研究評価部会(第9回) 議事要旨

1.日時

平成14年7月19日(金曜日) 10時~11時30分

2.場所

虎ノ門パストラル マグノリア

3.議題

  1. 大型放射光施設(SPring-8)の中間評価について
  2. 調査研究報告「米国における公的研究開発の評価手法」について
  3. その他

4.出席者

委員

 小平部会長、田村部会長代理、大谷委員、大橋委員、奥田委員、小幡委員、北澤委員、渋谷委員、平澤委員、福山委員

文部科学省

 山元科学技術・学術政策局長、伊藤計画官、佐伯評価推進室長、板倉大型放射光施設利用推進室長

5.議事要旨

(1)SPring‐8ワーキンググループ主査の福山委員より、大型放射光施設(SPring‐8)に関する中間評価報告(案)の説明の後、質疑が行われた。審議の結果、取りまとめについては、福山主査に一任され、所要の修正の後、中間評価報告(案)について広く一般からの意見募集を行うこととなった。主な質疑は以下のとおり。

<質疑>

【委員】
 SPring‐8の評判の良さは研究者の方から断片的に伺っていたが、今の説明で、それが実際の評価作業の中で確認されたという感を持っている。
 こういう非常に大きなお金を使って行われる場合の評価の枠組みについてコメントしたい。中間評価であるということから、第一には計画に対して実績がどうなのかという、計画の部分がどうだったのかということを、まとめておいていただきたい。まずは計画に対して実績がどうかという比較が第一の視点である。
 次にその内容であるが、独立行政法人や、その他の機関評価のときに通常とられる枠組みとして考えると、第一には費用対効果について触れろということになっている。
 2番目のポイントとしては、効果の中身に関してであるが、この点については、非常に詳しく、その質が高いということが報告されている。
 3番目は、コスト(費用)の中身に関してである。
 以上の3点は業務の中身に関することであるが、4点目としては、マネジメントがどのように行われたのかという、マネジメントの在り方である。これについては、特に研究運営の在り方について、いろいろな改善点を含めて、報告がされたと理解している。
 このように見ると、中身として、どれだけお金をかけたのかというコストと、こういう大きな装置を建設するプロセスとして、予算の計画に対して実績としてどうだったか、また運用に入ってからはどうなのか、といったことが分けて書かれていれば、素晴らしい成果を出すにはどれぐらいのコストがかかるかという、相場観みたいなものができていいのではないかと思う。

【委員】
 SPring‐8は、建設費だけで1100億円と大きなお金を使っている。当初の計画予算との関係に関しては熟知していないが、加速器の性能は当初計画したときよりいいものになっている。そのような側面もあるぐらい加速器の建設はうまくいっている。費用対効果という観点でそれを相対評価するのは非常に難しいが、加速器自身のすばらしさに関しては、ワーキンググループとしては非常に感銘を覚えた。
 既に供用が始まっているが、初期のビームラインの調整等々をやりながら実験をするという難しい状況にもかかわらず、注目すべき成果は既に出てきており、効果に関しては今の時点で特にあえてコメントするようなところはない。最初の計画予算との比較は今の段階ではできないが、計画したときより特に不足な部分があるという認識はいずれの部分に関しても持たなかった。
 ただし、誕生のときから運営母体と設置母体が違うという多重構造があり、その設置母体がこれから近い将来設置形態も変わるという中で、マネジメントに関しては、明らかに工夫したほうがいいところがある。

【事務局】
 補足説明をさせていただきたい。
 まず、計画に対する実績について。SPring‐8計画については、一番重いものとして、「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」という法律に基づく基本方針があり、もう一つ、科学技術・学術審議会の前身である、航空電子等技術審議会の20号答申がある。何れの計画にしても、数値的な目標は記載されていなく、例えば、広く共用に供することとか、国際的に開かれた施設にすることという、定性的な計画となっている。今回の評価においては、法律に基づく基本指針や20号答申の中に示された項目を、すべて盛り込んでいる。ただ、定性的な計画であるので、報告書の中では比較論的な記述は行っていない。
 次に、本プロジェクトの当初予算との関係についてであるが、平成3年の着工時に1100億という大体の資金計画が設定され、ほぼそのとおりに予算が使われた。性能は主査の説明通り、ビームの安定性や絞り込みなどが予想以上にうまくいっている。予算については計画通りにいっており、それ以上の評価はしていない。
 費用対効果の問題は、ワーキンググループにおいても議論になったが、この報告書では、研究面において、成果が何件出たのか、論文がどのぐらい出たのかというところにとどまっている。
 あと、コストの中身で、予算の内容については審議に当たり、光熱量、人件費等がどのぐらいかかっているかということも説明したが、大型の放射光施設は一品物であり、海外の施設の比較も行ったが、それがいいのか悪いのか。ただ、複雑なマネジメントはもう少し何とかしたほうがいいのではないかという、定性的な評価をいただいたと認識している。

【委員】
 費用対効果といった場合、経済学者はすぐ効果のほうはお金ではかったものしか考えないが、特にサイエンスの成果を目指しているこのような施設の場合には、サイエンスの領域の中での効果というのを強調すればいい。もちろん経済的な波及効果もあるが、これは分析するのが難しい問題で、専門家がある程度時間をかけて分析しないと、信頼できるものにはならないので、これは別途考えればいい。
 したがって、まずは直接的な効果として当初目指した性能に対して、その性能をどれほど上回った装置が実現できたのか。これは内容に関わる第一のポイントになる。それと、今度は利用の側面で、この中にも触れてあるが、例えば直接的なマシンタイムが9割ぐらいの利用率になっているというようなことは、非常にすばらしい話である。
 それから、直接的な成果として、例えば論文の数といったような数値をあげていく。それが、海外の施設と比較してどれほど優れているのかというようなことが強調できれば、効果の中身として十分である。
 お金に関しては、これは何年かにわたる年度計画であろうが、今の説明のように、当初予算の範囲に入ったというのは、数値の上で明確にしておいた方がいい。

【委員】
 ファクトのデータとして、SPring‐8の世界の中での役割や位置付けについて、計画時のものと、現在それを果たせているのかについて触れていただきたい。
 費用対効果については、社会との関わりといったものもある。また、他の分野の科学技術の発展、例えばバイオとか環境とか、あるいはナノテクノロジーとかといったものに対して、このSPring‐8がどれだけの寄与をしているかということを入れたほうがいい。
 それから、外国からの利用申し込みがどの程度あるのかといったことを、海外との比較においても具体的に入れたほうがいい。
 最後に、産業界の利用率が現状は6%で、これを高めたいという話があったが、これについては、利用者によって利用料に非常に大きな差があり、産業界が利用する場合は利用料が高いということも聞いているので、そこまで触れたらいいのではないか。

【委員】
 産業界の利用に関して、利用経費に格差が非常にあるからという点については、ファクトとして簡単にお答え願えるか。

【事務局】
 利用料金については、成果を公表するか、占有するかにより、分かれている。成果を公表する場合は、産業界であっても無料であり、占有する場合は、8時間47万円の利用料が生じるという体系になっており、必ずしも産業界を利用料金で差別しているということではない。

【委員】
 SPring‐8は大変すばらしい施設であり、物理化学から生物学まで非常に広い分野で使われていて、その潜在能力を最大限生かすことが非常に重要である。非常に広い分野でいろいろなビームラインを作って利用しているが、こういうことを利用する分野は、どんどん変わってくる。例えば、構造生物学はポストゲノムで重要性が増している。その際に、今使われている、あるいは今後計画されているビームラインの分布と実際の需要とが、マッチングしているかどうかが非常に重要なことであり、研究分野とそれがマッチしているかということが、少し気になる。
 もう一つ、共用で使える部分と、専用で使える部分がマッチングしているかということがある。例えば資料1‐1の30ページと31ページのビームラインを見ると、共用ビームラインが25本で、専用等のビームラインが20~22ある。もちろん研究課題数とマシンタイムは比例しないが、右のページを見ると圧倒的に共用ビームラインにかかっている課題数が多い。これはアンバランスではないのか。マシンタイムでいえば、片一方が空いていて、片一方が混んでしまっているというようなことがないのか。それは非常に重要だと思う。
 また、それと関連して、例えば構造生物学分野を見ると、共用ビームラインは2本で、専用ビームラインは2~3本ある。日本中の構造生物学者が2本の共用でやる。片一方で理研が2本持っている。それが本当にいいのか。つまり、今後ビームラインを作れる余地も減ってきているので、本当に有効利用するためには需要とあわせた利用計画になっているのかどうかが重要である。

【事務局】
 今までは、SPring‐8を多くの方々に使ってもらうということで、例えば専用ビームラインも希望があれば、それほど難しい条件をつけずにつくっていただいたという状況はある。残りが15本になってきたので、この報告書でも、SPring‐8全体を見渡して、どの分野にどのぐらい資源配分をするのかということを、きちんとしかも迅速に意志決定できるようにという提言を頂いている。この提言を受けて実際にそういう体制に改善していきたいと思っている。

【委員】
 私もこれをチェックして、いろいろ聞いたが、まず計画について言うと、第2世代といっているものに筑波にあるフォトンファクトリーがあるが、第2世代の放射光というのは、とにかく放射光というのは出るのかというところが一番の関心であり、それは確かに出て、実験に非常に役に立つことがわかった。
 それで、放射光を完全に有効に使えるようにということが、第3世代の放射光をつくろうという大きな理由だった。日本ではSPring‐8という形で実現して、アメリカとヨーロッパにもそれぞれできた。もしSPring‐8ができなかったら、恐らく日本の放射光利用の研究は大幅に遅れていたと思う。現在それが世界のレベルとほぼ同じレベルでいっているということ自体、計画が正しかったということであるし、しかも予算の中でできたことは、すばらしいことだと思う。
 それで問題は、先ほど言われた費用対効果ということで、これは私どもは一番気にしていたところです。基本的にはできたものに対する計画通りの性能がきちんと出ており、むしろ外国よりいい性能が出ている。この性能が費用対効果というなら、いかに効果がもっと拡大するかということが、これからの問題なのではないか。一部の人たちがそれを使っていて、よかったと満足しているのでは、結局これだけのお金を使ったことになっていない。そこが一番のポイントだと思う。
 また、利用分野を固定してしまうのではないかということについていうと、SPring‐8では、利用協議会というのがあり、そこで行っているのだが、現在の利用者が次の利用者を選定している。それではいつまでたっても、新しい利用者は出てこないのではないかということになるので、そこは、SPring‐8側が新しく利用者を開拓していかないと、利用者が選んでいるのでは、自分たちと同じグループしか選ばないのではないかということになる。したがって、それはこの提言の中に入れさせていただいている。
 それから、専用ラインと共用ラインの話であるが、ビームラインには原研、理研、共用ラインの放射光の研究施設がある。三者がそれぞれやっていたのではどうにもならないので、何とか一体的な運営をやって、全体的に利用できるようにしてもらいたいというのを、何とかこの提言の中ににじみ込ませたい。これは、今後どういうふうにやっていくかという問題だと思う。ここに出している提言を、何とか生かしていただければ、今の費用対効果に対しても十分答えが出るのではないかと思う。道具としては、最大のものができているので、使い方によるのだということが、この中間報告で出したかったところである。

【委員】
 今の発言に関係するが、現在フル稼動していて、利用者も非常に多いということだが、分野によってはこの設備や共同利用について、十分周知されていないのではないか。私が一番関係しているのは、この分類でいうと、医学イメージングになると思うが、件数もそれほど多くない。また、成果の代表例としてウサギの耳に癌をつくって、その周りに血管が増えているというような図が出ているが、これは一般の方が見てもそう印象的でもないし、専門の方がこれで人間の難しい癌に応用できるとも思いつかないと思う。
 今の公募の仕方、審査の仕方に満足して行っていると、優れた研究を十分取り込めない可能性があると思う。

【委員】
 SPring‐8は見学させて頂いたことがある。今後は運営側の主体性をどのように強化していくかだと思うが、このような先端の大型共用施設ができて、現地を訪問した時にいつも気になるのは、研究者が自分の研究もできなくなるほど、技術的な支援に忙しくて、非常に不満を抱いているケースが多いことだ。この報告書にも、ビームライン担当者の努力が非常によかったとか、今後、ビームライン担当者、コーディネーター、技術支援者の役割が一層重要と書いてあるが、ビームライン担当者とは、研究者、技術支援者どちらを指すのか。昔の職人のような技術の高い、ビームラインの高級技術者、支援者をもっと重要視して、養成していかないと、素晴らしい施設が出来ても、研究が発展していくのが難しいと思う。研究支援体制の整備などを強調すべきだ。
 もう1点、SPring‐8を中心として地域に一大科学技術組織をつくる計画を聞いた。今回はSPring‐8だけの評価だが、今後はこの施設と他の放射光施設、或いは関連した施設との連携、研究上のネットワークを考えていくべきではないか。この点も強調して頂きたい。

【委員】
 今後このSPring‐8の施設がうまく機能する上では、理研、原研、JASRIの三つの関係をいかにうまく機能するように配慮、コントロールするのかが一番大事だと思う。独法化により、今までの立場とは変わると思うが、お金を持っているところを、お金を持っていないJASRIがコントロールするという構造になっているので、その辺りに一番注意を払うことが大事だと感じた。

【委員】
 先程の主査の説明にあったように、完成後の性能が当初性能を上回るものであったと言われると、少しうがった見方をすると、当初計画以上の過剰な施設ではなかったかと思われてしまうので、ここは表現を変えた方がいいと思う。
 また、皆さんもご指摘のように、今後の運営システムの問題であるとか、どのようにマネジメントするかということが、かなり重要だと思う。これについては、25ページ以降に運営システムの改革ということで、戦略的な研究の推進というところがうまく書かれていたので、これはいいと思う。実際に、このような戦略策定等をどこがやるのかが、これからの課題になると思う。
 もう一点は、パブリックコメントとか一般に評価や何かをわかりやすくするためには、経済効果というのは一番わかりやすいが、もう一つの重要な要素であるサイエンスとしての効果というか、評価というか、それをどうやって定量的に表現するかについても、やはり課題として何か表現してほしいと思う。

【委員】
 「当初予測を上回るものがあり」というところは、WGとしての本当に率直な印象である。意味するところは、設計ぎりぎりのところ、経費もぎりぎりのところで計画をつくって行っている中で、非常に優れた人物の特異な能力で思った以上の性能が出たということが背景としてあり、これは大変なプラスのところだと思うので、強調したいということで入れている。

(2)文部科学省科学技術政策研究所齋藤芳子研究員より、調査研究「米国における公的研究開発の評価手法」について報告が行われた。

【次回の予定】
 8月下旬から9月上旬を目途に開催予定。議題としては以下を予定。

  • SPring‐8の中間評価結果について
  • 平成14年度科学技術振興調整費の中間・事後評価の進め方について

(了)

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(科学技術・学術政策局計画官付評価推進室)