航空科学技術委員会(第57回) 議事録

1.日時

平成30年7月2日(月曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 18階 研究開発局会議室1

3.議題

  1. 平成30年度航空科学技術委員会における研究評価計画について
  2. 研究開発課題の評価について
  3. 研究開発プログラム評価(航空科学技術分野)における参考指標(我が国全体を把握する指標)の検討について
  4. その他

4.出席者

委員

科学技術・学術審議会臨時委員  李家 賢一【主査】
科学技術・学術審議会専門委員  佐藤 哲也
科学技術・学術審議会専門委員  高辻 成次
科学技術・学術審議会専門委員  武市 昇
科学技術・学術審議会専門委員  冨井 哲雄
科学技術・学術審議会専門委員  松島 紀佐
科学技術・学術審議会専門委員  和田 雅子

文部科学省

研究開発局審議官  大山 真未
研究開発局宇宙開発利用課長  谷 広太
研究開発局宇宙開発利用課宇宙連携協力推進室長  丸山 智
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐  宮川 毅也

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
航空技術部門長  佐野 久
航空技術部門航空プログラムディレクタ  吉田 憲司

オブザーバー

国土交通省

5.議事録

1.開会

【宮川課長補佐】  冒頭から出席いただける委員全員おそろいでございますので,ただいまから,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会航空科学技術委員会第57回を開会いたします。
 本日は,お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
 初めに,本日は航空科学技術委員会の委員10名のうち,現時点で6名に御出席いただいておりますので,定足数である過半数を満たしていることを御報告いたします。
 なお,武市委員におかれましては,所用により遅れての出席と伺っております。
 続いて,本日の出席者でございますが,事務局側の人事異動のため,本日初めての出席となる者を紹介させていただきます。
 宇宙連携協力推進室長の丸山でございます。

【丸山室長】  丸山でございます。よろしくお願いいたします。

【宮川課長補佐】  私,宇宙開発利用課課長補佐の宮川でございます。
 このほか,説明者としてJAXAに,オブザーバーとして国土交通省に御出席していただいております。個別の御紹介は,お手元の座席表をもって,かえさせていただきます。
 なお,JAXAの佐野理事・航空部門長が着任されておりますので,御紹介させていただきます。

【JAXA佐野部門長】  4月1日からJAXAの理事及び航空部門の部門長を務めている佐野でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は,平成28年度より開始し,3年目を迎えた静粛超音速機統合設計技術の研究開発の中間報告及び平成25年度より5年間実施いたしました次世代航空技術の研究開発の事後評価を実施していただくことになっております。
 頂きます評価などを踏まえまして,今後JAXAとして一層効果的,効率的な研究開発を進めていく所存でございますので,委員の皆様におかれましては,どうぞ御忌たんのない御議論をいただければと考えております。
 詳細の補足説明は,後ほど,プログラムディレクタの吉田より行わせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

【宮川課長補佐】  続いて,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第が一番上になっているクリップ留めのものに,議事次第の下に,配布資料として書かれております57-1-1から57-4-1,及び,その下に参考資料の1から4をとじております。また,机上配布資料といたしまして,座席表と紙ファイルの形式で参考資料の一式をとじております。
 また,本日のJAXAからのプレスリリース資料,航空機電動化コンソーシアムの発足についても,併せて配布させていただいております。
 資料は以上となりますが,不足等がございましたら事務局までお知らせください。
 それでは,以後の議事につきましては,李家主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

2.議事

【李家主査】  非常にお暑い中をお集まりいただきまして,ありがとうございます。第57回航空科学技術委員会を始めさせていただきます。
 お手元の議事次第に従いまして,議事の1番目,平成30年度の航空科学技術委員会における研究評価計画について,まず事務局から御説明をお願いいたします。

【宮川課長補佐】  お手元の資料57-1-1を御覧ください。
 本件は,文部科学省決定の「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を踏まえ,研究計画・評価分科会で定められた「平成30年度研究計画・評価分科会における研究開発課題の評価の実施について」,これは参考資料として付けさせていただいているものでございますが,これに基づきまして,航空科学技術委員会における本年度の研究開発課題の計画を定めるものでございます。
 2番目に評価対象の研究課題と書かせていただいておりますけれども,これについてはお手元の資料を1枚めくっていただきまして,パワーポイント形式の別紙1というものがございます。本年度は4件の研究開発課題がございます。そのうち,先ほど佐野理事からもございましたとおり,本日は2件を御審議いただくものでございます。
 具体的に申し上げますと,図中のピンクで囲ってあるところが本年度でございますが,赤色の中間評価が静粛超音速機統合設計技術の研究開発の1件と,事後評価が,航空安全技術の研究開発,航空環境技術の研究開発,そして次世代航空技術の研究開発の3件。合わせて4件を本年度は御審議いただきたいと考えております。
 なお,今回の委員会につきましては,その4件のうちの,静粛超音速機統合設計技術の研究開発の中間評価と,次世代航空技術の研究開発の事後評価の2件を実施していただきたいと考えておるところでございます。
 資料57-1-1に戻りまして,評価方法等につきましては,中間評価と事後評価のところに書かせていただいておりますけれども,それぞれの記載内容については例年どおりでございます。
 4点目の留意事項につきましても,例年どおりの記載をさせていただいておるところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。

【李家主査】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明に関して,何か御質問等ございますでしょうか。本年度のこの委員会での評価の予定が2ページ目の表に一覧であります。この予定で進めさせていただくということになりますが,よろしいでしょうか。
 では,この資料57-1-1に関しては,委員会で了承ということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。そうさせていただきます。
 それでは,続きまして議題の2番,研究開発課題の評価についてになりますが,先ほど来,お話がありましたように,2件の中間評価と事後評価があります。まずは静粛超音速機統合設計技術の研究開発中間評価から行いたいと思いますので,事務局から御説明をお願いいたします。

【宮川課長補佐】  研究開発課題の評価について,御説明さしあげたいと思います。
 まず,資料57-2-1から57-2-3までが静粛超音速機統合設計技術の研究開発の資料でございます。資料57-2-1が1枚で研究の概要を書かせていただいたもの,資料57-2-2が今回御審議いただく中間評価票の事務局の案を書かせていただいたもの,そして資料57-2-3が,本件の成果に関するJAXAの補足説明資料となります。
 まず,資料57-2-1を御覧ください。本件は,先ほどの資料1のパワーポイントにも少し書かれていたところでございますけれども,平成18年度から平成27年度にかけて実施された,静粛超音速機技術の研究開発の後継事業でございまして,それまでに研究開発がなされたソニックブーム低減技術等の要素技術を機体レベルにおいて統合するものでございます。
 具体的には,低ソニックブーム,低着陸騒音,低抵抗,軽量化を同時に満たすシステム設計技術を世界に先駆けて取り組むとともに,国際環境基準に適合しつつ,アジア圏をノンストップで飛行する航続距離を実現するものでございます。
 資料57-2-1の右上にあります緑色の囲みにございます,四つの要素を同時に達成するものとして,国際基準や,あるいはアジア圏をノンストップで到達できるというところのミッションを同時に成り立たせるというものでございます。
 本研究課題の実施期間は,平成28年度から平成31年度の4年間でございまして,昨年度末で中間の地点を迎えたところでございますので,航空科学技術委員会において中間評価をお願いしたいと考えているところでございます。
 では,これまでの研究開発課題の進捗状況について,JAXAから御説明をお願いしたいと思います。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  資料57-2-3について御説明させていただきます。
 2ページ目を御覧ください。この研究開発での目的ですが,国際競争力強化のために超音速機が民間機として成立するためのキーとなる技術課題として,先ほど宮川補佐から御紹介がありました四つの課題があり,これまでの研究成果を踏まえましてそれぞれの技術目標を設定しております。その四つの技術目標を同時に満たす機体設計技術を獲得して,最終的には,磨きをかけた低ブーム,低抵抗技術の実証を目指すというのものです。
 取組の内容は,そこに6行ほど文章がありますが,ポイントは赤字のところです。国際基準策定への貢献,システム設計検討,要素技術研究の三つについて行いましたので,それを以下ページを分けて説明いたします。
 次の3ページ目を御覧いただきたいと思います。最初の基準策定への貢献でございます。これは,まずICAO(国際民間航空機関) CAEP(環境保全委員会)との関わりがあります。左側のブロック図はICAOの組織構成でございまして,CAEPという環境保全委員会の下にワーキンググループ1というノイズを検討するグループがあります。その下にSSTGという超音速タスクグループがあります。ここでソニックブームの基準を検討しております。
 もう一つ,2016年2月に開催されたCAEPの第10回の総会で,離着陸騒音の基準に関して検討するサブワーキンググループができました。これがLTOSGというものです。
 まずSSTGの方ですが,これはもうかなり長い期間ですが,3名からなるリサーチフォーカルポイントのメンバーの1人として,JAXAの職員が参加をして,技術的なアドバイスを行ってきております。
 それから,2016年から立ち上がりましたLTOSGは,やはりJAXAからもメンバーを出してほしいという要請を受けまして,研究員が参加して,技術的な支援を行っております。
 このLTOSGの活動の一例としまして,右側に少し内容をまとめております。図にあるようなNASAが設定しました概念設計機体に対して,JAXAが開発していた離着陸騒音評価ツールを適用してその結果を分析し,それをNASAやTsAGI等との結果と比較検証をしながら議論を進めるというやり方をしております。そういう貢献の仕方をしております。
 次に,4ページ目を御覧ください。ICAOの直接の基準策定活動ではありませんが,委員の皆様も御存じのように,NASAでは現在,低ソニックブームの有人実証機を飛ばして,ソニックブームの許容性評価の飛行試験を行うという計画が動いております。NASAとJAXAは共同研究をしておりますが,その中でNASAからLBFDという実証機による飛行試験のリスク低減のために,JAXAが開発したソニックブームに対する大気乱流の影響を評価する手法を用いて分析等してほしいという依頼もありまして,我々はそれを目的として共同研究を延長し,対応しております。
 その共同研究の活動の一つとして,資料の左下に写真がありますが,NASAが持っているF-18の飛行機を使ってソニックブームを発生させて,そのデータをとっていろいろ分析を行うという,SonicBAT2という飛行試験が昨年度実施されまして,それにJAXAも参加しております。上の写真の人間は,JAXAの人間でございますが,ソニックブーム計測を実際に行って貢献して,そのデータを今,我々も頂きまして,先ほどの大気乱流の評価ツールで検証等を進めているところです。
 次に2個目の丸のところですが,ドイツのDLRとフランスのONERAとJAXAの3者の共同研究を別途行っておりまして,その中では,巡航時の騒音基準,ソニックブームですが,フライトのさせ方でソニックブームがどの辺まで影響があるかのスタディをしておりまして,これも最終的にはICAOの基準策定に関連した技術データになるものでございます。
 次に5ページを御覧ください。ここは,2番目の項目でありますシステム設計検討の部分です。ここでは,産官学を一体化した研究開発体制の構築に向けて,産官学のメンバーで構成されています超音速ビジネスジェット機の設計検討チームというものがありますが,そこにJAXAも参加させていただきまして,技術的な支援を行っております。
 左側の図は実際にその検討チームで検討しているものです。ビジネスジェットの絵がありまして,これは表面圧力分布のCFD解析結果ですが,下の図にありますような,低ブーム型の圧力の波形が得られるような機体が設計できるということを示しておりまして,これで超音速巡航の可能性があるということを示しています。
 続きまして二つ目の丸です。JAXAは公募型研究制度というのを持っておりますが,そこで先ほどの産学官を一体化したチームをつくるという目的に合致するために,民間企業さんと研究を一緒に行っております。二つの研究テーマを二つの企業さんと行っております。
 一つは機体推進系統合設計に関するものです。もう一つは,離着陸騒音低減です。離着陸騒音は,先ほどのICAOの基準につながっていくものでして,ICAOのChapter14というものに離着陸騒音の基準を合わせていくということが決まっておりますので,それを満たすような超音速機をつくらねばいけないということで,機体要素ごとの目標を設定して,それをクリアできるかということを検討しています。
 右側の図は,その公募型研究の一例ですが,もちろん,騒音低減にはエンジンの研究が重要ですが,一方,機体の空力性能を改善しますと,エンジンの離陸時の推力を下げることができますので,それによって騒音を下げることが可能になりますので,その効果がどの程度あるのかを検討しております。その一例を示したものです。
 次の6ページを御覧ください。システム設計検討のもう一つの活動としまして,JAXAが持っております鍵技術の,たくさんあるうちの幾つかの要素技術を含む統合設計技術を実証することが必要になりますが,そのために,航空機メーカーさんとどのような飛行実証機があり得るかという概念検討を実施しております。
 ここに飛行機の絵が二つありますが,これは昨年度複数の候補エンジンを対象に,幾つか異なる機体スケールの実証機を考えまして,機体として成立するか,その構造が成り立つか,離陸できるか,それから装備品が入るか,そういうことを検討した結果の一例が左側と右側の図です。今年度は候補エンジンを絞りまして,より詳細な概念検討を実施する予定です。
 次に7ページを御覧ください。最後の話題であります要素技術研究の成果です。既に2年目でございますが,幾つか成果が出ております。それを少しかいつまんで御紹介いたします。
 最初の丸は,ソニックブームの低減技術でございます。これは,2015年に成功いたしましたD-SENDプロジェクトで実証したコンセプトを,エンジン付きの実機の機体に適用した場合の統合設計技術を開発しまして,更にブラッシュアップしたというものです。
 左側の図は,その技術を,小型超音速旅客機に適用した例でございます。ここに,青の波形がありますが,これは低ソニックブームの波形でございまして,以前よりも増して低ブーム化が進んだものが得られることがわかっています。
 これにより,冒頭に申し上げた四つの技術目標の一つであるソニックブームについては達成できる見通しが得られております。
 それから,二つ目の丸ですが,これは抵抗低減技術です。まず,低抵抗,低ブーム,低速空力性能の向上の三つを目的関数に設定して,最適化するという手法をつくりまして,主翼の平面系を設計し直しました。
 次のステップとして,翼断面の設計がありますが,これについては,JAXAはNEXSTプロジェクトという2005年にオーストラリアで実施したプロジェクトで実証した技術,我々は自然層流翼設計と呼んでいますが,それを持っておりますので,それを更に高度化しまして,実機相当の高いレイノルズ数でも自然層流ができるという,それに適した圧力分布を設定する方法を構築しまして,それをNASAと共同研究を行っている機体形状に対して適用し,その設計効果を示すことができました。それが右側の図ですが,赤い線が実機のレイノルズ数で層流域がそこまで広がるということを示しています。最初は黒いところでほとんど前縁ですが,赤い線のところまで下がるという結果が得られました。
 ただし,課題としては,トリム条件において低ブーム性が成り立つかというところの調整がもう少し残っておりますが,技術としては一歩前進となっています。
 次に,8ページ目を御覧ください。離着陸騒音の低減技術に関しては,二つの大きな成果があります。一つは,左側にある図の上の方に低騒音可変ノズルというものがあります。これはJAXAの特許でございます。左の図の下側に写真がありますが,これは研究用地上エンジンでございまして,このノズルの部分にそのJAXA特許を適用して,実際に音圧を測りまして,その効果を調べました。右側の棒グラフがその結果でございまして,この実験ではノズルの長さなどに制約がありますので,高周波側はきちんと効果が見られていませんが,低周波側に関しては効果があることがわかっております。
 それからもう一つは,先ほど申し上げたとおり,空力性能を上げるとエンジンの推力を絞れて離着陸の騒音を下げることができますので,空力性能を上げるための高揚力装置の研究をしております。右側の図がその一例でして,クルーガーフラップという前縁の前に少し出っ張っている小さな板のようなものがありますが,これを最適な位置と角度に設定することで,離陸時の揚力と抵抗の比を上げることができるというものです。今回のスタディの結果,右側の下の表にありますように,目標値を超える揚抗比が得られることが,解析上ですがわかりました。先ほどの企業さんと行っている公募型共同研究の中で,エンジンの低ノズルの効果と,それからこの高揚力装置の効果と,それぞれを足し合わせることで,目標が達成できる見通しが得られています。
 二つ目の丸のところですが,これは軽量化でございまして,従来の研究の延長にありますが,複合材を使った最適設計技術によって,特に複合材の配向角や板厚の自由度を増した最適ツールを使って,構造重量に対する目標をクリアできるという見込みが得られています。
 これが,現時点までの成果でございます。
 最後の9ページ目は参考ですが,昨今のいろいろ新聞,あるいはネット等の情報を少しまとめたものです。最初の丸は海外の動向でございます。右側の表にブーム社とエアリオン社の機体のコンセプトをまとめてあります。超音速ビジネスジェットを狙っているエアリオン社,それから小型超音速旅客機用のデモンストレーターの開発ということで報道が出ているブーム社です。いずれも低ソニックブーム機ではないというところが,私どもが狙っている低ソニックブームの研究開発と違うところでございますが,こういう動きがあるということです。
 それから二つ目の丸は,JAXAとしても,市場の動向を調べ直すということで,調査をしております。左側に検討したルート,それから日帰りで東京から移動できるビジネスの範囲,そういったものを想定して何機ぐらいの需要があるのかや,そのような事業の成立性を検討して評価しております。それがこの2年間で進めているところでございます。
 以上です。

【宮川課長補佐】  続きまして,資料57-2-2の評価票(案)について,事務局から簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 資料57-2-2は,研究計画・評価分科会の評価票の様式に基づいて,それを事前評価と中間評価(案)を対比するように並べて書かせていただいたものでございます。
 中間評価(案)はJAXAにおけるこれまでの成果をもとに,委員から頂いた御意見と御指摘も踏まえて作成したものでございます。本資料中の右側の列で黒字になっているものについては,研究開発計画や,事前評価の結果での文言でございます。一方で,青字につきましては,中間評価に際しまして,事務局側で作成をさせていただいたものでございます。
 3ページから評価結果を書かせていただいておるところでございます。(1)の課題の進捗状況というところでございますけれども,これにつきましては,先ほどのJAXAの御説明を文章としたものでございます。そのため詳細につきましては,ここでは省略させていただいておりますけれども,3ページの真ん中にございますとおり,一つ目としましては,国際基準の策定への貢献。二つ目としましては,産学官一体の研究開発体制の構築。三つ目としましては,それを踏まえました要素研究のさらなる推進というものを,三つの柱として,現在まで順調に進捗しているということを書かせていただいておるところでございます。
 続きまして,6ページ以降でございますけれども,各観点からの再評価でございます。ここにつきましても,まず事前評価の内容を記載させていただいて,その次に,事前評価時点からの状況の変化を踏まえた再検証を行った結果を書かせていただいているところでございます。この記載の方法は,他の委員会の例などを踏まえまして,書かせていただいたものでございます。
 まず,6ページ目からの必要性についてでございますが,低ソニックブーム,低着陸騒音,低抵抗,軽量化を同時に満たすシステム設計技術を世界に先駆けて取り組むことについて,科学的や技術的な意義があるとともに,先ほども低ソニックブームを有することが本研究開発課題の特徴だということをJAXAの吉田プログラムディレクタから御説明いただきましたけれども,これによって陸域での超音速飛行が可能になることによる移動時間の大幅な短縮や,我が国航空産業界の国際競争力強化につながることから,社会的意義や経済的意義があるとされ,また,それに伴う開発リスクの高さから,国費を用いた研究開発を行う意義があるなどされたところでございます。
 ページ数をめくっていただきまして,9ページ以降が再評価となります。先ほどのJAXAからの御説明にございましたとおり,米国の民間会社によりまして,現在2020年代半ばごろの就航を目指した民間超音速機,いずれも海上でのみ超音速というものでございまして,陸上では会社によって亜音速にするか,又は陸上にソニックブームが届かないような,音速を少し超えたような速度域で飛ぶというものでございますけれども,そういったものの開発が進められております。これらにつきましては今しがた申し上げたように,低ブーム設計技術が用いられているというものではございませんので,本研究開発でなされている技術につきましては,引き続き優位性があるとともに,多額の研究開発費用を要するといったリスクについては,変化していないと考えております。
 一方で,先ほどのブーム社は,50席程度の大きさの機体を開発しているところでございますけれども,これにつきましては,日本航空が約11億円の出資を行うということで,技術自体は陸上を超音速で飛べるか飛べないかという違いはございますけれども,超音速旅客機による移動時間の短縮については,民間での興味が高まっているとともに,米国の会社ではございますけれども,開発の機運が高まっておると考えられますので,本研究開発の社会的や経済的な注目度は引き続き高いと考えておるところでございます。
 以上から,本研究の必要性は維持されているものと判断したいと考えております。
 続きまして,10ページの下の有効性でございます。有効性につきましては,これまでに培った要素技術の実証レベルとシステム統合度の向上が期待されること,文部科学省において取りまとめている戦略的次世代航空機研究開発ビジョン,これは参考資料にとじさせていただいておりますけれども,そちらの方向性に沿うものであるということで,我が国産業界の国際競争力強化への波及といった観点も含め,得られる成果が有効だろうということで,期待されているところでございます。
 現在までのところの再評価でございますけれども,12ページ以降に記載しております。状況の変化としましては,本研究開発におきまして,先ほどのJAXAの御説明にもありましたとおり,国際民間航空機関ICAOの環境保全委員会における民間超音速機に係るソニックブーム基準や,あるいは離着陸騒音基準の策定活動に携わっているところでございます。
 戦略的次世代航空機研究開発ビジョンにおいても,他国のレベルを超える技術の獲得を掲げておるところでございます。例えば,離着陸騒音であれば2017年から強化された新たな基準ということで,今までの基準から数デシベル離着陸騒音を低くしろというところで,亜音速機にも共通して制限をかけられているものでありますけれども,そういったものに合うように,研究開発がなされているということで,実用化に向けても,社会的な要請にも沿うものでありますので,本研究開発の成果の有効性は維持されていると判断したいと考えておるところでございます。
 続きまして,効率性でございます。13ページ以降でございますけれども,これにつきましては,事前評価におきまして,産学官の連携体制や,海外研究機関との連携などによって,効率的に研究開発を進めるものとされているところでございます。
 現時点までの状況は15ページにございますが,先ほどのJAXAの御説明にもございましたとおり,本研究開発におきましては,実証機の概念検討を,JAXAだけでなく,メーカーや大学などで構成される超音速機ビジネスジェット機設計検討チームというものを構成して実施しております。また,産学官のリソースを効率的に活用するということで,共同研究を進めており,国際基準の策定に当たりましては,NASAやその他の海外研究機関とも連携をして,リソースの共有や知見の補完を行いながら進められているというところで,効率的に進められていると判断したいと考えておるところでございます。
 一方で,こちらにつきまして,15ページの再評価において,「今後は」以下の文章の一部を,委員の御指摘で,皆様に事前に送付したものから差しかえているところでございます。具体的には,今までの成果はあるものの,一方で今後の要素技術の開発から機体全体の開発へとフェーズが移っていくにつれ,それを利用する運航者とのコミュニケーションといったものも積極的に図っていくべきと考えておるところでございます。これにつきまして,本日遅れている武市委員から,先ほどのJAXAの御説明にもありましたように,技術の段階は違いますものの,本邦の運航者が海外の企業に出資したということは,前向きな面もある一方で,JAXAや国内メーカーに投資されなかったというところについては,考えるところがあるのではないか,またこういったものの評価と今後の研究開発の方針というのはしっかりと考えるべきで,本邦の運航者による出資を得るためにはどのようにするべきか検討すべきというようなコメントを頂いておるところでございます。
 この際,現在の案では,コミュニケーションという言葉を使用しておるところ,少し定義が不明確ということで,情報発信及び意見聴取のような文言を使ってはどうかという御提案を頂いているところでございます。具体的には,「運航者等の航空関連企業との積極的なコミュニケーションも重要であると考える」というところの中ほどの部分を,「運航者をはじめとする航空関連企業からの様々な支援を得るため,積極的な情報発信及び意見聴取を行い,それを研究開発計画への反映に努めることが重要であると考えられる」といったような表現に改めるべきではないかという御意見を頂いておるところでございます。
 続きまして, 15ページ下ほどの,(3)今後の研究開発の方向性でございますけれども,これまでに御説明さしあげたとおり,現在までの研究開発の進捗が順調であること,研究開発の必要性,有効性,効率性は維持されていること,多少の御指摘はありますけれども,そういった状況から本課題の継続は妥当であると判断したいと考えておるところでございます。
 (4)その他でございますけれども,同じようなコミュニケーションに関する文言を現状の案では入れさせていただいておるところでございますけれども,そちらにつきましても,先ほどの効率性のところで頂いている武市委員のコメントも踏まえた形で,本日御議論をいただければと思っているところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。

【李家主査】  ありがとうございました。
 この静粛超音速機関係の中間評価ですけれども,例年とやり方が変わって,事前に委員の先生方から既に御意見を頂いて,その結果が中間評価票(案)に反映されていると思います。御自身のコメントも踏まえて,お気づきの点,御意見と御質問等頂きたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 どの委員がどういう意見をしたかという資料が,例年はありましたが,それが今回はありませんので,委員の先生方は御自身の御意見を思い出していただいてコメントしていただけたらと思います。

【松島委員】  研究開発課題の評価としてはすごくよくできていると思いますが,私もJALさんがアメリカの企業に投資したというのがかなりショックだったのですが,それは個人的なものなのかどうなのかということも確認したいということを踏まえてお伺いしたいと思います。超音速機の開発というものは一国では開発できないから各国で共同開発になるので,その中で日本が優位的位置を保つために,超音速機の様々な研究開発を進めるというスタンスだったかと思いますが,ブーム社のことを考えますと,やはり各国が共同してつくるという形にはなるのかもしれないですけれども,一国で旗を上げて,リーダー的な企業が出てくるとすると,やはりそこが中心になってしまって,結局,その国のブランドの航空機ができるのではないかという心配があります。自国のブランドの航空機でないと,産業的にはすごく限定されて,国としての利益を考えても限定されてしまうと思うので,日本でもやはりそういうベンチャー的な企業が出るような仕組みを少し考えるべきではないかなと感じました。優位的な技術を日本は持ってきているし,ある程度産業に近いところまでいっていますので。
私はこの委員会しか知らないのですが,超音速機に関して,ベンチャーなりビジネスなりを応援しようという動きというのは,日本にはあるのでしょうか。宇宙だと,今年の3月か4月頃だったかと思いますが,宇宙ビジネスに投資をするというような,宇宙ベンチャーを育てるというような,そういう記事が出たような気がするのですが,超音速機に関して,産官学で研究開発の段階でいろいろと討論するとか審議するとかではなくて,もう少し上のレベルで,ビジネスに結びつける,本当に産業として実現に結びつけるというような,商用の超音速機開発として世界に対してイニシアチブをとるような,そういう動きというのはあるのでしょうか。そのあたりをお聞きしたいです。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  私の知っている範囲でお答えさせていただきますと,まず,日本では超音速機にお金を出そうという動きは今のところはないと思います。アメリカだとベンチャーを育てるという風土があるので,あるのかもしれません。
 超音速旅客機は国際共同開発が前提だと申し上げていたのは,やはり開発規模が大きいからです。ブーム社は確かに小型SSTとは言っておりますが,商用の民間機としてFAAの認証を取ろうとすると,膨大なお金がかかるのは当然見えています。ブーム社の今の提案は,その小型SSTのデモンストレーターをつくるというところでございます。技術的には低ブームではないのでそれでいけると言っています。そういう一歩手前のところに対して,多分JALさんは,将来の輸送を変えるという観点で投資をしたということであると思います。したがって,私なりの理解は,JALさんの投資というのは,超音速の輸送機が出てくる世界を欲しているという意思表示に感じます。
 ただ,実際につくるとなると,旅客機の場合は例えばエンジンの安全性も含めたいろいろな制限,ビジネスジェットにはない厳しい制限がありますので,それらを全部クリアする必要があります。ですから,やはり開発費用が大きくなった段階で,国際共同,つまり1社ではなく他国も交えて何社かでということになっていくというのが基本線と思われます。そのとき,日本が今まで培った技術で,そこに入り,新しい航空機開発のシェアを獲得するには,かなりの高い技術を持っていくということが必要なのではないかと思っております。

【松島委員】  研究開発とは関係ないかもしれませんが,世界で何国か集まってやろうといったときに,技術を持っているだけで,シェアを獲得できるものなのでしょうか。とても心配性なので,技術だけとられてしまうのではないかと思ってしまうのですが。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  実際に商売という世界は戦略があると思いますので,それぞれの会社さんの思わくというものはあると思いますが,まず技術的にできないところを埋めないと物はできないと思いますので,この技術が必要というものを,参加する人たちがどれだけ持っていて,それを使えるかということが重要だと思います。その上で,その中でシェアのとり合いということがあるのではないかと思います。
 私は,SSTの研究をそれこそ二十数年やってきて,最初のころある企業にいて,JADCさんとか経済産業省さんの活動にも参加しておりましたが,やはり国際的な活動というのは,それぞれの考え方,立ち位置というものがあってやっていくものです。そのときに重要なのは,当時は技術がなかったということで,それをみんなで進めようということであったと聞いております。今はそういう技術があって,あとはそれをどうビジネスモデルとしてつくって,どこの部分のシェアを取っていくかということになっていくのではないかと思います。技術があれば取れるかというとわからないですけれども,ないと取れないのは確かではないかと思います。

【松島委員】  わかりました。ありがとうございました。

【李家主査】  よろしいですか。
 ほかにはいかがでしょうか。

【佐藤委員】  こういう書き方でいいとは思うのですが。課題の進捗というところで,下から積み上げていっていろいろな技術をつくり,進捗がうまくいっているということですが,全体の計画の中で,ゴールがどこにあって,今ちょうど半分のところでここまでいけたので,進捗は大丈夫ですという感じがよくわからなかったです。恐らく,2年後には,ここまで行けたので,一応大丈夫ですというような書き方になってしまうのかなと思いました。ゴールが先にあって,2年後までに,そんなにきっちりしたものではなくてもいいですけれども,大体こういうことができますというものを入れた方が良いのではと思いました。

【宮川課長補佐】  ありがとうございます。
 事務局としましては,先生がおっしゃっているのは,中間ということなので,全体が10あって,今5です,6ですという,そういう議論が必要なのではないかとことだと理解をいたしました。
 実際のところにつきましては,本フェーズでは,国際基準の策定やビジネスジェット検討チーム,官民の協力を踏まえながら,次のフェーズにおける実証機の設計も含めた次のステップに行くために,要素技術の単体で積み上げられるものは行けるところまで行くというところが今回の目標と理解をしております。一方,今時点では,一部,低騒音のノズルにつきましては,実証試験を行っているものもございますけれども,おおよその目安としては,解析計算レベルで,性能が確認されているところでございまして,今後,2年間におきましては,それを例えば風洞なりを使って実証試験をしながら,更にその次の実証に向けての要素技術を積み上げるというところでございます。その点でゴールというところが見えづらかったというところは多少あるかとは思いますけれども,そういったある程度の机上レベルでおおよそめどが立てられているというところをもって,私どもとしては順調であると判断したところでございます。

【佐藤委員】  松島委員がおっしゃったように,どこまでやっていれば,日本がどういうふうにビジネスに参加できるのかという点と,技術はどんどん積み重ねていっていますというところと,実際にそれを実機にするというところの間のギャップをどういうふうに考えているのかという点が,少し分かりにくいと思います。見せるべきなのか,見せないべきなのかということはあると思いますけれども。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  少し補足させていただきますと,事前評価でこれを立ち上げるときに御議論いただいたのですが,この2ページにある技術目標というのは,その四つの技術課題について,各々の目標を設定していますが,これは当然,一つの機体をつくるために必要な,全部がリンクした目標になっております。例えば,どんなエンジンを使うかによって,エンジンの持っている性能に依存して機体設計をどうしないと抵抗が減らないとか,ソニックブームが下がらないとか,そういう関係になっております。我々としては,この技術目標は小型の超音速旅客機,50人規模のものが,ソニックブームの基準,離着陸騒音の基準,それから経済性を満たすような低抵抗性,そして,ハンドリングとかメンテナンスとか,安全とか,軽量化してもそういうものがアウトではいけませんから,そういうものが全部成り立った機体になるようなところから技術課題を分解して,この基準を満たせばそれができるということにしております。4年後にこの基準を満たすような技術を作り上げるということで,それは最初は解析であり,途中で地上試験もやり,風洞試験もやり,また解析に戻しということをやっていくということで,そういう意味では目標の見通しが立ったというのは,あとはより深い実証試験をやれば大丈夫だというところにきたということでございます。

【佐藤委員】  明確なゴールがもうあるということですか。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  あります。それを設定してやっております。

【佐藤委員】  わかりました。
 もう一点,この資料について質問してよろしいですか。資料57-2-3の中で,機体推進系統合設計技術というものがありますが,これは解析なのか,実験なのか,どういう形で推進系を含めた統合をしていくのでしょうか。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  両方です。解析も実験もやっております。統合という意味は,エンジンがついた機体では空気取入口から空気が入り,燃焼ガスが出ていくということで,例えばそれが空気の流れ場に影響を与えますから,ソニックブームに影響を与える。それから抵抗にも影響を与えるということがあります。それは巡航時ですけれども,離陸するときはエンジンの騒音が騒音基準にも影響を与えます。したがって,エンジンの騒音を下げるためには,エンジンの排気速度を下げる必要があります。排気速度を下げると推力は下がりますが,離陸しなければいけないので,揚抗比を上げなければいけません。機体と推進系を形状的に見た統合のほかに,性能についても影響がそれぞれリンクしていますので,それらを全部統合して,四つの要求を満たしながら,機体が成り立つようにしているという意味です。それは解析にも全ての要因を入れるようにして,実は排気のホットガスのところはなかなか難しいのですが,インテークや排ガス,ソニックブームの伝播(でんぱ),抵抗,軽量化,そういったものを全て入れまして,部分,部分は実験で裏づけをとるということになります。

【佐藤委員】  最適化みたいなものもあるのでしょうか。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  最適化も考えてやっております。

【李家主査】  ほかはいかがでしょうか。
 きょうの最初に頂いた松島委員の御質問は,先ほど事務局から紹介があった武市委員からのコメントと大分重複するところもあるかなと思います。口頭で紹介がありました武市委員からのコメントは,まだこの資料の中間評価票には反映されていませんが,基本的には本邦の運航者が海外の企業に出資したことの関連で頂いたコメントだと思います。きょうの最初の質問として,松島委員からもその辺のところを懸念されるようなお話があったところですけれども,武市委員が来られたので,武市先生から何か御意見がございましたらいただけますでしょうか。

【武市委員】  御説明いただいた内容をもう1回頂きたいと思います。紙では置いていないですよね。

【李家主査】  紙では配っていないです。もう1回説明していただけますか。

【宮川課長補佐】  先ほど,御説明させていただいたのは,武市委員の御懸念としまして,本邦の運航者が海外の企業に出資したということは,前向きな面だけではなく,JAXAや国内メーカーではなかったことに関する評価と今後の研究開発への反映を考えるべきだということで,例えば本邦の運航者による出資を得るためには,どのようにするべきかというところを検討すべきだということで,コメントを頂いてるということです。また,「コミュニケーション」と書かせていただいている部分については,「関連企業等からの様々な支援を得るために,積極的な情報発信及び意見聴取を行い,それを研究計画への反映に努めることが重要である」という具体的な修正案を頂いているということを,御紹介させていただきました。

【武市委員】  基本的には本邦の運航者が出資するポテンシャルがあったのに,それが海外に行ってしまったということは,やはり余り前向きではないことかなと思いまして,今すぐではなくても,出資するポテンシャルがあるのであれば,それを将来的に我が国のメーカー,あるいはJAXAさんが受けるという方向への働きかけがあるべきなのではなかろうかと考えました。
 そういったコメントをした結果,16ページにあるようにコミュニケーションという言葉で反映していただいたのですが,コミュニケーションという言葉そのものが非常に広い意味があるので,もう少し直接的な表現で置きかえていただけないかということをお知らせしました。

【李家主査】  今,口頭で宮川さんがおっしゃったような修正の提案を頂いたところです。
 ほかはいかがでしょうか。どうぞ。

【松島委員】  研究開発課題としてはこれでいいんですけれども,ただ,研究開発の成果をできるだけ生かすというところで,JAXAさんの研究開発のチームがやるというよりは,もっと上の段階,上と言いますか,行政的レベルとか,政治的レベルとかで,日本はきちんと技術のポテンシャルを持っていて,それを生かすようなビジネスの機運が世界的に高まっているということをベースに,国の政策レベルというと大げさになるかもしれないですけれども,行政レベルで何かそういう仕組みをつくるというようなことができないかと思いました。大学だとVBLやベンチャー関係のラボラトリーが各大学にあるかと思います。JAXAさんの中にも,もちろんそういう部門はあると思いますが,もう少しそこを強化していくとか,今の人数,体制で行うというよりも,もう少し人をふやしたりして,今のレベルでやりなさいということではなくて,もっとそこに人をつぎ込んで,もう少し強化していく形での支援ができないのかなと感じたのですけれども。

【宮川課長補佐】  御指摘のところはごもっともでして,今の研究開発が要素技術を高めていくというところからは,少し外れてしまうところはあるかもしれないですけれども,本研究においても,超音速のビジネスジェットの検討チームというものをつくって,まだ要素技術のレベルというところもあるかと思うので,大学やメーカーの研究開発部門とまず連携するという段階であると認識しているところでございます。
 また,メーカーで具体的に研究が始まれば,例えばボーイング787の研究開発でも,ANAがローンチカスタマーとして参画したように,当然連携ということはあると思います。今,JAXAの研究開発の一部として行っているところとしては,検討チームをつくって,メーカーや研究機関と連携していきましょうという段階でございます。最初にコミュニケーションと書いたところにつきましては,委員の御指摘も踏まえまして,情報発信,意見聴取ということで,徐々にではありますけれども,国としてはニーズのない研究をやっても結局意味がないですので,それを踏まえた形で,運航者側とも連携していただきたいというふうに考えているところでございます。

【松島委員】  ニーズがないと今おっしゃったのですが,世界的な機運としてニーズはあるということではないのでしょうか。

【宮川課長補佐】  ニーズと違う研究をしてもという意味であって,本研究のニーズがあるないということを論じたつもりではありません。訂正させていただきます。

【松島委員】  わかりました。

【李家主査】  いかがでしょうか。今回,根本的な重要な点の御指摘をたくさん頂いたので,委員の御意見に従って文言にしていただいて,それを各委員に確認していただくプロセスを踏まないと,少なくともこのままでは了承できないと思います。もう1回,次の委員会でそれを見た上で御審議いただかないといけないと思います。

【武市委員】  そうすると,三段のままでよかったのではないですか。

【李家主査】  そうなんです。私も最初に少し申し上げたのですが,各委員の御意見がこの場で見えなくてきちんと整理できないので,できれば,今,武市委員から御指摘があったように,過去の航空科学技術委員会でずっと使われてきたものと同じフォーマットで委員会の資料として出していただきたいと思います。私の意見ですとか,ほかの委員の意見ですとか,それを踏まえてどう修正されたかという資料にしていただいて,かつ,きょう口頭でいろいろと御質問,御意見が出たので,それはそれでコメントとして書いていただいて,それらに対してどう反映するかという案をもう一度つくっていただきたいです。その上で,それを委員の先生方に見ていただくというプロセスが必要だと思います。少しお手間をとらせますが,そのような方向でよろしいでしょうか。そうすると,今日JAXAから頂いた御意見などもきちんと反映したような格好で中間評価ができると思います。よろしいでしょうか。
 では,ほかに御意見がなければ,そういうことで,今回の中間評価票の(案)につきましては,きょう頂いた様々な指摘事項を踏まえて,フォーマットも含めて,事務局に修正をしていただいて,委員にも展開していただいて,次の委員会で改めて御審議をお願いするということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。それではそのように進めさせていただきます。
 では,続いて,もう1件の次世代航空技術の研究開発,こちらは事後評価ですが,そちらに移りたいと思います。事務局から御説明をお願いいたし
ます。

【宮川課長補佐】  資料57-3に従って,御説明させていただきます。
 本件につきましても,資料57-3-1が概要,資料57-3-2が事後評価票の(案),そして資料57-3-3がJAXAの補足説明資料となっております。
 本件につきましては,大きく二つの研究開発で構成されているものでございまして,一つが天候等の影響を受けない,高高度で従来の有人機をはるかにしのぐ長時間の運用を可能とする滞空型無人航空機に関するものでございます。もう一つが,航空機の燃費や整備を大幅に削減可能とする電動化航空機に関するものでございます。
 いずれの技術につきましても,関連する機関との連携を図りつつ,キーとなる要素技術を開発することを目標にしたものでございまして,課題の実施期間といたしましては,平成25年度から29年度の5年間ということで実施してまいりました。昨年度末で研究期間が終了したところでございますので,航空科学技術委員会において事後評価をお願いしたいと考えているところでございます。
 まずは,これまでの研究開発の成果について,JAXAから説明をお願いしたいと思います。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  お手元の資料57-3-3の資料を御覧いただければと思います。
 先ほど,補佐から御説明がありましたように,二つのアイテムがあります。2ページ目を御覧ください。最初の方です。滞空型無人機技術について,概要を御説明いたします。
 この目的は,そこに3行ほどありますが,かいつまんで申し上げますと,高高度を長時間滞空できる無人航空機システムで,衛星・航空機のミッション能力を補完,補強する新たな通信/観測プラットホームとして,我が国が直面する社会課題を解決するということに貢献することです。
 システムコンセプトは,そこに2行ありますが,これもかいつまみますと,2機のローテーション運用をして,排他的経済水域内において24時間,365日連続ミッションが実現できるようなコンセプトです。
 基本性能要求は,そこに幾つか書かれていますが,特に特徴的な部分で申し上げたいのは,滞空時間を72時間以上と設定したことでございます。
 この活動での目標は二つありますが,一つはシステム/運用コンセプトの具体化と社会的価値の明確化,もう一つは,この後お話しいたしますが,主要な技術要素の見通しを明確化するということでございます。
 次の3ページ目を御覧いただきまして,この滞空無人機では三つの項目について御説明いたします。一つは,その先進技術開発に関することです。この技術開発も実は三つの中身からなっておりますが,その1番目は,高高度の滞空技術というものです。これはまた更に二つの技術からなります。機体技術と推進技術です。
 まず,機体技術の方ですが,右側に絵がありますように,双胴で横に長い主翼のものが,我々の滞空機として想定しているものですが,この横に長い主翼の荷重分散をする設計と,それから,材料は当然複合材ですが,脱オートクレーブで大物一体成形ができる軽量機体構造が鍵でございます。それを念頭に置いて,材料試験や,部分要素試験を行いまして,設計要求値を求めて参りました。そして,FEMによる構造解析を行って,我々の解析の範囲では,その最大離陸重量に対して,構造重量比25%という目途が得られております。
 それから,推進技術でございますが,これはレシプロエンジンに複数のターボチャージャを組み合わせて,高空で過給するエンジンシステムというものを想定しております。その動的シミュレーションモデルを開発して,それを使って広範な運転条件,つまり地上から高度18キロと非常に高いところまで,安定にエンジンが作動するということを,シミュレーション上ですが,解析をして確認しております。
 その次の2個目の点ですが,右側に写真がありますが,この原型エンジンシステムというものを,我々は試作いたしまして,低圧環境下の高度の高いところを模擬したエンジン試験運転設備を利用して,そこでエンジンを回して,シミュレーション結果の妥当性を検証しております。
 最後の点のところに課題があります。これについては,後でまとめて御紹介いたしますので,ここでは省略いたします。
 次に,4ページ目を御覧ください。先進技術の二つ目でございますが,無人機運航技術というものがあります。これは右側に具体的な通信系統のイメージ図があります。左側には少し長い文章がありますが,これもかいつまんで申し上げると,我々の滞空型無人機で想定される様々な運用において,通信や操縦方式,航空交通管制への対応,衝突回避等の課題を識別しました。そして,シミュレーションを用いてですが,その飛行性,操縦性及び着陸時の伝送遅延の影響等を確認することができております。
 そしてこの無人航空機に関しては,運航にかかわる規制は当然ICAOがいろいろ検討しておるわけですが,その取組にも我々は参加して協力しております。
 先進技術の三つ目はミッション技術でございます。ミッション技術の一例として,ここにカラフルな図がありますが,例えば豪雨による土砂災害防止ミッションの場合には,合成開口レーダーSARを使って,センチメートル級の地殻変動を監視することができるかということを取り上げて,この絵にありますように干渉縞(じま)から分析することができるということがわかったというのが1点です。
 それから,併用化ライダーによる水蒸気の流速観測ができること,またミリ波による高速データ伝送ができること,その実現性が実際あるということを確認することができております。
 次の5ページです。これは先進技術の次のアイテムですが,ユーザコミュニティ構築・利用研究という活動を行いました。ここでは,最初の点のところにa,b,cと書いてありますが,このようなミッションにつきまして,システム及び運用コンセプトの具体化を行いました。
 まず,aの豪雨による土砂災害防災ミッションというものの例ですが,これは,関係する防災機関や有識者と研究会を設立して,たくさんの議論をして参りまして,どういうところで利用するかということで合意形成を図ってきました。左側の下の図がそのときのミッションの概要でございます。こういうものでどこがどう分担して,何がどういうふうにミッションを進めていくかというようなことを議論してきてたということです。
 それから,3番目の点ですが,大規模広域災害対応ミッションにつきましては,その社会価値として,防災・減災効果というものを推定することができております。
 その次のところですが,そういう検討の中で,滞空型無人機の滞空性能に対して,ETOSという目標地点に滞空できる時間比率というものがありますが,それとコストの評価の妥当性などを確認しております。
 その検討した結果が右側でございまして,棒グラフになっております。右に行くほど滞空時間が長くなっています。この図は,滞空時間が長くなると,運用コストを下げることができるという結果を示しているものでございます。
 次に6ページ目を御覧ください。3個目の活動内容ですが,これはシステム開発・実証試験に関するものです。最初の点のところが重要なのですが,そのようなミッションを実現できる機体としてのシステムの概念設計を行いまして,主要な技術課題を識別することを行い,更にその識別に基づいて,先ほどの三つの先進技術開発について成立性を確認しました。それらをベースにして,飛行実証及びミッション実証を目的とした研究機や小規模の実験機の開発計画を立案するに至りました。
 その一例として書いたものが,この6ページの図でございます。これは小規模実験機による成層圏飛行実証構想のイメージでございまして,これらの特徴を持つ実証構想を実現すれば,いろいろな技術課題がクリアになるというものです。
 今後は,2個目の点ですが,社会動向の進み具合などのいろいろな点を踏まえつつ,飛行実証試験やミッション実証試験に向けて,ユーザーや開発機関等との連携を強化していくことに取り組みたいと考えております。
 次に7ページですが,ここからはもう一つの課題であるエミッションフリー航空機でございます。この目的は,そこにありますように,燃費や整備費を大幅に削減可能な革新的技術として,将来有望な電動化航空機技術の研究開発を行って,国際的に優位性を持つ技術を獲得するということでございます。
 これは,目標を全て達成済みでございます。この研究開発での最大の成果は電動推進システム技術を獲得しているということでございます。ここに文章でいろいろ書いてありますが,まとめますと,そこの左側に写真がありまして,これは有人の実証機ですが,これを用いまして,そこに書いてある1から,次のページにある9までの成果を得たということです。
 例えば,この7ページでございますと,1のところでは,JAXAの多重化モーターというものがありますが,その効率が世界トップレベルであるということを,この有人実証機で実証しております。その様子を示したものが右側の最大出力と効率,出力密度のグラフでして,JAXAと他との比較でプロットしたものですが,こういったものが飛行実証結果として得られております。
 それから,次の8ページ目を御覧いただきますと,具体例として,5番目,多重化モーターによる推力喪失回避機能,6番目,電力回生エアブレーキによる降下率の調整機能,それから7番目,電力回生をしながら定高度に滞空するRegenerative Soaringという,それらの機能を世界で初めて有人で実証したという成果があります。
 右側の図は少しぼけた感じで申し訳ありませんが,飛行試験データの一例と書いたところに,今の三つのものが,飛行試験中にきちんと確認できているというデータで示しています。少しわかりにくくて申し訳ありませんが,そういうデータをきちんと得て,分析をして実証できたということが成果として得られております。
 それから次のページは,今の電動推進システムとは別のものなのですが,もう少し長期的,将来的なものでございます。右側の下にブレンディッドウィングボディのエミッションフリー航空機概念の絵がありますが,そういう長期的,将来的な大型機,それを想定しての要素技術として得られたものを書きました。
 二つありますが,一つは,この(2)電動ファン・発電システム技術です。ここでは,左側の下にあるような,固体酸化物形燃料電池SOFCとガスタービンを複合する,複合サイクル発電システムというものを考えまして,それを組み込んだハイブリッドエンジンシステムというものを考えております。こうすることによって,熱交換器を不要として軽量化が図れると同時に,熱効率も向上するシステムがつくれるということで,これは特許を出願しております。
 次の10ページは,低炭素燃料貯蔵と供給技術というものです。左側の写真は先ほどのSOFCを用いた基礎実験装置でございますが,これを使って発電量に対する水素供給流量の影響調査を行いました。それから,SOFCはあるところで破断をするわけですが,その許容限界値を把握することができたということで,右側に破損した場合としなかった場合の比較の写真があります。
 ということで,要素技術として,重要な成果を得ることができたというものでございます。
 最後,11ページに,今後の展望を二つの活動についてまとめてあります。滞空型無人機の方では,先進技術の開発では見通しが明確になっていますが,先ほど後に回しますと言いました課題の中に,高空過給エンジンシステムで,実用エンジンに対するシミュレーション等基盤的技術の部分では少し課題が残っております。その点は,技術成熟度の向上に引き続き取り組む必要があると考えております。
 それから,社会動向をよく踏まえつつ,飛行実証試験やミッション実証試験に向けた関連機関との連携強化を更に取り組む必要もあると考えております。
 エミッションフリー航空機の方は,先ほどの電動システム技術の成果を踏まえて,現在海外機関,DLRでございますが,そこと実機の実証を含めたさらなるシステムの高度化という研究を進めるに至っております。
 その他,化石燃料を必要としない電動ハイブリッドシステム,長期的なものですが,そういう研究開発を更に実施して,技術成熟度を上げていきたいと考えています。
 そして,2個目のところも革新的な機体概念につなげていきたいということでございます。
 最後の点ですが,外部機関と航空機の電動化に関するコンソーシアムをつくりまして,連携体制の強化を更に進めていくということを,我々は行っておりますが,先ほど冒頭に,宮川補佐からありましたが,電動コンソーシアム,ECLAIRと呼んでおりますが,その発足に関するプレスリリースを今朝11時にさせていただきまして,その案内を皆様に参考までにお配りさせていただきました。そのように次の活動につなげて進めておるところでございます。
 以上です。

【宮川課長補佐】  そうしましたら,私から資料57-3-2の評価票の(案)について,簡単に御説明さしあげたいと思います。
 本件につきましては,先ほどの中間評価票と同様に,研究計画・評価分科会の様式をもとに,中間評価の記載と対比させるような形で事後評価(案)を書かせていただいております。本件につきましても,事前にコメントを各委員から頂いておりますけれども,コメントを記載する様式になっておらず,申し訳ありません。
 事後評価の書き方ですが,必要性,有効性,効率性の三つの観点から評価した結果,最終的な総合評価,及び今後の展望を記載するものとなっております。
 各課題の達成状況でございます。必要性についてでございますけれども,滞空型無人機システムについては,従来の航空機や衛星では不可能であった全天候・常時観測を実現する技術的な意義が大きいものである,またそのミッションの想定に当たっては,防災機関等との連携がなされるなど,その成果が社会的要請に応えるものであると同時に,国として推進するにふさわしいものであったと考えておるところでございます。
 電動化航空機技術についても,世界トップレベルの高効率・高出力の多重化モーターなどの革新的な技術を開発するなど,技術的な意義が大きいものであるとともに,国際的な優位性を持つ環境負荷低減技術といった点で,社会的要請や国策に沿うものであったと考えられるところでございます。
 したがって,本研究におきましては,当初想定された必要性があったと考えているところでございます。
 続いて,3ページ以降の有効性についてでございますけれども,滞空型無人航空機システムにつきましては,防災機関等との連携のもと,想定したミッションの実現のために必要な先進的技術の開発及び実証機の開発計画の立案というところまででございますが,その開発計画の立案が適切になされたものであり,その成果は有効なものであったと考えておるところでございます。
 また,電動化航空機技術につきましては,航空以外の異分野も含め,産業界,大学との連携を行った結果,世界トップレベルのモーター効率など,国際的な優位性を有する技術の開発がなされたところでございますので,その成果が有効なものであったと考えておるところでございます。
 したがって,本件につきましては,当初想定された有効性に対応した成果が得られたのではないかと考えておるところでございます。
 効率性についてでございますけれども,滞空型無人航空機システムについては,研究開発が防災機関やJAXAの宇宙関連部門といった他機関との連携のもと,ロードマップを用いながら進捗管理を行いつつ,限られているリソースを効率的に割くことによって,所定の効果を得られたというところで,効率的に進められたと考えているところでございます。
 電動化航空機技術につきましても,自動車関連や電池関連といった異分野との連携を行い,これもロードマップによる進捗管理を行いながら,限られたリソースの中,所定の成果を得られたというところでございますので,効率的に進められたと考えているところでございます。
 総合評価が,11ページ以降になります。これにつきまして,1が総合評価,2が評価概要となっておりまして,1については,本研究開発の成果をまとめたものでございます。内容につきましてはJAXAからの説明と重なる部分ではございますけれども,滞空型無人航空機システムにつきましては,高高度滞空技術,無人機運航技術,ミッション技術といった要素技術が,一部,高高度滞空技術に関しては,高空過給エンジンシステムの実用エンジンへの適用というところで,少し課題があったというところではありますけれども,技術的な見通しは大体立っている状況であると考えております。
 要素技術の開発に当たりましては,防災機関や有識者のコミュニティを形成して,システムや運用コンセプトの具体化がなされたと考えております。
 そして,それに基づきまして,実証試験に向けた機体の開発計画,実証実験は次のステップではございますけれども,開発計画が立てられたという成果が得られたのではないかと考えております。
 アウトプット,アウトカム指標による評価ですが,資料13ページとなります。先進技術の要素技術開発ということが本件のテーマでございますので,何分,件数というところは出てはいないところではございますけれども,実績について書かせていただいておるところでございます。
 続いて,電動化航空機技術でございます。13ページの一番下で,実質的には14ページ以降になろうかと思います。こちらにつきましても,前半の部分につきましては,JAXAの御説明のとおりでございますが,要素技術の研究開発としましては,高効率・高出力密度を有する多重化モーターの開発といった,大型実証機に係る要素技術や,将来のステップということでございますけれども,燃料電池を組み込んだ複合サイクルシステムに係るものについて,優れた成果が得られたのではないかと考えておるところでございます。
 また,小型の有人飛行につきましては,新機能の実証飛行がなされたと考えておるところでございます。
 指標につきましては,15ページ以降に書かれておるところでございますけれども,こちらにつきましても,要素技術が中心というところではございますが,数値を記載させていただいております。
 いずれにしても,今後の研究開発の進捗に期待していたいと考えておるところでございます。
 以上から,全体としましては,滞空型無人航空機システムの要素技術開発において実用エンジンを用いた実証という点におきまして課題を残したものの,本事業全体としましては,関係機関との連携体制のもと,成果が得られたのではないかと考えておるところでございまして,さらなる技術開発や,機体概念の適用など,今後の取り組みが期待されるということで,評価させていただきたいと考えておるところでございます。
 続きまして,17ページの(3)今後の展望につきましてでございますけれども,こちらについても,事前に送付させていただいたものから,武市委員のコメントを踏まえて,一部この資料では修正をさせていただいているところです。ただし,更にコメントを頂いているところでございますので,後ほど紹介させていただきたいと思っております。
 現状の書きぶりといたしましては,滞空型無人航空機システムについては,要素技術の技術精度向上には引き続き取り組んでいただくとともに,利活用の実現を目的とする研究開発に至らなかったというところについては,しっかりと受けとめていただいた上で,社会動向を踏まえつつ,出口を見据えた飛行実証や関係機関との連携強化に取り組んでいただきたいと考えておるところでございます。
 電動化航空機技術については,先ほど吉田プログラムディレクタから紹介がありましたとおり,コンソーシアムを通じて,国内企業や関係機関との連携というものが今後更になされていくところでございますので,それを継続することで,国際競争力の高い技術を効果的に創出していくことが期待されると考えておるところでございます。
 先ほど少しお話しさせていただきましたけれども,滞空型無人航空機システムについて,研究開発の成果の活用用途が現時点で見いだせないため,次への進展が必ずしも見いだせていないのではないかと武市委員から御指摘いただいたところでございます。それにつきまして,研究管理に改善の余地があるのではないかという御指摘を,直近で頂いたところでございます。資料17ページにあります今後の展望の1パラグラフ目が滞空型無人航空機システムに関してのものでございますけれども,その中ほど,4行目に,「一方」で始まる文があります。そちらに現時点では,その成果を活用した利活用の見込みが現時点で立っていないというところだけを書かせていただいているところでございますが,そちらにつきましては,今後調整させていただきたいと思いますけれども,「この利活用の実現を目的とする研究開発への進展としなかった点は,研究管理の改善の余地があるということを示唆する。そのため」という形で研究管理の改善の余地というところを明記する修正案を頂いているところでございます。
 資料の修正が間に合わなくて申し訳ありませんけれども,資料57-3-2の説明につきましては以上となります。

【李家主査】  ありがとうございました。
 では,ただいまの御説明に関して,御質問,御意見等ありましたら,お願いいたします。
 最後に武市委員の御意見の紹介がございましたけれども,口頭で言われたとおりでよろしいでしょうか。

【武市委員】  おおよそ,その通りです。
 最初の締め日にコメントをお返しして,コメントを文章に反映していただけるだろうと思っていたのですが,そこで少し時間がかかってしまったようで,ここに間に合わなかったという事情があります。
 気づいた背景を簡単にお話しすると,資料57-3-3の中の,滞空型無人航空機技術の5分の4ページで,右下の図で運用コストが年間あたりに換算すると10の2乗億円規模になっていますが,これだけ運用コストがかかるからすぐには実現できないという見通しが立ちましたというお話を頂いています。その上で,資料57-3-2では,3ページの有効性のところで,「従来の航空機や衛星では不可能であった全天候・常時観測を実現するため」という記述があって,もう1回飛びますけれども,同じ資料の12ページで,総合評価の「2.ユーザコミュニティの構築と利用研究」というところで,b)の最後にコスト価値の定量評価というものが出てきます。
 指摘の趣旨は,コスト価値の定量評価というのは事前にやろうと思えばできる話で,想定しているミッションを全天候・常時観測を実現するためという前提でやるのであれば,そのコストというのは,研究を始める前からわかるはずです。それをやらずに研究をやっていて,ハードウエアの研究は非常にすばらしい研究と評価しているのですが,結局それの利用先を見いだせていないままです。最初にやろうと思えばできたはずのことをやっていなくて,計画通り研究を実施した後に,結局利用先がすぐにはわかりませんということが明らかになったということが書かれているわけです。今後このようになってしまわないように,出口志向の組織としての研究管理を改善していただきたいなと思います。それがコメントの趣旨です。
 恐らくは,事前の評価がなされていれば,現実的なコストの中で実施できるミッションというものを,見つけることもできただろうと思いますし,それを目指した研究開発を行っていれば,それが完了した段階で,次の段階で具体的な利用先を想定したミッションの実現に取りかかることができるというように,順次発展させて実利用の実現まで達成するような研究開発の取り組みができたのではなかろうかと考えています。といったコメントを,ここの文書に反映していただくのが間に合わなかったということでございます。

【李家主査】  ありがとうございます。何かございますでしょうか。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  御趣旨はよく理解いたしました。
 ただ,これはコミュニティの皆さんと議論する中で,先ほどの滞空のシステムコンセプトなり,基本性能要求を決めていく段階のいろいろな議論があった中で,それらがある程度議論されて詰まっていかないと,コスト評価の確度が上がらないのではないかというところもあり,この研究をスタートする前に全てが読み切れていないということではないかと思ってはいます。

【武市委員】  この研究そのものを否定するわけではなくて,今後,こういう研究を立ち上げる段階で,利用先までを見通して検討していただくとよろしいのではなかろうかという趣旨です。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  わかりました。

【武市委員】  例えば,2ページの高度16.5キロ以上とか,滞空72時間,このような仕様を定める数字を出すときに,利用先を想定して一緒にコストを出すといったことは可能ですよね。そういったことをやっていただけると,研究成果がより利用という実業に近づいていくのではないかというふうに思います。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  はい,わかりました。ありがとうございます。

【李家主査】  ほかはいかがでしょうか。どうぞ。

【冨井委員】  今日JAXAさんからプレスリリースが出された航空機電動化コンソーシアムの発足について,少し問い合わせたのですが,これが直接実用化に結びつくわけではない,このコンソーシアムの趣旨はそうだというふうに伺いました。この電動化航空機技術の研究開発は去年までに行ったもので,その次の段階として,もう実用化につながるような取り組みをするわけではないのでしょうか。要するに,このコンソーシアムの位置づけと,もし実用化にならないのであれば,その次の段階の計画はあるのか,全体的に実用化に向けてどう取り組まれているのかを少しお聞きしたいです。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  まず,次世代航空技術のこの5年間の計画の中で,これが終わったらすぐ実用化ということを目指していたわけでありません。我々は当然,将来実用に向かうステップとして,1歩ずつ進んでいるわけです。

【JAXA渡辺ハブ長】  担当しています,JAXA次世代航空イノベーションハブの渡辺と申します。
 今,御質問のあった件ですけれども,研究開発でやってきたことは,もちろんアプリケーションにもよりますが,すぐに実用化できるというレベルに今あるというわけではありません。コンソーシアムの中では,今後どういう形でこの技術を実用化していくかというビジョンやロードマップをつくっていこうと思っています。それはJAXA単独でつくるというよりは,コンソーシアムに入られている企業の皆さんも含めて考えていくということになりますので,その結果として今回の研究開発の成果が比較的早く実用化できるかもしれないし,その成果をベースにもっと高い技術にしてからものになっていくかもしれないというところで,今後それを検討していくという,そういう流れです。

【冨井委員】  わかりました。

【李家主査】  ほかはいかがでしょうか。

【JAXA吉田プログラムディレクタ】  先ほどの武市先生の件で,少し原局で補足したいということですので,発言させてください。

【JAXA原田研究領域主幹】  研究を担当している原田と申します。
 資料の5分の4ページのコストを推算した図の意味するところについて補足させていただければと思います。
 そもそもこの研究開発は,災害対応,海洋監視,安全保障等,様々なミッションに貢献できるプラットホームの実現を目指したものですので,この資料にも書いてありますように,様々なミッションを対象として,それを具体化する取組をしてまいりました。
 その中で,具体的なコストの推算を行っておりまして,この資料に載せております図は,我が国の排他的経済水域全域を常時監視し続けるという一番大規模なシステムを想定した場合の,20年間のコストです。
 ここでの結果として言いたかったのは2点ありまして,一つは1機当たりの最適な滞空時間をこのミッションに対して見いだしたということ。それからもう一つは,これを従来の手段で実現しようとしたときとのコストの比較です。その比較対象は,一つは低軌道衛星をたくさん上げて密な間隔で監視し続けるというもの,それからもう一つは従来の哨戒(しょうかい)機による監視を行うもので,いずれと比較しましても,1桁以下のコストで実現できるというのがその結論でございます。
 これがそのまま利活用につながるかどうかというのは,我々技術者の判断できることではありませんけれども,ここの趣旨は,従来の衛星又は航空機に対して1桁以上のコスト優位性を持って,こういったミッションも実現できるという結果の一例を示したものであるということを御理解いただければと思っています。

【武市委員】  それはわかりましたけれども,私のコメントの趣旨は,そういう壮大な国家規模のプロジェクトを想定するばかりではなく,小規模だけど実現可能な規模のプロジェクトを想定することも必要なのではないですかという,そういう実現可能な利用先を見いだす活動をされてもいいのではないですかということです。

【JAXA原田研究領域主幹】  コスト試算について十分ではないところはありますけれども,そういったミッションも検討しております。

【李家主査】  ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。こちらの方に関しては,主に今後の展望のところに関する御意見が主だったかと思います。あとはプレスリリースの関連の御意見だったと思います。いずれにせよ,まだ口頭でしか修正案を紹介していただいていないもので,それも評価票に修正いただいて,かつ委員の先生方のコメントがわかるようにしていただいたものを改めて委員の先生方に展開していただきたいです。こちらの事後評価の方は,その展開していただいたものを委員の先生で確認していただければ,それで了承にかえましょうか。それとも,もう一度,先ほどの静粛の中間評価と一緒に,次回の委員会で諮った方がよろしいでしょうか。

【丸山室長】  次回かけさせていただければと思います。

【李家主査】  それでは,同じようなやり方で,この本事後評価票の(案)については,きょう頂いた御指摘の事項を踏まえて,事務局で修正していただいて,次回の委員会において改めて御審議いただくということにさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
 ありがとうございます。では,そのように進めさせていただきます。
 では,次の議事,3番に移らせていただきます。「研究開発プログラム評価(航空科学技術分野)における参考指標(我が国全体を把握する指標)の検討について」ということで,前回も議論させていただきましたけれども,その件について,事務局から御紹介をお願いします。

【宮川課長補佐】  資料57-4-1を御覧ください。本資料につきましては,前回の第56回の航空科学技術委員会で使用させていただいた資料で,状況の変化があったところについては,赤字で記載させていただいたものでございます。
 本件につきましては,前回の第56回の委員会で御議論いただいた結果を踏まえ,事務局で内容を再検討いたしました。
 資料の1ページ目の赤字につきましては,今申し上げたようなところでございますので,2ページ目に移らせていただきます。前回委員会におきましては,復習になりますけれども,そこの一番上にあるa,b,cの3点を指標として提案させていただいたところでございます。指標そのものについては,いずれについても妥当であると御評価を頂いたと認識しておるところでございます。
 一方で,このうちの「c.航空分野における論文数の推移」につきましては,前回委員会におきましては,検索のキーワードとして五つの単語を御提示させていただいたところ,網羅性という観点で不十分なのではないかという御指摘いただいたというところが前回までであったと思います。
 具体的には,4ページに移っていただきまして,cの航空分野における論文数の推移というところで,4ページ,5ページにかけて,c項の記載がなされておるところでございます。前回提案いたしました五つのキーワードというのは,5ページの表の中にしか書かれていないのですが,「aeronautic」,「aircraft」,「helicopter」,「micro air vehicle」,「jet engine」という五つの単語でして,Web of Scienceという論文データベースのサイトの航空・宇宙工学のサブジェクトカテゴリーに登録されているジャーナルの名称を参考に,御提案したものでございます。
 キーワードにつきましては,委員からの御指摘を踏まえまして,これらの五つの語が,aeronauticは航空分野を総称する言葉,それ以外の四つは航空機又は推進器の用語であるということに注目しまして,総称と,航空機又は推進器について,国際標準,あるいは米国やヨーロッパの技術基準の定義をもとに引っ張るとともに,機体以外の要素につきましても同様に,国際標準や欧米の基準をもとに引っ張ってくるということで,網羅性を可能な限り確保しようと考えたところでございます。
 そのようにピックアップしたキーワードにつきましては,実際に事務局で検索をしてみまして,余分なといいますか,他分野の論文がヒットするといったことがないような形を検証させていただいております。その結果が,5ページの※2のところにあります19のワードになっております。
 この19のワードをorで結んだ形でWeb of Scienceで検索した結果が,ページを戻りますけれども,4ページの表でございます。全体として,航空関係の論文数といたしましては,以前御提示させていただいた第56回のものと比べまして,1割ほど増加したというところでございます。従いまして,網羅性は多少上がっているところである一方で,4から19ということで,単語数を5倍近くにふやしても検索数が1割増というところなので,若干飽和しつつあるのではないかというところも言えるのではないかと考えているところでございます。
 3点目になりますけれども,もしこれで御承認をいただける場合につきましては,今後のスケジュールといたしましては,次回の研究計画・評価分科会において,研究開発プログラム評価の実施方針が固まるかと思いますけれども,それに基づいて評価を実施していくところとなっておるところです。
 もともと研究開発プログラム評価というものが研究開発計画策定後2から4年後を目安に,政策評価の実施の年度も踏まえつつ行うこととされております。航空科学技術分野におきましては,来年度が政策評価の対象となっておるというところもありまして,今年度の下期に実際の評価を御相談させていただくということになろうかと思っております。事務局といたしましては,今回,このキーワードで御承認いただけるのであれば,それをもって引き続き準備を進めていきたいと考えておるところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。

【李家主査】  ありがとうございます。
 前回も出てきた資料を,頂いた御意見をもとに修正して,新たな提案をしていただきましたが,要は,5ページ目の※2の表にある19のキーワード,これでよろしいですかということですので,そのあたりの御意見をいただければと思います。
 この表の中で,2の機体等の3行目にあるgyrodyneというものは,私も聞いたことなかったのですが,どのようなものでしょうか。

【宮川課長補佐】  gyrodyneはFARのパート1の定義にあるものでございまして,それによると,ヘリコプターのローターとレシプロ機のプロペラと両方を持つようなもので,クラッチでローターとプロペラを切りかえるようなものというふうに書かれております。実際には私も見たことは当然ないのですが,このgyrodyneにつきまして検索をすると,論文数は少ないですけれども,航空関係のものがひっかかるというところでございまして,外す理由がなかったというと少し消極的な言い方になってしまいますけれども,今回この19の中に含ませていただいております。

【李家主査】  いかがでしょうか。
 追加になった論文数は余り多くないというお話でしたので,メーンは前回提示いただいた五つでほぼ網羅しそうですけれども,この19個でいくということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは,御提案いただいた資料57-4-1の参考指標で,今後作業を進めていただくということでお願いいたします。
 どうもありがとうございます。では,そのように進めさせていただきます。
 では,次は議事の4番目,その他です。委員の先生方から追加の御意見等ありましたらお受けいたします。よろしいでしょうか。
 そういたしますと,これで本日の議事は全て終了いたしましたので,事務局にお返しいたします。

3.閉会

【宮川課長補佐】  ありがとうございます。
 次回の航空科学技術委員会の開催日につきましては,また今回の御指摘も踏まえて,改めて委員の皆様のスケジュールを調整の上,確定したいと考えております。
 また,本日の委員会の議事録につきましては,事務局にて案を作成し,委員の皆様に御確認いただいた上で,文部科学省ホームページに掲載させていただきます。
 それでは,これで科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会第57回航空科学技術委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

(了)

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