航空科学技術委員会(第77回) 議事録

1.日時

令和5年6月30日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

オンラインにて開催

3.議題

  1. 航空科学技術委員会運営規則について【非公開】
  2. 令和5年度研究評価計画について
  3. その他

4.出席者

委員

科学技術・学術審議会臨時委員  土屋 武司【主査】
科学技術・学術審議会専門委員  浦松 香津子
科学技術・学術審議会専門委員  太田 惠子
科学技術・学術審議会専門委員  河合 宗司
科学技術・学術審議会専門委員  佐藤 哲也
科学技術・学術審議会専門委員  戸井 康弘
科学技術・学術審議会専門委員  冨井 哲雄
科学技術・学術審議会専門委員  二村 真理子
科学技術・学術審議会専門委員  山岡 建夫
科学技術・学術審議会専門委員  和田 雅子

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当)  永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課 宇宙連携協力推進室長  須藤 正幸
研究開発局宇宙開発利用課 専門職  岩田 邦宏

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
 航空技術部門 理事/部門長  佐野 久
 航空技術部門 理事補佐/部門長代理  渡辺 重哉
 航空技術部門事業推進部 部長  渡辺 安
 航空技術部門 航空基盤技術統括  中村 俊哉

5.議事録

1. 開会

【岩田専門職(事務局)】 定刻となりましたので、ただいまから、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 航空科学技術委員会の第77回を開会いたします。
 本日はオンラインによりご出席をいただき、ありがとうございます。
 事務局を務めさせていただく、宇宙開発利用課の岩田です。
 どうぞよろしくお願いします。
 本日の委員会開始にあたり、航空科学技術委員会の委員10名である全委員にご出席をいただいており、定足数である過半数を満たしていることをご報告いたします。
 この他に議事次第2より、説明者としてJAXA、オブザーバーとして関係省庁にもご出席していただきます。
 個別のご紹介はお手元の出席者一覧をもって代えさせていただきます。
 続いて、資料の確認です。
 本日の配布資料については、議事次第に記載されており、あらかじめ電子メールにてお送りしております。
 資料の過不足やその他お気づきの点がございましたら、チャット機能にて事務局までお知らせください。
 本日は、事務手続きの関係上、冒頭から議題1「航空科学技術委員会運営規則について」が終了するまでは非公開となっていることをお知らせいたします。
 事務局より、第12期の始まりに際して、永井審議官よりご挨拶させていただきます。
 永井審議官、よろしくお願いします。
 
【永井審議官(事務局)】 文部科学省 審議官の永井でございます。
 最初に委員の先生方におかれましては、日頃から文部科学省の航空科学技術分野に関する取り組みにつきまして、大変なご尽力、ご協力を賜りまして誠にありがとうございます。
 第11期におきましては、航空科学技術分野に関する研究開発ビジョンを昨年の2月に取りまとめていただいた後、引き続き、分野別の研究開発プラン・プログラムを策定いただいたと聞いております。
 また、これらの内容につきましては、JAXAの中長期目標、中長期計画にも反映させていただきましたので、今後これらをしっかりと実行していくフェーズに来ていると思います。
 今回の12期では、これらの進捗状況について随時ご報告させていただき、ご助言をいただきながら進めていければと思っております。
 文部科学省では、航空科学技術分野も非常に重要だと思っており、しっかり進めていきたいと思いますので、引き続きご助言いただくようお願いいたします。
 本日はどうぞよろしくお願いします。
 
【岩田専門職(事務局)】 永井審議官、ありがとうございます。
 以後の議事につきましては、土屋主査にお願いしたいと思います。
 よろしくお願いします。

2. 議事

(1)航空科学技術委員会運営規則について【非公開】
・科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会運営規則第5条第3項の規定に基づき、土屋委員が主査に指名されており、同条7項の規定に基づき山岡委員が主査代理に指名されたことが報告された。
・科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会航空科学技術委員会運営規則(案)(資料77-1-2)、および航空科学技術委員会の公開の手続について(案)(資料77-1-3)について承認された。

(2)令和5年度研究評価計画について
【土屋主査】 それでは議題2に移りたいと思います。
 議題2は令和5年度研究評価計画についてです。
 事務局より説明をお願いいたします。
 
【岩田専門職(事務局)】 ありがとうございます。
 お手元の資料77-2-1「航空科学技術委員会における第12期の活動について(案)」をご覧ください。
 こちらは計評分科会より指定されているフォーマットに記載しております。
 第6期科学技術・イノベーション基本計画に対応する取り組みについて、(1)各部会・各委員会に関する研究および開発等に関するものについては、航空科学技術分野で推進すべき研究開発の方向性等について議論を行うことと、航空科学技術分野に関する研究開発ビジョンの内容について、定期的な見直しを行う等としております。
 (2)自然科学の「知」と人文・社会科学の「知」の融合である「総合知」の創出・活用に向けたものについては、第11期から継続して、同様の3項目を記載しております。
 続きまして、資料77-2-2「令和5年度航空科学技術委員会における研究評価計画(案)」をご覧ください。
 評価の目的や留意事項を記載しておりますが、今年度の評価対象課題はございません。
 しかしながら、今後の航空科学技術推進にあたり、ご議論いただく場合もあることをご承知いただければと思います。
 事務局からの説明は以上です。
 
【土屋主査】 ありがとうございました。
 ただいまの説明を踏まえて何かご質問等ございますか。
 よろしいでしょうか。
 それでは今の計画案について承認されました。
 どうもありがとうございます。
 今年度もよろしくお願いいたします。

(3)その他
【土屋主査】 最後の議題のその他になりますが、こちらは何かございますか。
 
【岩田(事務局)】 事務局よりご報告がございます。
 昨年末に本委員会でプログラム評価を行っていただきました。
 参考資料1のプラン・プログラム、および参考資料2のプログラム評価をご覧ください。
 参考資料1の2ページ目にあるプログラム全体について、参考資料2のプログラム評価を行っていただきました。
 プログラム評価について、昨年度の成果指標については、今年度取りまとめて報告を受けると、備考欄に注意書きをしておりました。
 JAXAにて、昨年度の実績の取りまとめが行われましたのでご報告いただきます。
 なお、プログラム評価は、前期である第11期については試行的運用でしたので、参考資料に添付しているプログラム評価票には反映しませんが、次回のプログラム評価時に、今回の報告も含めて反映するものとなります。
 ではJAXAより、報告をお願いいたします。
 
【渡辺安(JAXA)】 JAXA航空技術部門 事業推進部の渡辺と申します。
 どうぞよろしくお願いします。
 それでは資料に沿って説明させていただきます。
 ページをめくってください。
 2ページ目には、プログラム全体に関連するアウトプット・アウトカム指標として、過去3年の経緯とともに今年度の成果を現しております。
 航空科学技術の研究開発の達成状況ということで、共同研究、委託研究、受託研究の数をここで現しております。
 合計すると183という数字になっており、令和元年から見ていくと段々と増えていっている状況にあります。
 そのうちの共同研究については153件となっておりますが、記載ミスがありますので訂正させてください。
 委託と受託の順番が逆になっており、受託研究について11件、委託研究について19件という並びになっております。
 こちらは後ほど修正をいたします。
 申し訳ありませんでした。
 次の表をご覧ください。
 プログラム全体に関するアウトカム指標のうち、航空科学技術の研究開発における連携数を記載しております。
 上の合計の数字から、企業と実施させていただいている共同・受託研究数を抜き出したものとして、令和4年は183となっており、上と下の差分が大学との連携数を現しているとご認識いただければと思います。
 83件の内訳ですが、共同研究が72件で受託研究数が11件となっております。
 次の行には航空科学技術の研究開発成果利用数を記載しております。
 JAXA保有の知的財産(特許、技術情報、プログラム/著作権)は合計66件ございます。
 その中で今年度の主な成果を三つほど挙げさせていただきました。
 一番下の枠でございます。
 研究開発プランを考えるときに、エコシステムとして5つの類型を提示しております。
 一つ目は、主に標準化型と呼ばれるところで成果を得たものです。
 具体的にはアビオニクス装備品認証技術について、JAXA技術をベースとした認証取得の目途を得ることができました。
 認証プロセスを通じて蓄積した知見を、文書テンプレートや文書作成ガイドラインとして纏め、「航空機装備品認証技術コンソーシアム」を通じて民間企業に提供することを可能にしたというものです。
 日本国内の航空機産業では装備品が弱いということが言われており、その最大の課題は認証をどうやって取得していくかというところにありましたが、JAXAが先陣を切ることが出来ました。
 この成果はJAXAの中で持っているだけでは何の役にも立たないということで、本コンソーシアムを通じて民間企業に提供していくことで、JAXAが認証プロセスを通じて蓄積した知見を広く知れ渡らせ、これからの装備品産業が伸びていく素地を作ったというような成果でございます。
 二つ目はエコシステムの類型で言うと、ユーザー密着型と呼ばれている部分の成果になります。
 JAXAが開発した騒音予測モデルにより、従来モデルでは不可能だった測定点毎・機種別の騒音レベルの時間履歴と音源別寄与度の推定が可能となり、運航方法の変更や騒音低減に対する対策指標を示すことを可能にしたというものです。
 こちらにつきましては、成田空港に我々の音響計測システムを持ち込み、着陸してくる航空機に対して騒音を測りました。
 今まで日本のJCABが使ってきた騒音モデルというのは、航空機を一つの騒音としてまとめて、音の大きさだけを測ってきたものです。
 しかし、今回の我々の技術は、エンジンはどれぐらいの騒音であるか、スラットやフラップからどれぐらいの騒音が出るか、脚からどれぐらいの騒音が出るか等、全て分解できるようになっております。
 なおかつ、遠方から近傍に至るまでの時間的な推移についてもわかりますので、例えば騒音を下げる場合において、脚の上げ下げのタイミングやフラップをどのように展開していくかといったことまで踏み込めるような解析モデルが出来上がったということです。
 今後はJCABに成果を展開していくということで、非常に大きな成果であると考えております。
 三つ目は基盤研究です。
 類型で言うと、基盤技術提供型と標準化型が合わさった成果となっております。
 現在の耐雷試験規格について、SAEという世界的な業界団体があり、自動車だけでなく航空機も対象にしています。
 SAEの中のARP 5416Aはレポートナンバーでありまして、そういったところに標準技術として出していくということです。
 ARP 5416Aでは金属構造の知見が元になっており、金属と比較して低い電気特性に起因した被雷時損傷を生じる複合材で当該基準を用いる根拠が示されていなかったのですが、複合材に対して自然雷に近い試験条件再現手法を定量的に示し、試験規格の改定案を提案し承認されました。
 つまり、耐雷に関してどのように基準を満たしていくかというプロセスのところを提案したということで、将来このやり方を知っている日本は、国外に対して優位に立てるのではないかと期待している成果でございます。
 次のページをご覧ください。
 研究開発プランの中では大きく三つのプログラムに分類しているわけですが、一つ目は「既存形態での航空輸送・航空機利用の発展に必要な研究開発」に関連付けられる取り組みについてです。
 全体で183件あったうちの約半数が、このプログラムの中で出ているとご理解いただければと思います。
 全体の90件のうち、企業との連携が40件、ライセンス供与が7件ということです。
 この中には、共同研究としてもうすぐ事後評価を受ける、JAXAの中で「En-Core」と呼ばれているプロジェクトも含まれており、コアエンジン部分の研究開発をIHI社とKHI社の2社と共同研究を結んでプロジェクトとして進めております。
 最近では超音速旅客機の研究をしているのですが、海外メーカーのボーイングと共同研究を進めており、そういった事例もこの中に含まれております。
 次のページお願いします。
 こちらは「次世代モビリティ・システムによる更なる空の利用に必要な研究開発」に関連づけられる取組みについてです。
 こちらは全体規模としては少し小さなプログラムになっております。
 今年度は全体で23件の連携があり、企業連携が11件、ライセンスは23件になっております。
 次のページをお願いします。
 「デザイン・シナリオを実現するための基盤技術の研究開発」に関連付けられる取組みについてです。
 最近ではDXを使って航空機設計をしていこうという取組みがあり、そういった取組みもこの中に含まれております。
 研究開発の達成状況は70件となっており、そのうち企業連携は32件、知財のところは36件になっております。
 例えばここで一つ大きな成果が出ております。
 我々はそういった基盤技術として、CFD解析をするFaSTARというプログラムを使っているのですが、昨今ライセンス供与が非常に多くあり、今や1000万円を超えるようなライセンス収入が得られております。
 例えば、三菱重工や株式会社ヴァイナス等に使っていただいており、知財収入を得ています。
 その他に大学にも広く使っていただいているということで、最近のCFD技術は日本国内でも標準化されてきたため、そのような成果が得られてきております。
 私からの説明は以上です。
 
【土屋主査】 ただいまの説明を踏まえて、ご質問等はございますか。
 浦松委員、お願いします。
 
【浦松委員】 渡辺さん、ご説明ありがとうございました。
 プログラム全体に関連するアウトプット・アウトカムの指標を説明いただきましたが、少しずつ数も増えているということで、大変喜ばしく思います。
 IHIやKHI、ボーイングの話がありましたけれども、その他にどのような企業と協働されているのか、問題ない範囲でお教えいただけますか。
 
【渡辺安(JAXA)】 詳細なリストがありますので、また改めてご紹介させていただきますが、大企業だけではなく、中小企業と組んでやっている例も多くあります。
 代表例では雪氷滑走路モニタリング技術というものがあります。
 北海道のエアポートでは雪の被害が大きいのですが、滑走路の雪の状況や厚さまできちんと測ることができます。
 それを使うことで除雪のタイミング等を知ることができますので、それを実際に空港で取り入れてビジネス化しようと考えている中小企業と組んで進めていたり、大学とも多くの基礎・基盤研究を実施しております。
 
【浦松委員】 ありがとうございます。
 
【土屋主査】 よろしいでしょうか。
 佐藤委員、お願いします。
 
【佐藤委員】 ご説明ありがとうございます。
 件数が増えていることはとても良いことだと思いました。
 私から2点確認がございます。
 1点目は、共同研究等のアウトプットやアウトカム指標が増えているというのは、JAXAの中で何か推進していることがあるからでしょうか。
 2点目は、最初に認証プロセスや規格、計測といったお話がありましたが、航空機やエンジン自身の設計等の新しい技術についても、同様に件数が多いと考えてよろしいのでしょうか。
 
【渡辺安(JAXA)】 2つ目の質問から回答させていただきますが、その通りです。
 エコシステムでいうと、企業戦略密着型と呼ばれているカテゴリがありますが、そこが非常に多いです。
 今仰っていただいたような設計等でそういった出口を見据えた技術開発に取り組んでいる例は非常に多くございます。
 1つ目の、数が増えてきていることについてですが、基本的に第4期中長期計画と呼ばれているJAXAの中長期計画の期間がありますが、その中でイノベーションハブの取り組みを進めてきた結果とご理解いただければと思っております。
 広く異分野を含めた技術を糾合する観点で連携数が徐々に増えてきているということです。
 
【佐藤委員】 わかりました。
 どうもありがとうございます。
 
【土屋主査】 よろしいでしょうか。
 河合委員、お願いします。
 
【河合委員】 ご説明ありがとうございます。
 件数が伸びてきていること、FaSTARの収入が増えてきていることは非常に良いことだと思って聞いておりました。
 私からの質問は、数が増えていくことはもちろん大事なことだと思いますが、1件当たりの共同研究費、受託研究費、委託研究費はどのくらいなのでしょうか。
 日本の航空宇宙の学術や、こういったプログラムを進めるためには、件数が増えていても額が減っているのであれば良くないことと思っています。
そのあたりの情報をできる範囲で教えていただくことは可能でしょうか。
 
【渡辺安(JAXA)】 共同研究には二つの類型があり、無償型と呼ばれているものと、有償型と呼ばれているものがあります。
 無償型については、お互いに資金を持ち寄って実施するもので、JAXAでは運営費交付金の幾分かをそこに入れています。
 JAXAが担当するものの実施することが困難である場合、例えば設計・製作等を行う場合等は、相手企業に資金を渡して実施する、有償型の共同研究があります。
 先ほど説明したIHIとKHIの2社と進めているプロジェクトは有償型の共同研究をベースにしており、最終的には20億を超える規模になるものもあります。
 こちらは小さい規模の10万から100万単位のものから、数十億のものまで、様々なものがあるとご理解いただければと思います。
 
【河合委員】 ありがとうございます。
 大学機関とも共同研究をたくさん行っているとのことですが、そちらに関しても、可能な範囲でどのような状況かお教えいただけますか。
 
【渡辺安(JAXA)】 大学についてのデータは詳細な分析を行っていないため、改めて定量的なデータをお伝えしたいと思います。
 直観的には、大学については、そこまで大きな資金ではなく、数百万から一千万程度の資金を使っている感覚です。
 稀に有償型にて大学と実施する例もありますが、資金規模が大きいものでもそれくらいです。
 大抵の場合は、数十万から百万程度の無償型でお互いに持ち寄って実施するような共同研究が多いとご理解いただければと思います。
 
【河合委員】 ありがとうございます。
 件数にプラスしてそのあたりも指標に入れてほしいと思って質問させていただきました。
 
【土屋主査】 ありがとうございました。
 山岡委員、お願いします。
 
【山岡委員】 ご説明ありがとうございました。
 私からは2点ご質問させていただきます。
 1点目は、初めのほうにも説明があった、複合材の耐雷試験の規格を作られたことです。
 これは日本にとっても強みになる複合材の規格ということで、非常に重要であると認識しております。
 今後の複合材の作り方について、会社によっては従来のオートクレーブに変わる熱可塑性樹脂を使った作り方を模索しているところもありますが、今後そういった規格についてやる予定はありますか。
 2点目は、非常にアグレッシブにやられており、受託や連携数も増えているということですが、JAXA側の人的なリソースについて、どのようにお考えになっているのでしょうか。
 皆さんの仕事が非常に忙しくなっていると思われますが、今後そのやりくりをどのようにされていかれるのかということは非常に大事なことだと思います。
 今お考えのところを教えていただければ幸いです。
 
【渡辺安(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。
 まずは複合材についてですが、基本的にJAXAの取り組みとしては、標準化をメインに見据えて活動しております。
 したがって、作り方についても、良いものが出来て標準化をしっかり行っていったほうが良いというものがあれば、そこも想定していると思います。
 もしよろしければ、中村からフォローしていただけますか。
 
【中村(JAXA)】 JAXAの中村でございます。
 複合材の作り方が変わってきていることは、ご指摘の通りです。
 我々も自動積層装置をメーカーの協力の下で導入しており、新しい製造に対応した研究開発の方に舵を切っているのは間違いありません。
 その中でも特に熱可塑複合材がこれからの課題であることは強く認識しており、現在メーカーと連携して研究を進めていく計画を立てているところです。
 熱可塑樹脂の場合は、例えば材料内部の結晶化度が作り方に密接に関連し、それが強度にも関係する等、メカニズムをきちんと押さえた上で標準化に繋げる必要があります。
 熱可塑の話からは外れますが、CMCのように現在様々な適用が進みつつあるものについても、試験法等の観点で標準化の研究を進めており、実際にISOに採用されてきています。
 そういった活動も着実に進めてきておりますので、熱可塑のような新しい動きにも対応していきたいと考えております。
以上です。
 
【渡辺安(JAXA)】 2点目の人的リソースの件ですが、残念ながら航空技術部門の中で人員が少しずつ減ってきているのが現状です。
 その中で何とか連携をキープしていこうと頑張っているところであり、それに対して、現在2つの方法を考えております。
 一つは外部資金の活用です。
 最近はプロジェクト的な規模の活動についても外部資金を頂けるようになってきていますので、例えば、外部からの出向でJAXAに来ていただくことで人員増強を図るという考え方です。
 もう一つは、文科省の政策とは少し期間の乖離がありますが、来年度で今回の中長期計画が終わり、その後新たに7年間の中長期計画を立てることになります。
 そこで一旦検討を進めて、成果を最大化するために、この連携数は最適なのかということを改めて精査する考え方です。
 現在そういう時期に来ているとご理解いただければと思います。
 
【山岡委員】 承知しました。
 今後もいろいろと大変なご活動があると思っておりますが、ぜひ日本の航空技術のリーディングエッジとしてご活躍していただけることを期待しております。
 よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
 
【渡辺重哉(JAXA)】 人材のことについて、私から補足させていただきます。
 おっしゃる通り、JAXA航空に期待されている役割は明らかに増えていると思っています。
 外部資金についても増えておりますが、まさにJAXA航空に対する要請の高まりを表しているのだと思います。
 JAXA全体については、宇宙でも同じようなことがあり、文部科学省にご指導いただきながら、人件費を増やすという活動も進めており、現在は少しずつ増えていると思っています。
 ただし、航空技術部門についてはなかなか増えているという状況になっておりませんので、JAXA全体の人材が増えていく中で、航空の増員についても頑張っていきたいと考えているところです。
 以上です。
 
【土屋主査】 ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。
 和田委員、お願いします。
 
【和田委員】 ご説明ありがとうございます。
 先ほどのお話の中でイノベーションハブ等の取り組みによって、成果が増えていったというお話がありました。
 私の専攻が新規事業開発やイノベーション系ですが、そのあたりであまり知られていない部分もあるのではないかと思いました。
 ですから、そういう取り組みによってどのように、成果がイノベーションハブの中で契約に結び付いて、成果に繋がっていき、会社がどのような形で新たな取り組みを行っているのかということが数値化されていくだけではなく、指標として見える形で出していただけると良いのではないかと思いました。
 
【渡辺安(JAXA)】 承知しました。
 こちらについては、改めて詳細なご説明を差し上げたいと思います。
 概要だけ説明すると、例えば、航空機の電動化技術については「ECLAIR」と呼ばれるコンソーシアムをJAXA主導で作っております。
 また、航空機の安全に関わる部分は、様々な分野から人を呼んでくる必要がありますが、こちらは「WEATHER-Eyeコンソーシアム」と呼ばれるコンソーシアムをJAXA主導で作っております。
 最近では「航空機ライフサイクルDXコンソーシアム」も主導して作っており、いずれのコンソーシアムも数10社から、多いところだと150社以上入ってくるような活動となっております。
 そういった活動を進めていく中で、JAXAとの共同研究の種が出てきているのではないかと思っています。
 もう一つは、我々の中でイノベーションチャレンジと呼ばれる公募研究を行うような仕組みを作っております。
 元々マッチングされていないメーカーから自由にご提案していただいたものの中から、我々と共同研究できるようなテーマを選定させていただき、フィジビリティスタディからの共同研究に結び付けていくといった取り組みもしております。
 ただ、社会実装の実用化段階に至る全てを実施するのではなく、技術的な課題の解決について共同研究にて実施させていただいているとご理解ください。
 
【和田委員】 ありがとうございます。
 
【土屋主査】 戸井委員、お願いします。
 
【戸井委員】 今回の資料に対するコメントとは外れるかもしれませんが、良い機会ですのでコメントさせてください。
 今後の技術である、脱炭素に向けたカーボンニュートラルへの対応は非常に大きなテーマだと思っております。
 この一年間の動きを見ても、2050年にカーボンニュートラルという長期の目標に対して考えていかなければいけないと思っています。
 それに対して、2030年までの歩み方を打ち込んでいるのですが、改めてロードマップのペーシングを練り込むのが重要だと思いました。
 見方によっては、2050年の目標を考えて、2030年のレベルを改めて詰めていくことも産業界としては必要ではないかと思っている次第です。
 JAXAさんとも、そのあたりを議論して並行して動いていければと思っています。
 以上です。
 
【土屋主査】 ありがとうございます。
 JAXAさんより何かございますか。
 
【渡辺安(JAXA)】 コメントをいただきまして、ありがとうございます。
 戸井委員のおっしゃる通りと考えております。
 例えば、電動航空機のようなプロジェクトとして進めていけるようなテーマでは、2050年を考えたときに、2030年までにある程度のレベルまで上げておかなければいけないのではないか、というようなバックキャストをして目標を設定しております。
 もちろん、メーカーの方々とも議論をして、意見をすり合わせながら、今後取り組んでいきたいと考えております。
 どうぞよろしくお願いします。
 
【土屋主査】 ありがとうございます。
 他に何かございませんか。
 冨井委員、お願いします。
 
【冨井委員】 日刊工業の冨井です。
 アウトプット、アウトカムの指標数で、研究開発の連携数やその年にいくつやったかという数字は示されていますが、実際に社会実装や実用化まで追跡調査した数は何かありますか。
 今お示しいただいたデータだけを見ると、ただやっただけのように思えるのですが、いかがでしょうか。
 
【渡辺安(JAXA)】 社会実装までたどり着くことはなかなか大変ですけれども、そういった事例も出ております。
 そのあたりは、必要であれば改めて分析した結果をお示ししたいと思います。
 
【冨井委員】 わかりました。
 よろしくお願いします。
 
【土屋主査】 ありがとうございました。
 私からもよろしいでしょうか。
 先ほど人的なリソースについての話がありましたが、今後このような研究を進めていく上で、JAXAが保有している設備の更新や新たに設備を導入する計画があればお教えください。
 もう一点はコメントになりますが、このような大きな研究開発プランのようなプログラムとして上がってくるものに加えて、それぞれの研究員が自分の裁量でエフォートを割いて行うような研究は、意外と次世代の研究の種になるようなものが多いです。
 例えば典型的なのは電動航空機の研究です。
 10~20年前からコツコツとやり、このような新しいプロジェクトが立ち上がっているわけですが、今後もそのように大切にしていただきたいと思います。
 
【渡辺安(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。
 実は調布航空宇宙センターが出来てからもうすぐ70周年になります。
 元々風洞とともに敷地を作ってきたという経緯がございます。
 その風洞はコンクリート製の建屋で、コンクリートの耐久は65年と言われているところ、その年数に近づいております。
 老朽化が進んでおりますので、そういったところは手当をしていく必要があると思っており、調布航空宇宙センターをどのように再構築していくかといった検討を行っております。
 老朽化以外に考えておかなければいけないのは、将来必要な設備についてだと考えており、例えば、DXの流れがきている中で、これまで通り大量のデータを吐き出していくのか、そういったところをシミュレーションで置き換えていくというのであれば、そのシミュレーションを完全に担保できるような非常に高精度な検証データを出すような設備が良いかもしれないといった議論を進めており、設備の老朽化対策とも併せた計画について、航空科学技術委員会の中でもご紹介させていただければと思っております。
 もう一点のコメントについてですが、JAXAの研究では、プロジェクトのような大きい課題から、社会実装を目指した小粒の事業的なもの、さらに将来の種を作るための先んずる研究と呼んでいる研究制度があります。
 さらにアイデアベースでは、基盤技術探索研究のような新しい芽出しの研究制度を作っており、将来の種を作るところから本格的なプロジェクトまで取り揃えてやっております。
 将来の種を無くすわけにはいかないので、そこは重視しながら、基礎・基盤研究も重点的に見ていきたいと思います。
 
【土屋主査】 ありがとうございます。
 河合委員、お願いします。
 
【河合委員】 将来の種を作るということは、私も非常に重要だと思っています。
 渡辺重哉さんからも、今後、人件費を航空の方にも取っていきたいというお話もありました。
 研究の種を作るアイデアを持って臨む部分も重要ですが、継続的に若い方、例えば、博士課程の修了者を積極的にJAXAで採用していただくと、裾野が広がって次への良いプロジェクトに繋がると思っており、それもJAXAの一つの成果と考えておりますので、積極的に進めていただけるとありがたいと思います。
 コメントになります、よろしくお願いいたします。
 
【渡辺安(JAXA)】 ご指摘ありがとうございます。
 いろいろと検討に反映させていきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【土屋主査】 ありがとうございます。
 本日は活発な議論が行われたと思います。
 事務局からその他に関して何かありますか。
 
【須藤室長(事務局)】 事務局でございます。
 本日は活発に議論していただき、ありがとうございます。
 最後に事務局から情報共有をさせていただければと思います。
 経済安全保障重要技術育成プログラムにつきまして、進捗の状況をご報告させていただきます。
 昨年9月に第1次の研究開発ビジョンの決定が内閣府でございました。
 航空の分野については、災害緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術、超音速・極超音速輸送機システムの高度化に係る要素技術開発、航空機の設計性能認証等のデジタル技術を用いた開発製造プロセス高度化技術の開発実証、航空機エンジン向け先進材料技術の開発実証という4つにテーマが挙げられており、研究開発構想が昨年10月から12月にかけて順次発表されております。
 現在、ファンディング機関であるJSTおよびNEDOから公募が行われている状況にあります。
 これらのテーマが航空科学技術においても研究開発プラン・プログラムとして推進している部分ですので、今後採択されて具体な計画が示されたタイミングで、この委員会の場でも情報提供をしていきたいと思っております。
 以上です。
 
【土屋主査】 ありがとうございます。
 以上で本日の議事は全て終了になります。
 進行を事務局にお返しいたします。

3. 開会

【岩田専門職(事務局)】 ありがとうございます。
 事務局から事務連絡をさせていただきます。
 本日の委員会の議事録については、事務局にて案を作成し、委員の皆さまにご確認をいただいた上で、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。
 なお、次回の航空科学技術委員会の開催日については、別途日程調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 以上で、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第77回航空科学技術委員会を閉会いたします。
 ありがとうございました。

(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課