研究評価部会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成14年9月5日(木曜日) 13時~15時

2.場所

虎ノ門パストラル マグノリア

3.議題

  1. 大型放射光施設(SPring-8)の中間評価について
  2. 平成14年度科学技術振興調整費の中間・事後評価の進め方について
  3. その他

4.出席者

委員

 小平部会長、田村部会長代理、大内委員、大谷委員、大橋委員、奥田委員、加藤(寛)委員、加藤(康)委員、北澤委員、渋谷委員、寶委員、中村委員、長谷見委員、平澤委員、福山委員、山本委員

文部科学省

 舟橋企画官、伊藤計画官、須藤評価推進室長、土橋科学技術振興調整費室長、川上基礎基盤研究課長、板倉大型放射光施設利用推進室長

5.議事要旨

(1)SPring‐8ワーキンググループ主査の福山委員よる説明の後、質疑が行われた。審議の結果、中間評価報告(案)について部会において了承された。発言内容は以下のとおり。

【委員】
 パブリックコメントの結果はどうだったか。

【委員】
 パブリックコメントによる意見はなかった。部会や分科会での意見を踏まえ、ワーキンググループで議論した結果を反映している。

【委員】
 私は産学連携を推進する立場にいるが、SPring‐8には多額の国費が投入されている中、産学連携、新しい産業をつくり出すという点についての試みや、今後の展望等をお聞かせ願いたい。

【事務局】
 産業界の利用として、SPring‐8には、産業界独自が投資して設置しているビームラインが3本ある。それは数億から10億を超えるようなものである。また、公募による利用も全体の6%程度が産業界からとなっている。
 成果という面からは、ワーキンググループでいろいろ議論があった。放射光施設というものは、例えば新しい製品なり技術開発のうちの計測評価という一面を担うものであるので、SPring‐8の成果がどれぐらいあるかというのは、なかなか難しいところがあるが、例えば、タンパクの構造のさまざまな解析もされており、蓄電池の寿命を延ばすための基礎技術も、この利用によって開発されている。
 また、今回の報告書の中でも、産業界の利用を促進するために支援体制を充実させるべきであるということや、産学連携プロジェクト等をSPring‐8の施設側がイニシアティブをとって行うべきではないかという提言がなされている。この提言を踏まえて、産学連携を進めていきたいと考えている。

【委員】
 産学連携というのは、言葉で言うのは易しいが、実際それを実のあるものにしていくのは、かなりの努力が必要である。SPring‐8では既にそのような方向での試みがいろいろ行われている。そういう状況を踏まえて、さらに産学連携という方向でいろいろ工夫する余地はある。
 それに関して一番大事なことは、これはどこの組織でも産学連携を行う際に問題になることだが、産業界のニーズと、施設側、特にアカデミック、サイエンティフィックな観点からつくられた施設のオペレーション、実際それを使うということに関して一般にギャップがある。その間をうまくつなげるコーディネーター的な人材、システムというのが、非常に大事であり、それに関してSPring‐8では特にこれからも工夫を凝らしていくべきだし、凝らしていきつつあるという状況である。

【委員】
 支援体制の問題やプロジェクトを伸ばすためのコーディネーションの問題は、提言の中にも入っていると思うが、それについて何かいいサジェスチョンがあればお願いしたい。

【委員】
 東京大学の試みとして、3年にわたり東大の教官の約1000名のインタビュー、ヒアリングを行い、産学連携、共同研究にふさわしいテーマのデータベースを構築している。今800名分をインターネットで公開し、産業界に対して産学連携をやってほしいと大学側から提案している。SPring‐8の場合も、相当な知識、経験、産業化できるシーズがあると思うので、それらを外部に積極的に発信することにより、産業界が利用しやすいような環境をつくることも、今後重要かと思う。

【委員】
 報告書の最後に提言としてまとめられている部分について、提言のままで終わってもよくないと思う。提言に対するフォローアップが行われれるような仕組みになっているのか。

【事務局】
 フォローアップということでは、提言された問題について、15年度予算で盛り込んでいるものもあるが、もう少し中期的に考えていく問題もある。
 予算については今まさに財務省と調整を行いつつあるところであり、またその状況については適当な場をいただければ報告したいと思う。一例を挙げると、先ほど指摘もあった、産業利用の強化の観点から、コーディネーターの増員を要求している。また、産業界で不慣れな、余り放射光を使った経験のない企業にもなるべく使っていただくために、試しに使っていただくトライアルユース制度というものを平成13年度に補正予算で3ヶ月だけ行ったが、それにより民間の応募が約1.5倍程度に膨れ上がったということもあるので、15年度からこの事業を定常化したいということで要求している。
 さらに、組織論について運営組織の改革という提言もなされているが、現在、SPring‐8の運営は、理化学研究所、日本原子力研究所という2つの特殊法人と、高輝度光科学研究センター(JASRI)という運営財団の3法人により行われている。これについては、理研の特殊法人改革が来年、原研はその2年後に行われることになっており、両法人の改革のスパンも視野に入れながら、SPring‐8の改革を行っていきたいと考えている。この状況も機会を与えていただければ報告したい。

【委員】
 評価は、その結果が活かされないといけないわけである。今回は中間評価ということで行われているが、次の評価の際には、前回の評価における提言が活かされたかどうかは、評価項目の大きなものとして当然入ってくると思う。フォローアップが当部会としての一番大切な部分だと思うので、事務局よろしくお願いします。

(報告書の今後の取扱いについて)

【事務局】
 報告書については、9月27日に開催予定の研究計画・評価分科会で議論を行い、最終的に分科会として中間報告書として取りまとめ、公表する予定。なお、報告書のクレジットは、最終的には研究計画・評価分科会という形になる。

(2)平成14年度科学技術振興調整費の中間・事後評価の進め方について、事務局より資料に基づく説明の後、質疑が行われた。進め方等については、本日の議論を踏まえて修文の後、各委員の了解を取ることになった。また、中間・事後評価の検討を行うWGの設置及びWGの委員について了解された。主な発言は以下のとおり。

【委員】
 昨年から本部会で「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」の検討を行い、現在指針として出来あがっている。今回の案のようなものはこの指針がベースになると思う。しかし、「1.評価の基本的考え方」のところに、総合科学技術会議の大綱的指針“等”に基づいてとは書いてあるが、肝心の一番のベースになるべき文部科学省の指針のことが一言も触れられていない。
 それから、去年から修正された部分等があるが、改定の際に文部科学省の指針をどのぐらい取り入れようとして考えられたのか。評価の目的や、評価の反映方法等、評価指針を決める際にいろいろな議論があったと思うが、十分反映されているのか。

【事務局】
 文部科学省の指針をどういう形で反映したかについては、実際に反映できているもの、反映できていないものがある。例えば、評価の過程において評価者と被評価者による意見交換の期間を可能な限り確保するように努めるというようなところについては、以前はヒアリング時間が必ずしも十分とれていないところもあったので、ヒアリング時間を多くする等の工夫をして対応することを考えている。
 それから、対応できていない部分。例えば対象となる研究開発について過去に行われた評価を踏まえる必要がある場合、その評価を行った者を評価者に含めるなど、評価の考え方の継承に努め、継続性を確保する。これについては対応は不十分である。実際に審査を行った者を評価部会に入れるという形にしてはおらず、採択時の審査結果も十分整備されていない部分もあり、評価の参考にはできないというところで、若干そういう部分では対応できていない部分もある。
 それから、文部科学省の評価指針や、国の大綱的指針等も踏まえ、例えば評価時期について、中間評価であれば3年というようなものは対応済みである。あと、評価者の選任については、具体的には評価者を選任する際に、年齢、所属機関、性別等に配慮するというようなことで幅広く評価者を選任している。今回、昨年に比べて、女性については4人から5人に1人ではあるが増やしている。若手という意味では、30代の方が昨年はいなかったが、今回は2人にしている。それから、40代の方は10人から18人という形で、できる限り年齢、所属機関、性別等に配慮するような工夫を行っている。
 利害関係者については、大綱的指針や文部科学省の指針でも言及されており、より明確になるような形で記述している。

【委員】
 いろいろ工夫されていると思うが、本部会で議論を重ねた「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」が、資料2‐1の「進め方」案では明示的に出ていないところが、大変残念ということではないかと思う。

【委員】
 私も同じことを思った。資料2‐1の3行目のところに「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を必ず入れるべきではないか。
 もう一つ一番大事なことは、文科省の評価指針は、評価をどのようにするのかという心、評価者や被評価者の心の問題について長い審議の末まとめたものであり、それを入れる必要がある。今の説明にあった細かい実施手順については、よくわかったとは思うが、細かいことに則ってこうやってやれというのではなくて、それではだめなのだというのがこの評価指針である。要するにもっと研究者あるいは研究課題に思いをいたしてやろうではないか、評価を高めていこうではないかということがあるわけなので、「等」ではなくて、ここに「“と”「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」に沿って」とどうして書けなかったのかということを伺いたい。

【事務局】
 その点については、十分議論を行っており、私自身も書くべきではないかと思ったが、実際、振興調整費が文部科学省だけで行っているわけではなく、例えば予算の移しかえ等で他の省庁で行っている部分もあるので、文部科学省だけの指針ではないということもあり、明示的に表現をしない形になっている。ただ、今の意見を踏まえ、そこについては「等」ではなく、明示的に「文部科学省の指針を踏まえて」という形で修正したいと思う。

【委員】
 私もお2人のご意見に全く同感である。ただ、今回はまだパラレルに走っていて、旧来のシステムの中で進められたものに関しての評価が大部分で、新しいシステムになってからというのが非常に少ないというふうにも理解できる。とはいえ、先程の説明のように、資料2‐1をある程度決定版にしようというような趣旨だとすれば、新しい振興調整費をターゲットにしてつくられていないといけないと思う。そういう観点から見ると、至って不十分だと思う。
 今、「心」という発言があったが、まさにその「心」を形にする議論を評価指針の中で行ったわけであり、その形がほとんど表れていないのは非常に残念である。
 例えば、新しい振興調整費の場合、政策提言‐これが象徴的だと思うが‐のように、政策形成に役立つというのが一番大きな謳い文句になっている。しかし、評価の項目を見ると、成果の中に政策効果云々というのはどこにも出てこない。このような評価システムなどはあり得ないわけであり、政策形成に役に立つという部分が評価の項目の中に入らないと、せっかく考えた新しい振興調整費という制度を評価するのにはふさわしくないということになる。
 従来のようにサイエンスメリットを評価すればそれで済むというところにベースがあって、新しいものに置きかえるという作業がされていないように思う。

【事務局】
 そういう意味では今は過渡期になっており、13年度から制度改革をした部分についての評価、12年度までは振興調整費は研究課題推進型のプログラムがあったので、そういうものは実際にはサイエンスメリットというものを大体評価している。13年度以降は振興調整費が科学技術システムの改革に資するようなプログラムが出てきているので、そういうプログラムの中には例えば政策提言があり、そのようなものについては、いま指摘されたような観点で、評価の軸、評価の項目を検討していきたいと思っている。

【委員】
 資料2‐1の別紙の事後評価項目あるいは中間評価項目の「3.研究成果」の部分は、新しい振興調整費の枠に対しても全体としては当てはまるものだと考えているのか。全体だとすると、新しい振興調整費というのは、まさに政策形成に役立つということが一番謳い文句になっているわけなので、全体を覆う評価項目の中にはそういう項目が入らないとおかしい。

【事務局】
 13年度から開始された新しいプログラムについては、研究成果だけではなく、いま言われたような政策提言であれば、実際来年度に評価をするというような形になると思う。実際その時点で政策提言について、個別課題についてこういうところを評価するというプログラムに応じた評価というものを、来年度定めていただくというような形で考えていただければと思う。

【委員】
 そうすると、資料2‐1は決定版ではなくて、来年また検討し直すと考えていいということになるのか。

【事務局】
 基本的には、資料2‐1はこういう形で取りまとめ、資料2‐2を来年度また新しい形で各評価のプログラムが出てきたら、それに応じて決定をしていただくという形になると思っている。

【委員】
 それは納得できない。振興調整費の説明に見合ったような評価システムになっているかどうかをきちんと検討すべきである。

【委員】
 今は、旧制度と新制度が並行しているという事情は確かにあると思う。文部科学省の評価指針でいろいろ議論した中というのは、そういうことと関わらない、むしろ非常に基本的な部分の議論が多かったと思う。例えば評価の目的などにしても、これから伸びる課題をどうやって発掘するかとか、そういう精神が非常に出ていたわけだが、そういうものが何も出ていない。
 それから、例えば結果の取扱いにしても、総合科学技術会議に報告するとか、フィードバックするというのは当然だが、そういうことと同時にそれをどのようにその後に活用するかとか、そういうことも相当議論されて書き込まれている。要するに来年以降も使う基本的な考え方ということで提案をされるなら、やはり評価指針とよく整合性をとるようなものとして、もう少し練り直したものを出すべきなのではないか。

【委員】
 従来からも調整費はあったわけだが、新しい制度に対応するために事務局で工夫され、案を出されている。それを見て、できるだけいいものにしようというのがこの審議会及び部会の意義である。できれば今日決まればいいのであろうが、今日決めてしまわないと1歩も動かないのか、その辺りはいかがなものか。

【事務局】
 できるだけ早く決めて頂きたいと思っているので、個別にご相談をさせて頂くという形で調整をさせていただければと思う。

【委員】
 私はいろいろな研究評価委員会に召集されており、学位授与機構の工学系研究評価を実際に今行っている。将来的には研究評価のやり方を統一する方向で検討頂きたいとは思うが、今回は間に合わないかもしれないので、今の議論は文部科学省で行うものはなるべく統一していったらいいのではないかという話だと思う。実際に私たちは既に個別大学の工学研究評価を行っていて、それが国内で統一されていない基準で行っているので、当面はいろいろなやり方で行うのは致し方ないのではないかと思う。

【委員】
 確かにその通りだとは思うが、研究評価部会あるいは評価分科会の名前で委員を委嘱して評価をお願いする際に、評価がばらばらなのでは、余りにも無責任なので、その場に応じて柔軟に解釈するということはあっても、基本的にはこうだということを言っておかないと、それは成り立たないのではないかと思う。
 したがって、部会で評価指針を作っていながら、それと違うことを行えということになると、この部会がお願いするような話ではなくなってしまうと思う。1年近く検討して作ったものなので、それをなるべく反映する方向で行っていく必要があると思う。
 後でこれは評価が出ると思うが、昨年は分厚い何センチかの報告書を一気に見て、これでどうかという形で行われた。評価表の別紙3のようなものがズラーッと出ているわけで、これですべて終わってしまう。そこに時々「十分でない」とか「優れたものでない」とかいうようなのが出てきて、何だろうと思っているうちに次々に終わってしまう。つまり、この紙一枚にいろいろな人の評価がみんな埋没してしまうと、結局何も評価したことにはなっていないのではないか。
 したがって、もし「悪い」とかあるいは「もう少しやったほうがいい」ということになった場合は、それに対する評価者と研究者本人や研究グループの意見がわかるようなものが、もう少し何かあってもいいのではないかと思う。そういうことも含めて、この前の評価の指針の意味をつけ加えて考えてもらいたい。

【事務局】
 今のご意見を踏まえ修正版を作成し、それを各先生方にできるだけ早くお送りして見て頂き、それで取りまとめさせて頂ければと思う。

【委員】
 そうすると、今出た意見を順を追ってまとめると、まず資料2‐1の「1.評価の基本的考え方」という「~に基づき」あるいは「沿って」というところに、文科省の評価指針について明示的に言及することが、必要だと思う。
 次の「2.評価の目的」というところには、文科省評価指針の「1.2 評価の意義」に盛られているような精神や観点といったものを反映した形で修正すると、皆の納得が得られると思う。
 そういう方向で事務局で検討いただいて、本日のご意見に基づいて、修正版を事務局から提示頂き、メールの上で少しやりとりして、しかるべきところに落ちつくというのが現実的かと思うが、いかがか。

【事務局】
 そのようにさせて頂きたいと思う。

【委員】
 この後のワーキンググループの設定や委員の選定等の議論では、今日の意見を踏まえて資料に修正が入るという前提で、皆さんに考えて頂いてよろしいか。

【委員】
 作文すればいいということではなく、評価の具体的な形をあらわしているのは、例えばこの3ページにある評価項目になるが、野依前部会長が非常に力説していた、研究を伸ばしていくといったようなニュアンスが出るような評価項目の立て方、それから評価のワーキングというのをしていかないと、趣旨が活きてこないと思う。したがって、その点を工夫してもらいたい。
 先ほどの振興調整費のことでいうと、基本方針の中にも、振興調整費の課題募集の中の最初の部分にも同じ文面があるが、例えば調整費の活用の考え方という中に、複数の機関にまたがるとか、境界的であるとかというようなことを規定した上で、「政策誘導効果の高いものに活用する」と結んでいる。ただ、政策誘導効果をどのように考えるかについては、内部のプログラムで違いがあると思う。
 また、配分方針等の作成というところにも同じ文言がある。振興調整費が2001年度から新しく改定されて、従来と違う衣更えがなされた。衣更えの内容は非常に高く評価しており、ぜひ、こういう資金を本当に政策誘導効果が果たせるように活用していただきたいので、そのような趣旨に合う評価をしていく必要があると思う。

【事務局】
 評価の目的のところで今指摘された点について記述しているが、今の意見を十分踏まえ、評価を進めたいと思う。

【委員】
 評価項目は、別紙ということになっているので、まず本文の基本的なところを修正し、実際に評価にかかる段階でいろいろ意見も出てくるかと思われるので、それに基づいて別紙はまた直していく。
 もちろん文言の修正はそれでとどまってはいけないわけで、後でお願いするが、評価の各ワーキンググループの主査はここの部会のメンバーであるので、ここでの了解を十分体得されて評価されることをお願いしたいと思う。

【事務局】
 委員から問題提起された点について一つだけ追加情報を。振興調整費の改革を行い、政策誘導効果の高いものにという方針を作った。実際、振興調整費の運用全体について政策誘導効果が高いものになっているかどうかということは、評価しなければいけないが、これをどの段階の評価でやるかということは考えていく必要があると思う。
 評価指針の議論の際に、階層構造ということを十分議論して頂き、例えば、政策としての評価と個々の課題の評価は違う階層であるということであった。今、議論をお願いしているのは、個々の課題の評価であるので、場合によってはもう一つ上の政策としての評価のところで、その辺りの政策誘導効果がきちんと強く出ているようなプログラムの運営がなされているかということを、集中的に評価をするということであるかもしれない。やはり各々の課題のところでも、それぞれについて政策誘導効果がどれぐらい出たかということを評価すべきなのかもしれない。それについては、個別のプログラムによっても違った事情を持っていると思うで、共通的な評価項目のところで書けるのか、個別のプログラム毎の評価項目で書いた方がいいのかについては、私も改革と評価指針作りには携わっていたので、現在の担当者にも過去の経緯も含めてアドバイスをしながらやっていきたいと思う。
 極端な例を一つ引くと、先導的研究というプログラムがあり、これは個々の課題そのものは純粋な研究であり、そういう負荷だけをつけないような研究をいかに全体として拾ってきているかというのは、プログラムとしての評価である。そこは、それが政策的誘導として優れていたかどうかという評価になると思う。個別課題の中間・事後評価では、そのような視点は、余り入らないのではないかと思う。
 一方で戦略的研究拠点の育成などは、個別の課題そのものがいわゆる科学技術システム改革の方向性という、その政策にいかに反映をされてきているのかという点は必要になってくるが、こういうものは個別の課題の評価の中に政策的な誘導効果の意味合いが大きいものであるのではないかと思う。
 このように、プログラムによって政策誘導効果の重みが全然違うような気がする。場合によっては、先程事務局が説明した個別の評価項目の中で、その辺を反映していくほうがいい場合があるのではないかと思う。いずれにせよもう少し検討させて頂きたい。

【委員】
 ワーキンググループの審議が来月から始まるので、今月中に固めてもらいたい。それと、政策誘導効果の件であるが、別紙の「3.研究成果(2)波及効果」という項目がある。波及といった場合にサイエンス・コミュニティーの中での波及と、政策への波及の2通りがあると思う。サイエンス・コミュニティーの場合は、「(1)科学的価値」で反映されると思うので、「(2)波及効果」を「政策誘導効果」と書き直せば、趣旨が反映されるかと思う。

【委員】
 そういうふうになり、なおかつそれ以外の波及効果もあるわけなので、そういう項目が入ってくればいいと思う。政策誘導効果の測り方としてどのような項目を入れればよいかについては議論する必要があるし、今、事務局が述べた問題もある。ただ、全体として振興調整費の方向性を変えたということは、評価項目を見れば明らかにわかるということが必要だと思う。単にサイエンスメリットを中心に評価すればいいというのとは趣旨が変わったのではないかと理解していた。このあたりについて議論いただければと思う。

【委員】
 ワーキンググループはサイエンスメリットを中心にピアレビュー的にという表現になっているが、この評価項目について答えを一応上げてくるわけで、最後のプログラム横断的な視点での議論というのがこの部会で行われるということになっている。できればそのピアレビューの段階でも政策誘導効果、あるいは新しいものを生み出す効果があるかということが評価事項に、―もちろん事項によってそれは随分違うと思うが―、観点として含める方がいいと思う。文章を見直すときに別紙の特に「3.研究成果」の評価のところの波及というと技術波及の話、いろいろな読み方があるので、そこの表現を工夫して、本日の議論の中身が取り込めるような格好にお願いしたい。
 それから、ワーキンググループで今後評価をする場合には、そういった観点も本日の資料の中では含んでいるのだという立場でお考え頂ければと思う。それを踏まえて、事務局の方でこの2‐1の修文をして頂く。でき上がったものは、次回にでも皆さんに確認していただくとして、評価作業はそれと並行して進めさせていただくということにしてはどうかと思うが、いかがか。

【事務局】
 できるだけ早く修文等を行い、ご連絡させて頂く。10月から実際にワーキンググループの作業が始まるということもあり、できるだけ早く資料2‐1の「進め方」について固めたいと思っている。

【委員】
 14年度の中間及び事後評価の検討を行うワーキンググループを決めて、実際に作業を始めるが、資料2‐3のとおり、13年度のものに情報・通信WGを加えて11のワーキンググループを設置して行うことになる。14年度に評価を行う課題は決まっており、その課題の中身を見ると、情報・通信WGを設置した方がいいということで、11のワーキンググループを置くことになった。
 これはピアレビュー的なものであり、振興調整費には各種プログラムがあるが、プログラムの中にいろいろな分野の課題が入っているので、それをばらして、専門家集団として関連のある事項を評価するというシステムになっている。
 11のワーキンググループの主査にはこの部会から入って頂き、メンバーについては、いろいろな観点からこういうメンバーになっている。この場で皆さんにもお目通し頂き、特に「進め方」等で出ているように、評価に当たる方々が、振興調整費で走っている研究開発プロジェクトそのものに関係しているというようなことがないかどうか。そういう観点からのチェックをここで行う。
 また、これは計画を承認する部会というのは別に行うが、計画承認の部会とのメンバーの重複はどのぐらいになっているのか。

【事務局】
 振興調整費の課題選定は、研究計画・評価分科会の下に科学技術振興調整費審査部会で行っている。選定をする部会のメンバーとは一部重複があるが、基本的にはほとんど重複がないという状況である。

【委員】
 選定したある種の責任というもの、選定して終わりというわけでもないので、一部の方が重なっているのは当然それなりの意味があると思う。また、選定したときはこういう読み方、計画をこんなふうな観点から評価されてとったのであるというようなことも、中間評価、事後評価のほうに伝わっていくことは必要である。全く切る必要はないと思うが、全く重なっても具合が悪いと思う。その点は、適切なオーバーラップがあるのはいいことかもしれない。

【委員】
 今の「7.評価結果の取扱い」もそうだが、実施課題の関係者に通知するというのと同時に、少なくとも中間評価結果は選考を行った評価委員に伝えてもいいと思う。多分、選考される方は、今後も選考を行う可能性もあるので、自身の選んだ課題がどのような評価を得ているかということを、ぜひフィードバックしていただきたい。課題の関係者だけではなくて、関係者の中には選考した者も含むと考えた方がいいと思う。

【委員】
 それは大変重要な視点で、選ばれた計画がどういうふうに走るかということでなくて、今後選ぶ計画にそれが反映されるということは、評価のための文科省指針でも新しいものを育てていく、伸ばしていくという観点から非常に大切なことだと思うので、ぜひ今のような読みぶりでフィードバックをかけることをお願いする。

【委員】
 私は審査部会に出ていた者として、先程事務局がおっしゃられたことがよくわからないので、教えてほしい。ワーキンググループから上がってきて、審査部会が新しい科学技術システムの改革とか科学研究の在り方の新しいものを作るというのを目途にして、振興調整費を今までとは全く新しくするというふうに伺い、出てきたものについてこれだったら期待できるだろうと思ったものを選んだというふうに思っている。先程のサイエンスメリットだけでこれは評価して、そうではないものについては別に評価するとのことであれば、それはどこが行うことになるのか。
 「7.評価結果の取扱い」というところを読んだときに、私もすごく「あれっ」と思った。新しい振興調整費に合っているかどうかということを評価するところがここでないのであれば、要するに中間評価はサイエンスメリットだけで評価するのだとすれば、先程言われた日本の科学技術のシステムを変えていくとか、人材養成を変えていくというためにこの研究はどれだけ尽くしたかという評価をどこが行うのか。

【事務局】
 それについては、12年度以前は、資料2‐2のような経過措置として実施したプログラムということで、例えば、総合研究や、目的達成型の脳科学研究や、ゲノムフロンティア研究等の、サイエンスメリット中心のいわゆる研究開発プロジェクトというようなものを選定していた。
 13年度の制度改革により、これらのプログラムは13年度から新規採択を行わず、経過措置として継続分のみが行われている。これらの研究開発課題については、サイエンスメリットという観点からその研究がどうであるか評価をする必要がある。13年度以降に新規採択された課題は、先程事務局が幾つか申したように13年度に科学技術システムの改革ということで振興調整費が制度改革をされて、例えば戦略的な研究拠点の育成や、若手任期付研究員の支援のように、単に研究開発課題を推進するというよりは、もう少し広く今の科学技術基本計画の中で掲げられた人材の流動性といった問題や、研究開発システム自身の問題等を取り上げてプログラムとしている。13年度以降に採択したものの評価については、できるだけそのプログラム、政策目的に沿った評価項目、評価の軸を考える必要があるのではないか。そういう趣旨で説明を行ったものである。

【事務局】
 補足すると、本日の資料2‐2の2ページ目に「2‐1 研究評価(サイエンスメリット)を主な目的とする WG」があるが、今の土橋室長の説明のように、今年は12年度までに採択された研究課題しかないので、サイエンスメリットの評価が先に来ている。13年度以降の新しい制度については、プログラムによってはサイエンスメリットの評価はほとんど必要なく、むしろシステム改革にどれだけ貢献する活動が行われているかといったような観点から、ワーキンググループで議論していただくことになると思う。
 先程、資料2‐1はどちらかというと恒久的な長いものとして定め、2‐2は毎年変えるものとして定めるという説明を行ったように、来年以降は、資料2‐2の毎年のに相当するところで各プログラムの性格を反映したものとすることになると思う。

【委員】
 それが資料2‐1の中に全然入らないのは、おかしいと思う。資料2‐1の中で、振興調整費がこのように新しく変わったので、評価もこのように行うということを記述せずに、個別の項目の中に入り込んでしまうと、実際どのようにシステム改革に役立ったのかはわからない。したがって、7を改良して何らかの記述を加える。長く記述を変えないものの中に、制度改革された部分が全然記述されないというのは、矛盾するのではないか。

【委員】
 確かに指摘されたとおりであり、その辺を修文して盛り込むのであれば、資料2‐1「3.評価の方法」(1)の4行目の「専門的な視点からの」という辺りを、もう少し膨らみを持った表現にする必要がある。さらに、「7.評価結果の取扱い」というところで、評価結果は報告することになっているが、そこをもう少しきちんとした表現にする必要がある。

【委員】
 これまでの振興調整費とやり方が大分変わってきているというのはわかったが、例えば、資料2‐1の3ページの事後評価項目という部分を見ると、実際に私が各分野の主査を任されたとすると、ほとんどのプロジェクトはaにせざるを得ない。実質上はほとんどがそういうことになるのではないかと思う。bがつくようなプロジェクトがあったらおかしい。ほとんど選択の余地がない形のa、bのつけ方になっていると思うが、ここは何か政策的な意図があってそういうふうにしているのか。つまり、ここのレベルの委員会に上がってくるときには、全部aで1個ぐらいしかbがない、そういうプロジェクト以外あり得ないというふうに感じられる。
 例えば「(2)波及効果」、「a期待できる」、「b期待できない」とあるが、これはほんの非常に小さな項目だけならいいが、結構大きなプロジェクトもあるわけです。それが全く「b期待できない」とできるような、そんなプロジェクトがあっていいのだろうかということを感じるが、あえて非常に端的にイエスかノーぐらいのことにしておられるのは、何か意味があるのか。

【事務局】
 例えば研究成果の中で3段階で分けた場合に、どちらに入るかわからないというような、要は高いのか低いのか、あるいは中ぐらいなのかということをできるだけ避けて、はっきり高いのか低いのかと決めてもらって、それで評価したほうがわかりやすいだろうという視点で二つに分けた。総合評価のほうで、実際に去年の評価を見ても、必ずしも全てがaになっているわけではなく、bの評価もある。

【委員】
 総合評価は三つに分け、その他はイエス、ノーに分けましたよね。

【事務局】
 その中で例えば評価が低いもの、b評価のものというのも当然研究成果の中で、例えば波及効果が低いものとか、あるいは情報発信が必ずしも十分でないものというようなものをb評価というようなものも出てきて、最終的に総合評価が低いものとかそういうものも、実際に去年の評価を振り返って見れば出てきている。
 ですから、意図的に全体的に最終的な総合評価がaになるような形で必ずしも作っているわけではなくて、そこが評価しやすいように細かいところはa、bにして、大きなところではa、b、cという形で総合評価をして頂くというような視点で、この評価の項目を作成している。

【委員】
 これは他の所で評価に携わっている方々も皆一様の悩みだと思う。本来、開発研究の評価ですからカテゴリカルに決められなくて、むしろ文章で何ページか書くような報告書が理想なのであろうが、たくさんのものを評価して、予算要求まで持っていかなくてはいけないということがあると、どうしても非常に立ち入ったニュアンスまで理解できない方にも評価の結果が見える形にしなくてはいけない。私の想像では、こういうふうに出ると、10人の委員がいらしてaをつけた方が8人、「b概ね達成している」が2人とかという棒グラフ的な一覧表が、それぞれの項目についてダアーッと出てくる。その中で並べて比較的に疑問がある。あるいは「達成していない」というようなところがついたものは、どうしても要求で後回しになっていくというようなプロセスが頭に浮かぶ。
 先程からの新しい振興調整費のあり方からすると、本当はもう一歩工夫が欲しいが、評価に当たられる主査の方々、いかがでしょうか。これは一応共通項目、最低限こういうことはしてほしいという事務局の要望だと思うが、やはり全体にわたるコメントというか、文章的な部分というのは、当然こういうどれかにマークするにもその背景の説明文書をつくるべきだと思うが。

【事務局】
 付け加えさせて頂くと、これは各ワーキンググループでご議論して頂いてと思っているが、例えば、総合評価でどういう評価をするかということを最終的に評価結果の報告書に記述して、どういう考え方でaやbの評価になったかという内容を記述するようにしたいと考えている。単純にaやbであるというものだけであると、なぜそのようになったかというところが必ずしもわからない部分があるので、今年はそういう工夫をしたいと考えている。

【委員】
 そういうことでしたら、ぜひ評価結果がこの部会に上がってくる時点でもaが幾つというような表だけでなくて、そのもとになっている文書も出てくれば皆さんの広い目に映していただけると思う。特に資料2‐2の1ページ目にあるように、13年度以降に実施したプログラムの三つ、若手任期付研究員支援、先導的研究等の推進、それから緊急研究というのは、いずれもa、b、cをつければ済むような感じのプログラムではないと思う。主査の方には大変ご苦労だとは思うが、課題ごとに工夫が必要だと思うので、ぜひともよろしくお願いしたい。
 新しい調整費も走り始めたばかりであり、初めてのそれに対する評価システムで行うということなので、走りながら突き合わせていかなくてはいけない部分が出てくると思う。共通にリファーされる資料2‐1の中身については、先程からの議論のように、もう少し練っていただく。その前提のもとにワーキンググループを11スタートさせて、作業に取りかかる。
 そういうことで作業の方は進ませて頂くが、2‐1については十分よろしくご検討ください。メール等を使って、委員の方々との間のフィードバックも十分はかって頂きたい。

(3)前回の議事録(案)について、所要の手続きの後、議事録として公開されることとなった。

【次回の予定】
 次回は、12月を目途に開催予定。主な議題としては、科学技術振興調整費による実施課題等の中間・事後評価を予定。

(了)

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(科学技術・学術政策局計画官付評価推進室)