原子力分野の研究開発に関する委員会(第20回) 議事要旨

1.日時

平成18年8月25日(金曜日) 10時~12時10分

2.場所

三田共用会議所 3階 C‐E会議室

3.議題

  1. 平成19年度概算要求における重点課題等の評価について
  2. 高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2について
  3. その他

4.出席者

委員

 田中主査、石田委員、伊藤委員、井上委員、岡崎委員[一部オブザーバー]、加藤委員、木下委員、小林委員、知野委員、中西委員、早野委員、本島委員、和気委員

文部科学省

研究開発局
 森口局長、村田審議官、中原原子力計画課長、中村原子力研究開発課長、板倉核融合開発室長、福井原子力計画課長補佐
研究振興局
 篠崎研究振興戦略官、木村量子放射線研究推進室長

5.議事要旨

(1)平成19年度概算要求における重点課題等の評価について

 平成19年度概算要求における重要課題について、資料1‐1~2に基づき評価課題一覧及びスケジュールについて説明し、引き続き各作業部会事務局より資料2‐5に基づき重点課題について説明。評価結果については、各委員から提案された意見を踏まえた修正について主査へ一任することとした上で了承された。各課題に関する質疑・応答は以下のとおり。

1.原子力研究開発作業部会関係課題(資料2)

【委員】
 高速増殖炉サイクル実用化研究開発と原子力システム研究開発事業について、後者に特別推進分野があるけれども、その切り分けはどう考えているのか。

【事務局】
 高速増殖炉サイクル実用化研究開発は、日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)の運営費交付金で手当をして研究開発を行っていくものと考えている。一方、原子力システム研究開発事業は公募事業ということで、優れたものを提案した方々に対して研究していただくことを考えている。こちらについては、これまで本委員会において、このような研究開発テーマが必要で且つ公募事業に相応しいものであるという審議をいただいているので、その中から課題を選んで現在公募しているところである。それ以外の部分がどのようなものであるかというと、後ほど説明する資料6の後ろの方に沢山書いてある課題について、委員会で審議していただいた上で認定が出来れば、原子力機構で選んで順番を決め、研究していくことになると考えている。

【委員】
 現在の公募も、例えばナトリウム冷却炉については、実用化戦略研究の13技術開発課題の中から選んで行っている。予算の出所や評価の仕方が違うかもしれないが、両方とも具体的にやるべき課題について行っているということではないのか。

【事務局】
 資料6の96ページ以降にある添付資料の中で、研究計画の工程が書かれた線表が幾つか出てくる。例えば、OHP集の13と書いてあるところに、1配管短縮のための高クロム鋼の開発(2/2)があるけれども、13課題の中の1つがこの炉の配管短縮のための高クロム鋼の開発、あるいはその次にあるシステム簡素化のための冷却系2ループ化ということで課題を全部列挙している。この課題の中で線が1本ずつ引いてあるけれども、研究開発課題としてこれだけのものが挙げられているので、この中から公募についてふさわしいものはこれだけであるということで認定されており、それを公募で行ってもらうことにしている。また、それ以外は、原子力機構が運営費交付金の中でそれぞれのスケジュールに応じて研究開発をしていくということで、行うべきことを認定して様々な手段で確実に実施していく体制をとっている。

【委員】
 FBRを一生懸命やっていくことは非常に大切であり、きちんとその辺りを見て行っていくという話は分かるが、公募でFBRを行っていく方式で本当に良いのかという思いがどうしてもある。来年度こうした形で行われることは了解するが、ある目的を持っていつまでにやろうというものに対して本当に公募という方式が馴染むのかどうかをチェックして、その目的のためにやり方を変えた方が良いということなら、そこは英断をもってやり方を変えていくことも是非、検討していただきたい。

【委員】
 材料照射試験炉JMTRについて、原発を解体してクリアランスレベルを含めた希少金属などの資源をどのように回収するかという視点から、その材料がどの程度中性子を含めたもので劣化しているのか、あるいはどの程度安全性があるかといった研究開発のニーズに対してこのJMTRがどういう研究成果が期待出来るのか。そうした材料の回収や資源サイクルの中で、材料照射試験炉JMTRの研究開発に何らかの関係があるのかどうかという議論はあったのか。

【事務局】
 使用済み燃料の中には、わずかだが希少金属と言われているものがあり、これを中から取り出す研究は、再処理の一環として取り上げている。材料試験炉JMTRは、材料に対して中性子を当ててどれだけ丈夫かという安全性の研究が中心になっている。それ以外に、最近だと大きな口径のシリコンの半導体を作る時に原子炉を使う例が多くなっているということがあり、このように新たな材料を作り出すという観点からも使えるのではないかということで社会的なニーズが多くなっているので、主にそこについて議論させていただき、現在回収の必要性があるのではないかという結論をいただいている。

【主査】
 公募に向くかどうかは、作業部会の中で様々な議論があった。そもそも公募は、こうした国家の必要なエネルギー戦略といった重要なものに対して効くのかどうかという議論もあり、また公募といっても、必要な課題を入れてそれをどのような方法や体制で行っていくのかということについて幅広く応募していただき、その中で有効な方法を採択しながらやっていくことの意味もあるのではないかという議論があったところである。
 もう少しやってみて、どちらの制度が良いのかどうか精査しながら、様々な委員の方々から評価していただき、有効な方法を探っていくことになるだろう。公募の仕組みが上手くいけば良い方法になる可能性もあるということでやっているのでご理解いただきたい。

【委員】
 この評価結果が良いということであれば、研究計画・評価分科会で議論してもらうことになるが、確かに他の委員会の評価に比べて原子力の各テーマは、この切り口でこうやっていくという点において、何となく全体が妥当でないのではないかという感じもする。これは決して皆さんをどうこう言っているわけでなく、自分自身見識を欠くのではないかと言っているだけである。例えば、計画の効率性は一生懸命書いていて良いが、一方で空虚な作文という感じがしないでもない。また、他の委員会でも効率性とは一体何かという議論があって難しい。但し、研究開発主体も評価する者も絶えず与えられた材料を上手く使って、目的に向かっていく意識を持たなければいけないということがあるので、効率性の議論はしておきたい。いかなる項目でどう評価を表現していくのが良いのか、あるいは作文の量が多くて負担になるのもいかがなものかと考えているので、それこそ効率的に全体評価をしていくにはどうしたら良いかということを考えるべきではないか。
 それから、課題名、開発期間、開発概要と書いてあるが、評価のメカニズムとして、評価票の中でいかなる予算や機関あるいは手段で行うかという点を分かりやすい形で整理することも大事ではないか。評価票を見てもらう時に、こういうことで我々は議論しているという点を分かりやすく書く方法はないかと考えている。それと別件だが、新規はJMTRだけと認識して良いか。

【事務局】
 新規課題はJMTRだけである。但し、現存しているものの改修という意味での新規ということになっている。

2.核融合研究作業部会関係課題(資料3)

【委員】
 国際的に行うから効率的というのは、1カ国でやるより安くなるという意味かもしれないが、それだけを効率的と言うかどうかという問題があって、やはり1.3兆円と言っているけれども、これを安くする努力をしなければいけないのではないか。

【委員】
 7局の国際協力は大事である。しかし、ここでそれを主張すると、他のプロジェクトも国際協力で安く済むのならもっとやれ、という議論になる。従って、全て国際協力でやれば良いということにならないか。そういう意味でこの評価は難しいが、1.3兆円を切り詰めながら、費用対効果を高めていく努力をしていただきたい。

【事務局】
 このプロジェクトの遂行方法だが、ITER(イーター)は機器を持ち寄って作ることになっている。キャッシュを国際機関に納入して、それで国際機関が発注するのではなく、各パーティーが分担分の機器を自分で調達して持ち込むことになっている。日本が分担する機器を調達する過程において効率性の高い調達方法を採ることによって、少なくとも日本が負担する分は、コストを減らすことは可能と考えているのでしっかり努力していきたい。

【委員】
 どのくらい効率的かということも重要だが、どのくらい長期にわたるプロジェクトのリスク分散を一国や個々のステークホルダーが負担するかというシステムの1つの形として、このITER(イーター)の国際プロジェクトがあるという視点が重要である。また、短期的な費用対効果ではなく、長期でどのように評価するかという点も重要である。
 それと、日本の国にあり得るベネフィットをどのくらい担保出来るかが重要である。メーカーや他のステークホルダーがどういう形で関与するか、あるいは国の中でどういう形のステークホルダーがあり得るかという体制が、これからの議論や評価の中で重要になってくる。従って、将来的に知的所有権や知的財産も含めて、どのくらいプライベートなビジネスとして応用可能かといった議論が継続的に進められるべきといった1文が欲しいかなとも思うが、この評価票で十分に読み取れるということであれば、このままで良いという気もする。

【事務局】
 そもそも国際協力で行うこと自体が大きなリスク分散であると考えている。リスクとはどういうことかと言うと、技術的に開発が難しく、達成出来ないかもしれない場合を想定している。その際にどうするかというと、国際間で協力し合うわけである。例えば、日本と韓国の間でも調達に関する協力を行って、互いに助け合いながら技術協力などのやりとりを行うわけである。そうした中で、互いの弱い部分を補い合うという意味でリスクを軽減することも行っている。
 次に、ステークホルダーについてオールジャパンという話があったけれども、ITER(イーター)プロジェクトを進めるに当たっては、研究開発機関や産業界にノウハウが蓄積される。しかし、忘れてはいけないのはアカデミックの部分である。こうした方々も含めてオールジャパンで本プロジェクトの遂行に力を合わせようという意見が非常に強かったこともあって、最後の留意事項を書かせていただいた。いかにして産業界やアカデミックも含めたオールジャパンで力を結集するかということについて、我々は、是非力を入れて進めていきたい。

【主査】
 リスク管理やオールジャパンの問題などについて、評価結果の中で上手く文章を書けるようであれば、担当の部会にもお願いして修正していただくと良いのではないか。

【委員】
 今出ていた意見は非常に重要であり、全て研究の戦略に関わる指摘だと考えている。従って、研究の進行状況や国のベネフィットはもちろん、その分野の研究の境界条件を定めて各プロジェクトによって出てくるべき方式があっても良いのではないか。核融合の場合、特に実験炉分野として成長率の高いフェーズになるわけであり、核燃焼をやろうというプロジェクトであるから、それに合った形の計画が現在のITER(イーター)である。国内でも、それと絡めてブロードアプローチという観点が出ている。それから、重点化計画が出てきていて、そうした点で戦略というと言葉が大きくなるが、そこを本委員会及び研究計画・評価分科会等でエンドースすれば、研究として適正化されていくはずである。

【主査】
 そうしたことを踏まえて、この文章を修文出来るかどうか検討したい。

3.量子ビーム研究開発作業部会関係課題(資料4)

【委員】
 J‐PARCの産業利用は極めて重要な問題だけれども、4ページの5.評価結果の上から5行目で、「燃料電池や水素貯蔵材料の実用化など、応用研究・産業利用等についての議論も進み」とあり、産業利用の具体例として挙げられていることが理解出来ない。「燃料電池の実用化などの議論も進み」とは、J‐PARCを使って直接的に燃料電池の実用化を行う仕組みが出来ているという意味か。

【事務局】
 必ずしもJ‐PARCを使うことによって燃料電池が開発出来るという意味ではない。

【委員】
 そういうことであれば、この書き方は誤解を招く。J‐PARCが直接的に役に立つのは材料開発であるので、そのように書かないといけない。

【主査】
 5ページのポンチ絵の左下に水素燃料電池とあるが、メインパートはむしろ高分子電極膜の方である。高分子を調べるには中性子が良いということで、要は材料研究であると考えている。よって、水素電池がこれで出来るというのは言い過ぎで、一例として書いたのだろうが、基本は異なっている。

【委員】
 材料研究が極めて役に立って、様々な分野で波及効果があるということについては強調して良いが、今の書き方では誤解を招く。

【事務局】
 了解した。表現について正確な書き方に直したい。

【主査】
 同じく4ページの5.評価結果の下から10行目に書かれているリニアックの性能回復についてよく分からなかったのだが、どのような意味か。

【事務局】
 平成13年度に開始した時の第1期計画で、リニアックの性能については、400MeV(ミリエレクトロンボルト)の能力があったわけだが、その後のニュートリノ研究の前倒しを契機に行われた実験計画の変更で、当初予定の半分に落として進めようということで中間評価をいただき、実際の施設整備を進めているところだが、産業利用も含めてフルスペックで当初の計画通りに行うためには、ビームの利用時間も含めてビーム強度を元の計画通りに戻すことが求められるという評価も同時にいただいているので、早急に実施していきたい。

【委員】
 J‐PARCの評価結果で、「産業利用への認知度は特に設備の内容と整備日程などの面では高いとは言えないことから、継続的なPR活動等を…」というくだりについて、事情が詳しくない状態で読むと、設備内容と整備日程の面で高くないということは、つまりPR活動だけで解決出来るような問題ではないのではないかと感じる。

【事務局】
 原子力機構や高エネルギー加速器研究機構では、例えば産業利用のための研究会で民間企業の方に参加していただき、中性子はどのように応用が効くのか、あるいはどのような分野に使えるのかというものをPRも含めながら、実際にどういう設備が必要でそれをどういう優先順位で建設していけば良いかという議論も行っている。従って、我々の方でもそれを踏まえて実際に必要な資金計画を立てていくことを考えている。確かにPRだけで済むことではなく、実際使っていただくユーザーの立場からの意見を最大限尊重しながらやっていきたい。

【委員】
 粒子線がん治療に係る人材育成プログラムについて、重粒子線に関する特化した教育研修が行われていないので人材を育成しようということだが、医学界や厚生労働省などの関係する分野との協力がなくては、専門に特化した人間を幾ら育てても、実際に医療に役立っていかないのではないかと思う。協力関係はどうなっているのか。

【事務局】
 実際の医療現場での話になると、厚生労働省との協力は欠かせないわけである。がん対策基本法が出来て関係省庁が上手く連携していくことが謳われているけれども、実際に厚生労働省や経済産業省との3省連携という形で定期的に議論しているところであり、その中でもがん治療医の人材育成は、メインの1つになっている。文部科学省としては、医学部における教育を充実させる。さらに厚生労働省では、がん治療医としての育成を充実させる。また、特殊な分野として粒子線のがん治療について文部科学省が特に担当するということで、必要な役割分担についても議論しているところであり、そこは実際の医療現場に粒子線治療装置が展開していけば活躍の場が与えられるだろうし、きちんと連携してやっていきたいと考えている。

【委員】
 基礎的な分野でのスピンオフや産学連携は、いわゆるイノベーションであり、研究者の分野でも得意な人とそうでない人がいる。こうしたことは、大いに得意な人に行ってもらうことが結果を得ていく上で大事な点であり、押しなべて研究者にそれを求めないことが結果を出す上で非常に良いことだと考えている。

【委員】
 RIビームファクトリーは、現時点で経済性を求めるのに少し無理がある。書かないわけにいかないという状況は理解しているが、現場の人の混乱がないよう進めることも大切だと考えている。それから人材育成について、40人を育てるとあるが案として人数が少なすぎるのではないか。毎年数名なら治療現場で吸収出来るのではないかという議論も起きてしまう位の人数である。この方面の人材育成は緊急の課題であり、もっと必要人数を確保する必要があると思う。ただ、この案は、毎年数名のためにという点に少し違和感はあるものの、これはこれで良いと考えている。

4.その他課題(資料5)

【委員】
 この課題自身は非常に結構だと考えている。しかし、原子力関係専攻・学科に対して手当てをしていくことは重要だが、一方で、特に産業における原子力は総合の学問であり、原子力以外の機械工学や電気工学、材料工学などの人々が協力して原子力産業を支えている。そうした意味で原子力関係専攻・学科だけでなく、関連の他専攻・学科の学生に対して、FBRや再処理、核融合などの従来の軽水炉とは違う研究の開発目標や面白い技術があることを教育する必要がある。
 具体的には、文部科学省が予算をつけて、全国の理工系の専攻学部を持っているところに新しい講義を開設すべきである。ほとんどの理工系の専攻学科が原子力関係の講義を持っていると考えているが、あくまで軽水炉中心の講義である。そうではなくて、将来を見据えた原子力の問題を一般の学生に教育することが重要である。文部科学省が全国の理工系専攻学部を持っている大学にそうした講義を作るように勧告して、講義に際してかかる費用は文部科学省が出すこととする。恐らく、実際にかかるのは非常勤講師のお金だけだろうが、具体的な非常勤講師は原子力機構から全部派遣するといったように決めてしまえば極めて実行が容易だと考えている。平成19年度予算には間に合わないだろうが、平成20年度などに向けて是非検討していただきたい。

【事務局】
 メインは原子力の専攻・学科になると考えている。今のご指摘については、コアカリキュラムの部分などで一緒に検討させていただきたいが、全国の大学にということになると、高等局との関係もあって難しいと考えている。

【委員】
 必ずそのように考えるからいけないのである。全国の大学に呼びかけても、すぐやろうという大学は10校程度であるが、もしそれらが実行すれば、他の大学は、翌年には気になって「うちもやろう。」という感じになってくる。

【事務局】
 そのように呼びかけていくことについては、また検討していきたいと考えている。

【委員】
 人材育成という大事な課題に経済産業省とともに文部科学省が取り組まれることは評価したいが、資料5の3ページ目にある赤いチェックマークの3つの項目について、目的意識がはっきりしていて良いが、具体的なプログラムを見ると、どうしても教育を与える側からの視点が中心となっている。この施策は何年間も続けていくのだろうが、大事な視点は、教育を受ける側がどのようなことを期待しているかという部分と上手くマッチングさせていくことである。すなわち、この施策を進めている間に需要者たる学生達が何を期待して、それに対して十分応えているかどうかという評価を必ず入れていただき、それに合った形でこの育成プログラムを組んでいただきたい。人材育成を受け入れる側においても今の学生達が何を期待しているかということに対して十分応えられる環境を整えていきたいと考えているので、そうした期待に応えられる施策を取り入れていただきたい。

【事務局】
 大学の先生方から様々な話を伺っているところだが、確かに学生に直接耳を傾けるという視点は欠けているところがあるので考えていきたい。

【委員】
 やはり大事な視点は、学生がどのように考えているのかということにあることを忘れてはいけない。この議論は、大学に入ってくる、あるいは入ろうとしている人間に対して与えられている話だと考えている。原子力だけでなく電気もそうだが、何故学生がその学問を修めようとしないかというと、その基本はニーズが一番の問題になるわけである。人材開発では、ニーズに対する魅力を学生やその予備軍に対して十分に認知させることが重要である。興味を起こさせて、その産業に入っていくことに対して意義や価値があることだと認識するからこそ学生はその道を選ぶのである。様々なアンケートを取っていると聞いているので、その声は吸い上げられていると考えているが、是非人材育成のメカニズムを学生予備軍の段階から考えていただきたい。つまり、もう少しニーズや学問の崇高性、事業の高い社会的使命などの面からサポートしながら、学生になる前の段階からそうした道に引っ張っていくような工夫を加えれば、メカニズムとして確立しやすいのではないか。また産業界としても、様々な意味で役に立つことであれば十分貢献出来ると考えている。

(2)高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2について

 高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2について、資料6に基づき事務局より説明。以下の質疑応答が行われた。

【委員】
 12ページの長半減期核分裂生成物(LLFP)の記述で、フェーズ2では中期的研究課題としていて、評価報告書ではこれを長期的な研究課題とするという部分があるが、今後の研究課題の中期、長期、今後という言葉をわざわざ使い分けているものの、定量的にどういうことか分かりにくいので表現を考えていただきたい。
 それから、多くの部分で「もんじゅ」のことが出てくるが、「もんじゅ」は非常に多くの人々の関心のある部分なので、それをどうするかは「もんじゅ」自身の問題もあるけれども、FBRの実用化にとってどうかということが重要である。例えば、83ページには、所期の目的を達成した後の利用まで書いてあるけれども、私は、所期の目的を達したら止めろという意見であり、もっと他の重要課題があるはずだということを以前から言っている。また、83ページの左側の図を見ると、延々と2020年以降も何かやるかの如く書いている。ここでは、実用化にとっての「もんじゅ」の役割と研究課題を表現した方が良いのではないか。また、これに関連して91ページの左側で予算の話があったが、やはり「もんじゅ」関連がフラクションとして一番大きくなっているが、実用化のために様々な解決すべき課題があって、その課題の何のために使う予算であるということが見えた方が良い。それと、同じページで「その他」という部分があるが、「もんじゅ」の次にフラクションを占めている。それは細かいものだろうが、こんなものが入っているという明示をした方が良い。また、その他の中にコンティンジェンシーは入っているのか。
 次に、92~94ページの2人材の確保・育成について、需要があれば人材は増えるという話があったけれども、その需要の部分が書かれていない。FBR実用化のために年々どれだけの人間が必要であり、現在機構やメーカーで持っている人材がこれだけで、従ってどれだけ不足するかということが見えるよう表現した方が良い。

【事務局】
 12ページについては、表現を書き直したい。次に「もんじゅ」については、83ページに今後の計画を書いたところである。「もんじゅ」の所期の目的を達成した後は「もんじゅ」を止めるかどうかということだったが、作業部会の中では、「もんじゅ」は止めるのではないということになっており、高速中性子による照射の場として使うということになっている。その中では、高燃焼度燃料のデータをとって実際の実用炉に繋げるのが研究開発テーマであること、あるいは長期運転サイクルを実証してみせること、あるいは現在フランスやアメリカから期待されているマイナーアクチノイド(MA)を含有した燃料をバンドルレベルで燃焼することなどについて期待されており、こうした目的のために運転を続ける計画を書いている。
 次に、91ページの予算の部分で「もんじゅ」が大きくなっていることについては、どこか別の部分で解説したい。またその他については、例えば「常陽」や再処理関係のCPFなどの施設の運転が入っているので、その費用として大きくなっているという状況である。従って、先ほど予算の説明の時に研究の真水としてこの部分を増やしたと説明したが、確かにそうした施設の部分が大きくなるので、これもどこかで解説したいと考えている。また、コンティンジェンシーについて、緊急的に事故が起こってその度に費用をかけるような予算は現在入れていない。これから必要となるものとして書いていて、もちろん事故等があった時には、柔軟に考えなければいけないことである。
 最後に、93ページの人材の部分で需要を書くべきではないかということだが、どのような施設を作るかによって人の需要は大きく変わってくることから、何かの施設を作ってその施設のために必要な人間だけ書いて十分かどうかということがあるので、人の需要を書くのは難しいと考えている。但し、現在の計画の1つのシナリオに従えば、どれくらい必要でどの辺りが出来るのかどうかについては検討したい。

【委員】
 報告書としては大変よくまとまっているけれども、実用化戦略調査研究のフェーズ2について、委員会としてどういう議論や評価をしてこの結論になったということをまとめた別資料があった方が分かりやすいので是非お願いしたい。また、それと関連して、目次の各論の第一部2.のところにコメントという形で出ているが、これはコメントというよりむしろ作業部会で議論・評価したことなのであまり適切ではない。次に、副概念について基盤的な研究として取り組む形になっているが、この研究開発の進め方や評価の仕方についてはどう考えているのか。

【事務局】
 どんな評価をしたのかということを別冊でという点について、どんな判断をしたのかということは、1つは委員会の資料が公開されているということと、それだけだと様々な意見が五月雨で入っていて、それを取りまとめなければいけないわけだが、その取りまとめは、43ページから記載したものがそれに当たると理解している。簡単に紹介すると、炉とサイクルを合わせて検討したのがこの部分であり、この前は炉あるいはサイクルだけだったが、炉とサイクルを合わせて何を考えたのかということをここから書いて、前回分かりにくいということだったので、委員会として何を考えたのかが分かるように、委員会として考える部分については「考える」というように語尾を揃え、何も書いていない部分は事実を淡々と書くようにして、こうした事実に基づき委員会としては考えるということでまとめたところである。また、49ページ以降のコメントという形式をとった部分については、このようにきちんとやれということで委員会から意見がついたところであるが、それ自身も1つの評価の形なので改める方向で調整したい。
 副概念については、確かに本報告書において何かということを認定した。但し、副概念についてどういう研究開発をしていくのか、どこに気をつければ良いのかということについては、本評価においてあまり力を入れて行わなかったのが事実である。56ページに書いてあるけれども、技術開発課題について全般的な議論をした際の進め方として、本委員会は、今後の研究開発について戦略的重点化を更に強力に進めるべきとの考え方に立ち、主概念として選定した課題に関して集中的に検討を行い、その結果、FSに示された主概念に関する課題の内容は概ね妥当だが、以下についてきちんとやるようにということになっている。そうした意味では、この検討の中で副概念については、深い議論をこれまでしてこなかった経緯があって、報告書の中では比較的薄くなっている状況である。

【委員】
 どう評価したかという資料については、大部なものを要求しているわけではなく、簡単な資料で書けると考えているので是非お願いしたい。

【委員】
 「もんじゅ」をどうするかという話で、作業部会では「もんじゅ」を運転し続けることになっていると事務局が断言されたが、最終的に運転し続けるか止めるかを誰が決めるかというのは、別の議論もあり得るわけである。従って、運転継続を前提としてここで議論したらいかがなものかという感じもするわけである。所詮行政文章だから、最終的に文部科学省や経済産業省は、これに基づいて仕事をすることになるだろうが、この文章を誰がどうまとめて、いかなる手続で何をどう決めたかという点をきちんとしておく必要がある。もちろん作業部会の議論に基づくことは大事だし、とてもそうした詳しい議論は本委員会で出来ないが、作業部会で検討したからここで議論しないということではないのではないか。誰が何をどう決めたかということをきちんと説明してほしいし、我々に分かりやすいようエンライトにしてほしい。

【事務局】
 資料6の各論の第二部は、作業部会が中心となって議論した成果を取りまとめたものになっている。その成果も踏まえて全体的には、本委員会としての見解を取りまとめていただきたいということで書いているので、様々なコメントをいただいた上で議論していただき、直していくものと考えている。但し、あくまでこれは本委員会における報告書である。もちろんパブリックコメントを踏まえた上で本委員会にて決めていただくわけであり、これを尊重して施策を執行していくことになることから、まさに最終的な責任は行政庁にあると考えている。

【委員】
 行政責任は、当然行政庁しかないわけである。今言っているのは、誰がどう文章をまとめるかということであって、まとめる文章は、本委員会の名前でまとめるのか、上部の審議会の名前でまとめるのかということである。この文章のとおり、100パーセント世の中で行われることはあり得ないのであって、当然行政裁量はあると考えている。その辺りについて、どこまでが委員会でまとめた文章で、どこまでが行政裁量かという点をきちんとしておくことが必要である。

【委員】
 本報告書全体が、図面としては図‐3‐7、それからブレークダウンしたもので図‐3‐8、図‐3‐9になっていると理解して良いと考えているが、2点ほど実行するに当たっての観点で述べると、1点目として、これだけのものが同時進行するのは、実行に当たって非常に重い部分が出てくるので、クリティカルパスを定められるのかどうかという点をお聞きしたい。
 2点目として、図中の判断の黄色い印とマイルストーンの設定だが、これが自己評価なのか作業部会等の評価なのかにもよるが、これを同時に実施することについてもどの程度可能になるのかという気がする。その辺りは、マイルストーンを設定出来るかどうかということに関連してくるが、2010年で黄色の判断や決定をしてあと5年後のマイルストーンを目指すという観点についてもう少し分かりやすくなると、社会に発信していく上でより理解が得られると思うがどのように考えているのか。

【事務局】
 今後の進め方において、評価の仕方やタイミングは重要だと考えている。この点は、本報告書で言うと90~91ページの部分になる。ここの考え方では、原子力委員会が定めた原子力政策大綱にも書かれているけれども、2010年あるいは2015年の段階で国として評価を行うことが掲げられている。この評価に際して、これから5~10年間行った研究成果を知見として提供することが必要だと考えている。国としては、2010年及び2015年の各時点における成果について機構からまとめたものを出していただき、評価することになると考えている。但し、評価の仕方としては、91ページにもあるように、国に出すに当たって機構自身が自己評価をし、また機構としての自己評価においては内部の評価だけでなく、外部の方からも評価を求めて成果をまとめていくというやり方で機構として自信を持ったものを国に提出していただき、国がそれを改めて評価するという方策で行っていくことになっている。確かにこの線表にあるように、ある時点で全部の研究開発成果を揃えることは難しいということになっているが、今回の公募においても4年間で一度成果を出すような計画を立てており、2010年において一度評価をすることになるので、ある程度の成果がまとまる形でのスケジュールになっている。

【委員】
 自己評価の積み上げをもう一段上で評価するのは大事だし、上手くいくものとそうでないものは当然出てくるものの、許容してプログラムやプロジェクトを走らせるはずだから、上手くいかなかったものをいかに他の方法で挽回するかが大事である。

(3)その他

 次回の委員会について、9月12日に開催を予定している旨、事務局より連絡があった。

‐了‐

お問合せ先

研究開発局原子力計画課