情報科学技術委員会(第99回) 議事録

1.日時

平成29年7月26日(水曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省3階1特別会議室

〒100-8959東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 今後の情報科学技術分野における文部科学省の研究開発課題に関する検討
  2. その他

4.出席者

委員

北川主査、瀧主査代理、有村委員、伊藤委員、上田委員、喜連川委員、栗原委員、高安委員、辻委員、八木委員、樋口委員、安浦委員、矢野委員

文部科学省

関研究振興局長、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、原参事官(情報担当)、石田情報科学技術推進官、澤田参事官補佐、邉田専門官

5.議事録

【北川主査】  それでは、定刻となりましたので、科学技術・学術審議会、研究計画・評価分科会、情報科学技術委員会の第99回を開催いたします。
 本日は、國井委員、土井委員から御欠席の連絡を頂いております。また、上田委員は、少し遅れるという連絡を頂いております。それから、喜連川委員及び栗原委員は、途中で御退席されるということでございます。
 はじめに、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【邉田専門官】  それでは御説明させていただきます。
 紙資料、机上資料集の上にダブルクリップで束をとめさせていただいております。まず一番上が座席表、その下が本日の議事次第となってございます。
 その下、横版の資料でございますけれども、資料1-1、今後の情報科学技術分野の研究開発戦略の検討について。その下、資料1-2、これは裏表の1枚紙で、平成30年度から新たに文部科学省として取組むべき課題について。
 その下、資料2、こちらも横版の資料でございますけれども、八木委員から御提出いただいた資料でございます。
 その下、同じく横版の資料3でございますけれども、こちらは安浦委員から御提出の資料になってございます。
 その下からは参考資料でございまして、参考資料1が委員名簿、参考資料2以降の参考資料6まで、前回の平成29年6月6日の当委員会において御審議いただきました、運営規則であるとか公開の手続、当面の審議事項、研究評価計画並びに研究開発計画をお配りさせていただいているところでございます。
 こちらにつきまして、落丁又は欠落等々がございましたら事務局までお申し付けいただければと思います。
【北川主査】  ありがとうございました。
 それでは、これより議題1の「今後の情報科学技術分野の研究開発戦略の検討について」に入らせていただきます。
 新たな情報科学技術の研究開発施策の検討を進めるに当たっての方向性の検討ということで御議論いただきたいと考えておりますけれども、まず事務局から説明をお願いいたします。
【邉田専門官】  それでは、引き続きまして御説明をさせていただきます。まず資料1-1、横版の資料をお手元に御用意いただけますか。
 1枚おめくりいただきまして3ページ目から、未来投資戦略2017ということで、前回、6月6日に実施したときはまだ閣議決定なされていない中で、素案をお示しさせていただいて御説明をしたところでございます。こちらについては、その後、6月9日に閣議決定ということで、前回と少し重複するところではございますが、今後の議論のきっかけとして簡単に御説明させていただければと思います。
 未来投資戦略2017の概要ですが、もともと政府としてできるはずがないと思われてきた改革の実現を縷々してきたところですけれども、中長期的には伸び悩みをしているというところでございます。それを打開する鍵としてSociety5.0の実現が必要だろうと。それもスピーディーに対応していかないと、日本として先導していけないというところで戦略を立てているところでございます。
 ローマ数字の1、Society5.0に向けた戦略分野というところでございまして、コンセプトは、我が国の強みに集中投資をすると。ものづくりの強さや社会課題の先進性・大きさ、これは高齢化等々の中で、リアルデータの取得・活用可能性というところにあるというところでございまして、以下5つの戦略分野を立てているところでございます。
 1ポツが健康寿命の延伸、2ポツ、移動革命の実現、3ポツ、サプライチェーンの次世代化、4ポツ、快適なインフラ・まちづくり、5ポツ、FinTechというところで、こういう部分について集中投資をしていきましょうという政府の方針というところでございます。
 もう1枚おめくりいただきまして4ページ目でございます。ローマ数字の2、Society5.0に向けた横割課題というところでございまして、大きく分けて、ローマ数字の2は横割りの課題ですけれども、AとBに分かれております。それぞれ、価値の源泉の創出と価値の最大化を後押しする仕組みということでございます。Bについては、価値の最大化を後押しするためにどういう規制とか制度を作っていかないといけないとか、改革していかないといけないかというところでございまして、本委員会でより強く意識しないといけないのは、Aの価値の源泉の創出というところかと思います。
 特に、2ポツ、教育・人材力の抜本強化というところがうたわれていまして、それを意識しながら、3ポツ、イノベーション・ベンチャーを生み出す好循環システムということで、「学」の中核機能強化や強い分野への集中投資・ベンチャー支援を行っていかないといけないと。とりわけ今課題と思っているところとしては、世界トップレベルの大学・研究開発法人の研究拠点へのリソースの集中投下というところがうたわれておりまして、ローマ数字1の戦略分野も念頭に置きながらしっかりとリソースを集中投下して投資を拡大していくと、そういうような戦略を政府全体として持っているところでございます。
 5ページ目でございます。ローマ数字3、4とございますが、こちらについては後で御確認いただければというところでございます。
 引き続きまして6ページ目、これから縦になってしまうのですが、こちらも6月9日に取りまとめというところでございまして、経済財政運営と改革の基本方針2017年度版ということで、これは元来骨太の方針と呼んでいるところでございますけれども、こちらについても、成長戦略をしっかりと進めていかないといけないという観点から政府の方針としてしっかりと反映されておりまして、8ページ目をお開きいただきますと、第2章、成長と分配の好循環の拡大と中長期の発展に向けた重点課題、その2ポツとして成長戦略の加速等とうたわれている(1)Society5.0の実現を目指した取組というところで、政策資源を集中的に投下して、価値の源泉の創出に向けた共通基盤の強化に取組むというところが政府方針として決まっているというところでございます。
 引き続きまして、少しページは飛びますが、14ページ目をお開きいただけますでしょうか。そういうリソースの集中投下に深く関わるところと思いますけれども、前回も少し触れさせていただいたのですが、官民研究開発投資拡大プログラム、PRISMと呼ばれるものでございますけれども、こちらが内閣府、CSTIの方で考えられているものでございまして、こちらについても簡単に触れさせていただこうと思います。
 14ページ目、下ですけれども、CSTIの下に経済社会・科学技術イノベーション活性化委員会を設置して、12月に最終報告が取りまとめられたというところで、それを受けまして、15ページ目、アクション1、予算編成プロセス改革というところで、ターゲット領域を設定して、それは民間投資誘発効果の高いターゲット領域を設定して、CSTIが司令塔としてしっかりとSIPマネジメントを各省に拡大しながら、各省の施策自体も民間投資誘発効果の高い分野へ誘導していこうと、そういうふうな予算編成プロセス改革をうたっております。
 そのターゲット領域でございますけれども、4月21日のCSTI本会議でターゲット領域が決まってございまして、1枚おめくりいただきまして16ページ目、平成30年度に設定するもの、又は平成30年度以降に設定することが望ましいものが決まってございます。その中に、平成30年度、3領域、革新的サイバー空間基盤技術、フィジカル空間基盤技術、建設・インフラ維持管理/防災/減災という3領域が、領域統括の下、運営委員会、その上にPRISMのガバニングボードを置いて、各省が連携しながら進めていくというところでございます。そのターゲット領域検討に向けた全体俯瞰図が16ページの下になります。
 17ページ目でございますが、そのPRISMに係るスケジュールということで、今は、各省庁における対象施策に係る検討がなされておりまして、8月に対象施策の提案をさせていただいて、予算要求等々、予算のプロセスを経て、3月、各省庁から内閣府に対する施策への推進費の配分申請を行い、来年度、6月ぐらいから予算の移し替えというものが順次行われていくという流れになってございます。
 マネジメント体制は以下のとおり、ガバニングボードを置いて、領域ごとに運営委員会を置いて、それを束ねる人が座長として領域統括としてこの事業を進めていくという建付けになってございます。
 資料1-1、19ページ目、20ページ目につきましては、特筆すべき政府関連文書の記載についてというところでございまして、特に20ページ目、最後のページです。お開きいただきますと、本日我々が考えている課題を提起させていただきまして、御議論いただきたいところというものに関連しているところでございますけれども、未来投資戦略2017、これは6月9日の閣議決定ですけれども、先ほども申しましたとおり、イノベーション・ベンチャーを生み出す好循環システム、これは重点投資によって行われると。読み上げさせていただきますと、世界トップレベルの大学・研究開発法人の研究拠点がベンチャーを含む産業界と連携してイノベーションを生み出せるよう、来年度中に少数の拠点に絞りリソースを集中投下するとうたわれているところでございます。
 その下、参考として書かせていただいております。安倍総理の発言内容というところでございまして、未来投資会議での発言内容ですが、3月には世界トップレベルの大学研究拠点が産業界と連携してイノベーションを生み出せるよう、2018年度中、こちらもそうですね、来年度ということですけれども、2か所程度に絞ってリソースを集中投下等々の政府動向、政策動向となっているところでございます。
 引き続きまして、資料1-2、1枚紙で裏表になってございます。お手元に御用意いただけますか。
 これらの政府の動向等々を踏まえまして、平成30年度、2018年度から新たに文部科学省として取組むべき課題というのはこういうことがあるのではないかというところをお示しさせていただいているものでございます。
 まず、1つ目の丸ですけれども、集中投資、集中投下していくというところでございますけれども、トップレベルの大学の研究拠点の形成のために集中投下していくというところですけれども、現在、様々な競争的資金による研究経費や拠点形成費、既に各府省から措置されている。我が国における世界トップレベルの研究が様々な分野で実施されていて、Society5.0を目指すためのピースとなるような良い技術というものがどんどん生まれてきているところかもしれない。しかしながら、それら様々なプロジェクトを連携させて相乗的に効果を生み出していくということが不可欠なのだけれども、その連携は遅滞しているのではないかというような課題があると考えているところでございます。
 また、その下の丸、未来投資会議における安倍総理の発言云々ということですけれども、先ほど資料1-1で御説明させていただいた政府の戦略の動向等々を受けて、こうした1つ上の丸のような状況を打開していくべく、大学組織の長のリーダーシップの下で、社会実装までを視野に入れた、それも各府省、出口の府省のプロジェクトも含めて、各府省の様々なプロジェクトの連携を促進させていく。その上で産業界とも連携してイノベーションを連続的に生み出していくための強力な拠点形成。集中投資をして強力な拠点形成をするための支援が必要ではないかと考えているところでございます。
 支援の一例は、その中でどういうふうにしていこうかというところの簡単な頭出しでございますが、未来投資会議でも言及されているライフサイエンス、ものづくり、こういう強みの分野で産業界からの投資を、投資誘発効果が高いところについて、自治体等とも幅広く連携して社会実装を志向する拠点形成の経費に充てていってはどうかと。その経費の内訳というか、研究マネジメント人材が当然必要でしょうし、ピースとピースをつなげていくための人材の確保や、研究環境の整備そのものもしていかなければいけないだろうと考えているところでございます。
 このような課題について、本日はいろいろと御意見、御説明もいただきながら御議論いただきまして、8月17日に予定しておりますけれども、次回の情報科学技術委員会で30年度の新規施策について御議論いただくという流れで考えているところでございます。
【北川主査】  ありがとうございました。
 それでは、これから、前回、今回と説明のありました政府動向や、ただいま提起されました課題への対応を考えていきたいと思いますが、それに当たりまして、大学のマネジメントに携わられているというお立場から、現状としてどういう取組があるか、何が支障となっているか、また考えられる支援のメニューなどについて、八木委員から資料2、安浦委員から資料3を御提出いただいております。まず、これらについて御説明いただいて、その後で御議論いただきたいと思います。
 なお、八木委員及び安浦委員の説明が終わった後にまとめて議論をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 まず、八木委員からお願いします。
【八木委員】  よろしくお願いいたします。
 私の資料は、超スマート社会実現における大学の役割と書いておりますが、一言で言えば、大学の役割というのは、未来の夢社会というものをこの社会とともに作る場であり、また社会に見せる場であり、また、未来を作る人々を社会に送り出していく場であると考えております。
 では、1ページめくってもらいますと、超スマート社会というのはどういうものかというのを考えますと、一般的に言われていることかと思いますが、現実空間とサイバー空間とをつなぐ、現実空間で生まれてくる様々な情報がサイバー空間を通して、またそれが現実空間のいろいろなサービスとかに返ってくるようなサイクルのある世界、これが1つ超スマート社会、Society5.0の概念的な部分だと思います。
 その中で超スマート社会というのは、その次のページにございますが、必要なもの・サービスを、必要な人に、必要なときに、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられるという定義付けがされているわけです。これをやっていこうとしたときに科学技術がイノベーションを起こして、実際にSociety5.0を生み出すのだろうという概念です。
 Society5.0というものを考えていく上で重要なことは、その次のページにございますけれども、未来像というのを我々は常に描いて、その未来像に対してどうあるかということを考える必要があるのではないか。例えば、これは未来のリビングルームです。ここで暮らす人は、その人がどんなものが快適なのか、不快なのかというようなこともシステムが理解し、そしてそれをユーザーに返すことでリラックスできる空間、より生活しやすいような空間に変えてくるというような事例です。リビングだけでなく、一番進んでいるという意味では、自動運転とかはまさに進んでいる世界であろうかと思います。また、病院とかにおきましても、病院がネットワークでつながって、いろいろな情報を介して新たな医療が生まれる。また、高齢者の心のケアとかを将来はロボットがやっていくような社会も出てくるだろうと。様々な夢社会というものがあろうかと思います。そういった社会というものをきっちりと描いた中でSociety5.0のまず実現というものを考えていかなければいけない。
 では、こういうSociety5.0というものは、先ほど言いました現実空間とサイバー空間の中で情報がやりとりされるという意味で、そのデータというものが非常に大きくなってきます。その次のスライドにございますが、これは国立天文台の例ですけれども、サイエンスの分野におきましても、例えば、すばるから1日2.5テラバイトのデータがやってくる。アルマ望遠鏡からは500ギガバイトのデータがやってくるというぐあいに、大量のデータが、つまりそれをまた世界の研究者が利用するというような流れを作っていて、データが1つの財産となって研究開発が行われるというのが実態かと思います。これは別に天文だけではなくて、例えば、生命科学においても、最近ですと全細胞の解析とかをいっぱいやろうと思えば1テラバイトぐらいのデータが要ると言われております。大量のデータというものが生まれてきて、そのデータに基づいた解析というものが新しいサイエンスを生み出すということになります。
 そんな中、これは多分どこの大学も同じような思いだと思うのですが、我々のところでは、データビリティサイエンスということをうたっています。データというのは、単にデータを分析するだけではなくて、重要なことは、出てきた大量のデータをいかに持続可能かつ責任ある形で活用するかということに尽きるのだと思うんですね。そこに書いてあるsustainable、responsible、この2つのことが非常に重要なポイントで、これはドイツのハノーバーで毎年開催されるCeBitというIT関係のエキシビションでDatabilityという言葉が使われましたけれども、データの利活用をいかに考えるかということが非常に重要だと。
 このこと自体は、学問分野を限るわけではないわけです。その次のスライドにございますように、我々の機構、我々のところは機構を作りましたけれども、ヘルスサイエンス、バイオサイエンス、認知能サイエンス、人間情報デザイン、システムデザイン、機能デザイン等々書いておりますように、ありとあらゆる分野においてデータというものが社会の変革を生み出す要素になってきている。その核にあるのがAIであり、ビッグデータ解析、また情報システムというものなのだろうと思います。今まさにこういうデータを活用して社会を変えていくということがSociety5.0というものの実現において非常に重要な役割をする。
 その次のページにございますのは、では、そういうことを実現しようとすればどういうことを現実にやらないといけないのか。1つは、全ての学問分野でデータが活用されるような、データ駆動型の研究が推進されるような社会。そうすると、研究者のマッチングとかコーディネートということが非常に重要になってきますし、分野固有の問題もありますので、そういうところでの研究設計ができるようなマネージング力のある人たちが非常に重要になってくる。
 それから、2つ目には、実際世の中、いろいろな企業の方々とかもデータをいろいろな形で活用されています。ただ、それはその1社だけで使われているケースが多いわけです。日本全体が大きな活力を生み出すためには、そのデータがある程度広く日本の企業で活用されて社会のイノベーションを起こしていくということが非常に重要で、その中で大学というのは、非常に大きな公共性を持ちながらデータというものをハンドリングできる場なのだろうと思っております。
 その中で、そこで書いておりますのは、例えば、1つは、キャンパスというものをスマートシティと想定して、いろいろな実証実験をやって行くとか、それは実証の場としての大学の役割があるでしょうし、それからもう一つは、個々の場所では1個のデータで大きいかもしれないのですが、データもいろいろなもののデータが連結したときに初めて価値を生み出すというのもあろうかと思います。大学はいろいろな分野の、生物学のデータ、医学であれば臨床データ、例えば医学分野で言えば。そういったデータを連結した形で新たな付加価値のあるデータを作り出す可能性を持っているわけです。実際にそういうことに向かおうとしていると思います。こういうものがイノベーションを起こしていく上で大きな鍵になる。もちろん大学ですから人を生み出すという意味で、そのデータを駆動できるような人材の育成というところが大学におけるミッションだと思います。
 その次のページにありますのは、これは1つの事例で、大学を1つの実証フィールドと考えて、これは言ったら日本のある街だというぐあいに考えたときに、大学というものを活用して、未来の技術、イノベーションが起きるぐらいですから、そこに潜んでいる様々な問題があるわけです。正直な話、そこには個人情報の問題とかプライバシーの問題もあります。そこで暮らす人々との会話の中で社会実装の在り方とかも考えていかなければいけない。その意味も含めまして、大学というものを活用して、そこに学理としてきっちりと作り上げてやっていく必要があろうと。とはいえ、それが大学個体でやっていたのでは社会につながらない。そこでつないでいく上では、産業界との連携というのが非常に重要になってくる。
 1ページめくってもらいますと、その2ページ先になりますけれども、大阪大学ですとメーカーとの大型の連携をやっています。この連携において一番重要なのは、従来型の出口をきっちり設定した共同研究ではなくて、将来どういうものをやるべきかということをともに考えていくという、共創という考え方が入っております。HowからWhatというぐあいに私どもの西尾総長はよく申し上げますけれども、その部分が非常に重要だろうと思っております。そういった中で産業界とも共創しながら人材を育成していくということが重要であるという概念。
 あと、社会に実装していこうと思いますと、産業界だけではだめなわけで、その次のスライドにございますのが1つの事例ですが、大阪の地におきましては、うめきた2期で産学官民の共創で再開発をやるというような今議論がございます。そういった意味で、地域社会との連携という中を見据えていく必要もあるだろうと思っています。
 その次のスライドに行っていただきますと、今言ったようなことをやっていこうと思いますと、かなりいろいろなステークホルダー、いろいろな人が関わってくるわけです。研究者単位でとか1企業の単位で動くような話ではなくて、大学内でSociety5.0を社会実装し、研究開発の成果を統合して新たなイノベーションを作っていこうと思うと、学長のリーダーシップの下に大学全体が推進できる体制を作る必要があります。そして、先ほども申し上げましたが、我々が体験したことのないような社会というものを生み出す可能性があるわけです。社会導入をスムーズにそういうものを進めるということを考えますと、一旦その実証の場として大学のキャンパスを活用し、いろいろな問題を学外のいろいろなステークホルダーの方々とともに共創しながら解決していくというのが非常に良いのでははいかと私は思っている次第でございます。
 では、そういうことをしようと思いますと、最後のページになってきますが、大学に欠けている人材というのはいろいろございます。今言いましたものをつなぐ、いろいろな観点でのつなぐコーディネート人材。それから、大量のデータをハンドリングしようとしていきますとそのデータを扱える人材。また、実証フィールドをやっていこうと思うとこれもまた物すごいエネルギーが要ります。さらに、もちろん実証環境というものを整備するようなことも必要ですし、ついついどちらかというとスマートシティのようなものが浮かんでしまいますが、それだけではなくて、例えば生命科学とか材料科学におきましても、何か1つ大きなゴールを見つけたときに、学内の点在する設備等をワンルーフ化したり共有化して、強力に推進できるような体制を整えていくということも非常に重要ではないかと思っております。もちろんそれに伴って、最後にございますが、産学共創活動の高度化を行うための独立した法人とかを設置しないと現実には動きにくいのではないかと思う次第で、簡単ではございますが、私の話とさせてもらいます。
【北川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして安浦委員から御説明をお願いいたします。
【安浦委員】  資料は、Society5.0と大学の活用と書いた資料でございます。
 Society5.0を実現するためのネックはという最初の次の1ページ目ですが、とにかくこれは、Societyというのは社会ですね。ところが、その新しいアイデアを実験したり実証したりする社会自身がないんです。だからそれを作ってやることがまず必要である。実社会は、本当に我々が住んでいる社会は、安全を配慮するための規制や、中には岩盤と言われるものもあるかもしれませんが、規制とか、既存制度に縛られていて、なかなかそこにダイレクトに持っていくというのが非常に難しい。一方で、そういう社会を作るときに、その新しい技術と社会を作るのは、次の世代、それを使うときに現役になる世代と一緒に作っていくのが一番良いだろうと。自由な空間が必要である。これはまさに大学ですね。
 大学がまさにそういう位置付けにあるのではないかということで2ページ目でございます。大学をSociety5.0を可視化する舞台にする。先ほどの八木先生のお話にもありました。大学のミッションというのは、教育、研究、大学経営、社会貢献もありますが、基本的にこの3つでございます。
 教育というのは、実は医療、福祉と並ぶ2大社会サービスなのです。これをICTを徹底的に活用して教育サービスの革命を起こす、これがSociety5.0の一番近道であるし、最終ゴールにもなり得る問題だと思います。Society5.0の社会像を教育を通して次世代が共有する、これが非常に重要だと思うわけです。医学部は昔から大学に病院を持っています。現場を持っています。ところが、工学にしろ、我々がやっている情報科学にしろ、現場を持たないのです。大学を現場にすべきだということです。そのファーストミッションである教育をそのアプライのターゲットにする。残念ながらCSTIの絵の中には教育というのが描いてないんですね。多分儲からないからだろうと思いますけれども、排除されているんですけれども。私は教育というものを入れる必要があると思います。
 研究の立場は、これは八木先生のお話にもありましたように、データ科学を中心としたSociety5.0の基盤になる技術というのは新しい産業の基盤であって、いろいろな分野の研究がこれにのっとって行われていく。それから、将来的には、日本の人口減少を考えると研究機能というものを産業化して、それで食っていくという考え方も戦略として持つべきであろうということでございます。
 最後、大学経営ですけれども、教育も産業ですね。だから産業という捉え方をすべきで、先ほどの最初に御説明のあった資料、未来投資戦略の最初のところに、できるはずがないと思われてきた改革の実現というのが書いてありますけれども、最もそれが遅れているのが大学ではないかと、大学改革ではないかと言われていますが、それを逆にそこで実現すれば、本当にSociety5.0というもののインパクトというのは出てくるはずです。大学を実験場として産業界に開放するべきであると考えました。順番にその3つのポイントでお話ししていきます。
 次の3ページ目ですが、教育へのICTの活用。これは、実は、文部科学省さんも初等中等教育に情報パッドを導入するということを、あるいは電子教科書を導入するということを言われていますけれども、これは、実は、考えてみれば、人類が過去数千年にわたって行ってきた書物と対面型の教育による知識の継承というものを、少なくとも2000年ぶりに人類は変えようとしているのです。それくらいの大きな変化が起ころうとしていると、そういう認識で捉える必要があると思います。
 4ページ目からは、少しうちの方でやっています実際の教育の情報化の例ですけれども、ビッグデータを教育で集めるということをやっています。新入生は全員パソコンを買わせます。自分のパソコンを持ってくると。今、4年生まで全員持っております。それで最初にその電子教科書の何ページのどこをいつ読んだか、何分開いていたか、あるいはどこにアンダーラインを引いたかというデータを集めますよというのにアグリーのサインをさせます。18歳ですから選挙権を持っているので、親の承認は要らないでしょうということで、それでサインをとって、1日20万件のログが毎日上がってきております。現在で3,500万件、この6月の段階で集まっております。こういった学習データと、その学生のパフォーマンスというのが全部蓄積しているわけです。そこから、こういう学び方をする学生はこういう落とし穴に陥りやすいとか、こういうふうに伸びやすいとか、そういうデータを取り出しては学生にフィードバックしてあげる。あるいは、教材を良くするのにそのデータを使っていくということをやっております。
 次の5ページ目ですけれども、例えばそういうことを情報工学と今までの教育学と認知科学、脳科学のその接点として、例えば教育データ科学というような新しい学問をきちっと作って、これが次の時代の教育産業の基盤になる。あるいは、AI時代の知識社会の基盤になる考え方を生み出すものではないかと。教育というのは、今まで全て教師の主観や経験に基づいて行われてきていたわけです。それをデータに基づいて、データ分析に基づいていろいろなディシジョンを増やして、プロセスを全部チェックして、そして大量のデータのログからより良い教育というものを生み出していく。こういうことを大学からだったらできるわけです。
 6ページにありますように、まず大学でやって、学生、教員のビヘイビアをよくしていく、そういう技術を作って、これを初等中等教育あるいは社会人教育、生涯教育、こういうものに適用していく。この技術は世界に売れる技術になっていくと。これは産業として成り立ち得る技術にしていくその入り口ではないかと思います。
 次、7ページ目でございます。研究の方は、これは先ほどの八木先生のデータビリティの話と非常に近い話を書いております。全ての産業、1次産業から3次産業まで、これがデータの利用によって大きく変わろうとしているわけです。この状況をしっかり理解して、オープンなデータの提供の仕組みと、研究の内容や個人情報の保護を両立させるためのセキュアな研究開発基盤、研究開発をする空間というものを作っていく。これはどの企業でも必要になってきますし、世界中でも必要になってくる、そういう仕掛けだと思います。これを日本の大学から作っていくべきだろう。
 データ科学がいろいろな学問分野に関連するというのが8ページ。これは先ほどの八木先生のお話と同じです。
 最後が経営です。大学経営、非常に遅れております。まだ国立大学時代のやり方が尾を引いているというのが現場での実感でございます。そこを思い切ってAIとかIoTを導入したりして組織経営を新しくする。そういう新しい社会制度の適用空間だと考えていろいろな技術を、これは企業がもう一緒に入ってきてやって良いと思うんです。大学が自分で考えるだけではなくて、企業と一緒にやって良いと思います。
 それから、情報基盤を共通化していく。NIIさんがSINETとかいろいろなデータ共有の基盤をお作りいただいていますけれども、そういったものをどんどん新しいものに大学の協力で作り変えていく。そして、ポイントとしては、シェアリングをすることによって大学の1つの大きな問題である財政的な弱み、これをシェアリングによって克服してみせる、これが非常に重要なポイントだと思います。
 それからセキュリティの問題が当然あります。学生も含めてセキュリティの教育をしっかりやっておけば、これは将来的に国民全体のリテラシーとなって、セキュリティの問題はかなり改善されると思います。うちでも一人一人の学生が全部エンドポイントのセキュリティソフトを自分のパソコンに入れることを義務化しています。無償で提供しています。そういうことをやることで、自分で毎日それを更新するという作業をやることを意識付けるということがセキュリティ教育の一番の基本になってくると考えております。
 こういうことをやって初等中等教育に展開し、さらには自治体とか政府機関に展開していくという、そういう道筋があるのではないかと思います。
 最後、何をやるべきかというのは、大学は、産学連携による社会改革のための研究と教育の場であるという意識を大学が持つこと。大学キャンパスを新しい技術の実験場として開放する。キャンパス内での厳しい技術競争。産業界は複数のものが入ってきて、大学の中で競争してもらえば良いんです。第1次競争をもう大学のキャンパスの中でやらせる。これが非常に実社会に近いことができる。1社に決めてそこでやっていたら、それは甘えた技術開発になるのです。競争させたら良いと思っています。
 産業界は、大体がキャンパスを特区と考えて活用するのだと。自由な発想で、共同研究だけではない新しい産学協同という概念を打ち立てる必要があると思います。
 政府は、その特区、Society5.0特区という考え方で大学を指定して、省庁横断型の投資をそこに投げ掛けていく。あるいは、これはなかなかできないかもしれませんけれども、研究資金と教育補助、あるいは運営支援の補助金の区別を撤廃していただきたいという。これは少し無理難題かもしれません。
 11ページ目、実際うちのキャンパスは、入口にゲートをつけて、自分たちで作ったICカードで入校ができるようにしておりますが、そのキャンパスの内側は、警察から道路交通法における道路性を認めないという一筆をもらいました。私は施設担当理事をやっていますので、私が道路管理者です。私が認可したらいろいろな車を走らせられる。実際、そこに写っていますけれども、これは日産のリーフで、カリフォルニアの公道では走ったことがありますけれども、日本では日産の私有地の外で走ったのは、つい先月ですけれども、うちのキャンパスで走り始めたのが初めてでございます。見ていただくとナンバープレートを持っていません。だからこれはゲートの外に出られないんです。こういうものが普通のバスや車や自転車と一緒に走る、こういう実験ができるわけです。5Gによる路車間通信とか、オンデマンド運行の実験とか、こういうのを今は日産さんとドコモさんとDeNAさんと日本信号、福岡市、こういったところと協力してやっております。私は一生懸命ホンダさんやトヨタさん、あるいはフォルクスワーゲンさんにも一緒に来てここで競争してみませんかということをお願いしているところでございます。
 まとめでございますけれども、Society5.0の変革の実験場としての大学、こういう位置付けで大学を次世代社会そのものであると見ましょうと。これはまさに八木先生がおっしゃったことと同じ発想だと思います。新産業の起点にそれがなり得て、そしてもう1つ大事なのは、国家の重要サービスである教育サービスをこのSociety5.0と一緒に変えていく、これが非常に重要であろうと思います。
 データ科学に基づいた教育・研究を進めていくということで、教育も研究も大学も全て文部科学省の所轄であるので、これは文科省しかできないことで、総務省でも内閣府でもできないことですから、是非文部科学省に頑張ってこういう方向で動いていただければとお願い申し上げます。
【北川主査】  どうもありがとうございました。
 お二人の委員からは、それぞれの大学での取組に関連して、非常に示唆のある御説明をいただきました。どうもありがとうございました。
 それでは、これから、最初に事務局から説明があった資料1-1、1-2及びただいまの八木委員、安浦委員の説明を踏まえて御意見を頂ければと思っておりますが、喜連川委員は途中で退席ということですので、最初にお願いいたします。
【喜連川委員】  諸般の事情で、言いたいことだけ言わせていただくということで申し訳ないのですが。お二人のまさに御発表の、安浦先生、八木先生の共通項は、このデータの部分にあったということで、奇しくもメッセージ感として非常に強いものが頂けたかなと思っております。
 安浦先生から、教育は儲からないから内閣府は入れてないのではないかとおっしゃられたのですが、最近のレポートは、データ市場の中で教育がかなり大きなものになると言っていますので、私も内閣府がもう少し認識をしていただければありがたいと思っていますし、NIIは九州大学の取組を全面的に後方支援を可能なところはして、それをほかの大学でも適用できるようにしたいなと思っています。
 文部科学省の中に対しての御希望ということから申し上げますと、各大学が一番困っておられるのは教育用コンテンツです。これに関しては、随分と文科省の方で御議論がなされているかもしれませんけれども、一定程度やられているという報告も受けているんですけれども、大学の現場サイドからしますと、とにかくその著作権処理がもう全てのヘッドエイクであるということはもう現実で、多分どこも膨大な時間をここに費やしておられる。したがいまして、この問題を今日は安浦先生は御指摘になられなかったんですけれども、文部科学省の中の所掌という意味では、もう少し積極的に情報科学技術委員会の中でも捉えていくことがあると良いのではないかなと思います。
 それから、Society5.0も良いんですけれども、この前外務省に行っていたんですけれども、感覚的に言うと、グローバル観は今SDGsです。ですので、5.0というと、国内の、何ていうんですかね、宗教観を外に出すという、これは重要ですよ、これはすごく重要ですけれども、大学的にはSDGsをどういうフレーバーで入れるかというのは、どこかに入れていただくのが良いのではないかなというのはちょっとしたコメントです。
 それから、最後に一番重要なことは、実は、経団連に行っても何しても、もう本当に人材育成のことを聞かれない日がないぐらいどんどん聞かれるんですけれども、大学にとって全てはプロモーションですね。八木先生もおっしゃられた、安浦先生もおっしゃられた、社会に転換できるところまでとおっしゃって、出口までというお話。しかしながら、我々もそうやっていて感じるんですけれども、100あると正直言って20ぐらいがサイエンティフィックコントリビューションで、80ぐらいというのは相当どろどろしたことをやらなくてはいけないんです。今のその大学の評価制度の中で、この80をプロパーに評価するというフレームワークがなかなかしんどいんです。何が言いたいかというと、大学が、安浦先生、これは大学が今まで頑張ってきましたとおっしゃられているんですけれども、そこの根源を変えないと、このフレームワークは、僕はしんどくなる可能性があって、評価そのもののフレームワークを是非お二つ大学、あるいはまた関連するところで、何かこう、西尾先生とも御相談いただいてしていただけるとありがたいなと。勝手なことを申し上げて失礼いたします。
【北川主査】  ただいまの件でお二人から何か返答とかレスポンスはありますか。
【八木委員】  どうもありがとうございます。
 最後におっしゃられたそのどろどろしたところというのは確かにそうで、実は最後のスライドに書いている人材というのは、大学の中ではなかなか評価されにくい部分もある人材が、実は物すごく重要になってきますし、そういう人たちをきっちり評価できる仕組みを作らないといけない。評価システム自体、今大学の中でも、研究重視型とか、教育重視型とか、ウェイティングできるようなことは大学の中で今検討しておりますので、是非そういう方向が実現できれば良いなと思っておりますので。
【喜連川委員】  だから研究重視型と、教育重視型と、社会実装重視型。
【八木委員】  そうですね、今の中では、大学だと運営という言い方をしてしまっているのですが、そうではない、どちらかというとエンジニアか、研究者に対応するものとして社会実装をエンジニアと呼べばエンジニアなのかもしれないです。
【北川主査】  はい、どうぞ。
【安浦委員】  著作権の問題は、もう非常に重要なことで大変な思いをしておりますので、今回入れなかったのは申し訳ございません。
 それから、SDGsにつきましては、まさに大学の中のいろいろな問題自身がもうSDGsと直接絡んでいる話が幾つでも出てくるわけです。しかも今は留学生が増えていますから、その留学生たちが自分のこととしてそれを発信してくる。それを日本の大学というのは真面目に受けとらなかったんですけれども、今から先は、それを真面目にやっていくことが非常に大きなポイントになってくるのだと思います。
 それから、世界のコントリビューションの話、非常に第三の職種とかURAとかいろいろ言っていますけれども、それを超えて、私は大学に学生としてでもなく、教員としてでもなく、大学を実験場として使うエンジニアとして入ってくる人たちがいっぱいいて、新しい社会の運営者、それは技術だけではなくて、行政マンも来てもらって良いわけですね。そういう中でこういうルールを作るべきだというような話を一緒にやっていく、そのとき、大学はコストの問題を考えないといけないのでいくばくかの代償は頂くという形でキャンパスを社会全体としてソフトも含めてお貸しするという考え方で、一緒に作っていくという考え方も導入せざるを得ないのではないかなと思っています。
【喜連川委員】  最後に一言だけ申し上げますと、大学でソフトウェア工学の専門家というのはほとんどいないんですね。東京大学は1人もおられないんです。何でいないかというと、PMをやったことがない。100万行以上、1,000万行のプログラムをマネージしたことのある人間というのは大学の中にいないんです。これを良しとするかどうかなのです。つまり、安浦先生の今の御発言というのは、外から来てやってくださいというお話なので、だったら大学の先生は、本当に0から1までの全ての体験をして初めてそれが教育できるというか、新しい技術が作れるような気がしまして、僕はその大学のファカルティ全体だと申し上げているのではないんですね。ですけれども、一定程度のファカルティは、そういうことをよくやったねと評価してあげるシステムがあって、そこにジャンプできるような、何かそういうのがあると良いのではないかなと勝手に思った次第です。
【北川主査】  ありがとうございます。
 それでは、ほかの件でも結構ですが、特にお二人の委員のプレゼンに関連したことで。
【伊藤委員】  今のお二人のお二つのプレゼン、非常に興味深いと思い、参考になることだらけだなと思って伺っていたのですけれども、もともと今日の最初のお話、まず邉田さんの方からあったお話で、今後の情報科学技術分野の研究開発戦略の検討についてという枠組みで今の御発表があったということでありまして、その中で、先ほどの最初の概要説明によると、例えば、大学の学の中核機能強化で、強い分野への集中投資、ベンチャー支援というような形で、特に20ページというところになりますと、2018年度中に2か所程度に絞ってリソースを集中というようなことも書いてありますので、何か集中してリソースを、2か所程度に絞ってリソースを集中するということと、それが今ここで議論している、大学としてどう、何ですかね、文科省と一緒に情報科学分野を活性化していくか、何に取組むべきかという関係は、今の御発表ともともとのこのトピックスとの関係をもう一度教えていただけますか。
【北川主査】  それでは事務局からお願いします。
【邉田専門官】  では、簡単にですけれども、問題意識としてこれから集中投資していかないといけない中で、大学をどういうふうに活用していったら良いのか、今どういう状況にあって、何を突破していかないといけないのかというのが問題点の最初のところ。
 お二人のお話にありましたとおり、大学を実証フィールドとしてSociety5.0もプレSociety5.0として場としてショーアップしていく方針というのは、拠点を絞ってリソースを集中投下するその方針としてあり得る形かなと。ただし、効果的・効率的に予算を使っていかないといけないというところもありますので、ほかのプロジェクト、いろいろ走っている中で生まれてくる成果というものを連携させて活用していかないといけない。ばらばらに今強みが生まれてきているのであれば、そこも糾合してそれを使っていってSociety5.0の方向に向けていかないといけないと。そういうような投資をしていきたいと思っているところで、そこの突破の仕方というのは、大学をショーアップのための実証実験フィールドとするためにはどういうような投資をしていかないといけないのか。そういうようなところで是非御議論いただいて、そのメニュー、どういうふうな投資ができるのかをお聞かせいただければというところでございます。
【伊藤委員】  極端な話、大学2か所程度に絞ってということになると限定的すぎるかと思います。ある数に絞ってということになると、そのある数に絞られたところに対して、ほかの大学がどのように協力をして、一緒にこの情報科学技術分野の発展に寄与していけるかということの1つの議論の方向性があるかもしれませんし、ただ単に、そうではなくて、競争していく中でどこかに絞られるんですけれども、情報科学技術分野が結果的に強くなるという、何かその方向性というのがあるような気がしたんですね。もし絞られるということが本当に今後の流れとして避けられないことであれば。そういう意味で先ほどの質問をさせていただきました。
【北川主査】  資料1-1の最後のページにそういう形で書かれているので、それに乗りつつ情報科学技術委員会としてどういう形に持っていくと全体を発展させる形になるか、そこを御議論いただければ良いのではないかなと考えますが。
【伊藤委員】  それでしたら非常に分かりやすいです。そういうことでよろしいのしょうか。結構です。
【北川主査】  それではほかの点でも結構です。
【有村委員】  質問をよろしいでしょうか。
【北川主査】  はい。
【有村委員】  北海道大学の有村です。八木先生からの持続的なデータ管理の必要性のお話と、安浦先生からの社会改革の実験場としての大学の活用は興味深い提案だと思います。最初の質問ですが、現代の情報技術の役割として、先端科学技術として大きな単一のデータを扱うだけでなく、社会のさまざまな分野における多数の小さな事象や情報をつなげる「のり」というか、汎用性のある道具としての情報の役割が広く認識されてきています。これに関して、情報科学技術支援において、単一の第プロジェクトの支援だけでなく、このような社会の多様な事象の「のり」としての情報技術の研究開発をどのように支援していけば良いかについてお伺いしたいと思います。資料1-1の16ページの図でいうと、例えばオリンピックにおける情報支援では観光客の誘致や、交通、宿泊など、ばらばらで見えない多数の事象や対象をつなげ、見えるようにした上で、最適化や効率化するような情報技術への要求があると思いますが、このように異なる分野を横断して繋げるような研究推進は支援が難しいと思います。この点についてどのような方策があるかを教えていただきたい。
 もう一つは、SDGs (Sustainable Development Goals) についての質問です。SDGsをすすめているUNDPのホームページをみると、POVERTY, ZERO HUNGER, GOODHEALTH AND WELL-BEINGなど、それぞれ異なった目標があげられていて、単一の高度な「強い情報技術」によって単独で解決するのは難しそうに見えます。その一方で、多数の人がかかわる草の根的な活動を持続させるには、人やモノやデータをつなぐ「のり」として情報技術は欠かせない道具の一つになると想像できます。このような、いわば「弱い情報」の役割というのをどう支援するかについて、先ほどの八木先生と安浦先生の話にも関連すると思うのですが、お考えをお伺いしたいと思います。個々のものに関わらずメディアとしては共通というのが情報の最大の力ですので、どのように現代の課題に情報を生かしていくかについて、お伺いできたらうれしく思います。
【北川主査】  事務局からは、主に2つあったかと思いますが、1つはつなぐとか。
【邉田専門官】  そうですね、のりとしての技術支援という話、よく分かるところです。情報技術からの観点で、拠点形成をしていこうという時に、当然社会実装をしていくためにはいろいろな人を巻き込んでいく必要があって、いろいろな人が集まってくるような拠点を作らないといけない。そのための基盤的なところの整備をしていったりとか、コーディネートするようなそういう役割というところも期待して拠点形成をしていくことによって、そこに行けばいろいろなものが、いろいろな人が巻き込まれて、いろいろなその解決策が提示できるみたいな、というようなところに情報科学技術を基盤として強力な拠点形成をしていただいて、Society5.0に向けるような支援をしていけるのではないかと考えて、今日は御提示させていただいているというところでございます。
 SDGsもすごくいっぱいありますので。
【有村委員】  そうですよね。
【邉田専門官】  当然にしてそういうものを解決していかないと、サステイナブルでないとSociety5.0は見えてこないと思っていて。簡単ではないと思いますので、そういう視点を入れながらしっかり対応できるような拠点形成につなげていきたいと思います。
【有村委員】  分かりました。ありがとうございました。
【北川主査】  SDGsは、日本学術会議も今非常に力を入れておりまして、国連で17の目標ですか、それから190位のターゲットを出していますが。
【有村委員】  そんなにあるんですね。
【北川主査】  従来の縦割りと違った形で、情報が考えていくのに比較的適当かと思うので、その辺の観点も少し入れておいた方が、これまでに御指摘があったように、良いのではないかと思っております。
【有村委員】  異種の多数の社会活動を支援するのは難しい問題ですが、例えば、企業の情報管理のERPシステム(企業資源管理システム)の成功例に見るように、情報基盤技術によって、多種多様な活動を支援するための情報技術開発は可能ではないかと思います。SDGsのように社会のおける多数の人々や異種タスクについて活動支援するための新しい情報技術を、我が国が強い科学・技術分野を基にして発信していければすばらしいと思いました。ありがとうございました。
【北川主査】  ありがとうございました。
 それでは、上田委員、お待たせしました。
【上田委員】  私の疑問というか印象は非常にシンプルです。ただ誤解があるかもしれませんけれども、この未来投資会議で2か所程度に拠点を集中するという考え方は、本当にこれで良いのでしょうかという。
 つまり、もともとSociety5.0というのは人間中心社会ということで、人間に焦点を当てているのに、こういう組織に投資をするというのは、ものづくり的な考え方ではうまくいくと思うんですけれども、サービス産業を盛り立てようとしたときに、あるいは個人、特にベンチャーがそうで、だからこそ今UBERとかああいう話が出ましたけれども、大企業よりも、グーグルが大企業というのは、あれは買収しているだけなのでもとはベンチャーですね。そういうのがサービス産業として成功しているのに、なぜ日本はいまだにそのものづくりのような考え方で組織に投資をするのか。組織に投資をしたら、当然そのトップが方針を決めるので個人の意見がほとんど消えてしまう。だから、その医療ですらプレシジョン・メディシンといってカスタマイズしようとしているのに、Society5.0は個人中心、人間中心と言っているのに、何か拠点にこうやると、先ほどもありましたけれども、ではもらえなかった組織は、つむじを曲げて協力するのかと、あなたたち、お金をもらっているんだからやりなさいと。だから科研とかも一緒で、地方に優秀な先生がいるのに、拠点の大学だけにぼんとやったら、その先生はエフォート的に無理ですよね。論文が量産されるかといったら決してそんなことはなくて、地方の優秀な先生がそれによって枯渇して研究ができなくなる。そういう問題とほとんど等価で、何かこの未来投資、私の考え方に誤解があるのかもしれませんけれども、2か所に絞って集中投下なんていう考え方は、何か全然時代に合ってないのではないかという印象を持ちました。
【北川主査】  大変重要な御指摘で、何かお答えがあればよろしくお願いします。
【原参事官】  もともとの背景として、個々の研究者とか、あるいは個別のベンチャー企業への支援というのは、既にいろいろなプログラムでやっているというのがあって、それはそれとして引き続きしっかりやっていくというのは前提だと思います。その上で、今御指摘があったように、なかなか日本では進まないという現状があって、それを解決するために大学を中心とした研究機関に何が足りないのか、そこを明らかにした上で、その個々の研究者とか個々の企業への支援というはあった上で、追加でやれることは何かということを我々は考えたいと思っていまして、その追加をするのに余りたくさん最初の段階からリソースの投入をすることが現実的には難しいので、まずは絞ってチャレンジしてみるという文脈の中で出てきた話かとは思っております。
【北川主査】  私は数百年に一度の変革期という、先ほど安浦先生は2000年に1度ぐらいと言われましたが、そういう大変革に当たっているところなので、こういう支援の仕方自体も柔軟に考えていっていただく必要があるのではないかと思います。
【安浦委員】  実は、我々の大学で使っていますICカードというのは、これは全部十数年かかって、私のチームで作ったもので、もう全てのソフトが大学生なので、それで運用していますけれども、電子マネーも年間6億ぐらい回して実用しています。でも本当に論文になるところは最初の数年で、残り十数年、論文はほとんどありません。だけど一生懸命やる人たちがいて実際に使えるものにしてきたと。そのときに、あるときから正式な職員証、学生証として採用したときに、私が一番気を付けたのは、ここまでは研究だから研究費を使って良い、ここから先は大学の運営だから大学の運営費だけで研究費は一銭も交ぜるなと、その線引きに物すごく神経を使いました。最後に書いたのは、実はその意味があって、社会実装をしろと言われているところにその線引きに物すごく頭を使うことのしんどさ。あるいは後で、こっちは線を引いていたつもりだけど国会に呼び出されるようなことにならないようにしたいという。そこのところが社会実装にもっていくという、情報の場合、物すごく早く動くことがあるわけですね。ひょっとしたら3年とか5年でばんと世界中に広がるかもしれない。そのときに、実際研究費としてもらっていたもので、お前の大学のその運営経費をこれだけ浮かしたじゃないか。最初は褒められるけれども、後で罪に問われたら何にもならないわけで、そこのところをきちっと制度的に何らかの形で保証していただきたいという思いで、最後の教育、研究、運営経費の枠を外してほしいという希望を書いたということです。
【北川主査】  ありがとうございます。
【八木委員】  よろしいですか。
【北川主査】  矢野委員を先に。今の事に関連することですか。
【八木委員】  いやいや、良いです。
【北川主査】  よろしいですか。では、矢野委員。
【矢野委員】  お二人、特に安浦先生のところに、いろいろな社会、産業界、社会との関わり、大学のとの関わりが随分いろいろ考えられていて、大変、いろいろ考えられていることが非常によく分かりました。特に、最初のところに、実社会、この規制や既存制度に縛られているというところを壊していくということにこの大学が非常に役割があるというのは、全く同感であります。
 日本がいろいろな意味でこのIT、今のAIですとかビッグデータなんかが、産業界の方から見ていて非常に課題というか。日本にとってのチャレンジは、この技術が別にないわけではないんですよね、だから技術の問題ではない。結局イノベーションというのは技術だけあっても出ない。まさにその規制とか既存の制度を壊すこととセットでやるとそこに自由度が生まれて、その自由度を、今まではルールで縛っていたものをテクノロジーである種担保したりマネジメントができるようにするということだと思うんですね。
 このセットをやるためには、この制度とか、人間だとか、動き方とか、働き方とか、あるいはディシジョンの仕方とか、あるいはプロセスとか、こういうルールできちっきちっとやっていくみたいなことを日本人は過学習してしまったものだから、いろいろな意味で、それを壊すことをセットにしなければいけないということで、そういう意味で大学に、私なんかの産業界から見て非常に期待したいことは、先ほどSDGsという話もありましたが、SDGsは非常にハイレベルなので、もう少し本当に実現をある程度目指せるような、グランド・チャレンジとか、ムーンショットとか、こういうことを産業界なんかも巻き込んで、非常に具体的なゴールでやれるというようなことを引っ張れるリーダー、リーダーシップが大事かなと思います。
 先ほど来、結構つながるとか、分野を超えたとか、コネクテッドとか、そういう言葉がいろいろ出ているのですが、あれは大変危険な言葉で。なぜかというと、それ自身が目的になってしまうからです。企業なんかでも、オープンイノベーションしましょうみたいな議論の中で、オープンイノベーションをすることが目的になって、それが何か研究所の成果みたいなことに勘違いする人がどんどん出てくるんですけれども、こういうのは全く勘違いな話で、オープンイノベーションというのは、とかこういうつながるというのは、あくまでも目的ありきで、目的のために手段を選ばないというのがこのつながるということの本質なので、目的がないつながるというのは、ただの無駄ない組み合わせとコストということなので、目的ありきで必要なものには手段を選ばないと。今までの枠を超えて手段をとにかく目的のために作るというのがつながるということの本質だと思うので。
 そういうことを、先ほどの制度なんかと非常に結び付いて、制度とはっきり言っているよりも、本当は実は我々が当たり前だと思っていること、例えば、私なんか今いろいろやろうというか、実際やっている話で言うと、例えば、銀行がお金を貸すのは担保があるところだけですと。こういうのが当たり前なわけですね、今までは。担保がないところに貸すためにデータとAIが出てくるわけですね。こういうことでシングルマザーにもお金が貸せると、こういうことで社会というのは変わっていくわけです。今までにお金が、そういうルールとか制度の下で回らなかったところにチャンスを与えるというようなことがいろいろな分野で当然あるわけです。そういうことを大学発信で、制度とか、我々がもう思い込みだと思っている、シングルマザーにお金を貸したら当然だめだよねみたいな、こういうことを越えていくというようなことをそっちの言葉で、技術の言葉ではなくて、語れる人が大学の方から出てくると、大変力強い動きになってくるのかと思いました。
 非常に、先ほど来、運営の仕方のところも非常に踏み込んでいろいろ考えられているし、安浦先生なんかも、先ほどのICカードなんかはもう10年以上にわたって非常に実践されているということで、是非それをもう一歩進めようとすると、私はノーベル平和賞をもらったユヌスさんという人がやっているソーシャル・ビジネスという考え方が大変参考になるのかなと思いました。ソーシャル・ビジネスもユヌスさん自身がいろいろ本も書かれているので、もし御関心があれば是非読まれたら良いと思います。
 私もいろいろ勉強させていただくと、ソーシャル・ビジネスというのは、基本は株主に配当しませんと。だから大学にとっての株主というのは、ある意味で文科省だったりだと思いますが、配当しませんと。今でも配当してないので別に同じなのですが、しかし、利益はたっぷり出しますと。利益が出せないということは、サステイナブルではないということなので、運用も保守も変化に対する対応もできないということなので、そういう保険だとか対応費が、対応の原資はほかに頼るという、ほかから搾取するというか、そこにぶら下がるということになってしまうので、そういうのはソーシャル・ビジネスではないと。基本的には利益をきちっと出しますと。株主には配当しませんと。しかし、社会に役立つことをきちっとやりますと。そのためには利益をがっちり出すと。利益という非常に重要な唯一の尺度で成否を図りますと。非常にはっきりしているわけですね。プロフィットで計ると。
 先ほど評価の話もありましたけれども、ここでプロフィット、先ほどの社会実装に近い話をやりましたら、成否はもうプロフィット以外では私は計れないと思います。だから、大学の人は、プロフィット、価格、コスト、両方全く多分考えたことは、コストぐらいは大学の運営に考えていると思うんですが、多分でも関心が今までなかった人が多い、多いというかほとんどだと思いますが、こういうことをやろうとするとここは避けることはできないと思いますので。恐らくその、先ほどの、何かちょっとした実証実験をキャンパスの中でやりましたみたいなことも一歩踏み出すことではあるのでしょうけれども、本当にこういうことをやろうとすると、プロフィットにこだわるということとセットにしないと、私はうまくいかないと思いますし、是非そこまで踏み込んでいただきたいと思います。
【北川主査】  ありがとうございます。
 では、まず八木委員から。その後、高安先生。
【八木委員】  先ほどからいろいろお話の中で、実証フィールドというものを大学の中に作って、本当にそれが役に立つのかという観点で言うと、僕は確かに思うのが、社会の中でできるというのは、非常に個々の限られた問題の中での展開であって、かつそのデータが共有化ができないという部分も大いにあると思うんですね。でも、社会というのはいろいろ複合な要因によって作られているもので、それ自体、大学という中で作り出されることに1つの意味があるだろうし、それから、規制という話がございましたが、それはまさに実社会、個人情報を含めた問題というのを突破していかないと解けない話というのがたくさんあると思うんですね。そういうのを大学という場を使って社会との合意を取っていくというのが僕は重要なことだと思いますし、その大学でやる意義だと思います。
 最後、利益等々ございましたけれども、大学は、経営上今はなかなか大変なので、こういう実証フィールドを作っていけばそういう産学、いただいた関係との間でどう大学経営として考えていくのかということは当然考えて運用する必要があるのだと思っております。その実証フィールド自体がチャーミングになれば、皆がそこに参画できる場として、共有できる場として強く闘える場所になるでしょうし、そうあることが1つの実現への近道だとは思っております。
【北川主査】  ありがとうございます。
 それでは、高安委員。
【矢野委員】  少しだけ追加で。
【北川主査】  はい、では。
【矢野委員】  私は、先ほどの産学連携を大学と連携でやるというのは、大変、私なんかも是非やりたいと思うんですけれども。先ほど少しユヌスさんの話でソーシャル・ビジネスというのを少し抽象的に言ったので。結構おもしろいのが、グラミン・ダノンという会社がありまして、これはバングラデシュにこのグラミングループの考え方とダノンというヨーグルト会社を併せてサステイナブルな、すなわちプロフィッタブルな、非常に貧しい方たちの子供たちに栄養価の良いおやつを食べさせる、栄養状態をよくするというソーシャル・ビジネス。非常にいろいろと計画をしてきちっと立ち上げたのですが、それから半年もたたないうちに牛乳の値段が倍になってしまって、全く採算が取れないということなんかを事始めに、物すごいいろいろな社会の変化に対応しながらきちんとそこをきっちりサステイナブルな、単に慈善事業ではなくて、事業に発展させていくという過程がユヌスさん自身の本で書かれていたので、そういう形で企業とある種の大学という社会的な存在が一緒にサステイナブルなものを作っていくというようなことが社会の問題解決の中でできると大変良いのかと思いました。
【北川主査】  それでは、高安さん。
【高安委員】  私もすごく矢野さんが言っていたプロフィットがあるから社会実装をした上で企業がちゃんと共同してくれて、大学の中でも産学連携が多分うまくいく理由の1つ、大きな理由の1つになると思うんですけれども、私自身も産学連携、たくさん大学の中でやっているのですけれども、そこで1つ科学者としての認識と、それから、企業を含めた場合の実装実験としての現場としての認識等の違いというのが、隔たりがあると考えるところがありまして、それは、例えば、新しいデータが来て、そのデータを解析して、すごく合理的なモデルで説明できたり、合理的なモデルが作れたり、そのシステムを十分理解できれば科学者としてはそれで満足して、それで論文も書けるし、そこで科学者としても評価されると思うんですけれども、もう一歩現場で、産学連携プロジェクトで現場で実証実験をするというときには、ちゃんとそのものを社会に実装しなければならないわけです。実装すると、実は、先ほど喜連川先生は泥臭いとおっしゃったんですけれども、泥臭いことがいっぱい発生してきます。だけれども、その泥臭いことが科学じゃないかと言われると全く違うと思います。その泥臭いところも含めて科学だと思います。
 実は、自分たちが考えていたモデルの適用範囲が小さくて、実際の社会では様々な別な問題が起きていて、そこも説明しなければならないから、本当はモデルを拡張しなければいけなかったとか、様々な理由でモデルの適用範囲が狭かったとか、いろいろなことを実証実験してまた認識するわけです。そこも含めて泥臭いんだけれども、そこも含めて将来の情報科学者の教育にすごく十分値するものだなというのを、私の方のプロジェクト、産学連携のプロジェクトでは感じています。
 物理の分野で情報に近い先生たちでも、例えば、過去にはランジュバンという方でランジュバン方程式とか、とても御高名な実績がされている理論系だと思われている研究者でも、その魚群探知機のソナー、ちゃんと自分で実装して社会に出しているとか、いろいろな実装をすることをたくさんやられているんですね。科学者の責務として、産学連携の一環として責任を持って社会実装をしていくということを成し遂げないと、そういうSociety5.0は実現していかないのではないかなと考えています。
 その上で私が今一番産学連携のプロジェクトで大きな問題だなと思うのは、先ほどから何回も説明されている著作権の問題と個人情報の問題。これが全てのサーキュレーションをだめにすると言ったら変ですけれども、うまく回らなくする原因。個人情報があるからこれは出さないでね、そうすると学生が解析してもそこは学位論文にならない、又は論文投稿ができない。又は、匿名化しないと持っていっちゃいけませんよと言われるんだけれども匿名化する方法がない、それがよく明確に分かっていない。特に難しいのは、社会の情報だと匿名化ができないようなデータがたくさんあるんですね。あらゆる意味でランキングさせても、そのランキングさせてみても、分布、大きさ分布とか正規分布にならない。一番大きいものというのはべき分布もそうで、どんな角度で見ても大きく見えてしまうので、特定できてしまうんですよ。そういうようなデータをどう匿名化すれば良いのかと言われても、こちらもなかなか難しい問題になってしまいます。そういうような根本的に大事な問題を抱えずして、実証実験の場として大学の中にSociety5.0というのをうまく成功させるのは難しいのではないかなと考えています。
【北川主査】  ありがとうございます。
 樋口委員。
【樋口委員】  私の質問は、回答は文部科学省、あるいは八木先生、安浦先生でも結構ですけれども、今日お話しいただいた内容と、この委員会が管轄という言葉が適切かどうか分かりませんが、CPS事業の関係に関するものです。情報科学技術の観点から、そのCPS事業には両先生も関係されていらっしゃると思いますけれども、CPSプロジェクトのコアな技術開発と、今日お話ししたようなものの間、あるいはその先に、その変化は連続的なものなのか、あるいは不連続的なものなのか、どのようにお考えなのか、お聞かせ願えればと思います。
【北川主査】  どちらかお願いします。
【安浦委員】  CPSでやったものというのは、まだ、やってきたもの、今うちで、COIでもその続きをやっていますけれども、非常に限定的な情報のデータの種類で、限定的な社会の現象をコントロールしようという考え方になっています。そういう意味では、このSociety5.0が目指しているものというのは、それをもう一個飛び越えた世界であろうと思っていまして、極端に言えば、うちの大学で言えば、実際にはそれをやるかどうかは分かりませんけれども、学生はICカードで買い物もしていますし、どこの部屋に入ったかというのも全部私がつかもうと思えば私の権限でできるんです。そして、どういう勉強の仕方をしているかというのも先ほどの教育ビッグデータでとれるんです。学生たちのかなりの生活空間の中での動きというのをとろうと思えば今でもかなりとれる状況にあるんですけれども、それをやって良いかどうか、あるいはやることが社会のために良いことかどうかという判断は、全然まだついていません、倫理的に許されるかも含めて。そういうことを持ち出して大学の中で議論するその勇気もまだないというのが正直なところです。
【北川主査】  八木委員からも何かありますか。
【八木委員】  僕は余りCPSに関わってないんですけれども、今、話の中で、実際に大学の中で私どもいろいろなデータを取ったりしながら個人情報を、非常に大きな個人情報を含むものを扱っていますけれども、そこで一番重要なのは、その個人情報を提供する人たちとの対話ですね。我々のところも今毎月のようにそういう対話の場を設けて、どこまでなら情報を出しても良いか、どういうことなら問題ないかとかという議論の繰り返しをしています。それがまさに、それはもうまさに泥臭いんですけれども、実はこれは1つのサイエンスであるわけで、うちのスタッフはいつも毎日ひいひい言っていますけれども。でも、そういうことの繰り返しができるのは大学の1つの特徴でありますし、そこで1つもみながら社会の中に展開する、それがSociety5.0の大学の中でやる大きな役割だと私は思っています。
【北川主査】  樋口委員どうぞ。
【樋口委員】  私が質問した意図は、情報科学技術という観点から見たときに、どの部分までが今まで議論されてきて、Society5.0等々、行っていくと、どういうところまで実は巻き込んでいってきちんとやっていかないといけないのかということをクリアにするのは結構大切かなという意味で質問をいたしました。
【北川主査】  安浦委員どうぞ。
【安浦委員】  今の樋口先生のお話と非常に関連するんですけれども、私が今大学の経営側にいて、そういう技術開発をやるだけではなくて、私は、大学の中では、一方でハラスメント対策の最高責任者であり、かつ情報公開の最高責任者です。この立場がなかったらやっていたかもしれません。でも、もう汚いものをたくさん見せられて、大学の外と自分の責任で渡り合わないといけない、本当の社会と渡り合わないといけないという別の仕事を同時にやらされているがために止まっているという面もあります。邉田さん、笑っているけれども。彼はうちの総務課長を6月までやってくれていまして、私が何をやっているのかを全部知っているんです。
【北川主査】  いかがでしょうか。それでは瀧主査代理どうぞ。
【瀧主査代理】  議論、いろいろなところに飛んでいると思うんですけれども、実証実験をどうするかという話が一番重要な話で、それを大学でやるかどうかという話ですけれども、今回、その実証したときにどういうブレークスルーを求めているのかというのがはっきり見えないんですね。何かが出るだろうというのが非常に希望的観測でうたわれているんですけれども、そうではなくて、KPIだとか、これをきちんとはっきりさせるのだとかというのがないと、やりましたで終わると思うんですね。企業の方もそれではなかなか乗ってきてくれない。これが出るんだよと、これをはっきりさせるんだよと、こういうブレークスルーを見つけるんだよというのをもう少し考えて大学でやるのが良いのかという議論に次になるのかなと。大学でやるとしたらどういう形でやるのか。八木先生の最後の行が私は良いなと思っていたのは、特定の大学でやるというのはいろいろな議論があって、そこにお金を投資しているように見えてしまうので、大学とは別の組織があって、そこがこういう実験はここの大学でやりましょう、こういう実験はこの大学でやりましょうとなっていた方が良いのではないかと。ただ、これは法人が良いかどうかは分からないですけれども、こういう組織は2か所に作るとか、そういうのはありかと思います。
【北川主査】  今の御指摘に関連して何かありますか。
【邉田専門官】  事務局からよろしいでしょうか。
【北川主査】  どうぞ。
【邉田専門官】  すごく大事な観点をおっしゃられたのかなというところで、施策を作っていくときに、ある程度分野を決めていくという話にしていくのか、又は参加費を取って、参加した企業の興味のある分野というのを立ててもらって、拠点は必ずいろいろな人も巻き込んで、それに対して必ず解決策を提示しますみたいな話、そういう拠点というのをある程度特長で分けて2か所ぐらい作って、そういうものを立ち上げていくというようなやり方、いろいろあると思うんですね。その中で大学という組織はすごくオプトインでやりやすい、そのプレ社会的な実証フィールドであるとも考えていますので、そういう利点を使いながら集中投下してやっていったら良いのではないかという考えの下でやっていたんですね。どちらかというと我々が今考えていたのは、そういういろいろな人たちがいろいろに関わってもらって、必ずそこに対して解決策を出していくためのムーブメントを出していくと。それを、そのための基盤を作って、最終的に評価するときには、そういう、どのムーブメントがどれくらい生まれてきたのかというようなところで評価していくみたいなところが考えられるのかなと、ふと思ったんですけれども、どういうその方向性がよろしいのかなというところで御議論いただければありがたいなと思います。
【北川主査】  いかがでしょうか。残りあと15分ぐらいという感じになっています。本日こういう議論をしているのは、Society5.0とか、SDGsとか、それを実現していくに当たって、文科省というか、情報科学技術としてどういうものに、取組んでいくべきか、そこの方向性を考えていきたいということだと思うんですが、それに関連していろいろな御意見を頂ければと思っていますが、例えばこういうことをやるとか、何が支障になっているか、それを受けてどういう支援が必要かなど、その辺に関して残りの時間で御意見を頂ければと思います。
【伊藤委員】  2か所というのは、最初から何となく頭の中にこびりついているんですけれども、そうなると、人の移動というのをもう徹底しないといけないかなという気がしています。要は、矢野委員もおっしゃいましたけれども、何かプロジェクトを決めて、そこで会社なりどこかが本気でやるということになったときに、どうしてもこの大学のこの人と、あの大学のこの人と、この大学のこの研究室が欲しいといったときに、その研究室が例えば2年、3年移動してくるぐらいの予算をつけて、それに関する人事的な異動も含めて、あるボーナス的なことも含まれるのでしょう。それぐらいのことをやって企業と大学がある実験場を作るということになれば、突然大学も本当に変わるつもりでいるんだということになり、お互いに人を供給、提供し合うというんですかね。そうなるとその場所を大学が必ずしも、トップ大学ではなくて、場所的に非常に使いやすいキャンパスが特定されるのかもしれません。そういうことも含めて柔軟な考え方と、それからゴールを見据えた考え方でやるのは1つかと思いました。
【北川主査】  上田委員から御指摘があったように、2つにするとか、これ自体の問題というのが一番大きなところであるんですけれども、そこは上の方針ということで従わざるを得ないとすると、今言われたように、その下でどういう形で良い形に持っていくかということは考えていく必要があるかと思います。
 昔は、特に物理化学等の研究を全国的に展開するという意味で大学共同利用機関というシステムが作られたわけですが、今後この情報科学を中心的としたときに、どういう形が良いのかというのは、そこもよく考えて進めていく必要があるのではないかなと思います。
 どうぞ。
【上田委員】  産学連携というのは昔からあったわけですよね。どういうスキームかというと、当たり前のように、大学の先生が良い技術とか良い理論を持っていて、企業はそれを使ってサービスをしたい、その知財とかサービスの全部権利を取る。だけど、最近は、研究技術そのものを企業が持っていったりするのと、今度は逆に大学も知財を主張したりしているので、その辺多少ぎくしゃくしているというのがありますと。では、今後のその産学連携というのをどう考えるのかというのは、余りきちんと。漠然と社会実装のために云々とかいうような。Society5.0というのは、もちろんもう人間社会なので、インフラは必要ですね。それを確かに大学でやるというのも1つですが、結局それをやったとき、また現実社会へ射影しないといけないときに何か無駄が起こるのではないかなと。最初から自治体を巻き込んで、自治体も投資をしてやるという考え方の方がダイレクトのような気がするんです。
 そのときに、もちろん大学の先生方もそこにちゃんと協力して一緒にやる。私たちは技術だけ提供してあとは知りませんというのではなくて、技術が分かった人が現場を見ないと、これは企業でもよくあるんですけれども、技術のことを全然知らない人が打ち合わせをしてもほとんど余り役に立たないといいますか。だからそういう意味で大学の先生も加担するのは大事だけれども、自治体とかを巻き込まないと、大学だけでやってしまう、あるいは、先ほど瀧先生がおっしゃったように、第三者機関みたいなところでやるのも重要ですけれども、それも自治体と組んでやらないと。
 今、経験上、NICTで徳田先生が代表になっているスマートシティをやっていますが、これも藤沢市に足しげく通って、ごみ清掃車とかそういうのもいろいろと協力をいただいてやっと実現するので、研究室でセンサーを作ってデータを取ったって、現実にどう動くかはそこでやってみないと分からない。この乖離は大きいので、最初からそこでやるというのは重要かなということで、だから投資もその地方都市といいますか、自治体といいますか、そういうところにもお金を流さないとなかなかできないので、その3つが大事かなと思います。
【北川主査】  はい樋口委員。
【樋口委員】  今の議論は場の話がメインかもしれないんですけれども、私、機能の話、ファンクションの話をしたいと思います。ちょうどこの資料1-2の最後に、支援の一連の中で、研究マネジメント人材等の確保というのが上げられていますし、また、八木先生の最後のページも、必要とされる大学の機能にコーディネート人材というのが書かれています。いろいろなものを動かすときには、このコーディネートできるような人の存在、あるいはその機能というのがきちんと具備されてないと、なかなかうまくスタートしない。当然この場等々を使ってこういう人材も作っていかないといけないんですけれども、感じましたのは、手前味噌ですけれども、統計数理研究所には、統計相談、あるいは、私が所長になって共同研究スタートアップという制度に変えたんですけれども、現場に行く、あるいは現場の人に直接聞いてコーディネートするという人を育成するメソッドというのがあるんですね。そういう話をしたら、大学というのはなかなかそういうところまで教育できていなかったという話があったので、このコーディネート人材を体系的に育てていくようなメソッドは大切。あと、場を作るときに最初からそういう機能というものも最初から具備されないといけないのではないかなと思いました。
【北川主査】  今のお話は、支援メニューの1つという感じですね、それに関して、どういう支援をやっていくかというところでもし御意見があれば伺っておきたいと思います。
【安浦委員】  機能の話、場の話、すごくどちらも重要だと思います。まず場という意味からすると、例えば、先ほど御紹介しました自動運転の話は、一切共同研究契約を結んでいません。これは共同研究ではないと。うちのキャンパスの交通を1年半後に良くしてくれるための実験をやってください、場所だけただで提供しますという、そういうやり方をとっています。ですから、これは一切共同研究契約はありません。九州大学は、場とニーズを提供して、それをユーザーに、企業、ドコモさんとか、日産さんとか、DeNAさんに提供する。向こうは実験計画を持ってきて、こちらは道路管理もやっているわけですから、きちんと了解できる範囲のこと、危険なことをやられて学生が傷付けられたりしたら大変なことですから、それをチェックする。そのチェックすること自身は、大学にとっては物すごい情報ですね。どういうことに注意しないといけないか、自分が警察の立場だったらどうふるまうかということを自分でやらないといけないわけです。ある企業さんの実験に対しては、私は4回突き返しました。こんなのでは危なっかしくてやらせられませんということで、何度も会議をやって、そしてまともなものが出てきたらそれを通す。お互いにこれを共同の成果として、例えば、公道で実験するときの1つの自動運転をやるときのアセスメントのための基準作りのデータとして必要だったら国土交通省に一緒に持っていきましょうと、そういう約束でコンソーシアムを作って動いているという。こういう形のキャンパスの使い方というのもあって良いと思うんですね。必ずしも大学は研究する場所ではなくて、学生と職員、未来を担う学生がそこにいる社会であるという見方で、特に自動運転みたいな、幼児とか後期高齢者がいると非常に危険な行動をする可能性があるけれども、そこまでする人間はいないという前提も作れるので、実社会よりは少しランクが低いけれども、でも結構暴走するやつもいるという、そういう環境を実際に企業側に提供するという形をとっています。
 それから、ファンクションの方のマネジメント、これは非常に難しくて、実際にそれをやる人がいないのが現状ですけれども、例えば、喜連川さんのところのNIIみたいなところで、雇用はNIIみたいなところが雇用してくれる、あるいは上田さんのところのNTTのところで雇用して、実際に働くのはその場があるところで働くというような形の雇用関係で組織を作っていくというのも1つのやり方としてはあるのではないかと思います。
【北川主査】  ほかにはいかがでしょうか。残り5分弱ぐらいですが。先ほど著作権の問題があったりしまして、要するに何が支障になっているかというところで、それの突破の1つの方法としてキャンパスを使うということ。それから、上田委員からそれの問題点も御指摘がありましたけれども、その辺で何かございますか。情報科学でビッグデータを使っていく上での支障、それをどうやって解決するかとか。
【邉田専門官】  そういう意味で、上田先生がおっしゃったとおり、自治体を巻き込んでいくというのが、こういう物事を進めていくためにはすごく重要なのかなというところがありましたので。支援メニューを考えていくときには、そういうような要素もしっかりと取り込みつつ作っていければと思います。
【北川主査】  どうぞ。
【瀧主査代理】  いろいろとお話を聞いていて思ったんですけれども、情報関係のある種の実装なのですが、実はもっと社会科学的な発想の観点がもっと必要だという感じがしました。自治体なんかを巻き込む場合もそうですけれども、情報系の人間よりも社会科学的な人をもっとたくさん入れて、実際にその実証をやった方が効果が出ると思います。
【北川主査】  辻委員。
【辻委員】  少し話が戻るのですが、私も2か所程度の集中投資は、全くイメージが湧きません。社会という非常に幅が広いものを変えていくというのに、本当にそういう形で進むものなのか、よく分かりません。
 また、大学という場を利用するということですが、確かに大学は非常に多様な場で、若い人たちを中心に、社会科学から人文科学も含めて、いろいろな人たちがいます。その多様性を生かすのに、集中投資というやり方がふさわしいのか。未来投資戦略を見ても、とにかく集中投資してトップを目指すという、とがったスパイクを幾つも立てるイメージですが、この分野にそういうやり方が本当になじむのかどうか。大学の多様性という強みを殺してしまっては元も子もないので、そのあたりも考える必要があるのではないかと思っています。そもそも大学は、非常に疲弊してきています。選択と集中ということでやって来て、しかも、ここの反省点であったように、連携も停滞している。ばらばらな集中投資の結果、広く基盤的に面倒を見るという部分が非常に弱ってきています。そういう中で大学がいろいろ役割も担わなければいけないとなると、これから大変だなと改めて思っております。
 そう考えると、2カ所の集中投資といっても、できるだけいろいろなセクターの人たちが入る必要があるのではないか。物理的な2カ所なのか、あるいはいろいろな人を巻き込むようなバーチャルな仕組みもあるかもしれません。文科省として本当に2つで良いと思っておられるのかどうか、よく分かりませんが、大学の研究の場を見ておられる文科省には、大学という場を本当の意味でうまく生かしていけるようなことを考えていただければ良いなと思いました。
【北川主査】  先ほどから何人かの方から非常に重要な御指摘がありますが、その辺、どうお考えでしょうか。
【原参事官】  ありがとうございます。
 今回は、この未来投資戦略、あるいは未来投資会議で決められたことを受けて、何をやるのか、何をやるべきかということを議論していただいていますが、前回御説明させていただいて、今回少し説明が足りなかったところでありますけれども、その前提として、文部科学省では、この分野についてはAIPセンターを作ったり、NIIとか統数研とかで情報科学技術の研究はしていただいていると。全国幅広い大学に対してもJSTのファンディングで個別の大学研究者への支援はしてきているということです。情報科学技術だけの取組ではありませんけれども、産学連携とか、あるいはその実証を進めていくための研究費というのは個別に措置させていただいている。さらに言えば、科研費とか、大学の運営費交付金とか、そういうものも措置している。それは、厳しい財政事情の中ではありますけれども、引き続き着実に進めていって、特にSociety5.0に向けては、この情報科学技術分野というのはできるだけ伸ばしていきたいということを考えております。
 そういう前提があった上で、さらにこういう政府全体の方針を受けて、追加で何を我々としてやるべきかということを今回議論していただくということが全体の構造になっておりまして、2か所程度が良いのかどうかというのは、実際やってみないと、2か所で足りるのか、それともそういう拠点みたいなことはやめて、将来的にはもっと分散型でやった方が良いのかという課題は将来的には出てくるかとは思いますけれども、まずはこの政府全体の方針を受けて、2か所で、これまでの経費に付け加えて何か支援をするとした場合に、どういうところを支援するのが一番効果的・効率的なのかといったようなところを議論していただきたいと考えて、今日の会議をお願いしたということでございます。全く2か所程度に絞ってほかは何もやらないというわけではなくて、既にやっている中で追加でやるとしたらどういうことが考えられるかということでございます。
【北川主査】  八木委員どうぞ。
【八木委員】  いろいろな議論の中で、実証フィールドというのが、あるシーズに対応したような印象を持たれているような気が僕はしました。技術としてのシーズというのはいろいろな形で、科研費も含めて実施されているわけで、そうではなくて、今言われている実証フィールドというのは社会だと思うんですね。社会というのはいろいろなステークホルダーもそこに存在するし、いろいろな技術がそこに含まれるし、それがあわさって初めて街が作られる。そういう観点での実証フィールドということに大きな意味が僕はあるような気がいたします。それがないと、イノベーションが起きるような大きな変革があるものが街に突然入ると、いろいろなハレーションを起こすリスクが高いと思うんですね。もちろん日本という世界を超えて、世界に行くと中国とかいろいろな何でもできるところはありますけれども、そういうわけにもいかないわけなので、日本という土壌の中でやっていく上で社会というのをどう前へ進めるかというのに、僕は実証フィールドというのを大学という場で考えるのは、誰でもが入ってこられるという意味のメリットがあると理解しております。
【北川主査】  予定の時間を過ぎております。本日、御指摘、ディスカッションしていただいた内容は、事務局の方でまとめて、また次回の議論にしたいと思いますが、今日のうちにどうしても言いたいということがあれば、1件短いものであれば受け付けられますが、よろしいでしょうか。
 それでは、こちらで用意した議題は終わっておりますが、もし御出席の委員からそのほかの件でも何か御報告いただけるようなことがあればよろしくお願いします。
 よろしいでしょうか。それでは、事務局から次回の予定等について説明をお願いいたします。
【邉田専門官】  それでは説明させていただきます。
 次回ですが、8月17日の同じ時間の13時からということで考えております。今回御議論いただいていろいろ御意見を頂いています。それを事務局の方で消化し切れるがどうかは別としても、現実的なところでどういうふうな案が考えられるかというところを、委員の皆様にはその会に先立ってお示しをして、意見をいただきながら、次の会議を迎えるという形にさせていただこうかなと考えてございます。本日頂いた御意見を踏まえて、8月の初旬ぐらいには皆様のところに、こういうふうなことが考えられるのではないかというところをお示しさせていただいて、また次の議論をしていただくと。次はその事前審査をしていただくという形で進めさせていただければと思います。よろしくお願いします。
【北川主査】  それでは、本日の情報科学技術委員会を閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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