令和6年12月19日(木曜日) 15時30分~17時30分
オンライン会議にて開催
科学技術・学術審議会臨時委員 土屋 武司【主査】
科学技術・学術審議会専門委員 浦松 香津子
科学技術・学術審議会専門委員 太田 惠子
科学技術・学術審議会専門委員 河合 宗司
科学技術・学術審議会専門委員 佐藤 哲也
科学技術・学術審議会専門委員 戸井 康弘
科学技術・学術審議会専門委員 冨井 哲雄
科学技術・学術審議会専門委員 二村 真理子
科学技術・学術審議会専門委員 山岡 建夫
科学技術・学術審議会専門委員 和田 雅子
研究開発局宇宙開発利用課 宇宙連携協力推進室長/航空技術戦略室次長 臼井 暁子
研究開発局宇宙開発利用課 専門職 川上 大司朗
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
理事/航空技術部門長 稲場 典康
航空技術部門 事業推進部 部長 渡辺 安
航空技術部門 航空プログラムディレクタ 伊藤 健
航空技術部門 コアエンジン技術実証(En-Core)プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 山根 敬
経済産業省
【川上専門職(事務局)】 定刻となりましたので、ただ今から、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第78回航空科学技術委員会を開会いたします。本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。事務局を務めております宇宙開発利用課の川上と申します。よろしくお願いいたします。
本日の委員会開始にあたり、航空科学技術委員会の委員全員に御出席いただける予定なのですが、山岡委員がまだ入室しておりませんが、後ほど入室されると思います。こちらに関しまして、定足数である過半数を満たしていることを御報告いたします。
このほか本日は説明者としてJAXAに、オブザーバーとして関係省庁の皆様にも御出席いただいております。個別の御紹介は、お手元の出席者一覧をもってかえさせていただきます。
続いて、資料の確認でございますが、本日の配付資料については、あらかじめメールにてお送りしております、配付資料一覧のとおりでございます。資料の過不足やその他お気づきの点がございましたら、チャット機能にて事務局までお知らせください。
それでは、以後の議事に関しましては、土屋主査にお願いいたします。
(1)JAXAにおける航空科学技術に係る最近の取組状況について
【土屋主査】 委員の皆様、本日は宜しくお願いします。
それでは、議題(1)「JAXAにおける航空科学技術に係る最近の取組状況について」に移りたいと思います。JAXA航空技術部門の担当者様より説明をお願いできればと思います。
【稲場理事(JAXA)】 御紹介ありがとうございました。JAXA航空技術部門の部門長をしております稲場でございます。本日はコアエンジン技術の研究開発の御評価をいただきますが、その前に、JAXA航空技術部門の最近の研究開発の全般的な取組を御紹介させていただきたいと思います。それでは、資料1-1に基づきまして御説明を開始させていただきます。
【渡辺部長(JAXA)】 航空技術部門の渡辺と申します。事業推進部長をやっております。説明については私の方からさせていただきます。
まず1頁目ですが、JAXA航空技術部門の概要として、ここにまとめてございます。職員数につきましては273名、うち技術系が200名程度いる組織です。
また予算ですが、本年度予算は68.1億円を頂いておりまして、その内訳としましては、事業費で38.6億円、一般研究費で5.1億円、施設維持費で24.4億円でございます。
組織形態ですが、今挨拶いたしました稲場を部門長としまして、部門長代理の渡辺重哉、事業推進部長以下、航空プログラムディレクタと航空基盤技術統括が所掌している組織形態でございます。
JAXAの中では通常、予算が単年度のところを、多年度の予算を担保しながら、なおかつ人員も担保するプロジェクトという形態でもって非常に大きな活動をしていく形態があるんですけれども、航空プログラムディレクタは緑色の箱の部分にあたるこれらのプロジェクトを所掌している組織ということになります。そういったプロジェクトで社会実装を確実にものにしていくということになりますけれども、その種を作る活動としまして、赤い箱の中、イノベーションハブとしてセットしているということになります。
さらに横軸としまして、航空基盤技術統括が所掌しております基盤技術研究ユニットや設備技術研究ユニットに加え、航空システム研究ユニットといったところで横通しをしながら技術交流をして研究開発を進めているということになります。
具体的には、まず緑の箱の一番左を見ていただきますと、コアエンジン技術実証ということで、エンジン関連の技術をやってございます。本日の事後評価の対象となっている課題を所掌しているチームということになります。
そこから右側に1個ずつずれていきますと、次は航空機用メガワット級電動ハイブリッド推進システム技術実証ということで、昨今のCO2排出削減への要求が高まってきていることを踏まえ、航空機の電動化技術を担っているということになります。
3つ目はロバスト低ブーム超音速機設計技術実証ということで、これは超音速機の最大の課題でありますソニックブームをいかに下げるか、その技術が出来上がってきましたので、それを技術実証していく、飛行実証をしていく、そういうようなプロジェクトを進めております。
その次が航空機DX技術実証と申しまして、これは昨今のデジタルトランスフォーメーションに対応すべく新しく立ち上げたプロジェクトということになります。ここまでが機構レベルでのプロジェクトと申しておりまして、JAXA全体で活動を担保していくというような活動ということになります。
その次の緑の箱は、旅客機機体騒音低減技術の飛行実証ということで、機体の騒音をいかに下げていくか、これを飛行実証していくというものなのですが、これは名前に部門内プロジェクトチームと書いてございますとおりで、これは部門のレベルで活動を担保しているというような活動ということになります。
プロジェクト的には、赤い箱の一番右側に少し大きめの箱があるのですが、その中に次世代空モビリティの協調的運航管理技術の研究開発というものと、災害・緊急時等に活用可能な運航安全管理システム及び小型固定翼無人機システムの研究開発ということで、こちらも無人機関連、空飛ぶクルマ関連、もしくは災害対応といったところで航空利用を拡大していくようなことをテーマにした部門で担保するプロジェクトいうことで、こちら2つをセットしてございます。
それ以外は名前が形を表しているということで、赤い箱で言いますと、航空環境適合イノベーションハブ、航空安全イノベーションハブということで、環境、安全をテーマにした研究開発を進めているということと、あと一番右端に水素航空機ということで書いてございますけれども、水素航空機についても扱いつつあるということでございます。
頁をめくっていただきまして、こちらの方が航空科学技術分野の研究開発プランということで、次の頁にちゃんとした施策マップがあるんですけれども、少し細かいのでここでまとめて表現しております。
まず目的ですけれども、一番上に書いてございますとおりで、経済社会の発展及び国民生活の向上のために航空が貢献していく未来社会デザイン・シナリオの実現に向け、3つございます。まず、我が国の優位技術を考慮した研究開発戦略、2つ目は異分野連携も活用した革新技術の創出、3つ目は出口を見据えた産業界との連携。この3つの観点を踏まえて研究開発を推進しているというものでございます。
プログラム的には3つです。緑と赤と黄色で分けてございますけれども、既存形態での航空輸送・航空機利用の発展に必要な研究開発ということで、中身を更に3つに分解しておりまして、脱炭素社会に向けた航空機CO2排出低減技術の研究開発、超音速機の新市場を拓く静粛超音速機技術の研究開発、それと運航性能向上技術の研究開発ということで進めています。
2つ目のプログラムは、次世代モビリティ・システムによる更なる空の利用に必要な研究開発ということで、国土強靱化等を実現する多種・多様運航統合/自律化技術の研究開発、宇宙輸送にも適用可能な水素燃料適用技術の研究開発ということで進めています。
最後のプログラムは、デザイン・シナリオを実現するための基盤技術の研究開発ということで、航空機ライフサイクルDX技術の研究開発ということで項目立てをしております。
頁をめくっていただきまして、そちらを施策マップの形で表現しているものがこの頁でございます。ちょうど2022年のところにピンクの枠を縦に引っ張ってございますが、今期の研究開発プランはここの2022年から始まって、最終的に5年間続けていくというようなものでございます。ですから、御記憶かと思いますけれども、2022年の段階で事前評価させていただきまして、こういったプログラムをセットし、2027年に事後評価があります。途中、2025年度に中間評価を控えているというようなところが主な活動のスケジュールでございます。
一番上の赤い破線の中に、前期から続いてきております環境適合・経済性向上の研究開発ということで、少し小さい字ですが、コアエンジン技術というものを進めており、これにつきましては前期でクローズしておりませんで、今期の2023年まで掛けて研究開発を進めてきたということで、これだけが少しイレギュラーですが、今年度事後評価をさせていただくというような位置付けになってございます。
頁をめくっていただきまして、少し詳しく研究の中身を紹介していきます。まず先ほどのプログラムの1つ目で、脱炭素社会に向けた航空機CO2排出低減技術の研究開発ということで、2つの技術を紹介したいと思います。
1つは電動ハイブリッド推進システム技術ということで、これは先ほどプロジェクトチームということで紹介したものに相当するのですが、燃費性能の限界突破とCO2排出削減を目指して、JAXAと国内企業の鍵技術を統合する電力源システムと電動ファン駆動システムの研究開発を推進中ということなのですが、詳しくは下の絵を御覧ください。
エンジンのところに電力源システムとありますが、このエンジンを利用して、そこにすごく大きなMW級の発電機を積むということになっています。そこで発電された電気で、今度は機体の一番お尻のところに付いております電動ファン駆動システムを駆動させます。この駆動させる場所が肝になってございまして、機体の摩擦で少しエネルギーを失ってしまったところに、ここで補助的に推進力を与えるやり方をすると、基本的には燃費が良くなるという原理がございますので、エンジンで推進効率が上がっていかない中、少しでも推進効率を上げるために電動力を利用し、それを実証しようというものです。
その重要構成要素になりますが、2つ目のダッシュで、MW級の高出力モータ、それと後ろにモータを付けるのですが、やはりここもMW級のモータになってくるということで、発熱量が半端ではないので、排熱処理用の冷却器等の研究開発に取り組み、その実現性の見通しを得てきているということです。
アウトカムへの期待ということで、航空機電動化コンソーシアムは150社以上入ってきているようなコンソーシアムになりますが、そういった活動とか、あとは経産省、国交省主体で進められております新技術官民協議会と連携しまして、基本的には技術開発とともに国際的な標準化活動を推進しているということでございます。ですから、成果は標準化活動を通じて社会実装の素地を作っていくというようなことで期待している活動ということになります。
2つ目の右隣は、革新低抵抗機体技術ということで、これはサメ肌をキーワードとして掲げているのですが、塗装リブレットと呼ばれている、本当にサメ肌のような目で見て分からないぐらい細かな溝を航空機の機体表面に施すと、それだけで摩擦抵抗が減るという原理がありますので、それで燃費向上を目指すということです。ですから、1つ目に書いてあるとおりで、航空機用塗料にリブレットを微細加工し、耐久性、施工性、空力性能に優れたリブレット技術を開発して、実飛行環境において評価を行うということです。
これはJAXA・JAL・オーウエルの3者共同で進めておりまして、既にJALの運航機体に適用していただいて、2300時間の耐久性が実証されており、一部でそういった耐久性が実証できましたので、次は少し大きめの、一番下にある国際線B787への適用準備中ということでございます。こういったリブレットが搭載されているものにつきましては、下の写真にございますRefreshというマークが付いています。JALの機体の中で今のところ1機だけなので、本当に運がよければこの機体に乗れるということになりますが、ぜひ飛行機を利用する際にはこのRefreshマークを探していただければよいかなと思っております。将来の発展性は極めて期待できる技術ということです。
頁をめくっていただきまして、次は超音速機の新市場を拓く静粛超音速機技術ということで、全機ロバスト低ブーム技術/統合設計技術の研究開発を進めています。
鍵技術であるロバスト低ブーム設計技術は、どんな機体でも、この技術を適用して少し形状を工夫することでソニックブームが下げられる設計技術になっておりまして、世界の中ではおそらく唯一JAXAが持っている設計技術ということになります。それを海外メーカや我が国航空機製造産業と連携した低ブーム超音速機概念の設計と、関連技術の地上実証と研究開発を実施することによって、実機開発につながる実用的なソニックブームの国際基準の策定に資するということになっています。
実際どれくらいの性能があるかということなのですが、下の図の右側を御覧ください。上の黄色い機体と下側のピンクの機体があって、それが上空を飛んでいるところを更に上空から地上を見下ろした図ということで考えていただくと、この赤と青のマップがソニックブームの強度を表してございまして、これまではD-SENDプロジェクトで一部低ブーム化ができたのですが、それではマッハ1.3や1.4といった設計点ではないところでソニックブームが大きかったのですが、これが今回の技術でもって完全に青くできまして、それが下側の図です。どこを飛んでも静かに飛べるということで、非常に期待できる技術です。
これでもって基準が定まれば、超音速機の市場が本当に開拓できる状態になるということで、非常に期待している技術でございます。
それを飛行実証するということで進めておりまして、ただしこれにつきましては、一番下のところに書いてございます経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプロ)と呼ばれている枠組みで進めておりますので、これは運営費交付金の先ほど申し上げた68億円ではなくて、それとは違う外部資金を活用して飛行実証を実施しようという計画で進めているものでございます。
頁をめくっていただきまして、次は運航性能向上技術の研究開発です。左側は気象影響防御技術ということで、気象影響をいかに下げていくかということで2つテーマを取り上げました。
1つ目は滑走路雪氷検知技術で、空港の滑走路に雪が積もったときに、どのタイミングで除雪していけばよいか、人が出て判断しなければいけないところを自動化しようという技術なのですが、下の写真にあるとおりで、筒状の中にレーザーを組み込みまして、それを雪が積もっている上に当てると、雪質と雪の厚さによってその反射の形態が変わる特性を利用しまして、自動的にどれくらいの厚さで滑りやすい雪なのか、単なる氷で積もっているのか、といったところを判別できるような技術開発をしておりまして、これを稚内空港に設置しようと計画しております。
その下の火山灰・氷晶検知技術につきましては、世界初の航空機搭載用のライダーということで、やはりレーザー光で前方を照射して、その反射光で火山灰若しくは氷晶を検知できる技術を開発しましたので、検知ライダーの信号処理技術やシステムのライセンス契約を締結しまして、技術移転を完了しているということでございます。
これも非常に期待できる技術で、あらかじめ火山灰があればそこを避けて通るというようなことも可能になってくるので、安全性という観点で期待できる技術でございます。
その右側の方は低騒音化技術ということで、機体騒音低減コンセプトの飛行実証を目指して研究開発を推進しているということでございます。これは今期のプログラムの前から続けているものでございまして、航空機のエンジンが大分低騒音化されてきた現在では、やはり機体の騒音が目立ってきている中で、その機体騒音をいかに下げるかということでやっています。
目的としましては、日本国内の空港周辺騒音軽減と、日本の技術の国際競争力向上に貢献することをミッションとしまして、中型旅客機を用いた騒音低減コンセプトの飛行実証を計画しているということです。
これも海外メーカと組んでおりまして、これが海外メーカによって認められれば、社会実装が叶うというような仕組みでやっています。
下の写真は低騒音化対策の検討対象の中型旅客機の4輪主脚ということで、主脚はこのように複雑な構造していますので非常に騒音が出るのですが、これを2 dB若しくは3 dB下げていくようなデバイスを開発しているということでございます。
頁をめくっていただきまして、次は少し毛色が変わります。国土強靭化を実現する多種・多様運航統合/自律化技術の研究開発ということで、キーワードはD-NET技術というものです。JAXAの既存技術でD-NETという災害時に情報共有をするシステムがあるのですが、その情報共有システムは大分よく出来上がってきていて、その応用例として、有人機だけでなく無人機とも情報を共有できるのではないか、それを災害対応に使えるのではないかということで、この技術をベースにその運用範囲を拡大しようという取組がまず1つありまして、それが下の図の左側です。有事の災害・危機管理対応を行う政府システムの開発、この中にその情報共有システムを入れ込んでいこうというような取組です。
さらにこの情報共有の取組は、災害時だけではなくて、平時にも使えるだろうということで、既存有人機・無人機・eVTOLはどんどん開発が進められているのですが、やはりそれを混在させたときにどういうふうに情報共有していくか。それができなければ運航管理ができないので、その運航管理システムに役立つような情報共有規格といったものを開発していこうということで、今後、無人機やeVTOLといった航空機利用が更に拡大していく中で、こういった規格が運航管理システムとして役立っていく、そういうような世界を作りたいということで、研究開発を進めています。
これにつきましても外部資金を活用しておりまして、左側の災害対応についてはKプロ、右側のものにつきましてはNEDOのプロジェクトに応募しまして、外部資金を獲得しているということでございます。
頁をめくっていただきまして、航空機ライフサイクルDX技術です。今までは実証主義で航空機が開発されてきたのですが、やはりそれでは開発資金が非常に膨大になるということで、いかにこのデジタルトランスフォーメーションを仕掛けていくか、これが現在の世界的な流れになっているということです。
イメージとしては、下の左側の図で真ん中にオレンジ色の箱がありますが、その中に設計から廃棄、リサイクルまで、これが航空機のライフサイクルということになりますが、これを全てデジタルトランスフォーメーション化、デジタル化して、それをスレッドとしてつないでいく、そういった活動が世界的に進められているということになります。
JAXAとしてもそれに追いついていかなければいけないということで、まず設計から製造に至る前半戦のところをデジタルトランスフォーメーションということで、対応していこうと活動しています。
これにつきましては、一番下に航空機ライフサイクルDXコンソーシアムを形成しておりまして、一番右下に※印で書いてありますが、産学官65機関が参加しているということで、産業界からも非常に期待されているものになります。
その具体的なイメージとしまして、右側の図でDX拠点とありますが、こういった関連ステークホルダーをデジタルでつないで情報を共有し、デジタルスレッドのイメージを作りながらこれを海外OEMにもつないでいく、そういうような仕掛けも併せて開発していくということで進めているものでございます。
頁をめくっていただきまして、これはここ7年間の活動成果ということでお示ししています。
まず、研究制度と組織の改革ということで、先ほど組織のイメージをお見せしましたが、そういったことで研究制度を単純化し、基礎的な研究から社会実装までステップアップ過程を明確化しているというようなやり方で組織改善をしまして活動を拡大してきており、実際、プロジェクト活動の拡大ということで一番左の棒グラフを見ていただきますと、これまで大体1つしかやってこなかったのが、今プロジェクトは7つということで、すごく増えています。
この7つのうちの4つが外部資金を獲得して進めているものでございますので、真ん中に書いてございます大型外部資金の獲得、これにつきましては今や2024年度は大体40億円ぐらいということで、運営費交付金の活動を倍増させるような形で今進めています。
最後に外部連携の強化ということで、コンソーシアムみたいなこともやっておりますので、参加機関数は当初の7年前に比べれば12.4倍ということで、オープンイノベーションの体制も構築しつつあるということになります。こういったところが評価されまして、主務大臣評価結果では最高のS評価を9年連続で取得ということになります。次の頁をお願いします。
JAXA航空技術部門の役割ということで、今後は国の能力として宇宙航空関連分野の国際競争力強化にますます貢献していきたいということで考えてございます。これはJAXA法で定義されている基盤的研究開発を行って、その成果を規制、制度等の議論に展開して、これはいわゆる国の能力向上ということですね、それに貢献するとともに、事業主体の事業競争力強化に貢献していくということです。
その基盤的研究というのは何だということなのですが、真ん中に書いてございます国の試験研究機関又は研究開発を行う独立行政法人に重複して設置することが多額の経費を要するため適当でないと認められる施設及び設備を必要とする研究ということで、大型の試験設備を利用した研究開発、これがJAXAに課せられている使命ということです。それを出口戦略として標準化若しくは事業化といったところに打ち立てていくことで活動を進めていきたいと思っております。
こういった設備は、当然ですが供用することも国の能力として重要な視点であって、現在は航空産業だけではなくて、例えば安全保障やロケット開発における利用といった宇宙開発の利用実績が増えていて、設備供用の重要性が増しているところでございます。
少し長くなってしまいましたが、説明については以上になります。
【土屋主査】 稲場様、渡辺様、ありがとうございました。今の発表を踏まえまして御質問、コメント等はございますでしょうか。佐藤委員、お手を挙げていらっしゃいますか?
【佐藤委員】 佐藤です。御説明どうもありがとうございました。航空業界では今取り組むべき課題というのが非常に多岐にわたってきておりまして、その中でJAXA様は基礎研究から大型プロジェクトまでを推進していただき、いろいろな成果を上げられているということで非常に高く評価できると思っております。
私から質問が2点あります。これからはやはり電動化やエアモビリティがキーワードになってくると思います。例えばソニックブームの低減技術が超音速分野でJAXAの非常に目玉の技術だったように、電動化やエアモビリティでは、どういうところに優位な技術があるのか、若しくはこれから目指していくのかというところは、いかがでしょうか。
【渡辺部長(JAXA)】 まず電動化につきましては、このコンセプトを出しているのが1つ大きなところです。機体表面の摩擦抵抗による損失をいかに低減させるかということで、推進効率を上げていくこの発想と、こういったモータ若しくは発電機を付けていったときに、それらが急に故障すると、エンジンに負荷がかかりますので、それをいかに防止するかといったところに技術優位性を持っておりまして、それをベースにやっていこうと考えています。
また、もう1つは冷却器のところですね。冷却器は付けてあるのですが、やはりMW級になるとなかなか空力との連成が難しいといった課題がございますが、それを解決する技術についてもJAXAが持っていますので、そういったところで貢献できればと考えています。
次世代モビリティにつきましては、こういった運航技術ができなければ民間の事業者がいくら機体を開発してもそれは利用できないということになりますので、この運航技術をいかに仕上げていくか、また、それをいかに世界に展開していくかというところがキーになります。そのための基礎として、その情報共有が本当に肝になるのですが、このD-NET技術というのは、そういった意味でデファクトスタンダードを勝ち取りつつある技術であると認識しておりまして、ここに非常に大きな強みを持っているということでございます。
【佐藤委員】 ありがとうございます。非常に強みがあるということで安心いたしました。もう1点がDXなのですが、JAXAがDXの分野を推進するに当たって人材確保が結構重要なのかなと思っておりまして、大学の航空学科の教育に何かリクエストみたいなものがありますでしょうか?JAXAに入ってDX業務を実施するに当たって、今までは流体とか熱とか制御とか材料とかいった専門性の教育が主だったのですが、今後はどうしていくべきなのかというのを御意見いただけたらと思います。
【渡辺部長(JAXA)】 ここは少し個人的な意見になるかもしれないのですが、やはりシステムをどう評価していくかというところがまず基本です。ですので、要素技術であっても、それがシステム的にどれほどの性能インパクトを持つのか、それをきちんと評価できるようなポテンシャルを持った人材というのがまず1つです。
それと、DXということでデジタル化していくのですが、やはりその肝は物理的データにあるのだということで、やはり実験的な素養というのも、実は求められているのだと認識しております。
ですので、簡単にデジタルというワードだけではなくて、システムとそれを支える物理的データといった辺りは、視野として入っているとよいのかなと考えております。
【佐藤委員】 どうもありがとうございます。以上です。
【土屋主査】 ありがとうございました。戸井委員、お手を挙げていらっしゃいますか?
【戸井委員】 ありがとうございます。今の御説明にも関連するのですが、JAXA様の活動は、航空機の技術開発もメディア等で盛んに取り上げられているという認識でおります。先日もAviation Weekで新しい航空機を4形態紹介されていて、BWBと、モーフィング主翼と、TTBW、4つ目にJAXAさんのBLIの今の電動化の例が紹介されていたということで、大変誇らしく思いました。これまでの研究、NASAとかで立ち上げられたものをしっかり味を付けて、日本なりの取組をされていると感じております。
あともう一点はDXに関しまして、我々産業界からの思いなのですが、やはりライフサイクルに絡むというところがポイントでありたいと思っております。構造のサプライヤーとかになりがちなのですが、それをエアバス、ボーイングとかと世界に伍して存在感を増していく上で、ライフサイクルを扱えるDXのツールをうまく使いこなして入り込むこと。それに対するいろいろなインプットも必要なのですが、そういったプラットフォーム作りを一丸でやれたらよいなという思いがありますので、そういう対話をJAXAさんと産業界が続けられたらよいかなと思っております。以上です。
【渡辺部長(JAXA)】 ありがとうございます。電動の方はお褒めの言葉を頂きましてありがとうございます。そういった形で今後も世界的にアピールできるような成果を出していきたいと思っているところです。
航空機ライフサイクルDXの方ですが、御指摘のとおりライフサイクルを完結させるということが重要だと認識しています。
ただ、いきなり全部できるかというとそうではないので、今の資金的枠組みでは前半戦をやるのですが、後半のところをいかにDX化していくか、それは今後資金をまた狙いながら頑張っていくということです。
ただし、コンソーシアムの中では、オープンフォーラムでこういったところについても、そろそろ見なければいけないということで議論を始めており、今後そういった議論が発展していくのを後押しするということで考えてございます。
【戸井委員】 御説明ありがとうございます。
【土屋主査】 よろしいでしょうか。では、山岡委員。
【山岡委員】 御説明ありがとうございます。山岡でございます。最後に少し触れられた設備のことについてお伺いしたいのですが、以前サイトビジットで調布の方にもお邪魔いたしました。当然、いろいろな研究開発をされるときに下支えとなるのは、こういった試験設備だと思っております。また、ここにも書かれておりますが、やはり企業も風洞施設等を持っておりますが、個社で持つだけではなかなか効率的な利用ができない、また、大学等による利用を考えますと、やはりJAXAとして日本の航空技術を支えるために必要な設備は保有していただく、若しくはそれを更新していただくということが必要かなと思っているのですが、失礼ながら随分試験設備も長年使っておられて、中にはもう私と同じぐらいの年齢みたいな施設もあったように記憶しているのですが、今後その試験設備の更新といったことは計画されていますでしょうか? 少しお聞かせ願えればと思います。
【渡辺部長(JAXA)】 老朽化については御認識のとおりでございまして、一番古い風洞ですと、もう60年を超えているということで、元々のコンクリートの耐久が65年といわれている中で、建屋そのものがそろそろ寿命が来るかもしれない状況にあるのは事実です。
老朽化をどうやって更新していくかにつきましては、今議論を始めているというところでございまして、これはひとえに航空だけではなくて、JAXA全体の設備が老朽化していますので、ここはJAXA全体で足並みを揃えながら、老朽化対策の話は進めていきたいと考えているところでございます。
またそういった話が本格化してきましたら、こういった委員会にも御相談ということで、議題として挙げさせていただきたいと考えております。
【山岡委員】 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
【土屋主査】 よろしいでしょうか? 私からは質問というより、施設もそうなのですが、JAXAのプロジェクト研究もかなり大きく広がってきて、資金も集まっている。それに見合う人をどう今後も確保していくのか、そういった点もいろいろあるのかなと思いました。
河合委員、お手を挙げていらっしゃいますか?
【河合委員】 河合です。よろしくお願いいたします。先ほどの土屋先生の意見と私も全く同じ意見を持っております。研究開発も進んでいますし、いろいろとよい成果が出ていて、外部資金も取られているということなのですが、私からお願いしたい点が2点あります。
まず1点目は、こういった外部資金を取ってきたときに、大きなプロジェクトを進める上で、やはり若い人材を育てていくというのもJAXAの役割の1つだと思っております。その観点からも、博士課程を修了した学生さんを積極的に採用していきながら、日本の研究開発や技術の基盤をしっかり培っていってほしいという思いもあります。本件に対する対応状況や、新しく博士課程を修了した学生をこれだけ採用していて、プロジェクトや研究開発で活躍しています、といった指標も、できれば次回辺りで見せていただきたいというのが私の思っているところです。
あともう1点ですが、基盤的研究開発という部分で、確かにここでおっしゃるように、大学や企業さんが持てないような大規模な設備供用に関して、これからも維持・メンテナンスの更新を実施するというのは私も賛成で、ぜひやっていただきたいなと思っております。一方、基盤研究は設備供用に関わるものをやります、という御説明だったと思います。もちろんそれをやっていただくのはよいことですし、やっていただきたいと思うのですが、設備供用に限らず、基盤的な広い分野の研究がないと、いくらプロジェクトが成功していっても、基盤研究がしっかりしていないと上は成り立ちません。その観点も大事に、基盤研究も大事に進めていただきたいというのが、私からの2点目のお願いでございます。
【渡辺部長(JAXA)】 御指摘ありがとうございます。今日は紹介できなかったのですが、新人は大体1年に4人ぐらいは入ってくるというのが現状です。やはりその人材育成という観点につきましては、部門としても相当強く意識しておりまして、4人中3人若しくは4人全員をプロジェクトに配属しているというのが現実で、幸いにもこのプロジェクトは研究開発の要素も多分に含んでいるので、研究開発能力を発揮していただきながらマネジメントも学んでいただけるような形で進めております。
あと設備につきましては御指摘のとおりでございますので、そのベースとなるところを本当に大事にしていかなければいけない。あとはその人材のバランスを考えていかなければいけないのですが、プロジェクトに若い人材を入れると設備に若い人材が来ない、そういったジレンマもありますので、今後どういった形でポートフォリオを作っていくかというところは、きちんと考えていきたいと思っているところでございます。
【河合委員】 ありがとうございます。博士修了者を積極的に採用しながら基盤を作っていくという役割もあると思いますので、よろしくお願いいたします。
【渡辺部長(JAXA)】 承知しました。
(2)研究開発課題の評価について
【土屋主査】 ありがとうございました。
それでは、続きまして議題2の方に移りたいと思います。コアエンジン技術の研究開発の事後評価について進めたいと思います。まず、本研究開発の概要について、JAXAの伊藤様より御説明をお願いいたします。
【伊藤プログラムディレクタ(JAXA)】 JAXA航空技術部門の伊藤です。資料に沿って、コアエンジン技術の研究開発について、JAXAでの実施状況を御紹介させていただきます。それでは次の頁をお願いします。
こちらの頁は目次になっております。23頁ほどの資料になっておりますが、それぞれ評価項目に対応した頁にマルが付いておりますので、御参考までに参照していただければ幸いです。次の頁をお願いいたします。
これまでの取組を先ほどのプレゼンで御紹介しましたとおり、研究開発プランでの位置付けをここに記載しております。同じ図になっておりますが、上で書いてある赤い点線の枠がコアエンジンの研究開発ということで、2017年からスタートして2024年まで実施されております。17年に事前評価、19年に中間評価を経て、今年最終的な事後評価を行うという流れになっている状況です。次の頁をお願いします。
今のスケジュールを詳細に御紹介しますが、今御紹介したとおり事前評価を行った上で、中間評価で2019年に期間を1年延長して、より実証度を高めた技術実証を行うというスケジュールにしております。
中間評価で確認したスケジュールが下に書いてありまして、一番右、2023年に赤字で記載のとおり、より実証度の高い試験をそれぞれ追加して、期間が延びているという状態になっています。この結果を踏まえて本日事後評価を頂くという位置付けになってございます。次の頁をお願いします。
この研究課題に関しての社会的・経済的意義に関する御紹介です。エンジンに関しては、各日本のメーカIHI、KHI、MHIAEL、これを合わせて上の3行目に書かれているとおり、世界的なシェアは6%ほどとなっている状況です。
これらのシェアに関しては、我が国のメーカの開発分担の獲得状況の四角の2つ目、JAXAを中心に進めたFJRエンジンプロジェクトは1970~80年代頃ですが、こちらでファンジェットエンジンの開発を行って、その結果、V2500という国際共同開発の参画につながったということで、下の表にあります一番左のV2500エンジンのファンや低圧タービンのうちファンの部分を中心に、ここの部分で23%のシェアを持っているという状況になっています。ただ、この低圧部分は他のエンジンにも広がっているのですが、近年のプログラム参加シェアは変化が余りないという状況です。
最後の四角のところです。コアエンジンの開発を行うことが必要になっていて、ここの分担を確保するために技術開発のレベルを高めることで、我が国の航空エンジン産業の飛躍につながると認識しているところです。それでは、次の頁をお願いいたします。
本研究開発で設定した目標を記載しております。先ほど御紹介したとおり、エンジンの高温高圧部に取り組むということで、そのポイントである燃焼器とタービンについて目標を設定しています。
技術目標の1つ目の矢印のところ、燃焼器については、実エンジンに向けたいろいろな技術がありますが、赤字で書かれているところ、世界で最も少ないNOxの排出量を目指します。この基準としてICAO CAEP/8の基準よりも更に8割低い排出量、最後の頁のところで少しこの内容を御紹介しますが、この数字を目標として設定して、それを実現するための超低NOxリーンバーン燃焼器技術を確保するというのが1つ目の目標です。
もう1つの項目、タービンに関しては、その高温に耐える技術としてCMCを使った静翼で、翼表面温度1,300℃以上の健全性を備えることです。
それからもう1つは、メタル動翼との組み合わせによって、空力性能が現行の最高性能に匹敵するレベルに達するようなことを実施するというのが本タービンの研究開発目標になります。次の頁をお願いします。
実施体制に関しては、実用化を担うパートナー企業2社と共同研究を行うことで、社会実装に向けた体制、そしてその研究開発成果の効率的な展開を図ることができるということで、下に書いてあるような図で実施をしております。
プロジェクトの体制は黄色の中の部分。それから青字のところがJAXA内の体制ですが、こことその枠外の川崎重工業株式会社及び株式会社IHIとの連携を行うことで研究開発を行っております。具体的にはリーンバーン燃焼器の方に関しては川崎重工業さんとの共同研究、タービンに関してはIHIさんとの共同研究という形で体制を組んでおります。
研究のリソースとしては、チームに延べ18名の体制でこれらの活動を進めております。体制は以上になります。では次の頁をお願いします。
実施を支えるにあたって、先ほど山岡委員からも御指摘いただきましたJAXAの大型の試験設備を活用して成果を出していくという視点で、ここではその基盤となる関連する設備をいくつか御紹介しております。
左の2つ、高温高圧燃焼試験設備、それからその下にある環状燃焼器試験設備、この2つを用いて燃焼器の試験を行って成果を出していきます。内容については後ほど御紹介いたします。
それから真ん中がタービンの試験について、回転タービン試験設備を活用して、JAXAとして非常に貴重な設備として成果を出しています。下にその外観写真が載っております。
また、タービンに関しては数値解析も効果的に活用して、いろいろな結果を出しているということで、スパコンを活用した解析、このようなものも我々JAXAの1つの特徴と認識しております。
このような設備を使いまして、実際に研究課題にどのように取り組んでいったかを次の頁で御紹介させていただきます。
1つ目、リーンバーン燃焼器に関して、技術状況の御紹介です。少し技術的に立ち入った内容になりますが、左上の説明にありますとおり、NOxをいかに下げるか、このNOxに関しては、燃焼温度が高いほどNOxが生成されやすいという状況にあります。
右の図にありますとおり、これは縦軸が燃焼の温度、火炎の温度になっていて、このグラフで山が真ん中にありますが、ここは燃料と空気の混ざり具合によって、一番適切な混ざり具合だと非常によく燃えます。ここから右に行くほど燃料が多くて、左に行くほど燃料が少ない状況で、その割合を真ん中から意識的に外すと燃焼温度が下がるという現象の説明になっています。
これまでは、従来型と書いてありますように、この図でいうと右側の赤ポツのところ、ここは燃料を多めに吹いて、燃料が多いほど安定して燃焼しますので、そこで燃焼を開始させるというのが従来の燃焼の仕組みでした。
しかし、燃料過多のため、そのままでは燃費が下がりますので、火を付けた後、燃焼器の中で後から空気を追加して、左側の丸の辺りのところの最も運用として適切な燃料比のところへ持っていくという燃焼をさせています。しかし、途中から空気を足す段階で、どうしてもNOxが高い領域を通過します(この図の点線は下を通っているのですが、実際には上の高い燃焼のNOxのところを通過していく)ので、NOxがたくさん出るという状況になります。
今回のリーンバーン燃焼器に関しては、最初からこの青色のところで燃焼を開始して、そのまま空気を少し足して、安定して理想的な燃焼条件に持っていく燃焼器を開発することでNOxの生成が多いところを通過せずに燃焼させる技術開発を実施するというのが大きな技術の原理になります。
少し長くなりましたが、これを実現するために、技術課題と書いてあるところですが、高温高圧でNOxを下げるためのノズルの開発であったり、実際には空気が多い状態ですと振動燃焼が起きやすいので、これを抑制するレゾネータ技術、それから燃焼ノズルの冷却技術であったり、それから実際に着火してエンジンの出力を上げていくときの過渡応答を安定させる技術、更には、高い温度に耐えるような材料を入れることで更に効率を上げていこうというCMCの燃焼器冷却・構造技術、CMCのパネルを使うためのコーティング技術、このような技術を構成して、より性能のよい燃焼器を実現しようという技術開発を行ってきております。具体的にどのように進めたか、次の頁以降で御紹介します。
燃焼器の試験はステップアップしていく形になっておりまして、一番右にある環状燃焼器が最終的な燃焼器の姿で、エンジンは1周12個ほどの燃焼器がぐるっと周っているものです。ここに進む最初の段階としては、一番左にあるシングルセクタすなわち1つだけの燃焼器で試験をし、その隣との干渉も考慮するということでマルチセクタすなわち3つの燃焼器を使った試験を行い、最終的に環状の試験を行うというのがステップアップの手順になります。これを順番に経て実用化につなげていくというような開発をしているところです。
環状燃焼器に関しては、現在、事業化支援の一環として試験も別途行っておりますが、今回の評価としては、マルチセクタまででマイナス80%を得られたということを御紹介するものです。次の頁をお願いします。
振動抑制について、これはリーンバーンで振動が起きやすく、また、この振動に関しては、周上をくるっと周るような現象もありますので、この周方向の振動現象も含めた振動を把握して、それを抑制するという技術が必要になります。
左の図にある通り、まず一度環状燃焼試験で振動特性を取得したところ、右下にあるとおりピークが1カ所出てきました。これを押さえ込むようなレゾネータを設計して、燃焼器に取り付けるというのが、真ん中のポンチ絵に書いてあるとおりで、水色の細いレゾネータの図がありますが、こういうものを取り付けて、さらに最終的に確認試験を行ったということで、結果的には右下の赤のグラフ、何も線が出ていませんが、共振振動が起きていないということが実証されているのが成果になります。次の頁をお願いします。
続きまして燃料ノズルの冷却技術です。これは燃料ノズルの温度が途中で高くなると、燃料がコーキング、炭化して詰まってしまうという現象が生じます。これを起きないようにするために、当初の設計ですと、真ん中にあるとおり、これは数値解析で温度分布を解析したものですが、一部燃料温度の高いところ、赤であったり黄色であったりというのがあります。この流路の設計を変え、流し方を変えることで、最終的には右側にあるとおり全体的に均一な温度が得られて、問題のない設計になっているというものが確認されております。このような設計を行ったノズルを開発したというのがこちらの成果になります。次の頁をお願いします。
続きまして過渡応答です。燃焼器が安定して推力を上げていけること、また、飛行中に消えたときに着火できること、これを実際に実証試験を行って確認するという試験を行っています。
燃焼器の加速性能を試験する左の試験では、燃焼器の出力を急速に上げていく制御ができるような装置を開発して、それによってこの燃焼器がきちんと出力を上げていくことができるということを確認しております。
また、高空条件で火が消えた時に着火できる試験は、これは高い高度、圧力と温度が低い条件で試験をせざるを得ませんので、JAXAの持っている高空性能試験装置ATFを使用して、この高空着火可能範囲を取得して性能を確認しております。次の頁をお願いします。
次がリーンバーン燃焼器の最後の成果になりますが、ここではCMCを使った燃焼器の製造、冷却・構造技術、及びそのCMCの上にコーティングを行って、その耐久性を確認するということで、1つ目のCMC燃焼器冷却・構造技術の方では、冷却空気がより必要がない、逆に無駄な冷却空気を使わないので性能が上がるということにつながるわけですが、こういうもので実施してもしっかりとパネル本体をつないでおける、設置しておけることを実験で確認をしております。
CMCパネル耐環境コーティング技術の方では、耐久性に関して、特にコーティングが一番問題になりますので、これは500時間という時間を設定して耐久性を持つことをこのような試験を行って確認したというのが成果になります。
以上がリーンバーン燃焼器で、最初に御紹介した80%マイナスのNOx性能を得られて、それに付随する各種の技術が実現されました。
引き続いて、タービンの技術に関してです。タービンの方は高温の燃焼器の空気を受けて、その力でタービンを回して、エンジンの前方に圧縮するための動力を供給するというものになりますが、このタービンに関しては2つの項目が技術課題になっております。
1つは、より高温に耐えるようにCMCの材料でタービンを構成することです。まずはCMCによる静翼、回転しない翼と、回転する翼が組み合わされていますが、回転しない翼側をCMCで作る。この製造技術を使って1,300℃まで耐えるものを作ろうというのが1つ目の技術になります。
この技術課題に書いてあるとおり、CMC材料を静翼に採用して、冷やさなくてよくなることで冷却空気を余分に使わなくて済む、効率が上がることにつながります。具体的には空力損失を低減する三次元の形状をCMCでどう実現するか、さらに、その冷却のためのフィルム冷却の孔の形状をどう実現するか、このようなことを健全性等を含め実使用環境で実証するというのが課題になります。
もう1つが動翼で、これは回転するものですので、今の段階ではまず金属で作りますが、このメタル動翼に関しても空力損失を低減させ、冷却性能も向上させる、こういう最新の設計を行って、回転タービン試験によって実証することが必要ということで、課題に関しては、三次元形状と、冷却空気による損失を減らすような形状にする、こういう技術を取り入れて試験をするというのが2つ目の課題になります。具体的に成果を次の頁で御紹介します。
タービンに関して、設計をどのようにやってきたかという内容になります。まず1つ目、CMCの静翼に関しては、静翼を設計して、実際に試作をして、引張試験等必要な強度データを獲得しています。CMCも僅かではありますが、今までよりは少なめでありますが冷却をします。冷却の吹き出し孔の形状をCMCに加工する技術というのは今まで例がない加工になりますので、その加工技術を確立してきたということ、それからこういうものを試作して実際に三次元翼形状にしたこと、こういうことを設計・製作技術として確立しています。
それからメタルの動翼の技術は、これは回転する側ですが、金属ですので形状は比較的作りやすいとはいえ、その形状をどのように設計するかが非常に重要なポイントになります。空力損失を低減する形状をCFDで確認し設計に反映する、あるいは冷却構造の改良を行って、冷却空気をより削減して効率を上げるという形です。
それから両技術に関連して、先ほども少し御紹介しましたが、表面から吹き出す冷却空気、翼面フィルム冷却の高性能形状を設計し、これをそれぞれの静翼、動翼に対して選定して設計に反映していきました。これらの設計を行った結果を実証試験で確認をしました。次の頁をお願いいたします。
まずCMC静翼の実証です。先ほど御紹介した1,300℃という非常に高い温度できちんと使えますということの健全性の実証を行いました。実際には、1,300℃での条件でバーナによる加熱を行って、加熱と冷却の1,000サイクルの実証を行い、これによって、その温度変化に耐え得ることを確認しました。それから高温ガス流の健全性実証ということで、これは気流が流れている条件でも健全であるということを確認しまして、その2つの試験により実際の運用の中での条件にさらされていることを確認して、CMCの損傷がなく健全であることが実証されたというものになります。
このCMC静翼実証の成果に関しては、世界的にも例のない成果です。具体的には、三次元形状の製作が成功して、さらにフィルム冷却の孔もきちんと作られているということ、1,300℃での健全性を確認できたこと、いずれも世界に例のない非常に高い成果が得られたと認識しております。次の頁をお願いします。
動翼に関して、こちらは金属ですが空力性能の向上を確認するということで、その断熱効率の改善を目指して、回転タービン試験設備で実際にタービンを回して確認をしております。空力的には、これで実際のエンジンと相似な試験ができますので、効率に関しては、ここでデータがしっかりと取れるという状況になります。
この試験を通じて、真ん中辺りに書かれているとおり、設定していた目標の2倍に迫る効率を実現しているということで、非常に高い性能が得られたと認識しております。
タービン効率に関しては、一番左下に書かれているとおり、社外秘の情報のためなかなか客観的な比較は困難ですが、過去の公開資料に基づく推定では世界最高の効率を凌駕していると我々としては判断しており、右の図に書かれております緑色のグラフのように、このくらい目標を上回るという成果が出ていると認識しています。
以上が技術的な成果で、こちらに示してあるのがアウトプットとして、査読論文、口頭発表、特許がいくつか出されています。特許に関してはここに記載のとおり調整中の候補があること、それから一方でノウハウとして秘匿すると考えているものもありますので、技術的な成果としては更にたくさんの内容が出ていると認識しています。
最後に2項目ほど、実用化・事業化へどのように貢献していくか、社会的な意義・価値につながるものですが、最初に御紹介した低NOxの性能に関して、ここのグラフに書いてあるとおり、年度が進み右に行くほどNOxの排出量が右下へ下がっていることが示されていますが、ICAO CAEPの目標としては、このマイナス56%というのが示されている目標です。我々としてはそれよりさらに低いマイナス80%を目指すということで、世界的にも非常に高いレベルの成果が得られていると認識をしている次第です。次の頁をお願いします。
タービンの効率に関して、この技術を適用すると燃料消費を2.3%削減できるのではないかと推算しています。これを踏まえると、ATAGのNet-zeroのシナリオに関して、シナリオ3では34%の低減を今の技術領域の発展で向上しようとなっていますが、このタービンの効率向上、我々の技術で、34%の中の15分の1、それなりの価値のある削減をこのタービンだけで実現できるということで、世界的なCO2削減にも貢献すると認識しております。
このような成果が得られていることが、コアエンジン技術の成果であるということで御紹介をしました。最後に今後の展望として、このコアエンジン技術が今後どのように社会実装されていくかということに関しては、最初に御紹介していますが、2030年代に就航が予想される航空機用エンジンを含め、国内エンジンメーカ2社、先ほど御紹介したIHIさん、KHIさんがコアエンジン高温高圧部への設計段階からの参画を目指して対応していくというのが1つ目の将来展望になります。
これに向けてJAXAとしては、実機搭載に向けた環状燃焼器形態での統合試験等、より高いTRLの実証や、CMC等の新材料の製造技術の開発等の活動を行ってメーカの活動を支援していき、更にはその先の将来の技術に対しても取組を進めていきたいと思います。
それからもう1つ、JAXAの基盤技術、設備に関する我々の強みを更に維持・強化していくというのも今後の展望として考えているところで、特に燃焼器に関しては高温高圧燃焼試験、環状燃焼器試験設備、この辺りの長年蓄積・確立してきたものを更に強化して、評価能力の向上を図るとともに、回転タービンに関して、これは非常に世界的にも数少ない試験設備であり、こういうものを更に活用して更なる小型高負荷化に対応した評価能力の維持・向上を図っていきたいと考えている次第です。JAXAのコアエンジン技術の研究開発の紹介は以上です。
【土屋主査】 伊藤様、ありがとうございました。続いて、評価概要について事務局より御説明をお願いします。
【川上専門職(事務局)】 事務局の川上でございます。では、研究開発課題の評価ということで、評価概要について説明させていただきます。まず、先ほどもJAXAさんのプレゼンでもこういう話はあったと思うのですが、改めて、全部説明する時間はないので、かいつまんで概要だけ話させていただきます。
まず実施期間に関してですが、平成30年度から令和6年度、西暦に直しますと2018年度から2023年度の間で実施をしております。中間評価に関しましては令和元年、2019年の8月。事後評価は今回ですね。最終的には評価分科会に提出する時期は2025年の1月となっております。
次に、研究開発の目的なのですが、こちらは先ほどもプレゼンの方でもお話があったと思いますが、2030年代に就航が予想される次世代機用のエンジンのキー技術として、環境適合性と経済性を大幅に改善するコアエンジン技術の研究開発をJAXAにおいて進めましょうというものになっております。
実用化に向けては、産業界と緊密な連携を図るとともに、エンジンシステムレベルの技術実証を見据えて研究開発を進めて、その性能を要素実証する等、各技術の確立を目指していきましょうというものになっております。
次に、研究開発の必要性というところなのですが、こちらも繰り返しにはなってしまうのですが、こちらは高圧部に関しては残念ながら我が国の民間エンジンに関してはコンポーネントの設計とか開発段階に関して、いまだ実績がないような状況であります。これらの分担を獲得するためには、国際競争力を持った高温高圧部の技術を確立する必要があるとしております。
また、ICAOの方でNOx排出基準の厳格化が年々進んでいるというような状況でして、これらの国内基準化も見込まれておりますので、環境適合性と経済性を大幅に改善するコアエンジン技術の研究開発の必要性は極めて高いような状況であるといえます。
次に有効性ですが、有効性に関しましても次世代エンジンの共同開発を見据えて我が国の優位性を持つ鍵の技術、こちらの成熟度を速やかに向上させていって、実証レベルの高い技術を民間企業に渡していくというのが極めて有効であるとしております。次に行きます。
次に予算額なのですが、予算に関しては44億5000万円の予算を確保して、執行額も同様の金額となっております。課題の実施機関はJAXAであるのですが、研究代表者に関しましてはプロジェクトチームのプロジェクトマネージャとしてJAXAの山根さんが代表者となっております。共同研究機関に関しましては、IHIさんとKHIさんが対応しております。
次に具体的に事後評価票に移りたいと思います。まず、課題名は、これは定型文になっておりますので、書かせていただいたものは割愛させていただきます。この中でアウトプットの指標とアウトカムの指標というのがあるのですが、アウトプットの指標に関しましては、航空科学技術の研究開発の達成状況ということで、令和3年・4年・5年どれも共同研究2件となっております。アウトカムのところなのですが、研究開発における連携数に関しても過去3年度は年2件となっております。
次に航空科学技術の研究開発の成果利用数というところで、こちらは、見た目は0になっているのですが、先ほどJAXAさんのプレゼン資料でもありましたとおり、現在特許に関しては申請2件というような状況であります。
次に評価結果に移りたいと思います。こちらも先ほどのJAXAさんの発表に基づいた内容を文書化したものになっております。研究開発に関しましては、先ほども御説明いただきましたとおり2つの柱を進めていきました。1つ目に関しましては、超低NOxのリーンバーン燃焼器、2つ目は高温高効率のタービンになっております。
まず超低NOxリーンバーン燃焼器に関しましては、ICAO、CAEPの方でもNOxの排出に関する基準が厳しくなっているような状況ですので、これに対応する必要があるというふうになっております。海外研究機関の保有する技術に対しても優位性を有するものであって、技術要素に関しては以下のとおり完了したと書かせていただきました。1つ目がリーンバーン燃焼器技術、2つ目がライナ冷却空気削減技術、3つ目としては燃焼器過渡応答技術という形で書かせていただきました。
次に、高温高効率タービンということで、次世代エンジンに求められる高温高圧の動作条件においても、既存エンジンを上回るタービン効率を実現することで、燃費向上に大きく貢献するものであって、技術開発を以下の2点のとおり完了したと書かせていただいております。1つ目はCMC静翼の設計技術。それから実証に関しても書かせていただきました。2つ目は高効率のメタル動翼技術に関しても、設計技術及び製造、実証に関しても書かせていただいております。
次に必要性のところになるのですが、2018年からこの研究をスタートしておりまして、環境の変化、コロナとかいろいろあったような状況ではあるのですが、日本のエンジン産業は世界全体の売上高のうち6%前後を維持しておりまして、引き続き需要というものは高いような状況となっております。
この航空エンジンの国際共同開発において、主にエンジンの低圧部においては、V2500などを筆頭に分担を獲得・維持をしてきた結果ではあるのですが、先ほども申したとおり更なる飛躍をしていくためには、この低圧部だけではなく高温高圧部であるコアエンジンの分担の獲得というのが必要になってくるものと思います。
この課題の成果に関しては、コアエンジンの中でも燃焼器技術とタービン技術の競争力を大きく強化するもので、社会的な意義や経済的な意義は非常に高いものと書かせていただきました。
次に、科学的・技術的意義のところではあるのですが、後半のところで書かせていただいたのですが、高温高効率タービン技術によるタービン効率の改善とタービン冷却空気削減に関しては、エンジン全体の効率化を実現して次世代エンジンに求められる燃費向上に求められる大きく貢献する革新性の高い技術であるといえます。また、燃焼器に関しましても、ICAOのNOx排出に関する基準に対応する目的で開発したものなのですが、エンジン全体の効率化にはエンジンの高圧化・高温化が欠かせず、高温燃焼で生成されやすいNOxの抑制には低燃費化との両立に欠かせない意義の高い技術であるとさせていただきました。
次に、国費を用いた研究開発の意義というところでお話をさせていただきます。航空機産業というものは御存じのとおり多額の開発費を要することに加えて、開発期間や商品サイクルが20年以上と極めて長いものとなっております。研究成果と製品開発の間には乗り越えるべき難所がいくつもあるような状況です。これに関しては、民間企業さんだけでは事業リスクの高い分野であるというのは周知のとおりだと思います。
この課題では、民間企業さんとの連携も踏まえて研究開発を進めていく中で、技術移転後の民間企業主体の開発におけるリスクが過大にならないよう、実証度の高い計画に基づいて実施されていきました。
具体的には、燃焼器に関しましてはリーンバーン燃焼器の核心のところでもある高温高圧低NOx技術と、燃焼振動抑制レゾネータ技術のみならず、実用化に欠かせない燃料ノズルの流路断熱・冷却技術、過渡応答技術、CMCの燃焼器冷却・構造技術……割愛していきますが、これら複数の技術を、設計を行うとともに効率実証を行っていきました。これらによって、我が国の航空産業の振興を支える国費を用いた研究開発としての意義を高めたものと考えられます。
また、本研究開発の実施に関しましては、JAXAの持つ試験評価設備・評価技術が大きく貢献しており、燃焼器試験設備、回転タービン試験設備ともに、民間で維持管理を続けることは難しい大規模な設備であることから、国立研究開発法人としてJAXAは他機関に重複して設置することが適当ではない大型試験設備を整備・維持して研究開発基盤の高度化を実現することで航空科学技術の向上及び航空産業の振興に貢献したものと思われます。
加えて、この研究で得られた成果についても、査読論文や口頭発表を複数やっておりまして、民間企業による事業化への貢献のみならず、広く成果の発信にも努めているような状況です。有効性のお話に移りたいと思います。
次世代エンジンのキー技術となる環境適合性と経済性の向上について、成果としては他国よりも優位となる以下のような技術を獲得しております。1つ目は、低NOxの燃焼器技術ということで、ICAOのCAEP/8基準よりも8割少ないNOx値を実現する高温高圧低NOx技術と振動抑制のレゾネータ技術で、燃焼器の実用性には欠かせない技術です。こういった技術を複数確立していきました。これによって実機エンジンを使用した試験に供するための環状燃焼器の製作は可能な実証レベルまで達しております。達成したNOxの値は現在実用化されている全ての航空機の排出よりも少ないという結果を得られております。
ICAOのレビューのところでも2027年の中期目標としてCAEP/8よりも56%減を設定しておりますが、この開発で達成した80%減という値は、これをはるかに下回る低NOx性能で、技術の優位性と競争力の観点で優れるものと思います。
次にタービンのところなのですが、CMCの設計や製作では損失低減の3D形状の製作、フィルム冷却孔の加工に成功するとともに、翼表面温度1,300℃という極めて高い成果を確認しております。これは先ほどのプレゼンでもありましたが、世界に例のない結果ではあります。
タービン効率に関しましても損失低減設計による効率向上効果を回転タービン試験設備で実証して、公開資料に基づいて推定した世界最高効率を凌駕する成果を達成したことで、技術の優位性と競争力を獲得したものといえます。
次に移ります。少し割愛させていただきまして、中間評価時の指摘事項とその対応状況というところの話をさせていただきます。こちらは2019年の中間評価での指摘に関しては、無しというような形ではあったのですが、今お示ししている評価票のフォーマットの変更がございまして、当時のコメントの中で「技術移転後の民間企業における開発リスクが過大にならないよう、開発の実施期間を見直すべきであろう」というところで1年延ばしました。こちらは中間の指摘ではなかったものなのですが、フォーマットに合わせて書かせていただいたものです。
こちらの対応状況は、開始当初は30年度から令和4年度まであった実施期間を昨年度まで延長することで、タービン静翼の高温高圧下の健全性を確認する等、成果を獲得することができましたと書かせていただきました。
最後にまとめの方なのですが、総合評価ということで2つ書かせていただきました。本課題で達成した燃焼器の低NOx技術とタービン効率向上技術は、2050年ネットゼロに向けた取組が求められる中、CO2削減に欠かせないエンジンの高圧化・高温化に欠かせないキー技術であります。燃焼器に関しましては、核となるリーンバーン燃焼器技術とともに、実用化に欠かせない技術項目も目標に設定した上で着実に技術開発を行ったものでして、技術移転を見据えた成果でもあります。CMCの静翼についても実機同等の使用環境での耐久性を確認しておりまして、既存の金属翼を置き換える技術開発として大きく前進したものと考えます。
この課題は、研究開発の開始当初から研究開発成果の受け手であるメーカ2社、具体的には川崎重工さんとIHIさんの共同研究開発体制の下、参加しておりまして、成果の社会実装に向けた体制が構築されております。
航空エンジンの国際共同開発においては、既に国内メーカが獲得している低圧部に加えて、高温高圧部の新たな獲得に向けて、この成果の活用が大いに期待できるものと考えます。これはひいては我が国の航空産業の振興や国際競争力の強化に資するものであるものと考えます。
評価概要のところに関しましても、コアエンジンのうち超低NOxリーンバーン燃焼器技術とタービン技術の開発・実証により開発目標を達成したものと認められると考えております。開発した技術は、30年代に就航が予想される次世代航空機用のエンジンのキー技術であって、競争力強化に資する基盤となるものであると考えております。よって、我が国の航空エンジンメーカが目指すエンジンの高圧部の分担獲得に資するものであると考えます。
最後の今後の展望です。こちらは先ほどJAXAさんのプレゼンでもありましたが、2030年代に就航が予想される次世代エンジンの開発を注視していきながら本研究開発に参加し、成果の受け取り手であるエンジンメーカ2社が、コアエンジンの高温高圧部の設計段階からの参画を目指して実用化・事業化に向けた検討や活動を主体的に実施することができるかと思います。これによって、航空エンジンの全世界の売上に占める割合が我が国としても増大するものと期待をしております。
また、JAXAにおいては、実用化に必要なエンジン搭載試験等、成果のより高いTRLでの実証や、CMCに代表される新材料の低コスト・高レートの製造技術の開発等で国内エンジンメーカの活動を支援する。更には、コアエンジンの技術を核にオープンロータや電動化等、新世代の推進システムの実現のための技術開発の取組を進めていけるものと考えております。
更には、JAXAには本研究で活用した大型設備を活用した基盤研究の維持・強化が期待されるものと考えています。このうち燃焼器の評価技術に関しましては、今いろいろと話題になっております水素等の新燃料対応、エンジンの更なる高温高圧化に対応した試験評価技術・設備能力の強化が求められるものと考えます。簡単ではありますが、評価概要については説明を以上とさせていただきます。
【土屋主査】 ありがとうございました。これまでの発表、説明を踏まえて御質問、御意見コメント等はございますでしょうか。よろしいでしょうか? 佐藤委員、どうぞ。
【佐藤委員】 御説明いただきありがとうございます。燃焼器とタービンともに掲げた目標をクリアされたということで、データをなかなか見せづらいところもあると思うのですが、素晴らしいと思いました。
また、航空エンジンで高圧部に参入するということが技術面の向上だけでは難しいというのも理解しておりますので、ぜひ官民共同で成果をアピールしていただければと思っております。
いくつか質問があるのですが、例えば燃焼器などで、燃焼振動とかNOx排出量とかはサイズによって変わってくると思っているのですが、今回は中型機用のエンジンをターゲットとしているということでよろしいでしょうか。それとも、この技術はいろんなサイズに適用できるということでしょうか? すみません、ここに書いてありますね。
【伊藤プログラムディレクタ(JAXA)】 記載のとおりで、基本的にはそこをターゲットにしています。
【佐藤委員】 それとCMCに関して、バーナによる繰り返しの1,300℃の試験というのは、熱流束とかその辺りを考えた上での試験ということですか?
【伊藤プログラムディレクタ(JAXA)】 基本的には熱に関してのインプットになりますが、この辺りは専門的な内容になりますので、プロマネの山根の方からお答えします。
【山根プロジェクトマネージャ(JAXA)】 山根の方からお答えします。熱サイクル試験では、絵で見ても想像が付くと思うのですが大気圧で試験を行っていますので、実機の運用を想定したときに一番熱応力が厳しくなる場所を見積もっておいて、そこが試験時に同様の熱応力になるように、大気圧条件下で同じ条件になるように加熱時に応力が掛かるように、そしてバーナを離して冷やすというサイクルを作って試験をしております。
【佐藤委員】 なるほど。事前にここが危ないというところを、同じような熱応力になるように設定してやったということですね。
【山根プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、そうです。
【佐藤委員】 最後に、タービンの効率が向上しているのですが、静翼の温度上昇と、静翼、動翼の空力的な改善と、どちらが効いているのですか?
【山根プロジェクトマネージャ(JAXA)】 開発時にはそれぞれ3つから4つの効率向上の技術要素を設定して、それぞれどれくらいの効果が期待できるかという見積もりをして目標値を決めたのですが、実際のところは、どれがどれくらいのインパクトになるかというのは統合試験で分離できないので、それはなかなか分かりません。ただ、その手前の要素試験ではおおよそそれぞれが期待どおりの予想性能を発揮できるだろうということが分かった上で統合試験をしたというものです。
【佐藤委員】 よく分かりました。どうもありがとうございます。
【土屋主査】 よろしいでしょうか。冨井委員、いかがでしょうか。
【冨井委員】 日刊工業新聞の冨井です。JAXAさんに確認と質問なのですが、今回2つの研究成果に関して、リーンバーン燃焼器と高温高効率タービンを紹介していただいたのですが、それぞれのNOx削減率とタービン効率というのは、世界で最も効率性で優れていると考えてよろしいのですか? まず1点、それをお願いします。
【伊藤プログラムディレクタ(JAXA)】 今表示していますとおり、まずNOxの削減に関しては、ここのマイナス56%が世界的な目標であるところ、マイナス80%を我々が実現したと。たくさんプロットしてあるのが過去のエンジンの数字になっていますが、これを見ていただいても分かるとおり、それより非常に良い性能でありNOxが格段に下がっているという意味で、技術的にも世界的にトップの成果であると我々は自負しております。
それからタービンの効率に関しても、数字としては出されてはいないのですが、文字で書かれていますとおり、客観的な比較は困難であるのですが、公開資料に基づく推定を行って世界最高効率を凌駕しているというふうに我々としては分析している次第です。
【冨井委員】 その件で追加でお聞きしたいのですが、公開資料に基づく推定では凌駕するというお話で、比較はできないというのは多分出せないのもあるのかもしれないですが、世界最高効率を凌駕するといっているということは、何か数字のデータがあると私は思ったのですが、なぜこれは凌駕する成果だというのが分かったのですか?
【山根プロジェクトマネージャ(JAXA)】 これも山根の方からお答えいたします。今ちょうど出ているグラフで、目標に設定した効率の値というものは、これを達成すると、かつて公開されていたタービン効率の数字を少し上回ることを達成できるというところで、今飛んでいるエンジンの中では一番良い効率になると私たちは推定して、こういう目標を設定したというものです。
数字を申し上げられないのは、公開されているというのは論文で公開されていたのですが、その出典を明らかにすると、このプロジェクトに参加してくださったIHI自身の持っている技術レベルが逆に透けて見えるということがあるので、あえて出典は非公開にしております。
結果として、青い目標を達成するだけではなく、実際に緑のように更に上積みができたということで、表現としては凌駕という言葉を使わせていただいたということです。
【冨井委員】 少し確認で、今回成果を達成したのはこの緑の方の棒グラフで、左の真ん中のところが既存のチャンピオンデータだったということですよね。
【山根プロジェクトマネージャ(JAXA)】 真ん中がチャンピオンデータを僅かに上回るように我々が設定した目標です。
【冨井委員】 それで、この真ん中のものは今数字としてあるが、出せないデータだということなのですね。
【山根プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、そうです。
【冨井委員】 分かりました。ありがとうございます。
【土屋主査】 よろしいでしょうか。戸井委員、いかがでしょうか。
【戸井委員】 まず、カーボンニュートラルの指標としてATAGのシナリオに戻って評価するというのは非常に大事だと思うのですが、そこでも2.3%相当の成果が得られているということはものすごいことだと思います。非常に価値のある成果を出されたということと評価しています。
それから、カーボンニュートラルの世界では、水素だとか電気だとか、長期にわたる技術が目立つのですが、いわゆるこういった現行の推進システムの中で、着実な成果を出されるということがいかに重要かというのを最近ひしひしと感じています。というのも、次期開発ということで手を打ちながら我々が存在感を高めて、4月に経産省殿も航空機産業戦略を改めて出されましたが、要はいかにボリュームゾーンで我々の存在感を示すことが重要かということが産業戦略のポイントかと思いまして、そういう意味では対象とされている機体、エンジンの中で、こういう技術をアピールできること。それを更に設計の上位からの参画につなげたいというようなビジョンがしっかりされているというところが素晴らしいと思います。
なので、この成果をもってぜひ、途中にもありましたが、次の実際の設計に入っていただけたらと願っております。以上です。
【伊藤プログラムディレクタ(JAXA)】 御意見ありがとうございます。JAXAとしても御指摘のとおり、実際にエンジンの実現、社会実装の非常に近いところにつながる技術ができたというふうに自負していますが、これはエンジンメーカさんがこれから実際にエンジン開発に参入されていく、それを引き続きJAXAとしても、ここに書かれているとおり支援していこうと思っておりますし、御意見いただいたとおり、非常に重要な活動として我々は引き続き対応していきたいと考えている次第です。ありがとうございました。
【土屋主査】 よろしいでしょうか。他いかがでしょうか? 私から。事後評価票のアウトカムの指標のところなのですが、共同研究が2件あり、あと0が並んでいるというところが少し寂しいといいますか、本当は先ほど説明があったとおり、特許が2件出願中でもあり、ノウハウとして秘匿するべきもの、特許として公開できないものがあると。今の質疑応答の中にも、出せない技術というのがここに数字で表されないものがあるというところを、何か分かるような形で書いていただく方がよいかなと思いました。
【川上専門職(事務局)】 事務局の川上でございます。コメントいただきありがとうございます。おっしゃるとおりかと思いますので、こちらに関しては記載をしていくような形でいきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【土屋主査】 はい。よろしくお願いいたします。他いかがでしょうか。よろしいでしょうか?
それでは、議論も尽くされたと思います。本日頂いた指摘事項等を踏まえて、事後評価票の修正案については主査一任とさせていただいた上で研究計画・評価分科会にお諮りしたいと思いますが、よろしいでしょうか?
はい。ありがとうございます。以上で事後評価について終了いたします。
(3)その他
【土屋主査】 それでは、最後のその他の議題についてですが、臼井室長より説明事項がございます。お願いいたします。
【臼井室長(事務局)】 どうもありがとうございます。現在、航空科学技術研究開発関連として検討されておりますトピックスにつきまして事務局から御連絡申し上げます。なお、本件は現在検討段階でありますため、今回はノンペーパーで簡単に状況の御紹介とさせていただければと存じます。
御存じの方も多いかと存じますが、経済産業省において設置されております産業構造審議会 航空機宇宙産業小委員会において昨年8月に取りまとめられました中間整理を踏まえまして、昨年度から試験実証インフラ検討会において航空機の研究開発に関する試験実証インフラについて整備の方向性が検討されております。
本検討会の昨年度の成果といたしまして、協調設備選定のための判断基準に基づき協調設備となり得る候補を選び出し、協調して設備整備すべき設備の課題と対応策案が提示されております。
本年度以降は航空機産業戦略と照らし合わせまして、技術連携、インテグレーション度合、産官学のニーズ等を踏まえて協調設備となり得る候補を精緻化するとともに、設備導入の進め方について検討を深めているところでございます。
本検討に関しまして今後大きな進展がありましたら、必要に応じて適宜委員に状況を展開したいと存じますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。事務局からの説明は以上でございます。
【土屋主査】 本件について御質問、コメント等ございますでしょうか。よろしいでしょうか? では、以上で本日の議事は全て終了となりますが、最後に今期で退任される佐藤委員より御挨拶をお願いできますでしょうか。
【佐藤委員】 お時間いただきありがとうございます。この度、10年間務めました本委員会の役職を退任することとなりました。数えてみたら32回、委員会に出席したということになります。この10年間で航空業界は大きく変わりまして、私もなかなかついて行くのに大変で、いろいろ勉強させていただきました。
この委員会で特に印象深かったのは、1つの同じテーマに対して委員の皆さんの視点が全く異なっていて、時々私が考えていたことと全く正反対のことをおっしゃる方もいらっしゃって、その後私は言葉を飲んで喋れなかったりしたこともあったのですが、こういう多様な視点が融合して何かを作り上げるというプロセスがこれからの航空科学技術に欠かせない力だと思っておりました。
あと1点、残念だったのはコロナになってしまってオンラインの会議が増えてしまったので、最初の頃は委員会が終わった後に他の委員の方と親睦を深めたりする機会があったのですが、それが後半なかったのは少し残念だったかなと思います。やはり対面での議論というのも時には必要なのではないかなと思いました。
これまで大変ありがとうございました。引退するわけではないので、またいろんなところでお会いすると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【土屋主査】 佐藤委員には長年、当委員会に多大なる御貢献を頂きました。今まで本当にありがとうございました。それでは、本日の議事は全て終了いたします。進行を事務局にお返しいたします。
【川上専門職(事務局)】 土屋先生、ありがとうございました。最後に事務局の川上から連絡をさせていただきます。本日の委員会の議事録につきましては、事務局で案を作成しまして、委員の皆様に御確認を頂いた上で、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
また、先ほど主査からもお話がありましたとおり、本日の事後評価で頂いたコメントに関しましては主査一任とさせていただいた上で、研究計画・評価分科会に提出をしたいと思います。
それでは、これにて科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第78回航空科学技術委員会を閉会いたします。ありがとうございました。
(了)
研究開発局宇宙開発利用課