平成17年10月7日(金曜日) 10時~12時
三菱ビル 地下1階 M1会議室
田中主査、石田委員、井上委員、榎田委員、岡崎委員、加藤委員、小林委員、松田委員
研究開発局 森口局長、中原原子力計画課長、中村原子力研究開発課長、板倉核融合開発室長 研究振興局 斎藤量子放射線研究推進室長 説明者 佐賀山副部門長(日本原子力研究開発機構 次世代原子力システム研究開発部門)
田中原子力部長(電気事業連合会)
独立行政法人日本原子力研究開発機構の発足について、資料1-1~3に基づき、事務局より説明。新機構への期待・要望を中心に、以下の意見・要望が述べられた。
【委員】
長期的な計画に沿って法人それぞれの計画が持ってこられたことで、比較的なじみのいい計画になっている。確かにこの目標・計画はきちんと達成しなくてはならないが、一方で法人は生き物である。弾力的に運用することも心がけて、目標及び計画に向かって努力していただきたい。
【委員】
2つの大きな研究所・機構が1つになって更に大きくなったことで、世の中で言われている民営化・分割とは逆の方向であり、特殊な状況になってきている。この新機構は単に自分のことだけ考えていいわけではなく、オールジャパンでの原子力に対する配慮が必要である。その辺も考慮して日本の原子力を推進していただきたい。
【委員】
多岐の分野にわたって系統的な計画が立てられており、是非この計画に沿って実現への努力をお願いしたい。内容については、中期計画の期間中での計画ということはあるものの、実現あるいは目標とする時期がこの期間を超えたところで花開くものもあろうかと推察する。従って、同じ中期計画の中に項目が入っていても、比較的短期間で最終的な目標を達成しないといけないものと、次の時期に繋がるもの、そのあたりが評価を見せた時に、ある程度外部から区別して分かる形でのまとめを最初の年から考えていただき、最終的に外部から分かりやすい計画に沿った業務をお願いしたい。
【委員】
大変素晴らしい計画。業務運営の中で、統合による融合相乗効果の発揮とあるが、業務運営や効率化ということだけでなく、この2つの機関が合体することによって、シナジー効果で素晴らしい研究開発を進めることが大事。是非このあたりの力を発揮していただきたい。
【委員】
組織を変えたことの実効が出るものを示していただかないと困る。そうした意味で実際にやっている仕事は、例えばFBRや高温ガス炉など、従来と場所や人も変わらないが、それを超えた統合の実を示すということを見せていただきたい。例えば再処理の問題は、原子力発電所と同じように従来の開発炉的な枠を超えて、実際の問題になっている。安全やリスクといったことを、開発炉と原子力発電所というように文部科学省と経済産業省で分けて考えるのではなく、ブレークスルーしていくことに期待が寄せられている。
【委員】
市民の側からすると、大きくなり過ぎたことの不安もないわけではない。組織というのは小さければ小回りもきくが、何故大きくなったのかという説明がまだ十分に伝わっていないので是非示していただきたい。
次に高レベル廃棄物処分の問題が重点的に書き込まれていて、ありがたいことだと喜んでいる。エネルギーを使う部分と廃棄物の管理をセットで考えていく、両輪の輪であるということを是非研究者に伝えて励ましていただきたい。国際社会の原子力廃棄物の管理や処分の問題を見ると、日本における処分場の確保や国民の理解といった点は遅れている。理由として、担当する当事者が、学会では議論し合っていても現場に訪ねないから、自分の研究に対する自信が見えてこない部分もあるのではないか。つまり、現場体験が少ない研究は、市民にとって非常に説得力のないものになっていくということを感じる。特に高レベルの処分場を時代に遅れないように作っていくために、現地やノルウエー、スウェーデン、ドイツ、フランスなどの海外の現場に担当者を派遣することを是非お願いしたい。
【オブザーバー】
原子力政策大綱がまとまり、将来のエネルギー供給の進め方が決まった今、電気事業者としては六ヶ所サイクル事業を一生懸命やっていき、原子力発電を回して日本のエネルギー供給をやっていくことが重要であるものの、その次が心配である。政策大綱に2050年ごろから高速増殖炉を本格実用化するとあるが、その頃に六ヶ所再処理工場も40年を超え、六ヶ所工場の供用期間になるとすると、その次の第2再処理工場を2050年頃に動かし出すことになる。第2再処理工場の位置付けは、それまでに六ヶ所で再処理し切れなかった使用済み燃料や特に使用済みMOX燃料を再処理し、プルトニウムを抽出して高速増殖炉へ送り込んでいくことが任務になる。そうすると、中間貯蔵施設の立地地域の心配に応えるためにも、中期計画のFBR実用化戦略調査研究に関する記載は意味がある。第2再処理工場の議論を開始するのは2010年となっているが、FBR再処理と共通する部分もあると考えるので、軽水炉MOX燃料の再処理についても評価ができるよう、基礎的な部分ではパラメーターの幅を広げた研究をお願いしたい。
原子力システム研究開発事業について、資料2に基づき事務局より説明。主な意見は以下のとおり。
【委員】
採択件数がまだ決まってなく、倍率は革新技術創出が6~7倍、若手対象が3倍ということだが、倍率というものは難しくて全然件数に満たないことは困る。一方で、一部の科学技術振興調整費の分野には15倍とか20倍というものもある。それはものすごく倍率の高いことが尊いかというと必ずしもそうではなく、現場の話では、20何倍となると新しくアプライズするという気持ちが萎えてくるという。適切な倍率は難しいが、「これはこういう趣旨でやっている。」ということが馴染んでくるものを是非お願いしたい。その際には目的をきちんとすることも必要である。それから本委員会で承ることでないかもしれないが、JSTの内部における審査のメカニズム、メンバー及び判断等の詳細について、適宜説明いただければ幸いである。
ITER(イーター)計画 我が国で実施すべき幅広いアプローチのプロジェクトについて、資料3-1~2に基づき事務局より説明。主な意見は以下のとおり。
【委員】
この幅広いアプローチは、核融合の早期実用化を目指す観点から、ITER(イーター)と共に大事なプロジェクトであるとの認識の下、これまで大変な努力をいただいている。そうした観点から、本計画あるいは日本としての取り上げ方に対して評価したい。これから日本とEUの間、あるいは広くITER(イーター)に参加する6極の中で、日本が引き続きリーダーシップをとって本報告に沿った実現がされるよう、外交面も含めた一層の努力をお願いしたい。
というのも、この提案とヨーロッパあるいは6極の利害が必ずしも一致するわけではなく、相当な努力を日本側が続けていかなくてはならないという点が含まれている。研究開発機関としても、提案された全てのプロジェクトに対して、技術的な観点から出来る限りの支援をしていきたいと思う。加えて、大きな国際約束になるので、その資金的な裏付けも含めて是非文部科学省の指導をいただきたい。
【オブザーバー】
残ったブロードアプローチの内の幾つかが実施されるということで大変結構である。しかし、ITER(イーター)は日本誘致を決めた閣議了解の際に原子力予算の内となった。これからITER(イーター)を進めるとして、きちんと一般会計で確保していただきたいというのが電気事業者の希望である。
高速増殖炉サイクルに関する研究開発のあり方について、資料4-1~2に基づき、説明者及び事務局より説明。以下の質疑応答が行なわれた。
【事務局】
原子力政策大綱については、2015年と2050年という数字が世の中にアピールされている。2050年というと非常に遠い先の話であるので、その時点において、例えば電力事業者がFBRの実用化についてどのように取り組んでいるのかも予測しがたい状況にあるし、六ヶ所再処理工場に続くような次の再処理工場が同じようなタイミングに入ってくるところもにらまないといけない。こうした不確実な状況の中で、15年から50年という長期間をどのように埋めていくのかということについては、新聞等々で疑問が呈されているところである。政策大綱に関する自民党の与党手続においても一部の先生方から同様の議論があった。従って、そうしたところを埋めていくことについて本委員会での議論をお願いしたい。
一方、遠い将来を見据えての研究開発投資ということになるので、その投資が有効であるためにはどういう投資をしたらいいのかという観点も重要になってくるのではないか、といったところにもご配慮いただければありがたい。
【委員】
重複になるが、今日何を議論していいのかというのはあまりよく見えないのだが、どういった議論を期待しているのか。
【事務局】
検討のバウンダリーについては、大綱あるいは中間とりまとめという形で示されており、これに応えていくためにどのように評価すればいいのか、あるいはどのような点について議論していけばいいのかということを、まず本委員会で議論いただきたい。政策大綱に応えるためにどんなことがポイントになりそうかという点について様々な意見をいただければ、事務局で今後整理をして論点を明確にし、それぞれについて資料を提示して説明の上、再び議論いただくような勉強会をセットしていきたい。その上で、最終的には4月から正式な議論を開始したい。
【委員】
政策大綱が決まったら、技術面を背負っている人間としてその目標で努力する以外にないが、現実の問題というのが非常に重要である。原子力というのは総合の学問・技術であるから、専門家だけでなくそれを支える一般の技術というのが周辺にあって成立している。FBRの問題というのは、材料と高温構造設計という二点が従来の軽水炉にない問題としてクローズアップされ、研究投資された。一時期多くの研究者や企業の技術者がそこに従事したのは、高温の問題というのが原子力だけでなく、他の産業に対して非常に大きなインパクトがあり、それなりのモチベーションがあったからである。
今、一番懸念しているのは、当時FBR関連で動員されてそれなりの志を持ってデータや技術を蓄積した人達が、ほとんどゼロになっていることである。大学でもそうした研究者はほとんどいなくなっており、企業でもFBR部門は縮小されて人がいない。それは何を意味しているかというと、今後15年、50年で何かやろうとした時にどうするのかという問題が一番切実だということである。要するに、技術を蓄積してもそれが残っているというのは嘘で、それをずっとウォッチしない限り駄目である。その行き着く先が人間の問題であって、携わった人たちが一旦切れてしまうと、継続・伝承ができないという非常に大きな問題になってしまう。
今の計画で結構だが、そうすると今でも一休みしているわけで人がいなくなっている。それでは何年か先に本当に実現できるのか、その時に人をどうするのか。多分、企業はそこまで人をキープするなどということはやらない。電力は別だと思うが、ファブリケーターは少なくともそれはやらないだろう。そうした現状に対してどうするのかということについて、計画の中で人材の確保やプールといったことを盛り込んでいかないと、こうした計画は机上の空論であり、実現性が乏しく困ったことになる。それが一番の懸念であり、だからこそ文部科学省として、人材という点でどのようにするかということが大きな議論になるのではないか。
【事務局】
非常に重要な点であり、おそらく研究開発の推進方策の中の重要な項目の1つとして、取り上げさせていただくことになる。
【委員】
戦略構想のFSのフェーズ2の話と、資料4-2の別紙2のスケジュールの案については理解した。このフィージビリティスタディは、フェーズ1、フェーズ2ということで高速増殖炉と燃料サイクルについて実際に研究に携わっていた方や造詣の深い方、技術者の方々が集合してオールジャパンで検討したということだろう。それから、最初の段階では色々なアイデアを様々な機関が提案して、ある程度検討したということだろうが、少し危惧するのは、このFSの検討が終わる段階と今後の計画の検討というのが半年くらい重なっているのではということであり、その時に関わってきた方々が人事異動等で別の職場に行かれたりするのではないか、ということである。
例えばその時期が3月あるいは4月1日だとすると、それをまたぎながら長期にわたる計画の検討を進めなくてはいけないということで、今後半年間に行わなければいけない作業については、人的なリソースの動向も踏まえて、単に勉強会をして報告書を書いたものに基づいて検討するというだけでは、ある程度すぐに始めても来年にもかかるだろうし、来年で終わるというわけでもない。今まで検討されてきた方々との接点をある程度残しつつ、検討を続けるということが必要であり、またその辺りでアイデアを出して工夫した検討を進めることも必要である。
2つ目に、主な論点の中で高速増殖炉とかそれを支えるサイクルのイメージについて、今後の計画を立てることは必要なことであるが、大切な点はどのように最終的なところまで実現するかという途中のステップである。これは非常に複雑であり、例えばプルサーマルで使った燃料の再処理やプルトニウムの需給をどうするかということで、必ずしも高速増殖炉ばかりではなく、軽水炉サイクルとも関連があり、開発計画となると、どういう施設で研究や機器等の開発を進めていくかということもある。研究開発を続けるための総合的な投資として有効な手段は、今までのフェーズ2での観点から検討したものと一致するとよいが、一致するかどうかという観点からの検討をしてはどうか。
【オブザーバー】
2050年頃に電気事業者がどのような状況になっているか分からないが、この時代にはますます原子力でなければならないのが明白であることを前提とすると、2050年に高速増殖炉として何をやるか、何を選択するかということを考えた時に、世界に勝てるものでなければいけない。
政策大綱の議論を受けて、FBRの導入が2050年となったことで既設軽水炉の供用期間を60年と仮定して、2030年から2050年の間に止まってくる軽水炉をどうするのかということが課題になった。そのために、日本型の次世代軽水炉を開発して準備するということが仕事として来たわけだが、そこで炉型が問題になる。世界と戦える、世界標準として売り込めるような軽水炉であってほしい。これは経済産業省がリードされるプロジェクトであり、その下でどのようになっているか分からないが、次世代軽水炉なら何でも良いと言われても困る。電気事業者が2030年から50年にかけて約3,000万キロワット、すなわち100万キロ単位で30基の軽水炉を建てなくてはいけないという時に、必ず世界にある他の軽水炉と比較して選択をするわけである。
同じことが2050年の高速増殖炉についても言えるはずで、恐らくこの時には世界が再び高速増殖炉を導入していく時代になって、欧米のメーカーがそれぞれの高速炉デザインを提案してくる。そうすると、電気事業者は必ず比較してどちらにしようかと考えるわけで、その時に日本型のものが落とされるということは悲しいことであり、国費を投じてやってきたのは何だったのかという議論がまた起きてしまう。
従って、資料4-1の最後の7ページを見ていて、主として開発を進めていく概念と、(2)で補完的に開発を進めていく選択肢があるのは結構だし、それから資料4-2の1ページ目のような、柔軟性のある戦略的な研究開発の方針を提示するというのも結構な表現だが、実用化戦略調査研究という名前からも明らかなように、2050年に世界の標準となれるような高速増殖炉でないといけない。財政が緊縮化して原子力機構も予算がだんだん減ってきてしまうだろうが、そうした中で世界と戦えるような主概念というところで戦略的な開発をしていくことに重点を置くべき。一度フェーズ1、フェーズ2といろいろなものを調査して、今度は絞ろうとしているわけであり、絞った戦略を間違いなく開発していくための人と予算の投じ方をしていかないと世界に負けてしまう。
電気事業者も実用化戦略調査研究に参加しているが、今後、戦略を絞ったならば、それを世界標準にする位でなければいけないし、将来の電気事業者が再び採用せずに欧米のものを大量導入せざるを得ないことがないようにしなければならない。
資料2で原子力システム研究開発事業の話があり、電源開発促進税として集めた特別会計を使う事業である点を念頭に置くという趣旨が反映されているので心配なくということであった。もちろん電源開発促進でお金を集めたのでそれ以外のものに一切使わないでほしい、というつもりもないし、特に若手対象型で人材を育てる分には、テーマがその趣旨に合っているかどうか、といったことまでお願いするつもりもないが、革新技術創出型と特別推進分野は、高速増殖炉の実用化戦略調査研究における今後の主として開発を進めていく概念に役立てることを是非お願いしたい。また、全体として柔軟性と戦略の両方があるが、特に戦略的に進めて失敗のないよう併せてお願いしたい。
【委員】
FSのフェーズ2が取りまとまる4月以降、それぞれの立場から厳しい評価を受けながら、次をどう進めていくかについてまとめていただくことと考えるが、今日は、それまでの間にどのような形で本委員会と接点を持っていくのかという問題提起ではないだろうか。
そうした観点から、先ほど指摘があった人材、特にメーカーを含め、幅広くこのFBRの開発にどのような参画をしていくかというのは大事な視点であり、これまでも本委員会で審議されてきた公募事業を、今度FBR開発の中に取り入れていただく、しかも、平成18年度の早い機会にこの制度を取り入れていくこと等を勘案すれば、FSの取りまとめ段階において、いかに次の研究開発事業に続けていくか、あるいはどういう視点を取り入れていくべきかについて、幅広く意見をいただく機会があればそれに越したことはない。最後の段階で若干制約はあるかもしれないが、出来る限り協力をして最後の取りまとめに活かしていくという観点が大事である。
一方、「もんじゅ」がいよいよ運転再開に向けた本格的な改造工事に取り組んでおり、「もんじゅ」を将来どのような姿でFBR開発の中に活かしていくかについての方針を明らかにしていくことが大事である。もちろん、「常陽」など他の施設をこれからどう展開していくかも大事な視点であり、そうしたものをまとめていく上で幅広く意見をいただく機会があれば、積極的に協力させていただきたい。
【委員】
一般の人々は、マスコミの事故情報しか入ってこない現実の中で、なぜ今、この政策大綱の中に高速増殖炉が入ってきたかという繋ぎが見えてこない。一番心配なのは、原子力政策の現場や工場、六ヶ所に行って感じることとして、研究者がいわゆるスターになっていないことから、「政策的に自分達が国のエネルギーを作っていくんだ。」と外部から評価して励ますような仕組みになっていないことである。研究者そのものが萎縮して本当の能力を出し切っていないのではないか。
やはり国民の意思が研究者を励ましていける形で反映されてこそ、研究者も自分の研究に対して自信を持っていくから、なぜ今高速増殖炉なのかというところを国民に分かりやすくしていく場を作ることが大事である。担当者はホームページに出していると言うが、出しているのは資料を提供しているだけであって、人間と人間の関係になっていない。ヨーロッパの場合、原子力研究者というのは、原子力研究者ではない普通の人との間に対話があり、人間関係の信頼が出来ている。日本の場合は、頭の良さは飛び抜けているかもしれないが、人間同士の会話という点では不十分だと感じる。
そうした意味で、大きなエネルギー政策が展開していく中では、原子力研究者が脚光を浴びていくような、エネルギーの大切さを分かる国民の政策も必要ではないか。20年前に廃棄物の専門家たちは世の中の片隅にいたが、ゴミ問題で大変困ってきて彼らにスポットライトが当たるようになった今、環境政策の廃棄物担当者は立役者であり、国民の環境問題を解決するスターになっている。今度は、原子力の最初の時代がそうであったように、将来のエネルギーとして若い研究者たちに対して励ます世論を造成していくことが基本になる。
【委員】
FBR開発に関して特に「もんじゅ」が象徴的に見えるが、技術的な問題というより信用をなくすという問題でつまずいているところがある。技術について言えば、早く「もんじゅ」でやるべきことをやり上げていただきたい。そうすると、一歩進めるほうは、「もんじゅ」を抱いていれば現状が維持できるし、逆のほうは「もんじゅ」があるから駄目だということになる。今の核戦略の中でアメリカが再びプルトニウムは使うな、といったことを言わないとも限らないわけであるから、技術は早く確立してほしい。
それから、「もんじゅ」だけが課題になっていると、過去のものを何とかするという感じになるので次の新しい課題を出す必要がある。これについては、本委員会でも色々と出ているものの非常にあいまいで、アイデアを次々と出さなければ学生もついてこない。世界最高の技術のようなものが次々と出ているということを見せていかなければ、本委員会を中心に次世代的なものを作ろうということにならないので、その点をアクセレートしていただきたい。
【委員】
事務局の主な論点やスケジュールは基本的に良い。先ほど人の問題ということもあったが、やはり技術の進歩というものもある。国内だけでなく、世界での技術の進歩について、いかに柔軟に考えていくかというところも非常に大事であるので、主として進めていく概念を選択し、そして補完的に進めていく選択肢というものを考えていくことが重要である。
【委員】
これから様々な研究開発や計画展開をしなければならないが、原子力計画というと制約条件があることも確かであり、原子力を含む科学技術関係者も努力しているが、政府の財政構造ははっきりとしていて、身代が40兆しかないところに80兆のことをやっているわけである。昭和41年に動燃を創ることを決め、昭和42年10月2日に発足した時と、環境が変わっていることも認識しなくてはならない。一方で人は大事であり、どういう技術を巡る環境にあっても、若い人を引っ張っていく努力はしていかなければならないという苦しい状況にあることを認識しておく必要がある。
何故FBRをやるか。これは昭和30年代から議論してきて、本来、原子力という手段によって低廉・安定な電力・エネルギーを国民に供給することが大目的であったはずである。今の軽水炉でやっていければそれでも構わないかもしれない。ただ、トータルなウラン利用ということを考え、ポテンシャルを全て使い尽くすということで言えば、FBRという技術を持たざるを得ないというのが当時の動力炉開発発足時のことであったはずである。それは今でも確かに変わらないのであり、まさに原子力で長期間にわたって安定的に安全な低廉なエネルギーを供給するためには、FBRを考えていかざるを得ない。
我々は、この実用化調査研究がはっきりする前に、FBRに取り組むかということについてもう一度きちんと考え直しておく必要がある。その時に、技術の都合で大体こういうタイミングでこれができるということは大事かもしれないが、同時に一般の人から見て、突如FBRが出てくるということではなく、電力が安定的に発電される状況をもたらすために必要であり、軽水炉や軽水炉燃料サイクルと比較して環境負荷を大きく与えず、国民とより共存しやすい形になっている発電方式であることをアピールできないと、FBRの将来はない。そうしたFBRを巡る環境や一人一人の考え方について、このフェーズ2が出てくるまでの間にしっかり腹を決めていく必要がある。
【事務局】
我々は現在、原子力を国家基幹技術ということで強く推進していて、国家安全保障の観点からエネルギー、原子力を考えなければいけない。そうした中で、昨今の風潮として経済性がかなり強く出ており、もちろん大事なことであるものの、やはりエネルギーは国家安全保障の観点が必須であり、ぶれることなく原子力を進めていく視点が必要である。また、昨今の電力自由化で様々な議論はあるものの、原子力を1本筋の通った形で進めていく必要がある。そうした意味で、例えば2050年にFBRについて、その時点で世界にいいものがあればそれを採用するという趣旨もあったが、そういうことではなく、我が国として国家安全保障の観点から原子力をしっかりやっていくということであれば、当然軽水炉はそれで進めて、その中でやはり軽水炉だけでいけないという面があれば、FBR技術についてもしっかりやっていくことは必要である。電力会社は、技術開発を見守って、その時点で一番良いものを採用するという視点ではなく、研究開発側と一緒になって国家安全保障の観点から技術開発をしていくことが重要である。
【主査】
政策大綱の中で、将来における核燃料サイクルの優良な選択肢であるということで高速増殖炉が位置付けられている。これは、様々な議論を踏まえて21世紀後半において高速増殖炉が非常に重要であろうということである。そうしたことを考えると、この研究開発をどうしていくのかについて、それこそ失敗は許されない。
様々な研究開発を考えていく時も、1つには2015年などの数字が出るが、やはり2050年以降、あるいは2050年までという長いスパンの様々な時点でどのように研究開発をしていくのかということが大事であるし、失敗を許されない研究開発だとすれば、それなりの具体性を持ったものでなければいけない。人や資金をどうしていくのか、全日本でどのようにやっていくのか、という具体性を持った研究開発計画を作っていかないと、21世紀のエネルギーに我々は責任を持って対応できないということになっていくのではないか。これは大変重要な課題でもあるので、FBR技術の研究開発について、今後本委員会の下の作業部会において、本日いただいた意見を指針として、更に専門的な議論を深めていくべきである。
【オブザーバー】
先ほど申し上げたことが、「電気事業者は知りませんよ。」と聞こえたとしたら誤解である。電気事業者は「もんじゅ」の建設資金の一部を負担し、今でも「もんじゅ」に運転要員を支援している。それから、FBR実用化戦略調査研究にもお金と人を投入している。民間で出来ることなので、国家の予算と人の数に比べれば出来ることは限られているけれども、そうしたことは、FBRの将来のユーザーになるという意味で重要である。2050年、あるいは2030年に我々が次世代軽水炉を選ぶ時も、世界中で軽水炉のリプレースが行われ、メーカーは意気軒昂に勢力を吹き返していて、今でもESBWRやAP-1000、あるいはヨーロッパのEPRという3つの候補を持っているのに、4つ目が要るのかという位、世界には商品がある。そうしたところで日本型次世代軽水炉は、やはり世界にも対抗できるようなものでなくてはいけない。同じように高速増殖炉も、例えばアメリカのGEがやっているナトリウム冷却金属燃料の乾式再処理方式の原子炉や、フランスのナトリウム冷却MOX燃料による湿式再処理方式を考えると、その時に日本が競争に負けずに世界標準の1つになれるような高速増殖炉とサイクルを確実に開発できるよう、戦略的に人と予算を投入していかなくてはいけないという意味である。
【事務局】
その点はよく理解している。そうした意味でも第三者からの目で見るのではなく、各委員の方々も含めた関係者が同じ側に立った上で、FBRについても研究開発などを進めていただきたいという趣旨で申し上げた次第である。
原子力政策大綱について、事務局より閣議決定に関する現在の手続状況を説明。質疑応答は特になし。
今後の委員会スケジュールについて、資料5に基づき事務局より説明。また、次回の委員会については、11月7日(月曜日)10時から12時で開催を予定している旨、事務局より連絡があった。
以上
研究開発局原子力計画課