(平成22年8月現在)
1.課題名 次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発 |
2.評価結果 (1)課題の進捗状況 必要性、有効性の観点からは、ここ5年間の着実な研究推進により、次世代スーパーコンピュータの最大限の利用や、生命科学の飛躍知につながる芽が確実に育ってきており、前回の中間評価(平成20年度)を踏まえた「ハードウェア完成に連携した研究開発計画」が着実に遂行され、次世代スーパーコンピュータの性能を充分に発揮するソフトウェアが複数開発されつつある。 例えば、
は、優れたソフトウェアである。分子スケール内では、粗視化ソフトCafeMol、タンパク質波動計算ソフトウェアProteinDF、QM/MM/CG連成計算ソフトウェアPlatypusもこれらに準ずる優れたソフトウェアである。 次世代スーパーコンピュータへの実装に向け資源を集中し、研究を推進することを期待したい。 また、個別研究課題をつなぐテーマを設定することにより、個々の研究課題の間の連携を促進しており、また、社会への応用に向けて個別企業との連携を開始している課題がある等、概ね順調に進捗している。 一方で、このような成果は出ているが、ライフサイエンスに特化したモデリング技術の確立や新規アルゴリズムの開発といった計算科学の面において、大きな進展は見られなかった。また、生命科学に対してどこまで強いインパクトがあるか、生命科学の進化に向けての一貫した意志やコンセプトがあるのか、という観点からは物足りなさが残った。 効率性の観点からは、平成20年度の中間評価を踏まえて、ソフトウェアの優先順位づけ、各チームの研究の進捗状況や計算機科学としての重要度等の精査、それに基づく研究課題や取組を再編成、チーム内・チーム間のミーティング開催、生命科学面を強化するためのコーディネーターの配置など、運営改善の努力はなされているが、チーム間連携の弱さ、多すぎる研究課題など課題は残されている。また、運営の透明性・客観性について、未だ十分確保されているとは言いがたい面もあり、さらなる強化が必要であると考えられる。 (2)各観点の再評価と今後の研究開発の方向性 必要性と有効性の観点からは、平成20年度の中間評価において強く指摘されていた分子-細胞-臓器といったスケール間を連携・統合する取組、特に分子スケールと細胞スケールの連動については、いまだ目処がたっていないように見受けられる。スケール間統合の計算科学的な可能性と限界についてもう一度整理し、推進を図る必要がある。 数年先に生命科学がどうなっているかの洞察を再度加えて、発展性のある個別研究課題を選択し資源の集中をする、あるいは他の生命科学プロジェクトと連携させる等により、これまでの成果がさらに推進されることを期待する。 例えば、
等が対象となる。 さらに、社会応用が期待できる研究課題、例えば、
等については、個別集中的に推進して、次世代スーパーコンピュータの社会応用への具体的な姿を早期に例示されることが望まれる。 今後の方向性としては、プロジェクト全体を俯瞰して、計算科学として、生命科学として、あるいは両方の意味で、何が大事であり、何を伸ばすべきかについて、もう一度整理し見直して、進むべきであると考えられる。 特に、「真に次世代につながるものは何か」という視点でのメリハリをつけた整理・見直しの取組を進めるべきである。 (3)その他 最後に、本プロジェクトは、次世代スーパーコンピュータ戦略プログラムと関連がある。本プロジェクトの範囲内のみで考えるのではなく、次世代スーパーコンピュータ戦略プログラムとの切り分けと連携を考慮し、効果的、効率的な体制検討を行っていただきたい。 |
遠藤、鈴木
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-- 登録:平成22年10月 --