原子力分野の研究開発に関する委員会(第9回) 議事要旨

1.日時

平成17年8月29日(月曜日) 10時~12時

2.場所

古河総合ビル6階 F1会議室(文部科学省ビル隣り)

3.議題

  1. 平成18年度概算要求における重要課題等の事業評価について
  2. 原子力分野の研究開発に関する委員会の今後の検討課題について

4.出席者

委員

 田中主査、石田委員、伊藤委員、井上委員、榎田委員、加藤委員、木下委員、小林委員、知野委員、中西委員、藤本委員

文部科学省

研究開発局
 森口局長、木谷審議官、藤木審議官、中原原子力計画課長、中村原子力研究開発課長、板倉核融合開発室長
研究振興局
 斎藤量子放射線研究推進室長

5.議事要旨

(1)平成18年度概算要求における重要課題等の事業評価について

 平成18年度概算要求における重要課題等の事前評価について、資料1‐1~4に基づき、事務局より各作業部会ごとに説明。以下の質疑応答が行われた。委員からの意見等については、本委員会から研究計画・評価分科会に説明する際に十分留意することとし、了承された。

原子力研究開発作業部会(一部全般的な事項を含む

【委員】
 この評価のAというのは、総合科学技術会議でいうところのSからCまでの評価付けの尺度、基準で行なっているのか。

【事務局】
 段階としてA、B、Cの3つとなっており、Aについては着実に進めていくべき、Bについては、その一部内容を修正するようなことが求められており、Cについては、基本的にその概算要求に適さない、そうしたカテゴリーになっているので、総合科学技術会議と1対1で対応しているわけではない。

【委員】
 評価がAしかないが、そのメリハリ、集中、選択はどのようになっているのか。

【事務局】
 必要性や計画性については、全て原子力政策大綱あるいは長期計画に従っており問題ないのでは、という議論を頂いている。特に私共のこの分野については、国の方針がしっかり決まっており、その方針に従ってやっていることから、毎年評価するのはどうかという意見もあった。有効性、効率性のあたりで一部表現が不適切ということでどこまでこの技術が適用されるのか等について様々な意見はあったものの、内容自体については問題ないだろうということで、今回Aという評価を頂いている。

【主査】
 全ての案件については、それが本当に選択されたものであって、集中的に行われているかという観点は重要かと思う。でも、ここで挙がってきたものの中で選択・集中するということではなく、この前の時点で十分に選択され、集中された計画になっているという観点で検討したところである。

【委員】
 FBRの継続条件として、経済性の条件が整う必要性があるという意味のことがどこかに書いてあったと思うのだが、ここで言う経済性の基準とは、軽水炉並みにという意味なのか、それとも、それを超えた、例えば化石燃料との比較においてという意味なのか。

【事務局】
 FBRにおける将来の実用化像はどういうものかということを検討しているわけであるが、その中では、最初に達成すべき幾つかの開発目標というものを置いている。そのうちの1項目に経済性というのを入れており、経済性の数値の目標値を定めている。この数値を目指して実現し得るような設計として、新しいシステムが積み上げられるのかどうかということで今研究しているわけであり、その目標設定そのものは、大型の軽水炉に遜色ないような数字ということで過去に定めたものである。

【委員】
 それなら理解するが、読み方によってFBRはコストが高いからやめろという話にもなりかねないので。確かに、原子力に関しても経済性を重視しないといけないのは当然だけれども、エネルギー小国の日本では、やはりエネルギーセキュリティーの観点を抜かすわけにはいかないと思う。だから、国益の面から考えたら経済性も重要だが、エネルギーセキュリティーとのトレードオフという発想も入れる必要があると思う。

【委員】
 1つ目、原子力分野の最初のFBRサイクルの調査研究、これはA評価で是非やっていただきたいと思っておりますが、来年度非常に大きく予算が減るという印象を受けた。今回、調整中ということで、いろいろまだやるのかもしれないが、このFBRの調査研究は非常に重要な研究なので、ぜひとも必要な予算をご配慮賜ればありがたい。2点目は、HTTRの関係であるが、そもそもこのHTTRの予算というのは一般会計でなされてきて、今年度の下期から電促税に切りかえられたという経緯があろうかと思う。電促税の利用目的というのは、発電用施設の利用促進と電気供給の円滑化であるので、これからも様々な研究が出てくると思うが、それを踏まえた予算の配分を行っていただきたい。

【事務局】
 2点質問があったが、1点目のFBRサイクルの実用化戦略調査研究について。今回のこの予算というのは、すべて新法人、今までで言うとサイクル機構に手当てされている予算であった。サイクル機構においてこれをやる、ということだったが、来年度は、新法人自身を競争環境に置くということを考えおり、最初からもうすべて大丈夫だという形ではなくて、公募事業とワンパッケージで考えている。公募事業として、もちろん新法人に能力があれば手当てをして、今年度と同様の研究開発ができることになるし、もしもほかのところと協力をしてやるのであれば、それはそれでよいということになる。あるいは新法人よりももっと適切な人がいるのであれば、そちらで研究開発をしていただくということで、日本全体としてはいい形の研究開発をしていきたい。
 従って、FBRサイクル実用化戦略調査研究という、サイクル機構に手当てする予算が減ることになるかと思うけれども、全体的には、集中と効率化の観点から、いい成果を出すような形に変えていく、その結果として中のやりくりがあったということで、今回措置を考えている。
 2点目の高温ガス炉については、高温工学試験研究ということで書いている。これについては、現在のシステムが発電と熱の併給をするタイプの炉を目指して作られているという観点から、電促税を使っての研究開発になっており、基礎的な研究ということで今はそれほど大きな額にはなっていないが、また、来年度については着実に研究開発をしていきたい。

【委員】
 確かに全項目に同じ評価をつけるような評価というのは、そもそも評価であるのかと以前から言っている話だが、S、A、B、Cという総合科学技術会議の評価と、この評価A、B、Cというのは、先ほど1対1の対応はしていないという話であり、本当は違う評価である。今も概算要求の直前でやっているわけであるし、しかも、今年、それほど時間があったわけではないので、こうなるのも当然だと思うが、この委員会全体として、全ての評価がAで非常に結構でしたとだけずっと言い続けるというのはいかがなものかという感じもする。今年は全体から見てやむを得ないところはあると思うが、来年以降、なるべく前広に話をいただき、まさに主査の言われる選択と集中をやろうとするならば、この委員会の場でもそういうことができるよう、なるべくご配慮頂きたい。

【事務局】
 S、A、B、Cの方は、科学技術政策全体を見通して、各省から出てきている政策を全体的に見て、シーリングがマイナス3パーセント掛け20パーセントまで出していいということで、かなり金額的に大きな案件が出てくるので、それを12月に向かって縮減していく1つの観点として、総合科学技術会議ので重みづけをして、予算編成全体のプライオリティーを決めていくものである。一方、こちらのほうは、どちらかというと概算要求に値するかしないかというのが一番大きな観点であり、その意味で言うと、S、A、B、CとA、B、Cというのは、ただ単純に対応していないだけでなく、見ている観点が違うというご説明は、そのとおりであると思う。

量子ビーム研究開発作業部会

【委員】
 大強度陽子加速器計画とRIビームファクトリー計画のそれぞれ備考の項目について「廃棄物」とあるが、多分これは「放射性廃棄物」のことだと思うけれども、「原子力のコアの部分に寄与することも重要」というコメントがある。一番上の全体的なコメントのところを拝見すると、「評価シートへ反映させるとともに」と書いてある。そこで、先ほどのRIビームファクトリー計画の中では、既に反映させて記述を直したものが提出されているという説明だったが、放射性廃棄物の処理というか核変換等について既にこの評価シートに反映されているのかどうかという点と、資料1‐2ではどの程度のことを想定されているのかという点について教えていただきたい。

【事務局】
 J‐PARCの様々なビーム利用のうち、放射性廃棄物関連のR&D、研究開発への応用については、具体的な計画として核変換の実験計画が入っており、J‐PARCの計画は全体を第1期、第2期という二段構えで進む予定になっている。核変換の実験については、いわゆる第2期計画の位置付けとなっており、平成15年末の中間評価の段階に改めて中間評価を行った上でその進め方について決めるということになっている。それを国としてどうオーソライズをして進めるかという点は、恐らく来年以降評価をした上で決めていくということになっており、現段階での評価や位置付けを記述することは適当でないということで、評価結果には委員からのご意見のみ紹介している。

【主査】
 J‐PARCについては、原研からの予算部分だけをここで評価するのか。

【事務局】
 その点についても、J‐PARCは全体として一体の計画であり、本委員会のミッションが原研分だけであるからといってそれだけを見るというのは如何なものかというご指摘を作業部会でも従来から頂いており、我々としては、なるべく全体像が見えるように基礎的な情報については出している。評価シートでは、いわゆる高エネ機構の担当する部分についても記述しているが、別途学術分科会で部会が設けられてそちらでの評価があり、特に基礎科学、基礎研究の領域が中心ということで、やはり別の観点が入るという面も確かである。そのため、計画そのものはJ‐PARC全体を見つつ、評価については、最終的に原研分の予算を中心に評価シートを記述していただいた。

核融合研究開発作業部会

【委員】
 準ホスト国ということは非常に長いプロジェクトであるから、ずっと先も準ホスト国で居続けるのかということはあると思う。将来のエネルギー供給の中で、ITERはどういう位置付けになるかという議論がどれぐらいされているかが1つ疑問であるということと、JT‐60のような大きなプロジェクトは、ジグソーパズルの1つであり、国際研究のうちの1つの段階をどれくらいまで攻めることができるかということなので、どういうプロジェクトの中で、どういう位置を占めて、何が成果かというのをきちんと議論すべきだ。研究者は閉じてしまいがちだが、このステップが全体計画の何を意味し、どういうふうに進んでいるかがもっと常に問い続けられるべきではないか。

【事務局】
 まず、準ホスト国の話であるが、これについては、一番大きなポイントは、やはりブローダーアプローチだと思っている。ITER本体というのは1つしかなく、これは実験炉であるが補完するための様々な研究開発プログラム、研究開発施設が存在している。これらを総称して、幅広いアプローチ、ブローダーアプローチと言っており、これを日本とヨーロッパの2極の共同で、ノンホストである日本のテリトリーに設置するということになったわけである。
 金額的な規模は、約10年間にわたって日欧双方が460億円ずつ、トータル920億円という非常に大きなプロジェクトであり、これは各極がITERにお金を出して、その結果、予算はかなり縮減されるわけであるが、その分出来なかったことをブローダーアプローチの中に色々盛り込もうという機運になっており、これは日本だけでなく、ヨーロッパも同じようなスタンスである。
 従って、今、日本とヨーロッパの間で具体的に調整をしており、国内では有馬元文部大臣を座長として、どのようなプローダーアプローチのプロジェクトを選ぶのかという議論をしているわけであるが、この中で、世界の核融合研究によって何が重要なのか、重要なもののうち何をこのブローダーアプローチの枠でやるかということを検討している。そういう中で、ITERで出来ない残りの部分を、このブローダーアプローチで行うことによって核融合研究全体における広い意味での準ホストになるということが我々の目指しているところである。
 2点目に、そういう意味でこのブローダーアプローチは10年間、さらにはこの10年で終わってしまうわけではなく、施設そのものはまだ残るわけであるから、それを今後、日本とヨーロッパのみならず、ITERに参加する全6極が有効活用していくことによって、末永く準ホストとしての日本の役割を発揮していくことができると思っている。
 あと、このJT‐60の位置付けについてであるが、これは20年来ずっと運転している施設で、ITERを補完するための様々な研究を行っており、実験条件の設定や、実際にITERはプラズマに燃焼されて熱が出るわけだが、その辺の挙動についていかに制御・計測するかといった研究もミッションの中に入っている。さらに、ITERのその先の発電を実証するための原型炉であり、この設計のために必要なさまざまなデータをとることも行っている。
 また、現状の常電動磁石によるJT‐60をさらにアップグレードすることが適切ではないかということが研究者コミュニティーの間では言われているので、そうしたこともブローダーアプローチの議論の中で国内的に検討していきたいし、当然ヨーロッパとも調整していきたい。

全般的事項

【主査】
 3つの部会の報告について議論させていただき、貴重な意見をいただいたところであるが、委員の皆さんから、全てが結果としてAになるのはどうなのか、違う議論というかシステムがあっていいんじゃないかということがあった。他の委員会ではどのような状況なのか。案件によればB、Cという厳しい評価もあり得るのか。

【事務局】
 他の委員会の状況については存じていないけれども、多分Cとかいうこになると自動的に淘汰され、概算要求あたわずということであるので、そうした案件が本日午後の研究計画・評価分科会等に出てくることはないのではないかと思う。

【事務局】
 私はライフサイエンス委員会にも呼ばれており、分子イメージング等の説明をしているが、ライフサイエンス委員会のやり方だけ参考に申し上げると、特にA、B、Cというような評価尺度はなく、むしろ評価シートにその進め方やあり方についてのコメントを委員の皆さんに出していただくという点が評価の中心になっているようである。そのため、進めるべきかどうかというそもそもの出発点は、もうそれぞれクリアしている前提での評価というふうにとらえており、それぞれ委員会ごとにやり方は違っているようである。

【主査】
 検討された案件は全てAということでふさわしいかと思うが、様々な議論の中で、全てがAになること自体に対してご心配される委員の方も多いので、来年度は、評価の進め方について事務局と少し検討させていただければと思う。

【委員】
 基本的に結構だと思うが、そもそもこのメッシュで項目を選ぶ限りにおいて、今、客観的に見ても、これはA以外の判断はつけようもないし、当然継続のものも多く、今やめると言ったところでやめられないものであることも当然であって、この枠組みでやっていく限り、こうしたことはあると思う。
 そういう意味でこれからずっと続けていくのであれば、来年も引き続き同じ枠組みなのか、そのときの概算要求の重点事項が出てきてその都度議論するのか、あるいは、特に新規のものについては若干議論するのか、といった様々なやり方がある。今のこの枠組みにおいては、各部会の判断、あるいは本日私共がしつつある判断は間違っていないと思うけれども、これからどうするかについては、かなり考える必要があると思う。
 それから、結果としてこの評価シートができているということは、それは単にAをつけるということだけでなく、評価シートの中身が書かれているわけだから、それをプロジェクト実施に際しても十分に参考にしていただくということがある。
 また、本日出ている評価シートの平成18年度の要求額が全部調整中とあることについて、きょうであればやむを得ないのかもしれないが、行った評価シートが調整中ということで評価をしたのかというのは気になることでもあって、出来上がった評価シートとは何であるかということについても我々は配慮しておく必要があるのではと思う。

【主査】
 予算の点については、どう判断すればいいのか。部会の時には数字が入っているものを元にして議論したところもあるのだが、本日の委員会での決定というのは、調整中ということで決定したのか。

【事務局】
 予算がまだ形式的には固まっていなく、明日発表ということもあって、本日午後の計評分科会の資料においてもその予算額については調整中ということで書いてあるので、そこは全省としての方針というか、記述の仕方として調整中ということになっているわけであるが、一方で、当然評価をされるときには、内々固まっているような数字を前提に評価をいただき、こうした結果が得られたものと我々は考えている。

【委員】
 評価の話が出ているが、評価論の立場からすると、2つのポイントがあると思う。1つは評価の対象とする母集団の話で、もう1つは評価基準の話である。まず前者だが、母集団を何にするのかという点に関して、この原子力分野というだけで評価するのか、それとも科学技術会議のようにバイオとか、宇宙とか、色々な分野を含めて評価する場合では随分と意味が違うということである。今回の場合、多分原子力という業界の中だけでの評価かと思う。
 もう1つは評価基準の話だが、これには相対評価と絶対評価の話がある。学力試験もそうだが、非常にレベルの高い学校で相対評価をすると、そこで悪い点をとった者の絶対評価は、低いレベルの学校のトップよりももっと高いわけである。今回の場合は、多分絶対評価的な判断がされたのではと思う。従って、相対評価をあくまでやるとなれば、また話が全然違うのではないか。私は絶対評価の話で進められたのかと思い、それならそれで結構だと思った。

【事務局】
 今のコメントについて、文部科学省全体としては、科学技術・学術審議会の中の研究計画・評価分科会というところで、科学技術関係の予算要求全体を見ることになっているので、本日の午後には原子力だけでなく、ライフ、ナノや材料など、そうしたもの全てについて報告がなされ、了解されることになっている。なお、対象としては、全科学技術分野となっており、その中でも総合科学技術会議との関係でいうと、継続施策については10億円以上、新規については、1億円程度の案件を評価の対象としている。
 今回の評価の考え方であるが、基本的には絶対評価であり、概算要求にいっていいのか悪いのかがおおよそのメルクマールであるので、そうした意味での絶対評価ということになろう。

(2)原子力分野の研究開発に関する委員会の今後の検討課題について

 原子力分野の研究開発に関する委員会の今後の検討課題について、事務局より資料2に基づき説明。以下の質疑応答が行なわれた。

【委員】
 たたき台に載っていない項目で、こういうものはどうかというのを挙げさせていただきたいが、1つは、私は原子力開発に関してちょっと意見を述べさせていただきたい。先ほどの資料1‐3の項目の中で、いわゆる高レベル放射性廃棄物の地層処分というのがかなり大きな課題ではないかと思うのだが、それが資料2のたたき台の中には入ってこない。これでは、サイクルとしてのクローズというか、最終処分まで含めたところをきちんと技術確立しなければいけないという我が国の状況を考えるとかなり重要な対応ではないかと思うので、出来れば追加の方向で検討いただきたい。
 それからもう1つは、資料2のたたき台の項目からはちょっと別になるのかもしれないが、いわゆる原子力の高温工学試験研究というのがある。これも、いわゆる水素社会、あるいは燃料電池といったものから考えると、原子力の1つの大きな利用分野であるので忘れるわけにはいかないのではないか。予算措置については、一般会計ということになるかもしれないが、是非原子力の今後の社会における重要な役割として忘れるわけにはいかないのではないかと感じたので、意見を述べさせていただく。

【主査】
 高レベル放射性廃棄物の問題はどう考えればよろしいか。

【事務局】
 高レベル廃棄物の処理・処分については、経済産業省と文部科学省の役割分担というのがあり、特に高レベル廃棄物については、経済産業省のほうが主担当ということになっている。従って、我々の力を注ぐべきは高レベル以外のところで、先方の原子力部会などで高レベル廃棄物の処理処分について考えていただくことであるため、一応高レベルについては、この中から外している。

【委員】
 どちらかに入っているわけで、忘れるわけにはいかないという意味で申し上げた。

【委員】
 先ほどの評価シートのときも感じたが、個別のことを議論していると、これはいいとか何とかという議論になるけれども、原子力研究開発の全体の見取り図みたいなものがいるのでは。今みたいに抜けているか抜けていないかというのは、全体的なロードマップ的ものを、個別に考えながらでも意識する必要がある。

【主査】
 たまたま両方の委員会に入っているからよく分かるのだが、かなりの委員の方は、今あったような質問が多分出てくるかと思う。その辺、事務局でこれから工夫されてはどうか。

【委員】
 高温ガス炉の賛否両論が出ているが、今のような議論で、一番残念というか、心配するのは、目的がはっきりしないことである。当初はそれなりの目的があって、一時期は製鉄が目的となり、それもなくなりいつの間にか今度は水素が目的になっているという、社会的に説明が非常に不明確なことになっている。
 現在、原子力だけでなく水素の利用にもかなり深く関与しているが、やはり水素は究極のエネルギーだと思う反面、危険性がある。今後の社会的利用に関して、水素は非常に大きな社会的な議論が必要だろうと思う。それと、今の高温ガス炉の水素の問題というのが、将来的な供給の見通しや経済性なども含めて、水素全体の中で議論していただかないと困る。高温ガス炉に関しては、それありきであって、目標、目的を作っていくというイメージをかなりの人が持っていると思うので、是非正当な説明やディスカッションをお願いしたい。

【委員】
 9ページの真ん中辺りのアンダーラインの文章は、極めて異質である。その上に書かれている人材の確保・育成というのは極めて一般的な話であるのに、ここで原子力施設の保修に関する横断的な技能資格制度というのが出てきて、その下はまたとても一般的な内容になる。要するに、原子力施設の保修に関する横断的な技能資格制度という非常に個別な問題がここに出てくる理由等を教えていただきたい。

【事務局】
 政策大綱全体としてかなり一般論的、総論的なところもあり、あるところでは突然ちょっと密になっているようなところもあるので、ここだけが特異点というわけではないだろうと考えている。
 ここでの議論を思い返すと、これからの原子力発電所として、2030年のリプレースの時期が来るまでは、新増設というのはなかなか考えにくい。一方で、高経年化・高寿命化ということが現在の原子力発電所に対し求められるような状況の中で非常に重要となってくるのが、維持管理関係であり、それに当たる人材が非常に大事であるという議論があったと思う。
 一方で、原子力発電所で働く方々も段々と年齢が高くなってきて、これからリタイアされていくような事態になってきていて、こういった専門技能者の方たちが持っておられるような能力を若い次の世代の方々にどうやって継承していくのかというのが、これから非常に重要な課題になってくるという議論があったと思う。
 そういうコンテクストの中で、こうした横断的な技能資格制度の整備、資格の取得に向けた研修施設云々というような表現が出てきていたと理解している。

【委員】
 大体理解できたが、ここに入れる文章としては、やはり極めて個別過ぎると思う、だから、原子力施設の維持管理と言っていただけば、もう少し幅が広くなるので非常に結構だと思う。要するに維持管理というのは、検査と評価と保修取りかえという3本柱でやって、保修というのはその3本柱のうちの3分の1のさらに半分ぐらいを言っているわけである。だから、もう少し幅広くしていただきたい。それから技能資格もあるけれども、技術者の育成の方がもっと重要だと思うので、技術者・技能者両方を含めるような形にした方がよろしいかと思う。

【主査】
 この政策大綱は、昨日までパブリックコメントが求められていたものである。しかしながら、委員の方々から様々なご意見をいただいたので、これからの検討事項として考えていただけたらと思うし、この政策大綱に反映されないものでも、ご意見があったので、今後、何かの折に参考にして頂ければと考えている。
 初めにあった高温ガス炉関係についてのご意見は、大きな目的の中でどうなっているのかという位置づけに関する議論をはっきりすべきというご意見であった。
 他の分野と絡むところについては、そちらとのインターフェイスというか、位置付けはどうなっているのかということをよく知り、ここだけ小さくなることがないようにというご意見だったと思うので、全ての分野に該当することかと考えている。

【事務局】
 こうした検討の進め方、検討課題などについては、当然、原子力委員会とも色々と相談をさせていただいて進めることにしており、原子力委員会の先生方にも、こうした内容について説明をしている。
 その中で、原子力委員の先生方から、資料2の7.の安全研究や基礎基盤研究についても、文部科学省として検討していただいた方がいいのではないかということで、実は前回の資料の中には安全研究や基礎基盤研究というのは含めていなかったけれども、今回は加えさせていただいている。一方で安全研究については、原子力安全委員会において、年次計画で需要からのニーズが示され、それに従って進めていくということになってきており、その意味では、安全研究について、文部科学省で自発的に安全研究をするというようなことは若干そぐわないのではないだろうかと答えている。
 また、基礎基盤研究については、非常に額が大きいJ‐PARCといったものは除いて、研究者の自発的な考えに基づいて行われるようなものが主であることから、予算的にも、基礎基盤研究ということでお金をつけていくというよりは、むしろこういった基礎基盤研究に携わる研究者の方々が、競争的研究資金とか、公募のお金を取ってきて基礎的な研究を進めていくというのが本来のやり方ではなかろうかということで、ここについても、文科省として、基礎基盤研究の方向性などを議論するというのは、若干やり方としては、同じ言葉で言うと、そぐわないのではないかという気持ちを持っている。そういう答えを原子力委員会の先生方にはさせていただいたいるが、本委員会の先生方のご意見をお伺いしたい。

【委員】
 本委員会で検討することの優先順位の問題かと思う。ただ、安全研究や基礎基盤研究というのは、基礎を支える非常に重要なものであるので、全く検討しないというのも、総合的な原子力開発に資するための検討という意味では欠けるだろうということで、まず考え方自体を少し整理した上で、抜け落ちのないことを確認すればよいのではないかと思う。
 つまり、例えば安全研究では、原子力安全委員会や文部科学省の役割、それから、事業者は事業を進める上で必要な安全に関するデータを採りながら、事業指定申請とか、あるいは設工認等に対応されているという中で、その役割、先ほどはこの委員会の検討範囲では必ずしもないという話があったが、例えば高レベル放射性廃棄物の安全等について、独立した視点での安全データの提供というものが必要なのかどうかといったことに関しては、専門家の安全研究はこうあるべきとか、あるいは安全というのはこうあるべきといった考え方があると思う。そうした視点から整理して問題がない、あるいは原子力の研究開発として現在のあり方で特段の問題点が近い将来に生じないということを整理した上で確認いただければよいのではないかと思う。
 基礎基盤研究も全く同じであり、現在のやり方で近い将来、問題が生じそうなところとか、あるいは長期的な日本の国力が落ちないようにといった観点から、現状のやり方で問題がないかというところを確認いただくことが重要であって、個別の案件について、これは取り上げるべきだとか、取り上げないとかという議論はなじまないのではないかと思う。

【委員】
 安全研究で気になったのは、リスクコミュニケーションと項目が別なところである。安全研究も、基礎基盤研究も、やはり一般の人との接点の非常に大切なところだと思う。安全の方は、今までどちらかというと後手後手に回ってきて対策が後になるので、イメージを悪くしてきたけれども、例えば方針が決まっているのであれば、リスクを全部開示して、こういう危険性はあるけれどもこういう手を打っている、でも、なければこういう困ることがある、というのを全部問うというような形が必要だと思う。ですから、安全研究とリスクコミュニケーションというか、一般の人へのPRのようなところとは、別建てではなくて、やはり一緒にやっていくべきではないかと思う。
 また、基礎研究というのは、夢を与えるというか、基礎基盤というのは森で言えば下草に当たるもので、やっぱり下草がないと木が育たないように、関わっている人の数が今非常に少なくなってきているものであるから、そこからいい芽を出せ出せと。色々な大型プロジェクトがあるから、こういうのをしようとしても、基盤の人がいなくなってきてはできなくなると思う。あと、こういう夢がある、こういうこともできるということを、PRというか、一般の人にも知っていただくいい機会だと思っているので、両方とも大切ではないかと思っている。

【委員】
 今の意見に関連して、原子力安全委員会の下で、要するにリスク情報を活用した規制のタスクフォースが活動していると思うが、そういうものとのリンクはどうなっているのか。それは別の話になってしまうわけか。

【事務局】
 全く別ということではなく、当然文部科学省の研究開発の際に、原子力委員会とか原子力安全委員会との連携というのはとっている。具体的に言うと、一番大きなリンクは、原子力安全研究年次計画という、原子力安全委員会が作る大きな計画に従って安全研究を進めていくようにいつも連絡・連携はしている。当然、今、先生がおっしゃったリスクコミュニケーションのタスクフォースなどの考え方も大きな安全研究年次計画の中に含まれてきていると思うので、その意味での連携というのは当然あるけれども、具体的に、そのタスクフォースと文部科学省が何をやっているかということについては、今、情報を持っていないのでちょっとお答えできないが、一般論として安全委員会とも当然きちんと連絡をとりながら、研究開発を進めていくということは無論のことである。

【委員】
 リスクコミュニケーションという技法を日本で最初に言い出したのは私で、それに関するNPOも持っており、5年ほど前から農水省、厚労省、人事院などでリスクコミュニケーターの養成を始めているのだが、人事院でのトレーニングに文科省からお越しになっているかどうかチェックしていない。ただここで申し上げておきたいのは、リスクコミュニケーションは、数ある合意形成や共考の技術の1つに過ぎないことで、それ以外にも、コンセンサス会議やステークホルダーダイアローグ、パブリックパーティシペーションなど沢山の手法がある。これらは全て社会的な技術であるから、どのような対象に対して、またどういうトピックスを対象とするかによって、手法の選択をする必要がある。リスクコミュニケーションのみが唯一の技術ではないわけであるので、そういうことも考慮された上で、適切な手法をとられるのがいいのではないかと思う。
 いずれにしても、資料の中に書いてある広報とか広聴という言葉は、死語とは言わないが、少し古過ぎる概念だと思う。それに代えて、リスクコミュニケーションに代表される、双方向性のコミュニケーションを導入されたらいかがだろうか。そういう技術が人文社会系にもあるので、それを活用したほうがためになると思う。

【委員】
 全体を拝見して、ここに書いてあることは、まさに検討課題のたたき台ということであるわけだけれども、その意味でこれから何をやっていったらいいかということをざっくばらんに相談するということだと思う。ただ、その他の事項というのは、最近はそうではないのかもしれないが、何となく世間常識から言うと、それほど相対的にあまり重要ではないことを忘れてもいないよということで書いてあるといった印象を世の中に与えやすいと思う。もう少し言葉も工夫し、安全研究、安全問題のアプローチが非常に大事であるので、ここの議論としては、それほどウェートは低くないということも、我々は認識していなくてはいけないのではないか。
 それと同時に、今の安全委員会、原子力委員会、その他、経産省の原子力部会等々、関係機関はたくさんあるわけで、我々は月に1回、あるいは2カ月に1回集まって、どれだけどうできるかということは確かにあると思う。そういうことで、我々のキャパシティーはもちろんあるので、他の機関との関連とか、どうやっていくかということを十分配慮した、そういう検討のたたき台ということを考えていったらいいのではないか。特に全体の文章についても、この中で議論するものに関しては、色々お書きになっていただくのは非常によろしいかと思うけれども、やはり世間で見て、どういう認識で、どうやっているかということについては、十分注意しなくてはいけないのではないか。
 例えば、先ほどの作業部会の量子ビーム研究開発作業部会の中で、原子力の本流につながる研究開発会議という話があったが、非常によくわかるし、私もそういう言葉は何遍も使っているが、エネルギー利用は確かに原子力の本流であるものの、本当は、量子ビームというのは自ら本流ではないと言っているのかという感じもしないではない。内容は全く同意するけれども、いま少し客観的に見てそれなりという認識で書くという工夫をお願いできれば非常にありがたい。

【委員】
 この委員会の役割としてよく分からないところがある。原子力委員会なり原子力安全委員会が内閣府にあり、各省庁の一番上に立っていて、そこで方針なり何なりを決められたときに、結局、この委員会でやることにしても、その線に沿ったものでしかあり得ないことになる。その辺の関係で、この委員会は、何を求められているのかというが疑問としてある。もしここが何か発言していくとしたら、例えば安全委員会や原子力委員会との違いは、より研究している現場に近いところから発言していくという、そこにあるのではないかと思う。
 そうすると、先ほど全てがAという評価、これは仕方がなかったという見方もあるが、やはり研究者の間で実際今やっているものをやる必要があるのかとか、あるいは、もう少しこちらに移したほうがいいのではないかという、技術判断なり、研究判断なり、より正直なところでもう少し話し合っていただきたい。全てがAであり、かつ方針が上から決まっているのでは、この委員会はいまひとつあいまいになると思う。

【主査】
 原子力委員会、安全委員会との関係はどのように整理すればわかりやすいか。

【事務局】
 原子力委員会は政策大綱を出すというのが一番大きな仕事なので、この政策大綱をいかに具体化していくか、これを実現するためにどうしたらいいのかという具体的な施策を各省庁が考えるという関係であろうかと思う。従って、政策大綱の方向性というか、政策大綱から出されている問題意識の中で、文部科学省のテリトリーの中に落ちてきているものについて答えを出すとともに、それに従って我々の具体的な政策を進めていくという、簡単に言うとそういう上下関係であろうかと思う。
 文部科学省の原子力全体予算というのは2,870億円ほどであるので、それこそ色々なものがその中で行われており、キャパシティーの問題もあるが、そういったものをざっと俯瞰していただき、例えば選択と集中の考え方から、この辺についてはもう少し縮減していくべきじゃないかとかいったことも、単なるこうした政策だけでなくもしご議論いただくことが可能であれば、それはそれで非常にありがたい。

【主査】
 より現場に近い方々が委員になっているところが多いかと思うので、その辺からの声は原子力委員会とか安全委員会にも適宜反映できるかと思う。そういうことがないと緊迫感を持った委員会にならない。

【事務局】
 追加させていただくと、先ほど2,870億円のうちの1,900億円以上は新法人が担うことになっているので、新法人というのは非常に大きな存在であり、その新法人の中期目標とか中期計画を現在策定中ということをお話ししたと思うが、その中でも当然、中期的な資金計画といったものにこうしたお金を充てていくというようなことも含まれているので、そういう中期目標、中期計画ができた段階で、またこの委員会にご説明して、まず大きな資源配分といったものについて見ていただくことも、この委員会の議論を進める上で有益かと考えている。

【委員】
 リスク論的な考え方で組織を位置付けると、リスク全体を通じて、リスクのアナリシスという概念があるわけだが、その最初のステップは、リスクを測定すること、ついで、そのリスクを評価すること、それをもとにしてマネジメントをするという順序になる。そのうちで、最初のリスクの測定の部分は、この原子力であれば、現場の官庁であり、文科省と経済産業省が分担をする。そこで測定されたデータをするのが内閣府の原子力安全委員会であり、つまりそこのところで機能分担を省庁間で行なったわけである。これまでは2つの機能を1つの省庁で一緒に行なっていたのだけれども、それではお手盛りになる可能性がある。そして最後に、そこで出てきた評価の結果を、実際に実施するときには再び現場におろす、つまりマネジメントは文科省と経産省が行うという形になっている。
 そして、リスクコミュニケーションは、それぞれの段階のところでそれぞれの立場から行うように法律上では位置付けられていると思う。そして同じ仕組みが実は食品安全のほうにもあり、食品の場合は現場官庁が農水と厚労になる。つまり、原子力の経産と、文科に対応しているわけである。そこで、やはり最初のリスク測定を現場の官庁で行い、そこで出てきた結果を内閣府の食品安全委員会に上げる。そこでリスクの評価をして、その結果をまた現場におろして、そこでマネジメントをするということになる。その意味で機能的には、食品安全委員会と原子力安全委員会は同型なので、文科や経産と内閣府の関係は機能分担であって、上下関係ではないと思う。

(3)その他

 次回の委員会は、10月7日(金曜日)、午前10時より開催される旨、事務局より報告があった。

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