原子力分野の研究開発に関する委員会(第13回) 議事要旨

1.日時

平成18年2月24日(金曜日) 10時~11時30分

2.場所

三田共用会議所 3階C‐E会議室

3.議題

  1. 米国のGNEP(国際原子力エネルギー・パートナーシップ)構想について【報告】
  2. 原子力分野の人材育成について【審議】
  3. その他 今後のスケジュールについて

4.出席者

委員

 田中主査、石田委員、井上委員、岡崎委員、加藤委員、木下委員、小林委員、中西委員、藤本委員、松田委員、和気委員

文部科学省

研究開発局
 森口局長、藤木審議官、中原原子力計画課長、中村原子力研究開発課長
研究振興局
 斎藤量子放射線研究推進室長

オブザーバー

 田中電気事業連合会原子力部長

5.議事要旨

(1)米国のGNEP(国際原子力エネルギー・パートナーシップ)構想について

 米国のGNEP(国際原子力エネルギー・パートナーシップ)構想について、資料1-1~2に基づいて事務局より報告があった。報告に関する質疑は以下のとおり。

【委員】
 パートナーシップ国について、アメリカ・日本・フランス・イギリス・ロシア・中国等が想定されているとあるが、どの程度はっきり書いてあって、またクローズドなのかオープンエンドなのかというアメリカの考えをはっきり押さえておくことが大事なのではないか。
 それから、これまで繰り返し出されてきた燃料供給とその返還という構想については、いずれも戻ってこなかった経緯がある。これまでの日米協定等で、我が国が出すのはなかなか難しい状況があるけれども、この枠組みに乗った場合、将来的にどう担保していけるかということが重要である。また、政権の構成が変わった時にどうなっていくのかということも見定めておく必要がある。
 最後に全体のバランスとして、不拡散にウエートがあるのか、あるいはそれを超えた世界的な燃料の安定供給や原子力発電の推進にウエートがあるのか。当然、その両方であるはずだろうが、そのバランスのかけ方について押さえておく必要がある。

【事務局】
 パートナーシップ国が、クローズなのかオープンエンドなのかという点について、現在アメリカが相談をしている国は、この5カ国に日本を含めて、残りはその他核兵器国である。但し、インド等のパートナーシップに入ってくる可能性がある国にも、アメリカ自体はメンションしており、必ずしもクローズではないと考えている。
 次にアメリカの政権交代の件であるが、確かに民主党は、これまでプルトニウムの利用等について非常に厳しい考え方をとってきたわけであり、このGNEP構想にも、再処理やプルトニウム利用に対して厳しい意見が既に米国内で発表されている。しかし一方で、放射性廃棄物を国内的に何とかしなければいけないという強い圧力といったものもある。
 最後に不拡散とプロモーションのいずれにウエートがあるのかという点については、現時点でまだ明確となっていないところがある。こうした点については、アメリカとの話し合いの中で、彼らの真意等について確認していくことが必要であると考えている。

【委員】
 GNEP計画は、燃料サイクルサービスや使用済み燃料の引き取り等も含めた幅広い視点からの提案であるわけだが、基本的方向は、我が国が進めようとしている政策と極めて一致している。特に、核不拡散と核燃料サイクルの確立を両立させるという観点から非常に関心がある。
 具体的には、当面研究開発を中心に取り上げていただけそうだということであるが、今後原子炉や燃料サイクル関係を実現していくであろう。但しスケジュール的には、日本の計画よりもある面でかなり前倒しという意味も込められており、今後の実現に向けて何がキーテクノロジーになるのか、コアとなるものは何なのかということについては、これまでのGeneration 4などの議論でも絞られてきている。
 これまで日本が長年積み重ねてきた努力や経験、技術というものを、国際協力の場でいかに適切に活かしていくかという観点から、今後特に5年間、あるいは10年間というこれからの取り組みは、大事な時期を迎えているのではないか。我々の枢要な技術について、フランスにとってもアメリカにとっても共通的なところが間違いなくあるだろう。そういうもので我が国の技術が国際的な場でも活かされるような取り組みをなしていくことが大事な時期に来ている。
 従って、こうした国際協力の中で厳しい協力と競争という概念を両立させる観点から、今後審議いただく実用化戦略の次のフェーズのように我が国がキーとなる技術については、日本がしっかり取り組んでいく姿勢を示していくことが重要である。勿論日本だけでやると言っているわけではなく、まず日本がその取り組みについて確固たる政策と方針を持ってやっていくことが、国際協力を適切に運営していくということになるだろうから、是非今後の特に5年間の取り組みについてしっかりと取り組んでいただきたいし、そうしたことを国際的にもきちんと提案出来るようにしていくことで、この国際的な枠組みの中で日本が適切な貢献をなしていく姿になっていくのではないか。
 さらに少し敷衍して、具体的に今後の実用化戦略の次のフェーズについてどう取り組んでいくかということであるが、今後フランスやアメリカとの関係において、我が国の技術を実現していく観点から、勿論、我々研究開発機関も責任を果たしていくわけだけれども、日本の企業、特にメーカーの方々に積極的に参加していただくことが、具体的に国際的な場でも実現に向けての大きな力になるのではないか。そうした意味で競争的資金によって今後取り組まれることは、非常に良い効果があるのではないかという気がするので、是非原子力機構や競争的資金を上手く連携しながら、今後の高速炉や先進的な核燃料サイクルの技術開発に取り組んでいただきたい。そうした中で競争的資金の運用について、日本のいわゆるメーカーや電気事業者の方々も同じかもしれないが、なかなか使いづらい点があるとの声も聞こえてくるので、是非良く意見も聞いていただきながら、競争的資金が上手く日本国内で使える仕組みを作っていただきたい。

【委員】
 これまで日本と本当は親しいはずのアメリカから、核不拡散の立場で野党やマスコミ、それにいわゆる反対派の方たちに対する再処理反対の広報がなされていて、それを住民集会等で見せられたことがある。そういう広報は、アメリカの政策変更があった結果として少なくなるのだろうか。州によって随分温度差があるので予測出来ないけれども、感触として答えられる範囲で結構なので聞かせていただきたい。

【事務局】
 非常に難しく答えにくい質問であるが、ただ1つ言えることは、これまでFBRサイクルの問題等について、あたかも日本とフランスだけが孤立して進めているのではないか、アメリカはもう撤退したのではないか、という議論がこれまで色々となされてきたことは事実である。現にアメリカ、イギリス、ドイツといった国々は、一見するとそのサイクルから撤退していった感じがするが、そうしたことに対して資源論や環境論的に見ても、これだけ原子力発電が世界的に増えていくトレンドになってくると、ウラン燃料そのものの限界等も見えてくるので、FBRの役割が世界的に再認識されてきたことの1つの表れと考えることも出来る。我々としては、そうした説得的な議論がこれから出来るようになるという意味で力強い動きであると考えている。

【委員】
 アメリカの国内政策の変更や国内事情はよく分かる。そのアメリカの国内エネルギー事情の延長線上で国際枠組み構築へのイニシアチブが出てくることもよく分かる。日本のエネルギー政策に対して逆風というわけではないし、何か憂慮すべき重大なことでないことは確かである。だからといって、凄い追い風としてこれを受け止めていいのだろうか。正直、今の時点どう評価してよいのか分からない。アメリカの国内政策やエネルギー政策の転換として、まずは冷静に受け止めたい。国際的協調の枠組みがこの時点で出てくることに対しては、もう少し多面的な分析を踏まえた検討が必要であり、世界の潮流やエネルギー戦略の大転換というところまでは捉えにくい。

【委員】
 これまでの研究開発や技術という観点からアメリカとの関係を振り返ると、確かに30年間、再処理政策や高速炉は止めていたアメリカであったわけだが、技術開発を今まで全く行ってこなかったかというとそうではなく、それぞれの国立の研究機関の中では、炉の研究や燃料サイクル関係の研究をこれまでも非常に懐深くやってきたし、我々とも良い協力関係にあった。第4世代の国際協力をアメリカが提唱して、これから具体的な実行段階に入ろうとしていることについては、研究開発や技術開発の観点からすると必ずしも唐突というわけでもなく、まさに国際的な広い意味での協力の枠組みの中で重要なパートナーという位置付けには変わりない。それが明確にこうした形で出てきたことについては、研究開発をやっている立場からすると大変歓迎すべきことである。

【委員】
 日本の原子力は、アメリカの国内政策に非常に影響を受けてきたという事実があり、もともと1950、Atoms for Peaceというのも、一面でアメリカの国内政策と密接な関係があってなされたものでもあり、カーター政策になって再処理高速増殖炉を止めるということも、世界政策である反面、国内政策でもあった。その後に出来たNLPについても、基本的にアメリカの国内法で色々なことを言っているわけである。
 実際、原子力というのはアメリカの影響力が非常に大きくて、国際条例でそれを振り回して、我々は振り回されざるを得なかった状況が確かにある。そういう意味では、確かにアメリカの国内政策ではあるもの、それはそれとしてウォッチしていかなければいけない。でも、それだからこそ少し分かりにくいところもあるので、是非当局でもウォッチして我々にも教えてほしい。

【委員】
 (京都大学)原子炉実験所に関わっていて、特に核燃料の問題について、アメリカに振り回されていることは事実で、非常に苦労している。だから、あまり信用しない方が良いと思うが、方向が悪いわけではないので上手にやるべきである。また、日本は「常陽」「もんじゅ」があるからアドバンテージがあるなどと安心してはいけなくて、やる気になればフランスはいつでもやるだろうし、アメリカは国内事情で必要であるということもあるし、途上国へ売りつけるというビジネスチャンスが出てくる可能性もにらんでいるだろうから、やる気になれば本当にすぐやるだろう。日本の実用化戦略や原子力大綱は、あまりそうしたことに配慮しないで何十年という計画を作っているが、良く考えてやるべきことをきちんとやっていないと、気が付いたらまたいつかみたいに、日本のメーカーは、フランスやアメリカのメーカーと技術協力で何かやっている可能性があるのではないかという懸念を感じる。

【事務局】
 実用化戦略の今後の取り組みについて、平成18年度予算で原子力機構に計上されているFS予算が減っているので、文部科学省の取り組みが十分でないのではという指摘も聞こえてくるけれども、決してそういうことではない。「もんじゅ」を含めFBR関係は電源特会予算で執行しているが、18年度予算要求にあたって、特別会計改革が大きく影響している。また、いわゆる法人予算としてのキャップがかかっていて、予算が伸びにくいという状況がある。そうした中で、もんじゅの改造工事の予算が大幅に増額し、結果としてFSの予算にしわが寄っているのは事実である。
 そういう意味で競争資金を十分活用していく必要があるし、また競争資金だと、例えば施設物は計上出来ないとか、間接経費の多い少ないといった議論もあるわけで、そうした使いづらい点については、改善しながらやっていくことにしている。しかし、平成19年度以降は「もんじゅ」の予算もかなり山を越えるし、そういう意味では、FBR全体の中で、FSにかなり力が入れられるのではないかと考えているので、そうした意味でも決して力が入っていないということではない。
 具体的に今、総合科学技術会議の第3期科学技術基本計画が来年度から始まるなかで、現在、いわゆる戦略重点科学技術として今後伸ばす必要があるものを議論している。その中でも国の総合的な安全保障の観点から最重要課題となる国家基幹技術について議論しているが、当然ながら国家基幹技術については、本数を絞り込むよう言われており、数本しか立たないと思うが、その中でFBRサイクル技術は、国家基幹技術に位置づけられる見通しである。文部科学省としてもかなり力を入れていきたいと考えているのでご理解いただきたい。
 科学技術庁時代を含めて、我々としては高速増殖炉サイクルについて一貫してぶれることなくやってきたわけであり、その間、山あり谷ありだったわけだが、世界的に原子力見直しの動きもある追い風の中で、それに浮かれることなくしっかりやっていきたいと考えている。

【委員】
 GNEP構想について、日本がこのパートナーシップ国に入っている一方で入れない国はたくさんある。ドイツやインドの話が出たけれども、そうした国がこの構想に対してどういう反応を今後示してくるのか、それに対してアメリカはどのように対応するのか、というところを情報として持っているようであれば伺いたい。また、このGNEP構想を推進するためには、様々な軋轢が出てくるのではないかと考えるが、アメリカ側にどれ位の覚悟があるのか分かっていれば教えていただきたい。

【事務局】
 完全にクローズではないということで、今後メンバー国なども増える可能性があるということである。一方で、他の国がどのような感触を示してくるのか。特に将来的な供給体制の問題になると、結局サイクルの権利を放棄した上で供給を受けることになるので、その辺の問題を例えばNPTとの絡みでどのように考えるのかといった本質的な議論等もある。アメリカ自身も供給保証の体制そのものは、非常に難しい問題で時間がかかるといった考えも示しているので、今の段階では明らかな形で答えにくい。

【オブザーバー】
 GNEPの7つの構成要素を見て思ったことだが、こうした内容を知らずに電気事業連合会では、昨年、今の原子力機構と共にFBRサイクルの実用化戦略調査研究をやっており、それに臨むに当たって電気事業連合会の中では、フェーズ2の取りまとめとして今後実用化を目指すためのオプションが、ナトリウム冷却の高速増殖炉であり、先進湿式法再処理であり、MOX燃料ペレット成型法であるという方針をとることを社長会議まで決定しており、そうした姿勢で臨んでいこうとしたわけだが、このGNEPの話を聞いて、我々の選択も正しかったと考えている次第である。
 DOEのクレイセル副長官が、記者会見で日本のことを随分触れていて、「日本には自分の知る限り2つの高速炉(「もんじゅ」と「常陽」)がある。これが魅力であることから協力してやっていく。」といったことを盛んに言ってくれている。こうして世界の動きを見ていると、どこに研究資金を投ずるかという選択と集中について、どの原子炉や実験装置を止めてどれを生かせということを具体的に言うつもりはないが、そうした戦略で臨んでいかないといけないのではないか。

【委員】
 資料1-1の1ページの政策的目標のところに、翻訳なので仕方のないことだけれども、「クリーンなエネルギーを世界中に広め、…」と書かれている。でも原子力というのは、国民がクリーンなエネルギーと本当に思っているかどうかというところで、やはり廃棄物処理という大きな課題を抱えているという二律背反する分野があるわけで、日本の政策として考えていく時には、炭酸ガスが出ないだけでクリーンなエネルギーという表現を使って評価するとすれば、バックグラウンドに複雑な廃棄物処理があることを言っておかないと、原子力政策に対する信頼性が弱くなる。研究者の方々も新しい方向性が見えてきて元気百倍というのは良く分かるが、国民に対する説明責任という点では、これを進めることによってどのような問題点があって、また国民がそれをきちんとすべきであるというフォローアップを是非お願いしたい。

【主査】
 本日午後に経済産業省の原子力部会があるが、1つ目の議題が「高速増殖炉サイクルの実用化に向けて」ということで、別の観点から議論があると思われるが、研究開発や実用化といった切り分けではなく、我が国の将来のエネルギーをどう考えるかが大きな問題なので、技術者、研究者、あるいは当事者の方々に十分議論していただくことが大事である。本委員会は、研究開発に関する委員会ということだが、その切り口で入っていくと良い結論になっていかない可能性もあるので、まず大きな議論の中でやっていき、最終的にこれは現在の省庁のどこでどのようにやっていくのが良いのかという議論が、後になって出てくることが望ましい。

(2)原子力分野の人材育成について

 原子力分野の人材育成について、資料2に基づき事務局より説明。主な意見等は、以下のとおり。

【委員】
 人材育成の問題が、これからの原子力開発にとって大事だということは、原子力政策大綱の中でも随分議論していただいたわけで、本日こうした形でかなり幅広い視点からまとめていただいたことについて感謝申し上げたい。
 16ページに示された検討の方向性の観点の中からコメントさせていただくと、この人材育成の中核的な役割を果たしていく大学について、特に大学院を中心に充実していくという方向、そしてそれに対して原子力機構が適切に大学院の教育に対して連携をとりながら貢献していくということで、既に様々な大学の中で大学院の原子力教育活動を強化しようとしている動きが見られることは大変感謝しており、原子力機構も現在12の大学と東京大学を併せて連携大学院制度を持っており、是非指摘いただいた方向で努力したい。
 具体的には、例えば連携大学院も今のところ、原子力機構とそれぞれの大学の個別の協力に留まっているが、是非幅広くネットワークのようなものを組んで、機会や知識を共有しながら効果的にこの連携大学院制度を運営していきたい。それによって、各大学院同士が是非連携していただき、それぞれの単位を認め合う、あるいはそれぞれの学生を違う大学にも派遣していただくといった広がりを期待したい。
 原子力機構では、連携大学院だけではなく研修制度も実施している。16ページの2点目で大学の教育的施設が老朽化しているという指摘があるけれども、原子力機構の研修担当の現場からは、大学だけではなく原子力機構自身でこうした研修に利用出来るような施設が、実は大変老朽化しているという問題について強く指摘を受けており、正直言ってなかなかそこまで手が回らないのが実情であるが、是非幅広い人材育成のための施設を大局的に判断していただければと考えている。そうした観点から提案をさせていただきたいのだが、1990年半ば以降に大学の原子力教育が縮小されてきて、将来の学生の需要と供給との間に相当開きが発生するということで、アメリカのエネルギー省が大学支援のプログラムを特別に1990年代後半から、そう長い期間ではなく5年位の期間限定で取り組んでいたと思われるが、大学に対して、例えば様々な教育施設に対する支援や、原子力を学ぶ学生に対する奨学金といった様々な制度を特別に設けるなどの政策が効果を発揮して、最近は学生数が2倍から3倍位に増えているとも聞いている。是非文部科学省についても具体的にこうした大学教育に対する特別な支援策を出していくことを検討いただければと考えている。
 それから、大学教育と並んで人材育成で大事なこととして、出口と入口の問題がある。大学の原子力教育からの出口で、メーカーや電気事業者の方々が、是非量的にも質的にもこうした原子力教育を受けた人間を幅広く採用し、活用していただくことがこれからの人材育成や大学教育を活性化する大事な視点であると考えている。今、産業界で連携をとる様々な仕組みについても、是非メーカーと電気事業者が努力をしていただくことが、学生を多く引きつける大きな要因になると考えている。
 もう1点は、この資料に触れられていないが、どれだけ優秀な人間に原子力の教育の中に入っていただくかという観点で、これは小・中学校、あるいは高校の学校教育の問題、あるいは家庭教育や社会教育の問題の中で、決して原子力教育を中心にやってくれとまでは申し上げないが、例えば原子力の立地地域の方々と話をすると、明らかに最大のポイントは、エネルギーや環境の問題ですら教育がなされていない点である。そうした中で原子力を理解しろと言っても不可能なので、是非現在の教育の中にエネルギーや環境という大事な視点を取り込んでいただきたい。立地地域においては、それぞれの市町村や当該地域のボランティアの方々がこの分野でも努力しているし、一部文部科学省でもこうした教育活動に対する支援を始められていて、大変応募が多いと聞いている。こうした学校教育や社会教育に対して国が力を入れていき、それが地方の方々にも伝わっていくという仕組みを作っていただきたい。立地地域の方々の一番の問題意識は、幾ら立地地域でこういう議論をしても、電力消費地の方々には全く通じておらず、相変わらず原子力を見る目が全く進化していないことにあるので、そうした活動を立地地域よりもむしろ電力消費地のようなところでの活動を広めていただきたい。そうした制度を文科省が主導的に取り上げていただくことが非常に大事ではないかと考えている。

【委員】
 人材育成の基本は、教育だと考えている。大学などで今環境が整備されつつあるかということと合わせて、どういう教育がされるかということが大切な問題である。大学に残って研究を続ける人は本当に限られた人で、ほとんどの人はパスして社会に出ていくわけであるから、教育とは教育機関だけでなく広く社会と繋がったものだという認識が必要である。特にこの分野の人材養成ではどのくらい学生に魅力を伝えられるのかということが一番のポイントである。原子力に対しての魅力の入り口は放射線利用である。放射線利用について魅力ある分野がわかり、どう使われているかということが分かれば自然と魅力も出てくる。
 そのためには、原子力についてもっと広い分野での底上げを図って、原子力について大きな立場から捉え直す必要がある。原子力というといつも他の分野と切り離されて、特別だということではいけないと思う。例えば原子力のエネルギー政策でも、様々なエネルギー政策のオプションの中の1つとして原子力を選んだというスタンスが大切である。それと同じように原子力について教える場合にも、まず科学の中の原子力・放射線利用について教え、さまざまなオプションのある研究の中で、原子力や放射線はこういう場合にはこれだけ有効だということを理解できるようにするという、放射線教育底辺の底上げをきちんと進めていくことが大切である。

【委員】
 検討の方向性で教育について書かれている様々なことについては、このとおりである。これは原子力だけではなく全ての分野でこのとおりであって、それを何十年も言い続けてきて何も変わらないのが現状である。教育は、見返りがなければやはり駄目である。そして大学教育というのは、目的や見返りが無いという出発点がある。けれどもこういう捉え方をしたら、結果を見なければいけない。それは、簡単に言えば資格に尽きると考えている。
 現在、原子力関係でも技能的な資格についての制度をたくさん持っているが、もっとレベルが高い技術の資格が無いと思われる。日本全体としては、例えば建築や電気、国家試験といった資格の分野があるけれども、ほとんど形骸化して役に立たず、単なる肩書であることは皆理解している。同じような問題が、博士という学位や技術士という資格にもある。従って、それは持っていても肩書だけで何の役にも立たないので、そういうことではなく、本当にこういう教育を受けて活躍してもらいたい人で、それなりの教育を受けた人にきちんとその証明を与えるような認証する資格を立ち上げないと駄目である。
 原子力で特に必要という資格であれば、例えばリスクマネージャーが挙げられる。大学では、リスクマネージャーを系統的に育てるような体制になっていないが、専門職大学院やインターンシップでそうした資格を利用するのであれば、一番良い例がリスクマネージャーである。従って、そういうものを教育するだけではなく、国が資格として認証して、企業がそうした人々を地位と給料で厚遇するといったシステムを作るべきである。
 もう1点として、日本の原子力が国際的競争で勝てるように、海外に進出する場合にどうしたらいいかというと、規格に尽きると考えている。日本が今までの経験をきちんと規格にして、その規格を他の国に持っていって共有するようなことをしない限り、日本は国際的に勝てない。現実にフランスやアメリカが勝っているのは、そうしたことをやっているからである。規格というものには、高度エンジニアという非常に高度な技術者の資格が必要になる。
 リスクマネージャーや高度エンジニアは、実際に企業で必要であって、人材がそこに本当にいないと困る職種があって、そのための教育の場があることから、最終的にそれを資格という形で認証するようなことを文部科学省が考えていかないと、こうした問題は解決しないのではないか。ある意味で、今までの国家試験を含めた資格制度の見直しということにもなりかねないが、それはやるべきだと考えているので、そうしたことも含めて資格や認証について検討いただきたい。

【委員】
 原子力に取り組もうという学生が少なくなっている、あるいはせっかく教育しても、メーカーへ入って原子力をやろうとする人が少なくなって別の分野に行ってしまうという悩みがある。私は、昭和40年頃に大学を卒業して、当初は原子力ではない会社に入ったが、原子力をやりたいと思って専門や会社を変え、原子力をやるようになった。その動機は、原子力をやること自体によって国や社会に貢献出来るという非常に強い信念を持てたということと、明らかに原子力をやることによって、将来ビジネスが伸びていくことが見えていたから方向転換出来たわけである。そうしたものがはっきり見えてこないと、システムを作っても人が集まってこないし、育たないというのが現実にある。
 では、どうすればいいかというのは難しいが、今の原子力の建設計画でいくと、国内でそういう大量の人を育てて、食べさせていくだけの力がメーカーとしても持てないのが現状である。一方で、アメリカも方向転換して、原子力を積極的にやろうという国としての大きな動きがあるし、中国はもちろんご存じのとおりである。要するに、大きなポリシーを出すことによって学生も集まってくるし、企業も育てることが出来るのではないか。
 海外で原子力の建設が始まるので、海外に日本の規格を持ち込んで頑張ることも必要であり、だからこそ国も努力しなければいけない部分もあるが、メーカーサイドでも努力しなければいけない。是非そういうところについて大きなポリシーを出して、学生に魅力を感じさせることが必要だし、社会的に重要な仕事であるという認知を得ることが非常に重要である。こそこそと隠れて原子力をやっているということではなく、原子力をやることで国に貢献しているということが自分で自覚できるような社会の風潮をきちんと作っていくことが重要ではないか。

【委員】
 先ほど入り口の議論があったけれども、具体的に高校生くらいの子供がどう思うかというところから原子力等に対する説明も考えておかないといけない。そうしたことに対しては、放射線や量子ビームの利用があって、それはそれでいいと考えている。今問題になっているのは、もう一つのエネルギーに関わる原子力の方であるが、やはり放射線利用だけではうまくいかないところがある。
 私が高校の終わり頃にスプートニクという人工衛星が飛んで、アメリカは理工系を充実しなければいけないということで宇宙開発を始めるわけだが、その頃「これからは宇宙か。」と思ったものである。例えば、現在宇宙ステーションを作っており、開発を始めてから50年くらい経っているわけだが、当初ケネディが50年後に宇宙ステーションを作ると言ったかといえば、そういう言い方はしていない。10年後である1960年代の終わりに、人間を月に送り込むというレンジのしかもアトラクティブなものを見せている。研究者は、やはり自分のライフサイクルで何か仕上げたというものを見たい部分があるから、50年先に何か出来るというものに魅力を感じて来るかといったら来ないだろう。10年後にはこれが出来るというものがないと、大学に入ってから今度原子力にという時に、自分の研究者のサイクルのうちにここまで行くのだということが見えない。従って、具体化を考えるところでそうした魅力ある計画を見せないと、単に何十年か後にFBRが実用化されているというだけでは、その道に入らないだろう。
 次に施設の老朽化についてだが、運転開始年が古いこともあって、止まっていっているものが多い。京都大学のKURは、現状「運転」とは書いてあるけれども、もうすぐアメリカの燃料に対する政策と日本のサイクル政策の両方の行政指導があるという事情があって、困難に陥ってこれから1~2年ほど止まる状況になっている。物自身は、10年ほど前に制御系等多くの部分を更新しているので、昭和39年当時のものがそのままというわけではない。多くの施設は、エネルギーというより中性子利用ということで使われている面が大きい。KUCAは、原子炉の設計のために作られたものであるから、どちらかというと原子力のエネルギー発生装置としての原子炉研究に使われているもので、既に何十年にもわたって全国の大学の共同で研修した者に単位を与えるやり方をとって、2,000人以上が単位を取った。単位は、それぞれの大学の単位になるということで協定を結んで貢献してきており、最近ADS絡みのことでさらに活用していくようになっている。施設の数がどれだけ要るかは、先ほどの出口の需要との関係があるけれども、その辺を見ながらゼロになっては困るというところに来ている。1990年代の終わりに、ニュートロンの危機ということでアメリカが相当力を入れたわけだが、あの頃何百とあった施設が何十くらいに減少したということで危機だと言っていたわけだが、日本はこれがゼロになるかもしれないという危機である。
 従って、必ずしも大学に巨大なものを持てということではないだろうから、原子力機構等との連携で考えることで補う部分が必要だろう。原子力機構の施設も老朽化ということで、中性子利用の面ではJ-PARCが利用出来るけれども、それ以外の部分で燃料を使わないと原子力のもう一つのエネルギーの柱の意味がないので、燃料をマネージできるシステムをキープすることが必要である。

【委員】
 人材養成は、昔から「組織は人なり」という言葉があるように非常に重要である。委員の方々の提案についても賛成であるが、知っている情報を付け加えさせていただくと、リスクマネージャーの養成については、文科省のCOEプログラムにのっかった大阪大学の環境工学のプロジェクトがある。盛岡先生がずっとリスクマネージャーの養成プログラムをやっており、今年で3年目である。どちらかと言うと環境工学が専門なので、原子力とは少し違うけれども、かなり大規模な養成をしており、社会人もたくさん来ている。ただそれだけでは魅力が少ないだろうというので、いきなり国家資格までは無理だとしても、リスク研究学会の認定となる方向で動いている。これも1つの芽出しになるかもしれない。
 それから、大学との連携やネットワーク化について、そうした考えは様々な所にあるようで、原子力安全基盤機構にも人文社会系の原子力利用に関するファンドがあり、そのファンドに対して先ほど述べられたようなプロジェクトがたくさん応募されている。東京工業大学や福井大学、横浜国立大学などがジョイントするようなネットワーク化のプロジェクトが申請されて、今走りつつあるということなので、1つの情報として伝えておきたい。

【委員】
 せっかくご発言いただいたのだが、前半の話は間違いで、もちろん大阪大学や横浜国立大学、他に東京工業大学などリスクマネージャーの要請を行っているところはたくさんあり、全部連携して行っている。今の話は、大学での教育プログラムを認証するということであり、現在具体化しているところである。資格認証は具体化まで全然いっていないので、その点を少しご注意いただきたい。

【委員】
 しかし、先日リスク研究学会は正式にプログラムの認証を決定し、阪大はそれにのっかって資格認定をすることになっているのだが。

【委員】
 現在、要員認証を一生懸命考えているけれども、大阪大学もまだその具体化までは進んでいない。

【オブザーバー】
 技術士は30年位の歴史がある古い制度だが、原子力・放射線分野においては、その技術士の中に機械部門や電気部門、化学部門などがある。原子力・放射線部門の技術士については、平成16年度に初めての国家試験が行われ、今年度が2年目だけれども、その資格を取ろうとして受験されている方は随分いると思われる。原子力分野自体が、機械や土木と比べて母集団が小さいのは仕方ないが、それにしても20近くある部門の中では随分受験生が多く、合格率も高い方だとホームページで拝見している。
 技術士を受験して資格を取るためには、広い勉強が必要で、原子力・放射線分野に働く人の技術力の高まりは、受験を推薦することで自然に起こることであり、その点については、原子力学会が取り組んでいる。むしろその後が気になっていて、この技術士制度の中で、人生の間ずっと勉強し続けて、常に最新の技術を学び、最新の知見を入れて自分を磨き続けていくことについて取り組むこと、すなわち継続研鑚を進めている。日本技術士会では、CPD(Continue in performance Development)という、各技術者の継続的な研鑚実績を登録していく制度があるけれども、それは極めて一般的なものであり、継続研鑚を原子力分野できちんと進める仕組みが必要であることから、それをどうやって作ろうかということを原子力学会で議論している。それは、この資料の中にはない話である。
 この資料の中にあったのは、エネルギー分野で言えば原子力発電所でのメンテナンスや運転に関わる人々の育成・技能維持の部分であり、その点については産業界で取り組んでいる。大学の高等教育を受けた人々の技術士の試験は、とても合格するのが大変だが、それに合格した人々、あるいは興味がなければそれを受けなくても、同等の技術レベルを持っている人々の継続的な教育や自習を助ける仕組みについて、原子力学会は考えている。文部科学省の扱う領域としては、以上のことに少し関心を持って見ていただき、場合によっては支援などを考えていただきたい。

【委員】
 このセクションは、原子力の研究開発という部分であるから、原子力の開発をどうしていくかということであろうが、現在の高校のカリキュラムの中でエネルギー及び環境に対しての時間数や、その中で特に原子力についてどれくらい教えているか、という調査をしていくことがまず基本ではないか。ごみやリサイクルについては最近、学校の先生方も好んで取り上げているが、原子力についての教育も非常に必要だと思っている。この辺をデータできちんとフィードバックして、カリキュラムに繋げていかないと、大学に入ってくる人も少なくなってくるのではないか。また、原子力への理解も広がらないのではないか。

【主査】
 昨年、電気事業者や電力の様々な競争があった時に、平等な立場で競争出来る仕組みを考えるべきということがあって、様々な制度措置を考えたこともあるが、大学の中も様々な分野間での競争が大変重要であり、その中で勝ち残ったところが生き残ってきた感がある。平等な立場で競争出来る環境をまず作ってあげないと厳しいのではないか。特に原子力については、教育施設や国が昔に作った燃料の保管問題等があって、なかなか平等な立場で競争できる状態になっていないことも事実だが、最低限の鍋釜といった部分について、何か考えるべきではないだろうか。
 もう1点として、人材育成は大変重要だが、同時に考えなくてはいけないのは、どのレベルの人をどの位養成するのかということであって、それは必ずどんな場合でも分布化することが出来る。ガウス分布でいうところの中心が下の方にあるのか、高い方にあるのか、ということが重要であって、特に原子力は高度な技術養成が必要であるから、やはり高いところに中心があるガウス分布にしなくてはいけない。そうすると、優秀な人が原子力の中に入ってくることによってガウス分布が高い方にいくので、高校生の優秀な人が原子力に行ってみようと思う時は、様々な新聞を見たり、内閣総理大臣などがどういう発言をしているかを聞いたりするだろう。そうしたことから、原子力は本当に重要だと思うようになることが大事である。

(3)その他

 今後のスケジュールについて、資料3に基づき事務局より説明。次回の委員会については、3月30日(木曜日)の10時から12時で開催を予定している旨、事務局より連絡があった。

以上

お問合せ先

研究開発局原子力計画課