研究評価部会(第27回) 議事要旨

1.日時

平成19年3月16日(金曜日) 15時~17時

2.場所

パレスホテル会議室 3‐D号室

3.出席者

委員

 笹月部会長、平野部会長代理、相原委員、青木委員、有本委員、岩田委員、大泊委員、小川委員、後藤委員、小林委員、諏訪委員、田島委員、東嶋委員、中西委員、西島委員、野田委員、平澤委員、広瀬委員、宮部委員、持田委員

文部科学省

 科学技術・学術政策局 森口局長、吉川総括官、後藤評価推進室長
 研究振興局 木村大型放射光施設利用推進室長

4.議事要旨

【後藤評価推進室長】
 定刻となりましたので、第27回の科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会を開催いたします。
 本日は、ご多忙にもかかわらず、ご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、第4期の研究評価部会として最初の会議でございますので、部会長を選出していただくことになりますけれども、それまでの間、便宜的に、私、科学技術・学術政策局評価推進室長の後藤が、議事を進めさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 なお、当部会の運営規則第4条によれば、「部会長の選任その他人事に係る案件」等を除いて公開することとなっておりますが、本日の最初の議題につきましては人事案件でございますので、非公開とさせていただきたいと思います。議題2より公開ということになりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず会議に先立ちまして、科学技術・学術政策局長の森口からご挨拶をしたいと思います。

【森口局長】
 本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。科学技術・学術政策局長の森口でございます。
 今、お話がございましたように、本日は第4期科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会の1回目の会合でございます。
 ご承知のとおり、研究評価部会と申しますと、幾つか任務があるわけでございますが、1つは研究評価のあり方の検討、それから、科学技術振興調整費により実施した課題の中間・事後評価、そして、研究開発プロジェクトの評価に関する調査・審議ということを任務として設置されているところでございます。
 この研究評価につきましては、内閣総理大臣が『国の研究開発評価に関する大綱的指針』というものを決めてございまして、それに基づきまして、各省が評価方法などを定めた指針を策定するという状況になっているところでございます。
 『文部科学省における研究及び開発に関する評価指針』でございますけれども、これにつきましても、いろいろと状況が世の中動いておりまして、見直しということが必要になれば、その点についても、またいろいろとご審議をお願いしたいと思っておりますし、また、我々としては、非常に最近、評価、評価ということで、それぞれ関係の者も多忙になって、評価疲れと言われておりますけれども、そういう評価をする人材養成でありますとか、その確保といったことも非常に重要だと、我々としても思っているところでございます。
 それから、第3期の科学技術基本計画は昨年定められておりますけれども、そこにおきましても、評価システム改革の重要性といったことも指摘されているところでございます。
 このように、第4期の本部会におきましても、いろいろな観点で、またご審議いただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 まずは、科学技術振興調整費によります課題の中間・事後評価、あるいは研究開発評価の改革といった取り組みについて、当面、主になろうかと思いますが、長期的かつ大所高所からのご審議をお願い申し上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

【後藤評価推進室長】
 それでは、研究評価部会の委員にご就任された方々をご紹介させていただきます。皆さんのお手元に資料1といたしまして名簿がございます。その名簿に沿って、順に、本日ご出席の方々のご紹介をさせていただきたいと思います。恐縮ですが、座ってご紹介させていただきます。
 まず、東京大学大学院理学系研究科教授の相原博昭委員。

【相原委員】
 よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 慶應義塾大学総合政策学部教授の青木節子委員。

【青木委員】
 よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター長の有本建男委員。

【有本委員】
 有本でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 京都大学再生医科学研究所教授の岩田博夫委員。

【岩田委員】
 岩田でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 早稲田大学理工学術院教授の大泊巌委員。

【大泊委員】
 大泊です。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 独立行政法人情報処理推進機構ITスキル標準センター長の小川健司委員。

【小川委員】
 小川でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 早稲田大学理工学術院教授の後藤滋樹委員。

【後藤委員】
 後藤でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授の小林信一委員。

【小林委員】
 よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 国立国際医療センター総長の笹月健彦委員。

【笹月委員】
 笹月でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 独立行政法人産業技術総合研究所生命情報科学研究センター副研究センター長の諏訪牧子委員。

【諏訪委員】
 諏訪でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 広島大学大学院理学研究科教授の田島文子委員。

【田島委員】
 田島でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 科学ジャーナリストの東嶋和子委員。

【東嶋委員】
 東嶋でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 東京大学大学院農学生命科学研究科教授の中西友子委員。

【中西委員】
 中西でございます。よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 持田製薬株式会社開発本部主事の西島和三委員。

【西島委員】
 西島です。よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 独立行政法人物質・材料研究機構理事の野田哲二委員。

【野田委員】
 野田でございます。よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 東京大学名誉教授の平澤りょう委員。

【平澤委員】
 平澤です。よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 名古屋大学総長の平野眞一委員。

【平野委員】
 平野でございます。よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 金沢学院大学教授、知的戦略本部長の広瀬幸雄委員。

【広瀬委員】
 広瀬です。よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 松下電器産業株式会社コーポレートR&D戦略室長の宮部義幸委員。

【宮部委員】
 宮部でございます。よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 東京医科大学医学部教授の持田澄子委員。

【持田委員】
 よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 あと、急遽欠席との連絡があった、大阪市立大学大学院創造都市研究科助教授の永田潤子委員、また、事前に欠席の連絡をいただいていた、東北大学大学院医学系研究科教授の大隅典子委員、東京大学大学院工学系研究科教授の花木啓祐委員、財団法人新技術開発財団事業部長の番場信夫委員。本日、20名の方がご出席いただいておりますけれども、合計24名の方が本部会の委員でございます。
 あわせて、文部科学省からの出席者を紹介させていただきます。森口科学技術・学術政策局長、吉川科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官。

【吉川総括官】
 よろしくお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 木村研究振興局基礎基盤研究課大型放射光施設利用推進室長。

【木村大型放射光施設利用推進室長】
 木村でございます。

【後藤評価推進室長】
 以上、よろしくお願いいたします。

  • 部会長には、科学技術・学術審議会令第6条第3項の規定に基づき、委員の互選により笹月委員が選任された。

【笹月部会長】
 笹月でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 一言、ご挨拶申し上げたいと思います。
 先ほど、森口局長からもお話ありましたように、この研究評価部会というのは、評価のあり方、さらには大型の研究費の評価そのものという非常に大事な研究評価に関する部会でございますので、多くのそれぞれの分野の第一人者、研究者の方、こういう学術に関するご見識の方々が委員としておそろいでありますので、先生方のご支援、ご助力をいただきながら、この部会の責任を全うしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

  • 部会長代理は、科学技術・学術審議会令第6条第5項の規定に基づき、笹月部会長が平野委員を指名した。

【平野部会長代理】
 よろしくお願いいたします。

【笹月部会長】
 どうぞ、ひとつよろしくお願いいたします。
 それでは、人事案件が終了いたしましたので、これより本部会を公開といたします。傍聴の方がおられましたら、どうぞ入室をさせてください。
 どなたかいらっしゃいますか。

(傍聴者入室)

【後藤評価推進室長】
 それでは進めていただきたいと思います。

【笹月部会長】
 はい。
 それでは、これより公開で議事に入りたいと思います。
 まず、事務局から配付資料のご確認をお願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 本日の配付資料は、議事次第に配付資料一覧を載せております。ご確認をお願いいたします。
 資料1、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 研究評価部会の委員名簿でございます。
 資料2、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 研究評価部会 部会長の選任について(関係法令等の抜粋)でございます。
 資料3、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 研究評価部会の概要でございます。
 資料4、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会の運営規則(案)でございます。これは2枚組でございます。
 資料5でございます。科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会の公開の手続きについて(案)でございます。
 資料6‐1、大型放射光施設(SPring‐8)に関する中間評価報告書(案)【概要】でございます。
 資料6‐2、大型放射光施設(SPring‐8)に関する中間評価報告書(案)でございます。
 資料7、研究開発評価を推進するための取組み‐平成18年度実績及び今後の取組み‐、これはA4横の形になっております。
 参考資料1、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の組織構成でございます。
 参考資料2、科学技術・学術審議会の関係法令等をまとめてございます。
 参考資料3、SPring‐8のパンフレットでございます。
 参考資料4、研究評価部会におけるこれまでの審議の状況をまとめてございます。
 あと、冊子になりますが、3つございます。
 参考資料5、文部科学省における研究及び開発に関する評価指針。
 参考資料6、研究開発評価活動に関する調査報告書。
 参考資料7、研究開発評価ワークショップ実施報告書でございます。

 以上ですが、欠落等、不備がございましたら、事務局までお申しつけ願います。また、途中でもお気づきの点があったら、その資料について、お申し出ください。よろしくお願いいたします。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、早速議題2の「研究評価部会の議事運営について」に入りたいと思います。
 まず、事務局から、「当部会の概要」「評価部会運営規則(案)」及び「公開の手続きについて(案)」について、ご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【後藤評価推進室長】
 それでは、ただいま一通り説明した資料のうち、資料3、資料4、資料5、この3つの資料を使いまして、部会の概要等について、簡単にご説明させていただきたいと思います。
 まず最初に、資料3でございますが、ここに研究評価部会の概要があります。
 大きく分けて、この部会の受け持っている所掌としては3つございます。研究評価のあり方の検討、それから科学技術振興調整費により実施した課題等の中間・事後評価。この中間・事後評価につきましては、上の分科会等で決めるものではなく、この部会で決まる専決事項になっております。あと、研究開発プロジェクトの評価に関しましては、例えば、本日のSPring‐8の中間報告、こういったものが具体例として挙がります。この3つに関する調査・審議を行うというのが、この部会の所掌でございますので、よろしくお願いいたします。
 これまで、平成17年2月から平成19年1月、つまり前回の第3期の部会でございますが、そのときには、その2年間で計8回開催しました。少し内容をご説明いたしますと、先ほどの参考資料5にありました文部科学省における研究及び開発に関する評価指針の見直しについて審議を行いまして、同指針の改定版を作成しております。それから評価人材の養成・確保のあり方等について審議しております。この2つが研究評価のあり方の検討ということになると思います。
 それから、科学技術振興調整費による実施課題ですけれども、平成17年度、平成18年度、それぞれについて、中間・事後評価等を取りまとめております。中間・事後評価というのは、課題実施大体3年目ぐらいに中間評価を行って、終了後に事後評価を行っており、それぞれの実施課題について、この部会で審議される形になります。それが中間・事後評価でございます。
 それから、研究開発プロジェクトの評価等につきましては、次世代放射光源計画作業部会を設置して、その評価を実施しました。また、本日、中間報告がありますけれども、SPring‐8の評価作業部会を設置して、その中間評価を実施することとしました。
 それから、部会における今後の調査審議事項について、少しご説明いたしますと、まず、研究評価のあり方の検討ですけれども、評価の実施状況につきましてフォローアップも含めて、必要に応じて、検討していただきたいと思っております。
 また、科学技術振興調整費の中間・事後評価につきましては、まず、8月ごろに、平成19年度の評価の実施方法について決定をいたしまして、11月中をめどに、評価結果の取りまとめを行っていただきたいと思っております。
 また、研究開発プロジェクトの評価につきましては、部会での評価というものが必要な総合的なプロジェクトがあれば、随時、検討していくということになると思います。
 次のページに審議スケジュールということで、平成19年度、平成20年度に関して、概要を表としてまとめております。各年度、年に3回程度の開催という予定をしております。
 また、審議を効率的に行うために、必要に応じまして、部会の開催に先立ち、また、後にメールレビュー等を行う場合もございます。
 概要については以上でございます。
 それから、資料4でございますけれども、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会の運営規則でございます。
 今回、この改正につきましては、2つございます。1つは、第3条に見え消しでありますとおり、「ワーキンググループ」という片仮名の表現を、全部「作業部会」と変えております。これにつきましては、「外来語、外国語の使用について」という申し合わせがございまして、今後設置する場合につきましては、「ワーキンググループ」という表現ではなくて、「作業部会」にするということが決まっておりますので、その申し合わせに沿って直したという部分でございます。
 2ページ目ですけれども、第5条で、これまで議事録について、「議事録を作成し、部会所属の委員及び臨時委員に諮った上で、これを公開する」という表現になっていましたが、議事録については、「公表」という言葉の方が合っておりますので、「公開」を「公表」に変えております。
 また、議事録ですけれども、今後は委員の発言につきまして、総会、分科会に準じまして、委員名を公表して議事録を作成したいと思っております。
 資料5でございますが、これは、これまで研究評価部会で実質行ってきたことを明記しております。研究評価部会の公開の手続きの案でございますが、大きく分けて3つあります。1つは、会議の日時、場所、議事等について、2つめは、傍聴に関しまして、一般の傍聴者、報道関係傍聴者、委員関係者、各府省関係者について、3つめは、その他として、会議の円滑な運営、傍聴者数の制限、部会長の指示などについて、これまで、実質的に行ってきたものを、きちんと取り決めようということで、今回、案を提示させていただいております。
 以上でございます。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。
 ただいま研究評価部会の概要、運営規則、公開の手続きについてご説明いただきましたが、どなたかご質問、あるいはコメントございますでしょうか。3つのお話がありましたが、どれからでも結構ですから。
 資料3、部会の概要の今後の審議事項の中の2番目に、科学技術振興調整費の中間・事後評価というのがありますが、最初の採択のときの審査にかかわる方が、この委員の中におられますか。それとは全く独立になっていますか。

【後藤評価推進室長】
 独立しております。専門としては中間・事後評価の委員と同じになるかもしれませんが、採択審査の委員は別の委員ということになります。

【笹月部会長】
 中間・事後評価の結果は、もちろん、研究者にはフィードバックされるわけでしょうが、採択審査の委員にはフィードバックされますか。よく、中間評価とか事後評価だけをする委員から、なぜこんな課題をそもそも選んだのかという採択審査の委員会に対する不満が聞かれる場合がありますが、そういう意味でも、最終的な評価を採択審査委員にフィードバックするというのは、やはり意味があるのではないかと思うのですが。

【後藤評価推進室長】
 各審査・評価の結果は分科会に報告されておりますし、ホームページ等にもオープンにしております。また、必要に応じて、事務局を通じて連携をとっており、フィードバックされております。

【笹月部会長】
 ほかに、よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、議題3「大型放射光施設(SPring‐8)に関する中間評価について」に入りたいと思いますが、本件につきましては、本部会のもとに、平成18年5月10日に設置されたSPring‐8評価作業部会において評価を実施し、その経過がまとまりましたので、本部会としての審議を行うものでございます。本日は、作業部会の主査を務めていただいた立命館大学の太田教授にご出席をいただいておりますので、太田教授より、本取りまとめのポイントをご説明いただきたいと思います。太田先生、よろしくお願いいたします。

【太田教授】
 立命館大学の太田でございます。座って説明させていただきます。
 資料6‐2が、今回まとめました大型放射光施設(SPring‐8)に関する中間報告書でありますが、限られた時間で説明をしますので、資料6‐1【概要】をもとに説明させていただきたいと思います。
 SPring‐8といいますのは、世界に誇る最先端の放射光施設でございまして、1997年に供用開始して、約10年がたとうとしているわけですけれど、このSPring‐8に関しましては、文部科学省の定める特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律、共用法と言われますが、それのもとに共用をさらに促進すること、あるいは研究の質的及び量的な一層の充実を図る、成果を社会に還元すること、効率的・効果的な施設運営を図ることということが要請されております。そのことから、3年から5年を目安として、中間評価を実施することが義務づけられており、前回の評価が2002年に行われました。この時期は、建設整備から本格事業期に移行する時期であったわけですが、それから3年半たったということで、今回の中間評価を行ったということでございます。
 対象としましては、前回の中間評価以降のSPring‐8に係る取り組み全般を対象としております。方法は、関係機関、関係者のヒアリング、あるいはアンケート調査によっています。
 大型施設、SPring‐8の概要は、皆さん、ある程度ご存じだと思いますので、時間の関係で少しはしょらせていただきますが、グルノーブルにありますESRF(European Synchrotron Radiation Facility、仏国グルノーブル)、それからシカゴにありますAPS(Advanced Photon Source、米国アルゴンヌ)と、3つが世界に並びまして、それが競争、競合、協調関係にありまして、お互いにしのぎを削っているという状況にあるわけです。
 その下に成果が少し書いてありますが、ちょっと時間の関係で、後でまた説明できればと思っております。
 前回の評価以降、いろいろ状況が変わりまして、1つは、一昨年に日本原子力研究開発機構ができることによって、日本原子力研究所が運営から離れて、理研とJASRI(財団法人高輝度光科学研究センター)の2社体制になりました。さらに昨年、共用法が改正されまして、理研がオーナーというか設置者で、JASRIは、それまで国の指定機関であったのですが、登録機関ということになったという状況の変化があります。
 それから、SPring‐8の安定的な運営を確保するために、これまで理研の運営費交付金が措置されていたわけですが、これが共用法に基づく補助金になったということがあります。
 そして3番、前回の中間評価でございますが、ここではいろんな提言が出されております。運営システムの改革に関しましては、施設の能力を最大限活用し成果を上げていくための戦略的な研究の推進をすべきである。新たな利用者の拡大や産業利用の促進のための支援の充実をすべき、あるいは研究開発の動向、利用者のニーズに応じた、柔軟かつ機動的な対応をすべきという提言がなされております。対応につきましては重複しますので、後で述べさせていただきます。
 また、運営組織の改革に関しましても、理研、JASRIが運営会議を実施して、その間で迅速な意思決定と機動的な業務遂行をするようにということを提言されております。
 それを踏まえて、今回の中間評価になるのですが、4ページ目になります。時間の関係で、主だったものだけを紹介させていただきます。
 (1)共用ビームラインにおける利用促進について。加速器・放射光源技術に関しましては、性能的には、光源スタッフの努力によって、最先端、3者の中でも一番すぐれた性能のものが得られておりますし、測定装置関連にしましても、検出器とか、関連装置で非常に高度化がなされて、それによって、非常に高い空間分解能、時間分解能の測定が可能になっています。それをもとにした、いろいろな成果がありますが、それらは中間報告書の後の付録にありますので、それを参照していただければと思います。
 ちょっと飛びまして、1.2.1 年間運転時間、ユーザータイムですが、供用開始以来、年間運転時間が欧米の放射光施設に比べて少ない状況が続いています。これに関しましては、非常に深刻な問題でございまして、少なくとも年間運転時間5,000時間の安定確保を図り、さらに年間5,500時間以上を目指すようにという提言をしております。
 その次のページになりますが、供用ビームラインにおける利用支援についてです。
 支援体制では、平成17年に利用研究促進部門を再編しまして、産業利用推進室を設置しています。それから事務員を削減して、そのかわりビームラインスタッフを増やす。それによって、これまで前回評価のときに各ビームライン担当者は1.5名だったのですが、これが3.1名と倍増している。しかし、それにもかかわらず、ESRFやAPSに比べると、まだ少ないという状況が続いています。ただ、いずれにしても、ビームライン毎の個性がありますので、特性を踏まえて、現有人員を有効に配置するということが必要だろうということは考えられます。
 それから、パワーユーザー制度は前回評価を踏まえて導入されたものでございます。限られたビームラインスタッフを補強するという意味でユーザーに準スタッフになっていただいて、強力に利用を推進していただくという制度でございますが、これによって、すぐれた研究成果が創出されたということが評価できます。ただ、いつまでも続けていただくということは困難であるために、次の候補を育てるなどのパワーユーザーの負担を軽減する努力が必要であると考えます。
 メールインサービス、これは、やはり中間評価を踏まえて出てきた制度でございますが、理研がたんぱく質の結晶に関してサービスを導入しております。これは非常に評判がよいわけですけれど、それ以外についても、登録機関のJASRIが可能なものから実施するということを検討していくべきではないかということが考えられます。
 それから、登録機関による調査研究、これはJASRIですが、JASRIがビームラインを維持、運転していく上で、非常にレベルの高い研究を維持していくためにも、共有ビームラインの一定割合を使って、装置の測定方法の改善など、研究をしていくことが非常に重要ではないかということがあります。そういうことがだんだんやられてきて、そのことに関しては高く評価されていると思います。
 その次、(3)は利用研究課題の公募と重点研究課題制度についてでございますが、ビームラインの本数とか運転時間が横ばいの状況なのですが、利用研究課題は、どんどんふえてきているという状況があります。特に利用者数に関しましては、ESRF、APSの倍ぐらいであり、そのことは非常に高く評価できるわけですが、それに対して、利用についてどのように採択して配分していくかという難しい問題があります。これには、分科会毎に選定基準を考えることが必要だろうと思われます。また、若手研究者のための萌芽的研究課題を導入するなどのことも必要であろうということを提言しております。
 重点研究課題制度というのは、前回の中間評価を踏まえて出てきたものでありますが、これにはナノテク支援、たんぱく3000、戦略的産業支援、パワーユーザーによるものとか、いろいろ実行されてきました。この制度は非常に効果的に成果を生み出したということは言えますが、定期的に重点研究課題領域を評価して、適切に見直していくことも必要であると考えられます。
 少し飛ばしまして、3.4の研究成果を反映した課題選定に移ります。これも前回中間評価を踏まえて新しくできたものですが、過去の論文発表状況を課題選定に反映させて採択を決めるという制度でございます。このこと自体は非常に有効であると考えられますが、単に一義的に、あるいは画一的な選定基準にしないという配慮が必要だろうということが提言されております。
 (4)の産業利用ですが、これに関しましては、特に前回評価から非常に大きく進展したというものでございます。先ほどもお話ししましたが、産業利用推進室がつくられて、それから産業利用促進トライアルユースが平成13年度から実施されております。それから戦略活用プログラムができ、産業利用ビームラインのユーザーは非常に増えております。平成14年度に9パーセントが、平成17年度には19パーセントと倍増しているという状況です。そのことは非常に高く評価できると言えます。今後、引き続き、現状レベルの利用割合というのは維持していく必要がありますが、これからは量というよりは質的な向上を目指していくことが必要であろうと考えられます。
 (5)の研究成果及び社会への還元に移ります。研究成果に関しましては、発表論文数はどんどん増えており、非常に高く評価できます。しかし、ESRF、APSに比べますと、やはりかなり少ないという状況が続いています。このためにも、設置者側が利用者に対して引き続き積極的に働きかける努力も必要であると考えられます。
 飛ばしまして、(6)の運営に移ります。運営体制は、先ほどもお話ししましたように、施設設置者としての理研と、登録機関としてのJASRIがあるわけですが、その間にはSPring‐8運営会議によって、いろいろな取り決めがなされていますけれど、今後、この間には、適切な緊張関係のもとに、効率的な運用を図ることが必要だろうと考えられます。
 また、登録機関が変わる可能性があるわけですけれど、あまり頻繁に変わるということは望ましくない。できれば利用促進業務というのは一体的に推進するということが必要であろうということを提言しております。
 その次のページに移ります。利用者負担ということで、平成18年度後半から、受益者負担の原則にのっとりまして、すべての利用者から利用、実験に伴って発生する消耗品の実費負担を求める制度が導入されております。これについてはやむを得ない措置ですが、ビーム使用料が有効に利用環境に反映する仕組みを導入することが必要であろうと考えられます。
 その他として、専用ビームラインが14本ありますが、これについては、いろいろな成果が出てはいるのですけれど、発表論文数という観点からは、共用ビームラインと比べて少ない。ある意味では少し刺激が少ないということも考えられ、成果創出をより一層促進する方策を検討することが必要であると思われます。
 以上をまとめまして、提言というものを載せたわけです。これはこれまでの話の中の主だったものを出したものですが、その次のページ、9ページです。運転基盤の強化ですが、運転時間は、少なくとも年間運転時間5,000時間の安定確保を図り、さらに5,500時間を目指すことが望ましいということです。
 それから施設整備、高度化の推進です。現在でも、施設としては世界最高性能ということが言えますが、さらなる高度化を図っていくということが必要とされます。そのためにも適切な体制を整えて、有能な人材の育成を進めるということが望ましい。
 それから、各種整備方針、整備計画の策定でございますが、供用開始から10年を迎えております。現在でも、まだ空きポートが13本ありまして、これらも含めて、速やかに整備計画を進めることが必要であろうと考えられます。
 次に、運営体制と登録機関のあり方ですが、先ほども話しましたが、理研と登録機関であるJASRIとの間、適切な緊張関係のもとに効率的な運用を図るということが強く求められます。
 研究能力の維持・向上ということでは、登録機関のJASRIのビームラインスタッフが、最先端の放射光技術を維持・向上させるための調査研究を引き続き実施すること、研究者としても高いレベルを維持することが非常に重要である。そのために必要な人材育成に適切な体制を整えることが必要であろうということを提言しております。
 利用促進方策でございますが、支援体制の強化として、個々のビームラインには、先ほど言いました3人平均のスタッフがいるわけですけれど、ビームライン毎の特性を踏まえて、現有人員を適切に配置することが必要であると考えられます。
 メールインサービスにつきましては、利用希望者が多いと考えられます。これについては、早期に検討して、可能なものから実施する必要があります。
 それから、戦略的な成果創出ですが、重点研究課題制度は非常に評判も良く、引き続き実施することが望まれます。
 それから成果非専有の利用者、これは一般の共同利用者ですが、彼らにこれからも研究内容を外部に積極的に発信するためのインセンティブを与える方策を検討する、それによって、SPring‐8のプレゼンスをさらに高めることが必要であると思われます。
 時間ですね。以上で終わります。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。
 中間評価の報告書をご説明いただきましたが、どうもありがとうございました。
 どなたか委員の方からご質問。どうぞ、野田委員。

【野田委員】
 添付資料4を見るとESRFのユーザータイムは1995年以来同様に推移して、5,000時間程度ですが、中間評価報告書の28ページの論文数の推移を見ると2005年に論文数が急に増加している。これは何か理由があるのですか。

【太田教授】
 原因がはっきりしているわけではありませんが、例えば学会などがあると増加することがあります。ESRFやAPSは、人事交流や地域交流を非常に密接に行っていますが、SPring‐8は遠く離れていて、欧米に対して孤軍奮闘しているところがあります。また、論文を英語で書かなければいけないという障害があって、論文数での比較は非常に厳しい。ただ、ESRFは非常に歴史的にも伝統があり、放射光科学に関しては非常に高い研究がされているということは確かです。

【笹月部会長】
 どうぞ、西島委員。

【西島委員】
 これら3つの施設(SPring‐8、ESRF、APS)は、よく比較されることがあるのですが、ESRFは、もともと欧州12カ国の共同体で使う。また、APSはCAT(Collaborative Access Team)方式という、いわゆる専用ビームラインを主体としたシステムです。一方で、SPring‐8は共用、すなわちたくさんの人に使ってもらうことが主目的です。そういう意味では、論文数で一義的に比較するのはいかがなものか。それぞれの事情が非常に違うということを言えばいいのではないかと思います。
 むしろ、印象に残ることが2点ありまして、1点は、SPring‐8においてもビームラインのスタッフ数は増えているものの、SPring‐8に比べてAPSやESRFのビームラインは、スタッフの数が多いだけでなく、活気があります。そのため、実際に新しいユーザーがこれらの海外施設にて測定した場合には、多くのスタッフにいろいろ聞きながら実施することが可能です。スタッフのやる気を上げてESRFやAPSのように人を配置していけば、結果として自然と産業界の利用も増え、将来には新しい産業用ビームラインも作ろうということになり、全体として論文も増えるのではないかと思います。
 もう1点は、年間を通じて、北米や欧州では必ずどこかの放射光施設が運転しています。例えば、APSが停止していてもカナダなどどこかの施設が運転していて、どこかの施設が使えるよう調整している。しかし日本ではSPring‐8とPF(Photon Factory、高エネルギー加速器研究機構)が夏の同じ時期に停止している。夏期に運転すると費用等負担が増えるということは分かりますが、ユーザーに対して、実際の費用負担増額など、もう少し説得力のある説明が必要ではないでしょうか。実際その期間に我々ユーザーは、わざわざスイス等にサンプル送ったりしていますので、世界一のSPring‐8やPFもあるこの日本において、いまだに改善されていないのはいかがなものかと思います。

【太田教授】
 おっしゃるとおりです。SPring‐8やPFは、これまでも厳しい経費の中でどれだけ運転時間を増やすかということに非常に苦慮していて、特に夏期は電気代が高い。アメリカや欧州と比べても、倍とまでは言わないが随分高く、それが随分しわ寄せになっているということは確かです。

【木村大型放射光施設利用推進室長】
 今回の中間評価に関する検討を踏まえまして、国内放射光施設間の連携協議会というのを新たに立ち上げました。ここで運転時間の調整や技術者等の交流について検討を行うこととしております。単純にどこかの施設の運転時間をずらせばよいということではなく、また、一旦運転を開始すると人の手配も含め非常に大きなことになるという事情がありますが、施設それぞれの特性、特徴等を含めて連携協議会の中で議論し、ユーザーにとって最も利用価値が高い形で検討していき、我が国全体の放射光施設の研究、振興がなされるべく努力をして参りたいと思っているところでございます。

【笹月部会長】
 よろしいですか。西島委員から非常に重要なご指摘をいただきました。
 それに関連して、資料6‐1、概要の6ページの3.2(重点研究課題制度)に、アンケート調査で69パーセントの利用者が成果の創出に効果的だと回答しているという表現がありますが、逆に言えば3分の1程度はあまり意味がなかったといっているようなもので、これだけの大型施設を使用しているからには、きちんとした目的があって実施していると思うのですが、これでよろしいのでしょうか。

【太田教授】
 肯定的な回答が3分の2であったということを示したものであり、重点研究課題制度を止めて、一般利用で共用ビームラインを利用した方がいいという否定的な意見が強いということではなかったと思います。

【笹月部会長】
 生命科学から見ますと、タンパクの構造解析はどの程度の割合を占めていますか。

【太田教授】
 タンパク構造解析についてはタンパク3000で重点的に行われています。

【笹月部会長】
 タンパク3000に限って行われたのですか。それともそれ以外の共用利用で行われていたのですか。

【太田教授】
 タンパクに関する幾つかのパワーユーザーが行っているほか、理研のタンパクビームラインを使用して重点的にそのような解析を行っていると思います。

【木村大型放射光施設利用推進室長】
 添付資料8に共用ビームライン及び専用ビームラインにおける利用制度の概要をまとめておりますが、特に重点化を図るべき分野を重点領域と定め研究を進めております。最初にご指摘頂いたアンケートに関してですが、例えば3.4(研究成果を反映した課題選定)につきましては、私どもとしてはSPring‐8で得られた成果を学術研究ということで論文として、または産業利用ということで商品開発等として、ぜひ外に発表して頂きたいと思っております。そのため、利用者に意欲刺激となるよう、そのような成果が次回の課題の選定に若干有利に働くように設定したところでございます。ただ、これもやり過ぎると、新規参入者が使いづらくなってしまいますので、画一的、絶対的な指標としないなど配慮することが重要であると思っております。アンケート調査結果の数字を判断するのは非常に難しいところでございますが、そのような状況があり、60数パーセントという数字になっていると思っているところでございます。

【笹月部会長】
 どうぞ、中西委員。

【中西委員】
 添付資料4と5を見ると、ESRFの利用はいろいろな分野で満遍なく行われているのに対し、APSの利用は生物学の分野が非常に多いように見受けられるのですが、研究をする立場からは、大型施設を使った研究でも、世界の垣根はほとんどなく、たとえ海外に施設があっても目的に応じて柔軟に使っている時代だと思います。SPring‐8についてですが、ある分野については研究しやすい環境であるというような特徴、あるいは世界的にこの種の施設の住み分けなどは考えておられるのでしょうか。それによって予算の使い方とか重点化ができてくるのではないかと思います。

【太田教授】
 個人的な意見で、お答えになっているかどうかわかりませんが、第三世代の大型放射光施設が世界に3つというのは非常に少なくて、それぞれが特徴を持って運営するというほどの余裕はまだないのではないかと思います。それぞれの体制や形態は成り立ちや背景によって違っています。先ほど話があったように、APSはCAT方式で進められた結果、同じようなビームラインがたくさんできてしまい、今見直しが図られております。一方、ESRFは第三世代放射光の特長を生かした研究に特化したビームラインを建設しており、非常にうまくいっています。SPring‐8も基本的にはESRFと同じような方向にあります。ESRFと比べた場合、ESRFの方が優れているものもありますが、例えば小角散乱や非弾性散乱のビームライン等、SPring‐8の方が性能的に優れているものも数多くあります。

【笹月部会長】
 ありがとうございました。どなたか。

【宮部委員】
 この評価に限らず一般的に感じることですが、アンケート調査結果については非常に肯定的な意見に重点を置いて議論されるケースが多いのですが、むしろ、中間評価であれば否定的な意見の具体的な中身を調べ、それが正しい意見であれば、どのように対応しているかというところに目を向けるということが非常に重要だと思います。昨年から評価を見せてもらっての全般的な印象ですが、肯定的な意見に重点を置いている傾向が感じられる。
 また、これも一般的な傾向ですが、成果を議論するときにそれに対してどれだけの費用を投じたかという議論が出てこない。したがって、もっと投じるべき、いやもう少し抑制すべきという議論がやりにくいと思うのです。
 少し一般的な話しで申し訳ないですけれど、2点、コメントさせていただきました。

【笹月部会長】
 そうですね。放射光施設の場合、予算額やランニングコストなどが一切数字として定量的に出てきていない。そういう意味での評価、コストパフォーマンスについてもきちんと評価されるべきではないでしょうか。

【太田教授】
 予算額については、資料6‐2の報告書の6ページに年間運営費を記載しています。SPring‐8が103億、ESRFが107億、APSが110億であり、ESRF、APSとほとんど同じです

【宮部委員】
 そうなると利用者負担も計算しないと。

【太田教授】
 利用者負担は微々たるものです。

【笹月部会長】
 専有のビームラインを設置するにはどのくらい費用がかかるのですか。

【西島委員】
 SPring‐8に100億を投じてもらっていて、本体が十分動いているということを前提として、蛋白コンソーシアムの専用ビームラインの場合は、通常1本だけなら約6億、7億円かかるところが、理研ビームラインと同時に作ったので5.5億円で建設することができました。それから、年間維持費は3~4名のスタッフの人件費を含めて1.1億円で、これをコンソーシアム参加の22社で割ると1社500万円ですから、大変安いと思います。したがって、成果に比べて安く有効に使わせて頂いているということです。
 また、成果については、私たちは特許、ノウハウ等で成果を占有しますので、残念ながら要望に応えるだけの論文を書くことはできないのですが、SPring‐8が非常に役立っていて、産業界が有効に使っているという例として、ある企業は、蛋白コンソーシアムの成果を踏まえて米国の大きなベンチャーを買収したということや、また別の企業は、ビームタイムを専用に使用するために数億円から10億円の費用をかけて、PFに専用ビームラインを建設する予定であるということが挙げられます。そういう意味で波及効果はかなり高く、有効に使っていると思います。

【笹月部会長】
 専用ビームラインを1本持っていると、1年間でどのくらいの利用時間を確保できますか。

【西島委員】
 1社当たり1年間20シフトです。1シフトは8時間ですが、今の放射光施設であれば、サンプルをうまく調整すれば、1シフトでも4ないし5サンプル程度連続で計測でき、かなり有効に使えると思います。

【宮部委員】
 私が申し上げたのは、コストパフォーマンスが悪いということではなくて、こういうものをまとめるときに、コストパフォーマンスの視点が抜けるのは問題だと申し上げたということです。

【西島委員】
 そういうのが必要ですね。

【笹月部会長】
 そうですね。全くそうだと思います。時間もそろそろですが、よろしゅうございますか。

【有本委員】
 資料6‐2の報告書の後ろに「全体を通じた意見・要望等 主なコメント抜粋」というのがあるのですが、読むとたくさん不満がある。ずっとSPring‐8を利用してきた方からは肯定的な意見もあると思うのだけれど、このような否定的な意見に対して、どのように対応し、見直しを行うのかということをやらないと非常に残念です。一般的にはSPring‐8は、結構うまくいっていると思われているのだけれど、研究現場なり、開発現場からこれだけ不満があれば、中間評価できちんと対応してもらわないと。今後、次世代コンピュータ、X線自由電子レーザーなど大きな施設計画があるのでよろしくお願いしたいと思います。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。非常に大事なご指摘であり、この中間評価の中に定量的な、あるいはコストパフォーマンス等の視点も書き込んでいただくことも必要だろうと思います。それから、いわゆる学術研究と産業界での開発研究との割合は、どの程度のものでしょうか。

【太田教授】
 産業利用は全体の20パーセント程度。

【笹月部会長】
 ということは、残り80パーセントは学問、学術分野ということですか。

【太田教授】
 そうです。

【笹月部会長】
 ほかにご意見ございませんか。

【小川委員】
 資料6‐2の報告書15ページの年間運転時間の比較で、APSやESRFと比べて運転日でいうと年間60日程度の差があるというのは、なぜかなという気がしています。また、16ページのダウンタイム(装置トラブル等によりユーザーへ放射光を提供できなかった時間)の割合についても1パーセントも多い。我々ITの世界だと1パーセントというのは非常に危機的で、お客様からかなりの苦情が来ます。ATMが365日のうちの1日とまっただけで大問題になるのですけれども、それでも0.何パーセントです。そのあたりは、どのように問題を把握され、どう改善されているのかというところをお教えいただければと思いますが。

【太田教授】
 ダウンタイムが多いのは台風で屋根が損傷するなど、一時休止したためと思われ、不可抗力という面もあります。運転時間が少ないということは致命的ですが、とにかく予算が厳しい。これまでいろいろやりくりをして運転経費を確保してきましたが、それでもESRF、APSには対抗できないという状況にあります。もう少し運転時間を増やし、安定的に運転経費を確保すべきだということは昨年7月に行われた国際評価委員会でも非常に強く要望されました。この問題は、日本では電気代が高いということが大きく影響しています。

【笹月部会長】
 ありがとうございました。よろしいですか。

【野田委員】
 実は物質・材料研究機構でも最近一生懸命ユーザーを増やしているのですが、添付資料1、SPring‐8のビームラインのマップに台湾のビームラインが2本あるということは、海外からの利用希望は結構あるのではないかという感じがするのですが。

【太田教授】
 報告書には出ていませんが、欧州を含め海外からもユーザーは来ています。ただし、ESRFやAPSほど多くはありません。台湾には軟X線の施設があるのですが、硬X線がないためSPring‐8に専用ビームラインを設置しています。現在、海外機関の専用ビームラインは、台湾のものだけです。

【笹月部会長】
 よろしいでしょうか。

【東嶋委員】
 否定的な意見を踏まえた具体的な改善策が報告書に反映されていないと思います。資料6‐2の報告書の7ページの成果公表のところで、産業利用の進展をアピールする機会を逸しているため実験条件やデータを公表してほしいという意見になっておりますが、これはむしろ敷居を高くしているのではないか。海外を含めた産業界に対して、成果公表会や説明会をもっと頻繁に行うことや、アンケート調査結果にあるように、ユーザーの希望を聞く常設部署を設置することが必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【太田教授】
 それについては文科省からの強力な支援もあり、かなり努力していると思います。特に前回評価から、コーディネーターを9人に増加したり、全くの初心者でも利用できるようにトライアルユース制度を設けたり、産業利用を推進させるための戦略活用プログラムを設けたりしています。欧州やアメリカではこのようなことはしていません。もちろん、従来から様々な講習会を開催していますし、我々が見て、一般共同利用を圧迫しているのではないかと逆に感じるくらい産業利用に対して優遇措置を講じています。確かにいろいろ否定的な意見がありますが、逆に何千人と利用者がいるこのような大型施設で1人も不満がないというのは考えられません。その中にあってかなりの部分は満足されているのではないでしょうか。もちろん、旅費支給を止めたことや消耗品負担制度を設けたことは確かに敷居を高くしているのですが、これはやむにやまれぬ事情のもとで行ったことであり、それに関しては何度もユーザーに説明する努力を払っており、そのことは評価すべきであると考えます。

【笹月部会長】
 ありがとうございます。

【有本委員】
 最後に行政に対してお願いしたいのは、日米欧の3つの施設で運転経費はほとんど同じなのに運転時間がこんなに短いのは何が問題なのか。きちんと分析をして、日本の電力料金が高いのならば、総合科学技術会議などで訴えるべきです。第3期科学技術基本計画では、そういう制度論をやろうとしているのだからぜひお願いしたいと思います。

【笹月部会長】
 ありがとうございます。
 それでは、この中間報告に関しましては、一部ご意見をいただきましたので、修正を加えたものをご了承いただく。その一部修正に関しましては部会長一任ということで、お認めいただけますでしょうか。
 では、そのようにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本件の今後の取り扱いは、一部修正いただいたものを、次回の研究計画・評価分科会にお諮りしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、議題4、その他に移りたいと思いますが、本日は第4期の1回目の部会でありますので、「研究開発評価のあり方」などにつきまして、意見の交換を、時間の許す限り行いたいと思います。
 まず、事務局から、研究開発評価を推進するための文部科学省における取り組みについて、ご報告お願いいたします。

【後藤評価推進室長】
 それでは、資料7を用いまして、ご説明させていただきます。
 研究開発評価を推進するための取り組みとして、私ども評価推進室で主に行っている取り組みを紹介させていただきます。
 参考資料5、この部会でつくっている評価指針が研究開発評価のもとになっております。私ども評価推進室のほうでは、この指針を実際の研究現場でうまく活用できているか、あるいは問題点があるか、実態を把握して助言・改善をするという立場で業務を行っております。評価指針の27ページ、第5章ですが、ここにフォローアップの内容があります。実際に各研究機関等で研究開発を進めている、あるいは行政で研究開発の政策的な評価を進めている中で、実施状況をきちんと把握して、そこでの問題点を把握しながら、必要に応じて指針の見直しを行う。研究機関、あるいは所管している部局とも連携を保ってやるといった業務があります。
 まず、資料7の2ページ目ですけれども、研究開発評価の活動が、各研究現場でどのように行われているのか、評価推進室、評価の専門家、研究者、評価関係者たちも含めまして、現地調査を行った概要です。この具体的な成果につきましては、皆さんのお手元にある緑の冊子にまとめてございます。今回は、独法研究機関9機関、大学法人の研究所を4機関、それから大学共同利用機関2機関(その中にある研究所も含めれば6研究所)ということで、19ケースについて、評価の特徴であったり、意見交換したことなどを、また、コメントという形で専門家の意見を載せております。
 3ページ目になりますけれども、評価推進室でやっている主な業務の全体像を書いていますけれども、現地調査でいろいろ見えててきたものをもとに研究開発評価シンポジウムを行いまして、実例紹介と意見交換を行い、情報共有をしました。それが、評価推進室として現地調査を行い、それを共有するという1つのPDCAだと思います。
 それから、研究開発評価は、国の施策から、実際いろいろなプロジェクトの課題、機関の評価といった、いろいろな階層性があるものですから、それぞれの評価に携わっている人が、スキルアップを図っていくことが大事という観点から、2種類の研修を実施しています。研究開発評価研修には、4ページ目にありますように、文部科学省、政策科学研究所、研究・技術計画学会の共催で行っている政策評価相互研修会(研究開発や政策の評価の概念、枠組み、手法等の教示、海外から講師を招聘してフロンティアな情報の提供)を今年度は7回行いました。一方、今年度初めてワークショップ形式のものを実施しました。皆さんのお手元にあるオレンジ色の冊子が実施報告書です。5ページ目にありますけれども、具体的な独法機関の事例を紹介いただきまして、いろんな省庁の所管独法の方々が集まってグループ討議を行い、問題点などを議論しました。情報交換には非常に役に立ちました。今後、参加者がさらにスキルアップするためには、研修のプログラム開発が必要ということで、委託に出して検討しているところです。
 また、途中段階ですけれども、提案に近い形で今動いていることを紹介します。評価のシステム改革ということは、総合科学技術会議や第三期科学技術基本計画の中でも言われていますけれども、評価データの共有を図るとか、政策につながる評価を進めていく必要があるということで、国内外の評価情報を国際会議で討論することと評価人材のネットワークを構築しようという試みを考えています。その具体例が、6ページ目、7ページ目でございます。
 6ページ目というのは、もう10年以上行ってきている海外の評価担当者とのネットワークで、G8研究開発評価ワーキンググループの会合ということについて記しています。形式にとらわれずに自由に意見交換できる会合で、各国の評価に携わっている行政機関や資金配分機関の担当者が、現状や課題を意見交換する。この会合が、今年は日本で開催されることが決まっておりまして、11月21日、22日に行う予定です。それに合わせて、国際会議を11月20日に行う計画をしております。
 昨年のカナダのケースでは、ブルースカイ2という10年に1回開いている著名な科学技術関係の会議が同時期にあり、このたび日本で開催するにあたっても、日本で今必要とする評価に係わる情報を中心に討論できる国際会議を同時期に開きたいということを、7ページ目に書いております。テーマは、イノベーションポリシー・アンド・エバリュエーションということで、今いろいろ話題となっているイノベーション政策と評価でカンファレンスを行う。また、関係する行政機関、資金配分機関、各研究機関等を含めて準備会を立ち上げながら、この会議を機に、その後もネットワークし続けられるようなシステムを構築できないかということを、今、関係機関の担当者レベルですけれども、検討しつつあるところです。
 実は、部会の委員である東大名誉教授の平澤委員にも、いろいろアドバイスをいただきながら、進めているところです。国際水準の信頼できる評価を目指して評価の質を高め、関係者の裾野も拡げることを少しずつやっていきたいという計画をご紹介させていただきました。
 研究評価の在り方に関して、私ども評価推進室がやっている業務を参考までに、具体的事例としてご紹介しました。ご理解いただければと思います。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、委員の先生方の間で、この問題に関しまして、意見の交換を行いたいと思います。
 どうぞ、田島委員。

【田島委員】
 今年11月に予定されている国際会議の規模、招聘者、参加者についてお聞ききしたいのですが。

【後藤評価推進室長】
 規模等の詳細は検討中です。この国際会議を評価関係者の継続的なネットワーク作りのきっかけとしたいと思っていて、例えば、評価研究者や評価推進室が実施している研究開発評価研修の参加者をネットワークの母体にと考えています。また、仮題に「イノベーションポリシーと評価」とあるように、評価が政策に活かされるようになるためにも、著名な評価の専門家を5名ほど海外から招聘する予定でして、その方々とともに、実りある国際会議にしたいと考えているところです。

【笹月部会長】
 ほかにどなたかございますでしょうか。どうぞ、平澤委員、お願いします。

【平澤委員】
 評価が新しい体制になって、7年目を迎えます。先ほど紹介された研究開発評価研修は、最初から参加させていただいていますけれども、今年で4年経ち、随分いいネットワークができてきています。特に資金配分機関で実際に資金提供に携わる人たちが非常に熱心に参加して、ファンディングプログラムの改善に取り組もうとしており、希望の持てる、新しい状況ではないかと思っておりますが、もう一方で、行政機関内部では、各府省とも、評価の担当部署の方は非常に熱心だが、その他の方はほとんど参加されておらず、やはりまだ評価全体の動きとしては鈍いのではないかなと思っているわけです。
 そこでこのように思うのですが、今までの体制の中では自己評価を中心にしてやってきた。これは法律やその他の仕組みがそのようになっているからですけれども、そういう内部で行う自己評価に加えて、外部から自由な立場で深く分析してもらう種類の評価システムを新たに加えてもいい時期になってきているのではないかなと思っています。
 まだ十分ではないものの、それなりの評価人材、いわゆるアナリストも育ちつつあって、若い研究者たちが分析を行う機関が能力を使いながら、もう少し実証的な議論ができるデータを委員会等に提供していただけるような、そういう種類の評価のフレームワークをお考えになってはどうかなというふうに思っております。

【笹月部会長】
 どうもありがとうございました。大変重要なご指摘だと思います。どうぞ。

【平野部会長代理】
 ある段階の評価は当然必要だというのはよく理解した上で発言させていただきます。例えば、イギリスで評価を導入し、かなりの年月がたって、成果も出ているが問題点も出ている。数年前ですが、カウンシルの長官だったサー・リチャード・グルークが解析報告を出しており、研究者等にかける労働をどのように見ながら科学技術・学術の振興をすべきかということを解析して、彼なりの検討もしております。「やるべきだ」、あるいは「こういうシステムをとるべきだ」というのはよく分かるのですが、同時に、もう一方の側の考え方をどこかの機会で紹介すれば、大変参考になるのではないかと思います。

【笹月部会長】
 ありがとうございました。どうぞ。

【大泊委員】
 別の部会が審査した科学技術振興調整費の採択課題について、我々が最終的に評価するわけですが、なぜ評価をするかというと、多くの事例について、実際にどの程度目標が達成されたかなどを評価して、それを次の施策や政策等に反映させるということが筋合いだと思うのですが、参考資料1の組織構成には、その反映のつなぎをするところがないように見えるのですが、それはどこが行うのですか。

【後藤評価推進室長】
 科学技術振興調整費審査部会も研究評価部会も科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会のもとに組織されておりますので、採択審査の結果も中間・事後評価の結果も分科会にきちんと報告されて、意見の調整が図れるようになっております。また、総合科学技術会議にも報告することになっておりますので、事前、中間、事後の評価全体を通じて確認されるようになっております。

【笹月部会長】
 1つの課題については評価が研究者にフィードバックされ、あるいは事前評価の委員会にもフィードバックされたとしても、もう1段大きな、プロジェクト全体の決定に対するフィードバックという仕組みがどうなっているのかということが非常に重要だと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

【後藤評価推進室長】
 総合科学技術会議で定めたテーマをもとに、科学技術振興調整費審査部会で専門分野別に作業部会をつくります。中間・事後評価についても同様に研究評価部会で専門分野別に作業部会をつくります。その作業部会で検討されたものが部会、分科会そして総合科学技術会議で確認されるので、その都度、フィードバックされる形になっております。

【笹月部会長】
 そうすると、その評価結果のデータベースをきちんと構築しているのかどうか。その蓄積が将来の新たなプロジェクトの設定にどのように利用されるか、いわゆる評価のデータベースということに関しては、何かプランをお持ちでしょうか。

【後藤評価推進室長】
 総合科学技術会議で全体のテーマを決めるわけですが、これまで実施したものについてのデータベースをつくっています。それとあわせて、政府全体として、どういう研究テーマが、どこで行われているか等の全体のデータベースもつくろうとしているところです。

【笹月部会長】
 平澤委員のほうからありますか。

【平澤委員】
 今、部会長がご指摘の2つの点は、両方とも非常に重要なことで、私も常々何とかならないかと思っていました。
 まず、プログラムの内部構造の見直しを一体どこが責任を持ってやっているのかということですけれども、責任を持ってやっているところはまずないと言っていいような状況ではないだろうか。制度の枠組みから言うと、科学技術振興調整費そのものが1つの政策として位置づけられていて、年に1回実績評価をするのだけれども、これは自己評価ということになっているので、指標の分析をしないと合理的な議論が進まない。そこで2点目のデータベースの問題に立ち返るわけです。結局は従来のものを多少修正する程度であり、結果として、諸外国に比べれば、はるかにおくれた伝統的な学問が温存されている。そのこと自体は一方では必要なのですが、新しい領域を展開するプログラムが新設されていないということは非常に大きな問題です。ですから、そういう制度のはざまにあって見過ごされている事柄も大きな問題として取り上げるべきだと思うのです。
 科学技術振興調整費に関しては、JST(科学技術振興機構)が完全なデータベースを一応持っていますが、分析はまだ進んでいない。整備され始めてからそれほど時間が経っておらず、有用なデータが入っていないという側面もあります。ただ、JSTでは、その重要性を非常によく認識されていて、強化しようと取り組んでおられる。
 一方で、評価が新しい体制になってすぐ、内閣府が、アメリカの公的資金によるプロジェクトがすべて入ったRADIUS(R&D in United States)というデータベースに類したものをつくろうとしましたが、今に至るまで、あまり機能するようなものになっていない。
 科学技術基本計画も第3期に入って、データベースの重要性は総合科学技術会議では議論されているのですけれども、今のデータベースは公開されておらず、分野の割り振りも8分野で、海外と比較しようとしても全く比較できない。分野と目的に関してはOECDの5けたの分類基準があるわけで、それに従って分類されていれば直ちに海外との比較はできるのですけれども、データベースの設計自体がまだ本格的でないというところが、非常に大きな問題として残っていると言えます。

【笹月部会長】
 大変ありがとうございました。
 評価が、往々にして、単に実施された事業に対する、言葉は悪いですけれども、しりぬぐい的なものであるような把握のされ方もありますが、決してそうではなくて、きちんとシステムづくりをして、前向きにどう先へつなげるのかという評価をしていかなければ意味がないだろうと思いますので、そういう、うまく回転するシステムを考えることが非常に大事ではないかと思っています。

【有本委員】
 ご存知の先生も多いと思いますけれども、世界中がイノベーション政策をどんどん展開しようとしていて、そのアウトカムなりアウトプットをどう計測するのかということが大問題になっています。アメリカが計測方法について開発を始めていて、OECDに波及して、日本でも科学技術政策研究所を中心に始まっている。政策立案の部署と政策分析の部署と評価実務の担当部署が、いよいよリンクし始めているわけです。今年の秋に予定されている国際会議は絶好のチャンスで、「政策をつくったら、あとは評価実務担当部署に任せる」という構造から各部署が常に相互作用するというような構造に、こういう国際会議でうまく仕掛けていただくということが非常に大事だと思っております。先ほど話しのあった研究開発評価研修に参加している評価実務者はかなりネットワークが広がってきていると思うので、それをさらに一段飛躍をして、その人たちがもう少し広い目で見られるように、あるいは、その人たちの活動が政策をつくる側から注目されるような構造にぜひしていただきたいと思いますので、国際会議はその絶好のチャンスだと思っております。
 第3期科学技術基本計画でイノベーションを強調し、第4期計画に向けて、それを計測する、評価する方法の開発は今から始めないといけない。研究評価部会も大変な重責を担うことになっております。
 問題意識の提起だけでございますけれども、よろしくお願いします。

【笹月部会長】
 ありがとうございました。どうぞ。

【平澤委員】
 有本委員のご意見もまったくその通りでして、秋に開催する国際会議の招聘者として5名決定しています。そのうちの1人はDOE(Department of Energy、米国)のビル・バルデス氏。彼は今のサイエンス・オブ・サイエンスポリシーのアメリカ政府部内での取りまとめ責任者になっている人です。彼からはイノベーションのアウトカムの測定法について、ぜひ深い議論をしたいと言われている。それから、NSF(National Science Foundation、米国)のハズバンド氏。彼女は2日前に開催された研究開発評価研修において講師をしましたが、彼女が副となって、NSDC(the National Institute for Standards and Technology within the Department of Commerce、米国)でサイエンス・オブ・サイエンスポリシーを取りまとめている。それから、欧州からはPRIME(Policies for Research and Innovation in the Move towards the European Research Area (ERA)、EU)という、研究者と行政における実務者とが形成しているEU全体の評価ネットワークの主要なメンバーとなっている3人、ルーク・ジョルジュ氏、ステファン・クールマン氏及びフィリップ・ラレード氏。ですから、情報の質と量はかなりのものとなるので、それをどのように有効に用いて日本のために役立つような議論にしていくかは、これから検討していきたいと思います。

【笹月部会長】
 ありがとうございました。どうぞ、田島委員。

【田島委員】
 単なる研究計画の評価だけでは済む問題ではないと思うのですけれど、特に大型研究における、あるいは非常に小規模な科研費でもですが、欧米と日本との違いというのは、研究計画を支えるサポートスタッフが考慮されているかということであり、それが考慮されていないということが日本の研究計画の弱点だと思うのです。
 SPring‐8のコメントでもありましたが、機関におけるエンジニア等のスタッフがもっと充実していれば、研究者は研究に専念できるのであり、それは非常に重要なことだと思うのです。
 第2期科学技術基本計画までは設備投資に重点的に予算が投入された。第3期では人材養成をうたっていますけれど、それをどのように具体化していくか。それはコストパフォーマンスにも関係してくる問題だと思うのです。国際会議に欧米の高名な講演者を招聘した場合、そういうサポートスタッフがあまり考慮されていないことには着目されないのではないかと思います。

【笹月部会長】
 ありがとうございます。
 日本では、インフラとかサポートのシステム、あるいはコーディネーター等の充実なしにシステムだけを導入していつも問題になるという、これはどの分野でも常に指摘されている問題だと思います。
 予定の時間が参りましたので、きょうの意見交換はこのぐらいにしたいと思いますけれども、たくさんの貴重なご意見をいただきましたので、ぜひ文部科学省におかれましても、ただいまの意見を具現化するための、また次回の議論の参考になるように整理していただいて、こういう意見の交換、あるいは議論を深め、評価のほんとうの意味を十分理解し、そして評価のシステム、評価のあり方を進化させるといいますか、改善していかなければいけないだろうと思いますので、よろしくお願いいたします。
 何か事務局から連絡事項はございますか。

【後藤評価推進室長】
 本日は非常に幅広い議論、また研究評価の在り方に関しまして、非常に貴重なご意見、まことにありがとうございました。私ども評価推進室だけでは対応しがたい大きな意見もありましたので、関係するところにも連絡し、また科学技術・学術審議会でも出ていたのと同様な意見も出ておりますので、そういった貴重な意見を大事にして、これからも頑張っていきたいと思います。
 あと3点、事務局としてのご連絡をさせていただきたいと思います。
 今回の議事録ですけれども、部会の運営規則第5条第1項によりまして、議事録を作成後に、各委員にご確認をさせていただきたいと思います。その後、ホームページで公表という手続きをとりますことと、先ほど申し上げましたとおり、議事録は名前を公表するということになっておりますので、その点も含めて、よろしくお願いしたいと思います。
 2点目ですけれども、資料にもありましたけれども、次回の部会については、今、8月ごろに予定をしておりまして、後日、改めて日程調整をさせていただきたいと思いますので、その点もよろしくお願いしたいと思います。
 それと、本日の配付資料ですけれども、袋に各委員のお名前を書かせていただいており、大部でございますので、机の上に置いていっていただければ、後日郵送という形で処理をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【笹月部会長】
 それでは、以上をもちまして、本日の部会を終了させていただきます。大変ありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)