研究評価部会(第28回) 議事録

1.日時

平成19年8月7日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10F3・F4会議室

3.出席者

委員

 笹月部会長、平野部会長代理、相原委員、青木委員、有本委員、岩田委員、大隅委員、大泊委員、小川委員、後藤委員、小林委員、諏訪委員、田島委員、東嶋委員、中西委員、西島委員、野田委員、花木委員、平澤委員、広瀬委員、宮部委員、持田委員

文部科学省

科学技術・学術政策局
 森口局長、千原計画官、生川科学技術・学術戦略官(推進調整担当)、上原調整企画室長補佐
研究振興局
 大竹基礎基盤研究課長

4.議事録

【笹月部会長】
 定刻となりましたので、第28回科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 研究評価部会を開催いたします。
 本日は、議事次第に従いまして、科学技術振興調整費による実施課題の平成19年度における評価の進め方につきまして、さらに光科学技術分野の平成20年度新規課題の事前評価についてご審議いただきたいと思います。
 まず、審議に先立ちまして事務局に人事異動がありましたので、ご紹介いたします。事務局からお願いいたします。

【千原計画官】
 おはようございます。事務局に2件、人事異動がございましたので、ご紹介させていただきます。
 まず1件目は、科学技術・学術政策局の計画官が7月11日付で異動になってございます。前任の生川浩史が科学技術・学術戦略官(推進調整担当)に異動になりまして、後任に千原由幸、私でございますが、着任いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【生川戦略官】
 生川でございます。よろしくお願いいたします。

【千原計画官】
 千原でございます。座ってご紹介させていただきます。
 もう一件は、7月17日付で科学技術・学術政策局評価推進室長の異動がございました。これまで科学技術・学術政策局企画官でございます江崎典宏が併任で室長を務めておりましたが、後任に私が併任で着任いたしました。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【笹月部会長】
 続きまして、配付資料の確認をお願いいたします。

【千原計画官】
 それでは、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。
 まず、資料1‐1としまして、平成19年度科学技術振興調整費の評価の日程について(案)でございます。
 次は、資料1‐2 平成18年12月の研究評価部会における議論とその対応方向について(案)でございます。
 その次は、資料1‐3、平成18年12月の研究評価部会における了承事項(今後に向けて)の反映方針(案)でございます。
 次は、資料1‐4、平成19年度科学技術振興調整費による実施課題の評価の実施について(案)でございます。
 その次が、資料1‐5、評価作業部会委員の選定基準について(案)でございます。
 その次が、資料1‐6、平成19年度科学技術振興調整費による実施課題の評価の実施に係る作業部会の構成について(案)でございます。
 次が、資料1‐7、「戦略的研究拠点育成」プログラム実施課題のうち、「ユーザーを基盤とした技術・感性融合機構」(九州大学)の扱いについて(案)でございます。
 続きまして、資料2‐1、「最先端の光の創成を目指したネットワーク型の研究開発拠点の構築」の事前評価票(案)でございます。
 続きまして、資料2‐2、「光を用いた植物・海藻類の収量増加プログラム」の事前評価票(案)でございます。
 続きまして、資料2‐3、光科学技術の推進に関する懇談会中間報告書について‐今後の光科学技術施策の進め方‐でございます。
 その次が、資料2‐4、光科学技術の推進に関する懇談会中間報告書でございます。
 その次に、資料2‐5、光科学技術の推進方策に関する評価検討会の開催について。
 その次が、参考資料になります。参考資料1、財務省予算執行調査資料でございます。
 その次に、参考資料2、研究計画・評価分科会における評価の進め方。
 その次が、参考資料3、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の組織構成。
 その次が、参考資料4、本研究評価部会の委員名簿でございます。
 また、机上配付資料といたしまして、科学技術振興調整費による実施課題の評価の進め方について、それから、文部科学省における研究及び開発に関する評価指針を配付してございます。不備等がございましたら事務局のほうにお申しつけいただければ幸いでございます。

【笹月部会長】
 それでは、議題1、科学技術振興調整費による実施課題の平成19年度における評価の進め方について、に入りたいと思います。
 本件につきましては、資料1‐1から1‐7までを一括してご説明いただきまして、その後、委員の方々からご意見を賜りたいと思います。事務局からご説明、よろしくお願いいたします。

【上原調整企画室長補佐】
 資料1‐1をごらんいただきたいと思います。資料1‐1には、科学技術振興調整費の評価の日程について記載させていただいてございます。本日8月7日でございますが、本部会におきまして科学技術振興調整費の評価の方法について、進め方についてご決定をいただきますれば、速やかに委員の選定作業に当たらせていただきまして、作業部会の設置、それから委員へのご説明、そして書面審査を行ってまいりたいと思ってございます。また、9月中旬には、第1回評価作業部会、昨年までワーキンググループと呼んでございましたが、評価作業部会というふうに名称を変えてございますが、それを開催いたしましてヒアリングの進め方を決定いただきたい。そして、10月上旬から11月上旬でございますが、ヒアリングを実施いただき、評価を決めていただくということを考えてございます。そして、11月下旬から12月上旬、本部会をまたご開催いただきまして、各作業部会からの評価結果をご審議いただきながら最終的な評価をご決定いただきたいというふうに思ってございます。評価が決まりますれば、科学技術振興調整費の場合、総合科学技術会議の確認を経て、最終的にプレスリリースなどを行ってまいりたいというふうに思ってございます。
 続きまして、資料1‐2をごらんいただきたいと思います。これは、昨年18年12月に開催いただきました研究評価部会におきまして、科学技術振興調整費の評価の方法などについてご議論いただいたわけでございます。このご議論を今回の評価の方法に改善するように取り組んでまいりたい、そういうペーパーでございます。
 一つ目でございますが、全体に関する事項、左側、議論のポイントというところの1番目でございますが、まず、科学技術振興調整費の課題採択時に既に研究が進んでいる課題もあり、研究行程のうち、科学技術振興調整費によって行われたものが何か明確になっていないものがある。こういうものを明確にしながら評価を進めるべきというご議論がございました。これに対しまして、対応方向でございますが、第1回の作業部会におきまして、不明な点があれば整理し、第2回のヒアリング審査までに評価の実施機関から資料などを求めるということを取り組んでございますので、このような不明な点につきましても事前に評価実施機関から説明を求めるようにしてまいりたいと思ってございます。
 それから、2番目のポイントでございますが、これは評価いただいたご意見ではないかと思いますが、プログラムオフィサーを、科学技術振興調整費の場合、JST(Japan Science and Technology Agency:科学技術振興機構)のほうに配置させていただいてございますが、このプログラムオフィサーが作業部会の中で課題の途中の経過や事情を説明させていただいた、それが非常に役に立ったというご意見をいただいてございます。今年については、さらにこのような役割を拡大することを考えてございまして、プログラムオフィサーが主査補佐といたしまして作業部会に参画いたしまして、作業部会の運営に際して主査を補佐させていただきたい。そして、日ごろ、プログラムオフィサーは課題管理を行ってございますので、そういう課題管理で把握した情報を作業部会の中でご紹介しながら、そういうご審議に役に立ててまいりたいということで改善してまいりたいと思います。
 それから、3番目のポイントでございます。これは、3つのご意見をまとめてでございますが、評価の基準でございます。昨年度の評価の基準が若干あいまいなところがございまして、例えば総合評価、昨年の場合は、Aは「優れた業績」、Bは「相応の業績」、Cは「一定の業績」、Dは「あまり業績を上げられていない」ということで、少し抽象的な表現がございまして、どれがBかCかという判断が非常に難しいというご議論がございました。また、作業部会の間でも、業績が上げられていないものについて、C評価のものとD評価のものがあったというご指摘をいただきましたので、今年はこのあたりを改善してまいりたいと思います。具体的な改善内容でございますが、評価の基準につきまして、A評価は基準以上、B評価が基準レベル、C評価がやや基準以下、D評価は著しく基準以下というふうに統一的に整理させていただければというふうに考えております。例えば、総合評価でございますれば、A評価は、所期の計画以上の取り組みが行われている。B評価は、所期の計画と同等の取り組みが行われている。C評価は、所期の計画以下の取り組みであるが、一部で所期の計画と同等またはそれ以上の取り組みも見られる。D評価は、総じて所期の計画以下の取り組みであるというように、明確に各基準ともこのような形で統一させていただきまして、ご審議の際にわかりやすい評価基準にさせていただきたいというふうに思ってございます。
 それから、二点目でございますが、中間評価につきまして、昨年の場合、総合評価と今後の進め方、これを一体的に記載していたところでございますが、ある程度基準どおりの取り組みが行われていたような場合でも、計画の見直しは必要であるというようなご指摘もあり得るのではないかと思うわけでございまして、このあたり、2つを分けてご評価いただいたほうがよろしいのではないかということでございます。
 次に、申請の内容・目標について、評価の際にどのように考えるべきか。申請時には過大な目標が設定される傾向があるのではないかというご指摘でございまして、採択時には非常に機関側が高い目標を掲げている場合がある。このようなものについて、評価の際にどのようにとらえるべきかというご議論をいただいたわけでございます。これにつきましては、私ども、申請時の目標といいますのは、それに対する達成度については厳正に評価をいただきたいというふうに考えてございます。ただし、取り組みの中で状況が変わった場合には、目標値の変更を中間評価の際に認めていただいてもよろしいのではないかというふうに思いまして、その際、やむを得ないような事情があるということであれば、その評価が低くなるということではなく、相応の評価を行っていただく、このような形でいかがかというふうに思ってございます。
 それから、若手任期付研究員支援プログラムという、今はもう公募を行ってございませんが、大体額にして500万円ぐらいを任期付の若手研究員に対しましてご支援申し上げたプログラムがございました。このプログラムに対しまして、ご意見といたしましては、業績で評価した場合に、その若手研究者がチャレンジングな研究をした場合に、チャレンジしたけれども、業績が最終的に得られなかったような場合に低い評価になってしまうのではないかというご懸念をいただきまして、これに対しましては、基本的には業績をどのような研究成果が上がっているのかということを見ていただくわけでございますが、その進め方などが適切でやむを得ないようなことがあれば、これはその取り組み自体を考えて評価をいただきたいというふうに思っています。
 続きまして、資料1‐3をご説明申し上げたいと思います。これも同じく昨年の研究評価部会に資料としておつけいたしまして、了承いただいた「今後に向けて」というものにつきまして、今回、評価を進めるに際して対応してまいりたいと思っております。
 1番目につきましては、PO(Program Officer)の扱いでございます。さらにPOの役割を積極的に果たすようにという観点でございまして、POにつきましては本年度より主査補佐という立場で、作業部会の運営で主査を補佐するということと、課題管理の状況を積極的にご報告申し上げながら積極的な役割を果たしてまいりたいというふうに思ってございます。
 それから、2番目でございますが、追跡評価でございます。科学技術振興調整費の場合、17年度より試行的に追跡評価を実施してございまして、事後評価を受けた後、5年後を目途にその課題の社会に与えるインパクトあるいはアウトカムを評価していくという取り組みを行ってございます。今回、試行的に行う最終年度として位置づけながら、昨年、一昨年は総合研究という一つのプログラムだけ追跡評価を試行してまいりましたが、今年は総合研究以外のプログラムにつきまして実施し、一つではなくて複数のプログラムについて追跡評価を実施してまいりたいというふうに思ってございます。
 2枚目でございますが、実施課題へのヒアリングの実施についてというところでございます。昨年度は、すべての課題につきましてヒアリングを実施していただいてございます。一昨年までは、先ほどの若手任期付研究員支援のプログラムのような小型の、しかも数の多いプログラムにつきましては書面審査だけで評価をいただいたということもございましたが、昨年、すべてのプログラムに拡大いたしまして、やはりヒアリングを行ったほうがよろしいという意見も伺ったところでございますので、本年度も全課題につきましてヒアリングを実施いただきたいというふうに思ってございます。
 それから、続きまして、次の項目でございますメールレビューのさらなる活用についてというところでございます。昨年は、規定によりますと、作業部会の委員のうち3名以下しかその課題が評価できないという場合にメールレビューを行ったわけでございますが、3名以上、関係のご専門の方がいらっしゃった場合でも、場合によればメールレビューを行ってもいいのではないかということで、柔軟に対応いただくように仕組みを改めたいというふうに思ってございます。
 一番最後でございますが、科学技術振興調整費関連のプログラム、システム改革関連のプログラムにつきまして、科学技術振興調整費の場合、18年度にたくさん創設してございます。このプログラムにつきまして、若手人材育成の大学にテニュアトラックを導入するというプログラム、それから地域再生人材創出拠点の形成という、地域の自治体と大学が連携して人材を育てていくというプログラムにつきまして、平成20年度に、来年度でございますが、中間評価が開始されるということでございますので、取り組みの状況をさらにウオッチしながら、来年に向けて評価の基準なりを整理してまいりたいというふうに思ってございます。
 以上、資料2と資料3につきまして、昨年末の研究評価部会のご議論を受けながら、このような対応はいかがかというふうに考えている内容でございます。
 それを受けながら資料1‐4をごらんいただきたいと思いますが、具体的な実施課題の評価の実施について書かせていただいた資料でございます。
 1番のところから順にご説明申し上げますと、今年の評価につきましては、67課題の評価を行うということでございます。昨年は110課題でございましたので、その意味で評価の課題数自体は少し減っているということでございます。評価の対象となるプログラムにつきましては、括弧の中で書かれております戦略的研究拠点育成、新興分野人材養成、産学官共同研究の効果的な推進、若手任期付研究員支援、重要課題解決型研究、中核的研究拠点育成という6つのプログラムを対象に評価いただきます。
 2番のところに評価の実施体制として書かせていただいておりますが、テーマごとに課題を分類させていただきながら、9つの作業部会設置をお認めいただきたいというふうに思ってございます。細胞・遺伝子研究評価作業部会、医療研究評価作業部会、情報通信・社会技術研究評価作業部会、ナノテク・分析研究評価作業部会、環境研究評価作業部会、情報系人材養成評価作業部会、ライフサイエンス系人材養成評価作業部会、社会基盤系人材養成評価作業部会、戦略的研究拠点育成評価作業部会の9つでございます。一つのワーキングにつきまして、評価の対象課題は大体7課題ぐらいが平均というふうになってございます。昨年、110課題を13ワーキングで行っていただいておりますので、昨年と同等か、やや少ないぐらいの課題数で対応させていただければと思ってございます。
 3番目に評価の実施方法として記載させていただいております。簡単にご説明申し上げますが、(1)のところは流れでございまして、まず事務局のほうから作業部会の委員に資料をご送付させていただく。そして、(2)(3)は少し事務的なので飛ばしますが、(4)のところで先ほどのPOの役割を書かせていただいてございまして、作業部会の進行・とりまとめは作業部会主査が行い、当該業務を主査補佐、プログラムオフィサーが補佐する。また、主査補佐は課題管理等を行う中で得られた情報を作業部会に提供する等、作業部会における適切な審査に必要な情報を提供するということで、POの役割を書かせていただいてございます。
 (5)のところで具体的な作業部会のスケジュールを書かせていただいておりますが、第1回の作業部会におきましては、評価の実施方法について意識の統一をいただく。そして、必要に応じ、ヒアリングにより明らかにすべき点などを整理し、課題実施者に資料の提出を求めるということでございます。資料1‐2でご説明申し上げたような点、例のところに書かせていただいておりますが、調整費で行われた研究の範囲が不明確である場合などにつきましても資料で提出を求めたいと思ってございます。
 続きまして、3ページ目でございますが、メールレビューのことを2に書かせていただいてございます。昨年は、3名以下の場合についてはメールレビューを行うという規定でございましたが、本年度につきましてはこのような規定を設けず、柔軟に第1回の作業部会における議論を踏まえましてメールレビューを実施してまいりたいというふうに思ってございます。
 (6)でございますが、最終的に作業部会でご評価いただいた内容につきましては、評価結果報告書をPOが中心となりながら取りまとめさせていただき、主査にご確認いただいた後、作業部会の主査より12月の研究評価部会にご報告いただくという流れでございます。そして、12月の研究評価部会におきまして評価を決定いただくという流れでございます。
 あと、利益相反など書かせていただいてございますが、例年どおりでございますので説明を省略させていただきたいと思います。
 5ページ目には評価対象課題の一覧ということで、先ほどございました67課題を一覧にして書かせていただいてございますし、また6ページ以降につきましては、各プログラムの評価項目、基準を書かせていただいていまして、先ほどの評価の統一ということで整理いたしておりまして、そして中間評価の場合には、総合評価と今後の進め方を分けてご評価いただきたい。昨年までは一緒になっていたのですが、これを分けてご評価いただければというふうに思っているところでございます。
 続きまして、資料1‐5につきましてご説明申し上げます。評価作業部会の委員の選定基準につきまして取りまとめたペーパーでございます。おおむね内容につきましては昨年同様でございますが、共通基準といたしまして、課題の代表者・参画者でないこと。それから、バランスを考慮すること。そして、大学などの機関に属する方におかれましては、博士の学位を取得されているような方。そして、4番目でございますが、研究機関、民間企業に属する方におかれましては、プロジェクトリーダーなどのマネージャークラスの方、あるいは博士を取得されているようなクラスと同等の方、このような方々を選定申し上げながら、またご確認を部会長のほうにいただきたいと思ってございます。
 2ページ目のほうに、それぞれの評価作業部会におきまして求められるような分野を書かせていただいてございまして、これにふさわしい、合致する方をPO中心に候補案を取りまとめてまいりたいと思ってございます。
 資料1‐6は今回、設置させていただきたい9つの作業部会を書かせていただいている一覧表でございます。
 最後の資料1‐7でございます。これは、昨年、中間評価をいただきました戦略的研究拠点育成プログラムの九州大学の課題でございます、「ユーザーを基盤とした技術・感性融合機構」という取り組みでございました。昨年、評価ワーキンググループの中で、総合評価はB評価ということであったわけでございますが、少し懸念される点をご指摘いただいてございます。
 一点目でございますが、2.の(1)のところで研究課題の明確化と絞り込みを行うなど、研究計画を見直すことが必要であるというご指摘をいただくとともに、(2)のところで、課題を統括すべきプロジェクトリーダーが十分なリーダーシップを発揮していないと思われるというところから、強いリーダーシップのもとで取り組むことが重要であるというご指摘をいただいてございます。このようなご指摘とともに、また本年度につきましても作業部会の中で、このような指摘の改善状況をヒアリングし、その状況をフォローしたいというご意見がございましたので、戦略的研究拠点育成の作業部会におきまして、この課題につきましてヒアリングをさせていただき、この指摘の取り組み状況を把握し、冬の研究評価部会においてご報告をさせていただきたいと思ってございます。
 資料のほう、1から7までご説明申し上げましたが、もう一つ、参考資料1という資料がございますので、簡単にご説明させていただきたいと思います。参考資料1に財務省予算執行調査資料をつけてございます。これは、本年度、財務省が調査を行った資料でございまして、公表されてございます。この中の指摘の中に評価に関することも一部記載されてございまして、具体的には表2‐1をごらんいただきたいのですが、これは科学技術振興調整費に係る評価、平成13年度から平成18年度までの評価を並べたものでございますが、最近の評価でございますと、平成17年、18年度は見直しを指摘したものが1件ということで、過去のものに比べて少し少なくなっているという観点でございます。評価につきましては絶対評価でございますので、これは1件でも適切な評価だというふうに思ってございますが、傾向としては少なくなっているという財務省からの指摘でございます。
 それとともに表の2‐2をごらんいただきたいと思うのですが、中間評価の際に継続という評価をいただいたものは、事後評価のときに悪くなる傾向があると。一方、中間評価の際に大幅見直しという指摘をいただいたものにつきましては、事後評価の際によくなる傾向があるということでございまして、財務省のほうからは、中間評価の際に具体的に見直しの方向や改善の内容などの評価を受けた機関に伝え、適切に改善させることにより、最終的に研究がよい方向に進むのではないかという指摘をいただいてございまして、私どももそのように進めてきたつもりではございますが、より一層、プログラムオフィサーなどが案を取りまとめる際にそのような方向で努力してまいりたいと思ってございます。
 以上、資料1から7、それから参考資料1につきましてご説明いたしました。

【笹月部会長】
 それぞれ詳しいご説明がありましたので、これから委員の先生方から少しご意見を賜りたいと思います。資料の1‐2と1‐3が、これまでのことに対しての反映方針あるいは対応方向についてということで、それを踏まえて資料1‐4で評価の実施についての案というのをお示しいただきました。どこからでも結構ですので、どうぞご自由にご意見を。

【花木委員】
 東京大学の花木です。先ほどからご説明があったメールレビューのことについてお伺いしたいと思います。
 今年度の改善点として積極的にメールレビューを実施するというのがございますよね。確かにそれはそのとおりですけれども、どの作業部会も非常に範囲が広いので、果たしてそこのメンバーが専門にぴったり合っているかというと、たぶん合っていない。そうすると、安全側を考えるといろいろな専門家に聞きたいというふうに思いますけれども、基本はそんなにメールレビューをたくさんするというのではなくて、中のメンバーで判断するけれども、メールレビューをつけ加えるのか、基本的にメールレビューをもっとやりなさいというのか、そこら辺のベースラインはどの辺にあるのでしょうか。

【上原調整企画室長補佐】
 私どものほうは、基本的に先生方がお持ちの知見でご対応できる範囲であれば、それは先生方のご知見でご対応いただきたいと。そしてまた、プログラムオフィサーを配置させていただいてございますので、プログラムオフィサーの知見でご納得いただけるようなことであれば、メールレビューまでは行う必要がないのかと思ってございます。

【笹月部会長】
 そもそも、このメールレビューにつきまして、いくつか混乱といいますか、誤解もあったりするので、明確にしておいたほうがいいと思いますが。これは、作業部会委員がきちんと評価して、採点して、その合議の結果、事が決まるのに対して、それを補佐するという意味であって、メールレビューそのものが採点に直接反映されるものではないということですよね。
 そうしますと、私もいくつか経験しましたが、特に外国人にメールレビューを頼んだ場合に、やたらに高い評価、すべて万全な計画ですぐれているみたいな、どれを見てもそういうものばかりで、メールレビューを頼んだ意味もないみたいなことがありますので、むしろメールレビューを頼む相手というのは、まさにその道の専門家であって、すぐれている点とやや足りない点を明確に、その両者をきちんと記載してもらうという、委嘱するときにそういうことを少し説明しておいたほうがいいのではないかと思います。

【上原調整企画室長補佐】
 メールレビューを実施する際に、そのような観点を含めて対応させていただきたいと思います。

【笹月部会長】
 ほかにご意見ございませんでしょうか。どうぞ。

【西島委員】
 本質的な話ですので、深く議論する気はありませんが、中間評価に対する事後への影響とか、これはわかりやすいし、いい。問題は、もう既にお金をもらっちゃった人たちの事後評価ですけれども、これが次のテーマにどういうふうになるか。例えば、その研究者に対する、もらい逃げのような人は。その辺どう評価するかということについては、財務省のほうから何かご意見は。

【上原調整企画室長補佐】
 財務省の執行調査におきまして、事後評価につきまして議論がなかったわけでございますが、その事後評価の結果を何らかの形で採択の際にも反映できないかという仕組みは考えていかなければいけないと思ってございまして、検討すべき内容だと思いますが、将来は、例えば研究評価のデータベースなどつくられるとすれば、そのような際に反映するとか、何らかの形で仕組みが取り入れられればと願っているところでございます。また、事後評価の結果もPOなどから評価を受けた方に返しているわけでございますが、その際に、今後申請を行う際に、こういう点に留意をしながら申請を行うべきという説明をきちんとしていくことによって、より役に立つ調査になり得ないか、その二点ございまして、一つは全体のパッケージ、システムの中で活用できないかという議論。そして、もう一つは返し方で、今後、返された研究者が考えられるような仕組みが科学技術振興調整費で取り入れられないかということを考えているわけでございます。

【西島委員】
 私はどこまでできるかなと思ったのですけれども、昔、研究者のデータベース化というのがありましたよね。これは資金の導入だとか、どのぐらい人数が集まってくるとか、どういう評価にするか、いろいろな考え方がありますけれども、データベース化というのを少し加速すべきじゃないかなと個人的には思っておりました。

【笹月部会長】
 ありがとうございます。大変重要なご指摘だと思います。今の件に関しまして、プロジェクトによって違うと思いますけれども、ここで言う事後評価は、事前評価をした人と同じ人がやるわけですか。

【上原調整企画室長補佐】
 採択の際は、メンバーは異なります。

【笹月部会長】
 そうすると、事後評価の結果を研究者に戻すのは、今おっしゃったように非常に重要なことですけれども、事前評価をした人にもきちんとフィードバックして、ほんとに事前評価がどうだったのかということを彼らが知るということも、また事前評価というものの質の向上のために意味があると思いますので、ぜひ事前評価をした人たちにもそれを戻すということを考えていただければと思います。

【有本委員】
 POが主査補佐として作業部会に参画するのは、よく詰められているとは思いますけれども、PD(Program Director)、POのマンデートですね。それは推進のためにやっているのではないかと思いますが、評価側に回るというのはちょっと利益相反になるのではないか、と。そこのところは大丈夫ですか。

【上原調整企画室長補佐】
 そのあたりにつきまして、議論が内部でもあったわけでございます。ただ、私どもの科学技術振興調整費のPOにつきましては、どちらかといいますと中立的な立場で課題管理を行っておりまして、ミッションステートメント達成に向けてきちんと課題が動いているのかどうかという観点で把握しながら、順調でない場合にはさらに加速するように助言申し上げるということを行ってきたわけでございます。
 そういう意味で、一点目は、作業部会に情報を提供する際には、そのような中立的な観点から情報をご提供申し上げる。その情報の中には、3年間の取り組みの中で課題が順調に行っていないと思われる点はしっかりお伝えするということにさせていただきたいと思います。
 それから、もう一点は、これは審査の際には、POを委員として扱っていたわけでございますが、評価の際には委員とは扱わないという整理をさせていただきながら、中立性を保ちながら、また情報提供者として主査の運営を補佐する立場として役割を果たしてまいりたいと思ってございます。

【有本委員】
 説明はそれでいいと思う。実態上もPOにやってもらわないと難しいと思います。ただし、そこはもう一遍、仕事の範囲について精査をして、制度設計をし、それからPOがそういうものであるということの意識改革をきちんとやってもらうということが大事だと思いますので、よろしくお願いします。

【笹月部会長】
 いわゆるPO、PDというのはアメリカからの輸入品だと思いますが、アメリカでこのPOの役割が、審査の一員なのかという点はどうですか。

【生川戦略官】
 アメリカの場合も、NIH(National Institutes of Health:国立衛生研究所)とかNSF(National Science Foundation:米国国立科学財団)とか、いろいろ機関によって違うと思いますが、私の理解では、例えばNSFの場合は基本的にはプログラム全体のマネジメントをするということで、審査は外部の有識者にお願いしているという形になっていると理解しております。したがいまして、アレンジメントはやりますが、最終的な評価については外部委員の方にお願いしている形になっていると思います。

【笹月部会長】
 先ほどご指摘があったように、POそのものが審査員の一員として審査に加わるというのは、違和感が確かにあるかと思いますが、その点、きちんと整理していただくというのが必要だと思います。
 そのほかいかがでしょうか。どうぞ。

【岩田委員】
 事後評価の時期ですけれども、受ける側から考えてもちょっと早いような気がします。仕事が終わって論文が全部出終わるまでに事後評価を受けてしまうということ。
 それと、もう一つは、次、研究費を出すときにどうしてもずれ込んだ物を出してしまって、それで業績評価のときに前の仕事と重なり合ってしまうような印象を与えてしまうということで、事後評価の時期をもう少し遅くされるということは難しいですか。

【上原調整企画室長補佐】
 そこは、2つご議論があると思っております。そのような観点もあるかもしれません。ただ、もう一方では、先ほど少し議論がございましたが、事後評価をどのように生かしていくのかという観点にかんがみますと、事後評価をさらに採択時に考慮するという仕組みをとり得るかもしれません。そういう際には、やはり事後評価はなるべく速やかに行いながら、よい成果があれば採択時に反映されるような仕組みもでき得ないかという意見もございまして、そのあたり両論あるのではないかと思ってございます。

【笹月部会長】
 もし事後評価をデータベースとして記録するとすれば、事後評価の後にやっとパブリケーションができたということはしばしばあると思いますので、それをきちんと報告する義務を研究者に付しておくことが、本当に意味のあるデータベースをつくることになろうかと思いますので、その点も検討していただくといいのではないかと思います。
 ほかにどなたかございませんでしょうか。資料1‐4のところに実施課題の評価の実施の案が示されてございますが、よろしいでしょうか。

【中西委員】
 済みません、資料1‐2に戻ってよろしいでしょうか。

【笹月部会長】
 はい。

【中西委員】
 評価ですが、ここの表にございますようにA、B、C、Dをつける、つまり結果が計画より上か下か同等かというのが基準のように書かれておりますけれども、計画そのものが実施している間に変わることもあろうかと思いますがその配慮はどのようになっているのでしょうか。それから、非常に質の高い計画の場合は、あまり達成できていないけれども、いい点をつけた方がいい場合など、計画そのものについての議論もあるかと思います。それらも含めてですが、単純に計画以上、以下と考えずに総合評価を出すということはどうなのでしょうか。ここにA、B、C、Dの基準が書かれてはいますが、どのように考えたらいいか教えていただきたいと思います。

【笹月部会長】
 事務局からまず。

【上原調整企画室長補佐】
 事務局では、審査の際に、目標値を申請書の中にいただきながら、そして予算規模もかんがみながら、投資効果と言いましょうか、これだけの目標を達成いただけるのであれば、採択して研究していただきたいという気持ちで審査部会のほうでも臨んでおりますので、やはりベースになりますのは申請書に書かれた目標なのではないかと思ってございます。

【笹月部会長】
 年度ごとのロードマップというのをきちんと申請書に書くわけですので、それに比してどうかということになろうかと思います。
 それから、資料1‐4と1‐5、1‐6、ここまでのところはよろしゅうございますか。委員の先生方、資料1‐6までよろしゅうございますか。それでは、このような案で実施するということ。
 それから、資料1‐7については、これはご報告ということで、それを承ったということでよろしいですか。

【上原調整企画室長補佐】
 ご認識いただけましたら、また該当する作業部会におきましてヒアリングを実施させていただき、また次の段階にてご報告させていただきたいと思います。

【笹月部会長】
 それでは、資料1‐1から1‐7まで、ほかにご意見ございませんようでしたら、評価の実施についての案をお認めいただくということで、案のとおり決定いたします。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして議題2、光科学技術分野の平成20年度新規課題の事前評価について、に移りたいと思います。
 まず、研究計画・評価分科会の評価の進め方というのがございます。参考資料2でありますが、これに基づきまして、平成20年度の概算要求に当たりまして、分科会の所掌研究開発課題のうち、10億円以上の費用を要するもの、あるいは新規施策につきましては、分科会の下部組織が事前評価を実施し、分科会の審議・了承を受けるということになっております。今回の光科学技術に関する施策は本部会の所掌でありまして、文部科学省が作成した評価(案)につきましてご審議いただくことになります。
 本件につきましては、資料を事前に各委員に送付いたしておりますので、既にごらんいただいていることと思いますが、資料2‐1から2‐5までをご説明いただきまして、その後審議に入りたいと思います。事務局からご説明、よろしくお願いいたします。

【大竹基礎基盤研究課長】
 研究振興局基礎基盤研究課長でございます。資料2‐1から2‐5に基づきましてご説明さしあげます。
 まず、資料2‐3と2‐4をごらんいただくとありがたいと存じます。本件の光科学技術に関します20年度新規課題を出すに至りました経緯につきまして、簡単にご説明申し上げます。資料2‐3でございますが、光科学技術に関しましては、実はこの経緯にございますとおり、まず光科学技術‐‐光といいますと、典型的には研究室でよく使われておりますレーザーというものがございますが、こういうもの、今のライフサイエンス、ナノテクノロジー、情報など、ありとあらゆる研究分野もしくは産業分野でレーザーというのは多様に活用されておりますが、それに代表されますように、光はキーテクノロジーであると考えておりまして、イノベーションの原点であると。
 このような観点から、欧米はもとより、中国なども非常に積極的にこの光科学技術というものを振興していまして、そういう背景がございますので、本年2月から、私どもの局長の諮問機関ということで、光科学技術の推進に関する懇談会、座長は日本原子力研究開発機構の加藤部門長にお願いいたしましたが、ここにおきまして今後の光科学技術の進め方というものについてご議論いただき、資料2‐4の報告書がまとまったところでございます。
 この報告書の概要につきましては、2‐3の一番最後にポンチ絵がついてございますので、これで要点のみ簡単にご説明申し上げますと、背景は先ほど申し上げたとおりでございますが、それが1.に書いてございます。2.のところに諸外国における研究動向ということでございますが、諸外国におきましても、例えば米国においてはナショナル・ナノテクノロジー・イニシアチブなどの下に、光というのが非常に重要ということで、フォトニクス、フォトンサイエンスというものが位置づけられておりますし、ヨーロッパにおきましては、ドイツがフォトニクス21というような戦略を展開するように、光につきましては非常に研究開発が活発であります。
 特に、光というのは新しい光源、新しい特性のレーザーみたいなものがないといけないということで、実際に光を使う研究者、それから光を開発する研究者、こういう者が一体となって研究を実施しております。それで、ヨーロッパ、アメリカとも、複数の研究拠点が実際の活動をしております。
 これに対しまして日本の現状を見ますと、おかげさまでSPring‐8、西播磨に放射光施設がございます。こういうような大きい施設という観点では日本も最先端の研究施設を持っておりますし、また要素技術におきましては、例えば新しいセラミックスを使った技術、それから半導体レーザーでも、面発光の半導体というのは日本に要素技術の素というのがございました。しかしながら、非常に残念な点は、まず第1に、いろいろな意味で重点科学技術分野として明確に認識されていないこと、学問分野としても、どちらかというとユーザーに便宜を提供するような研究という形もあって、独立はしてございません。その結果として、まずネットワーク形成が不十分であり、いろいろな融合・連携ができておりません。例えば、先ほど申し上げました面発光レーザーというのは日本にオリジナリティーがあるのですが、応用されて実用化されているのは米国ということになっていると伺っております。また、教育・人材育成を体系的に行うシステムもなく、日本の企業も光は非常に強く、例えば今ですと、大メーカーはガスレーザーで非常に大きな利益、売り上げを上げております。しかしながら、その一歩先の混合レーザー、ガスから固体レーザー、半導体のほうにシフトするわけですが、そちらに対する取り組みは非常に弱いという状況でございます。
 したがいまして、4.研究の内容として、こういう新しい光はいろいろなイノベーションを誘発するだろうと考えております。レーザー光、後ほどいくつかの例をご紹介しようと思いますが、こういうもので化学反応の過程が解明できる。それから、粒子加速器というようなものも実は光でできるのではないか。細胞診断、異物の非侵襲検査なんかもできるのではないか。光通信‐‐これは既にかなり普及しておりますが、そういう情報処理の高度化にも寄与するであろう。いろいろな医療技術、もしくは熱を局所に伝えて加工するような技術というものも可能かと思っております。
 そのために新しい光源開発というのは非常に重要だということで、ここにございますが、例えばアト秒パルス光、非常に短い、フェムト秒というのを今、使っておりますが、その下でございます10のマイナス十何乗秒の幅の光ということになりますが、そういうような非常に短い光で、従来、非常に速い化学反応をこま送りのように計測することができるのではないか。
 それから、パルスですから、トータルではそれほどではありませんが、パルスでは非常に強いペタワットの光。これを何度も繰り返して使うことによりまして、例えば物質変換もしくは粒子加速というものができる。粒子加速ができますと何ができるかといいますと、今、陽子線のがん治療装置は、サッカー場の半分ぐらいの大きさの陽子加速器を使って治療しているわけですが、これがうまくいくと、今、病院でインストールされておりますような通常のX線用のライナック、こういうものと置きかわるのではないか。もしくは、いろいろな光、最近は光と電波の中間領域のテラヘルツ光というのが非常に注目されていますが、そういうようなものを活用することによって、いろいろな非侵襲の検査などもできるなど、いろいろな可能性があると思っております。
 報告書の中では、5番といたしまして、新たな取り組みをされるべきであるということでありまして、ネットワークを築くべきである。利用者、それから光関係の研究者のネットワークというのが重要であって、報告書の中で提案されております2つの研究のやり方。一つは、研究拠点型で、これは光源もしくは計測開発を中心に据えて、そういう関係の人材がいる研究機関がネットワークして、ある新しい計測法もしくは光源の開発をやる。そこにユーザーを引き込んでおくという研究拠点を公募する型の研究施策が必要である。
 もう一つはテーマでございますが、これにつきましては、従来から光に関してはいろいろテーマがありますが、どちらかというと光で研究しますということで、競争的資金を設定いたしますと、欧米からレーザーを買ってきて、本邦初演でこういう研究ができたなど、もう一歩オンリーワンのところまで行かないということもありますので、これで提案されておりますのは、光源開発者が強力にサポートする。それによって、最先端の光を使ったとしても、新しい光源が所期していた以上のいろいろな性能、もしくは所期した以外の使い方なども含めて研究を進めることによって、ナンバーワン、オンリーワンの研究を可能とするような研究テーマの公募。
 そのような光源の開発もしくは光源を使い尽くすような研究開発を、その報告書の光では推奨されているわけですが、この両方のプログラムというのは、相互補完的に一体的に、例えば同じプログラムオフィサーズが全体を差配するような格好でやることが重要であると。相互に単発の研究に終わらないように考えることが重要であるということで提案がなされているところでございます。
 それで、今回、実はここでお諮りしますのは、こういう研究体制が必要、取り組みが必要であるという報告書に基づきまして、一つは研究拠点公募型のもの。研究テーマ公募型につきましては、従来の競争的資金などを使ってやっていこうということを考えておりますが、研究拠点公募型のものにつきまして、私どもの中で評価いたしましたので、その結果についてご審議を賜りたいと思います。
 もう一つは、今、申し上げました観点とは別に、光と生物学、植物科学、こういうものとの境界領域の問題についてお諮りするわけでございます。
 資料2‐5でございますが、こういう観点で私ども、新規施策を今、検討しているわけですが、これにつきまして、大変残念ながら、光科学にぴたりと来るような審議会の下部組織がありませんから、文部科学省の評価の指針にのっとりまして、審議会等において外部評価をなせということでございますから、私どもの局に光科学技術分野のエキスパートの方及び他の分野の方を集めまして評価検討会を開催いたしまして、その評価を取りまとめていただきました。その取りまとめが資料2‐1と2‐2でございます。
 資料2‐1につきましては、先ほど申し述べましたとおりの研究拠点の施策でございます。これにつきましては、先ほどの説明とも重なりますが、課題の概要ということで、既存の光源の最先端設備を有している。研究者がそれを利用しながら、欧米にはないような新しい光源、もしくは計測手法を開発する。ただし、それぞれの拠点では、開発だけではなくて、人材育成、教育もともにやることということで、こういう形でネットワークをしていこうということでございます。
 評価検討会の評価結果は、必要性につきましては、先ほど述べましたような背景で重要であるということで、ただし分野を十分絞り込んで、本事業の進捗状況を見て拠点数などを勘案しながら進めていくべきであるということであります。
 有効性といたしましては、これは成功すれば日本がトップをねらえる独自の光科学技術の推進ができるのではないか。イノベーションも期待できるということであります。
 効率性でございますが、1拠点当たり1年約5億円の規模で公募・選定することになるということで、ネットワーク型と称しておりますので、非常に幅広い連携が期待できるのではないかということをご指摘いただいておりまして、若手研究者というものに重点を置いてやっていく。
 それから、プログラムオフィサーが一定の権限を有して、一貫したマネジメントを行うことが重要ということでございまして、これは進めることがふさわしいという評価結果をいただいております。
 それから、先ほど申しましたように光関係ではいろいろな検討をいたしましたが、光源開発という観点から少しずれておりますが、今後、非常に意欲的なテーマとしてもう一つのテーマが挙がっておりまして、これが資料2‐2でございます。光を用いた植物・海藻類の収量増加プログラム。今後、食糧問題ということで、植物の生育をいかにしていくか。これを、光をうまく使うことによって生育ができるということだと思っております。
 これにつきましては、今後、我が国及び世界において食糧の問題というのは非常に重要になってくるわけですが、現時点で先端的科学が食糧に取り組んでいる例というのは、研究ベースは非常に大きいですが、まだ必ずしも、例えば我が省の先端研究という点では数が多いわけではございません。しかしながら、植物は光合成をして大きくなっていくわけですが、光の特徴によりまして育ち方が大いに違うということで、パルス光の特定波長のレーザーを当てますと、同じ期間に成長が非常に促進されるということでございます。こういうことで、仮に非常にうまく物事が進んだ場合には、年間20毛作とか30毛作ということで、野菜が生成できるということになります。
 というのが、こういうことをやる目的ですが、評価におきましては、1ページ目にお戻りいただきまして、一つは光源というのが1要素にしかすぎないので、もう少しコストの問題、それから光源の最適化など、多様な要素も含め取り組むべき問題であろう。
 それから、有効性はコスト。現時点では、蛍光灯の安さに比べてパルスレーザーは非常に高価でございますので、その辺のコスト問題が解決できるかということが非常に大きな問題になろうかとのご指摘を受けております。
 それから、効率性の観点から言えば、いろいろな研究分野の人を入れ、現行の野菜工場みたいなものもございますが、そこには光以外の他の要因もある。そういうものも分析し、学術的なデータによる裏づけをした上で考えるべきではないか。
 評価結果としましては、光による植物の増産プロジェクトは大変魅力的ではあるが、これまでに実施された研究内容に関する調査をしっかりやりながら、学術研究として基礎の分野で取り組むべき、それと、コスト削減についての検討、もしくは光源以外の他の要因というものもよく考えた上で、各省庁連携で推進することが重要、というご指摘を賜っております。
 以上、私どもの20年度へ向けての新規施策の省内における外部有識者の検討結果をご報告いたしまして、本日、この部会にご報告してお諮りする次第でございます。よろしくお願い申し上げます。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。資料2‐1、2‐2が事前評価の結果をまとめた案ということでありますが、まず資料2‐1、最先端の光の創成を目指したネットワーク型の研究開発拠点の構築につきまして、どなたかご質問あるいはコメントがございましたらどうぞよろしくお願いします。

【西島委員】
 資料をざっと読ませてもらったのですが、このネットワークを支えるユーザーコミュニティというか、大きな学会レベルというのは、どのぐらいこの内容について議論しているのかということをまずお聞きしたい。例えば、X線自由電子レーザーの場合は、X線と自由電子レーザーというのは、実は私も推進のほうに入ってわかったのですが、結構分野が違うのです。ですから、これがそういうコミュニティをどういうふうにされているのかというのをお聞きしたい。
 それから、最先端の光の創成ということは、光を創成することに意味があるのか、それとも最先端の光に基づく産業波及効果ということで、出口をどこに求めるか。つまり、何をやり出すかわからないけれども、とにかくトップレベルの光のものだけれども、それを使おうと思ったら検出器もないとか、その検出器は相当時間がかかるとか、そういう議論がえてしてあるので。ヨーロッパへ行った場合は、ベンチャー企業は、それができて検出器もやっていますけれども、まず光ありきか、それともその先の波及効果、どちらに出口を求めているか。

【大竹基礎基盤研究課長】
 まず、一つ目のコミュニティの話でございますが、実は光に関しまして、平成17年8月に日本学術会議のほうで声明を出されております。声明を出されていますが、声明に対して十分、政策もお答えしていないということもあるんですが、この中で光科学技術をどう使うか、新しい光源の問題、それから光の問題、あとは、利用方策についてはかなり幅広い議論がなされております。
 しかしながら、おっしゃいますように、今、光科学技術学会というのがあるかというと、そういうものではない。レーザーならレーザー、もしくは物理なら物理、電気工学なら電気工学の中で光というものを考えている。もしくは、ライフサイエンスの中でそういうものに注目している方がおられるということでございますので、ある種、そういう横断的な分野に対して光科学技術の強化ということで学術会議の取り組みは2年ぐらい前からございますので、こういうものをベースに、これは後の話ともつながってくると思いますが、レーザーをつくりたい人がつくるだけというような結果に終わらないようにはしたいと思っておりまして、その点で、学術会議の取りまとめをいただいた先生方にも入っていただいて、なるべくすそ野を広げたい。
 それが2番目のご質問とも絡んでまいりますが、施策の中で利用研究者をインボルブして進めていくということが非常に意味深いことだと思っております。実は、資料2‐1の問題は非常に長い取り組み、今の考えでは10年ぐらいの取り組みですが、それは中身を3つぐらいのフェーズに分けて考えていくのだろう。おっしゃるとおりで、つくりたい人が先につくって、ユーザーがついてこないと、もしくはついていくのが大変であるという例は、過去にもなかったわけではございません。ここで言うのが適当かどうかわかりませんが、実は、大昔にSPring‐8をつくりましたとき、SPring‐8は最初、光工場ということでX線の非常に強い光が出るということでやったわけですが、これは今から10年前に運転開始になっておりますが、最初の段階でユーザーのほうがなかなかついてこれなかった。しかしながら、今ご承知のとおり、SPring‐8は非常に幅広く使われておりまして、年間1万人以上の方に使っていただいておりますが、この場合は決して研究者が独走したとは思っていませんが、その辺のペースのマッチングが非常に重要である。
 今ご指摘がありましたX線自由電子レーザーでは、開発している中で、利用者の利用研究の予備研究のようなものを並行して走らせて、X線自由電子レーザーができ上がったときには、すぐに重要な研究ができるように事を進めている次第です。この研究の場合も、やはり利用研究者を入れていくというのは、光源開発者がこの光があると、きっと世界一だというプロバイダー発想だけじゃなくて、サプライヤーの発想だけじゃなくて、ユーザー側の発想を生かしながら歩調をとっていく。もう一つの公募研究と一緒にやっていくというのも、光の高度なユーザーもともに育てると言うと語弊がありますが、すそ野を広げながらやっていきたいと考えておりまして、その意味では、先生のおっしゃる意味では、産業だけではないのですが、後ろにユーセージを視野に入れた進め方をしたいと考えております。

【笹月部会長】
 ほかにどなたかございますか。

【相原委員】
 実は、私の専門が物理なので、内容はよくわかるので、大変結構なご提案だと思います。
 一つは、もうちょっとお話をお聞きしたいのは、研究開発拠点の構築と、それからネットワーク型というものの、一見ちょっと矛盾しているようなコンセプトですが。もし、最先端の光の創成というのをほんとに目指しているならば、SPring‐8とかXFEL(X‐ray Free Electron Laser:X線自由電子レーザー)に典型的に見られるように、やはりある種研究所に集中投資をしないと、ほんとの光のソースはできないと思うのですけれども、この場合のネットワーク型というのはどの辺のことを全体としてねらって、あえてこういう形でご提案をされて、評価の点でも、どこが評価されたのかということがもうちょっとわかると。

【大竹基礎基盤研究課長】
 ご指摘ありがとうございます。実は、光については継続的にいろいろな検討をやっておりまして、従来の検討でいきますと非常に大規模な施設、X線自由電子レーザーも、全体としては390億円ぐらいの開発費がかかるようなプロジェクトですが、こういうものでございますと、確かに1カ所に集中して、しかも敷地や何かも必要になりますので、現時点では理化学研究所で進めていく形になります。
 しかしながら、従来から光科学技術でX線自由電子レーザーのようなもの、それからSPring‐8のような大きいものは開発してまいりましたが、現在非常に必要なのは、むしろそれに比べれば十分小さい、スモールサイエンスということで、最終的には各研究室、いろいろな産業の分野、もしくは医療の現場で使えるようなものではないかと。そこの部分の研究開発が重要である。その際、例えば先ほど申し上げましたような大出力の瞬間時、高出力のレーザーをつくるとしましても、少なくとも私どもが調べました限りにおいては、いろいろな研究機関にいろいろな特性があって、それぞれの力を結集するといい形になると。例えば、A大学にいる先生に、この際ですからB大学に移ってくださいというようなことを申し上げて研究拠点をつくるというのは、もろもろの事情もあって効率的ではなかろうと。
 それから、スモールサイエンスの観点で現在いろいろな動きとしては、これは例でございますが、東京大学と電気通信大学と慶應義塾大学が先端レーザー科学教育研究コンソーシアムというものをつくりまして、その教育研究をそれぞれの得手を持ち寄って進めていく。その中で民間企業の方にも入っていただくような取り組みもなされております。従いまして、スモールサイエンスに近いところでは、いろいろな方が持てる力を結集するのが重要である。どこかに一つレーザー研究所というのをつくるのも一つの手かもしれませんが、今の行革の流れでいくと、そのようなものをつくりましょうと言うと法人格がないとか、そういう問題も含めて、それから、今あるネットワークやインフラストラクチャーや、いろいろな背景も生かしていただくやり方がよろしいかなということで、こういう形になりました。そういうのが背景でございます。

【大泊委員】
 二点伺いたいのですが、一つは、この提案が研究振興局の心をつかんだ背景を。
 もう一点は、最終的には予算規模500億円ぐらいですね。いわゆる大きなプログラムが動くときの影響ということを申し上げておきたいと思いますが、X線自由電子レーザーに関して言いますと、総合科学技術会議で評価を得たような支援プログラムが影響を受けて、予算が半分以下になったんですね。S評価という高い評価を得ていながら、結果としてはC評価に近いような図になってしまったということが、そもそも大きなプログラムの存在によるわけで、従って、最初の1の質問とあわせてお答えいただきたい。

【大竹基礎基盤研究課長】
 私のほうからお答えしますと、非常につらいです。私は、ナノの部分も責任領域であって、X線自由電子レーザーも責任領域で、確かにそれが総合科学技術会議というか、科学技術基本計画におきましては、X線自由電子レーザーは今、ナノ材料部門として入っていることがあって、半分になったかどうか、半分にはなっていないはずですが、確かに国家基幹技術ということで他のプログラムを劣後にして進めているというのが事実でございまして、では、そこから戻って、なぜこの問題を挙げているかというと、やはり先ほど申し上げたお話とも関連がありますが、大きいものをつくるというのが一つの非常に象徴的な技術開発の進め方であると思うし、そういうものは過去にも、今現在においても、未来においても重要だと思っています。しかしながら、やはり先ほど申し上げたような開発が成り立ったとすれば、一件一件は小さくても、津々浦々で使われるような技術のネタというのは非常に重要なのではないか、そこを忘れてはいけないという問題があります。
 それと、産業振興、イノベーションと言われておりますから、産業の観点でいきますと、やはりX線自由電子レーザーは必ず必要だと私は思っておりますが、これが100基、200基、日本にできるかはちょっと疑問でありまして、100基、200基をつくるほどの研究のすそ野がない。しかしながら、1基、2基、3基は必要になると思いますが、一方、波及効果から言いますと、新しい非常に画期的な、例えばアト秒の安定的に発信できるレーザー装置、もしくはペタワット級の出力ができるレーザー、これはコンパクトなものでできれば非常に波及効果が大きい。分野的にもライフサイエンスから情報通信までご活用いただける。これは、将来的には産業波及効果、イノベーションの観点でも、非常に大きな市場に対する答えになるかと思っておりまして、ここの部分は、この程度のプロジェクトでどこまでいけるかは別として、刺激になって進んでいただければという思いがあったのが一つです。
 先ほどの年間500億円というのは、実は現時点での光科学技術という観点で予算を文部科学省及び各省庁、大体めどをつけますと3、4百億円程度ではないかと思われますが、X線自由電子レーザーの建設というのは、来年、再来年と本格的になってまいります。そういうもので弾みをつけて、その後もその程度の規模のまま光科学技術に投じられることで、いろいろな分野への波及効果が継続されるということで書いていまして、このプロジェクト自身は10億円ぐらいのプロジェクトを10年間続けよう、予算は多少来年以降増えるかもしれませんが、そういうふうに考えていまして、500億円というのは年間のいろいろなものを含めた数字でございます。これは、ちょっと補足させていただきます。
 以上です。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。

【大隅委員】
 今回のこのご提案ですけれども、質問とコメント、両方含まれますけれども、若手人材を育成するためのプログラムも同時に実施するということが書き込まれておりまして、例えばということで、連携大学院あるいはインターンシッププログラム等が入っていまして、こういった観点というのは今後とても大事な一つのひな形になるというふうに私は思いますけれども。これは、単に研究者を育成するということもありますけれども、さらに産業界などへどんどん進出していけることを考えた、そういった人材を育てていくという理解でよろしいでしょうか。

【大竹基礎基盤研究課長】
 2つに分けてお話ししますと、私自身は別に光の専門家でもないものですから、聞き知った話ということで申し上げますと、光に関しては、やはりいろいろなよくわかっていないこともあり、お伺いした話ですが、かなり集中的に学生が勉強しますと、学部学生が3年の後半から4年の間にある適切な課題を与えられて研究しますと、それでも十分、かなりのトップレベルのジャーナルに論文が出せるような領域である、そういうことは非常に重要だと考えておりまして、これは先ほど相原先生からも物理の話が出ましたが、今は物理の高校における履修率というのは20パーセントを切っている状況で、いずれきちっとしたエンジニアリング、もしくは物理化学というものの人材は非常に枯渇するのではないかと心配しています。
 ただ、いろいろな策があるでしょうが、一つとして、4年生のときにいいジャーナルにファーストオーサで論文が書けるというのは、ある意味で若い人にはすごく励みになるだろうと。そういう分野であればこそ、人材育成という点に一つ力を置くことが重要ということを考えておりまして、そのようなことを入れた次第です。おっしゃるとおりで、必ずしも最終的にアカデミーだけではなくて、いい研究ができれば、そこは幅広い人材を育成できると考えております。

【有本委員】
 2つほどお願いがあるのですが、一つは研究評価部会の所掌の範囲ではないと思いますが、先ほどの大泊先生のご発言を受けて政策的な問題ですけれども、先生方はいろいろなところで今からご発言なさると思いますので。こういうプラットフォーム型の先端の技術なり装置と、それも中・小型版のやつについて、いろいろなファウンディングの整理の中で非常に今、脆弱になっているのではないかというふうに、そういう気がしていまして。
 それから、もう一つは、先生方も多くご参画いただいて、私は科学技術・学術審議会の中では、第3期科学技術基本計画をつくるに当たって、相当こういう分野融合型のものについて議論があったと思いますが、第3期の総合科学技術会議の中では4プラス4分野、トラディショナルなディシプリンの中に閉じ込められて、こういう横割り的なプラットフォーム型の技術開発なり分野を推進していこうというところが非常に弱くなったのではないかという気がして。年が明けたら第4期科学技術基本計画の議論が始まりますので、特別の研究協議会でなくて申し訳ないですけれども、ぜひ行政のほうもいろいろ第4期科学技術基本計画に向けてファンドのやり方、それからプロジェクト、分野融合型をどうやって‐‐日本は最先端でこういうもので生きていくしかないのではないかと私は思いますけれども、そこら辺は今後よくご検討いただきたいと思っております。
 それから、もう一つは、この問題に限って申しますと、先ほど西島さんがおっしゃいましたが、私も10年かけてやるということで、プロトタイプまで試作を運用するということまで書いてあるので、これは基礎と出口のところ、インタクラクションの場とかPOの人の選び方、この辺は相当考えて、最初のところの設計が非常に大事だと思いますけれども、常に地球シミュレーターもそうだけれども、さっきのSPring‐8もそうですけれども、プラットフォームだけつくって最初は一生懸命頑張るけれども、フェーズが変わった、ユーティライゼーション、オペレーションが重要なところについては、うまくフェーズがトランスファーしていかないと。人材にしたところで、お金の調達にしたところで、運転経費も含めて、そこら辺が非常に大事なところになると思いますので、ぜひ最初のシステム設計のところでご検討いただきたい。
 以上です。

【笹月部会長】
 大変重要なご指摘ありがとうございました。
 相原先生、素人から見ますと、これだけのプロジェクトを拝見すると、やはり大きく掲げられている目標、最先端というか、新しい光の創成あるいは光源の開発ということで、準備状況と言いますか、あるいはフィージビリティーというか、そういうことに関しての評価は、どういうものでしょうか。

【相原委員】
 私自身は、アメリカとかヨーロッパによく出させていただいて、そちらのほうでは、現在、日本でも進んでいるようなXFELの推進と同時に、新しいアイデアを求めるというところに相当投資しています。スタンフォードであったり、ドイツであったらAPIとかマックスプラントとか。その部分の重要性というのは日本でも非常にわかっていたのですが、今ご指摘いただいたように、いわゆるリソースがなくて、光源を使うというところにもなかなかお金がなかったものですから、大学のレベルでは、それぞれの物質とか材料に強いところで、研究室のレベルではいろいろなことがあったかと思いますが、それを実際に実現するためには非常にリソースが要ると。ここのところが、大きな装置について日本は全然負けていないと思いますけれども、特にアメリカに比べて、利用して、さらに新しいものをつくるという準備状況が、個人的にですけれども、非常に遅れていて、そういう光のサイエンスは明らかに重要で、それからこれは単に物理だけではございませんので、マルチディシプリンで、ありとあらゆる、生命も含めて発展していくことは間違いないと思ったので、欧米が非常に投資しているわけです。ですから、個人研究というか、科学研究費補助金のレベルでは非常に進んでいる。それを本当に実現するためには、こういうものがないと難しいと思ったということです。

【笹月部会長】
 先ほどご指摘ありましたように、POあるいはPDという方々の役割が非常に大きいということになろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それから、資料2‐2、これは応用編でありますが、これにつきまして少し。

【花木委員】
 この資料2‐2の評価はいろいろなポテンシャルを調べる必要があるということで、まさにそのとおりだと思います。直感的には、なかなかうまくマッチングしていないという感じがありましてね。それはなぜかというと、非常に人工的な、先端的な光と、それからここでは野菜という、従来我々が使っている土だとか、さまざまな環境に依存しているものと組み合わせるというところが、いま一つうまくいっていないなというのが直感です。
 こういう応用を考える過程で、通常の野菜ではなく、人工光合成にして水素をつくる、あるいはCO2(二酸化炭素)を固定するという温暖化技術への展開、あるいはこれはまた賛否両論ありますけれども、植物側の遺伝子組みかえをして、こういう非常に強い光に対してある特別なものをつくるような植物のほうに発展させるとか、そういうような可能性は議論されたのか、その辺は。

【大竹基礎基盤研究課長】
 これは資源の観点から、私どもの委員会と並行して走っておりました資源関係の委員会でご提唱があったプログラムを実現してみようと思って、今、考えているところでございますが、その意味での、やはりまず食糧問題という話が第一に出ておりまして、実はこの辺は、我が省としては非常に取り組みが弱いところであるという認識をしております。もちろん食糧需給とか、そういうものでありますと、日本政府としては農林水産省という役所がありまして、そこがきっちり責任を持つというわけですが、研究開発の観点でいきますと、いろいろな独自のアイデアを持ち寄るべき分野であると思っておりまして、そういう観点もありまして、これを取り上げたというのが一点です。
 ご指摘にありますような、例えばCO2(二酸化炭素)の吸収であるとか水素の生産という点については、その部分は必ずしも十分検討はなされておりません。そういう背景でございます。

【広瀬委員】
 二つ質問があります。一つは、植物に関しましては書いてありますけれども、海藻類に関してはどうでしょうか。
 それから、もう一つは、普通は二毛作とか三毛作ですが、年間二十とか三十毛作というのはすごい効率ですけれども、こういう食べ物をたくさんつくって、栄養は高栄養価ならいいのですが、味とか、その辺のところはどんなふうにお考えでしょうか。

【大竹基礎基盤研究課長】
 海藻類につきましても類似のことがあるということは存じておりますが、それについて、今回は世の中に訴えかけるということで、非常に印象的に絵が出るものを中心にしたので野菜が中心になっております。
 それから、二十毛作で味がどうかということですが、野菜でございますから、野菜の味というのはなかなか難しくて、例えば水耕栽培をすると味が薄くなって水っぽくなるとか、ちゃんと土に入れると、それは我々が知る野菜の味ですが、若い方に食していただきますと土くさいと言われるということですので、若干嗜好もあるかと思いますが。ただ、二十毛作、三十毛作にしましたときに、伺っている話ですと、体は育ちますが、動物で言いますと大人にならないというか、種子を残す能力のほうは犠牲になると聞いております。従いまして、どれかをとればどれかがとれないというところはありますが、味というのは個性なのと、あと、栄養があるということで、それほどひどくまずいものではないかなと。私自身が試食したわけではないので何とも言えませんで、申しわけございません。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。

【大隅委員】
 こういった新しいやり方で食品の生産などを行う場合に非常に重要なことは、要するにエンドユーザーが本当にそれを受け入れてくれるかどうかだと思いますけれども、安全・安心、無農薬だと書いてありますけれども、例えばそこに何か遺伝子改変植物を使う可能性があった場合には、日本ではなかなか組みかえの大豆がどうのこうのとか、某団体がバッティングしていて全然進まないとか、そういうところがあって、これをほんとにやられるならば、市民のリテラシーをきちんと一緒につくっていくことをしない限りは、結局つくっても、開発するところに大変なコストをかけて、でも結局誰も食べないということになってしまっては元も子もないかなと思います。

【笹月部会長】
 その点、資料2‐2の2ページの真ん中の四角の効率性の最後のところに「学術的なデータによる裏付けとともに、安全性の検討や環境負荷の低減」についてもという指摘がありますけれども、これは具体的に遺伝子操作をすればそういう問題も出てきますけれども、それを使わない場合の光だけでも何か問題が出てくるのか、それから、もう一つは、大事な環境負荷ということが、具体的に何か指摘すべきこと、あるいは推測すべきことがあるのかどうか、その点はいかがですか。

【大竹基礎基盤研究課長】
 最初のご質問ですが、今こういう植物系の生産量を上げる場合に、遺伝子改変というか、植物が持たない遺伝子を持ち込んで、フィルターなんかで完成させて持ち込む例が多いわけですが、従来のかけ合わせをしていきまして最良品種を出すというのを、もう少し遺伝子レベルでやるというやり方はありまして、この際は、今の段階で研究者の側、これはほかの遺伝子を持ち込んだのではなくて、いわば自然の変位を少し加速したのであるからGMO(Genetically Modified Organism遺伝子組換え作物)に当たらないという議論をしていますが、この辺のところが、まさにおっしゃるような社会のリテラシーに合うかどうかについては、十分なる考え方が必要と。科学者の考えることと一般の方が考えることというのは、必ずしも科学的に正しければ理解されるということではないので、そこは重要だと思っています。
 安全性の検討の問題は、当然ある種の、もし非常に効率よく生産されるものを追求すると、必ずしも人工改変したのでないとしても、いわば突然変異種を特に使うことになると。突然変異種ですから、当然私どもの利用に供する部分が変位する場合と、そうでないところまで変位する場合もあり得るとは思うので、そういうところはゆっくり考えてちゃんとやらないといけないということがあると。
 もう一つ、環境負荷の低減ですが、よく今、ライフサイクルアセスメントのような話がありまして、一局面で見ると非常によろしかったと思いますが、そのために大量のエネルギーを使ったりして、トータルでは収支勘定が合わないということが起こるのではないか。その部分をよく考えないといけないということで、検討課題になっているということでございます。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございます。よろしいでしょうか。

【田島委員】
 先ほどの光科学の研究開発のところで何人かの先生方がお尋ねになったこととも関係がありますが、今の植物・海藻類の収量増加プログラムに関して、若手リーダーの養成という視点は入っていないのでしょうか。

【大竹基礎基盤研究課長】
 先ほどの拠点をつくるものは教育研究拠点ということで、そこにあえて書くことで体系的な取り組みがなされると思って書かせていただきました。しかしながら、いずれにせよ、こういう社会のニーズにこたえるようなプログラムを走らせますと、現在の若い研究者の方もしくは学生の方というのはこういうものに非常に敏感ですから、当然こういうものに挑戦的に取り組まれる方は多いと思いますし、人材育成の観点はいつも忘れないようにいたしたいと思っております。

【田島委員】
 人材養成の視点ということ。一般的に申し上げますけれども、実は私、5年前までアメリカにずっとおりまして、NSFの予算で必修課題として若手人材育成の予算をどのようにするか、配分をどうするかということを必ず書かされたわけです。一つの年間1,000万円にならない程度の非常に小規模な研究費でも、大学院生あるいは若手、ポスドクの雇用費用を必ず入れるようになっていたわけですね。ところが、日本の場合はそういう視点がない。ですから、科学研究費補助金では、例えば学生に対してそれに当たるような費用を申請することはほとんど不可能ですね。結局、それに対応するようなものが今の日本学術振興会の大学院生の特別研究員なわけですけれども、あれはかなり競争率が高い。それで、一般的に一つの研究課題の中で若手が、大学院生あるいはポスドクが育成される、そういうプログラムが日本ではないということ。そこがかなり欧米と比べて脆弱なところではないかと思います。
 去年の秋に研究教育に関する会議でオーストリアに行く機会がありましたけれども、やはりそこの研究室を訪ねてみても、アクティビティーの高い研究者のところで指導を受けている大学院生は、ほとんどリサーチアシスタントとして学生さん1人が何とか暮らしていける程度の月給はもらっているわけです。そういうところが随分、学生、大学院生にプロ意識を育てるという意味で‐‐日本の場合、大学院生はまだ教育を受けているから、教育を受けているんだったら受益者が払うべきではないかということが伝統的に考えられていると思いますけれども、そこは大分欧米とは違うところではないかと思います。

【大竹基礎基盤研究課長】
 今いただきましたご指摘、非常に重要であると思います。これは、このプログラムに限らず、私の所掌の範囲が基礎基盤研究でございますので、例えばJSTの戦略的創造推進事業もございますが、おっしゃるような若手の問題というのは非常に重要と思って、我々もどういう形で例えばリサーチアシスタント、特に多くの方に伺っても、学部までは受益者負担でいいだろうと。ただ、大学院に入った段階からは、はっきり言いますと、研究者、技術者、リサーチャー、エンジニアを育てるという観点で、これはもう少しいろいろなことを考えてもいいのではないかという意見をいただいております。そういう観点で、今日お諮りしたものに限らず、今いただいた意見を我々もいろいろ検討しておりますので、多角的に少し生かしていきたいと思います。また、いずれご説明の機会があればと思いますが、今年度の予算にもいろいろ考えておりますので、またご指導いただければと思います。

【笹月部会長】
 ありがとうございます。若手の人材育成というのは、次の時代を考える上で重要な問題で、いろいろなところで議論が深められていると思いますので、それぞれ結論を早急に出していただくということも、また重要であろうと思います。
 それでは、ほかにご意見がございませんようでしたら、本件に関しましては原案どおりご了承いただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。
 これに関しましては、次回の研究計画・評価分科会にお諮りするということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上で本日予定いたしました議題はすべて終了いたしましたが、事務局から何か連絡事項がございましたら。

【千原計画官】
 それでは、事務局から三点、ご連絡をさせていただきます。
 本日の議事録につきましては、部会運営規則第5条第1項にのっとりまして、議事録を作成後、各先生方にご確認いただきましてホームページにて公表させていただきたいと思っております。
 二点目でございますが、次回の部会でございますが、11月下旬から12月上旬ごろ、科学技術振興調整費による実施課題の評価の取りまとめについて、を主要な議題として開催させていただきたいと思っておりますので、後日、改めて日程の調整をさせていただければと思っております。
 本日の資料でございますが、机の上に置いていただければ、後日郵送させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上です。

【笹月部会長】
 それでは、以上をもちまして、本日の部会を終了とさせていただきます。大変ありがとうございました。

‐了‐

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)