原子力分野の研究開発に関する委員会(第23回) 議事要旨

1.日時

平成19年2月15日(木曜日) 10時~11時50分

2.場所

コンファレンススクエアM プラス 「サクセス」(三菱ビル1階)

3.議題

  1. 原子力分野の研究開発に関する委員会の議事運営について
  2. 原子力分野の研究開発に関する委員会における作業部会の設置について
  3. 平成19年度文部科学省原子力関係予算案について
  4. エネルギー対策特別会計について
  5. 基本設計開始までのFBR研究開発体制について
  6. ITER(イーター)計画等について
  7. 核融合研究作業部会報告書(素案)について
  8. 平成19年度「原子力システム研究開発事業」の募集について
  9. GNEPの進捗状況について
  10. 原子力人材育成事業について
  11. その他 → 当面の検討課題について

4.出席者

委員

 田中主査、井上委員、岡崎委員、加藤委員、小林委員、知野委員、中西委員、長崎委員、早野委員、本島委員、山口委員、和気委員(委員12名)

文部科学省

研究開発局
 藤田局長、村田審議官、山野原子力計画課長、中村原子力研究開発課長、松尾研究開発戦略官

5.議事要旨

 冒頭、山野原子力計画課長の進行により、研究計画・評価分科会長から田中委員を主査として指名していただいたことが紹介された。次に、藤田研究開発局長より第4期の原子力分野の研究開発に関する委員会の開催にあたり、挨拶があった。

(1)原子力分野の研究開発に関する委員会の議事運営について

 原子力分野の研究開発に関する委員会の議事運営について、資料1‐2に基づき事務局から説明を行い、原子力分野の研究開発に関する委員会運営規則について委員会の了承を受けた。

(2)原子力分野の研究開発に関する委員会における作業部会の設置について

 原子力分野の研究開発に関する委員会における作業部会の設置について、資料2に基づき事務局から説明を行い、委員会として了承された。

(3)平成19年度文部科学省原子力関係予算案について

 平成19年度文部科学省原子力関係予算案について、事務局より資料3に基づき説明。質疑応答は以下のとおり。

【中西委員】
 5ページの「放射線利用に関する研究開発の推進」が141億円とあり、その中身に重粒子しか書かれていないが、他にはどういうことがあるのか。

【山野原子力計画課長】
 放射線の利用については様々なところでやっている。大きいところでいうと、放医研以外では、例えば原子力機構の高崎研究所でも加速器を使った研究をやっており、その他の様々な独法でやっていることを足したものである。

(4)エネルギー対策特別会計について

 エネルギー対策特別会計について、資料4に基づき事務局より説明。

(5)基本設計開始までのFBR研究開発体制について

 基本設計開始までのFBR研究開発体制について、事務局より資料5‐1~2に基づき説明。主な意見等は以下のとおり。

【岡崎委員】
 今後のFBR実用化に向けた研究開発体制を強固なものにするために、原子力機構は研究開発に責任を持つわけだが、確実に実証・実用段階に繋げていく観点から、今回この4者及び日本電機工業会の方々とも相談した上で、中核メーカーの方々に責任を持っていただく体制がふさわしいのではないかという結論の下に決めていただいたわけである。具体的には、今週火曜日から中核メーカー選定のための公募手続を開始している。詳しくは、資料5‐1の3点目にもあるが、何を期待しているか、具体的にどのような形で選定していくかという内容については、原子力機構のホームページで詳しく書かせていただいているので参照していただければと考えている。さらに、原子力機構が責任を持って選定するということであるが、その過程に出来るだけ客観的に、機構外の学識経験者の意見も反映させた形で委員会を設けて選定作業を進めている。この委員会の委員については事前に公表せず、選定が終わった段階でその結果も含めて公表していきたいと考えている。その後は、約1カ月間公募をして、その後3月あるいは4月の初めまでに選定作業を終えて確定し、来年度から本格的なFBR実用化研究開発体制をよりしっかりしたものにしていきたいと考えている。

【中西委員】
 1社だけに絞ることは、責任の明確化ということでは良いけれども、国全体の英知を集める配慮が必要である。必要な技術は全て取り入れるべきなので、1社の技術に偏らない配慮が必要ではないか。

【岡崎委員】
 この1社が全ての産業技術を集約するわけではなく、我が国の産業界全体の実力を涵養していく視点も含めて、中核メーカーには、あくまでもエンジニアリング機能あるいは概念設計、設計機能を中心としたものを集約していただく。従って、決してここに全ての技術を集約する、あるいは研究開発を全てこの1社が担っていくわけではなく、それぞれの経験や実力を十分発揮していただく体制の中で、メーカーとして今後どう発展していくかが集約できるような機能だけは、中核メーカーに果たしていただくということであり、決して1社だけが独占していくということにならないよう考えていきたいというのが趣旨であると理解している。

【井上委員】
 「基本設計開始まで」とはどういうことかというのが分かりにくかったのと、この1社が決まった後で中心になって進められるのだろうが、その進行状況に対するチェック・アンド・レビューは、また先に考えるということか。

【岡崎委員】
 今後、FBR研究開発全体がそうであるけれども、ある節目で国のチェック・アンド・レビューをいただく過程で、指摘があった具体的な中核メーカーの運用体制も含めて、例えば5年毎にしかるべき評価をいただきながら、この国家基幹技術の進行状況について詳しくチェックしていただく。体制が本当にふさわしいかどうかも評価していただきながらやっていく中でこの点も含まれると考えている。
 それから、実証炉の基本設計を開始する段階で見直すということであるが、まだ実証炉の建設主体が決まっているわけではないので、今後想定されている2015年に実証炉がいよいよ建設を開始する、あるいは主体が決まって具体的な設計を固めていく段階で改めて、中核メーカーの体制がふさわしいかどうか、実証炉の責任を持っている主体も含めて改めて検討していくという趣旨で、決して実用段階まで未来永劫この体制が続いていくわけでなく、あくまでも実証炉の基本設計が始まるまでの間、すなわち今の国家基幹技術が対象としている実用化に向けた研究開発段階での体制をこのような形で進めていきたいという考え方を示したということでご理解いただきたい。

【長崎委員】
 様々なメーカーが国際協力を行っていく新しい流れがある中で、国際協力という視点と、やはり国家としてFBR技術をいかに国が持って、将来我が国の原子力技術を高めてコマーシャルとして展開していくかという戦略との間のバランスをどう考えるか。また、炉だけでなくサイクル全体を考えた時に、燃料や再処理といったサイクル全体の開発と、この段階で1社にある程度責任を集中させることとの整合性はどのようになっているのか。

【岡崎委員】
 今の点は大変大事である。産業界においても国際競争、国際協調が進められているわけだが、そういう観点から今回のFBR研究開発体制は、あくまでも国家基幹技術という観点から、出来るだけ国内企業の方々にその責任を担っていただくのが適切だということで、今回の中核メーカーを公募した中身においても、あくまでも国内の産業界を対象としている。具体的に何が国内企業かどうかは、我々の公募資料に書かせていただいているが、これはあくまでも経営の主導権が保たれる程度にきちんと国内メーカーが主導権を持っている企業を対象としていることを位置付けている。決してその会社が外国資本に入っているから排除するといったことではない体制をとっていきたいが、他の様々な例も参考にしながら、国の主たる技術開発を担う機関として、国内企業をどのような形で捉えたら良いかについて特定させていただいている。
 さらに今後、アメリカのGNEP計画のようなある種の国際的な競争が始まり、フランスでもそうした動きが始まっていくと考えている。そうした観点から、日本の関係機関が国際競争の場においても力を発揮出来る体制が大事だということで、メーカーの方々にも、アメリカや場合によってはフランスのこれからの開発に積極的に参加していただく。すなわち中核メーカーになった方々が、我が国での経験をもとに国際的競争の場に積極的に出ていく役割を担っていただくのが適切ではないかという思いも込めて、是非そうしたメーカーを育てていくというか、責任を持っていただく観点が非常に大事ではないかと考えている。

【和気委員】
 いわゆる新会社を設立せず、技術もR&Dの成果も反映しながら例えば複数のメーカーにジョイントベンチャー方式で機構から発注するというやり方ではなく、この会社がどういう経営方針で、コンプライアンスを含めてどんな会社かわからないので、そこに大きなプロジェクトを一括発注することについて、良い面は大いにある一方でリスクもあると感じている。何故ジョイントベンチャー方式でいわゆる一括発注型ではいけないのかという点を教えていただきたい。

【岡崎委員】
 資料5‐1の1枚目で「護送船団方式を脱却し」という言葉を使わせていただいている。これは何を言っているかというと、これまで旧動燃事業団の過程の中で、ある種のジョイントベンチャー方式でやってきた経緯がある。但し、それは必ずしも実用化に繋がっていかなかったという反省点を踏まえながら、決して原子力分野だけでなく、日本の航空機製造や宇宙開発のロケット製造の体制などの例も参考にしながら、やはりジョイントベンチャーではなくて中核的なメーカーにエンジニアリング機能を集約させて責任ある体制のもとに進めていくことが、長期間で幅の広い研究開発を進めていくに当たって非常に大事な点ではないかということで4者が合意されたということである。
 では、具体的にこの中核メーカーあるいは新会社がどのような形の経営方針を担っていく、あるいは我々研究機関とどのような協力体制でやっていくかについては、我々の考え方を示しながら募集しているけれども、それを受けた形でメーカーの方々から、それぞれどういう方針で中核メーカーとして役割を果たしていくか、新会社としてどのような方針をもって臨まれるかということを応募していただく際に記載していただき、そうしたことも参考にさせていただきながら、今後の中核メーカーという考え方を実現していく上で、本当にこの会社が良いのかどうか改めて審議させていただく。我々の審査結果は改めて4者の方々に紹介させていただき、国全体として本当にこの体制が良いかどうか、改めてその段階できちんと確認していただきながら進めていきたい。本当にこれが上手くいくかどうかは、まさにこれからの努力次第だと考えている。但し、ジョイントベンチャー方式ではなく中核メーカー方式で是非やっていくべきというのが、今の段階での一致した考え方であることをご理解いただきたい。

(6)ITER(イーター)計画等について

 ITER(イーター)計画等について、資料6に基づき事務局より説明。

(7)核融合研究作業部会報告書(素案)について

核融合研究作業部会報告書(素案)について、事務局より資料7‐1~3に基づき説明。以下の質疑応答が行われた。

【井上委員】
 核融合の日本としての進め方の全体像を議論されていると考えているが、ITER(イーター)計画は多額の費用を要する計画であって、これを進めることによって、予算的に他の研究への影響が大きい。従って、まず全体像でどのようにバランスをとるかということがないといけないのではないか。全て予算が来れば良いけれども、よそから見たら核融合に予算を使うこと自身に対する批判だってあるわけだから、批判に耐えられるよう核融合全体としてのバランスをよく見て欲しい。特にITER(イーター)に関しては、現物で出せば良いとも聞いているので、日本全体の研究者や技術者の総力を結集して、予算のかからなくていい設計をする努力をして、税金をなるべく使わなくても済むよう努力することを希望したい。
 ITER(イーター)のブローダーアプローチの内容は分りにくい。ITER(イーター)本体がヨーロッパに行くことになったことはそれで良いと考えるが、そうなったらそれをフランスに乗り込んできちんとやることが基本だと考える。従って、青森県に作るセンターは、フランスに出来るものをきちんとやるためのものであることが第一である。青森の研究センターから遠隔で自由に実験できるようにし、日本やアジアの研究者は、そこに来ればフランスまで行かなくても出来るくらいのきちんとしたものを作って、得たデータはそこで解析出来て、学術的成果が上がることを保証するだけのものを作るのが重要なポイントだと考える。
 次に、もう進んでいるから今さら言っても仕方ないが、サテライトトカマクに予算をつぎ込むのは賛成ではない。プラズマ自身の研究という意味では、JT60もあるのだからITER(イーター)ができるまで暫く使おうというのは良いけれども、全日本的に考えて今後は核融合科学研究所を中心にプラズマ物理と人材育成をやるのが当然だと考える。
 むしろ、IFMIFという表現にはなっていないけれども、ここに書いてある照射施設の方がサテライトトカマクより重要で、プラズマ本体の研究とは補完的な炉工学的研究であり、このIFMIFはぜひブローダーアプローチとしてやるべきだと考える。ただし、内容的に日本が行うのは建物を建てるだけで、肝心の加速器本体はヨーロッパに作ってもらうのは情けない。
 この中性子照射設備に関しては、より広く考えると、原子力全体では材料試験用のJMTRや燃料サイクル全体を考えた時の処理処分、分離変換技術といった中性子照射場の必要性の課題がある。そうしたことを考えると、ポスト「もんじゅ」、ポストJMTR、さらにIFMIF的なもののことも考えて、敦賀に超伝導リニアックのような強力なものを作って、総合的な利用をするというプロジェクトをJT‐60やJ‐PARCの次の基幹的な原子力機構のプロジェクトとして立てるビジョンを持ってほしい。そういう将来構想がないと、ただ既存のJT‐60もJMTRも保守すると言っているだけのように見える。大学も法人化し、原子力機構も独法化してから、自分のところの組織防衛だけ考えて内向きになっている気がして仕方がない。従って、全体的に前向きのビジョンを立てた上で、とりあえず今はこうするという立て方をしていただきたい。

【本島主査代理】
 核融合研究作業部会の当事者として発言したいのだが、これは責任を持って議論が行われており、今のような発言については複数発言されていて非常に重要な指摘もあるので一度時間をとっていただき、ブロードアプローチの内容も含めて説明した方が良いのではないかと考えている。例えば費用等についても、ビッグサイエンスプロジェクトとして進めているわけであり、様々な努力の結果で現在のところへ来て、他のビッグプロジェクトと比べても、日本の国力を考えて決して突出している形ではないはずである。十分責任を持って、且つ日本の国益を考えてもイノベーティブな目標が達成出来るところに設定している。従って、ご説明の場を一度作らせていただきたいし、特に原子力機構の計画に関する部分は、機構から説明させていただいた方が良いのではないかと考えている。

【中西委員】
 資料7‐2、2ページの第1章「核融合研究の現状と課題」の1、核融合エネルギーの必要性という部分で、「…世界の人口は確実に増加し続け、それに伴うエネルギー消費量も増加の一途をたどっており…」と書いているが、いつまでもエネルギー消費量が増加の一途と言い切っていいのかという問題がある。ITER(イーター)は非常に長い計画だと理解しているので、将来のエネルギー需要予測の上に立った核融合の位置付けに触れておく必要がある。ITER(イーター)はとかく技術論に行きがちなので、技術論とは別なところできちんとしたエネルギー議論への配慮がいると考えている。他に細かいところでは、11ページの最後のところで「 …特に核融合が優れているとの認識を広げていくことができれば…」と書かれている。この書き方では核融合は良いものなので国民に知らしめるという印象を与えかねない。どのようなエネルギーを選択するのかは技術開発をしている人ではなく国民だというスタンスを入れた文章になればと考えている。

(8)平成19年度「原子力システム研究開発事業」の募集について

平成19年度「原子力システム研究開発事業」の募集について、資料8に基づき事務局より説明。以下の質疑応答が行われた。

【岡崎委員】
 特別推進分野について、平成18年度は19年度分と合わせて公募したということで、19年度に改めて募集はしないとのことだが、我々現場から見て、18年度の公募の中で残念ながら合格しなかった大事な課題が3件ほど残されている。もちろん我々が運営交付金の中などで対応出来れば良いが、19年度予算も大変増加させていただいたものの、現時点の見通しからいって必ずしもこの中でこなし得るわけではないという実情があることからすれば、もし19年度に資金的余裕があるとするならば、改めて特別推進分野について新規募集を検討していただき、それも併せて国家基幹技術全体がどのように整合性を持ってやっていけるかどうかについて検討していただければありがたいが、その可能性や余地はないものかどうか伺いたい。

【中村原子力研究開発課長】
 現在、平成19年度予算では52億円で準備しており、一方これまでの執行状況もある。その中で、研究開発のために必要だということが出てくるのであれば、出来ないかどうかは再検討する余地があるので、状況を見て相談させていただきたい。

(9)GNEPの進捗状況について

 GNEPの進捗状況について、事務局より資料9に基づき説明。主な意見等は以下のとおり。

【長崎委員】
 2年後、GNEPがどうなるかという読みはされているのか。

【松尾研究開発戦略官】
 米国の場合、政権が変わると、前政権の政策がどうなるか、GNEP構想もどうなるかということはある。現状においては、ブッシュ政権において今までの原子力政策が若干変わってきており、アメリカも志向する傾向になってきている。我々としては、次の政権がどうであれ、今の流れを進めるという観点から原子力協力を推進していくつもりである。

【岡崎委員】
 昨年9月にアメリカのDOEが新しいGNEP計画、特に将来の燃焼炉あるいは燃料サイクルセンターの構想を打ち出した。それに対して、原子力機構と関係企業の連名でEOIに対して提案したわけである。この提案を受けて、具体的にDOEの中で、将来GNEP、特に研究開発をどのように進めていくかを精査している。その中で次のステップとして、おそらくリクエスト・フォー・プロポーザルに1年半後には移るのではないかと言われているが、次の政権との関係もあって、本当にそれが順調に進むかどうかは危惧されているところがあるわけだが、そうしたことも踏まえながら、昨年5月の小坂文科大臣とエネルギー庁長官との話し合い、そして今年1月に甘利経産大臣がボドマン長官とお会いになった時に、GNEP計画に対して我が国との協力を強化しよう、具体的には、この4月までにDOEとの間でアクションプランを作っていこうということで、より具体的な今回のGNEP計画を支える日米の協力関係のテーマを絞り込んでやっていこうという動きになっている。事務的にも、DOEと具体的に協力テーマを絞った形で話し合いを進めていて、この3~4月にまとまれば、今後アメリカがGNEP計画を進めていくことに対して、よりベースを築いていくという観点からも、我々にとって非常に役に立つし、アメリカにとってもこの政策を維持する上で一つの支援になるのではないかという方向で、現在DOEとの具体的なアクションプラン作りを進めている。

(10)原子力人材育成事業について

 原子力人材育成事業について、事務局より資料10に基づき説明。主な意見等は以下のとおり。

【小林委員】
 前から気になっているのは、文部科学省と経済産業省の取り合いの問題である。1ページを見ると分担が書かれているが、2ページ以降の原子力人材育成プログラムが1ページの何に相当しているのか分からない。4ページに原子力人材育成プログラムの一部として、2に原子力を支える基盤技術分野の研究活動支援というものがあって、その基本方針や事業内容を見ると、7ページの経済産業省で担当する原子力の基盤技術分野強化プログラムと中身的にほとんど同じではないか。要するに、全体の中で文部科学省と経済産業省の取り合いがどうなっているか、文部科学省の原子力人材育成プログラムは全体なのか個別なのかが分からない。

【山野原子力計画課長】
 2~4ページは、両省庁のものを合わせた基本的な考え方を書いており、具体的なプログラムについては、5ページ以降から1件当たりのプログラムの詳細や規模を記載しており、例えば5ページは経産省のものだが、こういう趣旨のものをやって、教材開発などで1,500万円くらいのものを5件選びたいといったものである。上手に一緒にやりましょうというところで、当然基盤的なところは文科省が行うし、産業界から人を派遣するということは経産省で行うということで、予算は2つの役所から出ているけれども、実態上は合わせて一本で公募も行うことにしている。

【小林委員】
 具体的に経済産業省の方は原子力安全基盤小委員会で審議をしているけれども、両方の様々な希望が来たとき、最終調整がどうなるかが見えない。両省できちんと調整などを考えるといって本当に投げてしまって良いかどうか危惧があるけれどもどうなのか。

【山野原子力計画課長】
 そこは様々なレベルで検討したけれども、最終的には公募と採択委員会を一緒にして選んでいこうと考えている。7つもメニューがあるのは困るかもしれないので、選ぶ方としては1つの立場で選んで、両者で同じものを選んでしまったとか、あなたが選ぶからこちらは選ばなくてもよいと思ったが、向こうは選ばなかったというようなことにならないよう、財布は2つで出したけれども1つのプログラムであるということで運用したいと考えている。

【小林委員】
 以前提案したが無視されているというか表に出てきていないものがある。基盤技術ということで、原子力以外の材料や流体など様々な分野の専門家を協力させるのは非常に重要だとITER(イーター)まで含めて考えている。それで提案したのは、現在の工学部の講義の中で、原子力専攻以外の一般の工学部の学生に、原子力がどうなっていて、核融合炉や高速増殖炉の時代に入っているということを含めた原子力の最新の講義を起こすべきということである。もし大学の工学部で一般学生に対して原子力の講義がない大学があったら、文部科学省が講義をやりなさいと言えば大学はやるだろう。問題はお金であって、講義は非常勤講師のお金しかかからないわけである。従って、文部科学省が予算をつけて、原子力機構などの人材を活用して講義を起こしたら効果的である。学生に対して見学の機会を与えるものが沢山あるけれども、学生は間違ってもそんなところには行かない。講義だとやむを得ず取るのであって、それが一番安く上がって効果的であるので是非ご検討いただきたい。

【山野原子力計画課長】
 まだ募集要領を作っているところなので、出来るところは上手く入れていきたいと考えている。

【知野委員】
 原子力研究促進プログラムは、大学や大学院で学ぶ人々に支援するということだが内容が漫然としているように見える。勉強すればお金が出るということにも取れる、つまり何をテーマに上げてもいいことになるので、選ぶのが非常に難しいのではないか。人材育成や国民の支援の重要性を指摘されていたが、そうであるのならば、むしろ原子力関係以外も含めて、それこそ人文系や社会科学系など幅広な人たちを対象にしても良いのではないか。今ここで上げているような内容であれば、そうした人たちを対象にしても十分通用するのではないか。

【山口委員】
 これは良いプログラムで継続的にやっていただきたい。1つ重要な点は、現在、高速炉にしても核融合炉にしても様々なプロジェクトが進んでいる。そうすると、時間とともに人材が必要になってくるが、このプログラムが動き出して人材が輩出されて、そうした人々が活躍出来るのには10年程度のオーダーがかかってくる。そうすると、このプログラムをやることによって、いつの時点でどういう人材がどれだけ供給出来るのかという視点を含めて検討していただくことによって、長期的、継続的なしっかりしたプログラムになる。あと、原子力専攻以外の人々をどう取り込んでいくかも含めて、トータルな人材としてどう供給するかという視点を検討していただきたい。

【中西委員】
 若い人は将来をきちんと見ている。従って、原子力が科学としてだけでなく社会的な位置付けがしっかりしてくると、自然と若者が集まって技術も継承されまた向上していくのではないかという楽観論を持っている。ただ、人材育成ということで一番気になる点は、若手ばかりをいろいろ言っているけれども、古手を組織化して有効に働いていただくことが、人材育成の面で非常に大切だと考えている。長年、企業で培ってきた優秀な技術者は今現場から離散している状況なので、その人々を何とか活用して若い人に繋いでいく。システムは理論だけで動かず、プラントの実体験が大切なので、そうした人々をいかにして確保しつつ若い人に繋げるかという視点を入れていただきたい。

【岡崎委員】
 人材育成が、原子力政策大綱などにおいて大事だということを指摘されて、具体的に文科省と経産省が協同してこうしたプログラムを作られたことは、総合科学技術会議でも高く評価された良い取り組みであり、我々が接触している大学の原子力に関心を持っていただいている様々な先生方も、このプログラムに対して大変期待している様子を良く分かっているつもりである。ここに盛られているいわゆる専門性をさらに強化していただくことと、出来るだけ裾野を広げていただくことは大事で、確かに焦点が絞りがたく幅広い形になっているので、そうした意味で様々な努力をしていただくということである。以前にもお願いしたことであるが、それぞれの現場が何を期待しているのか、あるいはどうすれば大学レベルの人材育成が進んでいくかについて、今回募集をして様々な接触が出てくるだろうと考えられるので、長期的にこれに取り組んでいただく過程で、それぞれの意見を交換された成果を次の年には良く反映していただき、この制度がより良いものになるように、出来るだけ弾力的に工夫して現場の声を吸い上げていただくことをお願いしたい。
 原子力機構の立場からいくと、大学で取り組んでいただく時に、我々が持っている様々な資源、すなわち施設や研究員を出来るだけ活用していただくということである。我々自身も、連携大学院や専門職大学に対する協力など、出来れば我々大学との包括的な協力協定を結んで、幅広く原子力機構と大学との関係を深めていこうとしているので、この育成プログラムの中でも我々のそうした資源を出来るだけ活発に利用していただく道を広げていただきたい。

【田中主査】
 人材育成は大変重要なところであって、議論の必要な部分がある。原子力政策大綱の際の議論あるいは本委員会における重要性の指摘、また経産省の原子力部会でも議論があって、具体的にプログラムがスタートすることは大変嬉しいことだが、これは全くのスタートであって、より良いものにしていくために関係者、特に当事者の一つである大学においても、責任持って作っていくにはどうすれば良いかも提案していただきながら、より良いものが出来てくればと考えている。

(11)その他

その他として、本委員会における当面の検討課題について事務局より資料11に基づき説明。主な意見等は以下のとおり。

【山口委員】
 1つは基本的スタンスに書いてあるが、現在様々な項目で原子力政策大綱以降に研究計画が固まってきて、それで動き出してきたところと考えている。その中でも、エネルギーの開発においてぶれない方針を堅持するという点が指摘されている。振り返ってみると、例えば高速炉だと「もんじゅ」が10年間止まっていて、新しい原子力やエネルギーの技術を開発して実際に使っていくことがどんなことかを色々学んだけれども、これから具体的に様々なエネルギーの技術開発を実行していくに当たって、どのようにすればぶれないで進められるのか。実はその点が今まで議論が抜けていたのではないかという気がする。もちろん、皆それは認識されていたのだろうが、外国人からも、「もんじゅ」の場合、あれで10年止まるのは大きな損失だという声が多いし、これから高速炉や核融合などの基盤技術を行う時に、当然様々なトラブルがあったりすることが考えられる。その時にぶれないで政策を進めていく、あるいは開発を進めていくための具体的方策について、どのようにやれば良いのかということを考えないといけない。その点が本委員会の大きな課題ではないか。
また、人材育成の話が出てきたが、1点気になっているところは、教育や人材育成を行う上で、いわゆる研究炉でRIや原子炉の実習を行っていくことが非常に重要だということである。ところが、大学で原子力工学科は少なくなってきて、少し幅広の専門や学科で学生を受け入れている。そうした学生を原子力人材として育てていくために原子炉実習をどうするのかという話がある。現在、東大や近大、京大などはあるものの、他の大学では希望する一部の学生を連れていって実習させるというのが実態である。長期的に考えれば、2050年に高速炉実用化と言っている時期に向けて研究炉がどういう形で維持されるのかは心配なところもある。そういう長期的な研究施設、研究炉等の計画を考えていくのが重要なテーマではないか。

【長崎委員】
 途中の議論で出てきたが、やはり我が国で原子力研究開発を発展させていく基盤を高めていくのは技術力だけれども、最後は人間の能力であって、そういう能力の良い人がいかに原子力に関心を持ってくれるかという広がりであると考えている。大学だけの人材へ関心を持ってもらっても東大などの感覚でいくと遅い。原子力だけである必要は全然なくて、我が国の置かれた立場から見た時のエネルギーがどうあるべきかを小学校くらいから考えていく、あるいは家庭で話し合えるような教育体系になっていないのがおかしくて、私が中高生の時に、理科の教科書の後ろに原子力エネルギーは半ページくらいあったけれども、受験などが関係するとそこまで行かない。従って、原子力なんて知らずに大学まで来ているので、そうしたものをきちんと教えられるような教育まで踏み込んで考えた施策が必要ではないか。そうしていかないと裾野が広がらない。最初どうしても原子力の大学や高専からというのは致し方ないが、そこまで広がっていくところで議論していただきたい。もう1点、これも10年なんかではなくそれこそ米百表ではないけれども、教育というのはある意味膨大な無駄である。生まれた時から大量投資しているはずである。そうやって育ててくるものだということで、コストベネフィットみたいな評価だけでなく、教育をもっと幅広い評価で見ていくべきではないかと考えている。それから、専門職大学院については原子力機構の方々に多大な協力をいただき、本当に感謝しているところであるけれども、機構の持っている様々な設備は、教育あるいはチャンスを与える上で重要な施設になっている。機構は当然研究をしていただかないといけないけれども、これからそこに教育というミッションが加わっていくと、今まで研究だけやってきて、それでなくても様々なお金が減って仕事も増えてきて、教育を新しくやりなさいと言われてもうまくいかない。従って、そうしたところにも手当てがされていく、そして働いている方々が教育にコミットすることへのモチベーションが上がるシステムが出来てくると良いのではないか。その時に、管理区域等での作業に柔軟に使っていけるものが大事ではないか。
 さらに、基盤技術のレベルで行う部分と、基盤技術だがやがては実用化されていく、原子力でいえばやがて文科省から経産省に所掌が変わるところの2つがある。そういう実用化を目指していく時に、いつまでに何が必要なのかを常に考えていくことが大事である。核融合研究作業部会の報告書の素案を読んでいても、将来のエネルギーに対応するためだけれども、高速炉が実用化されたらという前提で将来のエネルギーをFBR、火力、資源エネルギーなどで割り振っていくと、おそらく核融合が出てくる必要は全くないわけである。そういう中で、大前提でエネルギーが必要だと「必要性と背景」に書いてあって、本当に核融合は必要なのか、それでなくても苦しい国家としての台所事情の中で、我々は本当にそこまでやる必要があるのかを冷徹に分析しながら予算配分していくべきである。実用化があって、我々はエネルギーを入手するために投資しているわけなので、そこまで一歩踏み込んだものをITER(イーター)やFBRで常に評価してほしい。先ほど報告書を読んでいる時に、時間のスケールで2050年くらいまでに何をしなければいけないと様々なところで書かれているけれども、もう少し具体的に進んでいった方が良いと考えている。

【和気委員】
 こういう議論のベースとして、技術を開発する時に、我々は研究レベルでの技術評価を超えて政策のバウンダリーをどこまで広げるかが重要であるが、社会に許容される技術をどう評価するのか。これは、環境や国際情勢に応じて変わり得る。その中でもぶれないという言い方は上手い表現だけれども、骨太でやっていくにはどういう政策上の配慮が必要かというところである。従って、評価のどこまでをバウンダリーとして考えるか。当然安全の問題も考えなければいけない。研究開発上のテーマも安全だと考えている。それから、アジアの国々が原発を増やせばリスクが高まる。隣の国で起こったことにより日本の社会に影響することは予測の範囲内である。そうすると、単なる国際協力を超えて、日本の原子力政策を安定的に維持するためには、どうしてもアジアを含めた様々な研究を入れていかなければいけない。これは、協力ではなくて必須の要件ではないかと考えている。従って、政策のバウンダリーをどこまで考えるのかが重要であり、原子力の専門家以外でも、その範囲においては貢献出来るのではないかと考えている。
 もう一点、研究開発よりは人材育成に関わることだが、例えば生物でも化学でも、初等中等教育でいかに科学がわくわくする勉強の対象かということで様々な工夫をして、小中学生に分かりやすいプレゼンテーションやデモンストレーションをして好評を得ている。一例として、ゾウリムシを集めて蛍光塗料をつけて、ミッキーマウスを描かせるという方法で小中高生に感動を与えている。そういうものを、原子力という言葉ではなく物理の枠組みで考えていくことが広い意味での基盤ではないかと考えている。

【本島主査代理】
 大変難しい議論を行うことになるので、議論の進め方や前提条件、それからこの委員会の役割をしっかり見直した上で議論を進める必要がある。元々原子力分野なので、当然エネルギーに関することが根本に来るわけである。それは環境問題そのもので、今の世界で環境問題に取り組もうとしているが成果が上がっていないことを一つとっても非常に難しい。タイムスケールでいえば20~30年、もっと短いタームでいえば5年といったことが求められるわけだが、エネルギーについて言えば100年、場合によっては1,000年くらい先を見通すことになる。FBRにしても核融合炉にしても、1号炉が出来た後、100台作るためには100年かかるわけである。そういう点で、仮定を置いての議論がどうしても必要になるが、科学技術の場合は仮定を元にした議論は得てして失敗する場合が多いので、着実に現在を見つめてトップダウンを必要とする議論とボトムアップを必要とする議論を分けて進めていく必要がある。従って、次回の課題に入る時には、本日の議論を踏まえて主査から幾つかの提案をしていただくことが重要ではないかと考えている。

【田中主査】
 本日ご発言いただかなかった方については、是非事務局に意見をいただき、次の委員会の時にさらにどのようにして今後重点的に必要なものをどういう順番でやっていくかなどについて、事務局と相談しながら提案させていただければと考えている。様々なミッションやタイムスケールがあって、いかにバランスをとって選択・集中しながらやっていくかということが非常に難しい。そうした意味では、昨年、経産省がやっていた原子力部会の時には、ミッションがはっきりしていてそれなりにやりやすかったのだが、別の点で難しいところもあるので、委員の方々の意見をいただきながら、昨年本委員会でまとめた推進方策をさらに進める議論が出来ればと考えている。

以上

お問合せ先

研究開発局原子力計画課