研究評価部会(第25回) 議事要旨

1.日時

平成18年8月3日(木曜日) 10時~12時

2.場所

コンファレンススクエア M+「ミドル1+2」

3.議題

  1. 科学技術振興調整費による実施課題の平成18年度における評価の進め方について
  2. 評価人材の養成・確保について
  3. その他

4.出席者

委員

 石井部会長、岩田委員、大泊委員、大森委員、加藤委員、北澤委員、国武委員、後藤委員、島崎委員、諏訪委員、西島委員、野田委員、花木委員、垣生委員、番場委員、平澤委員、宮崎委員、宮部委員、元村委員

文部科学省

科学技術・学術政策局
 吉川総括官、戸渡政策課長、後藤評価推進室長、室谷調整企画室長

5.議事要旨

 議題に先立ち、委員及び事務局の異動について紹介が行われた。

議題1) 科学技術振興調整費による実施課題の平成18年度における評価の進め方について
 事務局より「科学技術振興調整費等による競争的研究資金の不正使用の問題」に関する最近の状況の報告が行われた。
 続いて、事務局より資料1‐1から資料1‐6に基づいて、科学技術振興調整費による実施課題における評価の進め方についての説明の後、審議が行われた。その結果、資料1‐1から資料1‐5については、原案どおり了承された。
 主な議論は以下のとおり。

【委員】
 資料1‐2の4ページ、この利害関係者は基本としては自己申告を尊重するというニュアンスでよいか。というのは、(2)に「それ以外の場合であっても、利害関係を有すると自ら判断する場合には」との記載があるが、ここについて言っているのは、これをしっかりするように委員会みたいなものを通すのか。
 もう1点は、資料1‐4に評価WG委員の選定基準がある。一般論からいうと、優秀な先生とか立派な先生は実際に研究者としてやっている人が多いと思うので、あまり頼りにすると研究を評価に入れる形になるのではないかということで、評価委員会からすると、そういう評価委員の人たちに説明することが評価疲れになっているわけである。つまり、正しくサイエンス的に評価されていない、好き嫌いの世界に入ってしまうという危惧はないかということである。
 こういう基準で評価WGの質とかその辺のところをもう一度見直す必要があるのではないかと思うが、その辺はどうか。

【事務局】
 確かに今指摘のあった点は、我々としても最も悩ましい点である。利害相反はきちんと排除しなければいけない。他方、それをやり過ぎると、あるいは審査の方についても同じような要件を平成18年度から課しているが、やってくださる評価の方がなかなか選ばれにくい。結果として、選ばれる人がどこかに集中してしまって、言われた評価疲れを一部生んでいるのは事実である。
 今回、資料1‐2で示した利害相反の考え方は振興調整費のみが厳しくなっているわけではなくて、他の競争的資金を眺めたときに、おおむね共通してとっている指針である。
 今言われたように、自己申告を旨とするのか、あるいは調査をきちんと委員会などで行っているのかという質問の部分だが、振興調整費については科学技術振興機構の中に設けているPD・PO組織、今は常勤のPOが6~7名、非常勤が27名ぐらいいるが、これらの方々がつぶさに一人一人のバックグラウンド、所属などを調べた上で、明らかなバッティングがあればこちらから本人に確認している。
 あるいは、自らの発意による辞退というケースがあるが、これは表面上、外形上は問題ないように見えても、個人的に深い関係があり、自分としては第三者性、客観性を担保できないという申し出があり、昨年の評価WGの場でも、自ら手を挙げられて辞退された方が何人かいた。
 他方、資料1‐4で、今年から委員選定基準を明確にしながら、一層厳しくやり始めてしまったということで、その厳しさが増したことによる制約もある種やむを得なかったことである。
 実は、昨年の12月21日に規制改革・民間開放推進会議の場で、より小さな政府、効率的な政府を目指してという場で、振興調整費がターゲットになった経緯がある。そのときにいろいろな方から指摘されたのは、振興調整費のほか、いろいろな競争的資金における審査あるいは評価の人選の仕方が合理的な部分が一部欠けているのではないかとのことであった。
 つまり、どういう観点でどういう人を選んでいるという外部透明性とか、反証性とか、その結果に対して行政当局として理路整然と説明できるような合理性が欠けているのではないか。その一つとして、果たしてどういう観点で審査委員、評価委員を選んでいるのかということで、その基準の明確化を求められている。
 この部分についてはある程度そのとおりということがあって、今回から資料1‐4のような選定基準を作成した。ただ、特に明文化したことについては一歩進んでいるが、これまでもいわば暗黙知的にやってきた基準を明確化したということで、対外説明性の観点から行っただけである。一見、資料の数が増えて一層がんじがらめになったような感はあるが、これまでどおりの観点で人を選んで、同時に利害相反を排除しているということである。
 今、委員が言われた、いろいろやり過ぎると評価疲れになるという部分は、私の今の回答では答え切れていないことは正直に言って承知している。その部分については、引き続きほかの競争的資金も含めて、例えば後ほど評価人材の養成の話もあろうかと思うので、そういった中でより多くの人がこういったことに参加できるような道筋をつくっていきたいと思っている。

【部会長】
 やむを得ない面もあるということである。コンフリクト・オブ・インタレストについては一層、今までよりも細心の注意を払うという傾向にあるので、少なくとも何らかの対応はしなければならないように思う。
 あと、PD・POの組織がついているので、評価疲れについてはそちらの支援を何とか得て効率的に、あるいは委員の方に過大な負担が押し寄せないような工夫をお願いしたいと思う。

【委員】
 評価項目について質問したい。今回の早稲田大学のような事件が起こることを防止する意味で、例えば戦略的研究拠点育成に関しては「事業を適正に執行するための内部統制が機能しているか」という項目が追加されているのでいいと思うが、それ以外の研究に対して我々はどこに注目して評価をすればいいのか。個人研究でもそんなことがないとは言えない。研究課題から評価するだけではそこのところは抜けてしまうので、事務局あるいは文部科学省として何か項目を設けられているのか、あるいは我々がそういうことを意識して評価しなければいけないのか。

【事務局】
 基本的に、早稲田事案というのは資金が適正に執行されなかったという点である。そういった意味では本来、経理関係の仕事は、これを受けている大学が組織内の善良な管理によって健全性は確保しなければいけないことが大前提である。
 その部分をしっかり担保するために、文部科学省はJSTなどと一緒に日常的な資金の適正執行の管理を行うし、年度終了時には「額の確定」という用語を使っているが、執行された資金が適切な運用であったかどうかを確認して、適切であれば国の経費として認めるし、そうでなければ返還していただくことを引き続き行っていく。そういった過程の中で、今回設置する評価WGが本来的には直接的に評価する内容はないはずである。
 他方、なぜスーパーCOEだけが特別なのかという話であるが、スーパーCOEだけは組織の改革、要は研究開発メカニズムを高度化するという組織論も入ってくる研究課題である。組織論の中には、大きく分けると研究部分と非研究部分がある。研究内容については研究部分で見るし、非研究部分はマネジメントの評価になると思う。
 そのマネジメントの一つとして経費などの適正な管理がなされているような、「内部統制」という言葉を我々は使っているが、これは別に新しいことではなくて、これまで普通に行われているはずの研究資金の日常的な管理、あるいはそれが壊れたときに内部で情報が閉じないで外部まで行くような仕組み、できればさらにそれを外部から監査するような仕組み、そういう多重の防御の仕組みが拠点でつくられているのかというのは我々としてスーパーCOEのような組織面で取り組んでいる、さらに経費的にも10億円弱という非常に大きなキャッシュフローが起きていて、何らかの事案の発生の蓋然性が高い部分については、特に今回の評価項目の中に入れている。
 それ以外のWGにおける評価については、例年どおり、主として研究のものであれば研究の観点、人材養成のものであれば人材養成のカリキュラムづくりそのものがちゃんとなっているかなど、コンテンツの評価をしていただければと思っている。

【委員】
 資料1‐2にある事後評価について質問したい。事後評価をした後にどういう効果をねらっているのか。かなり時間をかけてたくさんの項目について評価するわけだが、それが今後にどう生かされるのか。例えばその記録があって、とてもいい評価をされた人は継続が可能とか、次回のときには優位に立つとか、そういうことがないと一生懸命に事後評価をしたかいがないと思う。
 それから、資料1‐2の戦略的研究拠点育成(事後評価)の評価項目の一番下に「中間評価の反映」と書いてある。中間評価が反映されているかどうかを見るのだが、上から2番目の「組織運営の妥当性」のところで、事後評価の時点で妥当ではないとか妥当であるというのは、当然のこととして中間評価でなされるべきである。そこで評価されたことがどういうように反映されているかということで、2の「組織運営の妥当性」と5の「中間評価の反映」はダブるような気がするが、いかがか。

【事務局】
 まず事後評価はそもそも何故やるのかということだが、現在における目的は、事後評価をすることによって我々のプログラム、制度でやった事業がどれだけの効果を持っていたのかということを、いわば行政当局としてそれを反省して新しいプログラムづくりに使うという観点で行い、我々は現に評価が終わるたびに一件一件見ながら、我々の設定はどこが悪かったのだろうかとか、プログラムのつくり直しに活用している。
 これは将来といっても向こう2~3年に起きる話となるが、今、政府の中ではこういったような研究者について、いわば背番号制のような形で、どういう研究者がどういう経費を過去に取って、中間評価がどうで、事後評価がどうだったかということを体系的に整備していく予定である。その結果として、当然のこととして、例えば事後評価がいつもよければこの人は非常に頼りに足る人であると。その逆もひょっとしたらあるのかもしれない。そういったような活用が今後出てくると思っている。そういった意味では、事後評価をしっかり活用しているし、さらに将来はその活用量が増えると思っている。
 次に、特にスーパーCOEなどにおいて中間評価でやっていて、さらに事後評価で組織運営の妥当性などを見ていることは二重ではないかということであるが、確かに中間評価時に我々がはかる組織運営の妥当性と、事後評価においてはかる妥当性は若干ニュアンスが違っている。言うまでもなく、中間評価の場合は、5年間でよりよい組織になってほしいから評価してアドバイスするものである。他方、事後評価の部分は、果たしてスーパーCOEで文部科学省として審査委員会などを通じて採択して、そもそも構想をよしとして行っていただいた事業が、実際に具体化されて実施された後検証として本当によかったのかどうなのか、文部科学省として取り組みの事例を他組織に対して積極的に広げていくに値するものかどうなのかは、しっかり検証しなければいけないと思っている。そういった意味で行っている。

【委員】
 中間評価のところだが、資料1‐5の3に「平成18年度の戦略的研究拠点育成評価WGの中でこの課題の進捗状況を確認する必要性があるのではないかという意見が示されている」とあるが、恐らくこれは「C」がついたからだと思う。一般に「C」とか「B」でコメントが辛口であった場合には、申請者からのレスポンスを受けるというシステムがあるのか。
 それから、「進捗状況を確認する」というのは現地調査みたいなことを含めるのかということについて伺いたい。

【事務局】
 振興調整費の評価においては例年11月頃に結果を取りまとめて、本人に事前に通知する。それは公開する前であるが、その反証の機会は与えている。その話を伺った上で12月のこの場で報告し、その後公開しているので、相手方に反証の機会は与えている。
 例えば今回の東北大学の件も、評価結果が出た直後から先方の機構長と連絡をとり続けている。今回も資料1‐5の審議に先立って、機構長と若干の意見交換をしている。東北大学としては、むしろこういう形で再度説明する機会を得たことを非常に多としているというのが実際のところである。そのような形でコミュニケーションをしながら、評価を進めている。

【部会長】
 恐らく、事後評価の意味は三つの層から成り立っている。一つは、データベースが構築されることが必要であるが、評価者や被評価者の情報や評価結果を、これからのファンディングのときの参考にする。もう一つは、その課題の選考ないし選定を行ったときの評価が適切であったかどうかの判断である。それから、先ほど事務局が言われたプログラムの策定に反映させる。そんな三層構造になっていると思う。

【委員】
 この東北大学のケースみたいな件だが、機構改革に振興調整費を使うというのは、例えば医工連携ぐらいになると、学部長クラスの人に答えてもらったのではどうしようもなく、学長が約束しないと前に進まないと思うが、その点はどうか。

【事務局】
 ちなみにスーパーCOEの中間評価のときには、学長からのプレゼンテーションを受けて評価が行われた。東北大学の場合、今回の5年間の期間の途中で学長がかわるわけであるが、11月には新学長なりから責任あるプレゼンテーションをいただけると聞いている。

【委員】
 東北大学の件だが、「C」評価がついたのは制度の問題ではないかと思う。というのは、特任の教授や助手がいっぱい雇われている。その後、改組して研究科に持っていこうとしても、その人件費を確保するのは一つの大学では非常に難しい。総長が何と言われようと、お金のないものは運営できない。何を求められているのかということがよくわかっていないのではないかと思う。

【事務局】
 確かに非常に大きな話であるが、医工学研究科がつくられる場合の具体的なプロセスは、東北大学として機構改革案とそれに付随する予算要求案をまとめて、文部科学省に申請することになると思う。だから、まずは学内でそういった案をまとめるという段階においては学長のイニシアチブが絶対に必要であるし、さらに文部科学省として私どもも局内で連携しながら、その必要性と意義を要すれば高等教育局なりに訴えたいと思っている。

【委員】
 東北大学の評価にかかわった者なので、あまり機微にわたって話をすることは控えた方がいいかと思うが、最後に発言があった点については、ここに添付されている中間評価の報告書にも明記した。総合評価の最後の段落であるが、自助努力はもちろん必要だが、学内からの支援、それだけではなくて外部の研究教育システムの整備は文部科学省の責任であると。
 この3点を確認した際、学内からの支援について明確な回答が得られず、むしろネガティブな回答であったことから、評価委員会ではこの時点で中止すべきではないかという非常に強い意見もあった。そういうことを勘案した上で、フォローアップをつけたということである。

【部会長】
 資料1‐6だが、これは昨年問題になった点である。これを前提なしに議論すると大変なので、どのように議論したらいいかをあらかじめ事務局と相談した。
 まずは、議長裁量で私の考え方を言わせていただく。一つは、点は辛くつけるが温かいコメントをつけるというやり方である。それから、点は甘くしておいてコメントを辛口でやるというやり方。原理的には二通りあるのではないかと思う。
 要するに、両方とも厳しくなってしまうものもあるが、それはともかく、伸ばし育てるという必要性があると認められるテーマなり人材に対しては、使い分けがあり得るのではないか。
 例えば日本学術振興会でPDとかSPDというフェローシップを出しているが、その中間評価あるいは事後評価でもできる限りコメントを活用する。コメントと評点をうまく使い分けるという形でやって、それなりの効果は出ているのではないかと思っている。去年はどこかのWGから問題提起があったのか。

【事務局】
 複数のWGで、やはり先生たちはこれを見ながら常に悩まれていた。子供の教育の仕方にも厳しい教育と甘い教育があると思うが、それを代表するような形で皆さんの悩みでした。その辺はある程度さじかげんがないと、今年も同様のやりとりが起きると思っている。

【委員】
 若手というのは何歳から何歳ぐらいで、博士号を取った後の何年ぐらいまでの人をいうのか。

【事務局】
 大体イメージとしては、ここでは35歳から40歳程度という感じではないか。PDとして流動化しているような状況で、まだ定職についていないというような層をイメージしている。

【委員】
 「D」評価がついた人はどうなるのか。

【事務局】
 期間の途中で「D」評価がつくと、研究費は打ち切りとなる。「C」については、撤退に向けた準備を始めるような形になる。「A」はもちろんますます伸ばすということもあり得るが、実際の予算状況を考えるとフラットであり、「B」も相当程度の改善を促し、その改善がなされることを前提に、当初予定どおりというような配分になる。

【委員】
 その人だけが評価を受けるのか、その人の指導者みたいな人まで同じ評価でくくられるのか。

【事務局】
 ここで想定しているのは、若手任期付研究員支援制度であり、評価対象は、若手研究者個人である。

【委員】
 採択される人は、応募される若手の人の何割ぐらいか。

【事務局】
 今、それについてはデータを持っていないので正確な数字は言えないが、おおよそ1割程度ではないかと思う。

【委員】
 ある程度選ばれた層の人で、選ばれた時点である程度有望である、あるいは仕事ができるというように思っている人たちなので、そこまで親世代が心配しなくてもいいのかなと思う。
 もう一つは、評価者が悩まれることそのものが評価の制度を磨いていくことなので、どのように行うかとか、どのように記すべきかということをきちんと明文化した形で決める必要はないと思った。
 それから、部会長が言われたコメントを活用するというのは、すごく賛成である。「D」はつらいが、「D」をつけるだけの理由がある人だと思う。だから「A」「B」「C」の人には評価は甘んじて受けてもらい、その後につながるようなコメントを親心で温かい励ましとしてつけてやればいいのではないか。基本的には、選ばれた人についてはそれほど甘やかす必要はないと思う。

【部会長】
 今、どちらかに決めるとか、こうしようという統一を無理に図るよりも、もう少し様子を見てというか、少なくとも今年度この問題意識を共有しながらやって、また改めて議論するということでいかがか。

【委員】
 この文言自体は、引用されているように、基本計画において議論をしてこのような文言を入れたという経緯がある。キーワードは、例えば1.2の1にあるように、創造へ挑戦する研究者を励まし、伸ばし、育てるというコンテクストだと考えればいいと思う。挑戦すること自体がそれほど前面に出ていない状況だったら確かに甘やかすことになるわけだが、そのような議論があったように思う。
 もう一点は、評価者と被評価者が対立するような構図で評価をするのか、それともまさに伸ばし育てるという共通の目標を持って評価するのかという理念的な違いが議論されている。ここでは評価者と被評価者に分かれて、厳密に評価していくというタイプの評価ではうまくいかないのではないかという判断だと思う。

【部会長】
 ただいまの2人の委員の発言を含めて、昨年の問題意識を持ちながら、少なくとも今年度は統一的な基準などをつくることはしないで進めたいと思う。

議題2)評価人材の養成・確保について
 事務局より資料2に基づいて、評価人材養成・確保のための方策案等についての説明の後、自由討議が行われた。
 主な議論は以下のとおり。

【委員】
 我々が考えていたことが非常に要領よくまとめられていると思った。何といっても、3種類ある人材の中で、従来考えていた評価人材はレビューアだけだったように思う。そうではなく、プログラムを設計しそれを運営するというマネジメント人材は行政機関やファンディング機関、あるいは大きな研究機関の企画・評価部というところで非常に重要な役割を果たすわけである。こういう人材を育てなければいけない。
 また、さらに進んだ評価をやろうとすると、分析的手法とあるが、各種のメトリックスを使いこなせる、実際にそれを使って結果を出せる人材を確保しないと、一向に質は高まらないことになる。残念ながら、人材養成をするのは非常に時間のかかることなので、難しい課題から同時並行的に長期的な視点で取り上げていき、大学院の専門課程を整備していくということも早くやらないと、効果を上げる前に随分時間がかかってしまう。
 もう一方で、特に行政機関あるいはファンディング機関の中で評価に携わる人たちの実質的なスキルを高めるという、いわば緊急の課題もある。それらを束ねて同時並行的に解決していくようなかなり欲張ったことを強力に進めないと、事態は好転しないのではないかと思う。
 評価だけではなくて、マネジメント全体あるいは政策全体をカバーできるような幅広い人材を考えている点が重要である。日本の評価制度は、行政改革をした後2001年から、政策評価法とか独立行政法人通則法という全体に網をかぶせる形でまず法律を決めたわけである。科学技術に関しては97年に基本計画をつくることにあわせて評価を導入したわけである。いずれにしろ、先に法律や制度、実施体制をつくれといったようなことが来て、その後、人材が十分に確保されないまま評価が進められてきているのが実態だろうと思う。
 もともと行政に携わる官僚組織に評価というマネジメントシステムをインボルブしたときに、海外の場合にはそもそも官僚組織ではなくて、ニューパブリックマネジメントと通常言われているような経営組織に転換することを前提にした上でプランから取り組めるような経営体制を導入して、PDCAサイクルを回せるようにしている。
 残念ながら、我々の場合にはチェックのところからかなり強引な形で入ってきたということで、その部分についてもさることながら、幅の広いPDCAサイクル全体を回せるような人材を養成していかなければいけないと思っている。
 幸い2001年から始まった行政改革が一巡したわけである。基本計画もその面でいえば2回目になる。政策評価についても一応の見直しは行われたといったような二巡目に入っている。今までは既に設定されている施策なり何なりを評価するという後追いの評価であったのが、二巡目に入るとプランを設定するところから始まってきている。そういう点では、この種の人材が十分活躍できるような状況ができてきたのではないかと思っている。

【委員】
 前回、EUとか英国の状況について紹介したが、SPRUとかPRESTでは評価するための人材だけを育成するのではなくて、もっと全般的な技術マネジメントとか、科学や技術のシステムとか、イノベーションシステムとか、そういったもっと幅広いことを求めている。だから、評価の人材だけではなくて、政策をつくったり、ポリシーの立案を企画したりという人材育成を目指したらいいと思う。
 やはり就職先のことも考えると、政府、独立行政法人、ファンディングエージェンシー以外のところで、例えば産業界などでも役に立つような人材、企業の研究開発マネジメントをしたり、あるいは企業にとっての技術政策とか技術をもとにした戦略をつくったりという仕事ができるような人材育成を念頭に入れた養成システムをつくっていったらいいのではないかと思う。

【委員】
 マネジメント評価人材及び専門的評価人材をどう育成するかということであるが、実は私はしばらく前まではあまりプロフェッショナルな人をつくっても仕方がないのではないかと思っていた面がある。つまり、こういうものは人格が大事であるということを思っていた。私もそうだが、JSTに私自身がプログラムディレクターとして送り込まれたというとおかしいのだが、そういう形で行った。
 それで専門家とは何だろうということが、実はずっと問題であったわけである。きっと私も専門家にならなければいけなかったのであるが、そのときに先ほどから出ているピアレビューアと専門的評価人材、マネジメント評価人材を分けて考えるのは非常に重要であることがわかってきた。
 JSTの中で今までどういうことをやってきたかというと、一つはJSTの常勤の人材そのものを入所試験のときに研究経歴のある人ということに、ここ4年ほどかなり絞って採用してきた。その結果、今、10人ほどの人はドクターを持った研究者であった人たちである。30人ほどがドクターは持っていないが、修士を出て研究開発の経歴のある人という人材である。今現在、ファンディングを担当するのは、ほとんどそういう人たちに変わってきている。
 ところが、今はさらにそれだけでは不足だと思っている。ドクターを持っていれば適しているのかというと、決してそんなことはないことがよくわかってきた。では、そのときに何が必要なのかというと、やはりこういう評価あるいは制度に対して、早く言えば国際的論理が必要である。ちょうどISOと同じような形で、日本がそういうところに伍してやっていけるような形にだんだんしていかないと、論理的に日本が負けてしまうということをひしひしと感じるようになった。
 みんなと連携するのはなかなか難しかったので、昨年、とりあえずJSTの中だけでJST・PO資格認定機構をつくった。この資格認定機構は何をやるかというと、そういうファンディングや評価を実際に運営する人たちを訓練する。週1回ぐらいみんなで集まって夜遅くまで議論するような形で、塾みたいなことをやっている。そういうところで何をやったらいいか、何を調べてきたらいいかということを自分たちで考えながらいろいろやっている。
 それで意識を高めて、論理をしっかり積み上げていき、ちょうど論文博士と似ているが、あるところで試験を何度かやって、JST・POという資格が認定される。その資格に認定された人だけが、名刺的にもプログラムオフィサーと書けるというものをつくった。
 実は、資格は割と重要で、人材をただ育てても、きちんとした資格を与えないとインセンティブが生じない面がある。今ここで提案されている例えば大学院の専門課程の設置みたいなことは、どこかの大学での社会人教育が中心になるかと思うが、ぜひそういうこともやっていただいて、各ファンディングエージェンシーがある程度連携できるような形でやっていければ、ここのところは、特にマネジメント評価人材、専門的評価人材の育て方とレビューアの育て方はちょっと違うので、そういうことをぜひ文部科学省でも考えていただけると非常に強力になってくるのではないかと感じている。

【事務局】
 私どもはこれを考えるに当たり、JSTのPO認定資格制度の話は聞いている。いわゆるマネジメント人材の素養というか、むしろ専門性を高めるということでは、ある意味でバッティングする部分もあると思う。ただ、それぞれのファンディングエージェンシーとか各省庁の特性を持ちながらも、そういった専門性を高めるというニーズがあることが把握できてきているので、どこの人とかいうことではなくて、幅広く専門性を高められるような場づくりというか、そういう機会を与えることが大事だと思っている。
 一方で、文部科学省が実施している研修の中でも、ただ手法を持っているということではなくて、ケーススタディーを通じてそこで学んでいくとか、実務的な実際上の経験がわからないとマネジメントに生かせないということも聞いている。むしろいろいろなケーススタディーを知る意味でも、例えばJSTのように実際にERATOをやった例で何が問題であったとか、そういった実情を含めて議論していけるようなプログラムとか、そういったものまで考えなければならないと思っている。
 予算との関係もあるが、いずれにしてもそういったプログラムを考えていく上では、関係機関や各省庁の情報も十分つかまえて頑張っていきたいと思っているので、よろしくお願いしたい。

【委員】
 マネジメント評価についての質問だが、企業の研究開発は、部門のマネジメントがしっかりできているのかどうかという自問自答があって、3年ぐらい前から経営品質とかISO9000の活動を始めた。その中で、それぞれのアセッサーの方なりにいろいろ評価をいただいてきた。
 最初はどうなるのかと思った。ISO9000の評価をされる方も研究部門はやったことがない、できるのかということがあったが、結果としてはISO9000を取得させていただくことができた。
 既に世の中にあるようなマネジメントの評価をするものと、ここのマネジメント評価は何か本質的に違いがあるのか、あるいはよく似ているのであればそういうものとの関係をどう考えたらいいのか、そういうことを教えていただきたい。

【事務局】
 先ほどMOTの話もあり、確かにMOTは技術経営の研修であり、そういったものを聞いたことがある方々は非常に数多く出ていると思う。
 ここで考えている研究開発マネジメントは科学技術政策とかなり直結できるものである。つまりどういう研究をやるかという先があまり見えない、あるいは新しいものをつくっていくという場合、どのような体制でやっていくのかというそちら側の話であったり、実際にそれを行うにはどういう体制、組織でやっていくかというような、いわゆるMOTで言われるようなマーケティングとか事業化などとは違って、それぞれが場合によっては手づくりに近いような部分はかなりあると思う。
 先ほどケーススタディーということを言わせてもらったのも、必ずしもケーススタディーがそのまま生かせる例は少ないかもしれないが、日本だけではなく、場合によっては海外の事例も含めて見れば、その中でうまくいっている例もあるのではないかと思う。
 今回、このようなプログラムの提案をしているのも、これまで科学技術政策や研究開発プログラムを日本全国で見てみると、確かに大学でもいろいろやっている。ただ、その中でシラバスというか中身を見てみると、評価の部分があまり見えてきていない。マネジメントをやったが評価は抜け落ちている、あるいは見えていないということで、そこのところをきちんとやっていきたいということである。プログラム開発はここでは新規に考えていくことと、既存のものの中にうまく評価を取り込んでいく部分で考えていきたいということである。
 結果として、出てくる人材は企業にも生かせる人材をつくれるようなことを考えたいと思うが、そこはまた新たなプログラムということで考えられると思っている。

【委員】
 先ほどの質問は、非常にいいポイントを質問されたと思う。マネジメントのことを考えるときには、少なくとも二つの側面がある。あるいは、三つと言ってもいいかもしれない。マネジメントの対象になるもの、例えば施策評価をしようとすると、その施策それ自身である。もう一つは、マネジメントをつかさどる組織の問題がある。それと人材の質の問題ということになるかと思う。
 そういうときに例えば施策評価を例にとって考えてみると、施策対象を論理的に把握するというアプローチを徹底していこうとしているのは、アメリカのPART法である。それに対して、イギリスでは、ISO9000のコンセプトだが、施策評価に携わる官僚組織の中の組織過程をうまく整備できるような設計をして、具体的な運営にそれを落としていくというアプローチである。大きく分けると、その二つのやり方が実際に機能していると思っている。いずれもまだ道半ばだと思うが、ここで考えるマネジメント評価人材はそれよりもはるか手前のところである。
 そもそもマネジメントのコンセプトがどういうものを対象にして、特に研究開発に係る評価をやる場合にはその対象はどういう特色をとらえなければいけないかとか、プログラムを運営すること自体が一つの組織過程にあるわけだが、日本の場合、それらがファンディング機関全体の中でどのように意思決定されていくのかといったようなことを考慮しなければいけないのだというぐらいのまずは話ではないかと思う。
 今の論理化するというのはロジックチャートという手法であるが、それを全体に課すことを決めても、ロジックチャートをちゃんとつくれるぐらいに行政内部の人たちがスキルアップしていないと、とても実効性を持たないわけである。
 イギリスは随分苦労したわけであるが、組織の質を改善していくためのさまざまな仕組みを導入して、ISO9000のようなタイプの改善を繰り返し実施してきた。そういう経緯の中で、ようやくマネジメント人材がそれなりの力を発揮してくるわけである。
 我々はその入り口のところで、まずは何をやらなければいけないのかということを理解している人たちをつくるというぐらいのところではないかと思う。

【委員】
 このような評価人材を養成するためには教育だけではない、やはり修士とか博士課程まで教育するためには研究を続けなければいけない。評価の手法に関する研究とか、イノベーションシステムに関する研究とか、技術の予測、技術の軌跡、ロードマッピングという研究を続けなければならない。例えば、SPRUなどでも先端的な研究をしている。ここにプログラム開発とか、カリキュラム開発の助成とかあるが、やはりこの分野の研究に対しての助成も必要だと思う。
 日本だと、科研費などの場合はこの分野に相当する細目がない。経営とか経済とか、ほかのところで応募してもなかなか通りにくいわけである。この分野を発展させるためには、研究費が必要だと思う。

【部会長】
 さらに、ご意見・ご提言等があったら、事務局にメール等でお知らせいただきたい。それらを踏まえながら、もう少し事務局で議論を積み上げてもらうというプロセスを踏みたいと思う。

議題3)その他
 資料3の第24回研究評価部会の議事録に関して確認が行われ、特段の意見がある場合には、8月11日までに事務局に連絡するものとし、特に問題がない場合には、公開の手続きを進めることとされた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)