研究評価部会(第15回) 議事要旨

1.日時

平成16年3月8日(月曜日) 14時~16時20分

2.場所

パレスホテル会議室 3‐C号室

3.議題

  1. 「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」のフォローアップ活動について
  2. その他

4.出席者

委員

 石井部会長、生駒委員、石井委員、加藤委員、北澤委員、国武委員、榊委員、島崎委員、寶委員、丹治委員、塚田委員、西島委員、平澤委員、古市委員、元村委員、若見委員

文部科学省

科学技術・学術政策局
 有本局長、井上次長、川端計画官、内丸評価推進室長、仲庭計画官補佐、

オブザーバー

研究協力者
 馬場助手(東京大学)

5.議事要旨

資料1‐2に基づき研究開発評価アンケート集計結果(速報)に関して、事務局より説明を行った後、質疑応答に入った。

委員
 代表的な意見と特徴的な意見の差について、代表的な意見とは同様な意見が多数あり、代表していると見るのか。

事務局
 代表的意見とは、同じ傾向の回答が多数あるものに対する表現としている。特徴的な意見とは、数的に同様な意見はないが、一つひとつそれぞれ別の意見としてあるものを示している。

委員
 数的な差か。

事務局
 そうである。

委員
 2ページであるが、アンケート先として研究開発評価者を対象としている。回答中に、評価を実施していない研究機関があるがこれはどういうことか。現在、評価システムを構築中なのか、それとも評価そのものを必要と感じていない機関であるのか。

事務局
 最も多い回答は、現在構築中、検討中のため、現状では回答不可能というものである。

委員
 何をやっているか、特徴的な項目は何かという点に関してはわかるが、どのような工夫をしている等、建設的な要素がアンケート結果としてなかなか見えない。個別コメント中に、相当するものは無かったか。

事務局
 その質問に関しては、6ページ問3の「研究活動が改善された事例をお書きください」という質問と、14ページ「貴機関で実施されている評価について特徴的なことがあればお書きください」ということで、文言としての回答を期待していた。速報段階では、発表するほどのものはなかったというのが事実である。

委員
 評価は非常に難しいと思うが、あるフォーマットで評価体系を評価することになった場合、画一的、形式的になりがちである。
 本アンケートにおいて、具体的に独自の評価方法を工夫しているような例が見られたか。

事務局
 回答としていくつかあった。今後ヒアリングを行っていきたい。一部、今回報告する事例集で紹介している。
 今回、アンケートで回答をいただいた部分について、まだヒアリング等できていない部分もあり、今後分析の後、ヒアリング等を実施し紹介していきたい。

資料1‐3、研究開発評価事例集(案)産業技術総合研究所に関して、事務局より説明を行った後、質疑応答に入った。

委員
 産業技術総合研究所の評価は絶対評価か。評価が全部終わったときに、今度は相対的分布評価で何%と分けているように見えた。順位をつけた場合、トータルの予算が有限なので、結局、全部ばらまくということになる。極端に言ったばあい、評価が悪ければ配分しないのではなく、予算の中で全部配分していると理解すればよいのか。

事務局
 平成14年度の実績では、そのように配分している。

委員
 最終的には、相対評価であるか。

事務局
 最後の反映に関しては、ユニットごとの分布になる。

委員
 このユニットというのは三つのカテゴリーの異質なものが並んでいる。これをみんな一律評価して星3つ、星2つをつけるわけですか。カテゴリー毎に星3つが1割とか、しないとおかしいのではないか。

事務局
 平成14年度には、すべて分けるということで、確かにそのように行っていた。
 ただ、そこは問題点として検討しており、本年度からは研究センター、研究ラボ、研究部門・研究系とは別にして、最終的な評点をつける方向で検討されているようである。

委員
 4ページ記載の評価の仕方を見た場合、外部評価が6割ということでかなり重みを持っている。総合評点全体の7割が課題評価、体制・運営が3割の中で、外部委員の重みが6割もあるのか。

事務局
 研究の質に関しては、外部委員の方にピアレビューとしてお願いするという考え方をしている。その結果、研究課題の評価について、外部委員の意見の割合が多くなっている。

委員
 私は外部委員であるが、記載されているように、研究自体のレベル、成果が上がったかを外部委員が評価する。内部委員は、組織運営、体制に関しての評価を中心に行う。
 評価の対象を外部と内部で分けて、内部で総合しているようである。外部委員は研究の部分しか点をつけなかった。

委員
 私も産総研の外部委員をやっていた。研究の中身をどう評価するかをまず5~6人の外部評価委員で話しあい枠組みを決めたと思う。
 産総研の立場上、新技術の開発や発見等を応用へつなげる必要があり、課題に対して、例えば、其の技術開発がベンチャーを立ち上げられるほどにInnovativeでImpactがあるものを、最高点にした。良い論文を出したといっても、その場所により評価は異なる。そういう枠中で、点数化して評価した。研究の新規性など中身評価は勿論のことであるが、さらに応用も重要視し、産総研の存在意義をあらかじめ理解した上での枠組みを作った。

委員
 今の議論で感じたが、文科省における評価指針のフォローアップの材料として、トップに産総研が載っているのはいかがなものか。
 今、評価基準の中で、産業化が非常に大きいとすると、産総研を参考にするのは結構である。他の機関の評価を勉強するのは良いが、事例集のトップに持ってくるのは問題ではないか。

事務局
 順番は工夫する。これは産総研をトップに見た場合、最後は名古屋大学になるように、だんだん基礎のほうに、グラデーションを持たせたことによる、場合によっては逆の順番もあり得る。

委員
 順番が反対である。文科省だったら基礎が一番先に来るべきではないか。他省庁の研究所は、参考の資料として別枠扱いするのが一番穏当かと思われる。

資料1‐3、研究開発評価事例集(案)物質・材料研究機構に関して、事務局より説明を行った後、質疑応答に入った。

委員
 物材機構は非公務員型か、公務員型か。

事務局
 公務員型である。

委員
 産総研は非公務員型か。

事務局
 現在は公務員型で、将来は非公務員型になる予定と聞いている。

委員
 10ページ記載の論文指標等々、数字として定量化されているのかと思われる。その数字は一見客観的なようであるが、実は質の面がどう反映されるか等々、逆効果の面もいろいろあり、慎重な議論の対象になるかと考えられる。具体的には論文指標はどのように数量化されるのか。

事務局
 具体的な数字については未公表ということで、掲載していない。
 13年は試行、14年は実施ということで、試行から含め2年間かかっている。その間に、インパクトの高い論文についてどう配点するか等、内部で議論し周りの合意を得ることができたような形で点数を配点していると聞いている。
調査協力者  物材機構に関し、補足すると、論文数を指標とすることについては、物材機構の中でもいろいろな議論がある。量と質の両方を見るべきだという意見がかなり強い。
 苦慮の策として、問題があると認識しつつも論文数にいろいろな指数を加え、インパクトファクターの高いものを指数の高いものとして用いて評価を行う。
 アンケート結果には出なかったかもしれないが、この評価を用いることで論文数、インパクトファクターとも高くなった。従って、評価を用いることによって、研究の質量ともに向上したと述べている。

委員
 研究所の評価に関して、これを見て非常に共通感を感じたのは、私も研究所で評価を行っており、これと同様なことを繰り返し評価体系をつくってきた。
 論文、特許、ものつくり、特に論文は学科発表とか論文のグレードがあるため、重みづけをして評価している。
 特許の場合、非常に問題があり、研究開発が開始後半年以内に特許出願する。学会発表も不要である。従って、特許出願は早いが、実際に特許の出願はだれでもできることになる。価値の有無に関わらず出願できるので、評価の対象になるかどうかは非常に疑問なところがある。
 ただ、特許出願という意識づけには非常に良いと思われる。実際に特許が公開されるのが1年半後、特許に成立に約5年程度かかりため、5年後の評価を行うというところと、成立してそれが使われなければ何の意味もなく、費用がかかっただけになる。
 また、論文は研究をして1~2年以内に書くが、製品のプロダクトの場合は、試作品をつくって、それが製品として出る間にエンジニアリングを行う。それがないと、商品にならない。私が研究員のときは商品ができたのが大体5年で、マーケットインして売れるのが大体5年後で、10年かかっている。
 従って、論文と特許とものつくりはフェーズが違うのですが、1年の単年ごとに、評価して反映させるかは極めて難しい問題であることを私も経験した。この三つのフェーズの違うものをどうやって評価しているのか良い方法があれば、逆に教えてほしいと思っている。

資料1‐3、研究開発評価事例集(案)理化学研究所に関して、事務局より説明を行った後、質疑応答に入った。

委員
 ここも公務員型か。

事務局
 理研はもともと特殊法人のため、非公務員型である。

委員
 これは研究評価事例として産総研があるが、本来は研究評価事例集である。その場合、理研の機関評価についての記述が、事例として役立つところはどこにあるのか。

事務局
 機関評価そのものに対する質問か、それとも理研という組織についての質問であるか

委員
 ここで例示するという点である。例示するのであれば、理研の機関評価ではなく、大学などの研究開発事例の具体的な点が必要なのではないか、
 理研の研究評価のホームページを読んだが、理研がミッションを持って世界と戦うというときのものであり、事例としてこの位置に記載するのが良いのであろうか。
 やはり最初に大学から並べるのが良いのではないか。最後に大学の先生が兼務している理研や産総研はこういう形での評価を行っているという流れが必要ではないか、それにしても理研は事例としてふさわしいのか。
 理研を例示するのであれば、例えば先ほどの特許の問題とか、文献の重みづけ等までやらないといけないのではないか。

事務局
 今年度、この課題を選んだ理由は縦糸と横糸の関係である。まず、縦糸として多様な機関という観点から大学、独法、また他省の機関まで選択している。
 次に、横糸として、この指針に出ている研究開発課題の評価、もしくは機関の評価、もしくは個人業績評価のマトリックスで選択した。
 今の質問の趣旨は、機関評価ならばもっと別の法人もあったのではないか、逆に理研ならばもっと別のことを評価するべきではなかったのかということだと思われるが、本年度はマトリックスで選択したので、理研については機関評価という側面をとらえて抽出した。
 ただ、ご指摘の通り、来年度以降、理研の機関評価以外の部分で扱ってみたいものもある。逆に他の大学で行われている機関評価に関するものもまとめようとしており、バランスは順次考えていきたい。

委員
 文科省の評価指針でいうと、第3章の3研究開発を行う機関等の評価事例だということか。

事務局
 そうである。

委員
 理研のRACをやっているので、発言すると、理研の評価は日本の機関評価の中で一番うまくいっていると思われる。RACはアドバイザリーであり、評価ではないが。
 委員長の性格にもよるが、フリーセン教授が評価に関して大変よい見識を持っているので、理研の評価は最高に良いと思う。
 このように表面的に並べてしまうと解らなくなるが、理研の評価構造をもうすこし深く調べて記述する必要がある。研究の内容と成果はピアレビューで評価を行い、その上に例えばフロンティアプログラム、中央研究所、各センターのRACがあり、その上にもう1つ理研全体のRACがある。
 理研はこういう3層構造であるが、私は機関評価は本来は二重構造が良いと思っている。「ピアレビューとアカウンタビリティーの評価の2層でやるべきでそれ以外はやるべきではない」と私は思っている。理研の場合、評価ではなくて、アドバイザリーであるためアカウンタビリティーの評価まではなかなか行かない。
 中身の討議は3日間泊まり込みで、組織の長とその評価委員長からヒアリングを行う。RACの場合は研究者には直接聞かないが、理研の役員が外で待機しており、いつでも質問に対応してくれる。また、各委員の意見を極めて上手に集約して、評価報告書を出す。そのプロセスは非常によく、中身も非常によい。
 従って、究極の形とまでは言わないが、日本ではいろいろ試行錯誤しているが、理研は随分前からやっており、非常に参考になると思われる。

事務局
 今日ご議論をいただいている、研究評価事例集は目次にもあるが、研究ユニット評価、研究者個人評価、機関評価等、多様な切り口で並べている。こういうものもそれぞれ大事だと思われる。
 今後もご議論をいただきたいが、今日の議論を踏まえた上で、この夏ぐらいまでに事例数もふやし、中身も深めていき、印刷物として公表するのが一番良いと考えている。
 そういう面から、この部分は研究者個人に対して良い、研究ユニットのレベルではこの内容が良い、また、量的にもふやすべきだ等、そういう面からのご意見も伺いたい。

委員
 書くのであれば、事例として役立つ具体的な記載が必要である。

委員
 事例集に評価に関する思想があり、それに応じて事例を並べたシステマティックな書き方をして頂きたい。

事務局
 了解した

委員
 固有名詞が並ぶのではなくて、評価指針のいろいろなチャプターなり、アイテムが並んでいて、そこに事例として理研等が出てくるほうがわかりやすいであろう。
 項目、アイテムということになった場合、アドバイザリーのコミッティーの場合と評価の場合は一体どこがどう違うのか、あるいはどう共通性があるのかという点を明らかにする必要がある。
 本来、趣旨は若干違うが、アドバイスを実際行っている先生方のやり方、ご努力によって、こういう意味も持ち得ているのだとすれば、そこ点はきちんと書かなければいけないであろう。
 評価指針の「研究開発を行う機関等の評価」に挙がっている文章に対応する活動が、RACの場合に具体的にどういうふうに行われているのかということは、すぐにはわかりにくい。具体的な活動のことも含めた評価指針との関係づけが必要かと思われる。
 固有名詞が大事ではなく、評価指針のアイテムの例だと考えると、わかりやすくなるであろう。それを行った上で、欲を言えば一つの項目について複数の事例が挙がっていれば理想的である。良い例を二つ並べる、良い例と悪い例を並べる等、工夫の余地はいろいろあるであろう。

委員
 どのぐらいのエネルギーと人と時間をかける必要があるかいうことを調べて頂きたい。これは大変大事なデータになる、せっかく聞き取り調査をするなら、聞いてきて頂きたい。

資料1‐3、研究開発評価事例集(案)高知工科大学に関して、事務局より説明を行った後、質疑応答に入った。

委員
 今のこの内容からは十分見えないが、教育に対する評価はこの方法で正確にあらわされるのか。

事務局
 高知工科大学のシステムの考え方としては、19ページの3‐1の教育に4項目あるが、一番配点の大きなものは講義・演習等をいかに行っているである。20ページの上にあるように、学生による授業評価はかなり重要なところを占めており、ある程度の受講生数の講義を持ち、一定の評価を得れば500点程度が得られるということになっている。

委員
 それはわかった。しかし、基本的に個人評価である。教育は共同作業の部分の要素が相当大きいものであり、個人評価と共同作業の部分を組み合わせる必要がある。例えば、ある学科の教育がうまくいったかどうかは、非常に良い先生が1人いても、他の人がだめならだめである。その考え方をどういうふうにとらえられているかというのが関心の対象である。

事務局
 これは完全に個々人の評価システムとなっており、ヒアリングの範囲では、例えば学科、学部単位でそのように集積している話は聞かなかった。

委員
 個人評価が機関評価とつながるというのは、共同作業において、組織につながる部分が非常に大事だと思われる。個人評価だけで見えるのかということから、何かあれば知りたいと考えた。

事務局
 申しわけないが、ここでは確かに見えない。

委員
 教育、研究のいずれかを重視するというのは、選択制になっているということであったが、その選択の結果、どのぐらいの割合にそれぞれがなっているのか。

事務局
 個々人がどちらか判断できるというのは、別にコースを選ぶわけではない。分布は伺った。研究だけで1100点を越える方もいれば、教育でコンスタントに点をとる方もいる。このような傾向は聞きたが、個々人の教員から見た場合、自分はどちらを選択したかというところまで確認してはいないようである。

委員
 この岡村先生のお話は前から知っているが、これは個人評価というよりは人事考課である。多くの場合この二つが混同されている。我々が評価と言っているものと、人事考課とどう区別するかをはっきりさせておく必要があろう。

事務局
 今後検討する。

委員
 この評価システムがうまく機能しているかどうかの自己評価は伺ったか。

事務局
 大学の判断としては、まだ試行段階のため結論は出していないが、この方向性でうまくいくのではないかと見ている。
 大学の目的をはっきりさせて、教員がどこでどう使われるべきかについて、はっきり示すことが可能になったと考えているようである。

委員
 評価される教員がこのシステムをどう評価をしているか、このシステムをどう見ているかに関して意見はなかったか。

事務局
 そこまでは聞いていない。ヒアリングは事務局を対象に行い、教員個々人の方には聞いていない。

委員
 この高知工科大学とその次の長崎大学もそうであるが、教員をいかに評価するかという教員評価システムである。
 今、我々が取り扱おうとしているのは研究開発評価であり、教育もやらねばならない機関が、組織として研究開発でいかに成果を上げているかを評価するべきである。
 先ほどのアンケートもそうであるが、担当者にアンケートを送ってもその答えが、研究開発の社会貢献は何かという点に対して、あまり研究開発とは関係ない社会貢献の項目がずらっと挙げられていることがある。研究開発の面でいかに評価するか、そのとき教員評価システムがどういうふうに役に立つのかという観点で見る必要があるのではないか。

事務局
 先ほどの議論でもあったが、指針に沿った、あるいは見直しという形で提示されていない面もある。そのあたりの整理は進めていきたい。

委員
 研究者の研究業績を純粋に評価するべきなのか、研究者の社会的貢献とか倫理観みたいなものも含めての評価なのか、どちらが望ましいのであろうか。というのは、理研などでも業績は一流であるが、倫理などでは必ずしもそうでないことがあるように見受けられる。純粋に研究だけ評価していれば良いという視点で議論をして良いのであろうか。

資料1‐3、研究開発評価事例集(案)長崎大学に関して、事務局より説明を行った後、質疑応答に入ったが、質問が無かったため引き続き名古屋大学に関して事務局より説明を行った後、質疑応答に入った。

委員
 全体を通して、感想めいたことを述べたい。
 今、紹介された内容は、第1期の大綱的指針で掲げたことの範囲でまだ混乱が続いていることを示しているのではないかと思われる。第2期では、第1期で目指したプロジェクトと機関の評価の質的な向上をうたっているが、それに対してまだ本格的な取り組みはできていないと言っていいであろう。現場の混乱は当然で、あまりに速いピッチで評価の枠組みを導入したことによるものと思われる。
 特に、大学については評価機構による評価が加わる。さらに、今まで行われてきた給与等には直接的には反映されないが、業績や昇進等には非常に厳格に反映されるような評価システムとの整合性を持たせつつ、一気に給与等とリンクした評価システムへ移行するところにかなり無理があるのではないか。
 長崎大学の例でもあったように、一つの大学の中だけで評価のつじつまを合わせるのは無謀で、分野の違うところを相互に比較することは土台無理である。ランキングみたいなものは、同種の専攻課程間で通常はやっている。
 そういう大きな枠組みをどのように設定するかがどこかで、つまりこういう委員会で議論されないと、一つの大学の中でいろいろ苦労しておられるのを救う道はないのではないか。
 もう一つは、評価にかかわって内容自身を評価する視点と、マネジメントや体制を評価する視点がある。どちらかというと、うまくいくほうの例はマネジメントを評価してそれを改善していくという方であり、理研の例などもそういうことが中心だったように思われる。
 内容については、大学ならばそれぞれのディシプリンの中でつまり学会の場で評価されることがずっと続いているわけで、その評価をいかに大学の中、あるいは学科の中に持ち込んでくるかということでいいのではないか。一方、マネジメントが、独法になった後、まだ体制が整備されていないところに大きな課題がある。マネジメントシステムの中に組み込まれた評価のあり方、評価を取り出すというよりも計画をつくり、それを発展させていく中での評価のあり方という観点から評価を取り込んでこないと、うまくいかないのではないかと思われる。
 もう一つ、旧科技庁系の研究所等で、特に大きなお金を使って展開していくものについては、それなりの評価法をさらに開発していかなければいけないであろう。

委員
 先ほどの指針の項目ごとに整理する必要があるのではないかというのが一つと、もう一つは機関の性質による違いを、どう考慮してこの事例集をつくっていくのか、同じ大学でも単科大学と総合大学では全然違うことが既にわかっている。
 現在、国立大学は法人化で、大学評価機構で評価されるという評価システムとの関係をどう考慮していくのか等、さまざまな配慮すべき、あるいはきめ細かくこちらが問題を整理して見ていかなければならないことが幾つもある。今の委員の発言は、まさにそういうことである。
 事例集も良いものを作るには時間と努力が大変だという感想を持った。

委員
 今後のこの研究評価部会の役割であるが、全国の大学をなるべく一律の均一な評価方式に仕立て上げていくのが一番いいと思われるのか、それとも各大学がそれぞれユニークに、極端なことを言えば全く評価を自由にして、何もしなくて自由学園にするような大学があらわれ、そこが成果を上げる。あるいは評価をぎちぎちにやってインパクトファクターが幾つとかいう感じですべての給料を決めるような大学があらわれて、それで非常に成果を上げる大学も出てくる形で、いろいろな大学が出てくることをプロモートするかという、そこが一つの考えどころかと思われる。
 もう1点、ここで話し合うのが良いか不明であるが、評価と強く関係することでありますのでご紹介させていただきたい。
 2月末に学術会議が主催した、我が国の学術情報の広報をどうしていくかというシンポジウムがあった。一言で言うと、インパクトファクター病と言うか、被論文引用件数病が我が国の研究機関及び大学にはびこり始めた。
 確かにインパクトファクター等は論文で稼ぐようになったが、その結果、我が国の学会の英文論文誌がすべて危機に瀕するようになってしまい、論文の8割が海外で出版されるようになってしまった。そのため、学会が経営的に難しくなってきている。特に、いい論文はすべて海外に出てしまう。これで良いのかという会合であった。
 二つの問題があり、特に医学系は危機に瀕しているのではなくて、もう既につぶれてしまっている。海外の商業雑誌に自分の学会の論文を英語で出してもらうところまで来ているということであった。危機に瀕している多くの学会の雑誌をこれからどうしていくのかということである。
 もう一つは、先ほども出てきたが、ネーチャーサイエンス病をどうするのかという問題である。野依先生を初め、国立劇場はある、あるいは能の舞台もあるのに、サイエンスの国立劇場はないのかと、国としてそういうものを作って欲しいと言われ、それをサポートされる方々が何人かいた。日本としてサイエンスあるいは科学技術の分野でどれだけ非常に大きなインパクトのある雑誌を世界の一極としてつくっていけるかということである。
 実は、この評価指針の中にも客観指標で示せと書いてある。これが出たおかげで、日本の学会の雑誌はだめになったという主張がされていた。これは我々としても非常に考えていかなければいけない問題と思われたので、紹介させていただいた。

委員
 委員の発言は確かによく考えなければいけないことである。しかし、この事例集に集められている例が必ずしもいい例であるわけではない。いい例は非常に例外的にはあるが、ほとんどはやはり苦労しておられるという事例集だと思われる。
 産総研の評価の状況を話すと、最初2年間外部委員による評価を例外無しに実施したところ、研究者の中に随分不満がうっせきした、その後2年かけて評価のあり方を内部でかなり議論している。これを第2期に反映するが、できるものは第1期の途中から導入している。
 実態としては現在このように評価システムを改善していくプロセスにあるものだということを、考慮するべきであろう。
 また、野依先生が部会長のとき、定量的評価は文科省の指針で極力薄めるような表現にした経緯がある。

委員
 しかし、評価指針には「被引用件数など」と記載されている。

委員
 内閣府の原案ではより定量性をうたっていた。
 ただ、ビブリオメトリックスの常識として、ぬきんでた部分の評価を行う場合、被引用度は頼りになる。むしろ、他に相関がある数値はないと言われるぐらいである。しかしながら、医学部教授会における教授選考のような場面で、0.幾らの差で教授になったようなインパクトファクターの使い方はまさに間違えているわけで、弊害のほうがはるかに大きいといえる。
 論文数よりは、やはり被引用度は論文の質を反映していると言う意味で数量的なものとして唯一例外的に頼りになると、評価分野の研究者たちの中で一応合意ができている。ただ、それだけで決めること、特に微妙なところの差を決めるのは全くナンセンスである。

委員
 事例集は指針のフォローアップであるので、指針に適合した模範例を集めるのが目的ではなく、指針を良いものにしていくための作業だと考えた場合、事例の集め方の視点が違ってくるのかもしれない。いろいろ考慮すべきファクターが多いであろう。

委員
 現在はこの評価の議論を行っているが、当然評価した結果がどうなったかいうことはまた評価になる。それが非常に難しいところである。それをきちんとフォローしないと、このやり方がよかったかどうかは、それこそ評価を評価できないということになってしまう。
 理化学研究所の例が上がったが、私は理化学研究所も一部兼務している。実感としては、一番下は評価会議であるが、アドバイザリーがセンターごとにあり、さらにRACがあるということで、全体として非常にうまくバランスがとれている。
 既に過去に歴史を持っている機関における評価で、うまくいった例を幾つか出すことで、評価のあり方を考えるときのいい例になるであろう。

委員
 ぜひ、悪い例も出していただきたい。良い例も悪い例も両方必要である。

委員
 悪い例が評価指針に合ってないという意味で悪いのか、忠実にやったために悪いのか等、いろいろあり得る。そこはやはり価値観を多様に持ち、多様性を大事にしていかないといけないだろう。

事務局
 本日のご意見を踏まえ、次回までに今回の素案の改善も含め、今後の部会の進め方に反映するべく事務局で案をつくらせていただく。それについては、メールなどでご確認をいただきたい。

引き続き、資料2に基づき総合科学技術会議評価専門調査会ヒアリング資料文部科学省における研究開発評価の概況について、資料3では平成15年度文部科学省研究開発評価研修の実施について、事務局より紹介を行った。

今後の予定
 次回第16回部会は5月~6月に開催予定。

―了―

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)