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(2) 2010年ごろのペタフロップス超級スーパーコンピュータが必要とされるアプリケーションの波及効果と必要なシステム要件・ブレークスルー

1 ナショナル・リーダーシップ・スパコンとナショナル・インフラストラクチャ・スパコン
 これまでの我が国におけるスーパーコンピュータの開発は、ナショナル・リーダーシップシスパコン(NLS)の開発プロジェクト(数値風洞<1989〜93年>、CP-PACS<1992〜96年>、地球シミュレータ<1997〜2002年>)が牽引してきた。プロジェクトの終了直後から、これらのシステムがテクノロジードライバとなって製造された商用機が、ナショナル・インフラストラクチャ・スパコン(NIS)として大学や研究機関へと垂直展開してきた歴史がある。しかしながら、地球シミュレータ以降はNLSの開発プロジェクトが無い。このため、新たなNLSの開発がドライバとなって、NISまで含めた計算性能・計算資源量の飛躍的拡大が待望されている。
  ナショナル・リーダーシップ・スパコンとナショナル・インフラストラクチャ・スパコン実効性能(FLOPS)のグラフ
   我が国のスーパーコンピュータの大半(9割以上)が、大学や公的研究機関において整備するものであり、その開発投資については、予算の執行組織の違いはあれ、結果的に、国費に負うところが極めて大きい。
 したがって、NLSに開発投資を集中することで、NISの開発投資を大きく軽減することが可能となり、大学や公的研究機関において、より費用対効果の高いスーパーコンピュータの整備を可能ならしめることとなる。
 つまり、NLSの開発は、その直接の利用者に留まらず、NISを利用する幅広い分野の研究者・技術者に、より高度な計算環境を提供する契機となる。

2 アプリケーションの実行に必要なアーキテクチャ
 第一期ワーキンググループでの報告の通り、将来、ペタフロップス超級スーパーコンピュータが必要とされるアプリケーションの実行においては、マルチフィジックス・マルチスケールの系全体のシミュレーションの実現が重要になると考えられる。
 アプリケーションの実行に必要なシステム性能要件は、後述の3(3)で詳細に整理・分析を行うが、2010年ごろには以下のように、大規模処理計算機、逐次処理計算機、特定処理計算加速機という複数のアーキテクチャ毎に超高性能なマシンが必要であることと、それらの異機種アーキテクチャ間をより密に連携(データ交換)させる超高速インターコネクションが必要である。
  2010年頃に想定されるスーパーコンピュータシステムのイメージ図
【2010年頃に想定されるスーパーコンピュータシステム】

3 各分野のシミュレーションによるブレークスルー
分野 項目 応用 具体的成果
ライフサイエンス 高精度スクリーニング、巨大生体分子の動作機構解明、タンパク質の立体構造予測 創薬のための近似模擬実験 化合物データベースから薬剤候補の絞り込み、精度の高い分子結合予測が約2週間で可能になることによる、薬剤設計での革新。
生体高分子の量子化学計算 創薬のための詳細模擬実験 医薬品候補が体内での吸収から排泄までを約1ヶ月で予測できることで、医薬品の開発で革命を起こす。
生体マルチシミュレーション 人間丸ごとシミュレーション 手術や治療方法のシミュレーションを約半日で行い、患者一人一人に合わせたテーラーメイド医療実現の目処が立つ。
天文・宇宙物理 銀河形成シミュレーション 銀河形成シミュレーション 銀河形成シミュレーションを、従来100年以上かかると考えられていた計算を約1週間で終えることで、ノーベル賞級の学術成果が期待できる。
惑星形成シミュレーション 惑星形成シミュレーション 惑星形成シミュレーションを、従来10年以上かかると考えられていた計算を約1週間で終えることで、ノーベル賞級の学術成果が期待できる。
航空宇宙 実用燃焼の詳細シミュレーションによる燃焼現象の解明と制御 ロケットエンジン燃焼シミュレーション 従来の約50倍の精度のシミュレーションが、約1/6の時間で終了することによる、次世代ロケットエンジン開発における革新。
航空機の飛行シミュレーションによる安全性・環境性の評価と改善 航空機安全性適合検証 従来不可能だった悪天候、晴天乱気流などの自然環境を含めた航空機の飛行シミュレーションが約1週間で可能になることで、航空機安全性研究分野での革命が起こる。
航空宇宙機における賢い飛行制御 航空宇宙機リアルタイム運航制御 従来不可能だった航空宇宙機におけるリアルタイム運航制御の目処が立つことで、航空機安全性研究分野での革命が起こる。
太陽系探査・宇宙環境利用/宇宙空間プラズマ解析 宇宙環境変動予測 地球上では実現不可能だった、宇宙環境の仮想実験が実現できることで、
物質・材料 触媒設計シミュレーション 触媒設計シミュレーション 従来の約1000倍の精度で、触媒反応に関わる材料設計が可能になることで、ナノ素材開発が劇的に進む。
光励起反応シミュレーション 超高速光スイッチ設計等 従来は全く不可能だった10兆分の1秒スケールで動作する超高速光スイッチに使われる材料の解析を約2ヶ月で行うことができる。
強相関電子系バーチャル物質設計シミュレーション 電子相互作用を考慮したデバイスシミュレーション 従来と比べて、電子相互作用を考慮したシミュレーションが約1万倍の精度で実現できることで、磁性、超伝導などの新材料開発での革命を起こす。
強相関ナノ物質の輸送現象シミュレーション 強相関ナノ物質の輸送現象シミュレーション 従来の約1000倍の精度で、ナノ材料設計が可能になることで、新素材開発が劇的に進む。
原子力 熱流動直接解析シミュレーション 熱流動直接解析シミュレーション 従来より約500倍の精度の解析による炉心熱設計が実現できることで、原子炉開発の効率化が可能となる。
核融合プラズマの微視的乱流シミュレーション 核融合プラズマの微視的乱流シミュレーション 従来より1000倍以上の精度で核燃焼制御の解析が実現できることで、原子炉開発の効率化が可能となる。
高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 従来と比べて、相互作用のシミュレーションが約1万倍の精度で現実的な時間で実現できることで、先進的な次世代原子炉設計をシミュレーションのみで可能にする。
地球環境 大気海洋結合シミュレーション 全球雲解像シミュレーション 従来は1キロメートルメッシュのアジア域の解析だけが可能であったが、キロメートルメッシュの全球解析が可能になることで、気象研究での革命を起こす。
非静力・大気海洋陸面雲物理結合を考慮した、全球−領域−局所連結階層シミュレーション 台風進路、集中豪雨予測 1キロメートル四方以下での集中豪雨予測、10メートル四方以下の都市部のヒートアイランド現象予測による各種被害軽減対策における革新。
エルニーニョ1年予測 エルニーニョ1年予測 エルニーニョの1年予測によって、冷夏、暖冬などが高精度で予測できることで、兆オーダーの経済効果が期待できる。
防災 数値震動台 建築物震動耐性シミュレーション 3次元震動破壊実験装置では実験できないスケ−ルの建物の震動耐性模擬実験が可能になる。
地震動予測シミュレーション 地震被害予測 高精度な地震動伝播予測を行えることで、構造物倒壊予測による災害軽減が可能となる。
溶岩流シミュレーション 溶岩流による被害予測 数分でマグマの動きや噴火機構を考慮した解析が可能となることで、溶岩流に対する住民避難路が確保される。
火山噴火シミュレーション 火山噴火シミュレーション 火山噴火の噴煙拡大・火山灰分布の1000キロメートル四方の被害予測と影響評価が可能になる。
オイルスピル(重油拡散)シミュレーション 重油拡散シミュレーション 従来不可能だった気象データ、海岸地形データを取り込んだ重油拡散シミュレーションが実現できることで、日本近海の海域における詳細な被害予測が可能になる。
津波防災シミュレーション 津波防災シミュレーション 浸水防災だけでなく、従来は不可能だった2次的な災害までを含めた統合的な津波被害軽減策を作成できる。
流体(基礎科学) 一様等方性乱流シミュレーション 乱流シミュレーション 集中豪雨・津波・大気汚染伝播等の解析が、地球シミュレータの約100倍の精度で可能になる。
宇宙プラズマ・核融合プラズマ 宇宙プラズマ・核融合プラズマ オーロラ発光と炉心プラズマ崩壊の解明 核融合プラズマ制御等の詳細な解析が可能になる。
ものつくり VCAD 仮想モックアップによる設計の大幅効率化 従来の約1000倍の精度の解析が可能になることで、試作が不要になり、ものつくりの現場における革命が起きる。
CAE 自動車衝突解析自動化 従来、人手で数ヶ月かかっていたモデル作成が、自動車衝突解析自動化で解析を含めて約1日で終えることで、自動車開発で革命を起こす。

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