説明の説明内容に関しまして、御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。
 上杉委員、お願いします。

【上杉委員】京都大学の上杉です。御説明ありがとうございます。今は磁性材料のところを例に取って質問させていただきます。今回の磁性材料のところでは、代表機関があって、連携機関があって、そこでデータを集めて、それを活用されるということです。でも、今、連携機関に入っていないところ、例えば京都大学でも磁性材料の研究をしている方々がいるわけです。そういう方々が、例えばデータを提供したい、もしくは提供したくなるようになればいいなと僕は個人的に思ったんです。何らかのインセンティブというか、提供したらいいことになるというのがはっきりすれば、もっとどんどんいろんなデータが集まって、活用できるんじゃないかなと思ったんです。そういうインセンティブみたいなものはありますか。

【大久保拠点長】具体的な回答はありませんが、こういう大きなテーブルを作ろうということを目指しておりますので、材料の種類が増えれば増えるほど、これが拡張されて大きくなってくると考えられます。これを利活用するときに、データ提供していただけることが可能であれば、そのデータ、その種類の材料の周辺についても有効な利活用が可能になると考えております。我々の計画は、今日は時間の関係で見ていただいておりませんが、前半は磁性材料に集中して取り組んでいきたいと思っています。後半は、材料も磁性材料にはこだわらず、ほかの材料でも同様に、我々の構築する手法で適用できればいいかなと考えています。

【上杉委員】ということは、データを提供すれば、全体のデータを使うことができる、こういうインセンティブがあるということですか。

【大久保拠点長】今までそういう議論をしたことがないんですけども、そういう御意見があるということを今お聞きしましたので、検討させてください。

【高梨主査】宝野委員、どうぞ。

【宝野委員】上杉委員から非常にいい御提案をいただきましたが、やはりデータあってなんぼの世界ですから、データを集められるようインセンティブを設けていくというのは非常にいいアイデアだと思います。ぜひ文科省の方でもこれを検討していただいて、データを出せば使えるのはもちろん、それ以上のインセンティブがあるというのは、このプログラム全体を充実していく上で非常に重要だと思います。ありがとうございました。

【高梨主査】どうもありがとうございます。重要なお話だと思いますが、ちょっと今のと関連して、私、それを聞いて、今のは磁性材料の拠点ですが、その前の電気化学材料の研究拠点の場合でも全く同じ話になるわけですよね。要するに連携機関でないところのデータというのをやはりちゃんと集められるような、何かそういうことができればいいわけで、戻ってしまって悪いですけど、そこら辺のところは何か、今の話に関係して何かありますか。

【江頭参事官】事務局の方から冒頭説明させていただいた5拠点の中の連携機関ということで、大学等から入っていましたが、これはあくまでもスタート時点で、しっかり中心になっている大学と、拠点に参画するというふうに表明している機関が入っているだけで、個別のデータ提供だとか、中に入っていくとかというのは、もうとにかく積極的にやってくれということはプログラムディレクターから各拠点に対して通知をしております。また、NIMSが中心になっているデータ連携部会を中心としたこのプロジェクトそのものが、データ活用手法を拠点の中で、あるいは機関の中で閉じないで、拠点間や拠点の外も学協会を通じて普及していく、言い方を少し変えれば、データ手法が使える人材育成のプロジェクトでもありますので、そういった形でかなり柔軟な取組をしていくつもりでございます。

【高梨主査】分かりました。ありがとうございます。
 どうぞ、中山委員。

【中山委員】本件もPOをしているので発言します。マテリアル先端リサーチインフラの紙の最初のところに、文部科学省マテリアルDXプラットフォーム構想というのがあります。これはマテリアル先端リサーチインフラ、今御説明いただいているデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト、あとは物質・材料研究機構が中核拠点として運営費交付金で行われているもの、の3件をしっかりと連携させましょうということを強調しています。ともすると施策というのは、1件ずつぶつ切りになって、個別最適化で進みます。でも今回はそうではなくて、強い連携で一緒にやりましょうということです。だからARIMを使ってくれた人はこちらとも連携するとか、いろんな回し方があると思います。それをどうやって回していくかという知恵を絞るのが大事です。1個ずつの運営会議で1個ずつやっていくというよりは、かなり密に一緒にやっていかなければいけません。だから宝野理事長のところともしっかりと連携していくということは必要で、共通の財産であるデータをしっかりと確保していくということが大事。
 ただし、今、宝野理事長言われたように、ウィン・ウィンでないと、データは集まってこないです。データを出すだけ出してインセンティブがなければ駄目でしょう。ギブ・アンド・テイク、インセンティブ、ウィン・ウィンということは常に考えておきながら、我が国としてどうやってデータをためて、使っていくということと国益を結びつけていくかが大事です。税金でやっているプロジェクトですので、そこはしっかりと考えながら、守るものは守り、出すものは出していくというのが、ここの一番の戦略のキーポイントだと思っています。難しいですけどね。

【高梨主査】ありがとうございます。確かにそのインセンティブというのは非常に私も重要だと思います。
 平田委員、どうぞ。

【平田委員】すみません、補足させていただくと、NIMSさんと少しお話をさせていただきながら、例えば民間企業、我々もなかなか生データを出すのは難しいという事情がございます。ただ、議論していく中で、我々のデータを暗号化して、また同じ規格でここに集まるデータを暗号化できれば、暗号化したデータ同士で探索する取組を少しずつ進めていますので、情報を丸裸にせずに、本人しか分からない形でデータ探索ができそうだということは分かってきていますので、そういった手法を使えば、多分どの方にも不都合なく、お互いにデータが活用できるようになると思います。ただそのためには、集まっているデータの規格がある程度一致していないと使えませんので、そこの規格は一致させる必要あるかと思います。

【高梨主査】ありがとうございます。他に何か御意見等ございますでしょうか。磁性材料の方は私自身も専門なので、ハード、ソフトから様々な磁性材料全てをカバーして、こういうデータの処理をして最適な材料の予測とか、いろいろそういうことができると大変面白いといいますか、魅力的で、そこは期待したいと思います。ちょっと細かい組織論なんですが、電気化学の方の拠点というか、最初の説明でも、プロジェクトがあって、グループがあって、横串でと縦串でうまく機能させるという組織があったと思うんですが、磁性材料の方もそういう形にはなっているのですか。

【大久保拠点長】同じです。

【高梨主査】同じで。それはどこに。

【大久保拠点長】すみません、体制図を時間の関係で見せていなかったんですけど、グループとしては、データ活用促進を真ん中に置いて、材料創製、計測評価、理論計算があって、これを横軸とすると、縦軸として課題が3つあって、それぞれプロジェクトリーダーを立てて、グループリーダー(GL)とプロジェクトリーダー(PL)が一部重複していますが、こういう体制になっています。

【高梨主査】なるほど、分かりました。どうもありがとうございます。
 他によろしいでしょうか。
 では、そろそろ、もう6時になってしまいまして、すみません。これで議題3は終了いたします。どうもありがとうございました。

【大久保拠点長】ありがとうございました。失礼します。

【高梨主査】それでは続いて、議題4、その他に移ります。事務局より御説明をお願いいたします。

【長田補佐】事務局からは事務連絡になります。次回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましては、調整の上、追って事務局より各委員に御連絡をさせていただきます。また、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りし、また主査に御確認いただいた上で、ホームページにての公開を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上になります。

【高梨主査】どうもありがとうございます。それでは、これで終了したいと思いますが、何か最後にございますか、特に、皆さん方から。よろしいでしょうか。
 では、本日のナノテクノロジー・材料科学技術委員会は、ここで閉会させていただきます。また次回、できれば対面も含めて、ハイブリッドで行えればよいかと思っております。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――