(平成19年8月現在)
原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ
平成20年度〜
原子力試験研究費は、「原子力政策大綱」に示された原子力の研究開発利用に関する政策の基本方針に則り、各行政機関の行政ニーズを踏まえた原子力の基礎的・基盤的研究を行って来ており、原子力利用に関わる基礎的・基盤的研究を支えてきたプログラムである。
この原子力試験研究費は、これまで各府省の所管する試験研究機関等の実施する原子力利用に関する試験研究として、昭和32年以降、当時の科学技術庁に一括計上し、必要に応じて各府省の予算に移し替えることとしてきたが、
など、現行制度を取り巻く環境が大きく変化している。
このため、平成20年度からは、
等の観点に基づき、以下のような制度改革を行うものである。
なお、現行制度は、原子力委員会の協力を得つつ課題評価を実施しており、今般の制度改革については、原子力委員会の意見も踏まえながら、調整を進めて来ている。
原子力の基礎的・基盤的研究開発について、国の政策ニーズに基づき明確化されたテーマ設定に従い、幹事機関を中心とした複数機関連携による横断的且つ戦略的な共同研究活動を推進する。
研究炉及び核燃料系ホットラボ等を活用した研究を施設の運用面を含め支援する制度。当該施設を保有する機関は、施設を利用して外部機関と共同研究等を実施する。
将来の原子力研究開発の基盤を支える研究者を育成するため、創造的、基礎的研究を行う若手研究者を支援する。
なお、従来より実施して来た「先端的基盤研究」、「総合的研究(クロスオーバー研究)」は、平成20年度から新規採択は行わず、既採択の課題の終了に合せて制度を終了とする。
平成17年10月に策定された原子力政策大綱においては、原子力の基礎的・基盤的な研究開発は、「我が国の原子力利用を分野横断的に支え、その技術基盤を高い水準に維持したり、新しい知識や技術概念を獲得・創出する目的で行われ、研究者・技術者の養成にも寄与するところが大きい。」とされている重要な分野であり、国として、当該分野の研究に対する政策ニーズを明確化し、着実に推進していく必要がある。
特に、この分野において、大学・研究機関・民間企業等の共同研究にファンディングすることによる研究交流の活性化を図る必要性、またホット施設においては、その維持費の工面に苦労していることや、近年、研究においてシミュレーションによる解析等が中心になるなど、実際にホット施設を利用した研究離れも見られることなどから、ホット施設を活用した共同研究プログラムにファンディングすることによる施設共用の運転実施に係る運用の支援とホット施設を利用した研究の推進を図る必要がある。さらに、原子力の基礎的・基盤的分野における若手研究者へのファンディングにより、将来を担う若手研究者・技術者を養成していく必要がある。
なお、総合科学技術会議において、
という指摘を受けており、原子力の基礎的・基盤的分野においても、競争的環境下において研究開発を実施する必要がある。
国立試験研究機関や独立行政法人のみならず、大学等にも開かれたより競争的な制度へ移行し、政策ニーズを明確にし、より戦略的なテーマ・プログラムを設定することにより、原子力の基礎的・基盤的研究開発の強化が図られるとともに、科学技術全般への波及効果が期待できる研究開発成果を創出することにより、社会・経済への還元を図るとともに、優れた研究者の養成を推進するという効果が見込める。
競争的研究資金制度を適用した公募事業であることから、競争原理により研究開発能力の優れた実施機関による研究開発課題の採択が期待される。
また、本事業は、文部科学省が枠組みを提示し、科学技術振興機構(すでに、特別会計の公募型事業である原子力システム研究開発事業を実施している)に業務委託することを想定しており、既存のPD(プログラム・ディレクター)、PO(プログラム・オフィサー)を活用するなど効率的な執行に努める。
業務委託先(科学技術振興機構を想定)が研究開発課題の管理及び中間評価や事後評価を行い、必要に応じ計画の見直し等を実施し、運用結果に基づき制度設計見直しに関する重要事項を文部科学省へ提言する。
これらを通じて、本事業を効率的に進められる見込みがある。
原子力試験研究費は、長年にわたり原子力の基礎的・基盤的分野を支えてきた研究プログラムであり、様々な指摘等を踏まえ、広く門戸を開き、政策ニーズを明確にし、戦略的なテーマ設定をするという観点から、より競争的な研究プログラムに改革することは非常に重要であり、今後の原子力の発展に資する技術基盤の強化が期待されることからも、制度改革することにより実施することは妥当である。
なお、今後の推進に当たっては、以下の点に留意して進めるべきである。