研究評価部会(第12回) 議事要旨

1.日時

平成15年7月4日(金曜日) 14時~16時15分

2.場所

虎ノ門パストラル ミント

3.議題

  1. 部会長の選任について
  2. 今後の研究評価部会の進め方について
  3. SPring‐8の中間評価の対応状況について
  4. その他

4.出席者

委員

 石井部会長、小平部会長代理、加藤委員、北澤委員、国武委員、島崎委員、塚田委員、中村委員、西島委員、元村委員、若見委員

文部科学省

 科学技術・学術政策局 林局長、井上次長、尾山政策課長、伊藤計画官、舟橋政策課企画官、内丸評価推進室長
 研究振興局 川上基礎基盤研究課長、金谷大型放射光施設利用推進室長 

5.議事要旨

 委員の紹介に引き続き、委員の互選により石井委員が部会長に、部会長の指名により小平委員が部会長代理に選任された。
 資料3、4に基づき、研究評価部会の今後の活動予定について、事務局より説明を行った。

【委員】
 資料4の、1ページ目の下から3分の1ぐらいの(1)のところに、アンケートをすると書いている。研究管理者はいいとして、研究開発評価担当部局というのがあるが、これは具体的にこういうものを設けているところが一般化してきているのか。

【事務局】
 文部科学省の関係機関の中で、例えば独立行政法人の関係機関などでは、具体的に評価推進室とか評価という名前のついた課がある。そういうところには、その課に資料を送り、そこでまとめていただくことを考えている。

【委員】
 大学についての状況はどうか。

【事務局】
 大学については、現状完全に把握できていが、おそらく評価そのものは研究管理もしくは総務部局でやっているのではないかと考えている。ただし、評価を専門にやっているのではないと思っている。従って、大学の場合、事務局と同時に、実際に研究の現場でマネージメントをしている立場にある方々のところに資料を送り、把握することが有効ではないかと考えている。

【委員】
 これら議論の先決事項として、振興調整費による課題の事後評価、中間評価というのがある。中間評価というのは確かにその後が絡んでいるが、事後評価というのはいわば終わってしまったものである。
わかりやすいもので少し極端な事例を言うと、何でこういう課題が採択されているのだろうかと疑問に思うような例がないわけではない。評価したものがどういうふうに生きてくるのか、教えていただきたい。

【事務局】
 この科学振興調整費の場合、期間は5年間というのが多い。中間評価は3年目ぐらいに行い、後期への段階の一つのゲートとして機能する。事後評価については5年間の課題終了後に行い、その結果を資料にまとめ公表する。一つは、内容の説明義務を果たすという点。あとは、最終的に課題を選ぶ権限を持つ審査部会に、実際に選んで5年間やってきたけれども、その結果はこうだったというようなところをフィードバックする仕組みをいま設けている。
 これは前回の第1期の研究・評価部会でも整合性があり、そういうことでやるように考えている。この事後評価につきましてはそういうことをやっている。

【委員】
 その間が密接でないと、せっかく評価しても評価だけで終わってしまうので、そこら辺をうまく回していただきたい。

【事務局】
 そのように進めていきたい。

資料3に関して了承いただき、引き続き資料4の質疑応答となった

【委員】
 資料4に関して、2ページ目2行目の「得られた知見は協力者が自身の研究に活用できるように取り計らう」というのは、評価に関する研究という意味か。

【事務局】
 そのように考えている。

【委員】
 何か勘違いされるといけないので、これは「評価」という文字を入れたほうがいい。

【委員】
 アンケートというのは、基本的に良い。
 だだ、アンケートに、自由気ままに答えると、研究評価が直面している課題が難しい中で、評価の対象にすべきものとすべきでないもの、短期間で評価がされるべきものと長期間のもの、社会に還元される産業化を念頭に置いたものと産業化を念頭に置かないで学術なもの等の大枠を先に決めておかないと、後でまとめるのに非常に苦労する。
 特化したような形でアンケートを書いてもらう自由記述でもよいのだが、特にあなたのテーマは今こういうところが重要と評価部会としては考えているので、その点について特に記述していただきたいというような指向性を持たせたほうがよいのではないか。

【事務局】
 中心テーマとしては、今ここに例示で幾つか挙げている。
確かにアンケートを受け取った側の方の立場により、いろいろな軸が出てくることは想定される。そこは、実際に送付するときに、送り先に応じて若干の整理を考えたい。

【委員】
 調査をする対象は広く一般なのか、科学技術振興調整費をもとに研究を進めているグループなのかで違うのではないか。科学技術振興調整費を現に受けてやっている、あるいは終了したとかというようなところであれば、かなり明確に対応できると思うが、広く一般の大学・研究機関等にやるとなると、あらかじめポイントをちゃんと指定するということをやらないと、非常に発散するおそれがある。ただ、評価システムそのものを調査研究することが主題であれば、広いほうがいいかもしれない。その点はどう考えているのか。

【事務局】
 評価システムそのものも調査として行うことを考えている。このアンケートに対して、紙だけではわからないことがたくさんあるので、それを取りかかりに可能な限り多くの場に出向き、じかに話を聞き、内容を見極めるという作業を考えている。
 対象は、基本的には全体であるため、発散する可能性が大きい部分が多々ある。そこは先ほどの指摘のように、文章を練って発散することを避ける工夫を考えたい。

【委員】
 アンケートで答えられてきたもの全部が、事例集に載るわけではなくその候補をもらう。その中からいいものをというか、おもしろそうなものを選んで調査に行き、分析するということか。

【事務局】
 そう考えている。

【委員】
 大学の中で個々の研究、個々といっても全部ではなくていいが、評価する仕組みがあるのか、評価しているのか、うまくやっているのか、そういうアンケートをとりたいという話なのか、それとも別な大きな観点なのか。

【事務局】
 アンケートの趣旨として、例えば各大学・研究機関でどれだけ評価に関する指針をつくっているか、評価のシステムをつくっているかということで、数を集計して、それを統計処理して全体の何%かとか、そういう調査は考えていない。
 いろいろ研究評価の関係でやってきた経験で申すと、評価はまだ試行錯誤の段階である。その中で、網羅的に調べるというよりも、一つでも二つでも本当にいい工夫をされている事例を、それを広く世の中に知らしめ、全体の評価レベルが上がるようにしたいと思っている。そういう意味で、網羅的よりも、個々の事例を見つけ出すことを大きな眼目にしている。

【委員】
 少なくとも我々の研究では、自己評価的なものとか、組織としてどういうふうにうまく動いているかどうかの評価はやっている。研究そのものが、例えば何かのテーマの研究についてどうかというのは、これからやらなければいけないだろうという意識はあると思う。
もう一つは、任期制をつけている人事的な意味からであるが、研究の中身をどう評価するかというものが入ってくると思われる。やらなければいけない、あるいはやり始めようとしている動きはあるだろうが、何を求めるかにより、あまり事例が出てこないのではないか。

【事務局】
 こういう調査の必要性を感じた経緯は、大学・研究機関を回り、自分の研究組織もしくはもう少し大きなレベルでの評価とかをやらなければいけないという考えを多々聞いてきた。そういう中で既に着手されているものに加えて、こういう構想を考えている等、差し支えない範囲で話を聞くという意味で、構想中のものもアンケートの対象に入れた。

【委員】
 大学という立場で考えてみると、実際に個別の研究に特化した評価というのは、いろいろな構想はあるが、ほとんど具体的な形で行われていない。自己評価その他、外部評価はあるが、どちらかというと全般的な研究もその一部として含むようなことに対する評価という形で行われており、特定の研究テーマについてどうだというのは、なかなか難しいということがある。
 実際にそれを一番よくやっているのは、ファンディングエージェンシーである。お金をどう配るかというほうは既にやっているので、もらっているほうがあまり進んでいないのではないかという感じがする。

【委員】
 国研系であると研究所のミッションというのがあり、大体こういうのをやりましょうという計画をきちんと立てて、それで何年かやってみる。それをレビューするというのは比較的前から、どこまでエクスプリシットに、あるいはシステム化してやっているかは別にして、そういう発想はあるであろう。
 ところが、大学の場合の研究は基本的に個人のレベルの問題で、その個人がファンディングエージェンシーに研究費を申請し、それが評価されればお金がくるという話である。
 それでは、結局個人の研究は何を機に、どういう形で評価されているかというと、たぶん人事である。その大学の中における人事と、ほかの大学からのルーフがかかわるという広い意味での人事である。そういう形で、研究所とか研究組織全体として研究評価をやるというふうになじんでいない。こちらのほうから出しているアンケートの波長にうまく合った答えが出てくるか、期待できないかもしれない。

【委員】
 国立学校設置法の大学のところを見ると、自己点検評価システムをもってやらなくてはいけないということが明記されており、いろいろな形でやっていると思う。外部評価を受けるというのは、有馬先生が東大の理学部で始められて、ここ10年近くでたぶん定着しており、いろいろな大学・研究所で外部評価をやっている。外部評価を受けるには、当然自己評価をやって、それを提示して評価していただくというシステムであるから、かなり広い範囲で実施されているであろう。
 ただ、大学の中でいろいろな種類の研究が走っているが、科研費でやっているような個人中心のものまで含むのか、科学技術振興調整費を典型的なものとして考えられるような開発研究的、あるいは開発推進研究的なものに軸足を置いてやるかで、ずいぶん違うのではないか。この評価部会は、科学技術振興調整費の中間・事後評価をやるというミッションを持っているわけであり、上の研究計画・評価分科会の中のもう一つの部会は、調整費の審査をやるということがある。私の感じでは科学技術振興調整費を一つのよりどころにして、もちろんそこからはみ出ても良いが、それの評価技術を向上させていくための調査研究という位置づけが、取りかかりやすいのではないか。
 学術のほうまで拡げると、学術分科会だとかほかとの連携を視野に入れないと困難かと思われる。ここの評価部会で一昨年の6月に決めた文部科学省の評価指針とは、全般にわたっているものなので、その流れをくめば、それのフォローオンということで当然、科学技術振興調整費に限らずということになるであろうが、幅広いほうはなかなか実施が困難なのではないか。これから企画して、調査研究を始めて、1年半ぐらいであるところに行き着くのであれば、相手を絞ることも考えて検討してはどうか。

【委員】
 学術研究あるいは大学における研究というものの評価を全体として見ようとすると、アンケートとは別のところで、一体大学における研究の評価というのは、そもそも今までどういう形で意識的あるいは無意識的に行われていたのかとかをここの先生方に議論していただきたい。今までの歴史を振り返るような形でやるという軸をもう一つ加えたほうが、情報としてより豊かなものが得られるのではないか。
 外部評価というのは、研究所、研究センターというと割と研究に特化するかもしれないが、学部とか研究科では、教育等を一緒にした、総合的な評価をし、このペーパーに書かれる。
 例えば東大史料編纂所の外部評価の場合、史料編纂事業の評価が半分以上を占める。ある先生は、非常に立派な研究書を書いているが、これは一種の副産物である。史料編纂所の事業と不可分の関係でやっている。だから、評価の対象となると、その先生が立派な本を書いているという評価はしないで、このデータベースがいいとか悪いとかいう評価にしかならない。このように、別の方向からいろいろ光を当ててみる調査研究も必要ではないか。

【委員】
 今まで出したお金がどういうふうに効果があったかということを幅広く、また多面的角度から評価した良い例はJSTである。去年出した報告書で、おそらく国立大学であれだけ幅広い立場で分析したという例は過去20~30年にわたって見あたらない。一つのきっかけとして、例えばそういうやり方を大学では一体やっているのか、やっていないかとか、やれるのかやれないのかというところをまず見てみると、その後で一般の大学にどう使えるかということも、もう少しイメージがはっきりするのではないか。

【委員】
 本質的に仲間うちの評価というのは非常にしにくい環境なので、もしやるとしたら、今後必要であるという何らかのインセンティブがないと、今のところはほとんどやっていないのが現状ではないか。先ほどあったように、せっかく調査のアンケートを出しても、もらったほうは何を書いていいかわからないということがまずある。書いてもとんちんかんになる可能性が高いのでは。
 また、協力者というのも、実際に評価の仕方について研究されている方ということであるが。その分野にもよるかもしれないが、理科系のところにはほとんどそういう人はいないので、だれを推薦するかというのは、これまでの大学の中には非常に少ないのではないか。何か少し事務局側としてはつかまえているのか。

【事務局】
 研究評価などで評価を専門としておられる委員の方にお伺いし、今30代の方で2人ほど名前が挙がっている。ただ、日本ではまだまだ数が少ないのが実情のようである。

【委員】
 特に若い人がそこをやろうというのは、まだなかなかいないのではないかと思う。ある程度経験のある方が、ずっと評価畑をやってきた結果、それが一つの自分の仕事になっている方はおられるようだが、若い人で今のうちから評価の問題を自分の研究テーマとして取り上げているというのは、社会的にまだそこまでいっていないせいもあるかもしれないが、少ないのではないか。

【委員】
 産業界では、今は産学連携がかなり活発になってきており、割と直近的なことに関して大学の先生方と協力しながら、共同研究をするというので良いのであるが、長期的なものや、萌芽的な研究というのは、やはり大学に期待するところが多い。その考え方で、直近的な産学の研究のテーマとしては割と話をしやすいのであるが、皆がそちらのほうに寄っていくと、日本全体の長期的な観点からも、マネージメントをどういうふうにするかということは、今後評価によってすごく左右されるであろう。独法化に向かっていま議論されており、学長に権限があるから、ファンディングもそういう配分になるとは思われるが、その点をもう少しアンケートでクローズアップしていただきたい。

【委員】
 これは産学連携になじむような研究と、基礎研究あるいは学術研究とのバランスをしっかり保つための評価活動が大事だということである。

【委員】
 今のことに関連するが、萌芽的な研究となると、やはり若い人の研究活動を活発にさせようという意味で、各大学でそれなりの組織を持っている可能性はあると思われる。我々のところでも若い人に、所内で研究費を出そうと一時期そういうことをやったこともある。若い人の研究をうまくやらせるための仕組みというのは、考えている可能性はあると思われる。これからの学術でどうやってボトムアップ的な研究を育てていくかについては、大学の死活問題でもあるので、かなりやられている可能性はあるであろう。

【委員】
 ただ、そのときにインセンティブ、産学連携においては研究費であるが、長期的なテーマとか基礎研究ではそんなに金も要らないだろうとか、資金も要らないのではないかということで、たちまち後回しになったりする傾向も結構強くなるのではないか。逆に言うと、今は産業界がもう少し直近のことに目を向けてくださいという状況であろうが、そこら辺はいかがか。

【委員】
 大きな意味で産学連携は、大きな仕事としてあるが、若い人たちを育てていくというのは非常に大事である。若いに人に、まずわずかでもいいから、所内で研究費をかき集めて渡すところから始まって、あとそれを次のステップに持っていくように応援していくという仕組みは、たぶんあるであろう。それは、我々は研究所だからなおさらそれをやっているのかもしれない。

【委員】
 結局今の議論は、一種のマネージメントであるが。その評価は念頭に置いているのか。それとも実際のR&Dと言われるような話を前提にして、それの評価の話をしているのか。

【事務局】
 マネージメントとして、ある研究所でやはり組織の中である種の経常研究だと伺ったが、若い方でいかにいい研究ネタを引き出し、もしくはどう進めるかということに対して、具体的な考えをお持ちの方のお話を聞いたことがある。マネージメント的なものについても、本当に評価の中で重要な部分であるので、いい研究があれば見つけていきたいとは考えている。
 我々としてはアンケートを出す先の大学、さまざまな研究機関、もしくは何らかのファンディングを扱っている機関、そういうところの特性についてというよりも、出す側の我々の問題意識先行で今回のアンケートを考えていた。例えば、今議論されたように、アンケートを出す先のことも考えて濃淡をつける。アンケートは画一的にやるのではなく、少し工夫してみたいと考えている。
 また、この評価指針をつくるときもそうであったが、文科省の扱っている領域というのは非常に広いため、具体的にはこの部会だけではなく、当時の学術分科会のほうでも深い議論を行い、それをもとに全体をつくった。情報収集だけはどこでもできるが、分析、どういう結論を引き出すか等、審議会全体としてどういう答えになるかについても、事務方のほうで考えてみたい。

【委員】
 この部会全体としても一種の問題提起を審議会全体に投げていくという仕事を議論するというスタンスも必要であろう。決められた、SPring‐8とか、振興調整費の話はやらなければならない。それだけでなく、多様な研究がある、またマネージメントまで含めると、非常に多様な世界を相手にどういう評価の目線、スタンスが必要なのかということであろう。

【委員】
 ファンディングエージェンシーでは、評価が何に使われるかということがはっきりすると、評価そのもののやり方も非常にはっきりしてくる。おそらく今は、機関評価、組織評価、個人評価、課題評価などが渾然一体として何に使われるのかが明確でないままに行われようとして混乱を招いているところがある。それをはっきりさせることが必要である。
 評価が何に使われるかという点が制度的にもあまりはっきりできていない面もあり、不満を招いている。「評価疲れ」という言葉も出口の分からない努力を強いられことから出てきているのではないか。
 私が研究者側にいたころ、ここの席で、「中間評価は怖いけれども最終評価は何も怖くない」と申し上げた覚えがある。中間評価はその後の予算に響くが、最終評価は何も後に影響を与えないという印象を持っていたからです。その意味で、おのおのの評価の目的をはっきりさせる努力が重要と思います。

【委員】
 大変重要なご指摘をありがとうございます。調整費というものの事後評価はどうなのかという話も、結局そういうところであろう。

【委員】
 今までの評価を変えてやってみようかということで、タブーかとは思ったが、研究者の相対的な評価を試しに入れてみた。JSTのプロジェクトが終わった方に、あなたは5年間のプロジェクトをやって、世界一流になれたと思いますかという質問をしたところ、「私は世界一流になれました」という人が99%いた。これはとてもうれしいことであるが、ご自身を除いてほかの人たちに、あの人は世界一流だと思いますかという評価も実はやってみた。
 そうしたところ、ある領域では大体60%ぐらいが、「あの人たちは世界をリードしている」という結果も出た。また、サイテーションインデックスでそれを裏づけてみるというようなことをやってみた。そういうことをやることも、ある程度雰囲気はわかるのではないか。

【委員】
 世界一流かどうかというのは、たしか大学評価機構が、大学の専門別に学部なり、研究科なりで、教育と研究を分けてやっている。研究についてだけそういう指標があったはずである。
文科系はその評価が少し甘すぎるのではないかというのがあり、殊に法学では批判されていたらしい。日本の法とアメリカの法では対象が違うのだから、日本の法を研究したら世界一になるのは当たり前という悪い冗談も出た。少しずつそういうのも出てきてはいるようである。
 いろいろご意見をいただいた。特に具体的な2ページのところに、いろいろなアイテムが並んでいるが、何かこれについての評価疲れについては、委員から特にメンションがあった。何かもっとつけ加えたほうがいいのではないかとか、これは視点を変えたほうがいいのではないかとか、そのようなご指摘もあればお願いしたい。
 社会とのコミュニケーションに関する評価という項目は、自分の専門の研究活動が、ちゃんと社会とコミュニケーションをとれるようになっているかどうかを評価の対象とするというその問題であるか。

【事務局】
 趣旨は、これからさまざまな組織、機関、もしくはエージェンシーその他のところで研究の成果を単にポンチ絵にするとか、ビジュアル化するとか、そういうことではなくて、もっと本質的に一般の方に受け入れられるような形で何か物事を伝えるということを専門にしたグループと一緒に作業を進めるという事が必要となる。社会とのコミュニケーションに関して、そのような工夫をされているようなさまざまな活動をどのように評価するべきなのか。何をもってよくやっているとすべきなのか。恐らくそういうことは今後、この研究開発評価の世界で重要になるのでないかという思いがある。
 そういう中で、社会とのコミュニケーションをこの人はやっていると、ここはもう少しこうやったほうがいいというような観点から、そういうポイントに対して評価を既に実施しておるような先進例をぜひ見つけ出して、そこを手がかりにしてよりよい評価活動を今後つくっていくベースにしたいという思いで、この項目を入れた。

【委員】
 評価の視点の中にこういうものも入っているのがあるか、実際にやっているのがあるかどうかということか。

【事務局】
 視点もそうであるし、視点に入って具体にどういう点でそこを見極めているかということである。

【委員】
 評価そのものと、評価の結果を社会にどう還元しているか、あるいは社会とのコミュニケーションの中に載せているかいうのとはまた違う話か。

【事務局】
 それに関しては現時点想定していない。

【委員】
 NSFなどは、自分がNSFからファンディングを受けた研究について、1%なりを社会の還元に使うことというような縛りをかけているところもあると聞いた。調査の中で漏れ聞くのは、社会活動をする研究者とか、啓発書をたくさん書く研究者は一流ではないと見られがちであるとか、社会運動、社会活動は、例えば外部のところに講演に行くことも含めて、三つ以内にしなさいというような大学がある等である。本分というのはわかるが、どうしても社会とのコミュニケーションが、どちらかというと軽視されている、二の次みたいに見られていると感じる。
 それを評価に含めるか、含めないかは議論があるところだと思われるが、そういう研究者がいてもいいのではないか。その点をアンケートの中で詳しく聞いていただきたい。
 もう一つは、こういう評価指針とかは、どれぐらいの研究者が知っているかというのは大切ではないか。きちんとした指針を持っているということを踏まえて、いろいろな大学とか研究機関が評価のシステムを考えているか、きちんと現状を踏まえたほうが、手っ取り早いところもあるのではないか。

【委員】
 科学研究費の特定領域で大きいお金をもらった人は、大体成果がまとまった段階で、「大学と科学」などのシンポジウムを朝日ホール等でやるというのはまだ続いているのか。

【委員】
 今もやっている。

【委員】
 理科系では、フラーレンとか、ナノチューブとかああいうのがバーッと出てきたころであるが、そちらの方はたぶん業界の方の参加が多くて、文科系のほうは大体考古学をやると満員になるという傾向があった。大体文科系で大きなお金が出るというのは、考古学の発掘か調査であり、それは非常に評判がいいというのであるが、これはたぶん別の予算をそのプロジェクトの関係者にあげて、シンポジウムを別にやってもらったわけである。NSFのように与えたファンドの中から1%というのではなく、やるといった人に予算をつけるという形でやっていた。

【委員】
 あれは全部できるわけではなく、当たったチームがやらせもらえるという感じである。

【委員】
 その選定委員会というのをやっていた。

【委員】
 テーマについて意見はない。この評価指針をつくるときに、大変苦労したであろうし、評価自体が非常に難しいわけである。あと、このフォローアップ活動というのは、部会としてやるのではなく、事務局として行うので、とりあえずできる範囲でやり、その結果を見た上でさらに進めるというステップ・バイ・ステップで進める仕組みにしたらどうか。

【委員】
 今テーマになっている社会とのコミュニケーションというのは、非常に重要なキーワードと思われる。ここで支援している基礎研究の成果が上がったかどうかということは、専門的な立場からの評価はもちろん重要であり、最終評価というものは一体どんなふうに役立つのか、何のためにやっているのかという話も先ほどあった。むしろ、最終評価で出てきたことを基礎にして、社会とのコミュニケーションというものを図っていくための手段として使えないかと非常に強く思っている。

【委員】
 いろいろご意見をありがとうございました。まだ後の議題も控えているので、一応この議題は締めさせていただく。事務局で今日の意見を踏まえ、いろいろな修正、リバイズを加え、委員に改めてファクスなり、メールなりでご意見をちょうだいするというプロセスを経、アンケート等の実際の仕事に入るという進め方をしてまいりたいと思う。いろいろ積極的にご意見をお寄せいただきたい。

議題2の今後の研究評価部会の進め方についての審議を終了し、引き続き議題3の説明を事務局より行い、質疑に入った。

【委員】
 この評価での一番大きなポイントは、広くみんなに使ってもらうという、いわゆる共用ビームラインを使った一般的な成果から、今後は世界ナンバーワンの施設に見合った成果、しかも産業化に結びつく成果、税金に見合った成果をどのように創出するかということである。
 評価の中にもそういうことがあったと思われる。本日の資料を見ると、個々の評価に対しては個別に対応策が記載されているが、重点的にある点を進めていくという部分と、未経験者を意識した利用拡大、たとえばトライアルユースは評判がよかったから継続するという部分は、ある意味では非常に矛盾するところなのではないか。
 もともとSPring‐8そのものがいわゆる共用ビームラインが非常に多く、しかもその共用ビームラインが一部のユーザーには非常に使いづらいシステムである。そういう状況から私たちは建設費を集めて専用ビームラインを立ち上げて、いま人件費を含む経費を会員企業で負担している。トライアルユースをする機関はもう終わったのではないか。つまり、戦略的にSPring‐8を使っていこうという積極的なパワーユーザーに重点を置いて、そこに億単位のお金をつぎ込んでいくべきではないか。例えば、ビームライン担当者を5名増やすと言っていたが、ビームラインが本当に活躍するときには何名の担当者が必要かという人数を考えるべきである、5名担当者をふやして本当に効果があるのか。
 共用ビームラインの80から50で、50というのはいかにも妥当な数字であるが、場合によってはもっと削って、共用ビームラインの幾つかを専用ビームラインにして、そこから成果を出していくというような大胆な改革も検討すべきではないか。アメリカとは事情が違うが、アメリカのAPSには共用ビームラインは1本もなくて、全部専用ビームラインで、すべてミッションを持っている。

【事務局】
 底辺を拡大することと、パワーユーザーなどに重点的にお使いいただくということは、まさにご指摘の通り、相矛盾する部分もある。そういった中で、もっと重点配分のところを多くしたほうがいい、共用ビームラインも半分専用化したほうがいいというご指摘であるが、利用全体煮染める共用利用の割合は50%程度であり、かなりの部分を重点研究に振り向けることも可能かと思われる。
 いろいろなユーザー、特にパワーユーザーのような方々に本当にきちんとした成果を出して頂くことは、まさにSPring‐8の将来に向けて大変重要なことである。そのことについては、ニーズに応じて、さらに拡充していく必要もあるかと思われるが、やはり広く使って頂くと同時に、底辺を拡大することも、その基盤をつくるという意味で大変重要なことである。確かに相矛盾するところはあるかとは思うが、SPring‐8をより充実させていくためには、両方をしっかりと伸ばしていかなければいけない。仮にパワーユーザーだけやっていると、足元が緩むということもあろうかと思われる。両面でT型に伸ばしていくことがやはり重要ではないかと考えている。

【委員】
 この重要研究課題にいわば集中してということと、専用ビームラインをつくる、ないしは共用の専用化というは同じなのか違うのか。

【委員】
 共用ビームラインの場合は、課題選考して評価を行う。その課題選考は年に2回ぐらいだと思われるので、自分がとりたいときにとれるわけではない。学術的におもしろいとかそういう観点で見るので、産業界に役立つ利用というのと共用ビームラインを使えるというのは視点が違うと思われる。
蛋白の場合は、とりたいときにとる。場合によったら無駄なものもとる必要もあるかもしれない。そういう意味では、いい成果を出すときにはトライ・アンド・エラーそのものをSPring‐8でやらなければいけない。そうなると、やはり専用ビームラインからしか成果は望めない。従って、使ってみて論文を一つ書いて、SPring‐8を使ったということで満足されるならいざ知らず、産業化するとか確実な成果を出すのであれば、専用ビームラインというものがどのぐらい動いているかというのが、放射光の尺度だと思われる。
 数字の上では一般の共用ビームラインと専用ビームラインが多いように思われるが、産業界ということを考えれば、産業界みずからが持っているビームラインは3本しかない。これが本当に世界一のSPring‐8が役立っているかについては、これから考えることである。残りの10本ぐらいについては、ぜひとも共用ビームラインはつくらないで専用だけでいくとか、そういう元気のある産業界のビームラインをつくってもらうために支援するとか、トライアルユースはそういうところを見据えていくべきである。トライアルユースした業界には、例えばファンドを持ってきて1億、2億出すからビームラインをつくって、そこから上がった成果でロイヤリティーを戻すとか、そういう思い切ったことをしないと、グローバルな世界ではなかなかやっていけないのではないかと思われる。
 税金を集めたからいろいろな人に使ってもらうという施設にしては、あの施設は非常に高価で、維持費もかかっている。今後は、かなり重点的なテーマに絞るというような発想の転換も必要なのでないか。

【事務局】
 重点研究課題については、非公募型で指名をして、特定の方にお使いいだくというスキームもある。当然、重点課題であっても、公募をするものもある。
 また、まさに、今、指摘のあった専用ビームラインをさらに増やすことについては、JASRIも含めて、私どもの努力がもっと必要と感じている。

【委員】
 こういう対応はどういうプロセスを経て決めたのか。つまり、いま非常に有力なユーザーであるというお話を伺ってわかった。この期に及んで今のような根本的な問題提起がなされるというようなことであると、一体どういうことだったのかという感想も出てくる。要するに、このポリシーを決めたプロセスで、ユーザーあるいはもちろん理研や原研の意見を聞いたのであろうが、参考までに、もっと幅広く学会等々、どういうヒアリングなり何なりをしたのか。

【事務局】
 SPring‐8の運営にあたってはJASRIが行っているが、利用者協議会、理事会、評議委員会等々、運営のための仕組みを幾つか持っている。そういったところでヒアリングもしくは協議を行った上で、決定している。

【委員】
 そうだと思われる。ですから、皆さんから意見を聞けばこういうような形になってしまうが、それでよいのか。十分協議会の皆さんで議論される。そうすると、いろいろな人が使ってみたいし、専用をつくらないでトライアルユースというのでずっと使っていくという形態になるが、SPring‐8というのはほかの施設と違って非常に特殊な、世界に誇るような大型のものである。それが広く皆さんに意見を聞いて、皆さんの形で了解というような形で収めて、ずっと使っていくのがいいのかどうかという問題提起をしたとお考えいただきたい。皆さんの意見を聞くということで、そのときに発言する機会もあった。おそらく、多くの方が本日の資料のような考え方をしたので、こういうふうに纏まったと思われる。

【委員】
 SPring‐8をこれから戦略的にどういうふうに活用するのか。

【委員】
 私のほうで逆な意味でフォローすると、そういう意味ではいろいろな推進協議会とかJASRIに、私もヒアリングで広く意見を求められた。しかし、広く意見を求めれば求めるほど、自己矛盾を含んだこういう結果になる。ですから、例えばこういう研究評価の場では、そういうことでなくて、ちょっと踏み込んだような方針も必要なのではないか。

【委員】
 私はパワーユーザーではなくて、ウイークパワーユーザーの立場にあった。こういう大型装置は、たまたま運よくこれを使えたときに、研究ができる。
 パワーユーザーからすれば、自分たちが装置もつくり開発して、ウイークパワーユーザーに使われてしまう時間が結構多いことになっているのだと思われる。これができてしばらくの間はみんなやはり使いたいですから、それでウイークパワーユーザーがパワーユーザーに、自分たちだけでやっていないでもう少し時間をくださいと、そんな感じだったのではないか。
 その期間をある程度経て、例えばたんぱくの構造決定は、非常に有力なこととして使えるということがわかってきたために、自分たちにもっと使用時間がほしい言っておられるのであろう。これは構造決定から、物性測定からいろいろな用途あるいはプロセスにも使うという汎用の装置で、混み合うのは仕方がない。今回は一般ユーザーの共用ビームライン使用を80%から50%まで引き下げた。そのぐらいでとりあえず試してみて、それでウイークパワーユーザーの不満がどれだけ高まるかを見ながらというところではないかと思われるが、それではとても我慢できないとか、その辺はどのような状況か。

【委員】
 世界の大型放射光というのは、ヨーロッパに1台とアメリカに1台と日本に1台と、世界に3台しかない。つくったのはヨーロッパが最初で、アメリカがつくって、その二つの運用とかシステムを十分見て、その後にSPring‐8ができた。SPring‐8という放射光の有用性などは、ある程度見えてきているのではないか。ですから、そういう意味で80%から50%というのは妥当かもしれないが、日本がグローバル展開して世界に出ていくときに、世界に誇れるような世界一の施設というのはそんなにはない。しかも、ヨーロッパのものは16カ国で共有している。アメリカの場合でさえも世界2位に甘んじているが、日本は世界一のものを持っている。こういうものをドラスティックに使っていくのも一つの考え方ではないかということである。先生のお考えももちろん、大方がそうだと思われるが。

【委員】
 蛋白の構造決定などは日本が得意で、しかも今やれば成果が出るという時期に入っているのだろうと思うが、そのときにSPring‐8の80%から50%に下げたというぐらいの対応では、蛋白の構造決定ではとても大変だという感じか。

【委員】
 私の言い方が誤解されたと思われる。蛋白質の構造解析の部分をふやせということではなくて、そういうトライアルユースをするような業界があるならば、そこに専用ビームラインをつくってもらって、トライアルユースでなくて新しい芽を育てるということである。蛋白質のビームラインは、ある程度そろっているのでないかと思われる。むしろ違う業界であろう。

【委員】
 トライアルユースのためのビームをむしろつくってしまったほうがいいということか。

【委員】
 そうである。そういう形での専用をつくってやるということである。

【委員】
 それには、例えば業界で1億、2億積めば、新しいビームができるということか。

【委員】
 蛋白のほうはもう十分あるのではないか。理研さんもある。蛋白の場合むしろ何をやるかのほうが重要である。蛋白ではなくて、ナノとかそういうところで、トライアルユースではなくて、もっと使いやすいような環境。それは共用ビームラインではなくて、専用ビームラインにしようということである。

【委員】
 大変根本的なことが続いている。ほかにはあるか。

【委員】
 このフォローアップ自体は提言をある程度きちんと確実に実現させていらっしゃると評価している。SPring‐8は、共同利用というのに非常に重点に置いているが、文部科学省の関係で同じような大きな装置で、必ずしも共同利用を目的としなくても、共同で利用したらいいというのはかなりあると思われる。ここで出されている委員の提言というか、そちらのほうのやり方へも展開していくように、そういうことも考えていただきたい。

【事務局】
 文部科学省が、科学技術研究開発の基盤整備の役目を担っていることから、産業界も含めた共用や、産官学連携、各省連携を進めるなどいろいろと研究機関を外に拓いていく方策を講じている。
 例えば、ナノテクノロジーの分野では、ナノテクノロジー総合支援プロジェクトを開始し、全国で14カ所の施設に委託して、先端的設備を産学官全体の研究者に開放し、さらに、技術者を雇用するなどして前処理や測定の援助体制を整えて、使って頂くといようなことまで広げているところである。
 先ほどの委員の御指摘には対応させていただきたいと思っているが、SPring‐8はこれだけの施設なので、対応するのに時間がかかることはご理解いただきたい。ただ漫然と、少しずつ変えているということではいけないので、中間評価に当たっては、最初の5年間が、施設を立ち上げ、利用拡大していく期間であるという位置づけであったのに対して、これからの5年間は、「本格利用期」であると位置づけ、施設運用の思想の転換を明らかにしている。このような思想の下ではまだ十分な対応ではないかもしれないが、足りなければその思想に従ってさらに対応を追加するという考えで当たっている。
 民間の利用者の中にも、パワーユーザーといえる方々も生まれてきてはいるが、民間全体の動向を見るには、まず、共用ビームラインで行われている課題から見ていかざるを得ない。それを見たときに、まだ民間の使用量が10%以下という段階であるので、民間の方々に開いていくことをまず行い、それによって民間のパワーユーザーが成長し、専用ビームラインを持っていただけるという順ではないかという認識をし、トライアルユースを始めたわけである。
 もちろん専用ビームラインを設置することが可能な場所は10何カ所残っている。これを専用ビームラインとして使っていただけるのであれば進めて行きたいので、宣伝が足りないというのは忸怩たるものがある。専用で使っていただける方々が育ってきていることに応じて、進めていくよう心がけていきたい。

【事務局】
 委員からの指摘の中で、放射光関係については、放射光のコミュニティーというものが存在している。日本における放射光は六つほどあるが、非常に大きなお金が必要なことから、今後それほどたくさん増えるというものではない。その中で連携をとるというようなことも考えていきたいという議論を始めているところである。

(了)

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