固体廃棄物減容処理施設の整備の事前評価票

(平成19年8月現在)

1.課題名

固体廃棄物減容処理施設の整備

2.開発・事業期間

3.課題概要

 日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターにおいては、高速増殖炉サイクル実用化研究の一環として、高速実験炉で照射した燃料及び材料の照射後試験を行っている。現在、上記試験に伴い発生するTRU核種を含む放射性固体廃棄物(以下、「当該廃棄物」という。)の貯蔵施設の保管余裕が逼迫しており、平成24年度には限界に達することが予測される。
 当該廃棄物の保管が限界に達した場合、高速増殖炉サイクル実用化研究開発に不可欠な高速実験炉での照射試験が不可能となり、研究計画の大幅な遅延を生じせしめることとなる。
 また、研究開発によって生じた放射性廃棄物に関して適切な管理が行われない状況は、地域住民をはじめとした国民の原子力研究開発への信頼を著しく損ねる恐れがある。
 このため、当該廃棄物の処理・保管について、適切な措置を行うことが必要不可欠であることから、廃棄物貯蔵施設の新設を行わず処理が可能な期限である平成24年度までの運転開始を目指して、大洗研究開発センターに固体廃棄物減容処理施設(以下、「本施設」という。)を整備する。平成20年度は、廃棄物管理事業の変更許可を取得した上で、施設建設工事に着手する。

4.評価結果

(1)必要性

 原子力政策大綱(平成17年10月、原子力委員決定)において、放射性廃棄物の処理・処分については、「発生者責任の原則」、「放射性廃棄物最小化の原則」、「合理的な処理・処分の原則」、「国民との相互理解に基づく実施の原則」の4つの原則に則り実施することとされている。
 これらの原則に照らしても、発生者たる日本原子力研究開発機構が地域住民の意向に沿った、最も合理的と考えられる方法で廃棄物の排出抑制、最小化を行うことが必要である。
 また、本施設を整備し当該廃棄物の減容処理を行うことは、高速増殖炉サイクル実用化研究開発に必要な研究開発基盤施設の安定運転のために不可欠である。
 さらに、新たな貯蔵施設の増設を行わずに当該廃棄物の保管の限界を回避するためには、平成20年度から本施設の整備を行うことが不可欠である。

(2)有効性

 平成20年度より設備整備を開始すれば、当該廃棄物を概ね3分の1に減容することが可能となるとともに、TRU廃棄物処分地の整備までにわたり、貯蔵施設の満杯を回避することが可能であることから、地域自治体の意向に沿った形での処理が可能となる。
 また、本施設の運用を通して、当該廃棄物の処理技術及び遠隔運転・保守技術等のノウハウを蓄積することや、廃棄体作製時に必要となる分別記録や運転条件等の品質管理システム及び廃棄体確認手法を構築することにより、今後の処理・処分研究に反映することができる。また、核種移行挙動に係る知見や溶融固化体の物性データ、廃棄体確認手法の構築などを今後の廃棄物処理・処分研究に反映し、安全かつ適切な処理を行うことは、原子力政策大綱に示される国民の負託に応えることとなる。

(3)効率性

 本施設を整備し当該廃棄物の減容処理を行うことは、高速増殖炉サイクル実用化研究開発に必要な研究開発基盤施設の安定運転のために不可欠である。
 本施設で採用する設備に関しては、焼却と溶融を一つの炉を共有した設備で行うことで占有面積の合理化、遠隔保守対象部品の削減などの合理的な設計となっている。
 また、平成20年度から本施設の整備を行うことにより、新たな貯蔵施設の増設を行わずに当該廃棄物の保管の限界を回避することができる。
 なお、平成18年度に原子力機構の「バックエンド推進・評価委員会(外部委員より構成)」の事前評価を受け、本施設の整備に関する「目的・意義の妥当性」、「計画の妥当性」及び「進め方の妥当性」の観点から、総合的に「妥当」とする評価を得ている。

5.評価結果

 高速増殖炉サイクルの実現に向けた研究開発は最優先で実施すべきものであり、これに支障を生じさせないため、TRU核種を含む放射性固体廃棄物の保管量が限界に達する平成24年度までに、合理的な固体廃棄物減容処理施設を整備することは不可欠である。このため、本施設は早急に整備すべきである。なお、TRU廃棄物の処分方法が確定していない段階での処理にあたっては、将来の処分の動向をよく見極めた柔軟な対応を期待する。