平成18年3月30日(木曜日) 10時~12時
文部科学省 F2会議室(古河総合ビル6階)
田中主査、伊藤委員、井上委員、榎田委員、岡崎委員、加藤委員、木下委員、小林委員、知野委員、藤本委員
研究開発局 森口局長、藤木審議官、中原原子力計画課長、中村原子力研究開発課長、板倉核融合開発室長 説明者 田島部長(日本原子力研究開発機構 産学連携推進部長) 佐賀山副部門長(日本原子力研究開発機構 次世代原子力研究開発部門副部門長)
原子力分野の産学官連携・施設の共用について、事務局より資料1に基づき説明。以下の質疑応答が行われた。
【(井上)委員】
共用施設の使用料について法人化で見直していると思うが、課題は採択されたものの、どれだけ使用料がかかるのか分からない部分もあり、やれるかどうか心配している声も聞く。大学の人々が持っているお金は、競争的資金等で賄わなければいけない状況になっている。有名教授のところには土砂降りのようにあっても、いわゆる中堅でコツコツやっている人々のところは、非常に疲弊している状況なので配慮をお願いしたい。
もう1点として、J‐PARCについて国際公共財という書き方があって、そのとおりであるが、そのために諸外国からどのように支援を得るのかということもある。一方で、利用者側としては、国際的な共同利用機関を使う文化が既にある。そうした文化に慣れている外国の人々にとって違和感のないシステム作りが必要である。
【(田島)説明者】
料金については、施設によって全体を見直したが、でこぼこはあるものの現在の試算で大きな変動はないと考えている。但し、例えば施設の減価償却の数字が変わってくるので、安くなるものもあるし、少し上がるものもあるけれども、目に見えて大きな影響のある数字は、現在のところ把握していない。それから、先ほど指摘のあった配慮については、これから仕組みを考えていく方向で検討している。
J‐PARCについては、KEKとの間で協議が進んでおり、国際的な部分も視野に入れた検討が進められているところであり、その結果を待っているところである。
【(加藤)委員】
研究者の支援ということが書かれているけれども、自分の研究以外の所に支援していくのは難しい面がある。これは特別なチームなどを作って支援する体制になっているのか。
【(田島)説明者】
ある特定の産業界とのテーマが始まると、元々研究者は別の部署にいて研究しているので、産学連携部の兼務として堅実にやる。従って、その部分の仕事の調整は、現場の研究の職場と我々との間で調整が必要であり、人事部門は、そうした仕事について何らかの評価をすることを考えている。
【(田中)主査】
11ページに利用拡大に向けた課題として4点書かれているけれども、課題解決に向けての見通し等はどうか。
【(田島)説明者】
通常の運転は、それぞれの職場の努力で何とかやっている。但し、突発的に大きな故障があった時にはお手上げである。従って、機構内部の経営判断でその部分を手当てすることがまず考えられる。それから高度化については、新しく予算を獲得しないと何ともしがたい。利用はもちろん料金をとるけれども、関係経費全体から見ると微々たるものであり、それによって賄おうという気はない。高度化については、1つの新しい展開として予算を認めていただくための努力をしていくつもりである。
【(岡崎)委員】
産学連携の中で、特に施設の共用については、新しい機構の本来業務であるという認識で、経営陣だけでなく、先端の研究者もそうした気持ちでこの問題に取り組んでいく方向で動いている。現在、課題解決に当たっての一番困難な課題は、この資金をどのような形で手当て出来るかというのが最大の課題である。但しこれについては、外部のユーザーの方々の声を適切に受け止めて、これをどのように取り組んでいくのが良いのかを考えて対応していきたい
今般、高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズ2の最終報告書が取りまとめられ、独立行政法人日本原子力研究開発機構及び日本原子力発電株式会社より報告がなされたことから、本報告書の概要、今後の評価及び研究開発方針等について、資料2‐1~5に基づき事務局より説明。以下の質疑応答が行われた。
【(藤本)委員】
資料2‐5の10ページで、「5つの開発目標への適合可能性について」という部分があって、作業部会で評価されると思うが、本報告書の中にこれを評価するに足るデータや目標は入っているのか。この要旨だけでは、その辺りが分からない。そうしたものがきちんと評価出来るだけの物があるのかどうか。もし無いとすれば、いつ頃までに用意するのか。
【(佐賀山)説明者】
開発目標に関しては、本報告書の中に、より具体化した設計要求という形で数値目標等も設定している。その設定した数値目標等に対して、ここで想定した様々な各種概念についてどの程度の数値的達成が可能なのかといった定量的な部分も含めて本報告書には記載しているので、そうした意味で、まず設定した数値的な値や、それを達成出来ると考えた結果に関する評価については、より定量的な形で実施していただけると考えている。
【(井上)委員】
一般論になるかもしれないが、実用化段階に進むとすると、原子力関係だけで日本のエネルギーの将来像を描いて、新エネルギーや在来エネルギー、原子力全体のことについてそれぞれが言うのではなく、お互いに認識を共有する必要があるのではないか。総合的理解の上で進めていただきたい。ここには、FBRに反対の方はあまりおられないだろうが、世の中には反対の方もいる。そうした方々に対する疑問にきちんと答えられて、正当性について胸を張って言えるようなものにしていく必要がある。
5つの課題として「安全性、経済性、環境負荷低減性、資源有効利用性、核拡散抵抗性」が挙げられているが、このうち国民が懸念するのは、おそらく「安全性、環境負荷低減性、核拡散抵抗性」ではないかと思うけれども、さらに「燃料資源の確保」もあるのではないか。
安全性という意味では、昨今地震のことが問題になっているが、最大級の地震が起こった時に、故障はしてもいいと思うけれども、放射性物質が許容量以上外に漏れないという構造設計が定量的にどの位出ているのか。詳しい技術資料は見ていないので、数字は信用しての議論だが、それを出すことが必要ではないか。それから、大型・小型の比較等をしているが、これについても今までの経緯からして当然だと理解出来る。しかし、経済性を判断基準に重く置いている面があるが、トータルなシステムの安全性という観点で、燃料交換を必要としないカプセル型の炉心なども含めて、小型・大型の検討をする必要があるのではないか。
次に環境負荷低減性についてだが、FBRという臨界状態の装置でマイナーアクチュナイド等を燃やすことにこだわりがあるようだが、もっと柔軟な未臨界状態で燃やせる加速器駆動炉等の研究開発も進めるべきである。分離変換について、課題が多くて長期間かかるからといって将来の目標とするのは、そういう問題により力を入れつつ、時間がかかるという見通しなら分かるが、先にするのはおかしいのではないか。
但し、この問題で基礎的課題という位置付けをしているので、理解出来ないこともないが、実用化の諸課題は、どちらかというと経済産業省中心の共同チームでやる一方で、文部科学省としては、こうした基礎課題をむしろ重点化して行うことが必要ではないか。分離変換技術に関して、ADSの基礎開発研究は、J‐PARCの2期計画と書いてあるが、いつのことか分からないもので沈滞しているように見える。旧原研の優秀な現場の技術者の士気が低下しているとしたら問題である。
個人的見解だが、東海研究開発センターの原子力科学研究所は、中性子利用に特化して、量子ビーム利用の強力な国際的拠点になる。その一方で分離変換に関しては、例えばFBRの実用化戦略の一環として、「もんじゅ」の敷地で旧原研と旧サイクル機構の研究者が共同で、今のグループリーダークラスが現役の間にADSを1基建設するといった具体的時期を明示し、旗が鮮明な計画を立てていく必要があるのではないか。そうした革新的研究をすることが、人材育成にとっても重要である。
3番目の核拡散抵抗性であるが、技術がないテロリストが盗んで何かをするための抵抗性ということだけでなく、日本にとってもプルトニウムが単体化しにくいことを示す努力が必要である。それから、この問題に関しては、ウラン・プルトニウムサイクルだけでなく、トリウムサイクルの研究開発もすべきである。別にウラン・プルトニウムの固体燃料をやめてトリウムの溶融燃料にしろ、という主張をしているわけではない。エネルギーセキュリティや燃料資源の確保という観点からも、ウランだけに依存しない方が良い。原子力の議論をしていて、いつもフラストレーションに陥る時があるのだが、原子力の村の中でも外でも敵味方のレッテルを貼って非難する感じがあって、もう少し複眼的な発想をしないと国益を損ねるのではないか。そういう意味でトリウムサイクルに対して思考停止している状態は、怠慢で危険だと感じている。
本議論で最も重要なことは、モラルの高い研究体制の確立であり、相当な覚悟を持って意識改革を進める必要がある。それから、長期にわたる開発なので、失敗も含めて自ら開発した技術の蓄積と経験を共有し、大切に継承してほしい。誰かがやったから、後継者にそのフォローもしないで次のステップが設計出来るという安易な考えでは困る。また、このオプションを選択する場合に、客観的な評価は一番重要だが、実績があって、優れたチームがやりたいと思っていることをやらせてみる判断基準もあっていいと考えている。実績もなく、やりたくもないことをやれと優秀チームに言ったとしてもうまくいかないだろう。客観的な装いで意中のものに二重丸をつけて、そうでないものに必要以上に貶めることがあったら、国民の判断が誤る。原子力自身は、仮に国民投票でやめろと決めたからといって、すぐやめられるものでないことは十分わかってもらえる話である。このシステムを安全に維持してより良いものに改良していく重要なパートとしてFBRがあると考えているわけだが、そうした研究開発は、たとえやめろと言っても1世紀くらいはやらなければいけない話である。現役の人々も次々と辞めていく状況で、人を育ててなかったら大変なことになる。そのためには、緊急に重要で魅力ある研究課題を立てないと駄目である。
【(田中)主査】
経産省の原子力部会、あるいはそれ以外の人もこの研究開発の重要性を認識すべきということはもっともだが、加速器駆動増殖炉やマイナーアクチュナイド等については、本報告書との位置付けをどう考えればよいのか。
【(中村)事務局】
今回の実用化戦略調査研究で、最初に定義され始めた時に幾つかの条件があった。1点目は、今の軽水炉にリプレースしていくような、実用の発電をしていくシステムであること。2点目として、再処理や燃料加工も含めて、システムとして社会の中できちんと完結するものにすべきであるという技術的要件。それから3点目として、社会的要件として、原子力がどんどん増えていくというわけではなく、エネルギー全体のバランスの中で原子力を位置付けていこうとしているので、その中の一要素として考えること。そうした条件の下にこの研究が始まったと理解している。
FBRシステムの実用化が日本においてなされるとすれば、それは研究開発だけでなされるわけでなく、現実的には、現在の原子力発電所が民間の電気事業者において運転されているように、実現自身は、研究開発とは別の事業者による実施と関わって出来てくるものである。
ADSのような駆動のものをどうするかという話であるが、ADSにおいて日本の電力を賄うものがあるのかどうかを考えた際、FSの最初に35課題取り上げた時に、既に大きく取り上げられていなかったと思われる。但し、そもそも基礎的にどのようなものが必要かという議論をした時には、もっと多くのアイデアが他にあって、その中にはADS駆動の原子炉もあるし、例えば小型炉みたいなものもある。現在こうしたものについては、本当に社会に入るものという整理の中では取り上げていないけれども、基礎的な研究開発としては別途進められていると考えている。
J‐PARCの2期計画において、加速器駆動の中性子を使って本当に核変化が出来るかどうかを試験する計画があることは承知している。また、FBRについても、小型炉について、例えば日本のメーカーの中の1社が開発しているコンセプトが、アメリカでは評価を受けて、安全規制の中でも規制当局と議論が始まっているといった大きな動きはある。そうしたものは、実用化戦略の元々のスコープには入らずに研究開発が行われているので、この報告書の中ではあまり無いわけだが、そうしたものについても研究開発の一環としてどのように取り組むのか、これは、本報告書の直接の評価でないかもしれないが、大きな今後の進め方の1つの重要な要件になるということであれば、評価の報告書の中では、含めて考えていきたい。
【(中原)事務局】
エネルギー関係全体については、自民党や政府部内でも国家としてのエネルギー全体の戦略や計画を見直していこうという動きがあるので、その中で原子力の役割をどの程度担わせたらいいのかといについては、経産省などともきちんと連携を図っていきたいと考えている。それから、田中主査が座長を務められている経産省の原子力部会においても、原子力の実用化や、資源環境論的にウランの資源確保をどのようにしていったらいいのかといったところについて検討されているので、その辺との整合性もとっていかなければならない。
また、高速増殖炉や将来の再処理問題などについても、経産省の原子力部会で実用化をにらんだ議論がなされており、研究開発の計画を作るところの上流側と下流側からお互いに攻めてきているわけなので、その繋ぎの部分をどのように整合性を持って繋ぐのか。そこは、官民の役割分担や、研究開発体制をどのように組むのかといった部分とも密接に関連する議論なので、きちんと連携をとりながら考えていきたい。
【(小林)委員】
資料2‐5の9ページにある評価の視点案について、その中の社会受容性が非常に重要であり、我々がこれをどのように評価するかということになる。原子力特有で安全性がすぐ出てくるけれども、このシステムを社会が受け入れるかどうかは、安全性だけの議論ではないと考えている。そうした意味で、国家戦略的視点を受け入れるかどうかがむしろ社会受容性であるけれども、それがあまりに細かい言葉で表現されているのが気になる。また、決定的に欠けているのは、我々がずっと議論してきている人材育成・人材確保という問題である。ここでそれが出ないと困る。これだけのことを21世紀に日本がやることは、日本の科学技術の夢であり柱である。そうしたことを社会的にきちんと言えるのか、社会がきちんと認めてくれるのかということが、社会に対する説明として必要である。それで、若い人がこの事業に目的を持って参加してもらわなければ実現不可能である。我々は、もっと主体的に人材育成・人材確保を評価の視点にしないといけない。そうした意味で、社会受容性などの3つの中身は考え直していただきたい。
もう1点として、資料2‐3の説明の中で、全体のFBRサイクルの実用化技術を革新技術という言葉で総括している。しかし、その中身を見ると先進湿式法再処理施設というものがあって、「先進」といった言葉が頭についている。また、蒸気発生器だと「高信頼性蒸気発生器」といった言葉が出てくる。一方では、信頼性実証などで「信頼性」という言葉が全体に関わっているのだから、こうした言葉は安易に使わないでほしい。これは、我々が社会に対してこれから説明する時に非常に困ることになる。革新技術で総括したら、後は実用化の新しい技術なのだから何も頭に必要はないだろう。全部先進であって、全部高信頼性のはずである。特定のものにだけ付けると、非常に説明が難しくなるので気をつけていただきたい。
【(知野)委員】
一般的に見ると、「もんじゅ」が動いていない中で、何故その成果を見極めないで新しいものが必要になるのかという疑問が湧いてくるので、その辺の説明をどうしていくのかが問題としてある。特にその説明をする際に、安全性と経済性の2つがキーワードになる。安全性はどのように説明するか。安全と言われるだけでは納得出来ない、素人にとっては、データをいくら出されても分からないということもあるので、その辺りについて「もんじゅ」の体験を踏まえて、どのように説明していくのか。次に経済性に関して、例えば2050年から先は、自分も生きていないような時代だが、この第2段階の研究だけで幾らかかるのか、また、2050年から先も含めた数字をある程度出していただきたい。何らかの目安がないと、いくら安全性や経済性だと言われても国民としては納得出来ない。その辺りの工夫や検討状況はどうか。
【(中村)事務局】
国民に受け入れてもらうための説明をすべきということについては、評価の視点の中に入れて、その上でこれから本報告書を審議していくにあたって、説明が十分に果たせる研究開発計画になっているかどうかということで見ていただきたい。その際に必要なデータとして、コストも1つの重要な要素ではないかとの指摘があった。おそらく研究開発のテーマが定まってくると、それに伴って必要なコストを試算することが出来るのではないかと考えている。但しその点は現在、本報告書の中で出てきていないが、本委員会で審議していただき、ある程度の研究開発課題が見えてきた時に、改めて機構や専門家の方々に意見を聞いて、どれくらいコストがかかるのかについて説明することが出来るかどうか調整したい。
【(榎田)委員】
アメリカのGNEPやフランスの提案等、諸外国もFBRに非常に熱心な動向であるということで、先ほどこのFSのスタディの結果について、必ずしもそれを全面的に反映しているということではないとの話があった。そうした意味では、集中された時間の中で評価をした方がFSの研究開発にとって途切れがないという点で非常に良いと考えている。但し、次回の委員会において、大局的評価として国家戦略や資源配分の方針を審議するという提案だが、どこまで評価するかが決まっていないと、意見が出ただけで中々まとめるのが大変ではないだろうか。この辺りの具体的な審議については、今までと同じように資料が提示されて、それに基づいて意見交換した上で、合意を見るところについて入れていくのだろうが、出来るだけポイントが分かる形で、資料等を前もって配付してもらえるとありがたい。
「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故や東海再処理工場のアスファルト固化処理施設の火災・爆発事故等があって、関連するアクティビティがスローダウンしているところは日本でもあって、一方で海外はやめてしまったかのように言われるところもあったわけだが、そうは言っても、日本では1回計画したものを諦めずにやってきたところが、今日の評価に繋がっている。このFSの評価が行われている期間中に不連続な展開にならないかどうか。この辺りの評価中の検討の継続性を確認させていただき、その間も検討出来るようにしていただきたいが、その辺りはどのような体制になっているのか。
【(中村)事務局】
国の方で直接関わっているものとして、公募事業による資金を使った研究開発の手法がある。これについては、平成18年度について既に基盤的部分の募集をして、現在書類審査をしている最中である。これも書類審査が終わった後に出来るだけ早く採択して、研究が進められるようにしようと考えているので、予定どおり継続的に進んでいくと思われる。但し、それとは別に今年度については、特別推進分野ということで、特に大事なところについては、大きなお金を用いて集中的に研究しようと考えている。この際に、特に集中的に措置すべき課題はどのようなテーマであるのかが問題である。ここに関しては、中間整理と書いてある中の6月の辺りに、このようなテーマが、特に集中的にキーテクノロジーとして日本がやらなければいけないものだと言って合意が見られるようであれば、7月にもこの部分について公募を始めることによって無駄な時間が出来ないように、研究開発の時間を長くとれるように工夫をしたいと考えている。
それからGNEPについては、アメリカから提案があって、さらにその提案を踏まえて、細かいところを各国に説明している段階と聞いている。我々も1度アメリカの担当者と意見交換をしたことがある。但しその時にも、具体的な研究開発テーマとして、このようなものがあればありがたいという話はまだ来ていない。日本としてどうするかと考えた時に、まず日本としてこれから何をなすべきかというのがはっきりあって、それを基礎として、アメリカに協力すべきものについては協力するという対応はどうか、ということで考えている。但し、アメリカからやってほしいと言われてやるのではなく、日本として目指すところがあるので、その目指すべきところは何なのかをここで決めていただくわけだが、実際6月くらいにここである程度のまとめがあれば、方向性は示していただけるだろうし、また6月までに、中間取りまとめの前の段階であっても、ある程度必要なものについては、対応していきたいと考えている。ちなみに、海外のGNEPの関係で言えば、彼らからある程度の情報を早めにとりたいと考えており、春頃には各国で話し合いをしたいという話も聞いている。そのようなタイミングもあるので、ここでの議論の方向性を見ながら、出来るだけ国の方針をベースに協力していくことで考えていきたい。
【(佐賀山)説明者】
機構においても公募事業で予算を確保して、この革新的な技術についての実験等を含めた研究開発をしていきたいと考えており、基盤的分野は4月からスタートし、また特別推進分野に関しては7月からということだが、そちらの方で出来るだけやりたい。そして、公募に乗らないもの、例えば「常陽」で照射を長期的にやるというようなものは、元々我々が持っている資金をもとに継続的・計画的に行っていく予定にしている。また、電気事業者の協力も得て、設計を詰めていく作業があるが、その辺についても同じように滞らないように運営していきたいと考えている。
【(加藤)委員】
技術評価について、この実用化研究の中で国際協力や国際協調を目指すことになっており、国内的な評価はもちろん重要だが、加えて国際的な技術評価についても考えてはどうか。
【(中村)事務局】
国際的な評価も大事である。国際的な評価は、最終的に日本から担当者なり政府が出ていって議論をし、その過程において評価がなされて、各国のプログラムに反映されていくものだろうと考えている。従って、日本として何を持っていくべきなのか、何をしたいのかを基盤にして進めていきたいので、ここでの議論を踏まえたもので国際的にも議論していきたい。
【(木下)委員】
先ほど議論に出ていた社会的安全性の話は、言葉を変えると安全や安心の話に通じる。安全の問題を技術論的に国民に理解出来る形で平易に言うことは大切だが限度があって、不可能とは言わないけれども非常に難しい。何故かというと、人間の認知的資源にはキャパシティがあるからである。自分の専門分野や関心のあることについては豊富な資源を持っているが、そうでないものについては資源を持たない。ここにおられる方々は、原子力に関係されている方々が多く、原子力の安全と安心の問題は常識と思っているだろうが、一般市民にとっては非常に特殊なことであって決して常識ではない、つまり認知的資源を持たない。それに、ここにおられる方々も原子力についてはプロだろうが、自動車やコンピューターといった他の技術では必ずしもプロではない。専門が違えば認知的資源は乏しいのである。
安全と安心という言葉を使い分けるのはその問題があるからである。安全であれば安心であるというのは、技術者サイドから見れば合理的なはずであり、データを見てもかなりの人はそうなるのだが、安全なのに不安であるとか、逆に危険なのに安心している人が結構いる。後者の典型例は、ペットなどに対する口づけによって発生する感染症がそうである。このように、安全と安心は常に一致するわけでなく、そこに認知的なギャップがある。それをどのように埋めるかということが難しいが、これには人文社会的に様々な技術があるので、それを使わないといけない。結論的に言うと、安全をアピールするといっても、技術論的な方向からだけでは、大きな限界があるということである。
では、それに代わってどのような論点が国民に受容されやすいかということだが、エネルギーを国家戦略的な話の中でセキュリティの話とからめて説明すると理解してもらいやすいという経験を持っている。いわゆる反対されている方の中にも、その話をすると、「そんなことがあるのか。」と言う方が多いので逆に驚くことがある。従って、その辺のところを考えて広報戦略を立てれば良いのではないか。要するに、自分の考え方を絶対視するのではなく、その考えを広げて相対的に物を評価する目で見てほしいということを、国民に理解してもらう必要がある。
【(森口)事務局】
高速増殖炉の研究開発については、過去に様々な紆余曲折があったわけであるが、科学技術庁時代から一貫してぶれることなく進めてきている。その間、世界各国のFBR撤退という時期もあり、また「もんじゅ」事故もあって、非常に厳しい環境にあったわけだが、そういう中でも我々として一貫してぶれることなく進めてきている。これは文部省と統合して文部科学省となった後も全く変わっていない。
そうした中で、科学技術全般を扱う総合科学技術会議において、今年度で終了する第2期の科学技術基本計画があって、その中で重点4分野であるライフ、ナノ、IT、環境の4つの分野が非常に重視されて、その他4分野の中にこのエネルギー関係も入っているわけだが、それが軽視とは言わないけれども、必ずしも十分な措置がなされてこなかった。
我々としては、第3期の科学技術基本計画に向けて、文部科学省として国の総合的な安全保障に関わる国家基幹技術を提唱しており、これは総合科学技術会議にも提案し、理解が得られたと考えている。先般策定された第3期基本計画においても、今後5年間で重点的に投資すべき分野ということで、国家基幹技術として5つの課題が指定されており、その中にこのFBRサイクルも位置付けられている。これにあたっては、様々な関係者の方々に働きかけていただき、非常に感謝申し上げるわけだが、国としてもこのFBRを積極的に今後進めていくというスタンスになっており、研究開発を担当する文科省としてこれからもしっかりとやっていきたいと考えている。
また、FBRについては、今後もアメリカの原子力政策の変更、あるいは地球温暖化や世界のエネルギーの動向などから、FBRを巡る環境は良い方向にいくと思うけれども、我々としてもしっかり乗り遅れることなく進めていきたいと考えている。そうした中で本日は、安全・安心も含めて幅広い観点から指摘をいただいたので、本報告書についてそうした幅広い観点から評価いただき、是非方向性を示していただきたいと改めて感じている。
また我々は、人材育成についても非常に重要だと考えている。原子力に限らず、裾野を広げておかないと先端だけやっていても土台から崩れてしまうので、そうした観点から今年度から始めている原子力の競争資金においても、そうした点を非常に重視し、且つ先端的部分も重視して進めていきたいと考えている。
「核融合研究作業部会」の設置について事務局より提案、了承された。主な意見は、以下のとおり。
【(井上)委員】
学術分科会の方の核融合分科会については、無くなるという意味なのか。
【(板倉)事務局】
現在は閉じられており、存在していない。
先般開催された「第18回 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会」における決定事項に関連して、事務局より、資料4‐1~3に基づき説明。質疑応答が行われた。主な意見は、以下のとおり。
【(田中)主査】
国家基幹技術は、高速増殖炉以外にどのようなものがあるのか。
【(中原)事務局】
まず、宇宙の輸送系技術であるロケット。それから、次世代のコンピューティングであるスパコンを利用した様々なシミュレーション技術。それから、エックス線自由電子レーザーの技術と、海洋地球の観測探査技術。それにFBRサイクル技術を併せた5つが国家基幹技術として選定されている。
【(田中)主査】
先ほど、資料4‐2についてメールで議論するかもしれないとの話があったが、資料4‐1も含めてどのような作業が発生するのか。
【(中原)事務局】
資料4‐2については、昨年同様に7月~8月を中心として、概算要求前に主要事項について評価していただく作業が発生する。また、資料4‐1については、横並び的な話であり、どのような考え方、フォーマットでやっていくのかということについて統一的な指示が来ていないので、それが出た段階で改めてご相談申し上げたい。
今後のスケジュールについて、資料5に基づき事務局より説明。次回の委員会については、4月26日(水曜日)の10時から12時で開催を予定している旨、事務局より連絡があった。
─了─
研究開発局原子力計画課