研究評価部会(第21回) 議事要旨

1.日時

平成17年6月27日(月曜日) 9時30分~12時30分

2.場所

パレスホテル会議室 3‐D号室

3.議題

  1. 「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

 石井部会長、岩田委員、大泊委員、加藤委員、北澤委員、国武委員、後藤委員、諏訪委員、西島委員、花木委員、番場委員、平澤委員、元村委員、若見委員

文部科学省

 科学技術・学術政策局 有本局長、植木基本計画準備室長、内丸計画官、岡村評価推進室長
 研究振興局 里見学術企画室長

5.議事要旨

1)「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」の見直しについて

 評価指針の見直し案について、事務局が資料1に基づき説明し、審議が行われ、部会案として決定された。なお、出された意見を踏まえた修正については部会長に一任された。
 主な議論は下記のとおりである。

1.「はじめに」「第一章」について

【委員】
 1点、細かくなるが、実は非常に大きな問題を生じているということで是非伺いたい。後ろにいろいろ具体例として、実際の評価に当たってどういうことをしたらいいかということが書いてある。しかし、4ページに「本指針を参考に、研究開発の評価を適切に進めることが必要である」と書いてあり、この「参考」というのはどういうとらえ方をするのか。「参考に」というのはなるべくそれに近づけろという意味ではないかという解釈がなされて、「参考に」の「参考」が何を意味しているかというのが非常に問題であり、そこの解釈をこの評価部会でははっきりさせてほしい。

【事務局】
 もともとこの評価については、初代の大綱的指針から始まって、国として評価のルールを定めながら、それに沿ってやっていきましょうということで進んできた。それから10年ぐらい経って、一つは評価そのものが科学技術コミュニティーの中で位置付けられてきた。そういう意味で、むしろ個別にきちんとしたガイドラインを設けてそれに従いなさいというよりも、いろいろな状況に応じていろいろな工夫をしていくべきであるという考えになってきたと理解している。そのような流れが一つで、もう一つは、今、話が出たような独立行政法人、もしくは先般でてきた国立大学法人のように、国とは別の法人格を持ってより自由にやっていく団体ができてきたという経緯の中で、特に独立行政法人のような団体については国のガイドラインを直接的に適用するというよりも、そもそも大綱的指針の直接的な対象ではないということを前回の指針でも冒頭に掲げている。あくまで内部部局に直接適用する、ほかの法人についてはこれを参考にということで進んできた経緯がある。
 そういう意味で、この「参考に」ということは、今、話があったように、どうしても現場のほうでこうすべきではないかということがあったときには、自由にそれを優先していくということを概念としてきた。
 一方で今まさに指摘があったように、ここに書いてあることによって逆に事務方が、特に現場がある種過重防護にしてしまうという問題もこれまでの議論の中で出てきた。
 そういう中で、「参考に」というのはそういう趣旨で書いてあるが、そういう趣旨をより現場に理解していただくべく、我々のほうから現場に赴いて説明している。「参考とする」というのは、今申し上げたように、あくまでも現場の判断を優先していくことを前提にすると思っていただいていいのではないかと思っている。

【委員】
 私もこういった文章の表現のあり方にはあまり詳しくないのだが、「参考とすることが期待される」と書いてある。文部科学省が「期待する」と言って国立大学法人に示した場合、恐らく中央から遠ければ遠いほど、文部科学省がそうしろと言っているという理解になってしまう。
 通常、文部科学省からいろいろな文書を出すときに、参考にするとか、期待されるとか、そのような幾つかの言葉の使い分けがあるのか。

【事務局】
 行政全体の責任は負いかねるが、評価の世界ではそういう趣旨で運用されてきている。
 ただ、文部科学省も非常に広いので、各行政の分野ごとにそれがそのまま「参考とする」ことをもってこうだという明確な定義づけがあるものではないと思われるが、ここは先般来、第2期の基本計画の時代から議論があったところである。
 一つの考え方として、実は書けば書くほど、逆に現場の方はそこに縛られてしまうという問題がある。むしろここはその趣旨をいろいろと現場に理解してもらえるような活動を通じて誤解を招かないようにしていくというのが、一つの今後の方向としては妥当かと考えている。

【委員】
 先ほどからの議論で、後ろのほうでの例示のところをいろいろ多様にするのか、あまり書かないのか、解決するためにはそちらかもしれない。

【委員】
 非常に抽象的な文言だと、どうしたらいいのかと逆に行政指導を仰ぎたい気持ちが出てくるので、ある程度この範囲ですよという例示をすることは非常にわかりやすくて、そういう意味では全体的に指針が受け取りやすくなったのではないか。
 ただ、「参考とする」という言葉をどの程度を強くとるのかというのはなかなか難しい問題で、これは個別の文言とは別に、この指針はどういう意味を持つかというのを何か別の形で示さないと難しいのではないか。

【委員】
 行政の文書の中に「本指針を参考とすることが期待される」というような文章は多少異例ではないかと思われるが、趣旨としては非常に和らげていると理解すべきであると思われる。
 ここでの議論は一旦この文章でおいておき、ここはやわらかい意味であるという理解で進ませていただきたい。その趣旨が後の書き方にうまく生かされるように、後で議論をいただきたい。

【委員】
 5ページの「事務事業」について、注を見ると「事務及び事業」と書いてあるが、なぜ本文のほうは「及び」が抜けているのか。

【事務局】
 文部科学省政策評価基本計画の記述をそのまま引用した。

2.「第二章」について

【委員】
 7ページの2.1の「評価支援者等の活躍が今後益々重要になる」と書いてあるが、「活躍」というのは情報活動、スパイみたいに活躍するような感じもあり、例えば「役割が重要になる」というような表現のほうがいいのではないか。

【委員】
 8ページの2.2.4の「その理由を明確にするとともに、当該利害関係をもつ評価者のモラル向上や」と書いてある。「モラル向上」と書くと、いかにも今までの利害関係者でモラルが落ち、そういう評価をしていると受け取られるので、「モラルの維持」という形がいいのではないか。

【事務局】
 そのような表現に変更する。

【委員】
 8ページの2.2.4の三つ目の段落で「また」で始まるところの2行目に「なお、やむを得ず利害関係者が加わる場合には」と書いてある。利害関係者であれば、加わるのはまずいのではないか。利害関係者の線引きをすることは難しいが、とにかくそれぞれのプログラムなり機関なりにおいてこれは利害関係者だという定義をして実施すると書いてあるわけで、それにもかかわらず利害関係者の部類に入ってしまう人がいるというのはまずいのではないか。

【委員】
 今の部分だけを読むと、「利害関係者が加わる場合には」だが、その前段が「性格に応じて予め利害関係の範囲を明確に定める。なお、やむを得ず」ということになっているならば、利害関係者と書かざるを得ないのか。
 利害関係者が加わるということはないのだが、明確に定めてしまったときに「なお、やむを得ず」というのは見直した方が良いのではないか。

【事務局】
 大綱的指針もこの書きぶりになっているが、例えば「懸念がある場合」というような文言を入れるか。

【委員】
 「利害関係者とみなされる懸念がある者が加わる場合」というのはちょっとくどいが、一応そのあたりで工夫してほしい。
 今、JSPSでも科研費の利害関係の定義を議論している。範囲を明確に定めるとなると何親等以内などと言わなければならないとか、師弟関係も一遍昔に師弟関係があったらずっとだめなのかとか、いろいろ頭の痛い問題ではあるが、書かざるを得ないことは確かである。

【委員】
 8ページの2.2.4の「評価者には評価内容等の守秘の徹底を図る」とあるが、評価者に対する評価は要らないのか。というのは、評価者の中には時々結果を耳打ちしたり、いろいろな事例が少なからずある。
 これは自己顕示とか、いろいろな要因はあるが、そういうことも含めてその人が高く評価したものが大した成果に結びつかなかったという事例は一つの失敗例になる。そういうことをそのまま各評価実施機関の主体性に任せていいのか。

【事務局】
 直接の答えにはなっていないが、7ページの2.2評価者のところで、評価者自身の責任と自覚という観点のものはここで少し記載している。

【委員】
 おそらく、評価実施主体がデータベースを拡充するということに最後は尽きるという気がしている。なかなかそういう層が厚くないものだが、評価者を探し出すのは大変難しいと思われる。そのときに、やはりその方の発掘したテーマがどういう結果に終わったかということも含めたデータベースの拡充ということになるのではないか。あとは前文でこういう縛りがあれば、性善説でいくしかない。ただ、実態を見るとそうでもないため、そのことを心配している。

【委員】
 適切な評価者というのは本当に難しいことは確かである。後で事務局と相談する。

【委員】
 同じところだが、若手研究者のところで、青字の「適宜これに対応する」というのはどういう意味か。

【事務局】
 先回では「積極的に推進する」とあり、ここは若手をどんどん入れるのはどうかというような議論があった。もちろん若手についてなるべく活用したいのだが、そのときにはいろいろな留意事項等も考えながらということでこの表現になったが、確かに、「適宜これに対応する」というのはどっちにとれるだろうという懸念がある。

【委員】
 「適宜これを考慮する」でどうか。

【事務局】
 そのように変更する。

【委員】
 7ページ目の2.1の「評価支援者等」の「等」だが、前からずっと読んできて、文章の上から何を指しているのか。

【事務局】
 支援者を個人としてとらえるだけでなく、評価支援機関も含むということで「等」と入れている。

【委員】
 「評価支援者等に対する適切な支援等が必要である」という最後の文章が「等」「等」とあり、ちょっと工夫をお願いしたい。

【事務局】
 検討させていただきたい。

【委員】
 今の「評価支援者等に対する適切な支援等」のところですが、後ろの「支援」という言葉はほかの言葉を探したほうがいいのではないか。
 つまり「支援」という言葉が二つ使われていて、主体も客体も違うことなので日本語として読みにくいと思われる。

【事務局】
 検討させていただきたい。

【委員】
 11ページの2.3.4.3基礎研究等の評価だが、基礎研究の評価は非常に難しいが、ここで基礎研究については「評価に陥ることのないように留意する」ということが書いてある。
 「その」以下だが、「その際、科学的・技術的観点からの評価が基本となるが、社会的・経済的観点からの評価を考慮すべきものがあることに配慮する」ということは、基礎研究について社会的・経済的観点からの評価を考慮すべきものがあることに配慮するというのは重要だということをここで書いているのか。

【事務局】
 その通りである。

【委員】
 そうすると、基礎研究について科学的・学術的観点で評価し切れないで、社会的・経済的観点から評価を考慮すべきものがあるというのは具体的にどういうことか。
 基礎研究について社会的・経済的観点から評価するのは非常に難しいという印象がある。
 例えば16ページの評価方法では「例えば、基礎研究においては、基本的に、ピアレビューにより科学的・技術的な観点を重視した評価を行う。一方、より具体的な応用や用途を想定する研究開発には、科学的・技術的な観点のみならず社会的・経済的観点を重視した評価を行うことが適当である」というのは当然だと思われる。
 基礎研究といえども社会的・経済的観点から必要だということを強調し過ぎると、評価のほうが難しく、後のほうで書いているので、この部分で「その際」以下は必要ないのではないか。

【事務局】
 現行の大綱的指針の中で「その際」以下がついている理由については事実関係が明らかにならないが、最近の基礎研究をめぐる政策議論の中で、文部科学省の科学技術・学術審議会の基本計画特別委員会でも、また総合科学技術会議でもそうだが、基礎研究には大きく2種類ある。(第3期科学技術基本計画の重要施策(中間とりまとめ)机上資料の6ページ、7ページを参照)一つは、(1)本当に多様性を確保しながら新たなものにチャレンジしていくような、研究者の自由な発想を主とした研究領域、もう一つは、(2)やはり将来的な政策の方向性に合致した方向で進めていく基礎研究である。
 今まで基礎研究についてこの二つの概念がかなり混在したことによって、本来評価すべきものに別のものが混在したり、逆にあるべきものがなかったりというようなところがあり、今後、そういうところを政策としては明確に峻別しながらおのおの適切に進めていこうという議論が、今、大きな流れとしてはある。そういう意味で、現行の指針から入っている表現ではあるが、今日的にはこの部分はある種ますます重要であるという気もしている。
 そのような趣旨からも、「その際」以下のところは書いておいてもいいのではないかと考えている。

【委員】
 「その際、特定の政策目的に基づく開発の基礎研究については」という限定がつけられればつけておいたほうがいい。

【事務局】
 そういう記述を加えたほうがより正確に趣旨が通ると思われるので、今の指摘を踏まえて文章は少し検討する。

【委員】
 今の点に関係して、例えば環境絡みの研究は社会科学的、人文科学的、自然科学的な研究が非常に密接に絡んでいる。要するに純科学技術的ではない場合に、それは特定の政策目的ということに入るのか入らないのか教えていただきたい。
 基礎研究を自由な発想に基づくものと特定の政策目的に基づくものと二つに分けられていると、そのどちらにも入らなくなるおそれがある。

【事務局】
 政策目的の話と多様性の確保は分野の話とクロスしてかかっており、必ずしもどちらかの分野をどちらかにはめるということではない。

【委員】
 さっきより明確にするために、(1)のカテゴリーは社会経済を入れず、(2)のカテゴリーは入れて書くと、それぞれの研究をどちらかにカテゴライズしなければいけなくなる。

【委員】
 基礎研究の中の話と、応用研究とか開発研究といったようなものと混同しないで議論したほうがいいのではないか。
 環境研究というのは、もちろん基礎的な部分はあるにしても、主には応用とか開発というイノベーションに関わるような部分とか、そちらのカテゴリーに属する研究がかなりの部分を占めているのではないか。
 基礎的な研究の中で、今回、文科省は、従来純粋基礎と言われていたものと目的基礎と呼ばれていたものを区分して、取扱いをより詳細に分けていきましょうという指針をつくっている。これ自身は一歩前進だと思っている。
 基礎研究は、研究開発論でいうともっとバクッとした概念のため、それをもっと分けて局面に合わせたようなマネジメントができるようにしていこうというふうに通常は考えて、4種類ぐらい、さらに2種類加えたぐらいの分類をして議論をしているが、それはいかにも詳細になり過ぎてしまうため、純粋基礎、従来基礎と言っていた部分の本質的な部分と、その中ではくくれないような、しかし基礎的な研究の部分を目的基礎として、第2の重要な領域を置いたと理解しておけばいいのではないか。政策全体を区分する概念を立てたので、それに従って評価指針もより詳細にしていくことのほうが望ましいと思われる。

【委員】
 要するに、2のほうについてこういうことをつけ加えておくことが、1のほうに社会的・経済的観点が入り込んでくることを防ぐというメリットはある。逆にこれをつけ加えることによって、2のほうがもっぱらそれによって評価されるほどの書き方もしていないので、分けておいて、デメリットはそうないのではないかという感じを受けている。

【委員】
 10ページの2.3.3.6評価の実施の下の青字で書かれているところの2行目で、「評価対象や目的に応じて、論文被引用度、特許取得状況等の数量的な情報」とある。
 先ほどの細かい例示を挙げるとそれに引きずられるというのに随分かかわってくるが、多分インパクトファクターのほうはかなり議論されていると思うが、特許に関して最近かなり重要視されてはきており、「特許の取得状況」と書かれている。特許は申請してから取得につながるまでかなりタイムスケールが長く、数年かかるものもある。「取得」と書くと、評価には間に合わない感じがする。
 特に、我々が評価の中に書くときに、「申請中」と書く。申請するのもかなり大変なため、それでもいいぐらいのところだと思っている。「取得に向けた取組」とか、書き方はよくわからないが、ここら辺の議論をお願いしたい。

【事務局】
 特許取得には最低でも1年とか1年半とかかかるわけで、文言は検討させていただく。

【委員】
 先ほどの基礎研究の議論のところで、中間とりまとめに出ている7ページの(2)特定の政策目的に基づく基礎研究というのは、国家の安全保障とか国益の確保といった視点の戦略的なあるいは政策的なものは対象に入っているのか。はるかに高度な政治的な判断の問題になるのか。

【事務局】
 そういう国家的・社会的課題に対応したようなものを対象にしているので、概念としては入っていると理解している。

【委員】
 我々が一般にどれほど戦略性とか国家の将来に対して見識を持って議論ができるような立場にあるのかどうかわからない。
 そういうときに基礎研究として一くくりにして、本来、国が50年先、100年先を見据えて立てるべき政策等に関して、こういう議論をまとめてしまっていいかどうかということに少し疑問がある。
 我々が普段、大学の中で素朴にやる研究等を基礎研究と言う定義はもちろん正しいと思われるが、それはそれで素朴にやっていいと思っているが、問題はそれでも研究者を勝手に走らせるとどこに行くかわからないし、国の戦略とか国益の確保といった視点ではどうするべきだというような長期的な視野がどこかにないといけない。それは我々が判断することかというのが基本的な疑問である。この国の中で、そのことをどこかで考えているのか。それがあればいいのだが。

【事務局】
 最近のいろいろな取組の中で、例えば国の安全に関わるようなさまざまな研究、古くは防災のようなインフラに関わるものから、最近ではさまざまなセンサーの技術開発もある。そういう中で、全く新たな原理に基づくセンサーの開発のようなものが、やはり何らかの安全の確保に役立つようなケースもある。
今、科学技術振興調整費、その他のプロジェクトの中でも、例示に挙がったような国の安全に関わるものの領域に入るような基礎的な技術開発も一部既にあらわれつつある。今、指摘があったように、非常に難しい問題ではあるが、そういうような研究については、大きな流れの観点からもやはり評価が大事ではないかということがまさに議論されつつあると思っている。  そういう意味で、非常に難しい問題ではあるが、今後、この評価の場でも、そういうことも念頭に置きながら進めていくことが大事ではないかと考えている。

【委員】
 お願いしておきたいことは、結局、ある種の流行で、一時期までは基礎研究重視ということでそちらに随分振れた。最近は、またアプリケーションということに逆に振れている。そういうダッチロールが結局は国の安全や将来性を損なうのではないかという心配がある。軸のぶれないような長期的な国益の確保というようなところがどこかにないといけない。
 こういうところで文言の議論で、いつの間にか結果としてダッチロールになってしまったということは避けたい。

【事務局】
 今のは大事な指摘で、この科学技術・学術審議会の中間まとめのときも大分議論した。 中間取りまとめの81ページを見ていただきたい。第2期基本計画のときには基礎研究をふわっとした形で定義しており、だからこそ今、おかしくなっていると思っている。あるいは、科学技術・学術審議会での議論もそういうところから出ている。
 むしろ一番左側の自由発想基礎研究、研究者の自由な発想に基づく研究は多様性をきちんと確保し、ファンディングもサイズも確実に確保して、その上で、まだ最終的に社会的・公共的価値とか経済的価値には10年、15年遠いが、それを出たものは特定の政策目的に基づく基礎研究というフェーズをつくって、ここはファンディングも変えるし、行政側も、ファンディング機関も、それを受けようとしている申請者側もフェーズが変わっていることをきちんと意識した上で、評価も含めそれぞれを実施する。
 このようにしておかないと左側の多様性の確保もおかしくなるということで、これをはっきり打ち出そうということになっている。もちろん総合科学技術会議でもまた半年ほど議論があるが、少なくとも科学技術・学術審議会、あるいは我々事務方はそういう意識でいる。
 先ほどの疑問に対して、あるいはご懸念に対しては、今こそ日本がフロントランナーに立って基礎のオリジナルなものをきちんと成長させていく。それで最終的に社会的・公共的、あるいは経済的価値に結びつけることが大事だろうというかなりはっきりしたメッセージを出しているつもりである。
 けれども誤解を生じたのは、政策目的基礎研究というのがいかにも国が何かやれということに基づくということよりも、むしろ最終的な価値を、経済だけではなく、社会にインパクトを与えるものを見据えた上での基礎研究というフェーズがあるということで、今日の議論からはちょっと外れていますが、ぜひそこはご理解いただきたい。

【委員】
 基礎研究には実はいろいろあり、少なくとも2種類を区別しなければいけないというところから審議会でもかなり議論をした記憶がある。

【委員】
 今の話と関係するのかもしれないが、研究開発というときに、大学に戻ったときに「大学では開発は行わない。研究だ」と言われたことがある。今の文言では研究開発として、一つの言葉として、一つの概念で取り扱われるのか。

【委員】
 R&Dと言われるときには、どちらかというと(2)のほうのRが想定されているのではないか。産業界でR&Dと言われる場合、どういうニュアンスを持っているのかというのはあまり詳しくないが。

【委員】
 対となる言葉の取扱いがよくわかっていないのだが、安全安心と中ポツもつけずに使われるときがある。安全は科学的なもので、安心はエモーショナルなものである。そういう対となる言葉がこの中でかなり適当に取り扱われていると思われるが、その辺をもう少しはっきりされたほうがいいのではないか。

【委員】
 R&Dに関しては30年来、議論が続いている。原理的にはRとDは別物だとして、&で結んでいるわけで、別の概念だとしている。ところが、日本では開発と言わないで開発研究と言ってきた。これは英語に訳すときに非常に困る。いろいろな説明を加えないと、その中身が伝わらない。独特の開発研究という括弧つきの概念を、特に民間企業でつくってきたということがある
 一方、ヨーロッパでは、Dの部分に実用化とかそういう部分を含めずテクノロジカル・ディベロプメント、RTDという言い方に限定している。
実用化、イノベーションに関わる部分というのは、それプラスIとして、イノベーションの有無を概念として分けている。そうすると、RTDというのはサイエンスコミュニティーの中で議論できる話である。イノベーションになると社会経済的なインパクトであるとか、そういうややこしい問題をいろいろ考えなければいけなくなり、より広いパネルで議論していかなければいけない。このようにして政策対応の仕方は変わってくる。
 言われるとおり、まだR&Dとか、開発研究とか、ヨーロッパ流のRTDとか、今、こういうものが概念として共存しているのが日本の現状であろう。一気に整理するのは難しいので、こういう議論を重ねながら、だんだん認識として深めていく以外にないのではないか。よほど文言の中で誤解を招くところがあれば、それはこの際チェックしておくべきだと思われるが、もう少し議論を深めるために、3年ぐらいこのまま行ってみてというような状況ではないかと思っている。

【委員】
 特許の件だが、特許の評価が非常に難しいのは、全く適当なものでも、申請者が申請すると特許としてかなりの確率で認めれる。
 これはサイエンスコミュニティーに対する影響も特許というのはほとんどない。申請者が申請費と維持費で損をするだけである。ということで、ものすごく適当なものが特許として成立してしまう。そういうものを科学的な評価の対象としていいのか。

【委員】
 もともとこれが登場してきた経緯は、副次的なのではないか。要するに、論文偏重みたいなことに対するアンチテーゼとして特許みたいなものも一つの指標にはなるのではないかということである。論文も論文の数だけで問題になるわけではなく、特許も、特許の申請数で片づけるわけにもいかない。あくまでもこれはインデックスであるというのは大前提である。

【委員】
 危惧している点は確かにそうである。ただ、逆に言うと、産業界から見ると、論文にもいろいろなものがある。
 特許というのは、ご存知のように新規性、進歩性、そして産業化という3点がそろっていなければいけない。産業化のほうは「産業化に役立つ」という一文が入ったし、実証されている。本当だったら特許はそれなりの戦略を持っていなければいけない。
 さらに、国内出願だけでいいのか、国外出願はどうするのかということはいつもある。
 それから、先ほど出たように、私も特許の取得という言葉はかえって困るのではないかと思われる。特許出願と申請があって、国内と国際特許ということがあると、難しい問題である。
 ただ、大学の先生方に、今は法人化に向かって、産業化に向かった特許の知識を深めていただきながら、それを意識しながら研究と開発を進めていくという形であるので、特許が持っている不確実性というのは戦略の一環だと考えてもらえばよいのではないか。

【委員】
 特許という言葉がここに入ってきた理由は、昨年の科振費か何かの評価のときに出てきた話である。評価される側の人が、論文が1本も出ていない。出したいが、特許を出すまでは論文は書けないということで、それを救うものは何かないかということがあったと記憶している。そういう意味では、特許も論文も同等に扱わないと、産業化につながる研究をやっている方にはかわいそうなのではないかという議論があった。
 先ほど言われたが、特許はその戦略を考えながら出すから、本当にそれが重要かどうかを出すためには、その機関も責任を負うべきものだと思われる。これはかなり重要ではないか。

【委員】
 防衛的にとにかく出しておくという特許も多分あるので、一概にはなかなかいかない。いずれにしても、評価の場合のあくまでも指標の一つであって、直ちに特許が多いから立派ということにはならないということは当然の前提であろうと思っている。

【委員】
 2.4評価結果の取扱いだが、評価は何のためにするかといったときに、評価結果の取扱いによって随分サイクルが変わってくる。そのときに、評価をどう使うかというのはこの文面でいいとは思われるが、ただもう少し充実しないとだめなのではないか。
 評価のやり方に関しては、9ページにもいろいろな手法が記載されている。ピアレビュー法とか、評点法とか、いろいろ親切だが、評価結果の取扱いは単に次の研究への資源配分等への適切な反映について検討するというだけになっている。
 そこらあたりが現時点ではこれで仕方がないかもしれないが、ただ、日本全体としての指針という意味であれば、次回の改定までには評価結果の取扱いをもう少し充実させることが要るのではないかと思っている。
 評価結果を単に資源配分するということは当たり前なことである。評価も評価するということだけに対して、その方法について今までいろいろ議論してきたが、評価結果の取扱いについても今後、議論が要るのではないか。

【事務局】
 ここの点については、先回は1ページぐらいかけて、研究開発施策、課題、機関、研究者それぞれに事前、中間、事後、追跡それぞれの活用の仕方を列記していた。
 ここを凝縮するときに、若干短めにし過ぎている部分もあるかもしれない。もう少し書きぶりを充実させてみるということで検討させていただきたい。

【委員】
 この件については、科学技術振興機構などでは具体的に大問題になっている。 それは例えば課題評価において、その課題評価が非常にいいということで評価されても、はいおしまいと、それで本当におしまいになってしまうのが通常です。
 日本では、競争的研究資金がアメリカの10分の1であることによって、一旦その期間が終わると確率的に合格しない人が多い。
 そうすると、そこで研究が途絶えてしまい、研究者からすればある年までは予算がもらえて、そこからしばらくは我慢するということになっている。それがアメリカと日本の競争的研究資金の一番の差である。
 ファンディングエージェンシーである科学技術振興機構からすると、課題が終わる年というのは最終評価をやっているが、むなしい状況である。しばらく前から、継続ということをこの評価指針に従ってスタートしているだが、それに対して、科学技術振興機構は一たん採用した人たちをファミリーとしてかわいがっているのではないかという批判を受けている。そういう批判が多くなってくると、機構としてもぶれて、そちらに配っているお金を新規課題を採用することにむしろ使うべきではないかという議論もある。
 具体的にはここの表現がどうなるかによって、つまり最終評価がきちんと生きるようにと書いてあれば、その文言を根拠として継続課題といったようなものをより考慮することになる。そうでなければ、継続をやめなさいというほうにぶれてしまうという問題がある。

【委員】
 日本学術振興会のほうでは、今、逆のことがまた問題になっている。基盤研究Sで5年もらうことが約束されているのに、2、3年目に特別推進研究に応募して、そちらに移るという例がある。つまり先が保証されていないから、早い段階からあせってアプライして、それが通ってしまったということである。
 とにかくそういう具合に、事後評価が次のステップアップにどういうふうに結びつくかということについては、かなり難しい問題がある。日本の場合は、スクリーニングをしてきっちり評価して、よければ次に進んでもらいましょうというシステムが、まだきちんとした形でシステマティックに構築されていないという問題がある。
 どういうふうに評価を活用するかという点については、ご指摘の趣旨を少し踏まえ、前回案に加えて、将来に向かってシステムがきちんと構築されていくように考えるといった制度論的な話をもう少しつけ加えるぐらいのことで、前向きの姿勢を出す形で検討させていただきたい。

【委員】
 13ページの2.5の「萌芽的研究、比較的小規模な研究云々」という項目があるが、例えば萌芽的研究は現時点で事後評価は行っていないのか。

【委員】
 これは科学研究費についてはやっていない。この人たちが次の基盤研究にアプライするときに、前に何をもらっているかというのが書類の上に書かれており、必然的にそれは評価されて次のステップアップに結びつく仕組みである。
 今、言った大型のものについては、先ほど話があったように、次につなげていくのは、今までもらっていたことから事後評価をしてからアプライしなさいということで1年あいてしまうということだが、萌芽的研究についてはそれがないため逆に上へつながっている。
 次のステップの事前評価、つまり採択をめぐる審査が事後評価を兼ねているという構造になっているという意味で、事後評価を独立に行っているわけではないということである。

【委員】
 例えば競争的研究費ではなくて同じ機関内のお金を使ってやるものでも、萌芽的研究の事後評価は必要ないということでいいのか。
 例えば科研費であれば、ステップアップするときの事前評価が事後評価を兼ねるということで多分矛盾はないだろうが、萌芽的研究というのはまさに芽生えであるから、大化けするかもしれない。大化けするかもしれないという判断を研究者その人に任せてしまうと、大化けするものを見逃す可能性はないかという心配と、もう一つは額が小さいからいいかげんでいいというものでもないため、過重負担を除くという視点はもちろん必要だが、「特に必要な場合を除き」とまで言って、つまり原則としてやらなくていいと言ってしまっていいのか。

【委員】
 ご指摘の点は全くそのとおりだが、ここは科学研究費のシステムを念頭に置いて書かれている。そうなると、萌芽的研究、若手研究、基盤研究C、それからBが比較的小規模というべきかどうかわからないが、少なくともCぐらいまでを念頭に置いてここに書かれている。これは別に固有名詞ではなくて一般的な書き方であるから、言われるとおりのことがほかのところで起こり得るかもしれない。
 これを「中間・事後評価を省略する」で切らず、「次へのステップアップにおいて、きっちり事後評価が前提になる」とか、「行うような仕組みも考えられている」というような書き方にすれば、原理的には評価されると解釈できる。

【委員】
 先ほど言われたのはそのとおりだが、結局、最後の得失を考えて、萌芽的研究の場合にはまだ研究をキャリアとしてスタートしたばかりの若い人たちに萌芽的研究をなるべくチャレンジグにやりなさいということで設けられていることもあって、それを評価すると、現在の評価のニュアンスからすると、どうしても彼らに割とチャレンジングなテーマで萌芽的研究を出すことをヘジテートさせる。その得失を考えて、現時点において評価はむしろしないほうがいいだろうという判断が科研費では下っていると理解している。
 ただこれは、みんながいずれ評価を割と気軽に考えて、今回はうまくいった、今回はだめだったと、うまくいったのは確率20パーセントで十分だよなという感じでとらえられるような社会の雰囲気になれば、それはむしろ入れていくたぐいのものではないかと思っている。

【委員】
 今回の見直しの主眼は創造的な研究を伸ばし、励ますというところである。まさに萌芽的研究は多分どちらにしてもそんなにお金をかけなくてもいいものであるから、創造的な研究なら伸ばし、研究者を励ますような評価指針に見直しましょうということの見直し作業を我々はやっている。それとの整合性を考えると、現状は今言われたとおりかもしれないが、それでいいのか疑問に感じる。

【委員】
 いいものを伸ばしてやるほうの評価をやったらどうかというご趣旨と思われる。

【委員】
 その通りである。省略することで折角の芽がつぶれているものがあるのはもったいないという気持ちで聞いていた。
 ひょっとすると、萌芽的研究という言葉は、萌芽的な性質を持つ研究というふうにとらえており、その後の小規模な研究とか基盤的経費を財源とする云々というのはお金の規模で特徴づけている研究なため、並べることがおかしいのではないか。

【委員】
 「ステップアップするときの評価でいいものはどんどん発掘していく」という言葉を後につけ、システムを知っている人はこれでいいが、科研費のことをあまり具体的に知らない人は、今言われたようにかえって見捨ててしまう結果になるのではないかとか、そんな意味になってしまう。

【委員】
 科研費だけではなく、それぞれの研究機関に萌芽的研究はあると思われる。非常に小さい研究は、個人の研究業績のところで十分チェックされている。そのため、こういう研究評価の指針に沿ったものだけではなくて、中でも十分チェックされていると思われる。

【委員】
 今の指摘の部分も含めて、いいものは高く評価され、それなりにその研究者は次に報われるんだという仕組みのことについて言及したい。

3.第3章について

【委員】
 16ページの評価方法で、先ほど言ったように、科学技術的な研究を中心にしている指針であることは明らかだが、3.2.1.3の「例えば、基礎研究においては、基本的に、ピアレビューにより科学的・技術的な観点を重視した評価を行う」とある。
 先ほど環境研究の例を挙げて、それは応用的な要素が強いという話は確かだが、基礎研究においても社会的な要素と密接に絡み合った科学技術研究がだんだん増えてきている。そのあたりで、例えば分野融合的な研究は科学技術の研究の要素が含まれていてもここでは重視されないのか、評価されないのか。
 というのは、その次に「より具体的な応用や用途を想定する研究開発には、科学的・技術的な観点のみならず社会的・経済的観点を重視した評価を行うことが適当である」と書かれている。応用的ではないものも最近は非常にオーバーラップしてきており、研究の性格がだんだん融合的になってきている部分を何かの形で取り入れていく必要はないだろうか。

【委員】
 さっき基礎研究を分けようということになり、ここもそれを書き分けてはどうか。

【委員】
 そのようにお願いしたい。融合的なのは必ずしも目的研究ではない。特定の政策目的に基づく研究とは限らない。

【委員】
 中にはそれもあるが、先ほど(1)の自由な発想に基づく研究と(2)の特定の政策目的に基づく基礎研究に分けたので、前半は(1)のほうで書き、後半は(2)のほうで書く。そのときに、具体的な応用や用途を想定するという言い方をもう少し幅広く書くと、今のご趣旨に完全にマッチするかどうかは別として、多少それに近づける可能性はある。

【委員】
 17ページの一番下から2行目の最後のところで「表現力等資質の向上に寄与する」とあるが、表現力は資質なのか。この表現を少し工夫していただきたい。
 また、18ページの3.2.2.3の「審査員の増員を図るなど」というのは、もちろん必要な場合にはそうしなければならないが、「必要に応じ」ぐらい入っていたほうが良いのではないか。例えば、科学研究費も当然増員を考えなければならないが、一つの分科細目について1人増やすだけで千何百人増えることとなってしまう。

【委員】
 15ページの一番上のコラムに、エフォートの定義が出ているが、当該研究にどの程度重点的に集中できるかということの一つのインデックスとして必要だが、年間全仕事時間を母数としているため、これは人によって全然違ってくる。
 最近、エフォートがひとり歩きし始めている。例えば、私の場合はこのような部会活動などを含めると、年間70日ぐらい丸々使っている。それをカウントすると、実は研究に割ける時間が減ってエフォートが下がってしまう。私は現役の研究者のため、国に対するサービス等については省いている。つまり睡眠時間を減らすとか、いろいろなことをして捻出している。
 そのため、全仕事時間は人によって1200時間とか、2000時間とか、3000時間とかあり得るが、それはどのように考えているのか。

【事務局】
 ここは大綱的指針と定義をなるべく合わせるという観点で持ってきており、全く同じ文言になっている。この時点では研究本分以外のところを議論してつくっているものではない。運用上は非常に重要な問題であり、少し検討をさせていただきたい。

【委員】
 具体的に問題になることがあり、それは専念義務というふうに課しているものがある。例えばフェローシップをもらっていると、そのフェローシップに専念義務があるというと、それで100パーセントになってしまう。こういうことを解釈していくときに、専念義務というものが非常に問題になってくる。
 専念義務は勤務時間内の専念義務なのか、それともその人のトータルで専念していなければいけないのか、そういう問題点が生じている。

【委員】
 昔の国立大学の教官というのは、専念義務が課せられていた。だからといって審議会に出てはいけないかということはなく、教授会で承認をしていた。この程度なら専念義務の範囲内だという、一種のフィクションだが認定していた。
 例えばどこかの研究課題に分担者として入ることについて、専念義務に反するどころか、むしろ趣旨を生かすものであるということが何かの形で認められれば、それは不可能ではないと思われる。
 問題はそれを一体だれがやるのか、そこは悩ましいところだが、少なくとも原理的には専念義務の解釈として不可能ではないと思われる。

【事務局】
 構造上は大綱的指針を見ればおのずと同じものが出てくることになるが、この中では先ほどの外部評価についてもなるべく大綱的指針と同じ定義で進めたい。

【委員】
 当該研究開発従事時間、年間全仕事時間、これは人によって解釈が異なる。

【委員】
 これは仕方がないと思われる。どうしてそのような誤解ができてきたかというと、例えばNSFでいうエフォートの場合には、本分の内容をまず最初に教育とか、研究とか、管理とかに分け、分けたものの研究に関してのエフォートということになるので、矛盾を生じない。大学の教官ならば全部研究者で、全仕事を研究に打ち込まなければいけないという前提のもとにつくってしまうと、やはり矛盾が生ずることになる。
 なので、これは今後の問題だが、この中でつじつまを合わせるとすれば、全仕事時間を全研究時間とか全研究仕事時間とすれば、通常運用するエフォートとして矛盾を生じなくなるのではないか。

【委員】
 やはり指針の中に皆さんが困るものがあってはまずい。いったん削り、内規などでしばらく代理していただき、エスタブリッシュしたらまた書き込むとか、暫定措置をとってはいかがか。

【委員】
 「研究者の年間の全仕事時間を100パーセントとする」と大綱的指針にはっきり書かれているので、文科省もこれに従ってやるということである。しかも全仕事時間というのは割とあいまいなため、各研究者がある程度そこをうまく考えて、いろいろなことに報告できることになっていると思われる。ただ、このときに本当に困っているのは、専念義務というもので、専念義務があるからあなたはこれには応募できませんという形で大学によって評価が違っており、大学では応募させないというときに使われてしまっているケースがある。
 先ほど言われたように、専念義務というのはこういうケースである場合には応募できるとか、それをお互いにある程度話し合いができていれば、例外にカウントするようなフレキシブルなことを現場で考えてくれればあまり支障にはならない。

【委員】
 これを見ると「研究者の年間の」という、「研究者としての」というのは管理者でもあり、教育者でもある。もちろん大学だけを対象にしているわけではないから、「研究者」という言葉を使っているのはわかるが、気持ちは「研究者としての」ということで、そうすれば研究の全時間に対するエフォートであるから問題ない。そのあたりは大人の知恵でそういう解釈をしないと、大綱的指針と変えるわけにはいかない。

【委員】
 たしか普通は教育の時間も入れている。そこでさっき言われたようにエフォートの率が下がってしまうことになるので、「研究に従事する時間」というふうにここに書ければそれで大分よくなると思われる。
 逆に労働基準法との関係もあり、労働関係のほうから見ると、結局、この人は一体週に何時間仕事をしていることになるのかということが問題になる可能性もあるため、ここは非常に難しいと思われる。
 大綱的指針に譲って、ここのところでは黙っておくというのが差し当たりはあるかと思われる。

【事務局】
 大綱的指針のこの定義の経緯や周りの事情を確認させていただき、検討させていただきたい。

【委員】
 別の話になるが、今度大学に帰って審査される側と審査するほうになったときに、3.2.2.1「審査基準の見直し等」とあるが、こういう審査基準はどこでだれがどういうふうにしてつくり、だれがどういうふうに運営していくのか。

【事務局】
 今の指摘の部分の審査基準は競争的研究資金、また追ってこの場でもご議論いただきたいが、例えば科学技術振興調整費のような競争的資金の評価のときの審査基準はここでつくる。そのように、競争的資金についてはおのおの評価実施主体としてちゃんと特定できており、おのおのの者が責任を持っていろいろな場で議論して決めるということで実施されている。

【委員】
 大学法人としての評価もある。そういうものもどこかで委員会ができて、基準が定まっていくのか。

【事務局】
 独立行政法人及び国立大学法人についてはいわゆる第三者評価方式になっており、文部科学省の中にそういう委員会ができている。
 この場合は、この関係でいえば評価実施主体は文科省だが、実際の評価者は、評価者のボディーとしての評価実施のための国立大学法人の委員会、あとは独立行政法人の委員会で実態的な議論をして、そこでルールを議論していく。

【委員】
 3.2.2全体が競争的資金の研究開発課題の評価に関するところで、もっぱら政府の競争的資金のことを念頭に置いた記述である。無論、競争的資金は現在は大学内部で、学長のリーダーシップ等々との関係で設けられるようになってきている。直接には、それはこの場合は念頭に置いていない。

4.第四章、第五章、その他全体について

【委員】
 最初に申し上げた点でだが、4ページ目の1.1本指針の位置付けのところで、「本指針を参考に」という部分だが、ここの文章を例えば「本指針を参考に、各機関の実情に適した形で、研究開発の評価指針を明確に示した上で評価を適切に進めることが必要である」という書き方にして、各機関の特殊性みたいなものを配慮してもいいのだということをここで明確化しておいたらどうか。
 このようにできれば、現場では自分たちの特殊性をここに工夫して加えても構わないのだという精神が生じるという意味で、ただしその評価指針は自分たちで明確化しておくということにすればいいのではないか。

【委員】
 各機関がそれぞれの指針をつくるということだが、それは義務的であるべきだという考えか。

【委員】
 自分たちの指針を明確に示すことは義務である。そこまで言う必要はないかもしれないが。

【委員】
 そうすると、また各大学で指針づくりをとなっても、結局、ほとんど同じことになるのではないか。

【委員】
 では、「各機関の実情に適した形で」だけを入れたい。

【委員】
 そうすると、それは逆に指針無視と言ってはいけないが、ぐずぐずになる可能性もある。指針をつくりなさいというところに力点があるとすれば、あまりみっともないものもつくれない。

【委員】
 そこで先ほどの疑問に戻るが、例えば科研費のように非常にメジャーな審査が行われている部分では、割と力強く自分たちの特殊性を主張して、審査をその実情に合った形にすることができる。もっといろいろな審査が各大学レベル、各機関レベルで行われているわけだが、そのときにどうしてもエグザンプルというか、例えばこういうふうにやるということがこの評価指針では示されている。そうすると、どうしても過重な方向にと行ってしまうという問題がある。
 例えば9ページの「評価者がヒアリングや報告書や各種データを基に」と書いてあると、どうしてもヒアリングもしなければいけない、報告書も出さなければいけない、各種データをそのほかにもとらなければいけないとか、すべてのものをなるべく過重な方向にそろえようとする意見がこれによって強くなってしまい、行政の簡素化というような方向の力が働かなくなってしまうことを非常に恐れている。

【委員】
 「実情に適した形」というのが大変難しいところだと思われる。

【委員】
 妥協案だが、ここの「適切に」を前に持ってきて、「適切な研究開発の評価」とすると、今のニュアンスがちょっと出るのではないか。「適切な研究開発の評価」ということは、何となく各機関の実情的なものもホールディングされるのではないか。

【委員】
 となると、きつくなり、今のことと反対のほうに行くのではないか。

【委員】
 今の提案の趣旨はよく理解でき、これはやはり評価の枠組みを議論する中で常に出てくる話である。
 特に、例えば予算づけをするような、一律に判断しなければいけないような場合には、同じ評価項目で評点がされていないと相互比較ができないのではないかといったような話もある。
 その場合でも、各評価項目のサブ項目に相当するものの選択というのは、相談によって柔軟に選んでいって構わないというぐらいにして、大きな枠組みは崩さないが、実情に合わせたことを評価する側と、これは財政当局であるが、それと評価される側とが相談で評価項目のサブ項目を決めていくといったようなことを工夫しているのが、通常外国でよく見られるタイプである。
 今回のこれでいうと、「本指針を参考に」と書いてある。だから、本指針をこのとおり守れというふうにはなっていないのではないか。参考にして、先ほど言われたような趣旨をつくっていくという機関があっても、特にこの指針に触れることはないというふうに解釈してはどうか。

【委員】
 「評価指針を明確に定める等の方法を講じて」といった、もう少し幅広くしてやれば、先ほどの趣旨はいいかと感じている。そうでないと、大綱的指針があって、本指針があって、各研究機関の指針があってという階層構造をこちらが望んでいるようにとられても困る。
 ただ、この指針をよく読む各研究機関において、目的、ポリシーを考えるとすれば、そのためには独自のものをそれぞれ考えてみてくださいということは大変意味がある。こういうことを言っては不謹慎だが、そうでないと大学の人たちはほとんど読まない。
 あとは「各機関の実情に適した」という表現が不当に緩める方向に使われるということが片一方にあり、先ほどの趣旨は理解したつもりなので、少し文章を考えさせていただきたい。

【委員】
 「参考に」という言葉によって和らげられているというふうにとらえているが、実情は「参考に」ということは非常に厳しい制約として現場ではとらえられている。

【委員】
 これ全体の中に入っていないかもしれないが、要するに指針の実施状況は今後また調査される。であるから、調査の段階でどのように実情に合わせて、しかし趣旨はたがえないでやっているかということは把握できる。
 把握するときに、一律にやっていないと減点するといったような話ではないということでフォローアップすれば、おのずから今蔓延している厳密性云々ということはより実務的なものに置きかえていけるのではないか。

【委員】
 「各機関の特性に応じた独自の評価指針を」ではどうか。

【委員】
 「各機関の実情に応じて」とか、そのぐらいをつけ加えていただければと思っている。

【委員】
 今言われたことは非常によくわかるのだが、逆に言うと、産業界から見ると、先生のほうで運用基準みたいなものをつくるでしょうということは、「本指針を参考とすることが期待される」という範疇の中で十分できるのではないか。

【委員】
 今の1.1本指針の位置付けの「本指針を参考に」というのは、この表現でいいと思われる。というのは、次章以降ではガイドラインであるからあくまでも方向性、道筋であり、そこをあまりにも細かくすると、具体的な事例とか細分化したものをより具体的に書けば、「本指針を参考に」というのが縛りで入ってくる。
 次章以降ではそれほど具体的にはあまり書かれておらず、考え方だけが書かれているため、1.1の「本指針を参考に」というのは有効であると思われる。

【委員】
 それでは、「適切に」というのを「適切な方法により」というぐらいでいかがか。

【委員】
 解釈が議論されたので充分かと思われる。

【委員】
 問題は、これを研究機関に配るときにどういう文章をつけるかということだと思う。
 ほかに意見がなければ、見直し案についての審議は終わりにさせていただく。本日のご意見を踏まえて幾つかの修正を加え、その結果を本部会としての決定とさせていただく。なお、修正については、部会長である私に一任いただきたい。
 それでは、今後の取扱いについて、事務局より説明願いたい。

【事務局】
 本日のご意見を踏まえて幾つかの修正を加えた上で、研究計画・評価分科会に計り、その後、国民への意見募集を行う。その結果を踏まえ、必要に応じて本部会で再度審議いただき、研究計画・評価分科会及び科学技術・学術審議会における審議・決定を経て、文部科学大臣に建議するという段取りで進めさせていただきたい。

(2)その他

 前回の部会の議事録について確認が行われ、特段の意見がある場合には、7月4日までに事務局に連絡するものとし、特に問題がない場合には、公開の手続きを進めることとされた。
 また、次回の部会は、8月4日(木曜日)10時から12時に予定している旨の案内があった。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)