研究評価部会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成14年2月20日(水曜日) 15時~17時

2.場所

経済産業省 別館 1111会議室

3.議題

  1. 研究開発評価の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 野依部会長、田村部会長代理、浅井委員、大谷委員、大橋委員、奥田委員、北澤委員、渋谷委員、平澤委員、福山委員、行武委員

文部科学省

 山元科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、磯田政策課長、川上計画官、佐伯評価推進室長、松川学術企画室長

5.議事要旨

(1)事務局より資料に基づき説明を行った後、資料1-2について質疑が行われた。

<質疑>

【委員】
 この指針の対象及び位置付けはどの程度のものか。

【事務局】
 基本的には、強制力を持つ法規ではないが、対象としては、大学等も含め、文科省の所管にある研究機関や、そこで研究を行う方と研究評価を運営する方を考えている。

【委員】
 留意すべき点に、どのようにすれば評価活動が活発になるかということを、書き加えていく必要がある。いい評価とするには、評価者の積極的な働きが必要である。そのためにも、評価者には責務ばかりでなく、インセンティブを与えることが重要である。その部分が明確に表現されていない。
 評価とは、単に評価者が研究成果に対して採点するという類いのものではない。何のための評価であるのか、その目的を明確にすることが重要である。昇給・昇進のため、プロジェクトを採択するため等、評価の目的により、評価の基準や見所は異なる。
 前回、レビューの方法として、「ピア・レビュー」と「横断的に第三者的な立場や分野の方も入るもの」という2つの型があることが議論された。評価を通して研究を活発にすることは大事であるが、文科省の特徴を加味すると、研究者集団の自律性に基づく、自らのピア・レビューを含む評価を踏まえて、イニシアチブを尊重する方向に評価活動を持っていければいいと思う。第三者評価についても、評価者に対し、「このようなものが政策に反映し得るので、しっかりやりなさい」というようなことを、盛り込めばいい。政策決定者が評価結果を尊重するという意思表明をすることが、評価者にモチベーションを与える一番の方法だと思うし、それを謳えば評価者は真剣になってやると思う。ピア・レビューの場合でも、例えば物理の分野の中でどの部分を推進するのかを、自分達で決めさせれば、自分達がそのプライオリティーを持って進めるようになる。政策決定者が評価結果を尊重することになると、評価者は元気づくが、評価者には評点はつけてもらうだけで、後は別の所で決めるとなれば、元気が出ないのではないか。特に文科省は、ボトムアップの要素が非常に強いので、研究を活発にするために評価もきちんと行うということを、前面に押し出すことが、評価者に対してインセンティブを与えることになると思う。

【委員】
 自己点検・評価結果がネガティブな面に使われてきたところがある。そうなると評価をしても意味がないと言う人が出てくる。したがって、評価結果の扱い方がきちんとできているといい。資金配分だけに反映されるのでは困る。

【委員】
 例えば、3.2.1研究開発課題の評価の共通事項で、最初に課題が3種に区別してある。実施課題の評価をするという視点では、非常に明快なわかりやすい区別であるが、資金の配分の所とのサイクルが完結していないと、結局は一方的な評価に終わってしまうことになる。マネジメントのサイクルが完結しなければ、結局この評価では、何をしたのかということになる。
 本部会の検討課題ではないかもしれないが、国立大学の法人化の議論の中で、研究が今後どのように遂行されるのかを考えた場合、国立大学の個々の研究者に関しては、既に科研費という研究助成の仕組みがあり、目に見える形になっているが、例えば、学内の研究センターや附置の共同利用研究所といった、組織として研究を行っている所の研究活動が、今後どのように担保されるかが不明であり、研究所サイドにいるものにとっては、不確定要素があり不安である。研究活動を担保する仕組みが、今後どのように作られていくかに大きな関心があり、そこの仕組みを国として作ってほしい。今までのように縦割りで、別々に行うのではなく、国としての基礎研究の戦略、立案の所からを含め、文科省全体の中で企画・立案し、配分し、実施して、色々な資金により遂行された課題が、結果としてどうなったのかを評価する。その結果が、国全体での研究活動の資金配分まで戻るような仕組みになってほしい。
 研究者から見ると、そういう中枢組織が欲しい。行政側と研究者側の双方が関与し、知恵を出して、そのサイクルがうまく完結するようにしてほしい。そういうものがうまく回る仕組みが、研究者側から見たときのインセンティブの一番大きなところである。本部会だけの話ではないかもしれないが、そういう方向を意識した議論がなされることを期待したい。

【委員】
 評価結果が、研究の方向性を決める次の政策決定にどう反映されるかということが、研究者にとっては一番関心事であり、また元気の出る評価活動だと思う。
 個々の部分、例えば、実施要綱的なことはよく書けているので、「基本的な考え方」、「評価結果の取扱い」、「評価を定着させるための方策」の記述を考えるべきである。

【委員】
 2.5.1評価結果の取扱いの部分は、もっとクリアな記述にした方が良い。
 2.5.1はプロセスなので、そこを詳しく書く前に2.5.0的な項目を一つ設けて、スピリットとして「研究評価結果は、研究の質の向上と、国家資源の有効な活用とを目指して、政策決定と研究実行者、すなわち評価された人や機関、その研究遂行の改善に資するように反映される」というようなことを、明確に述べた方が良い。
 もう1点、振興調整費1つ取っても、個別課題の評価は行われていても、調整費全体の使われ方に関する評価ができていないし、その場面もない。振興調整費以外にも様々なメカニズムのファンドがあり、政策決定と言っても、個別の費目へ分かれていく過程で分割され、分割された各グラントの下で評価が行われ、それが1つ1つ戻っていく。その戻る過程、即ち、戻るメカニズムとそのプロセスをきちんと書き出し、それを検証しないとスピリットだけを書いても駄目である。木を見て森を見ない評価とならないように工夫する必要がある。それは別作業でもいいという気もする。
 スピリットを書く所とは別に、実際の様々な資金の流れはこうなっているという所が無いと、わからないのではないかと思う。

【委員】
 1.2.1評価の意義の5に書いてはあるが、評価者がどうすればいい評価活動ができるかということを、もう少しプロモートしていただきたい。

【事務局】
 具体的なことは、次回でと考えている。思案してきた事柄が項目としては入っていても、全体像となって見えていないという傾向は確かにあると思う。「はじめに」か、「評価システムの構築」の所で、全部の流れが一本で見え、イメージがつかめるようなものを次回準備したい。

【委員】
 指針もよくなってきたが、これから後の有効なものにするための作業が、大変である。基本的な部分はある程度押さえられてきているが、質を高める作業が本当に大変で、これから先が本当の知恵の出しどころである。
 先程指摘を受けていた部分は、「はじめに」か「評価の意義」のところに書くべきである。また、1.2.1の5は、評価結果をどうするかという書き方であるが、評価目的は何かというような書き出しで作り直した方がいい。
 社会に対して知的先導者としての立場にある研究者の研究は、自律的な立場を重視しなくてはいけない。それに対して、社会の中にある様々な問題を解決していく立場にある研究者に対しては、もう少し別の表現になる。したがって、対象に応じて立場の違いがあることを、明確に示す必要がある。
 先導的立場にある人達に対しては、研究者の自律性が生かされるということを強調すべきだが、その評価やマネジメントに携わる人達、また研究を委託する側、即ち、それに関わる主体が、それぞれインセンティブを持てるようなシステムにしていくことが必要である。これに関しては、今、欧米ではピア・レビューの質を高めるために、「ピア・レビューアー+エキスパート」という、「+エキスパート」の部分を如何に充実させるかという議論になっている。1番目はマネジメントに関わるエキスパート、2番目は施策に関わるエキスパート、3番目は特定の科学技術領域ではないが、そのプログラムが根差す領域に関係した専門的な知識を持つエキスパートである。
 科学技術者がピアとして持つ専門知識以外を補うエキスパタイズの組み合わせにより、ピア・レビューの質を高めるシステムが考えられている。これを今すぐ日本でやるのは無理だと思うが、そのような流れや方向性は謳っていいと思う。
 次に、前回出たフェーズの話が、まだうまく整理されていない。マネジメント・サイクルは、施策評価の中の1つになっているが、全体の対象に対するマネジメント・サイクルであることが必要である。主として、施策に対して有効性があるということで、ここに入れたと思うが、全体に関わる話なので、前に出した方がいい。
 また、3.2で、研究開発課題の評価の中に評価時期の話が出ているが、評価時期も課題評価に特定する話ではなく全体に関わる話なので、評価時期は、前に出した方がいい。それにより、フェーズの話がきちんと整理できる構成にもなる。
 3点目として、プログラム、制度に対する評価が抜けている。新大綱的指針で、これが反映されなかったことが尾を引いているのだが、プログラム、制度に対する評価が無いために、政策評価につながる階層が明確化できず、個々の課題の評価と、政策の評価との間のつながりが作れない。この指針では、プログラムではなく、制度という文言でそれに類することが書かれているが、もう少し強調してもいい。
 個別の課題を取り上げていく制度、つまりプログラムを評価対象の一つの項目に入れないと、システムとして階層が完結しない。ここが本当に重要であり、海外ではそこに評価の努力が払われ、それにより、有効な見直しが行われる。新大綱的指針では抜け落ちているが、この指針には、その辺りの記述を入れるべきである。

【委員】
 似たようなものがある時には同列に並べて、比べることで、初めてきちんとした評価ができる。例えば、科研費と振興調整費は違う部局で決まるが、一元化して同じフッティング、同じ場所で議論してほしい。
 また、研究課題には、個々の研究者が研究するものから、国に1つしかないような施設をオペレートするというものまであるが、その間は非常にコンティニュアスに分布している。それに関しても、区切らず一元的に同じ所で全てに目配りして評価をしてほしい。そのためにも、立案部分から国として戦略を決め、サイエンスの活動状況をきちんと踏まえながら資源配分を考えてほしい。
 全体を並べて国としての戦略を議論すれば、見通しがよくなる。そうすると資源配分において、研究開発課題の項目としての「競争的資金」、「重点的資金」、「基盤的資金」という区切りは、個人ベースから、SPring-8のように国に1個しかないようなものまで、全体を視野に入れて評価するサイクルになる。
 また、一元化という際、同列にするのではなくて、大きな所の中で全部が見えるようになっていることが必要である。

【委員】
 一元化して全部やるというのも一つの考え方である。ただ、画一的にするのはよくないと思う。アメリカでは様々なソースが、お互いにある意味でコンピートしているところが強みだと思う。すっきりというのは良く見えるかもしれないが、一方で危険なことなので、モノにもよると思う。国で1つしかできないような国家プロジェクト的なものと、多様性を必要とする学術とは、自ずと違うところがある。総合科学技術会議等でも問題になるが、学術は多様なので、きめの細かい評価を行う必要がある。国家プロジェクト的なものは、1つだけ良いものを選び、作り上げることは大事である。

【委員】
 その観点で、ここ数カ月外国の例も勉強してみたが、国毎に違った特徴がある。今の観点だと、ドイツがいい。Max-Planckでボトムアップ的なものをサポートし、ヘルムホルツで国家プロジェクト的なものをファンドする。また、フラウンホーファーでトップダウン的な、応用的な色彩の強い研究をサポートする。大きな3つの括りがあり、これらはつながっているようにも見える。

【委員】
 この指針は、今までの議論がよく反映されているが、基本的なところで、評価を生かしていくときに、この指針が文部科学省全体の政策の中のどの部分を占め、どのようにつながっていくかが明確にならないと、作文しただけになるおそれがある。それが皆の心配している点だと思う。
 したがって、文部科学省の全体、例えば別の部会や別の課や局での政策立案等と、この指針とがリンクしないと生きてこない。そこが非常に重要であるが、そういう意味で気になるのは、例えば今回の資料でも、この指針案と同時に学術分科会の学術研究における評価の在り方が出ているが、これらの関係はどうなっているのか。文部科学省として、研究関係であれば、当然一つの指針で考えていくべきであり、その中でいろいろなシステムが有機的につながらないと生きてこない。

【委員】
 それを反映するところが4.3文部科学省の部分になるが、今の書き方では、みんながっくりくる。ここの書き方如何で随分と違ってくる。
 ここでは、「研究開発施策の所管課は、関連課題、機関、制度等に関する評価結果を踏まえつつ、研究開発施策の評価を行う」と書かれており、お金を配る側の人が、評価も行うように読める。そうすると、結局は所管課の判断で決まるように読めてしまい、前の方で書いてきたことが何だということになりかねない。しかも、社会的関心の高い研究開発課題については、科学技術・学術審議会を活用して評価を行うということだが、活用してどうするのかが具体的に見えない。
 つまり、これを生かすメカニズムが余りなくて、例えばこの部会の事務局である評価推進室は、この答申を作ってしまえばなくなるのかどうかもわからない。今後文部科学省の中で研究評価をきちんと行う方策として、実際こういうことをやる、専門の課を作ってやる、等の記述があれば、もう少し具体的なイメージが掴める。実際にお金を配る課でこれを考えてやりますという一般論では、なかなか理解されない。

【委員】
 この報告書は、文科省が評価について、執行機関としてどうするかということの記述であり、文科省自身の指針としてはこれでいいと思う。ただ、1つ抜けているとすれば、文科省の中でも国の重点施策あるいは戦略に沿って評価を行うと書いてあるが、マルチファンディング方式の中で、予算がどう流れ、最終的にどうなったのかを評価する部分がないということである。そのような所があれば、例えば、振興調整費と科研費との関係がどうなのかということは、そこから自然と出てくると思う。
 評価については、国費の有効活用というのが最初のトリガーであるが、その意味では、厳正かつ厳しくする必要がある。また、研究者の立場からすると、評価が導入された場合には、研究が活発にうまくいくように評価を活用していくことが、別の観点からの目標になる。
 この指針には、あらゆる観点からの意見が全部書かれているために、人によってはわからなくなってしまう面がある。実際に評価を行うときには、評価の視点等に応じて該当箇所のみが見えるシートがあれば、そのシートを通して指針を読めば、必要な部分が読めるような仕組みになると思う。
 また、評価により、過度に研究者に不安を与えてしまうと、角を矯めて牛を殺すようなことになるので、指針に基づく評価を行う際は、それに対する施策を考えるべきである。人材の流動化の問題と、厳しい評価の実施とそれに関する問題とを更に考えていただきたい。

【事務局】
 評価はその目的を明確にして行うが、評価結果の資源配分への反映を徹底的に行うとなると、単なる研究費の調整では済まない事態を想定せざるを得ない。もともと評価は、人材の流動性を高めるという視点で行っており、それに加え、流動化という政策に従う中で、人材をどう活かしていくかという視点からの検討が必要になる。
 人材委員会はまさにそれを目的とし、トータルに人材の流動化を考えている。研究者の流動化といった場合、研究者は最後まで研究者あるという前提も外していかざるを得なくなると思うので、研究者のキャリア・パスを如何に広げていくかという視点も含め、検討していきたい。これは今進行中のところであり、そういう場で引き受けさせて頂きたい。

【委員】
 もし手引書みたいな格好で、採点表を渡されて「はい、どうぞ」というような評価を行うと、客観的にすればするほど、悲鳴を上げる者が出て来ると思う。そういう方法を採用した場合、評価者のモチベーションとは何なのか、何のために評価をやっているのかということになる。
 評価者は責務を負わされており、それなりのモチベーションを持つ必要があり、何らかのインセンティブが欲しいわけである。被評価者は、研究資金を貰えるので、それがインセンティブになる。以前に企業の場合の例を話したが、企業では、結果の活用がインセンティブになっている。文科省に置き換えてみると、活用が登用という場合もあり、成績表を渡されてどうこうということではないと思う。
 また、3.2.2.1で、斬新な発想や創造性等を見過ごさないようにと記述されている。これは一般的な評価手法には乗らないやり方、視点であり、評価者にとっても重要で、いいヒントになる。また、この部分は、特に基盤研究を行っている者のモチベーションの持続に一番必要なことだと思う。そこを重視することで、評価が一辺倒にならないし、いい研究であれば、通り一遍の評価で点数が悪くても、この部分を重視して引き上げるなど、別の視点から評価することができると思う。

【委員】
 研究者側からすると、何のために評価をするのかということを考えた場合、研究が最もうまくいくようにということを、まず考えるわけである。ただ、行っている研究が、国全体からすると、他の研究との兼ね合いから、もう必要ないとみなされる可能性もある。そこで、その際の救済措置みたいなものが人材委員会等で考えてあれば、それ程の大きな不安を感じずに、新たなテーマ、新たな挑戦課題に素早く対応できる体制をとれるのではないかと思う。

【委員】
 評価側は評価する、被評価側は評価される、という一元的な見方があるように感じられるが、評価側も評価されるのであり、その部分をきちんと謳う必要がある。
 評価者は、非常に難しい立場にあるし、評価を下したことに対して責任が生じる。それはインセンティブもあるが、私の場合は、その機関の研究ができるだけ良くなって貰いたいという気持ちで評価を行っている。その際、「良い」と褒めるだけでも、「駄目」と言うだけでもなく、「これはわかりません。もう少しクリアにして下さい」というようなことを言うことにより、何点と点数をつける以上に重みを持つ場合がある。評価する方も、粘り強く付き合うという態度を示す必要があり、こういう付き合いをすると、物事の言い方に大変気をつけるし、価値のあることを言おうとする。ただ、これは非常に大変なことであり、そこは被評価側の人にもわかって貰いたい。
 この指針を見ると、ある種の被評価側の被害意識が目立つように感じられるが、そこは改める必要がある。評価側も、被評価側も、結局は国民から評価され、評価者は、自ら下した評価により、何年後かに手痛い評価を逆に受ける可能性もある。そういう気持ちで評価しているということをもっと入れる必要がある。建設的な意見で、より良い研究や研究マネジメントの実施につなげるところが評価のスピリットだと思う。マネジメント、方針、研究成果等について、「ここをもっとクリアにしてくれ」というような評価の仕方が大変有効である。
 もう一点。研究者は、研究するという基本的な権利を奪われてはいけない。人件費や、首という話があったが、人の雇用に関してのミニマムは、その人を雇っている機関の見識であり、人件費はきちんと確保する。また、例えば、外部から研究費を獲得するのは、その人の度量や力であるが、基礎的な研究、基盤的な研究の部分は確保する。研究テーマの性質により、ミニマムをどこまで保証するかということがあり、その上で、さらに研究費を獲得できる制度があるべきだと思う。

【委員】
 この評価指針は、大綱的指針のもとで実際に評価をする際の手引きとして、様々な意見をとりまとめて記述してあるので、確かに、回りくどいような部分や、同じような記述が何回も書いてある所もある。しかし、評価指針を作ることと、科学技術政策全体を見渡すような評価の仕組みを作るべきだということは別な話であり、それは指針とは別の形で、提言を出した方が良い。
 今まで評価を行っていなかったところでも、この指針を読めば、実際の評価に当たって、どう考えどう行えば良いかがわかるように、よくできていると思う。
 国民の側は、評価により研究者を切り捨てようなどとは思っていない。ただ、巨額の資金を使うプロジェクトが多くなり、専門化が進んでいるため、この研究にこれだけのお金が何故必要なのかが、国民にとってわかりにくくなっている。国費の投入に当たっては、専門家の視点からきちんと評価がなされているということを国民に示すために評価制度が作られてきたのであり、科学技術が科学者を元気づけて、健全に行われることについて、駄目だという人はいない。
 今までの評価の例で、非常に大きなプロジェクトの中でも、5年経った後に余り成果が出なかったということが度重なってあった。その場合、摘出された問題点等は、次のテーマに反映されていなかったのではないかと思う。この評価制度を進めていくに当たり、そういうことをきちんと追跡していくために、事務局からデータベースを作るというようなことも聞いている。評価指針と併せて、策定に当たりこの部会が何を大事に考えたかということを、別扱いで出したら良いと思う。

【委員】
 この指針の位置付けは、踏まえるべき基本的な枠組みを示すものである。その先は、対象に応じて担当者が、その場に見合った評価を作り出せる自由度があり、そこが一つのインセンティブになる。
 省の中の仕組みとして言えば、「査定部署としての官房」、「政策を立案し実施する実施部署」、「評価部署」の3つの機能がある。評価部署は、評価の制度を整え、各実施部署で行う評価の結果を取りまとめ、それらを縦断できるデータベースを作り、それらを通して、評価の質の向上を推進していくという使命を持っている。この部会は、その評価部署をサポートしていると考えていい。実際の評価は、政策を立案し実施する局課が、その立場に応じて評価制度を設計し、運用していくことになる。
 また、評価は、対象の状況を明らかにするという使命を持つが、必ずしも意思決定まで束縛しないということが重要である。意思決定は、その対象の状況が明らかになった上で、それをもう少し高い立場から見通して行う。したがって、省では査定部署が別に置かれており、評価結果がそのままの形で直接反映されることになっていない。そういう仕組み全体や役割について、4章でもう少し詳しく書いた方がいいと思う。
 また、1.2.1の1の表現だが、これではまだわかりにくい。この部分は、評価・被評価という立場に分かれて行うというよりも、被評価者と一緒になって、組織で目指していることを実現していくという立場からサポーティブに行うという趣旨になる。ただし、内部だけで閉じないようにするために、上に意思決定部署があり、その部署や評価の階層性を通して、チェックするシステムにしていく必要がある。

【委員】
 評価のヒエラルキーのような記述をもう少し加えてもいい。例えば、様々なグラントのメカニズムがあり、それは各部局が決めているが、グラント全体としてどう行っていくのかというような部分。
 また、被評価側と評価側の関係として、お互いに良くして行こうとしているということは大事である。例えば、機関評価に携わった場合に、その機関が良くなれば嬉しいし、それが最高のインセンティブとなる。しかし、お互いに努力しても、良くならない場合には、もう一つ上の段階の人が見て、直していく必要があるし、場合によっては研究機関をつぶすことも必要な場合が起こる。それが評価のヒエラルキーであり、そういう観点がないので、もう少し直した方がいい。
 様々なグラントのメカニズムやそれを配布する部局、基盤的資金、大型プロジェクト等がある。これらを違った見方で見て、総合的な成り立ちや全体の制度の働きを相互に見る数段階のヒエラルキーがあり、各レベルでの評価を下すことにより、例えば一つ下の段階のやり方を改めていくようにする。このような階層的な評価の仕組みが必要だということを記述する。この中に書かないのであれば、もう一つチャートを作って、実際のメカニズムとフローを書いて貰いたい。

【事務局】
 階層構造を作り全体を循環していくというヒエラルキーは、評価システムの中に記述している。例えば、制度評価は課題の評価結果を総覧しながら行うという形で記述している。そこをより明確にし、それが全体に回る仕組みとして示せるよう書くとともに、計画を立案する分科会や総会にこの指針を諮る際に、今のような議論を紹介することで、全体を見るようなシステムの必要性を訴えていけると思う。
 次に、学術については別立てではなく、この指針の中に学術分科会の報告書を盛り込む作業がまだ残っている。それを盛り込んで初めて全体の指針として作り上がる。これは次回にお願いしたい。
 また、4章の文科省の役割の部分は、政策の評価を、課題や制度の評価を踏まえて見直し、資源配分や政策の立案に反映して下さいという趣旨である。現状ではまだ簡単な記述に留まっているが、その趣旨が生きるように記述を工夫する。
 指針を踏まえた評価の運用面については、事務局としても心配しており、各機関等の状況についてヒアリング等を行い、できる限りうまく活用して貰えるようフォローアップしていくことは考えたい。

【事務局】
 この指針では、共通事項の後に、個別にブレークダウンした記述があり、あるものは共通事項に、あるものは個別事項に書いてあるという、少し複雑な構造になっている。参考2に、評価のケースに応じた、共通事項や個別事項の整理をしている。本日は、参考2の説明はしなかったが、この資料を見て、各評価において抜けている観点等、気付いた点があれば、示唆して頂きたい。
 評価に当たっては、文科省の特徴であるボトムアップを大切にという意見を頂いた。もちろん、ボトムアップは大切にするが、文部科学省全体としては、ボトムアップとトップダウンの双方合わせて、世界に誇れる革新的なものを産み出すことを、ミッションとして持っている。革新的なものを創り出すには、目的型の研究であっても、様々な場面で研究者の自発性や創造性を引き出すことが必要であり、トップダウンの研究についても、研究者の自発的な好奇心や創造力等を生かせるような評価を全体として作ることが必要だと思っている。

【委員】
 科学的・技術的観点と社会的・経済的から見ると書いてあるが、社会的の意味するところがよくわからない。
 文科省としては、例えば、環境、倫理、文化に対する問題等を大事にする必要がある。そのような意味も踏まえた上での科学技術立国であり、文化立国であると思う。倫理、文化に与える影響力ということも考えていく必要がある。

【事務局】
 まさにそのつもりである。経済を良くし、日本の競争力を上げることが、科学技術が果たす役割の大きな部分であるが、これに留まらず、例えば生活の質の向上という形での国民の幸せや安全や文化に対しても、科学技術は大きな役割を持つ。その部分を総体として捉えて頂きたいということで、経済的ではなく、社会的・経済的という言葉を使っている。社会といった時に、文化も社会の行為であると考えている。もし、文化と書く必要があれば書くことも可能である。また、生活の質の向上という言葉を使っているが、そこの部分を補強するようにする。

(2)第5回研究評価部会議事録(案)について、所定の手続きの後、公開の手続きが行われることになった。

(了)

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(科学技術・学術政策局計画官付評価推進室)