原子力分野の研究開発に関する委員会(第16回) 議事要旨

1.日時

平成18年5月25日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 F2会議室(古河総合ビル6階)

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2について
  2. RI・研究所等廃棄物の処理処分について
  3. 我が国における材料試験用原子炉の役割とJMTRのあり方等に関する検討報告書について
  4. 原子力システム研究開発事業「基盤研究開発分野」における平成18年度新規研究開発課題の選定結果について
  5. 原子力に関する研究開発の推進方策について

4.出席者

委員

 田中主査、伊藤委員、井上委員、榎田委員、岡崎委員[議題(1)のみオブザーバー]、加藤委員、木下委員、小林委員、中西委員、早野委員

文部科学省

研究開発局
 森口局長、中原原子力計画課長、中村原子力研究開発課長、須藤放射性廃棄物企画室長 
説明者
 佐賀山副部門長(日本原子力研究開発機構 次世代原子力研究開発部門副部門長) 中島理事(日本原子力研究開発機構) 

5.議事要旨

(1)高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2について

 高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2最終報告書への評価について、資料1に基づき事務局より説明。また、自由民主党のエネルギー戦略合同部会における議論及び国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)について、参考資料1-2に基づき説明。以下の質疑応答が行われた。

【委員】
 本日の電気新聞の記事だったと思うが、新・国家エネルギー戦略の話が出ていて、その中に自民党の案と同じようなスケジュールが出ているが、資源エネルギー庁が行っている議論との関連はどう考えたら良いのか。

【事務局】
 本委員会の議論は、技術的な部分をベースに行うべきと考えている。資源エネルギー庁の原子力部会では、国としてここをやるべきという方針を決めて、政策として向かうべき方向を示すために報告書をまとめる最中だと聞いているが、本委員会では、それが技術的に出来るかどうかがポイントであると考えている。元々FSの報告書では、2035年頃の運転開始を念頭に置いていたけれども、諸情勢の変化としてアメリカが一緒に研究したいと言っている。これは、本報告書を取りまとめる最中にはなかった動きであり、全て国内でやることを想定しながら研究開発計画を書いていたことから、海外協力を我々の進め方の中に組み込めないかということで見直しをしている。その上で、幾つかの点について早く効率的に出来そうだということで、技術的観点からも全体的な流れに合うのではないかといった議論を作業部会で行っているところである。従って、技術的観点からのフォローアップが出来るかどうかが本委員会の中心課題になる。

【主査】
 技術課題や研究開発課題について、どのようなものが良いかを検討して、それを実行化するためにどうすれば良いかという議論が必要である。そう考えると、ロードマップについて適切かどうかが1つ目の論点であるが、本委員会でもって国家戦略的な意味でのロードマップを作ることは求められていない。あくまでも、どのような研究開発課題をどのタイミングで解決していけば良いかということが重要である。そのロードマップをどのように考えていけば良いかということについては、別に1つだけを選んでということではなく、様々なものを並行して考えながらで良いけれども、観念的な視点で開発課題を議論した方が良い。

【委員】
 1年前から思い起こすと、凄いスピードになってきた感じがして、やっていくにつれて状況が変わっている。それを考慮しながら実証プロセスやロードマップを検討していくことは必要だが、今の状態でどれが良いかと言われても答えが出る話ではない。FBRの実用化のためには革新技術がどのようにクリア出来るかというのがキーになるので、そこを見極めてチェックしながらやっていくことが必要である。このことからも、当面の革新技術の開発にしっかり予算をつけていただきたい。

【事務局】
 これからはフォアキャストではなく、50~100年先を見越して、それから現代に遡って何をすべきか、というバックキャストの考え方をとっていくことが重要であると言われている。そうした意味で、2050年頃の商業化については、原子力政策大綱で議論されたことなので、それをどのように実現していくかということが様々な課題の中の一つである。ロードマップを1つに決めてしまうことは難しいと思われるが、全体の国際的部分をにらんだ相場観として、この位のスピードで良いかどうか、またそのスピード感を決めた時に研究開発を行う側として無理なく対応出来るかどうか、更には、技術的な部分で合理的についていけるかどうかという点や、様々な技術の重要性について国と民間の役割分担が変わってくるのではないかという点について意見をいただきたい。

【委員】
 なぜ急に日米という話が出てきたのか、また2050年という時期なのかを考えると、やはり多額な出資が必要だからである。それを世界で分担して出資を抑えることで、どのように効率的に進めるかということが元ではないかと考えている。エネルギーに関しては、世界中で分担して細かい技術もブレークダウンし、膨大な予算について二重投資をせず、どのように効率よく進められるかということがポイントであるが、そうしたことはバックグラウンドにあるのだろうか。

【事務局】
 本報告書がまとめられた時、アメリカやフランスの動きがこれほどではなかったので、基本的に全て日本で行うことを想定して研究計画も提案されていた。しかし現在は、アメリカやフランスとも協力して研究出来る環境になりつつあるので、資源や人材及び時間などをセーブしながら進められるようになってきている。恐らく同じことを海外も望んでいるので、日本国内を懐に持って、その上で海外とどのテーマで研究するのかということを交渉して、具体的な課題を決めていくアプローチで望みたい。過度にアメリカやフランスの計画に依存すると、先方の計画で何か起きた時、日本の計画に手戻りが発生するなどの懸念も言われているので、そこは十分配慮しながら最低限の部分を日本でやりつつ、研究協力出来る部分は行っていく。このためにも、日本としての計画をしっかり定めていきたい。

【委員】
 人類が知識を得てから実用化するまでに随分と時間がかかる。原子力は、高々100年で、しかも発電に使い始めてから数十年という状況だから、パーフェクトな技術にするのにさらに長い時間がかかることは理解できる。しかし予算のこともあるが、課題があるということで並べていくと、いつまで経っても終わらないロードマップになってしまう。出来ることをある段階で導入して使ってみることにより進歩がある。
 ケーススタディーの部分で特徴が書いてあるが、クリアすべき技術の中で問題がありそうな点も挙げていただきたい。これだとどれも出来るような表現にしかなっていない。その上でということではあるが、ここでの判断としては、ケース1をベースにすべきなのだろうと見受けられる。しかし、スケジュールに関しては、よく詰めてあるのか疑問もある。例えば概念設計は、常陽やもんじゅの経験があるので、今からでも取りかかれるのではないかという気もする。なお、もんじゅをどう利用するかについては、運転再開は必要だろうが、2、3年で設計のためのデータを取って運転を停止すべきだと考える。その後は、当該施設を利用して未臨界の加速器駆動システムに転換し、核変換の開発研究をすべきである。
 2点目に、推進主体の問題について、どこに誰がいてどのような状況になっているのか分からない。私の身近な分野を例に取ると、我が国が原子力予算で世界的な大加速器を作った最初のものが放医研のHIMACであるが、この時に誰がリーダーでどんなチームがあるということは、予算が出る前から見えていて、そのチームが完成までやり遂げた。Spring-8も予算が出る前から、どういうチームで誰がリーダーであるかが見えていたし、そのチームが実際に完成まで持っていった。それは、現在建設中のJ-PARCやRIビームファクトリーでも同じである。しかし、FBRに関しては見えないところがある。今、二十歳の人が定年になっても終わらないようなプロジェクトのように見えるところにも原因があるので無理もないが、本気で誰がやりたいという迫力に欠けている。そこを理解したいので個人的希望だが、実際に開発をやっている現場で話を伺いたい。わざわざ特別なプレゼンテーションの準備をしていただく必要はなく、現場で開発状態を説明していただくだけでいいので機会を作っていただきたい。また、技術報告書について、機微な部分を整理して見せていただく話があったが、それはどうなっているのか。印刷物で立派にする必要はなく、CDに焼いてもらえれば結構なので是非見せていただきたい。
 3点目として、25、26ページの開発目標の話だが、環境負荷の低減に関係して、使用済燃料の最終的な処理・処分は、FBR推進とセットだと考えている。これは基礎開発であるとしているけれども、いわゆる基礎物理という意味での基礎ではなく、実用化のための基礎技術という意味での基礎であり、これがないと全体がシステムとして完結しないと考える。そうした意味で、加速器駆動の未臨界体系で核変換の研究をすることが一つの補完だと考える。さらに、加速器駆動の未臨界システム(ADS)を持つことによって、原子炉本体の設計に関して増殖性などを重点に置くことから自由になれるので、プルトニウムを利用して効率よく発電する本来の目的に重点を置いた設計が可能になってくる。こうした関係が補完関係であり、主概念が上手くいかない時のために考えておくものは補完概念ではない。もちろん作戦が上手くいかなかった時の対応は常に考えておくのが当然であるが、それは補完ではなくて、主概念のうちであると考えられる。

【委員】
 全体としてのキーワードは、スピードアップ、それに国際的な動きではないかと考えている。前倒しのスピードに驚いているけれども、これだけ環境が変わった場合、開発目標の設定や優先度の見直しをしっかりやっていくことが大切である。
 議論を進める上で3点ほど申し上げたい。まず1点目は、海外の動きが非常に活発になってきているので、海外への対応のあり方に関してである。海外と日本の開発スピードが競争出来るかどうかを考えた時、競争出来るスピードに持っていかないといけない。そして、技術的な課題の優先度も定めて議論しておく必要がある。また、国際協力の下に開発するものもあるかもしれないので、そうした点もよく議論する必要がある。
 2点目は、軽水炉サイクルからFBRサイクルの移行期に必要とされる技術に関してである。これまでの研究では、FBRサイクル平衡期の燃料サイクル技術が主体で検討されてきた。しかし、このようなスピードアップが全面に出てくると、例えば第2次再処理工場のための技術開発も議論することが必要になってくる。特にこの点については、官民の役割分担などの様々な議論があって、しっかり議論出来るのは、本委員会ではないかと考えている。
 3点目は、研究開発から実際の設備設計に移行する際の問題に関してである。全体として開発のスピードを上げることになると、5年前に想定していたものとは違ってくる。あるいは、研究開発と並行してプラント設計のまとめに入ることも必要になってくる。それらをベースに、研究開発の成果をどのように実際のプラントやプラント設計にまとめ上げていくのかという点が重要なので、少し細かくなるものの議論を深めておく必要がある。なお、商業炉に至るまでのステップ論があったけれども、日本電機工業会(JEMA)としては、以前から、開発試験炉、商業導入炉、商用炉という段階を踏む、2ステップ論という話をさせていただいている。様々な意味で世界標準を目指すために、加えてしっかりとした設備構築のためにも、様々な関係者との調整、議論、検討を尽くす必要があるので、改めて2段階開発が現実的ではないかと考えている。

【事務局】
 体制論については、研究開発のテーマがある程度見えた段階から議論していきたい。なお、技術報告書については、現在CD-Rに焼いているので送付する方向で準備したい。また、現場視察の件については、別途事務的に相談させていただきたい。
 次に、海外のスピードに競争出来る体制はどのようなものか、あるいは優先度を付けるべきではないか、さらに国際協力はどれにするかといった点については、作業部会でも技術的観点から議論してみたい。ステップ論については、様々なものがあったけれども、一方でどれに決めるというのではなくという話もあり、出来る限り多くのロードマップに対応出来るような研究開発項目を、5~10年間の研究開発計画の中に盛り込む方向で検討したいと考えている。但し、概念設計を並行して進める議論もあったので、具体的にその概念設計をどのようなものとして捉えるのかということを含めて技術的に検討したい。

【オブザーバー】
 今回提案しているケース1からケース3までというのは、基本的に2050年頃の商業的導入を念頭に置きながら、果たして今後どのような実用化に至る道筋があるのかということである。これはどのような観点からかというと、そうしたことを視野に入れながら、2015年の技術体系を確立するための研究開発計画はどうあるべきかという観点から提示しているわけである。是非ロードマップ、将来の実用化に至る道筋を踏まえた研究開発計画でなければならないという観点から、このケース1からケース3のロードマップについての意見もいただきながら、いかなる研究開発計画が良いかという判断をしていただきたい。加えて、今回自民党から、2025年頃に実証炉を運転するという加速ケースについて具体的な提案があったわけであるから、この加速ケースに対して、今回提示している2015年までの計画が答え得るかどうか、あるいは答えるとすればどのようことを配慮していかなくてはならないのか、ということについて議論していただきたい。もちろん将来のロードマップを一つに絞ることが今回の目的ではないにしろ、2015年までの研究開発計画はどうあるべきか、ということに大きな影響を与えるので、是非結論を導き出していただきたい。
 2点目として、国際協力の問題について、今までのフェーズ2においても第4世代の国際協力という概念は意識しながら、今後の国際的なFBR研究及びFBR技術システムの国際協力を視野に入れてきた。その将来のロードマップは、2030年頃に一つの実証的なものを導入していく概念とほとんど一致していたわけだが、それが今回のフランスの計画やアメリカのGNEPで確かに加速されてきたわけだけれども、それぞれは、自国において次のステップをどう築いていくかということがベースになっている。もちろん、国際共同でやっていく可能性が排除されているわけではないが、あくまでフランスやアメリカが、自らの計画として打ち立てようとしていることなので、我が国において今後、実用化に至るステップをどうするかという基本路線に変更を与えるものではないと考えている。但し、具体的な協力について大きな資金や人材を要するわけであるから、効率的に研究開発を進めていく、あるいは出来る限り日本の今までの成果を世界標準としていくための努力をいかにやっていくかという観点から、国際協力にどう望んでいくべきかという議論を進めていかなくてはならない。基本的スタンスとして、それぞれの国でこのシステムを実用化するに当たって、どのような研究開発計画をとるかということから考えれば、今回のフランスやアメリカの計画は、我が国に対する刺激であるとしても、基本的な考え方に影響を与えることではない。すなわち、しっかりと自らの計画を実行していくことが大事な点ではないかと考えている。

【委員】
 ロードマップをどうするかという議論は、10年ほど前からあった気がする。例えばもんじゅが出来た後の第1号実証炉の話もその頃からあって、トップエントリーのループ炉を採用すると言われていた。その後、10年経っているのだが、その間、どれほど進歩があっただろうか。何がネックになって、何がどれだけ延びているのかがはっきりしないと、今後どの方向に重点を置けばいいのか分からない。専門の方々は理解されているだろうが、我々専門外の者は議論についていきにくいところがある。その辺りを教えていただけないだろうか。昔、トップエントリーの話を聞いた頃は、コストを安くするためにパイプを短くする必要があって、そのためにはこの形式が良いという話を散々聞かされた。しかし、それに伴うリスクもあるということについて、良く分からないままに聞いていたのだが、そうした問題はもう解決されたのか、どのように解決したのかという話が分からないと、黙って聞いているより仕方ないので、分かる範囲で教えていただきたい。

【説明者】
 当時、コストダウンの方策で様々なトライをしたわけだが、その際に十分なコストダウンの方策を見出していたかというと、必ずしもそうではなく途中段階という意味合いでやっていた。現在は、実証炉の段階でR&Dをやって、様々なことがわかってきたので、それをもう一歩進めて商用化が見えるようなコストダウンの方策を探し出したということであり、それに向けた研究開発計画を作ろうとしてきた状況である。

(2)RI・研究所等廃棄物の処理処分について

 RI・研究所等廃棄物の処理処分に関する現在の検討状況について、資料2に基づき事務局より報告。主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 RI廃棄物は全て使用済みでもう使えなくて危ないので、蓋をしてしまえという概念になっている。大量に出ているからということもあるが、家電製品や車などは皆リサイクルしている。RI廃棄物を有用な資源とみなせるようにするためにどのような技術があるか分からないが、例えば放射線がたくさん出るのであれば、それを電源や火明かりに使えるかもしれないし、これだけ予算をかけるのであれば、有用にリサイクル出来るような検討もあって良いのではないか。例えば、プルサーマルのMOX燃料についても、恐らくもったいないという発想もあるだろう。従って、これだけをただ捨ててしまうのではなく、他の目的にも使えるようなことは今まで議論されてこなかったように思われる。そうした視点は、どのように議論されているのか。

【委員】
 現実的な処理や処分についてを第一義的な検討課題として作業部会で進めてきたので、リサイクルや再利用についての検討は出来ていないのが現実である。作業部会の検討項目の中に、処理の技術開発などについても検討することが必要だという意見も委員の方々からいただいているので、廃棄物のリサイクルや再利用の道があり得るか、あるいはどのような研究開発をすれば繋げられるかということについても、しかるべきタイミングに作業部会で検討していきたい。

【委員】
 3ページの※(米印)の部分について、処分の技術開発という意味で、原子力機構が行うことはリーズナブルだが、ルーチン化した処分事業については、機構本体でやるべきものではないので、本体の研究開発を圧迫しないようにという趣旨も踏まえて、処分に係る予算が別の項目立てであると明確に分かる仕組みを考えていただきたい。

【主査】
 様々な廃棄物の管理をどうするかという議論に参加させてもらったことがあるが、主体や費用分担をどうするかが重要な問題であり、本来のミッションが圧迫されてはいけないと考えている。但し、電力事業者は、自由化に伴って廃棄物の箱分を計算して、それに対して電気料金が上がることから、利用者と交換に徴収したということもあったけれども、原子力機構は、利用者から徴収するわけにいかないので、別の仕組みで本来のミッションに影響されないことを是非検討していただきたい。

(3)我が国における材料試験用原子炉の役割とJMTRのあり方等に関する検討報告書について

 我が国における材料試験用原子炉の役割とJMTRのあり方等に関する検討報告書について、資料3-1~3に基づき説明者より報告。主な質疑応答は以下のとおり。

【委員】
 軽水炉の照射脆化という現象があって、実際に構造設計する場合にその予測は極めて重要になる。日本機械学会や日本電気協会で照射脆化の予測式を作って構造設計の中に入れているために、商業炉では、実際に脆化したものでモニターしているが、それ以外に研究として照射したものの脆化を測定することが必要であり、シミュレーション技術は進歩してきているものの、どうしてもその実証が必要である。要するに、頼りはJMTRしかないわけである。しかし、照射実験が十分出来ず、外国に照射を依頼しているのが実情である。それは、日本として非常に恥ずかしいことであり、それ以前に困ることである。照射脆化は、時間も予算もかかるので各国が負担しているが、国によって使っている材料が全く違う。また、データが一番多いのはアメリカと日本であるが、そのデータをあわせても予測式で信頼のおけるものが減少している。そうした意味でも、JMTRがなくなることは非常に困るので、現在の計画どおり使えるようにしていただきたい。欲を言えば、画期的な材料試験炉を作るくらいのことを考えるべきである。
 また、国際協力について様々な意見交換を行うのは結構だが、もっと重要なのは実際の協力である。FBRに関してどのような協力が行われているかという事例を1つ紹介したい。軽水炉等の設計基準は、アメリカの機械学会であるASMEが、ボイラー&プレッシャー・ベースルコードを持っていて、そのセクション・スリー、セクション・イレブンが原子力のコードになっている。日本の規格は、それをほとんど真似しているわけである。従って、我々は日本の規格を作っているが、同時にアメリカの機械学会のメンバーであり、高度コミッティーの委員をやっているわけである。そのため、我々はアメリカへ行って規格を作っている。非常に重要なのは、現在FBRの規格がASME規格で出来つつあることで、それは日本が申し込んでいるものである。日本は、もんじゅの経験もあって、FBRの構造設計の基準がASME規格として出来つつある。やはり国際協力にとって重要なのは、規格や大学・個人同士の技術交流である。文部科学省には、そうしたウエートが高いことを認識した上でサポートしていただきたい。

【委員】
 将来、JMTRに代わるものの検討が必要ということだが、全体構想を考えながら、現在の方針の位置付けをすることが必要ではないか。一方で、量子ビームの話になるけれども、中性子散乱グループ用の原子炉としてはJRR3などが現在動いているが、これも似たような時期に同じことが起きる。中性子散乱はJ-PARCが完成すればパルス中性子源が出来るので問題ないと考えられるかもしれないが、パルス中性子源が出来ても、材料の応力ひずみの測定などにとっては原子炉のような連続ビームの方が良いということがあって、両方ほしいという要望が出されている。そこで例えば、JMTRの後継機とJRR3の後継機に要請される性能を合わせもつような連続ビームの中性子源を、超伝導で連続ビーム加速のADS用の加速器を作ることで実現するというような全体構想を持つべきである。この場合加速器から直接のビームを使う方法もあるが、ADSのターゲットとしてそれぞれの目的に応じた未臨界の燃料集合体を設置して中性子の数を増幅して使う方法もある。入射用の超伝導リニアックは1台でビームを分割してそれぞれの燃料集合体に入射し必要な中性子数を得るシステムにできる。

【主査】
 本件については、是非利用者の方々と相談して、利用者が有効に使えるようなシステムを構築していただきたい。

(4)原子力システム研究開発事業「基盤研究開発分野」における平成18年度新規研究開発課題の選定結果について

 原子力システム研究開発事業のうち、「基盤研究開発分野」における平成18年度新規研究開発課題に関する選定結果について、資料4に基づき事務局より報告。質疑応答は特になし。

(5)原子力に関する研究開発の推進方策について

 原子力に関する研究開発の推進方策について、資料5に基づき事務局より説明。以下の質疑応答が行われた。

【委員】
 1点目に、第2章(1)の「基礎的・基盤的な研究開発」で核不拡散と安全研究が掲載されているが、安全研究は、第3章で詳しく書いてあることや、安全研究と核不拡散との関係を考えると、第2章の(1)よりもむしろ、第3章で安全と核不拡散の問題についてまとめて触れていただく方がまとまりも良いので検討していただきたい。
 2点目として、9ページの(3)「人材の育成・確保」であるが、その一番下の2あるいは10ページの3、すなわち産学官連携と施設供用が様々な角度から大事な課題であるならば、(3)「人材の育成・確保」に並ぶ(4)として、「産学官の連携」という視点から、最近の産業界や大学の状況等を踏まえて、まとめて捉える方が良いのではないか。

(6)その他

 今後のスケジュールについて、事務局より説明。次回の委員会については、6月5日(月曜日)の13時から15時で開催を予定している旨、事務局より連絡があった。

-了-

お問合せ先

研究開発局原子力計画課