航空科学技術委員会(第65回) 議事録

1.日時

令和2年7月28日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためオンラインで開催

3.議題

  1. 航空科学技術委員会の運営等について (報告)
  2. 令和 2年度研究評価計画について
  3. 研究開発課題の評価について
  4. 研究開発ビジョンに関する今後の方向性について
  5. その他

4.出席者

委員

科学技術・学術審議会臨時委員  李家 賢一【主査】
科学技術・学術審議会専門委員  佐藤 哲也
科学技術・学術審議会専門委員  髙辻 成次
科学技術・学術審議会専門委員  武市 昇
科学技術・学術審議会専門委員  竹内 健蔵
科学技術・学術審議会専門委員  戸井 康弘
科学技術・学術審議会専門委員  冨井 哲雄
科学技術・学術審議会専門委員  松島 紀佐
科学技術・学術審議会専門委員  和田 雅子

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課長  藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙連携協力推進室長  平田 容章
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐  先光 吉宗

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
航空技術部門長  張替 正敏
航空技術部門航空プログラムディレクタ  村上 哲
航空技術部門航空システム研究ユニット長  牧野 好和

オブザーバー

経済産業省
国土交通省

5.議事録

1.開会

【先光課長補佐】 定刻となりましたので、ただ今から科学技術・学術審議会、研究計画・評価分科会 航空科学技術委員会(第65回)を開会したいと思います。本日はお忙しい中、また新型コロナ感染症の影響がまだまだ残る中、オンラインによりご出席をいただきましてありがとうございます。事務局を務めさせていただきます宇宙開発利用課の先光と申します。よろしくお願いいたします。
 初めに、本日は航空科学技術委員会の委員11名のうち、オンラインにて9名にご出席いただいておりますので、定足数である過半数を満たしていることをご報告させていただきます。この他、説明者としてJAXAに、オブザーバーとして関係省庁にもご出席いただいております。個別のご紹介はお手元の出席者一覧をもって代えさせていただきたいと思います。
 なお、JAXAの張替理事・航空部門長がこの4月に着任されておりますので、冒頭に一言ごあいさつを頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【張替部門長】  この4月よりJAXA理事航空技術部門長となりました張替と申します。よろしくお願いいたします。元々航空技術部門にいたわけですけれども、この3年間、研究戦略部長としてJAXA全体の研究戦略を見てまいりました。その中で、やはり航空・宇宙双方とも民間の力が非常に強くて、そのようなところに対応していくということが急務であると感じました。航空技術部門においても、民間事業者の方々の力をうまく取り入れて、より社会に役立つ研究にしていかなければいけないと思っておりますので、航空科学技術委員会の先生方の皆さまのご指導をよろしくお願いいたします。挨拶に代えさせていただきます。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。続きまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。本日の配布資料は電子ファイルにて事前に送付させていただいております。資料の65-1-1から65-4-1までと、参考資料1から5までをお送りしております。何かございましたら、随時事務局の方までお知らせいただければと思います。それでは、以後の議事につきましては、李家主査にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

2.議事

(1) 航空科学技術委員会の運営等について (報告)
【李家主査】 李家です。今回、初めてのオンラインでの開催となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは早速、議題の1から始めさせていただきます。研究計画・評価分科会の運営等についてということで、まずは事務局からご報告をお願いいたします。

【先光課長補佐】 はい。それでは事務局からご説明させていただきます。
 本議題は航空科学技術委員会の議事運営について、運営規則第4条の規定に基づきまして書面により議決をいただいた内容を同条の第2項に基づいて報告させていただくものでございます。
お手元の資料の65-1-1をご覧ください。
 今回、ウェブ会議システムによって開催を行うに当たりまして、航空科学技術委員会運営規則上の取り扱いを明確にするために、運営規則第7条の規定に基づきまして、委員会の議事、その他委員会の運営に関して必要な事項として、その運営方法について定めたものでございます。
 内容といたしましては、資料65-1-1に4つほど書かせていただいておりますが、主査が必要と認めるとき、委員等はウェブ会議システムを利用して会議に出席することができるという点。次に、ウェブ会議システムを利用した委員等の出席は科学技術・学術審議会で8条3項の規定による出席者に含めるものとするという点。3つ目に、ウェブ会議システムの利用において、映像のみならず音声が送受信できなくなった場合、当該ウェブ会議システムを利用して出席した委員等は、音声が送受信できなくなった時刻から会議を退席したものとみなします。4つ目に、ウェブ会議システムの利用は、可能な限り静寂な個室、その他これに類する環境で行わなければならない。なお、6条により、会議が非公開で行われる場合は、委員等以外の者にウェブ会議システムを利用させてはならないという点で、以上の点について、先週22日までに委員の皆さまには書面により賛成を頂いております。
 なお、開催方法については、直接出席できる場合は出席して、ウェブ会議システムを組み合わせる方法についてのご提案ですとか、環境によってはウェブ開催では出席ができないといった点について、委員の皆さまからご意見を頂いておりますので、今後の開催方法については、メリット、デメリットを踏まえて、引き続き検討させていただければというふうに考えております。
 以上、事務局からご報告をさせていただきます。

【李家主査】 ありがとうございました。今、最後におっしゃられた点ですけれども、今後検討いただいて、どのようになるかを連絡していただけると思えばよろしいでしょうか。

【先光課長補佐】 そのようにさせていただきます。

【李家主査】 お願いいたします。

(2) 令和 2年度研究評価計画について
【李家主査】 では続いて、議題2の令和2年度研究評価計画についてということで、事務局からご説明をお願いいたします。

【先光課長補佐】  事務局より説明をさせていただきます。本議題は、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を踏まえまして、研究計画・評価分科会で定められました「第10期研究計画・評価分科会における研究開発プログラム評価の試行的実施と研究開発課題の評価の実施について」に基づきまして、航空科学技術委員会における今年度、令和2年度の研究開発課題の評価について実施計画を定めたものでございます。
 お手元の資料、65-2-1をご覧ください。まず1.評価の目的です。評価の目的につきましては、令和元年度、昨年度の評価計画を踏襲したものになってございます。 2.には、評価対象の研究課題と書かせていただいておりますけれども、これについてはお手元の資料をおめくりいただきまして、パワーポイント形式の別紙1というものがございます。本年度は1件の研究開発課題がございます。具体的に申し上げますと、図中の赤色で囲ってありますところが本年度で、青色の三角形で書いてある事後評価として、静粛超音速機統合設計技術の研究開発について、今回の委員会においてご審議をいただきたいというふうに考えております。
 資料65-2-1に戻りまして、3.の評価方法等につきましては、事後評価のところに書かせていただいておりますけれども、記載内容については例年どおりでございます。4.の留意事項、5.のその他の内容につきましても、例年どおり記載をさせていただいております。事務局からの説明は以上です。

【李家主査】 ありがとうございました。
 ただ今のご説明に関して、ご質問やご意見等ございますでしょうか。ご発言ある場合はどういたしましょう。挙手をしていただくか、あるいは、声を上げていただければと思います。挙手をしておいていただければ、順番にご発言をお願いすることになるかと思います。挙手のオプションは、右側から2つ目の丸の中に「挙手」というのがあるかと思います。他の方法もあるかもしれませんが、それでお願いいたします。
 よろしいでしょうか。この資料2に関して、今年度行う評価は事後評価の1件ということだったと思います。もしよろしいようでしたら、この資料の研究評価計画の案については了承ということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。了承ということにさせていただきます。

(3) 研究開発課題の評価について
【李家主査】 続いて、議題の3に移らせていただきます。議題の3、これは研究開発課題の評価についてということで、事務局のほうからご説明をお願いいたします。

【先光課長補佐】 事務局のほうから説明させていただきます。研究開発課題の評価についてですが、まず、資料の65-3-1から3-3までが静粛超音速機統合設計技術の研究開発の資料でございます。資料65-3-1が1枚で研究の概要を書かせていただいたものです。資料65-3-2が今回ご審議いただく事後評価票の事務局の案を書かせていただいたものとなっております。65-3-2の参考として、評価票(案)の概要を整理したものを用意してございます。そして、65-3-3が本件の成果に関するJAXAの補足説明資料となります。まず、65-3-1、1枚の概要のものをご覧ください。
 本件は先ほどの議題の2のパワーポイントの資料でも少し書かせていただいたところでございますけれども、平成18年度から27年度にかけて実施された静粛超音速機技術の研究開発の後継事業でございまして、それまでに研究開発がなされたソニックブーム低減技術等の要素技術を機体レベルにおいて統合するものでございます。具体的には、資料65-3-1の右上にあります緑色の囲みのところにあります4つの要素である低ソニックブーム、低離着陸騒音、低抵抗、軽量化を同時に満たすシステム設計技術を世界に先駆けて取り組むとともに、国際環境基準に適合しつつ、アジア圏をノンストップで到達できる航続距離を実現するものとして、民間超音速機実現に必要な国際基準策定への貢献、小型超音速旅客機国際共同開発における競争力強化に向けた産学官一体の研究開発体制の構築および技術実証計画の立案、鍵技術ごとの技術目標達成のための要素技術研究のさらなる推進の3つを活動の柱として進めたものでございます。
 本研究課題の実施期間は平成28年度から平成31年度の4年間でございまして、昨年度末で実施期間を終えたところでございますので、今回航空科学技術委員会において事後評価をお願いしたいというふうに考えているところでございます。
 それでは、研究開発課題の成果の概要については、JAXAのほうからご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【村上プログラムディレクタ】 かしこまりました。私はJAXAの航空プログラムディレクタの村上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、資料65-3-3に基づきまして補足説明をさせていただきたいと思います。
 2ページ目でございますけれども、本日の報告内容でございます。研究開発の概要につきましては、ただ今、先光さんのほうからご報告、ご紹介がございましたので簡単に触れた後、本研究開発で行っている3つの実施事項について関連する動向、それから、それを踏まえた上での達成状況を報告いたします。科学技術基本計画に関連する、具体的には研究開発計画でございますけれども、それに対しての本事業における成果との整合、今後の展望という形でご報告したいと思っております。なお、7番、8番の各評価の各視点での自己評価ならびに中間評価における対応というものは、2番から6番までの話の中で説明した内容をこれに沿って整理したものでございますので、時間が許す限り説明したいと思いますが、場合によっては掻い摘んだものになるということを予めご了解いただきたいと思います。
 3ページ目になりますけれども、これは静粛超音速機統合設計技術の研究開発の概要でございます。先ほどご説明あったとおり4年の計画で、2016年に事前評価を受けまして、2018年に中間評価、この度事後評価ということでございまして、3つの実施事項がございまして、国際基準策定への貢献、それから産学官一体の研究開発体制の構築と技術実証計画の立案、3つ目が要素技術の更なる推進ということでございます。本日は説明の流れから、最初に国際基準の策定の貢献の(1)、その次に要素技術の研究の成果、最後に産学官一体の研究開発体制の構築と技術実証計画の立案に関する点について報告したいと思います。
 4ページ目になります。基準策定に係る動向の変化ということでございますけれども、超音速ビジネスジェットなどを中心としまして、米国が中心になっているわけでございますけれども、基準策定について進められつつあるというところでございます。具体的には陸域上空の超音速飛行のソニックブームの基準に関しましては、ご案内の方も多いと思いますが、基本的にはICAOでそのような基準策定を進めているわけです。それに貢献すべくNASAなどにおきまして、2021年に初飛行を目指した有人の低ブーム実証機を開発して、それを飛ばすことによって社会の受容性、どこまで許容できるのか、ソニックブームを許容できるのかということをICAOに提案していこうというような動きがございます。併せて、離着陸騒音につきましても、ICAOにおきまして議論されているところでございます。離着陸騒音サブグループというのが超音速のワーキンググループの中にできまして、それについては活動が完了しております。これは元々亜音速機の離着陸騒音基準がそのまま超音速機に適用できるのかというギャップアナリシスを中心とした活動でございまして、現在はその上にあるワーキンググループ1の中で具体的に、継続的に検討しています。2022年のCAEP12において案を提案しようというところになっておりますが、そのような動きがある中で、アメリカ航空局のFAAが先行して連邦航空規則の中で超音速向けの離着陸騒音の基準というのを提案しているというところでございます。この背景におきましては、後ほど述べます超音速ビジネスジェットの市場成立性の観点から、亜音速機の基準を緩めた形で先行的に出そうという、そのような米国を中心とした動きが進んでいるというのが、この中間評価以降の変化でございます。
 それにつきまして、5ページ目になりますけれども、私共が国際環境基準の策定への貢献ということで、我々とNASA等との共同研究、こういったことも含めまして、解析ツールを提供したり、あるいは予測モデルの提案、こういったものを通じて、ICAOで行われている基準策定に係る、特に定量的な面での検討に貢献してきていると、貢献したということでございます。まず、具体的な例といたしまして、ソニックブーム基準策定の貢献というところで、左下の低ブーム機の地上ソニックブーム強度分布解析例というのを見ていただきたいのですけれども、これは左側から右側に、左側が加速上昇しているところ、それから、右端が減速下降です。注目していただきたいのは巡航中のところでございまして、これは超音速機がこの黒い点線の矢印に沿って飛んでいる真下に、ある幅を持ってソニックブームが伝わっていくわけでございます。カーペット状になっているというものでございますけれども、このときに通常の低ブーム機ではない場合には、中心が一番、要するに、飛行の直下が一番ソニックブーム強度が強いわけですけれども、低ブーム機の固有の特性として、実は直下ではないところに、そこにブームのピークがあるということが我々の新しい知見として得られたので、これをICAOのほうに提供いたしました。このような結果を提供することによって、ソニックブームの認証手順の中で、直下だけではなく、そのような側方のブーム計測の重要性というものを指摘して、全体としてソニックブームを下げる必要があるというところに我々が先行的に気付いたわけでございます。このような貢献をしてまいりました。
 また、離着陸騒音の基準の策定につきましても、JAXA独自にエンジンを使った騒音の予測モデルというものの検証を行いまして、数ある予測モデルがあるわけでございますけれども、その中で超音速機用のジェット騒音、それに即したモデルが何であるのかということを検証も含めてやったことによって、幾つかあるジェット騒音のモデルの中から、JAXAが提案したものがICAOとしての予測モデルとして採用されるに至りました。また、先ほど申し上げましたアメリカの航空局が新基準を提案したわけですけれども、その中でもこのモデルが使われていると聞いております。このような貢献をしてまいりましたというのが本課題における実績でございます。
 6ページをお願いします。要素技術研究に関する動向というところで、具体的には民間超音速機の動向を簡単にサマライズしたものでございますが、冒頭に少し申し上げましたとおり、米国のベンチャー企業2社が中心となって今、開発が進んでいるというところでございまして、とりわけエアリオンのビジネスジェットAS2というものにつきましては、この2年で大きな変化がございまして、アメリカのエンジンメーカーであるGEがその主力エンジンを提供するということを発表した他、ボーイングが具体的にこの事業に対して関与し始めておりまして、その結果として、最近の報道によればですけれども、機体の形状が大きく変化しているというところでございますし、2026年のEISとか市場投入を目指して進めているということで、着実に実用化と言いましょうか、市場投入を狙ったものになっているということでございます。しかしながらですが、エアリオンのビジネスジェット、あるいはブーム社の50人乗り旅客機Overtureというのがございますが、いずれも低ブーム設計は適用されておりませんので、右の図にありますとおり、これは横軸がソニックブームの強さ、縦軸が離着陸騒音のレベルということで、何も色が塗っていない左下が両方の基準を満たす領域でございますけれども、この離着陸騒音も、それからソニックブームの強度も、いずれも満たすような、そのような機体が今提案されているわけではないということでございます。
 エアリオンの機体につきましては、エンジンの提供が具体的になってきているということがあって、FAAが出した新基準というものは、民間の騒音基準であるICAO Chapter 14、一番右下にある基準でございますけれども、これよりは緩やかになっておりまして、今後のエアリオンの機体を非常に意識した形になっているのではないかと考えているところでございます。いずれにいたしましても、ソニックブームと離着陸騒音の基準を同時に満たし得るような機体というのは、今、現時点では提案されていないということでございます。
 それを踏まえまして7ページ目でございますけれども、本研究開発におきましては、環境適合性と経済性を両立した超音速機旅客機実現に必要な鍵技術ということを進めようというのを大きな目標として、先の低ブーム設計概念の実証を中心とした研究開発の後継事業といたしまして、経済性に関わる部分、ここを維持しつつ、環境適合性に関わる性能をさらに高めようという取り組みをしてまいりました。左下が環境性能に関わるベンチマークをしたマップでございまして、先ほどお見せした、動向のところで見せたマップと同じでございます。横軸がソニックブームの強度で、縦軸が離着陸騒音のレベルということでございまして、これを見ていただくと分かりますように、我々の技術目標というものは、この白枠の中に設定しておりまして、昨今の機体の開発動向や基準策定の動向に照らしても、いまだに高いレベルであると考えているところでございます。
 この技術目標に対しての達成につきまして、8ページ目でございます。要素の技術の研究といたしましては、大きくは4つございます。ソニックブーム、離着陸騒音、揚抗比、構造重量。特に、環境適合性に関わる部分がソニックブームと離着陸騒音というところで、これを両立するような機体概念を提示しましょうというのが研究開発の目標でございました。具体的に言いますと、ソニックブームにつきましては85PLdB、これはICAOなどで陸上超音速飛行が可能と、許されるのではないかと言われているレベルでございますが、これを達成したかどうかというところ。それから、離着陸騒音については、亜音速機と同等の基準、ICAO Chapter 14適合というところ。例えばソニックブームにつきましては風試などの検証なども含めまして、我々が特許として持っている遮蔽(しゃへい)フィンの技術、このようなものを加えまして、かつ揚抗比と構造重量の低減の技術も含めて統合的な最適設計を行った結果として、85PLdB以下を達成することができたということでございます。それから、離着陸騒音につきましては、特に自然層流翼、これは揚抗比の向上に直接関わる部分でございますけれども、その自然層流翼を実現しつつ、高揚力、離着陸時の揚力特性を上げるというクルーガーフラップを適用することによって、低速時における揚抗比を上げ、騒音を低減できるという技術が4年前に比べて大きくなったということでございまして、その他、もちろんエンジンの遮蔽配置であるとか、低騒音ノズルという効果を含めて、最終的に解析レベルにおきまして検証いたしました。その結果が右の図の一番上の棒グラフになっているところでございますが、まず縦軸が基準に対する、余裕、マージンでございます。途中に、破線の部分で「Chapter 14適合」と書いてある部分があると思いますけれども、これより上になっている部分が大切でございまして、実は離着陸騒音は3つ、離陸時の側方、離陸時の上方、それから着陸時の騒音、この3つの騒音のレベルの総和、それがそれぞれのものになっているわけでございますけれども、これは総和だけを見ていただきたくて、その総和が一番右にある2つの棒のグラフでございます。赤いグラフが先の4年前までの成果、今回の成果、クルーガーフラップの効果などを含めた結果として青色になっておりまして、Chapter 14に対してマージンを持って得られる見通しを得たということでございます。このように、経済性あるいは航続性能を維持しながら要素技術を適用した統合設計技術で機体概念の検討を得て、先ほどお示しした技術目標を満たす機体のコンセプトとしての形状は提供することができたということで、我々としてはこの技術目標につきましては達成したと考えているところでございます。具体的に、自然層流翼の設計技術などを含めた全体としての巡航揚抗比の目標、それから構造重量の目標につきましても、これは高精度CFD解析、要素レベルとしてはちゃんと風洞試験などで検証したものでございますけれども、そのようなもので解析レベルでございますけれども達成しているというところでございます。それぞれにつきまして、非常に大ざっぱな説明になっておりますので、本資料の一番後ろに参考として別添が付いてございます。何かご質問等あったときには、それを使いながらご説明いたしますけれども、全体的にはここでご説明したということにさせていただきたいと思います。
 では、9ページ目になりますけれども、そのような要素技術研究の中で特に今回特筆すべき成果と、ご案内したいものがございます。これは先ほどブーム基準の策定のところで、我々の新しい知見ということで、実は低ブーム機の場合には、機体の飛んでいる直下というより、むしろ側方でピークを持つという特性があるのではないかという新しい知見をICAOに提供したわけでございます。それを予め、我々として先に取り組みました。そのようなものの中で、側方のブームを一緒に下げるという、総合的に下げるという設計法というのを世界に先行的に進めておりまして、その設計形状を創出し、特許として押さえているところでございます。これは、言葉としては全機ロバスト低ブーム設計技術と言っているものでございまして、これは右下の図を見ていただきたいと思います。右下の横軸は、これは側方の伝播角度と書いてありますけれども、簡単に言いますと、ゼロが機体の飛んでいる直下でございまして、右に行けば側方、要するに直下から横にずれていると思ってください。
 例えば、初期形状と書いてあります、これは要するに、低ブーム化していない形状のブーム強度を横方向の分布を示したものでございまして、当然直下が一番高くて、離れれば離れるほど弱くなる、これが普通のソニックブームの分布でございます。しかし、低ブームを機体直下に特化して設計してしまうと、青色のようになってしまう。これが普通に低ブーム設計した場合のケースでございまして、それに対して赤色、これが我々が新たに今回の研究開発の中で発案して、特許として出願している全機ロバスト設計手法というものに基づいて設計した結果でございまして、見ていただくとおり、伝わっているソニックブームのカーペット上全てにおいて低ブーム化が図られていると。機体の特徴といたしましては、左の図にあるとおり幾つかあるのですけれども、一番ここのポイントというのは、要するに低ブーム設計として海外も色々やっているわけでございますけれども、直下だけを最適化しても、側方で高くなってしまうということが分かって、今はその基準も含めてですけれども、全体としてのブームを下げる必要があるというところで、ここに我々の新しい技術を求めて、見つけてきたということでございます。
 次のページになりますけれども、この技術を踏まえまして、10ページでございますけれども、技術実証計画の立案という中で、我々は元々は低ブーム離着陸騒音、低抵抗、これらを両立した形の実証というものを目指してまいりました。それぞれの個別の部分について、飛行実施をするのはこの1年間の計画の中で非常に難しいということも分かりまして、もちろん離着陸騒音、それから低抵抗というものを実現しつつこの低ブーム設計をする、特に、このロバスト低ブーム設計をするというところに我々として優先的に実証していこうということで絞り込みを行いました。
 なお、先ほど言ったロバストな低ブーム設計、要するに、全ての伝播に対して低くできる、要するに、ピーキーなものでないものという設計をしたときにも、我々の設計法におきましては、空力性能の低下は見られないということが分かっておりますので、この低ブームと低抵抗の両立という意味では極めて有効な技術課題だろうと考えて、それを優先的に実証すべき課題として絞り込みました。この効果的な実証方法というのはソニックブーム固有のものであって、つまり長い伝播距離の結果として、それが初めて実証されるものでございますので、どうしても飛行実証が必要だということで、これを中心といたしまして、航空機メーカーとともに、その概念検討を進めてまいりました。実証機としてのシステム成立性自身は向上することができたのですけれども、これは後ほど、別添の参考3を見ていただくと分かりますけれども、実証する技術の課題、要するに、低ブーム性というものをきちんと評価しようと考えたときには、やはり実際にシステムとして成立させるためには、中に臓物、色々な装備品であるとか、あるいは推進系との統合であるとか、そのような課題が、逆に言うと明らかになったということで、さらに我々としては検討が必要だという状況になっております。私共といたしましては、ステークホルダーと連携して、より費用対効果が高くて、日本の技術、我々は今、全機ロバスト低ブーム設計によりまして、これを示すような実証計画を目指していきたいと考えているところでございます。
 次のページをお願いします。11ページでございますが、これは研究開発体制の構築ということで、そのような研究開発の中で、特に全機ロバスト低ブーム設計技術を活用しながら、ボーイングとの連携強化、このようなものを図ってきているところでございます。また、NASAにつきましても、基準策定に関わるところで、これまでも共同研究を進めてまいりましたけれども、X-59のプロジェクトに関する連携強化ということで、今後進めていくということも考えているところでございます。これまではブームの評価というところで、非常に密接な研究をやってまいりました。このような国際的な研究体制の具体的な強化というものを進めると同時に、日本の産業界、共同研究とか委託研究等を通じて、JAXAが先導する形でこの研究開発をこれまで進めてまいりました。それをさらに一歩進めるということで、昨年から外部有識者委員会というものを立ち上げまして、関連業界、それから大学、省庁も参加した、そのような委員会をこれまで積み重ねてまいりました。その中で、産学官一体となる、司令塔となる協議会を設置して、今後のビジョン、ロードマップ、技術目標を共有して、日本として一体となって研究開発体制の構築を目指そうと、そのようなことが重要であるという提言を受けて、これからそれを作っていこうというところでございます。また、一方、この有識者委員会の中では優位技術を先行して実証していくことが必要だということも提言されておりまして、このようなJAXAの優位技術の実証という計画も含めまして、この協議会の中で議論して新たな研究計画というのを立案してまいりたいと思っているところでございます。
 次のページをお願いします。12ページは科学技術基本計画の貢献状況でございますけれども、これは冒頭申し上げたとおり、本活動自身は研究開発計画に沿った形で進めてまいっておりまして、研究開発計画に掲げられた取り組みを推進ということで、科学技術基本計画に貢献しているものと、私共としては考えているところでございます。もちろん、科学技術基本計画といいますか、研究開発計画におきましては、12ページの右下に具体的な記載が書いてございますけれども、それぞれに即した形で、ただ今成果をご説明したと思っています。これは直接的な成果と我々は言っておりまして、研究開発計画に次世代を切り開く先進技術の研究開発、静粛超音速機統合設計技術の研究開発という形で、そこに記載されたものに対して貢献しました。併せて、先ほど申し上げましたとおり、様々なエンジンに関する性能と言いますか、騒音の評価ツールであるとか、あるいは排気影響の、ソニックブームへの影響のシミュレーション、あるいは実験との組み合わせによる評価、技術であるとか、そういった基盤的な技術の強化にも併せて貢献したと考えておりまして、研究開発計画でいきますところの、12ページの右横になりますけれども、航空産業の持続的発展、基盤技術の研究開発ということにつきましても、CFDであるとか、試験技術という面で強化に寄与したものと考えております。
 13ページをお願いいたします。今後の展望でございますけれども、先ほど、繰り返し申し上げてきておりますけれども、我が国一体となった研究開発の体制の構築ということで、低ブーム民間超音速機の国際共同開発に我が国産業界が計画段階から参画できることを可能とする、そのような体制の構築をしていきたい、具体的には協議会の設置ということで、この年度内に進めていきたいと考えているところでございます。また、短期的な取り組み方針ということにつきましては、先ほど申し上げたとおり、中心となる優先的に実証すべき課題といたしましては、全機低ブーム設計技術ということを我々としては考えておりまして、全機ロバスト低ブーム設計技術の飛行実証データ、このようなものを先行して得ることによって、民間超音速機の市場を開くような、ICAOによって騒音基準の策定、ソニックブームの策定とか、そういったプロセスの加速にも貢献していきたいと考えています。もちろんこのような技術を開発するに当たっては、日本の研究開発プロジェクトとして、JAXAだけでなく、関連する国内外の主要ステークホルダーと共有しながら、ここのプロジェクトが進められるようにしていきたいと考えているところでございます。
 14ページ目、時間もだいぶ来ましたので、掻い摘んだ説明にさせていただきたいと思いますけれども、評価の視点は必要性、有効性、効率性の3点でございます。必要性につきましては、7ページのところの技術目標のページなどで申し上げましたとおり、基準策定の動向であるとか、機体開発動向を踏まえても、未だに当該研究開発において4年前に設定した目標というのは陳腐化していないと考えておりまして、かつ、超音速ビジネスジェットでございますけれども、あるいはブーム社における旅客機の開発動向、このようなことを踏まえたときに超音速飛行による移動時間の短縮への期待というのは、今も変わっていないのではないかと我々としては評価しているところでございます。一方、例えばX-59の開発に見られるように、ソニックブーム基準策定であり、低ブーム化の技術といったものにつきましては、技術リスクが高いということで、国として投資すべき課題ではないかと我々としては考えています。有効性に関わるところといたしましては、こういった高い技術目標を設定したことによって、また、国際環境基準策定というところに深く関わることによって知見を得て、世界の動向を素早く得て、例えば全機ロバスト低ブーム設計技術を世界に先行して開発するというような効果を得るというようなことで、今回この事業で加えた国際環境基準への貢献とか、それに関わる活動というのは非常に有効な手法であったと考えているところでございますし、また、併せて基盤技術の高度化と、シミュレーション技術や試験技術という意味でも貢献したと考えております。それから、行政施策への貢献という観点では、平成26年に文科省の次世代航空科学技術タスクフォースがとりまとめました、「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」の提言する超音速旅客機市場の開拓を推進すべき我が国優位技術の実証・確立に貢献したと、それに繋がるものであると、我々として考えております。これに関わる成果については、先ほど言ったとおりですので省略させていただいて、波及効果といたしまして、航空宇宙学会の中に超音速に関する研究会が発足しているほか、学会などでオーガナイズドセッションが設定されたり、あるいは国際学会におけるワークショップなどで、日本としての成果を提供することでプレゼンスの向上、このような波及効果もあったと考えております。
 15ページ目が各評価視点の自己評価ということでございますが、効率性という観点で、ボーイングや国内メーカーとの共同研究の推進ということで、企業側に供試体の製作・提供、このようなものをお願いすることで、適切な役割分担の下で研究開発を効率的に進めたと考えておりますし、特に、国際基準策定の貢献という観点では、NASAなどの海外公的研究機関の共同研究が効果的であった、あるいは有効であったと考えているところでございます。併せて外部有識者の委員会を開催いたしまして、技術実証構想の策定に向けた連携体制の強化を今、図りつつあるというところでございます。
 最後、16ページが中間評価における指摘への対応ということで、たくさん、色々指摘を頂いておりますけれども、大きくは外部連携、外部リソースに関する話。それから、次のステップに向けた体制の構築の話。それから、ICAOの基準の策定状況であったり、年度ごとの進捗などを踏まえた柔軟な活動ということで、それぞれに対しては、今まで申し上げたとおり外部連携、リソースにつきましては企業との共同研究であるとか、海外公的研究機関との共同研究、このような中でそれに対応してきたと考えております。また、ICAOの基準策定の状況などについて柔軟な活動ということで、騒音の基準に対する解析技術を新たに始める、そのようなことなどに貢献してきていると思っております。体制構築につきましては、外部有識者委員会などを通じまして、今後司令塔となる協議会を設置していきたいというところで、そこの部分に我々として外部有識者委員会の設置、それから、検討ということで貢献したと考えております。
 すごく長くなりましてすみません。説明は以上でございます。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。続きまして、資料65-3-2の事後評価票の案につきまして、事務局のほうから簡単にご説明をさせていただきたいと思います。 資料65-3-2は先ほど承認いただいた研究評価計画の評価票の様式に基づきまして、JAXAにおけるこれまでの成果を基に、中間評価との対比をするよう事後評価案を並べて書かせていただいたものです。今回の評価に当たり、事務局で作成した事後評価案を中央の青字で記載させていただいております。評価結果は2ページから課題の達成状況、これにつきましては、先ほどのJAXAのご説明を文章としたものでございますが、そのため詳細につきましては、ここでは省略させていただきたいと思います。
 続きまして、10ページから、必要性、有効性、効率性の3つの観点からそれぞれの評価項目、評価基準に基づいた評価、その後に科学技術基本計画への貢献の状況と総合評価、今後の展望を記載しております。これらの評価につきましては、65-3-2の概要、最後に1枚紙で付けておりますけれども、こちらも参照しながらお読みいただければというふうに思います。10ページです。必要性のほうから簡単にご説明をさせていただきます。
 必要性につきましては、科学的・技術的意義、社会的・経済的意義、国費を用いた研究開発としての意義の3つの評価項目について評価基準に沿って記載をしています。
 科学的・技術的意義、先導性・発展性があるかどうかにつきましては、次世代超音速機の国際共同開発への主体的参加を視野に入れ、その実現の鍵である環境適合性と経済性の両立を実現するという社会的ニーズの高い技術を開発・実証することにより、世界における優位技術の獲得を目指し、先導性・発展性が高いものであるというふうに判断をしております。
 また、ソニックブームに対するエンジン排気の影響を低減する遮蔽フィン技術、機体側方も含めた全域のソニックブーム強度を低減する全機ロバスト低ブーム設計技術や離着陸騒音低減に資する低騒音ノズル設計技術、これらいずれも特許出願または取得済みということですけれども、これらは独創性が高く、世界に対して優位性を有する研究成果が創出されるとともに、超音速旅客機に対する騒音基準の策定・認証に活用可能なソニックブーム伝搬解析/騒音予測ツールというものが解析されており、独創性、発展性が高い研究開発であったというふうに判断しております。これらを踏まえまして、科学的・技術的意義は高かったというふうに評価をさせていただいております。
 続きまして、社会的・経済的意義、産業・経済活動の活性化・高度化に資するかどうかという点につきましては、長期的な視点で超音速旅客機についての研究活動を推進することは「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」に提言されているところでございますが、海域上空のみ超音速飛行を行う機体の実機開発というものが米国おいて進められておりますけれども、これを受けてFAAにおいても2020年3月に離着陸騒音に関する新基準を公表するなど、早期の市場投入の可能性が高まっているという状況を踏まえますと、超音速機による移動時間の短縮の社会的ニーズは高いというふうに判断しています。
 また、本研究でのICAOでのソニックブーム基準策定や離着陸騒音基準の策定の技術的な貢献というものは、わが国のこの分野での技術的な優位性の確保にもつながり、低ブーム超音速機の国際共同開発において、わが国産業界が競争力を発揮できるといった意義を有するなど、航空産業の活性化・高度化に資するものであると判断しております。これらを踏まえまして、社会的・経済的意義は高かったというふうに評価をさせていただいております。
 また、国費を用いた研究開発としての意義、国や社会のニーズに適合しているかどうかにつきましては、陸域上空も超音速で飛行可能とする低ソニックブーム設計技術を含む技術開発というのは、さらなる移動時間の短縮につながることから、社会的な価値が大きいと考えられる一方で、技術リスクが高く、多額の研究開発投資が必要となるため、国費での研究開発による技術課題の解決というものに対する期待は非常に大きいというふうに判断しております。これらを踏まえまして、国費を用いた研究開発としての意義は大きいというふうに評価をしております。
 以上の3点によりまして、本課題の必要性というものは高かったというふうに評価ができると考えております。
 続きまして、13ページ、有効性ですけれども、有効性につきましては、研究開発の質の向上への貢献、行政施策への貢献や寄与の程度、見込まれる直接・間接の成果・効果や波及効果の内容の3つの評価項目について、評価基準に沿って記載をしております。
 1つ目の研究開発の質の向上への貢献。これまでの研究開発から技術レベルが向上されているかどうかという点につきましては、ICAOでの基準策定の動向を踏まえまして、環境適合性に係るソニックブーム、離着陸騒音の技術目標をより高い目標に設定をして、特に、従前のS3のプロジェクトでやっておりましたソニックブーム基準はコンコルド比で半減の目標というものから、今回は陸域上空の超音速飛行が認められると想定される85PLdB以下に変更しております。
 離着陸騒音につきましては、従前のS3のプロジェクトでの適合目標であったChapter4から強化された基準であるICAOのChapter14への適合に変更されております。これら厳しくなった目標を満たすために、低ソニックブーム化に資する遮蔽フィン技術、全機ロバスト低ブーム設計技術や離着陸騒音の低減に関する低騒音ノズル設計技術など、独創性が高い成果に加えて、エンジン排気がソニックブームに与える影響について風洞試験で評価するためのエンジン排気評価技術の開発など、基盤技術の強化につながる成果も創出し、研究開発の質の向上に貢献したというふうに判断しております。
 2点目の行政施策への貢献や寄与の程度。わが国優位技術の実証に資するかどうかにつきましては、これまで開発されている海域上空のみで超音速飛行を行う機体については、いずれも飛行実証された低ブーム設計技術を有しておらず、本研究開発における陸域上空を超音速で飛行可能とする低ソニックブーム設計技術には、依然としてJAXAに技術的な優位性があると言え、また本研究において産学官一体の研究開発体制の構築および技術実証構想の立案に向けて取り組んだことは、戦略的次世代航空機研究開発ビジョンで提言されている超音速旅客機市場開拓のために推進すべきわが国優位技術の実証・確立に資するものであり、行政施策への貢献や寄与は高かったというふうに判断しております。
 3点目の見込まれる直接・間接の成果・効果や波及効果の内容。研究成果・効果により、産業界や学会に対して波及効果が得られるかどうかにつきましては、本研究開発の直接の成果3点、基準策定への貢献、超音速機実現の鍵技術の獲得、技術実証構想の策定について、陸域上空の超音速飛行を可能とする基準策定は、超音速旅客機の市場開拓に必要な要素であり、また基準策定への貢献を通じて、当該分野でのわが国のプレゼンス向上や技術的優位性が国際的に認知される波及効果が期待されるものであります。
 本研究開発において、国内メーカーとの共同研究体制を構築したこと、日本航空宇宙学会の超音速研究会の設立に貢献したこと等は、産学の連携、関連研究を活性化して研究レベルの向上を促し、わが国航空機産業競争力の土台となる波及効果を生むものであると判断をしております。
 以上の3点から、本課題の有効性は高かったというふうに評価できると考えております。
 続きまして、17ページの効率性ですけれども、効率性については、計画・実施体制の妥当性および研究開発の手段やアプローチの妥当性、費用構造や費用対効果向上方策の妥当性の3つの評価項目について評価基準に沿って記載をしております。
 まず、2点まとめてですけれども、計画・実施体制の妥当性及び研究開発の手段やアプローチの妥当性。他機関との連携等、研究開発をより効率的かつ効果的に実施するための方策が取られているかどうかにつきまして、研究開発においては、公募型研究制度の活用等により、将来の機体開発に意欲のある企業の提案に基づく共同研究体制の構築が図られており、企業は供試体の製作や提供、メーカーの知見を生かした要素技術適用が及ぼす全機システムへの影響評価などを担当しておりました。また、基準策定に向けては、海外公的機関との国際共同研究を推進することで役割分担を明確化するとともに、保有技術の相互検証を進めておりました。こういった活動によって、JAXAと他機関との間でリソースの有効活用ですとか、知見の補完というものが行われ、効率的かつ効果的な実施体制により研究が進められたというふうに判断しております。
 技術実証構想の策定に向けては、運航者との意見交換の実施や外部有識者委員会での議論というものを通じて産学官の意見を広く聴取し、連携体制の強化が図られたというふうに判断しております。
 2点目、費用構造や費用対効果向上方策の妥当性。他機関との連携等により、妥当な実施体制や費用分担が取られているかどうかにつきましては、基準策定への貢献について、海外公的機関との共同研究により役割分担を明確にするとともに、保有技術の相互検証を行うことにより、基準策定に必要な研究開発を効率的に進めたということと、要素技術研究やシステム設計研究において、公募型研究制度の活用等により、共同研究相手先(メーカー)からも応分の研究費を負担してもらうといったことで適切な費用分担を図るとともに、産学官の強みを生かした連携体制を構築することで、費用対効果の向上を図っていったということで、以上により、事業資源を効率的に活用しながら求められる目的の成果を出しており、本課題の「効率性」は高かったというふうに評価をしております。
 21ページ、総合科学基本技術計画等への貢献状況。こちらは先ほどJAXAからもご説明がありましたが、航空科学技術については、研究開発計画において重点的に推進するべき研究開発の取り組みとして、わが国産業の振興、国際競争力強化に資する次世代を切り開く先進技術の研究開発というものが掲げられておりまして、静粛超音速機統合設計技術の研究開発はその中に含まれているものでございます。
 本研究開発では、超音速機市場の開拓に必要なICAOでのソニックブーム基準および離着陸騒音基準の策定に対して技術的に貢献を果たすとともに、超音速旅客機が成立するための4つの鍵技術を獲得し、それらの技術目標を同時に満たす機体コンセプトの技術的な成立性を示しました。
 さらに、ICAOの基準策定の動向に基づいて優先的に実証すべき技術課題と実証方法を選定し、産学官を一体化した研究体制の構築を進めた。これらの活動は超音速市場を開拓する国際的な基準策定への貢献、超音速旅客機の成立に必要な優位技術の獲得を通じて世界を先導し、わが国産業の活性化・高度化に貢献するものであるということで、こういったところから、本研究開発は研究開発計画に掲げられている取り組みの推進を通じて、科学技術基本計画およびわが国の航空科学技術の発展に大きく貢献するものであるというふうに言えると考えております。
 22ページからの総合評価ですけれども、所期の目標を踏まえまして、超音速機市場の開拓に必要なICAOにおけるソニックブームおよび離着陸騒音の基準策定に対する技術的貢献をしたことは高く評価できるというふうに考えております。 また、超音速旅客機が成立するための4つの鍵技術を同時に満たす機体設計技術を獲得し、さらに全機ロバスト低ブーム設計技術など新たな優位技術の候補を見いだしたという点と、産学官の連携研究を活性化して、研究レベルの向上を促す波及効果を得ております。これはわが国の航空機産業競争力の土台となるものということで、こういった成果から本課題の目標は十分に達成されたというふうに考えております。
 また、23ページから、今後の展望ですけれども、国内外の航空機メーカーと連携して、本研究開発で獲得した全機ロバスト低ブーム設計技術を飛行実証することにより、わが国の技術レベルの高さを国内外に示すとともに、国際共同研究による貢献も含め、ICAO基準策定に深く関与し、JAXAのソニックブーム、離着陸騒音、評価技術の標準化を図る。加えて、外部有識者委員会で提言された産学官が参加した協議会を組織して、それを通じてわが国の超音速機の研究開発のビジョンと目標を共有することによって、引き続き産学官一体となった研究開発体制を進めることで、これらに加えまして、ポストコロナにおける生活様式の変化等の影響も考慮して、航空輸送ニーズに対する市場調査・分析を適切に行って、目標とする超音速旅客機の仕様等にフィードバックするということも期待されると考えております。
 すみません。少し長くなりましたが、事務局からは以上でございます。

【李家主査】 どうもありがとうございました。この事後評価票に対する委員の皆さまからのご意見については、後日改めてご提出いただくことになりますので、今回はただ今の説明を踏まえて、これに関するご質問やご意見等を伺えればと思います。しばらく時間がありますのでご発言をお願いいたします。先ほどお願いしたように挙手をしていただくと分かるかと思うのですが、いかがでしょうか。
 では、私から一つ質問させてください。先ほどのご説明で、ロバスト性のある低ソニックブームの研究という話がありましたけれども、JAXAさんのご説明の5ページで、カラーのコンター図を見せていただきましたけれども、実際、これは飛んでいるイメージだと思いますが、巡航の高度で幅にするとどれくらい左右に広がっていると思えばよろしいのですか。

【村上プログラムディレクタ】 JAXAの村上のほうからお答えいたします。この巡航時におけるブームカーペットの幅は、この図でいきますと、縦方向、長さということになりますけれども、およそ60キロメートルということでございます。

【李家主査】 高度はどのくらいですか。4万フィート、5万フィートとか、それぐらいですか。そこまでは行かないですか。

【村上プログラムディレクタ】 はい。そのレベルだと思いますけれども、それにつきましては、担当のほうから具体的にお答えさせていただきます。

【牧野ユニット長】 課題のとりまとめをしておりますJAXAの牧野から回答させていただきます。 5ページに示しております左下の図ですけれども、こちらは我々が解析をして、ICAOに提示をした一例でございまして、低ブーム機の一例として公開されているNASAの実験機、X-59相当の機体形状に対して、JAXAのツールを使ってブーム解析をしたものでございます。この巡航高度、速度につきましては、NASAのX-59の巡航想定ということで、飛行マッハ数が1.4で、巡航高度は4万フィート、4万5千フィート、12キロから13キロ程度で解析をした結果ということで、先ほど回答いたしましたとおり、この場合ですとソニックブームカーペットと呼ばれるブームが聞こえる、観測される幅は60キロという程度になります。参考といたしまして、コンコルドはマッハ2で、高度17キロ、18キロを飛んだ場合は、よりソニックブームが伝播する距離が広がりまして、この幅としては両側で100キロの幅でソニックブームが観測されていたと言われております。

【李家主査】 分かりました。ありがとうございました。
 他の皆さま、ご意見、ご質問等ありましたらお願いいたします。

【和田委員】 日本女性航空協会の和田ですけれども。

【李家主査】 お願いします。

【和田委員】 2つほど、確認事項というか、教えていただきたい点があるのですが、6ページの「アジア地域を日帰り圏とする高速移動を実現するため」ということが書かれていますけれども、前にも少し図で見せていただいたことがあったかもしれないですが、もう一度確認のために、このアジア地域とは、大体距離的に、アジアも広いと思いますが、どの辺りまでの距離と時間というものを今の時点で考えていらっしゃるのか、既にその辺はもう策定済みなのかどうか。あとは、どの辺りの空港から、滑走路も含めて、どのようなところから飛んでいける見込みなのかがまず一つ。
 あと、もう一つは13ページの「ソニックブームの国際基準策定が引き続きICAOで進められており」ということですけれども、これは今後いつぐらいまでに策定が進められて、開発されていくことによって、何か状況が、今研究しているものが変わっていくとか、そのような見込みというのが無いのかなと思いまして、この国際基準策定は簡単には決まらないと思いますけれども、大体いつまでにというのを、先ほど少し書いてあったかもしれませんけれども、それが今後の産学官連携とか、そのようなところにどのような影響を与えるのか、教えていただければと思います。

【村上プログラムディレクタ】 承知いたしました。アジア圏日帰りとして、我々としては、具体的に考えて、これを想定してたのは、日本とシンガポールという範囲でございまして、今、亜音速旅客機ですとたぶん6.5時間から7時間、7時間はかかっていないと思いますが、6.5時間ぐらいのところですけれども、マッハ1.6巡航で、超音速で飛行し続ければ3時間ないし3時間半の間で行ける、そうしますと、時差等考えても日帰り圏内だということです。具体的に言うと、そこをターゲットとして検討をして、アジア日帰り圏ということでやっておりました。それから、この小型超音速旅客機で50人乗りとはいえ、やはり離陸滑走距離は相応に必要ですので、ハブ空港というところからハブ空港へというような輸送を前提としているところでございます。それから、ICAOにおける基準策定の動向でございますけれども、まず離着陸騒音基準の方につきましては、非常に急がれておりまして、というのは、先ほどご説明したとおりエアリオン社の市場投入が2026年などと言われておりますので、ICAOのCAEPにおける総会で案が提案されて採択されるのにまた時間がかかりますので、離着陸騒音の基準につきましては、2022年で案が提案され、それが総会のほうで具体的にさらに取り決められるというプロセスに入ります。
 一方、ソニックブームについては、次々回のICAOのCAEPの総会でございまして、2025年の2月にソニックブームの基準については提案するという形でなっております。従いまして、今、エアリオンとか低ブーム性を考えていないものに対しては、離着陸騒音が決まれば基本的には飛ばすことができるようになり、その中で、先ほど申し上げましたとおり、アメリカの航空局は国際基準策定を前にエアリオンの事業といったものを意識しながら、先に騒音の新しい基準の提案を国内向けにはしたという状況でございます。そのようなことを考えますと、今後の低ブーム向けの機体というのは2025年にソニックブームの基準が提案された後、その後、本格的にその基準に合った形で機体の開発についての検討が始まると我々は考えております。以上でございます。

【和田委員】 ありがとうございました。

【李家主査】 では、他の方、いかがでしょうか。髙辻先生、お願いいたします。

【髙辻委員】 中ほどの少し上のところにあります運航者との意見交換の実施という記述の内容を教えていただきたいのですが、これはエアラインとの意見交換、そして、その内容というのは、例えば超音速市場の分析等についての意見交換をされたのでしょうか。どのような内容だったのでしょうか。

【牧野ユニット長】 回答させていただきます。エアライン、具体的にはJALでございますけれども、ブーム社と提携をされておられますので、具体的には、先ほど来紹介しております外部有識者委員会の場にお呼びいたしまして、その場で産業界の皆様とともに、JALとブーム社とのやりとり等について話せる、もちろん話せる範囲においてご紹介をいただいたというものでございまして、JALとは今後協議会等の発足の中で、意見交換を引き続きさせていただくということで話をさせていただいているところでございます。

【髙辻委員】 ありがとうございます。

【李家主査】 私のほうで、手が挙がっているのが分からないので、ご発言をされる方、声に出していただけると幸いです。

【戸井委員】 JADCの戸井ですが、よろしいでしょうか。

【李家主査】 お願いいたします。

【戸井委員】 強みの技術の確立とかが的確に進められて素晴らしいと思うのですが、やはり事業化に向けての一番の懸念というところは、市場に関連するようなところかと思われます。先ほどもご指摘がありましたとおり、11ページ等で、せっかくの強みの低騒音とか低ブームとか、それで陸の上も飛べる、それらを生かして、今後技術が、そのような技術が新たな市場をクリエイトするような、そのような見方を述べられるというか、そのような表現があってもよろしいのかなという気がいたしました。
 最後、24ページでやっとポストコロナというのが出てくるのですが、決してそれを避けて、その評価を述べる必要はなくて、これだからこそ考えられる状況、例えば大都市に、もちろんこの後のテーマになるのでしょうけれども、ワクチンとかができているという前提になりますけれども、それでも、大都市への分散が避けられるというような観点で、地方をより時間を縮める価値が出る、そのような多様性が増すとか、そのような記述もあって良いのではないかなと感じました。以上です。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。事務局のほうでもご意見踏まえて評価票のほうの記載を検討させていただきたいと思います。

【李家主査】 お願いいたします。他、いかがでしょうか。

【竹内委員】 東京女子大、竹内ですけれども、よろしいでしょうか。

【先光課長補佐】 お願いいたします。

【竹内委員】 ご説明ありがとうございました。私は資料の65-3-3です。JAXAさんがご説明いただいた資料ですが、そこの7ページです。そこの経済性というところがあって、航続距離の目標、つまりこれは航続距離を伸ばすということについて、揚抗比と構造重量を、揚抗比を上げて、構造重量を下げれば、航続距離が延びるという、つまりここでの最終的な目標は、航続距離を伸ばすことだという、そのような理解でよろしいでしょうか。

【村上プログラムディレクタ】 JAXAの村上のほうからお答えいたします。航続距離を延ばす方向に、結果的には行くということでございますけれども、現時点において航続距離は、昔のコンコルドなどと変わっていないわけです。しかし、実は燃費という面で見たときには、コンコルドに比べると30%から50%の範囲の中、これは少し計算の仕方とか、パッセンジャーをどう扱うかによりますが、少なくとも3割程度は、単位距離、単位人当たりの燃費性能というのは上がっております。我々といたしましては、もちろんアジア圏内を日帰りで行ける、あるいは大西洋を横断できるという、まずそこを狙って設定したものでございますけれども、やはり太平洋を横断できるというところのレベルまで延ばしていきたいと、最終的には思っているところでございます。ただ、この研究開発の中におきましては、今のこの目標を維持しながら、環境性能、とにかく飛ばせるようにする技術というところに注力したということでございます。

【竹内委員】 ありがとうございました。少し私が誤解したのは、航続距離を伸ばすこと自身が経済性ではないのではないかと思ったのですが、今のご説明で、要するに、燃費であるということであるならば、これはよく理解できました。ありがとうございました。

【李家主査】 ありがとうございます。

【武市委員】 すみません。都立大の武市です。

【李家主査】 お願いいたします。

【武市委員】 最初に、今のパワーポイント形式での資料ですが、波及効果に関して言及されているところで、今回の研究開発の成果で、一般的な亜音速ジェット旅客機にも役に立つよう成果があれば、それをもう少し前面に書かれたほうがいいのではないかなと思います。そのほうがテクノロジードライバーとしてきちんと世の中の役に立っていますよという強いアピールになると思います。
 質問ですが、同じ資料で13ページの今後の展望のところで、国際共同開発のときに、我が国の産業界が計画段階から参画するということを目標としているのですが、低ソニックブーム設計技術は非常に大事な鍵技術で、ボーイングと、海外のメーカーと共同研究をやっています。この海外のメーカーとの共同研究が、国際共同開発のときに我が国の産業界が参画できるようにする、というところにどのように繋がっていくのか教えていただけますか。

【村上プログラムディレクタ】 JAXAの村上でございます。ご指摘の内容は共同研究の中で、具体的にはボーイング社と全機ロバスト設計技術を活用して、鍵技術の共同研究をするということで、この長期的な意味で、我が国の産業界が計画段階に参画することを可能とするとの関係はどのようなものなのかというご質問だと理解いたしました。超音速旅客機は、小型超音速旅客機のレベルといえども、国際共同開発となるのは必須だと私共としては考えておりまして、それを主体的に担う海外、いわゆるOEMと言いましょうか、プライムと言いましょうか、そこが超音速旅客機を開発するという段階になったときに、そこに日本の航空技術、産業界の航空技術として、それを共有しておくと言いましょうか、力を示しておくということが重要ということ。実は、これは外部有識者委員会でとりまとめられた議論の中で出てきたものでございますけれども、そのような観点から、日本と関係の深い航空機メーカーであったり、そのようなところとJAXAが持つ技術というものに関して、今の研究開発の段階から協力と言いましょうか、一緒に共同研究するということが繋がっていくということ、最終的には日本の産業界、日本の技術力を示すことによって、国際共同開発の最初の段階から声掛けられるような状態になると、私共としては考えているものでございます。

【武市委員】 すなわち、低ブーム設計技術を鍵として日本のメーカーがプライムになることは別に狙っているわけではないと。だから、最初からプライムになる力があるところにそれを提供して、そこから間接的に日本が参加できるようにするという戦略ということでいいですか。

【村上プログラムディレクタ】 設計技術の部分については、逆にJAXA単独、日本国内に固有のものとして、先ほど特許を押さえていると言いました。それを持った上で、ボーイング社としては付き合っているというような、現時点でのステータスでございます。その設計技術というのは、結局、機体全体の性能、特に、超音速旅客機における環境性能の、最終製品の性能に遡及する部分を持っているので、その技術力を示しておくことが大切ということでございます。

【武市委員】 低ソニックブーム技術そのものの共同研究ではなくて、それを使った全機設計の技術の共同研究と解釈すべきということですね。

【村上プログラムディレクタ】 まず、今現時点でボーイングと共同研究をしているもの自体は、いわゆる風洞試験技術、ソニックブーム評価技術の共同研究を進めているものでございます。ゆくゆくはということはございますけれども、我々の設計技術を使って、要するに、ボーイング社は、全体の機体についての開発であるとか、色々なシステムのものについて我々が持っていないものを持っておりますので、機体概念の研究であるとか、我々の技術をさらに高めていくとか、我々のところにフィードバックされてくるものがあるので、そのような研究を進めていこうと思っています。煎じ詰めて言えば、先ほど申し上げたとおり、そのような活動を通じて、これからJAXA、あるいは日本の技術というのをボーイング社のほうにも示していきたい、繰り返しになりますけれども、そのようなことでございます。

【武市委員】 分かりました。大事なところは守りつつ、手元にないものはボーイングからアドバイス頂いて、という進め方と理解しました。ありがとうございます。

【李家主査】 他はいかがでしょうか。

【武市委員】 すみません。また、武市ですがよろしいですか。

【李家主査】 どうぞ。

【武市委員】 気になったところだけお伝えしておくと、パワポ形式の、10ページの実証システム検討状況というところですけれども、一番最後の、下線の引いてある太線のところです。「実証機設計における容積制約等のシステム要件と課題が明らかとなった」、これは要するに、実用機の設計を考慮したシステム要件の課題が明らかとなったという書き方だと思うのですけれども、これは今、この段階でこのように書いてしまうと、今まで、まるで実用機を想定していなかったかのように聞こえてしまうので、少し書き方を変えられたほうがいいと感じました。
 次の11ページのほうですけれども、こちらのほうも、外部有識者委員会のようなものというのは今回が最初ではなくて、これまでも幾つもあったかと思いますので、「今回初めて作りました」のような表現だと、「今まで、そのような取り組みはやってなかったのですか」と、やっていなかったかのように見えてしまうので、こちらも少し書き方を工夫されたほうがよろしいかと思いました。以上です。

【村上プログラムディレクタ】 JAXAの村上でございます。ご意見ありがとうございます。前者の、最初のほうのコメントにつきましては、実機としての課題要件というのももちろん研究開発の中にあるわけですが、ここは、9ページまでのところで明らかになった、要するに優先すべき実証課題として選択した全機ロバスト低ブーム設計技術というのを効果的に、きちんと実証できるようにしようとすると、実証システムそれ自身の難しさ、要するに課題というのが明らかになったということ、今後も検討が必要で、このようなところは産業界などと連携して考えていきたいという趣旨でございます。武市先生が仰った、もちろん実機としての課題という点もございますので、そこは理解いたしました。以上でございます。

【李家主査】 他にいかがでしょうか。もしなければ、私からまた1つ。このロバスト性の話と、それから、先ほどのご説明にありましたが、今回の目標として、陸域への低ブームを実現するということになっています。前回のS3ですか、D-SENDのときにはコンコルドの50%を目標としていたということですが、それを陸域の低ブーム化を達成するための今回の研究では、このロバスト性が一番効いているのでしょうか。それとも、他に細かな改良技術を組み合わされて、それで陸域での低ブーム飛行ができるようになると、そのように思えばよろしいでしょうか。

【牧野ユニット長】 回答させていただきます。まず、前課題で行っていたD-SENDとの違いにつきましては、このロバスト性のみではなくて、機体の先端および後端をさらに新しく、先ほど紹介した遮蔽フィンのような新しいコンセプトを入れることで、さらに低ソニックブームを図れるようになったという技術の進捗がございます。 これはICAOでの基準策定の動きを動向として見つつ、先ほど申し上げた85PLdBという具体的な目標値が見えてきたことから、新たな統合設計技術の課題の中では新たに高い目標として掲げたことで、D-SENDのときにはなかった設計技術を取り込んで、まず85PLdBというのを達成しました。さらに、先ほどロバスト性というのは、ICAOでの議論がさらに進んでいく中で、具体的にソニックブームをどこで測れば陸域の飛行が、超音速飛行が認められるのかという議論にまで具体的に踏み込んで議論が進められていく中で、必ずしも機体の直下が最大値ではないということをJAXAが示して、我々はそれを示すと同時に、そこも含めて全体を下げる技術というのを新たに開発して、それの特許を出願したというところで、9ページに示させていただいたのは、当初想定していなかった更なる設計技術の進捗というものが今回見えたということで、これを売りとして今後の実証につなげていきたいと考えているものでございます。

【李家主査】 分かりました。つまり、このロバスト性というのは、ICAOの議論の中で陸域での低ブームを実現しようとするときにどうすればいいのかという、そのような議論から出てきたということですね。

【牧野ユニット長】 はい。最終的にはこういった技術が必要になるということが認識されつつあるということです。

【李家主査】 分かりました。少しこの件が唐突に出てきたように思えていたので、今のご説明で理解いたしました。ありがとうございました。
 他、よろしいでしょうか。もしよろしいようでしたら、この件はここで切らせていただきます。さらにご意見やご質問がある場合は、委員会の後に事務局のほうにご連絡頂ければ、事務局から回答頂けます。委員の皆様におかれましては、事務局が作成した資料の65-3-2のコメント欄に事後評価案に関するご意見を頂き、8月18日火曜日までに事務局までご提出していただきたいのですが、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。では、そのように進めさせていただきます。

(4) 研究開発ビジョンに関する今後の方向性について
【李家主査】 それでは、議事の4番目、研究開発ビジョンに関する今後の方向性についてということで、まずはまた、事務局からご説明をお願いいたします。

【先光課長補佐】 事務局から説明させていただきます。議題の4につきましては、昨年度に中間とりまとめをした研究開発ビジョンについて、その後、新型コロナウイルス感染症の拡大が世界の社会・経済に大きな影響を与えるとともに、これまでとは異なる新たな生活様式が急速に広まったということを踏まえまして、来年度策定を予定しております最終とりまとめに向けた新たな観点というものがあれば、委員の皆さまからご意見を頂きたいというふうに考えております。
 資料の65-4-1に沿って簡単に説明させていただきます。
 まず1.新型コロナウイルス感染症を踏まえた問題提起ということで、新型コロナウイルスの影響により航空業界は多大な影響を受けておりまして、昨年度策定した研究開発ビジョンの中間とりまとめにおいて想定されていた航空業界の将来的な見通しとはまた異なる未来というのもあり得るのではないかということで、例えば旅客貨物輸送については、新型コロナウイルスの影響が終息したとしても、元の状態に戻るにはかなりの時間を要するというふうに考えられ、また、オンラインでの勤務、テレワークですとか、こういったウェブ会議といったものが急速に普及してきたということから、これまでのようなビジネス目的の旅客輸送というのが減少するということも大いにあり得る。 しかし、今回のコロナ禍を経て世の中の価値観が変容したとしても、移動や輸送というものは社会の経済活動の基本であり、航空機がそれに不可欠なインフラであるということは変わらないであろうと考えております。 そのため、わが国の産業の振興、国際競争力強化という従来の観点に加えまして、今後は産業界の持続・復活を支援するという観点が航空科学技術分野の研究開発においても重要になる可能性があるというふうに考えております。 こういったことを踏まえまして、来年度策定を予定している航空科学技術分野に関する研究開発ビジョンの最終とりまとめにおいても、ウイズコロナ、アフターコロナというものが考慮されるべきであるというふうに考えております。
 2.政府の動向を踏まえた方向性ということですけれども、7月1日に開催された総合科学技術・イノベーション会議の基本計画専門調査会で議論されておりました科学技術・イノベーション基本計画の検討の方向性の案というものを踏まえますと、わが国はコロナ禍で社会実装の遅れが露呈されたSociety5.0を実現するため、ウイズコロナ、アフターコロナの時代において、社会システム構造の抜本的改革が必要不可欠である。 産業システムの構造転換に関しては、わが国の産業システムをどのように守るのか。レジリエントな産業構造をいかに選択し確保するのかというのが一つの検討の方向性ということで挙げられておりました。
 このため、この研究開発ビジョンにおける知識集約型社会への大転換(モノからコトへ)を加速し、Society5.0を実現するという目標自体というものは変更する必要はないというふうに考えておりますが、JAXAとも協力して研究開発ビジョンの最終とりまとめに向けた検討を進める上で、航空科学技術委員会にはウイズコロナ、アフターコロナの時代においても引き続き必要とされる航空科学技術に加えて、新たな生活様式の浸透や外的要因、こういった感染症のようなものも含めまして、そういったものに対応し得る要素を考慮した未来社会デザイン・シナリオを描くということが、これを実現して、ウイズコロナ、アフターコロナ時代における産業構造の転換に対応するため、優位技術を考慮した研究開発戦略、異分野連携を活用した革新技術創出、出口を見据えた産業界との連携といったものの方向性を示すことが求められているのではないかというふうに考えております。
 これらを踏まえまして、最終とりまとめに向けた検討として、ウイズコロナ、アフターコロナにおける科学技術の方向性を踏まえたとき、研究開発ビジョンにおける目標自体を変更する必要はないと考えられますけれども、今回のコロナ禍も踏まえ、感染症流行により航空産業が受ける影響を緩和・解消し得る技術というものと、研究開発ビジョンの中間とりまとめとの関係性について、まず事務局で整理をいたしましたものが別紙の1というもので示しております。
 今回の感染症の流行を踏まえた社会の動き、航空産業への影響と原因、それに対する短期的・中期的対策と、それに対応する技術というものが書かれております。 ここに挙げられている技術というもののほとんどは研究開発ビジョンの中間とりまとめで掲げられております2つのシナリオと3つの方向性に合致するものであるというふうに結論を得たのですけれども、最終とりまとめに向けましては、中間とりまとめのこういった基本構成は維持したまま、ウイズコロナ、アフターコロナにおいて顕在化するユーザーニーズへ対応する次なる有事への備えとして、各パートにどういった観点を追加するのが適当かというもので、戻りますけれども、資料65-4-1の3.に挙げさせていただいております。
 3.につきましては、(1)わが国航空分野の現状ですけれども、コロナ禍をきっかけに、国際的有事により航空需要が急激に落ち込むことというのがあるということを再認識したというところと、過去の有事の際にも旅客需要というものは一時的に停滞したものの、最終的には成長曲線に復帰しております。これは別紙2で、日本航空機開発協会で作成されている市場予測でも引用させていただいておりますが、今回のコロナでも一時的に落ち込んではいますけれども、また、長期的には元に戻っていくだろうと。
 今回の感染症の流行下においても貨物需要というものは堅調であって、むしろ旅客便の減少に伴って貨物の需要が過多になっているというものが別紙の3です。ICAOのほうで作成されているデータになりますけれども、それを示させていただいております。こういったコロナ禍の影響を受けたわが国の産業界を支援するために、特に産業構造の裾野が広い航空機産業を強力に後押しするということが必要であろうということと、コロナ禍を経て、先鋭・多様化するユーザーニーズに応え、Society5.0への移行に貢献しつつ、次なる感染症の流行も含めた有事へ備えるということも必要になってくるであろうというのが(1)の現状に新たに追加するべき観点ではないかというふうに挙げさせていただいております。
 (2)中間とりまとめに書かれております未来社会デザイン・シナリオの部分ですけれども、2つのシナリオです。 1つ目が次世代モビリティー・システムによるさらなる空の利用。ここでは、新たな生活様式の浸透により、オンデマンドな輸送手段に対するユーザーニーズが顕在化し、ドローンや空飛ぶ車といった次世代モビリティー・システムを中心に、これに対応していくということが必要になってくるのではないか。2つ目の既存形態の航空機による航空輸送・航空機の利用の発展につきましては、航空需要というものは長期的に増加基調に回復する見込みであり、既存形態の航空機による航空輸送、航空機利用の発展というものは引き続き必要である。 さらに、オンラインによるコミュニケーションというのが一般化して、特に移動に対するコスト(時間や費用といったもの)や環境意識というものが増えて、航空機の経済性、環境適合性の向上により、こういったものに対応していく必要があるであろう。また、他分野との連携というものも活用して、将来的な有事に対する航空産業のレジエンスの強化というものが課題になっているということを挙げさせていただいております。
 (3)未来社会デザイン・シナリオを実現するための研究開発・基盤技術整備の方向性ということで、3つの方向性がありますが、優位技術を考慮した研究開発戦略。これにつきましては、移動に対する社会的価値観が変化すると予想されるウイズコロナ、アフターコロナの時代において、環境負荷の低減や運航コストの削減、時間的・地理的制約の緩和などによって、航空輸送の価値をより一層高める研究開発が求められている。 2つ目の、異分野連携も活用した革新技術創出につきましては、非連続な社会変化への対応を苦手とする航空輸送の現状に対して、AIであるとかロボット、IoTを活用した無人運航や次世代モビリティも組み合わせたオンデマンド輸送というものを実現するなど、有事の際にも利便性が損なわれないようにするような研究開発というものが求められてくるであろうと。 3つ目、出口を見据えた産業界との連携につきましては、今後も有事により国際共同開発が遅延・中止となるリスクを抱えているところ、デュアルユースの拡大等により、技術の陳腐化や実用化・製品化機会の逸失というのを回避することが必要であろうということで挙げさせていただいております。
 (4)未来社会デザイン・シナリオの実現方策を支えるシステム改革。こちらは中間とりまとめで4つの観点がございましたけれども、そのうち2つ、人材育成と研究環境という2点について書かせていただいております。航空科学技術分野における感染症対策に関する知見を持つ人材育成や外部研究者との連携。新たな社会に対応する研究設備の整備やリモートでの研究環境という観点があったほうがいいのではないかということで、以上を挙げせていただいております。 事務局の説明は以上でございます。

【李家主査】 どうもありがとうございました。今回のこの件は、来年度の最終とりまとめに向けて、今後委員会で何回かに分けてたぶん議論が続いていくのだと思いますが、その最初の、初めの回という、そのような見方ができるかと思います。今日は自由にご意見を頂ければと思いますので、ただ今のご説明でご質問やご意見ありましたらお願いいたします。

【戸井委員】 JADCの戸井ですが、よろしいでしょうか。

【李家主査】 お願いします。

【戸井委員】 別紙の2という資料、JADCの発行したものを使っていただきましてありがとうございます。ただ、ここの我々の捉え方は、この資料65-4-1の3章の文章では、これは「元に戻る」というような捉え方をされているのですけれども、そうではございませんで、むしろイメージとしか書けなかったのですけれども、元々3月に締めて、それでいつもゴールデンウイークを過ぎたら出しているのですけれども、3月を過ぎた途端にこのコロナの影響が如実になって、従来の書き方では全然おかしなことになるので、少し現状分析を待っていたという状況で、4月、5月、6月辺りの、色々な出てきた情報を拾い集めて、なるべくどんな変化が考えられるかというものを待った上で、7月7日に発表させていただいたものです。なので、我々の分析についてはJADCのホームページで、この前後全て載っておりますので、そこでご理解いただければと思うのですけれども、むしろこの絵にしても、コロナの影響以前に考えられていた成長というのが点線であるとすると、それに近々では戻らないという見方が強いというメッセージなのです。特に、2、3年先、この回復状況が見られたとしても、過去の点線には追い付いていない、これはIATA、国際航空運送協会等が色々出しておりますので、このような見方が今主流になっていると思われますけれども、さらにその先がどうかというとやはり分からない、色々な多様性が考えられます。社会変化であったり、これを支えるエアラインというビジネスがどれだけ成り立って、残って、どのようになっていくか、それから、さらに、社会のニューノーマルという位置付けでグローバルな移動がどう変わるかと、大きな転換期であるというのは間違いないと思います。とにかく大きな変化が起き、さらにそれがすぐに戻ってこないというところを踏まえて、色々な予想されることを述べなければいけないというような状況だと思っているところであります。以上です。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。解説を頂きありがとうございます。需要としては、2~3年後ろにシフトして元の点線には戻らないということですけれども、航空需要という点で見ますと、数年の遅れは生じますけれども、徐々に需要としては回復していく。過去の傾向としても、同時多発テロですとか、そういった有事が起きたときには一瞬落ち込みますけれども、また少しずつ需要は回復してくるということで、参考とさせていただいておりました。今、委員がおっしゃられたとおり、ちょっと将来、現在進行形で起きていることですので、将来どうなるかという予測はなかなか難しいところですけれども、こういった有事が起きて需要が落ち込むということは今後も考えられますので、そういったところに対して、航空業界がレジエントである必要があるということで、そういった観点からも今後の研究開発というものを進めていくべきではないかというところで、今回問題提起という形で挙げさせていただいております。頂いた意見を踏まえて、また引き続き最終とりまとめに向けて議論をさせていただきたいというふうに考えております。

【戸井委員】 戸井です。コメントありがとうございます。とにかく色々分からないことが多いですけれども、航空輸送が成長する前提であるグローバル化に対して色々な変化が考えられるけれども、その多様性に対する色々な応じ方を考えていかなければいけない局面であろうという認識でございます。なので、伸び率としては前の伸び率にそのまま復帰するというのは考えにくく、直ちに復帰するというのも考えにくいですけれども、やはりそのような見方を変えた色々な多様性に応ずるというような準備をしていくことで、市場のほうも回復させていけるという状況だろうかという理解です。以上です。

【李家主査】 どうもありがとうございます。では、他はいかがでしょうか。

【竹内委員】 東京女子大、竹内ですが、よろしいでしょうか。

【李家主査】 お願いします。

【竹内委員】 ご説明ありがとうございました。COVID-19については、特に運輸産業というのは日銭で生活しているというところがあって、大企業であっても、手持ちのキャッシュでやっているところがありますから、要するに、今回極端に需要が減ったことによって、どの産業も、航空に限らず、鉄道であったり海運であったり、全てそうですけれども、かなり大きな経営の打撃を受けているわけです。そうなりますと、航空も、航空会社、航空輸送の会社、ANAとかJALも同じことなので、今後共同で研究していくに当たって、航空会社はもちろん、他の様々なメーカーさんもかなり資金を出しにくくなってくる状況になってくると思うわけです。そうなると、今後の共同での研究開発に向けて、国がかなり費用を出していかないと、民間が委縮してしまっては金が出てこないということになると思うわけです。そうなりますと、先ほど事後評価の案にもあったとおり、国費を用いた研究開発をする意義とありましたけれども、これがますます大事になってきて、国が果たす役割というのが大きくなってくる。そのようなところが今回、民間の費用負担ができなくなってくることに関して大きな論点になってくるのではないかという気がしております。
 それと同時に、先ほどから「後押し」という言葉がよく出てきているのですが、これは少し別の点なのですが、特に海のほうですと海事クラスター、病気のほうのクラスターじゃなくて、海事クラスターというので、海事産業の発展によって様々な産業の裾野に影響が、かなりいい影響が及ぶというのがありますけれども、同じように、航空もこのような技術開発が非常に様々な面で影響が及ぶという意味から言うと、「後押し」という言葉よりはむしろ「引っ張っていく」「けん引する」という言葉のほうがより一層、強くアピールできると言いますか、そのようなところもあると思うので、むしろそのような意味のほうがいいのかなと思います。2点目は大した話ではありませんけれども、そのようなことも感じたということです。ご参考になれば幸いです。以上です。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。後押しというところだけではなく、国の重要性、国が支援するという重要性も踏まえてけん引していくというところも考慮させていただきたいと思います。

【李家主査】 どうもありがとうございました。他はいかがでしょうか。

【松島委員】 よろしいでしょうか。

【李家主査】 お願いいたします。

【松島委員】 検討についてという中で、航空機産業は産業構造の裾野が広いので、強力に後押しすることが必要だということがあるのですが、これは産業ということに限らず、科学技術全般において航空科学技術は裾野が広いと言い換えることができると思います。応用のレベルの高い産業界のことから、基礎技術の、科学技術の基盤技術に関するところを全て、抑えておかなければいけないというところがこの科学技術委員会の難しいところかと思っております.そこで、特に、基盤技術というところに注目してお話ししたいのですが、最近一番明るいニュースとしては、「富岳」というスーパーコンピューターが世界1位で、かなりの項目で世界1位になったということがあるのですが、そのスーパーコンピューター開発を日本で推進しようというのは、航空技術にスパコンを使おうというところから始まったと思います。今のJAXAの前身である航空技術研究所NALの計算機センターからこのような考え方、日本でそのようなスパコンを造ろうという考え方が出てきまして、それが、アーキテクチャーは少しずつ変わってきましたけれども、今また実を結んで、世界1位になることができたということで、「風が吹けば桶屋がもうかる」みたいな話ではありますが、航空機産業だけでなく、それを支える科学技術、産業に対して投資の意味がある科学技術の基盤技術を強力に後押しすることで、そのような良い成果が得られてくるということをもう一度考えてもいいのかなと私は思っています。そのコンピューター利用技術がスパコンを利用したCFDと言われる数値計算技術なのですが、今回、コロナ感染症に関し、空気の中のエアロゾルの拡散の状況をシミュレーションするというようなことが行われて、それにはCFDの技術が随分使われているのですが、その技術もやはり日本においては、航空機に応用する、空力のためのシミュレーションから発展してきたと言えます。そのように波及効果はかなり先のことになるかもしれないのですが、基盤技術を後押しすることが目先の問題を解決する以上に必要ではないかと、今世界がすごく不透明で、航空機産業の先行きも不透明だと思うのですが、その不透明さに対抗するためのレジリエントを考えたときには、そのような基盤技術のところも強力に後押しするということが重要ではないかと考えております。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。中・長期的にレジリエンスというものを踏まえて、基盤技術を後押ししていくという観点です。また、そういった観点も踏まえて議論を進めさせていただければというふうに思います。 ありがとうございます。

【李家主査】 ありがとうございました。他にご意見等ありますでしょうか。

【佐藤委員】 早稲田大学の佐藤ですけれども、よろしいでしょうか。

【李家主査】 お願いいたします。

【佐藤委員】 たぶん皆さんと同じ意見だと思うのですが。当然今回のコロナによってだいぶ変わってきたというのはあるのですが、個人的な意見としては、そこにあまり捉われないで、今までやってきていたことをしっかりやるということを中心として、それにプラスでどのような後押しができるかというのを考えたらどうかなと、私は個人的に思います。あんまり今回のことによって、今まで積み重ねてきたこととか、今までの計画とかを見直し過ぎると、あまり良くないのではないかなと。何年後かに、いつかまた元に戻るでしょうし、また技術的に良いものができればやはり皆使おうということにはなると思うので。今を乗り切るのは必要なので、乗り切るための対策はするにしても、それ以外のところは今までの考えてきたものを基本として進めて行ったらいいかなと私は思います。以上です。

【先光課長補佐】 ありがとうございます。事務局としても、もちろん昨年度の中間とりまとめを大きく変えるということではなく、今回のコロナを踏まえて追加するべき観点があれば追加をしたいということですので、今、佐藤委員がおっしゃられたように、これまでやってきたもの、議論していただいたことというのは引き続きしっかりやっていくということは、ぶれずに進めさせていただければというふうに思います。ありがとうございます。

【李家主査】 ありがとうございました。少し時間が押してきたのですが、あと最後にもうお一方ぐらいご意見ありましたら頂きたいのですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 私からは、今日の全般の話と関連しますけれども、このような航空需要の減少で、超音速航空機の開発に向けての機運とか、そのようなところに影響が出てしまうのではないかと、少し心配なところもあるのですが、その辺りのところは、先ほど戸井委員も前の議題でアドバイスを頂きましたけれども、何かJAXAさんのほうで超音速機に関して考えていらっしゃることなどありますでしょうか。

【村上プログラムディレクタ】 JAXAの村上でございます。もちろんこの新型コロナウイルスの感染症の拡大というもの自体は、航空輸送全体に関わってきているもので、その中で、超音速航空輸送、市場が開拓されていないものに対する影響も大きいと、そのように考えてはおります。一方で、この航空輸送における価値、航空輸送で人が運ばれるというものに対しては、例えばエクゼクティブとか、要は富裕層であるとか、そういった方々が移動する必要性、そのような時間価値が高い人々が移動する必要性というのも改めて認識されたのではないかなと思っておりまして、そのような意味では、この新型コロナウイルスの感染症拡大におけるこの状況が、超音速航空輸送への影響というのはもちろんあると思いますけれども、全てがネガティブなものではないのではないかなという考えもあります。ただ、こればかりは、今現段階でこうだということは申し上げられませんし、引き続きICAOの中の動向など踏まえながら、この研究開発については一旦重点課題としては終了するわけでございますけれども、その次に向けての検討は進めてまいりたいと思っているところでございます。

【李家主査】 どうもありがとうございました。では、この議題に関してはよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、一旦ここまでとして、本日の議論も踏まえて、事務局で最終とりまとめに向けた調整を進めていただきたいと思います。

(5) その他
【李家主査】 では、最後に、議題の5番目のその他ですが、こちらで用意した議題はございませんが、何か委員の皆様で、特に追加でご発言等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 では、本日の議事はこれで全て終了いたしましたので、進行を事務局のほうにお返しいたします。本日はありがとうございました。

3.閉会

【先光課長補佐】 ありがとうございます。最後に、事務局より事務連絡をさせていただきます。本日ご議論いただきました静粛超音速機統合設計技術の研究開発の事業評価案に対するご意見は、別途メールでお送りするワードファイルのほうにご記入をいただきまして、主査のほうからもご連絡頂きましたとおり、8月18日火曜日までに事務局のほうにご返送いただきますようお願いいたします。また、不明な点がございましたら、遠慮なく事務局のほうまでお知らせください。次回の航空科学技術委員会は、9月16日水曜日の13時半からを予定しております。 また、本日の委員会の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆さまにご確認をいただいた上で、文部科学省のホームページのほうに掲載をさせていただきます。
 では、これで科学技術学術審議会研究計画評価分科会第65回航空科学技術委員会を閉会いたします。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課