原子力分野の研究開発に関する委員会(第15回) 議事要旨

1.日時

平成18年4月26日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10F3・F4会議室(文部科学省ビル10階)

3.議題

  1. 高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2について
  2. RI・研究所等廃棄物の処理処分について
  3. 原子力に関する研究開発の推進方策について
  4. その他

4.出席者

委員

 田中主査、石田委員、伊藤委員、井上委員、岡崎委員[議題(1)のみオブザーバー]、加藤委員、木下委員、知野委員、中西委員、藤本委員、本島委員

文部科学省

研究開発局
 森口局長、藤木審議官、中原原子力計画課長、中村原子力研究開発課長、須藤放射性廃棄物企画室長
説明者
 佐賀山副部門長(日本原子力研究開発機構 次世代原子力研究開発部門副部門長)

5.議事要旨

(1)高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2について

 高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2の最終報告書に対する評価に関して、資料1に基づき事務局より説明。以下の質疑応答が行われた。

【委員】
 13ページの、軽水炉サイクルからFBRへの円滑な移行という部分で、原子力政策大綱との整合性を主に言っているが、どちらかというと我々の主体的なペースで、「この時にはこれが出来るだろう。」という感じで50年ということであり、そこでなければならないことの必然性が明確ではない。しかし、軽水炉サイクルからFBRへの円滑な移行を考える時、現実に動いている軽水炉のリプレース期については、動かせない話なので、主体的にいつ頃なら間に合うという話ではなく、それに合わせなければいけないという要請があるだろう。従って完成度は低くても、2030年にとにかく1基実現してみるという明確な目標を持つべきである。
 それから、16ページのウラン資源の更なる有効利用という部分で、「高増殖比」ということが書いてあり、FBRの中で高増殖比を狙うという意味だろうが、ニュートロンエコノミーからいえば、核分裂のニュートロンよりは、核破砕のニュートロンの方がエネルギー1個当たりの中性子を作るのには経済的なので、核破砕的なソースで、例えば劣化ウランからプルトニウムや、トリウムからウラン233を作ることについても、不確実性に対する対応として検討すべきである。また、多様なニーズの部分で水素製造や小型炉とあるが、水素製造は原子力による方法が優位だということが言えるかどうか分からない。原子力による製造だけに国の予算を多く投じるのが正しいかどうかも分からない。むしろ、こうした水素製造や小型炉については、上手くいけば儲かる話であるわけだから、競争的環境を取り込むべきではないか。
 次に、ナトリウム冷却でMOX燃料というのが主概念ということだろうが、金属燃料やヘリウムが本当に補完概念なのかというのが良く分からない。集中していくのであれば、やはりナトリウム冷却炉でMOX燃料、それに先進湿式があって、それが我々としては、一番あり得るケースであり主概念となるだろう。その上で、思いのほか上手くいった時に慌てないために次の展開も用意しておき、実際に上手くいかなかった場合にどうするかということも考えておくというのはすべて主概念の内の3つのバリエーションであり、補完と称してヘリウムなどを合わせてやる必要性はないと考える。また、19ページに代替技術ということが書いてあるが、それは別に悪いわけではないものの、何となくこう書くと、うっかりするとばら撒きになる可能性がある。どれもやっておくのは意義のあることだが、その部分は本当に長期的に考えて必要かどうかという考えが必要ではないか。あと、20ページの主概念について、輸出可能云々は良く分からないが、むしろ輸出可能なのは小型炉ではないだろうか。
 最後に、21ページの補完概念の部分が良く分からなかったのだが、主概念はMOXのナトリウム炉で進めることに集中すべきで、それ以外は、むしろ主概念だけうまく行っても完結しない面を補うために他でやっていない斬新なこともやっておいて、原子力の技術を広げておく方が良いのではないか。以前から言っているが、燃料サイクルに関してはトリウムサイクル、環境負荷などに関してはADS・分離変換といったことをやっておくべきではないか。

【主査】
 以前に核破砕やトリウム、ADSなどについてどう考えるのかという議論もあったが、事務局ではどのように整理しているのか、あるいは、委員の方々から関連した意見があれば聞かせていただきたい。

【事務局】
 事務局の整理というよりも、まずはFSの報告書でどのようにまとめられているかをご説明する方が良いと思われる。報告書に書かれているのは、FBRの実用化を考えることが目標であるので、実際に電源として入るものは何かということを最初に据えて考えている。その上で、そこに向かうに当たって主概念が設定されている。但し、研究開発の進捗状況や社会の受容性等を考えた時に、補完概念も、あくまで電気を起こすことをベースに考えたものとして、研究を行っていくとしている。しかし、それとは別に、人材を日本の国内において十分に確保していく、あるいは原子力の裾野を広げていく点に重きを置くことは、別の観点から重要であるので、それは基礎的なものとして、着実に進めていくべきものであると考えている。

【委員】
 14ページに、国際的動向に鑑みて適切かという観点から、各国の状況を踏まえて輸出ビジネスのチャンスをこれから作るためには、技術的優位性の維持が必要であると書いてある。このとおりであるが、国際的に技術的優勢を維持する、あるいは国際標準を我が国がリードして作っていくことを考えると、現在提示されている研究開発工程が本当に上手くマッチしているのかということを、一番心配しているところである。第一段階を終了するのが2015年になっていることを踏まえると、この14ページの表で米国は既に運開しており、フランスも2020年に運開と書いてあるものの、設計段階で考えればもっと早い。そのように考えると、今のスピードでやっていて、こうしたことが実現出来るかどうかということを心配している。なかなか良い知恵はないのだが、例えば資源を集中することによって開発を加速する可能性があるのかどうか、あるいは国際協力の観点から戦略的に別の方法でやることが出来るのかどうかといったところを作業部会等で議論して、こうした目標が実現出来るようなシステム作りをお願いしたい。

【主査】
 技術的な部分については、作業部会での検討が出来る。国際協力をどうするか、2030年頃に1つ位は何とかなるのではないかという議論、更には2050年頃から電力会社が大幅に使ってくる時にどのような状況になっているか、といった様々なことについて、別の大きな観点で検討すべきではないか。

【事務局】
 まずは作業部会で、これから2050年までを技術的に考えた時に、技術的にどのような研究や施設が必要で、どのような段取りになっていくのかを議論していただき、資料にした上で、その結果について、今後、本委員会にも説明したいと考えている。その上で、もっとこの点を考えたら良いのではないかという、大所高所からのコメントを受けてフィードバックをしながら議論させていただきたい。

【委員】
 原子力政策大綱の実現ということだが、この政策的評価に加えて、やはり作業部会での技術的評価が非常に大事なものだと考えている。例えば、5ページに技術的な実現性と書いてあるけれども、やはり実用的に成立する技術であるかどうかの見極めが大事なので検討していただきたい。また、13ページの軽水炉サイクルから高速炉サイクルへの円滑な移行という部分で、このシナリオの評価やそれに対応する技術が重要ではないかと考えている。
 それから、先ほど15ページにあった国際標準を目指す技術という部分も、これは核不拡散の問題等を含めて、極めて重要な視点ではないかと考えていて、この辺りの検討を是非作業部会でやっていただきたい。また、資源配分的視点の選択と集中、それに柔軟性という点で、やはり選択と集中を重点化していくことは大事だと考えているが、技術の進展はあるわけで、柔軟性も確保しておくことは重要ではないかと考えており、この基本的な考え方には賛成である。但し6ページにもあるけれども、研究開発の継続や変更等の評価、判断といったものを、どのような体制で実施していくかという部分も極めて重要であるので良く考えておかなければいけない。
 また、原子力政策大綱を実現していくために、やはり着実なプロジェクトの推進が極めて重要だと考えており、これは作業部会になるかもしれないが、研究開発課題を明確にして、必要とする研究開発費を明確にしていくことが重要ではないかと考えている。着実に推進していくという意味でも、今の公募型の研究資金の配分で良いのかどうか。やはりオーソライズされたスケジュールに則って、確実に計画が推進出来るような研究開発費が確保出来るシステムも考えていくべきである。

【主査】
 前段部分については、作業部会で議論させていただきたい。特に作業部会では、FSのフェーズ2の評価がまず重要であるが、同時に2015年に向けて、あるいはそれ以降どう考えるかということを技術的観点から検討することになっているので、取り上げさせていただきたい。

【委員】
 今回の評価の視点については、概ねこうした形ではないかと考えている。先ほどから、2050年は少し遅いのではないかとの話が出ているが、例えば、現在運転している軽水炉の寿命が今後60年と仮定すると、2030年頃から軽水炉のリプレースが始まってきて、そのボリュームは非常に大きなものになってくる。その中で、最初の20年、つまり2050年頃までに何をするかというと、これから開発を進めていく次世代の軽水炉に置き換えていくことになると考えている。その後、エネルギーセキュリティーの確保や環境負荷の低減といった観点から、2050年頃以降、基幹電源としてFBRにリプレースしていくという流れになっていくのではないかという認識を持っているところである。
 そうした中で、我が国のFBRサイクル技術が国際標準になっていくことは、非常に重要なことだと考えており、一方で海外の状況を見ると、非常にスピードが速いことも事実である。従って、いつどうするかということはあるが、いずれにしてもこれからの10年間にどこまできっちりやれるかということが非常に重要で、まさに正念場になってくる。FBR開発については、技術的に様々な難しい問題があるので、やはり重点的に予算を投入し、足元の課題解決に向けて、この10年間でしっかり研究開発をやっていただきたい。

【主査】
 実用化、あるいは商用化に向けて、どのような考えが大事かについて、資源エネルギー庁の原子力部会でも検討しているが、本委員会では研究開発という立場から、また作業部会では技術的な観点から、2050年頃の商用化とすれば、どういう技術を開発していき、いつの時点でどう実現していくのが大事かということを検討していきたい。

【オブザーバー】
 1つ目として、14ページのこうした海外動向に対して、我が国が果たしてどのようにリーダーシップをとっていけるかという問題がある。恐らく近い将来にプラント全体を輸出するということが現実的にはあまり考えられないとすれば、具体的にどのような形で我が国の技術的優位性を国際的な場で発揮していくかということをきめ細かくご検討いただきたい。例えば、最初の段階で特にアメリカやフランスの現在の動きに対して、設計面において今までの我が国の知見をどのように生かしていくか。これは多分、研究開発機関として十分対応していくことが可能だろうが、次のステップとしては、彼らが建設するプラント全体ではないかもしれない。個々の主要な技術に対して、我が国が参画していく姿をどのような形で描いていけるかということになってくる。そうなると、研究開発機関だけでなく、製造事業者の方々と、どのような形でこうした国際的な技術を提供していくことが可能となるかどうかについてよく連携をとって、そうした場面で日本の技術が国際展開をしていくことを実現するためにどうしたらいいかということを考えていただきたい。すなわち、こうした国際展開に当たってのきめ細かい戦略を作業部会でも議論していただきたい。
 それからもう1点として、その前のページの軽水炉サイクルから高速増殖炉サイクルという部分で、技術的観点から大事な点ではあるけれども、この問題について、今後政策的にも議論していただいた方が良いのではないか。例えば、軽水炉から高速炉にどのように移っていくかというところで大事な点として、プルトニウムバランスの問題が大きな観点であり、もう1点として再処理技術が果たして軽水炉サイクルから高速炉サイクルにどのように移管していくかという観点がある。六ヶ所の再処理工場が順調に運転を開始されたが、課題は、原子力政策大綱で2010年から第2再処理工場のあり方についての議論が開始されるということである。この第2再処理や次の再処理技術に対して、我々が今取り組んでいる高速炉再処理技術をどのような形で生かしていくことが可能なのか。あるいは、それが第2再処理の検討にどのように生かされるかという点について、文部科学省だけでなく、経済産業省ともよく連携をとっていかないといけない点が出てくる。そうした視点から、政策的判断も加えながら、技術が果たしてどう生かしていけるかという観点を合わせて、議論していただくことが良いのではないかと考えている。

【主査】
 1つ目に、国際協力についてどのような形で協力すべきか。また、メーカーとも連携しつつという意見があったので、作業部会として、検討するのにふさわしい部分については取り上げたい。2つ目については政策的な部分とも絡むが、高速増殖炉の実験の原型炉が、日本で「常陽」や「もんじゅ」があるのに対して、新しい再処理技術や燃料製造技術がまだ具体的に解決されていない部分もあるのでは、という指摘も何人かの方々からいただいている。技術的観点でどこが問題で何を解決しておかないと次に進めないのかということも重要な視点なので、作業部会で検討させていただきたい。

【委員】
 主概念のほかに補完概念の研究開発も行うというのは、選択と集中という考え方からすると、素人からは、明らかに矛盾するばら撒きのように見える。国の大規模研究開発プロジェクトの様々な部門を見ると、やはり一旦始まったものは終わらないで、そのまま行ってしまいがちだ。補完概念をやるのであれば、どういう社会的な変化が起きた、あるいは技術的にどこまで課題が出てきた時に主概念から補完概念に方向を変えるのか、などの点についてあらかじめ具体的に検討し、決めておくことが必要ではないか。

【委員】
 今後、この線に沿って開発や設計がなされる時の責任主体がどのようになっているかがよく分からない。今回の報告書は、日本原子力研究開発機構でかなり中心となってまとめられていると思うが、これ以外に、実際に大学やメーカーなど様々なところがあるわけで、それぞれ得意分野というのもあるだろうから、その分担がどのような形でなされているのか分からないので、組織論的に言って本当に上手くいくのか心配な部分がある。人の交流や知財の権利関係の話、それに予算配分という非常にしんどい話もあるだろうし、その辺りが国として全体に上手く回るように、組織論的になされているかどうかという部分が分からないので、今後注意してやっていただきたい。

【事務局】
 まさにそれは、今後の研究開発方針を定める際に重要な事項だと考えている。従って、今回の資料でも、6ページのところの「評価の視点」に白丸で取り上げている事柄なので、本委員会でご議論いただきたい部分になる。その中の目的実現方策の部分で、研究体制や責任主体、その下にある機構の運営費交付金の手当の仕方や公募事業のあり方など資源配分の考え方については、本日ではなくて、後日、ある程度このようなことをやるべきではないかということが見えてきた時点で、この体制で良いのかどうかという視点からご議論いただきたい。また、知財については前回もご指摘いただいたので、ご議論いただけるよう考えてみたい。

【主査】
 FS関係の本委員会での今後のスケジュールについては、以前説明があったかと思われるが、もう一度教えていただきたい。

【事務局】
 本委員会は、月に一度なので、本日と5月にもう一度ご議論いただいた上で、6月の段階で中間まとめと考えている。中間まとめについては、基本的な研究開発課題について、大体見えてくる位までの内容と考えている。その上で、7月に入って研究開発課題が見えてきたところで、体制がどうあるべきか、資源配分をどうすべきか、という部分に議論を深めていただき、最終的には9月頃にパブリックコメントを求めた上で、10月頃の取りまとめというスケジュールを考えている。

【委員】
 全体のポイントとして、このFBR開発に必要な資金を確保出来るかということがある。考えてみると、「もんじゅ」は電源特会という大きな財源があったから、苦しいながらも出来たということがあるけれども、科学技術全体、あるいはその中の原子力に割り振られる国の資金は期待出来ない。それほど大きくないパイをいかに分けるかということが重要である。選択と集中や柔軟性は、二律背反であることが明確であって、そこである方向に進むのであれば、ある程度割り切るしかないということがある。しかし、どういうことでどうギアチェンジするのかという具体的な考え方は、非常に大事である。
 国際協調について、これまで我が国の原子力は、総体として輸出や他国で仕事をすることについて、それほど心の準備もなければ制度の準備もあまり無かった。現在は、それが非常に大事なことであって、プロジェクトの段階から一体どのような形の国際協力があり得るのか、あるいは日本人全体が非常にエンピリカルな国民であるから、どこかでFBRが発電コストまで行くかどうかも知らない。しかし、ある程度妥当な建設費で建設された、あるいは妥当な姿で運転されていることが分かれば、勿論電気事業者もそうだし、背後には国民全体の大きな意見があるわけなので、そうしたものを背景に仕事を進めていくことが出来る。その辺りについては、作業部会できめ細かな国際協力のあり方を検討していただきたい。

【委員】
 研究体制の重要性について再度指摘したい。産学官で進めるにあたっての主体は、独立行政法人になっているわけだから勿論日本原子力研究開発機構が責任を持たれると考えている。この分野は、産学官の連携が典型的に必要な分野であり、30年後というと、人材養成も含めてかなりしっかりしたプログラムを作る必要がある。計画を成功させることと、進めている過程で健全に進めることが必要で、そうした観点でも、産学官の連携と、そこから緊張感のある関係を作る必要がある。そうした中で、総合技術開発という観点で、材料、安全制御、原子分子データ、原子データに遡っても、学の役割というのは典型的に分かるわけで、それをどのように期待していくかという辺部分もしっかり議論していただけると、結果により早く到達出来るのではないか。

【事務局】
 先ほどご指摘があったとおり、非常に資金の問題が大事だと考えている。ご承知のとおり、第3期科学技術基本計画において、このFBRのシステムについては、国家基幹技術ということで今後5年間重点的に投資すべき分野に指定されたので、我々としては、非常に期待を持っているところである。但し現実には、大部分が特別会計ということになろうかと考えているけれども、我々としてはそうした期待を持ちつつも、いわゆる行財政改革の中で、経済財政諮問会議でも様々な議論が始まっており、そうした中では、ゼロベースから見直すというか、プライマリーバランスを取る観点から相当厳しい議論もあり、我々としては、そうした中でも総合科学技術会議において決められているわけだから、しっかりと死守して対応していきたい。
 それともう一点として、そうした中で特別会計改革もあり、これは来年度から石油特会と統合されて、一般会計への繰り入れが始まるということであるので、そうした中での原子力の配分もしっかりと確保していく。これは今後の法改正の中で、経済産業省との連携をとりながらしっかりとやっていきたい。

【事務局】
 今年の春から自民党でエネルギー戦略という視点から、原子力を含めた様々なエネルギー戦略について議論する場が設けられている。政府でも、経済産業省でエネルギー戦略について大綱的なものをまとめる方向で動くのに連携した動きであると認識しているが、その中で特に原子力についての期待が非常に高い。原子力については、特に単独の戦略分科会を置いていて、そこで現在議論が進められている。
 その中で1点だけ紹介しておきたいこととして、FBRの導入時期についての議論がある。特に分科会での認識としては、世界が非常に速く動き始めたということで、過去考えていたよりもずっと速く世界が進んでいくのではないかという認識が広まってきている。状況は着々と変化しているのではないかという認識がかなり広まっており、2050年にFBR導入ということで、日本はきちんと技術的に優位であると言いながら、世界を先導していけるのだろうか、という危機感のある雰囲気での議論が続いている状況だと認識している。特に技術的観点から、もっと速く出来るのではないかという議論も多く行われているところであり、そうした雰囲気があることをご紹介させていただきたい。

【委員】
 先週、ホスト国であるロシアにおいて、G8サミットに向けて、科学アカデミーの会長を集めた会議があり、そこでの一番の議題がエネルギーの話であった。G8+(プラス)BRICSでブラジルなども来ていたが、驚いたことは、科学アカデミーの会長の間では、原子力の将来の議論に無関心で、最初のドラフトにも入っていなかった。後の方で、米国代表がR&Dの項を入れ、そこで初めて原子力が入った。それがプラスになるかマイナスになるかは分からないし、ロシアの思惑として牽制的なところもあるのかもしれないが、最後にホスト国が中心にまとめた案でも、小さな扱いになっているのが非常に印象的であった。

(2)RI・研究所等廃棄物の処理処分について

 RI・研究所等廃棄物の処理処分について、事務局より資料2に基づき、「RI・研究所等廃棄物作業部会」における現在の検討状況等について説明。以下の質疑応答が行われた。

【委員】
 全体として着々と議論が進められていることは、結構なことであるので是非進めていただきたい。論点を見ると、研究所等廃棄物の多くは公益性のあるものであって、電力廃棄物とは非常に異なると書かれており、気持ちは分かるけれども、中々収入には結びつきにくい所から出てきたものであるとはいえ、こう断じてしまうのもいかがなものかという感じがしないでもない。ここで公益性があるということを盛んに言っているわけだが、何らかの措置を講じないと困るという点で、国に一定の役割が求められている点でも公益性があると書かれており、非常に含蓄のある言葉だけれども、どういうことなのかというところが少しある。確かに、公益性は非常に大事なことであるけれども、これから資金負担等が非常に大事なことになってきて、何故我々はこれを負担しなければいけないかということについて、どうしても世の中に働きかけていかなければいけないわけだから、緻密な議論をお願いしたい。
 それから、この作業部会で対象にされている廃棄物の範囲が書いてあるが、対象にしていない廃棄物は、何がこれから宿題で残っているのかという部分が必ずしもよく分からないのだが、どのようになっているのか。あるいは、これまで発生したものは、処分コストに関するものに全く含まれていないし、これらのものは若干フレキシブルであるということはあるけれども、どの廃棄物が議論対象になっていないのかについてはいかがか。

【事務局】
 処分相当の話という意味では、今回議論の対象にさせていただいたのは、コンクリートピットやトレンチ処分といった浅地処分相当のものについて議論させていただいている。それよりも少し放射能濃度の高いもので、余裕深度処分相当という言い方をしている廃棄物については、議論の対象にはまだなっていないと考えている。
 あと、地層処分相当の低レベル放射性廃棄物については、現在、原子力委員会において、技術的検討が行われたのを踏まえて、経済産業省で具体的なあり方について議論されているところである。あと補足であるが、コメントの公益性の話については、委員の方々のコメントを出来るだけ正確に書かせていただき、次回の議論を進めたいと考えている。

【委員】
 別にいけないと言っているわけではないが、公益性は確かに大事な言葉であり、これから分担等をしていくために非常に大事なことであるので、是非委員の方々からもその辺の真意を伺って、きちんとした議論に仕上げていただければありがたい。

【主査】
 国が一定の役割をすることになれば、社会に対して説明が出来ないといけないということもあるので、この辺りについて緻密な議論がないと納得出来ないということがある。

【委員】
 6ページ目の実施体制のところに、発生者が個別に処理処分をやるよりも、集中的に処理処分をやった方が効率的で合理的であり、そうした観点で具体的な実施体制を検討中と書かれているわけだが、その次の7ページ目を見ると、コンクリートピットとトレンチ、それに浅地中処分のもので、平成16年度末現在と平成60年度末の数量が書いてあり、いずれにしても原子力機構のウエートが相当数を占める格好になる。そうしたことからすると、この実施主体について、原子力機構が、「おまえのところは一番たくさんあるから全部まとめてやれ。」という流れになっていくのは自然と見えるわけである。そうなると、原子力機構が様々な研究テーマ、特にFBRの関係をしっかりとやっていただかなければいけない状況にあるので、是非ともそうした研究開発に影響しないように、廃棄物処理処分の関係予算はしっかりと確保していただきたい。
 少し前の経緯だが、サイクル機構と原研が統合される際の準備会議の時に、複数の委員の方々から、原子力機構の本来業務である研究開発を圧迫することのないよう、80年間で2兆円とされた廃棄物の処理処分費用を別枠で確保すべきではないか、という意見があったと承知しているけれども、その当時は、原子力の2法人の全事業費に占める割合は、5パーセントから15パーセント相当なので、別に新しい特別な制度を作らなくてもやれるのではないかという形になったと承知している。しかし、FBRについては、国家基幹技術ということで重要性が益々高まっている状況にあるので、処分費を研究開発費とは別枠できちんと確保しないと、これで何らか費用を積み立てる格好で研究費に食い込んでいったら、やることもやれなくなってしまうことになるので、是非とも真剣に考えていただきたい。

【委員】
 廃棄物の問題は、放置していたら信用問題になるという意味でも非常に重要なので、先延ばしではいけない。実施主体と公益性の話だが、やはり予算絡みの話があって、勿論それは重要だけれども、例えば発生者の責任ということが一般論として、原子力ではよく言われるわけだが、例えば処理処分の技術等に関しては、技術的な部分で実際に取り扱っている人が一番良く分かっているので、そうしたところでベストな開発をする義務はあると考える。
 しかし、本当にどこに捨てるかということを考える時に、例えばごみ処分でも、勝手に自分の家から出たものは自分のところでやれといって、庭で燃やしたりしても困るので、それなりのことを自治体がやっているわけである。どこに捨てるか、どう回収するかという仕組みは、国がやっているところがあるので、技術開発や作業の話と仕組みを用意する話とは分けて考え、処分場などをどの場所に確保するかということについては、国が責任を持つべきではないかと考える。

【委員】
 この議題に多少関連する話として、低レベルの被爆者が発生した場合に、病院から退院させる基準が非常に不明確で、病院や行政、市民などの間で押し合いがあるという話で時々相談を受けることがある。病院の方は当然ながら、汚染の除去がある程度進んで一定レベル以下になれば、出来るだけ早く追い出したいというスタンスなのだが、地方行政の方はどちらかといえば弱腰で、比喩的に言うと、まるで開放性のコレラ菌の保菌者が町に無防備に放り出されるという感覚で受け止める。そうすると、出したい所と出されては困る所の間で押し合いへし合いがあって、行政は、人間の方も低レベルの廃棄物としてどこかへ処理したいと思っているのと違うのか、と。これは冗談だけれども、こうした問題は、どこで議論されているのか分からずに時々相談を受けるので、RIの作業部会ではないような気がするけれども、どこかでやらないと現場で困ることは事実である。

【主査】
 病院から発生する放射性廃棄物については、ここにも入っているのか。

【事務局】
 入っている。

【主査】
 病院や患者の持っているRI等については、今はどのような扱いになっているのか。

【委員】
 病院での基準は、医者の判断に任せると伺っている。

【委員】
 医者からすれば、それが困るそうである。

【委員】
 まず、この研究所等廃棄物の処理について、道筋が見えてきたことに対して、高く評価させていただきたい。また、その一部にわずかではあるが、メーカー側が持っている廃棄物について一応検討の中に入れていただき、お礼申し上げたい。今後ともそうしたスタンスで、メーカー側も少ししか持ってはいないが、それだけにこの処理は大変なものであるから、是非今後とも仲間に入れていただきたいということを重ねてお願いしたい。

【主査】
 あとは、廃棄物全体でどのようなものがあるかという指摘があるのではないかと思うが、文部科学省で担当しなければいけないものは、RI研廃の後に何か出てくるのか。

【事務局】
 資料の1ページに、放射性廃棄物全体の概要が載っているけれども、基本的に文部科学省で審議していかないといけないのは、RI・研究所等廃棄物である。そこで少し問題なのは、いわゆる研究機関からも一部ウラン廃棄物やTR廃棄物というものが出る。この図では、核燃料サイクルの方で出てくるものとして、ウラン廃棄物やTR廃棄物も出ているけれども、研究所等廃棄物の中にもウラン廃棄物相当という言い方をしたり、TR廃棄物相当という言い方をしたりするものもある。但し、TR廃棄物のうち、地層処分相当のものについては、今、現在経済産業省で別途検討されているところであり、文部科学省としては、RI・研究所等廃棄物という切り口で、その中に含まれるウラン廃棄物相当のものや、TR廃棄物相当のものも入っていくけれども、そうしたものについては、RI・研究所等廃棄物という切り口で今後とも議論していただけるものと考えている。

(3)原子力に関する研究開発の推進方策について

 原子力に関する研究開発の推進方策について、資料3-1~2に基づき事務局より説明。質疑応答については、以下のとおり。

【委員】
 資料3-1について、事前に送付していただいた資料と、本日配付された資料とでは章立ての順序が異なっている。原子力政策大綱と比較しても1章・2章・3章が、1章・3章・2章となっている理由について教えていただきたい。

【事務局】
 文部科学省として示すべき推進方策というのは、研究開発の進め方について、原子力政策大綱に対して答えるべき内容であると考えている。従って、1章、2章、3章の順番を変えたことについてだが、資料も毎日議論しながら少しずつ進化しているので、事前にお送りしたものと少し変わってきているが、構成の考え方として、報告書では、まず基本的な認識と考え方を述べて、文科省として一番大事な研究開発の進め方について第2章に据えて、それに付随して出てくる廃棄物処分や人材、施設利用等、研究開発に関連する様々な問題について第3章として扱ったらどうかという事務局の案である。そうした構成をとると、原子力政策大綱の順番とは少し異なってくるけれども、本委員会の報告書の論理の流れから言うと、少し組み替えた方が良いのではないかと考えている。

【委員】
 地域共生などの話について、ここで議論するかどうかは別にして、広報・公聴という言葉は、業界では死語に近いので、この言葉を聞くともの凄く恥ずかしい。原子力政策大綱にも書いてあるのでいじれないかもしれないが、中身についてもう少し新しい立場で書かれた方が良いという気がする。広報・公聴というは、共生とも矛盾するし、一方通行である。

【主査】
 報告書の中に様々な課題が挙がっているが、資料4を見ると、次回に「量子ビームテクノロジーの研究開発について」という議題があって、そこで審議すると書かれてあるが、本報告書を作成するにあたっては、量子ビームテクノロジーの研究開発について、ここで議論せよという部分は、これまで議論したと考えてよろしいのか。

【事務局】
 量子ビームテクノロジーについては、研究振興局の検討会における報告書について、中間報告の際に説明してご意見をいただいた。但し、新しい要素もあるので、今のところ、5月中旬くらいに作業部会で一度議論させていただき、その結果をこの委員会で報告したいと考えている。

【主査】
 量子ビームテクノロジーについては、後日検討するということでよろしいかと思うが、本報告書を作成していく時に、他の分野で本委員会において検討していないことはないのか。

【事務局】
 例えば、少し頭が痛いものの一つとして、学習機会の整備・充実がある。この部分については、自民党などとの関係においても、国民の方々にエネルギー問題について正しく理解していただき、一定のきちんとした判断が出来るようにしていくことが重要だという意見が挙げられている。これは総論として全くそのとおりであるが、それをどのようにやっていくかということについては、中々難しい問題がある。
 我々は今、特別会計の立地対策の一環として教育支援を大々的にやっていて、その教育支援は、電力の産出県だけではなく、消費地においても使うことが出来るようなものとして日本全国で行われるよう努めている。しかしながら、教育そのものとは違うところがあり、微妙な問題もあることから、こうした学習機会の整備・充実という点については、これまであまり議論をしていないので、報告書と併せて議論するのか、あるいはその際に一度資料を出して議論することも必要ではないかと考えている。従って、全てが出尽くしているわけではない。

【委員】
 原子力関連の研究開発は、技術論に終始しがちであり、その広報とは、もう出来上がってしまった技術や研究をいかに分かりやすく説明するかということのみに焦点が置かれがちだったと思う。勿論、研究はオープンでかつ一般の方々にも分かりやすいようにということは配慮されているとは思われるけれども、その説明はどうしても広報に頼りがちである。原子力関連の研究が他の研究と違う点は、研究する人自体が、研究の当初段階から、自分の研究がどう説明できるかという事を常に念頭に置いて進めなければならないことである。他分野のように技術論等だけで議論が終わるものとは大きく異なるので、この点について少し入れていただきたい。

-了-

お問合せ先

研究開発局原子力計画課