研究評価部会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成14年1月10日(木曜日) 15時~18時12分

2.場所

文部科学省 別館 大会議室

3.議題

  1. 文部科学省における評価指針の策定について
  2. 科学技術振興調整費の中間・事後評価について
  3. その他

4.出席者

委員

 野依部会長、田村部会長代理、浅井委員、浅島委員、大谷委員、大橋委員、小幡委員、加藤委員、北澤委員、榊委員、渋谷委員、田中委員、長谷見委員、平澤委員、福山委員、山本委員、行武委員

文部科学省

 山元科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、磯田政策課長、川上計画官、佐伯評価推進室長、土橋科学技術振興調整費室長

5.議事要旨

(1)事務局より資料に基づき説明を行った後、質疑が行われた。
 
<質疑>

【委員】
 大学の研究が産業界の役に立たないという批判を受けている面がある。これまでの大学での研究を考えてみると、独創的で萌芽的でかつ役に立たなければならないといった総合評価がなされるために、実際に役に立つ研究、何か実用化に向けて、産業界が使ってくれる技術レベルまで高めようとする研究の採択時の評価が低いという問題があった。基礎研究から出てきたシーズと産業化の間にはすごくギャップがあり、大学でもっと育てなければ産業界が目を向けてくれない。
 しかし、それをやろうとすると、独創的な質の高い研究でなければならないという評価面と、総合評価されてしまうために基礎シーズと産業化との間のギャップを埋める部分が萎縮していたことがあるように思う。その点が考慮できるといいと思う。

【委員】
 このたたき台で示されていることは、ある種の評価システムが前提として考えられており、その評価システム内部のどういう要素を議論すればいいかという形になっていると思うが、対象に応じた評価システムを作るという出だしの部分の議論を加えた方がいいと思う。
 先程の発言も、萌芽的で独創的なことが期待される研究と目的的な研究とが、一緒になった形での評価システムが想定されているために、矛盾が起こるわけである。それらは適切に分離して、その目的やプログラムに応じた評価システムを設計する必要がある。そのような観点から考えると、評価に携わる人としては、単に評点をつける人だけではなくて、評価システムをマネージする人が非常に重要になると思う。
 評点をつける人も大きくは2種類ある。1つは、独創的・萌芽的な部分を評価できる、科学の質を評価できるような評価者である。もう1つは、目的の妥当性、経済性、社会性が評価できる人である。これは1人の人で兼ねることはほとんど不可能であり、2つの部分を分離して内容を議論した方がいいと思う。

【委員】
 研究評価について、前回、大学で行われる教育は別として、研究活動も含めた考え方をという話だったと思う。
 文部科学省では、今まで科学技術庁がやっていた各種のプロジェクトと、文部省が中心になってやっていた科研費とか、様々なものがある。全部をひっくるめての評価だと、独創的・萌芽的な基礎研究と目的志向型の両方が当然入って来なければいけない。そう考えないと、例えば研究者の評価にしても目的志向型だけであれば、独法の研究所だけを頭に置けばいいのかという話になってしまう。まず、その点の整理をした方がいいと思う。

【事務局】
 最終的に文部科学省の指針として対象とするのは、大学における萌芽的な研究を含んだ部分と、旧科学技術庁から流れているプロジェクト、もう少し目的を志向したものである。
 しかし、今、学術分科会で、大学の研究の部分については、教育という観点もにらみながら議論を進めており、そこは少し分けて議論をしてから、教育をにらんだ研究評価はこういう形が望ましいという結果が出てきた段階で、全体像を見ていこうというのが趣旨である。
 それまでの段階として、まず研究に特化したものについて議論をいただき、最終的に全体を見渡す作業をお願いしたいと考えている。

【委員】
 今、学術の議論をこの部会でやりすぎると、学術分科会で行っていることとバッティングしてしまう。向こうで議論しているものを最終的にこの部会へ出して、どう2つをまとめていくかという作業になると思う。

【委員】
 今、目的志向型か、あるいは基礎的なものかという話になっているが、目的志向と言っても、すべてが経済性を目標にしたものとは限らない。
 例えば地球科学では、かなり大きな目標を立ててプロジェクトを実行している。そのために深海掘削船を造らなければいけないとかいうことが出ている。これがすぐに経済活動と結びつくかとなると、必ずしもそうではなく、目的志向型と言っても、直接産業に結びつくような応用研究とは限らないということを、理解していただきたい。

【委員】
 総合科学技術会議で大綱的指針が作られており、それを踏まえた上で文科省としてどう考えるかということである。私も前回に文部科学省の使命あるいは政策目標をもう少しはっきりしてくれとお願いした。
 文科省としては政策目標が9個あり、この中に、科学技術の戦略的重点化という政策目標がある。また、優れた成果を創出する研究開発環境を構築するシステム改革という政策目標がある。さらに、科学技術と社会の新しい関係の構築を目指したシステム改革があり、これらに関わる活動の評価と理解していただきたい。

【委員】
 悲観的なことを言いたくはないが、評価というのは主観的で、基本的に文章に書けないと思う。例えば、美人は何かということを書けと言われても、絶対に書けない。美しい人と書くしかなく、美しい人と書けば、各自が自分の美しいイメージを想定して理解できる。あばたの有無、ほくろの有無、髪の毛は長いか短いか、等を書くのは間違いではないと思うが、書いてもほとんど意味がないと思う。
 大綱的指針は非常に苦心してまとめられたと思うが、少なくとも私は一生懸命読んでも、何が書いてあるかほとんどわからない。あれは枝葉末節の指針ではないかと思う。
 指針というのは、なるべく書かない方がいいのではないかと思う。このたたき台は6ページであるが、書いたとしても1ページでいいと思う。後で解説版の付録をつくり、それにこのたたき台があれば十分である。1ページぐらいにする気でないと、実質指針にならないのではないかと心配している。
 野依先生の不斉反応と中根千枝さんのタテ社会が同じ指針で判定されるべきだと思うが、いかがなものか。

【委員】
 評価の困難性は言われるとおりだが、ラショナルにできる部分もあるので、指針としてはできるだけラショナルに、対象に合わせて設計して下さいと言う話になると思う。このとおりにやって下さいという類いの指針にはならないと思う。したがって、評価を行う際のアプローチの助けになるような形態ならば、わかり得ると思う。

【委員】
 指針に書くことが研究者の規範を決めることになると思うので、指針に書くことにより、研究者が元気を出してやるようになる、そういうことに留めるべきだと思う。

【委員】
 ワーキンググループをやった経験から言うと、最初のページが目的で、それぞれについて考えてやりましょうと書かれている。例えば中間評価と事後評価は随分ニュアンスが違う気がしたので、そういうところも評価の目的を分けてできるような指針があるといいと思った。

【委員】
 文部科学省における研究の中の目的型の研究開発についての指針であり、他省庁や企業での目的型研究開発とは、少し趣きが異なると思う。
 企業だと、ほとんどすべて目的型の研究開発だと思う。産業界の中での立場や生き方もあると思うが、文科省の研究の中での目的志向型の研究に対してどういうふうに考えたらいいか、産業界から見た意見はありますか。

【委員】
 産業界で感じていることも、多種多様である。課題はものすごく多く、技術の問題に直接関係することもあれば、技術の問題だけに留まらないものもあり、直接企業だけですべてを解決することはできないと考えている。
 例えば、企業の経営を国際的に如何にうまくやるかといった課題、国際的な知的財産権の保護の問題を如何に法律関係の方々と一緒に取り組んでいくか、そういったことを考えてみても、問題の性質が単に工学だけではなく非常に広い。そういった問題は、大学で研究・アプローチしていただきたいし、非常にマクロな立場からお願いせざるを得ないということがある。
 大学には、マクロに受けて、確かに今まであまりアプローチしてこなかったと自覚していただく、あるいは実はこういう研究をやって答えが出ており、こうやれば今の日本の経営はうまく切り抜けられるのではないかという答えを出していただけることを期待している。このよう研究は非常に文化的な問題であり、答えは相当深いところにあり、必ずしも目的志向でないところから答えが出てくることは大いにあり得る。
 科学や技術の問題に関しても、同様な面があるのと思う。非常に広い課題の捕え方になるから、今の現実の社会の問題に、非常に有効な解を出していく。例えば、先程中根千枝さんの話が出たが、日本社会の構造の性質の分析が、我々の生活態度の認識をはっきりさせ、どうすれば社会の構造を強くしていけるかと発信できれば、非常に有効な研究であるということを踏まえて加藤委員は発言されたのだと思う。
 今は研究課題が具体的に決まって、こんなテーマでこういう研究をしましたというときの評価を議論しているように思われる。そういったテーマの評価というか、課題の実行における評価は、割と細かくなされているが、もっと違う角度から、課題の分野別にどういうリソース配分がなされているかということについての議論をお願いしたい。電子情報関係でも、電子や材料は強いのだが、情報がすごく弱く、物すごくアンバランスがある。産業界というより、日本の社会といった方が正しいのだが、社会のニーズと大変なミスマッチがある。
 大学の研究分野が、先輩方のやってきた領域をそのまま受け継ぐことで、変わっていかないとすると、非常にまずいわけである。社会の影響を受けて、どんどん分野が展開されるようになることをお願いしたい。すなわち、大きくマクロに研究分野を見て、こういう分野をもう少し伸ばしていく、予算も配分していく、講座数ももっと増やしていく、そういうことをどうやっていくか、また、どこで評価していくかということである。
 そのためには、分野別のリソース配分や課題の抽出が第1番で、その課題にどうお金を配分していくかという課題別の大きなお金の割り振りである。もう一つは、どういうメカニズム、ファンディングのチャンネルでお金を渡すかである。比較的基礎的な研究は、校費的なもので渡して任せる方がいいと思う。プロジェクト的で目的志向の研究だと、ある種のテーマ設定があって、そこにアプライしていくことになると思う。その場合、アプライの仕方、マッチングファンドの仕掛けについて、こういう仕掛けのお金の性質のものがこれだけあり、自動的に配分される仕掛けのものにこれだけあるとか、そういうマクロな振り分け方の議論がなされるべきだと思う。

【委員】
 重点分野というか資源配分の問題について、私も重点分野がどういうふうに決定されているのか、国家としての意思決定の筋道が若干あいまいではないかと思う。総合科学技術会議において、多くの研究者が知らない間に決められていくようなところがあるようにも思う。研究者たちの意思も入った上で、合意がなされるべきであり、その上で、どのようにファンディングするかという問題になると思う。
 また、振興調整費で行われている研究が、今の文部科学省における目的型の研究の典型的なものではないかと思うが、その理解で良いか。そういったものに関する評価の指針をいただければありがたいと思う。

【事務局】
 調整費は、ある政策の意図を持つ、競争的なシステムで選んでいく特徴を持った1つの典型的な例である。

【委員】
 研究開発課題の評価は、競争的資金、重点的資金、基盤的資金とに分けられているが、競争的資金による配分の仕方、重点的資金による配分の仕方、基盤的資金による配分の仕方がどんな比率になっていて、それが分野毎にどんな比率になっているかを整理してほしい。実際は、各部局毎に、ある費用についてはこの部局、別の費用はこの部局となっており、お互いに部局同士の批判はないわけである。こういう場面でそういうことを議論しなかったら、全体的な配分を議論する場所がないのではないか。
 もう一つは、研究開発施策の評価でも、こういったことを議論していかないといけないと思う。

【委員】
 今の発言は、ポートフォリオを作らなければいけないということである。多くの研究課題、プロジェクトが走るわけだが、それらを要素として取りまとめる、例えば2つの軸で切ってみて、どういう種類のものがどういう位置づけで、どれぐらいのキャパシティーで存在しているかというものを把握していく必要がある。政策の目的に応じてその種のポートフォリオを作って評価していくやり方になると思う。
 今までそういうことはどこでもやられていなく、機関を例にとった場合、ある特殊法人で巨大な資金を使っていても、全体としてどういう分布で資金配分をしたかという見取り図が、ポートフォリオの形でないため、長期的な研究のロードマップが明確になっていないという事態になっている。
 評価を議論していくと、結局は計画をどのように作るか、目標をどう設定するかという話になる。目標を明確にするには、計画がきちんと作られていないといけない。計画をきちんと作るには、戦略が立てられていなければいけない。結局、政策形成、戦略を作っていくという課題に行き当たると思う。全体のつじつまが合うようにしようと思うならば、大きな枠組みの中での評価の在り方としなければいけないことになると思う。
 ここで示されているのはほとんどが評点法であり、評価することを前提にして立てられている。評点法だけではなくて、ロードマップ等、ポートフォリオを使うとか、システムに関して言えばベンチマークというやり方で評価するとか、機関などで言えばランキングで評価するとか、評価を考える仕掛けも実に多様なわけである。したがって、指針としては、多様な手法の中で、対象に合うものを設定して考えて下さいと言ってあればいいと思う。
 このたたき台に戻るならば、評価の理念として、研究者を守り立てるように支援的な評価を行うというのは、ほとんどの方が合意されると思う。
 研究者を自然科学の対象のように精密にメジャーすれば測れると考えるのはナンセンスであり、研究者が持つ能力をできるだけ引き出して、守り立てていこうという種類の理念を評価指針として立てることが、基本的な方向性になると思う。これは外国の例を見ても、あまり言われていないが、日本の研究の進め方については、非常によく合う考え方ではないかと思う。

【委員】
 新しい施策を作り、重点領域を決めていくことと、現在行われている、あるいは過去に形成された分野の評価とは、全体として考えていく必要があると思う。今までは、既成のものが仮に80点という評価をされると、特に変更する必要も無くそのまま続けられていくというように行われていたと思う。ただ、内なる分野での評価と、外から見た全体における重要性とは、異なってくる。全体を見て、今から何をしなければいけないかということと、これまでしてきたことの評価とは違うと思う。仮に点数をつけて、それが90点や95点であっても、全体として意味が小さい場合はあり得るし、その場合には縮小も必要ではないかと思う。
 今まで、いろいろなことが、量の拡大をもって手当てされてきたことに大きな問題があると思う。90点、95点であるから、何らかの重要性はあり、それは継続しなければいけないのであろうが、量的な縮小をして、質を保っていくという姿勢で、全体の限られた資源を有効に有益に使っていくことが大事ではないかと思う。
 個別に評価して、合格であればずっと続くというやり方は、具合が悪いと思う。これからの日本の研究開発の上で何が大事かを、まず考えていく必要があると思う。そうでないと、限りない量の拡大の方向に行くと思う。

【委員】
 重点領域研究の全体的な評価については、前から気になっていた。総合科学技術会議が、そういうことをやってくれる組織になると期待しているが・・。何年か前の科学技術白書を見ても重点領域は今とほとんど変わらない。欧米より遅れている領域などに重点をおいて研究開発を進めてきたが、そのどこが良かったのか悪かったのか、日本の科学技術全体から見た評価が本当になされてきたのか疑問が残る。
 この評価指針の場合でも、BやCがついた場合が問題で、特に大きなお金がつく目的型の研究開発で、始めたものの上手く行っていないものに対して、評価の結果がどう取り入れられるかが、評価制度の課題になる。従来は、上手く行かなかったが、まあまあという形で、次の投資の配分時にどうつながるのか、特に各省庁がお金を出している大型研究では、非常にわかりにくかったと思う。また、ある研究が終わり、もう少し頑張れば良いものが実用化できるという場合に、そこを誰がお金を出して橋渡しするのか、全く考慮されないままに終了してしまうことも多かった。改良すべき研究について評価をどう生かすか、その辺りを制度的にするのか、指針で書き込むのか、実効あるようにするのは非常に難しい問題だ。

【委員】
 この評価部会での議論に関して、今まで非常に不安だったが、先程からの議論を通じて、胸のつかえが取れてきている。評価をする際の基本として、その研究がどういう目的でどういう位置づけでなされているか、大きく言えば、日本の学術研究の戦略がどこにあるか、その戦略に対してどう実施していくかまで議論を戻して考えるということであれば、大変意義深いと思う。
 国立大学の中にも研究職がある。また、大学共同利用機関等の別の研究機関がある。更に、文科省以外にも研究機関がある。そういう研究機関の一つ一つが、非常に重要な役を果たしてきている。この激変の時代に、将来どういうふうに個々の組織が発展していくか、場合によっては解消されていくか、その時に全体が見えないと何も始まらない。今までそういう議論があまりされている形跡がないのが、非常に不安だった。ここでそういうことが議論されるのであれば、大変意義深いと思う。

【委員】
 議論を集約すると、国の研究開発のグラウンドプランと照らし合わせた評価ということになると思う。その分野毎、あるいは課題毎の達成度を見るだけではなくて、それが国全体の研究政策と照らし合わせて、どれだけのインパクトを持ち得るかという視点が大事だと思う。言い換えると、絶対評価と相対評価ということになると思うが、それも必要である。
 先程から出ている評価者の問題も、専門家だけでいいのかということになる。専門家は、専門家としての意義はあるが、その分野をサポートする応援団にもなり得るわけで、それを鵜呑みにしていいのかということにもなる。最終的にはパブリックアンダースタンディング、パブリックサポートの問題になると思うが、評価者の資格ということで、そういう視点も必要なのか。
 今回はこの場で議論にならないが、教育面との関連ということにも関係すると思うが、どういう人材、どういう分野を推進していくかということは、国全体の政策、戦略とも絡んでくることである。

【委員】
 評価の理念の中に、できるだけいい研究を出そうという、研究者を生かす立場は必要だと思う。
 また、学会誌を作るのと同じで、皆がいろいろな評価をして、なるべくいいものを作るという立場を、評価の理念として最初に謳っておく必要があると思う。落とすことも大事で、それは逆としてあるが、本当はいいものを作りたいということがその中にあるということを、謳って欲しい。
 更に、評価者にはできるだけ大勢の人を入れることが大事である。その中に、評価のマネジャーみたいな人がいて、その人が全体をまとめるが、最初の1次評価はなるべく多くの方にやってもらい、研究をやると同時に評価もやる習慣をつけることが、これからどんどんよくなる方向にもなってくると思う。そういう意味で、できるだけ多くの方に評価を期待するし、特に若い人たちも同じようにやればいいと思う。ただ、評価をまとめる人は、経験を積んだ人が必要だと思う。このような形の2段構えの評価システムにして、皆が評価に慣れる方向もこれから作っていく必要があると思う。

【委員】
 評価者の問題だが、私も多くの人にやってもらいたいと思う。
 その前に、評価者の選定方法が、非常に大事だと思う。こういう評価システムができる前は、例えば大学や他の機関でも、外部評価を行ってきている。その際大抵の場合は、評価される側が評価者も選んでいる。きちんと考えていろいろな分野の人を公平に選んでいるつもりでも、このやり方では外から見て公平な選出だと判断されるかどうか疑問である。
 また、実際に評価を行う場合、1人の評価者で全部できるかというと疑問であり、専門分野が同じか近い人、それも複数の人に評価してもらうことが必要である。例えば、文書で評価をしてもらい、それを評価者がまとめる形式にすると、その専門分野についてかなり多くの人に評価してもらえる。また、専門以外の人を入れて、一般の方の意見を探るシステムを作ってみてもいいのではないかと思う。これは課題評価と機関評価でやり方が少し変わるかもしれないが、本質的にはこのような形式だといいかなと思う。

【委員】
 1次評価は専門家による評価になると思う。その研究が、専門課題に関してどのぐらい優れているかである。その次に、その課題なり分野が、全体の中でどれぐらい重要かということになると思う。
 研究者の立場からすると、自分の研究成果を非専門の方に直接理解してもらうことは、極めて難しいことであり、あまり非専門の方の評価だと、評価そのものの信頼性に不信感を持つと思う。
 2段階、あるいは縦軸と横軸で評価することは大事だというのは、共通した意見だと思う。そのやり方については、個々あると思う。

【委員】
 理念についての議論が行われているが、実際に評価者としていろいろな現場行くと、現実とのギャップを随分感じる。研究費の実際の支給状況を見ると、誰かに集中した形になって、多くの場合残りの人達には何も行かない状況になっている。この場合、科研費も来ないし校費では研究できない人達は、あきらめて研究からほとんど離れている。現実のこの部分を見ると、評価のあるべき体制として、別の視点が必要である。例えば、ある大学のある学科を見て、研究費の配分状況が適正かを見るシステムがあるかどうかということである。
 アメリカ等の大学では、いわゆる中央からの研究資金を得ている研究者と、企業と密接な結びつきを持つことによって研究室を成立させてやっていくケースと、両方ある。日本の場合は、中央の研究リソースに与れない人達が活発にやっていけるルートが今まで開発されていなかった。日本では、校費以外の研究費は大学の研究者の3割程度にしか行き渡らない。この部分の、国の研究費が余り配分されない研究者を生かしていくルートがあるのかを考えていかないと、大きな抜け落ちが出るのではないかと心配している。手短に言うと、その多くの人達というのは、中央の研究リソースが要求する独創性あるいは目的型と大上段に振りかぶられたものにはついていけないのである。
 個々の企業で特定の技術をもっと改善したいがどうですかという形も含めて、企業からの相談を受ける研究者は、今、米国ではすごく多くなっている。これが1980年以降の米国の活性化に、非常に役立っているように思う。本給に対する企業のコンサルティングによって得ているサラリーが、教官の平均値として、大体1.2位になっている大学もあると聞いた。アメリカにおける大学の産学官連携が、前とは非常に大きく変わってきている半面、日本では大学が役立っていないと産業界から指摘されていることを考えると、日米の体制の差が日本の大学にそういうことに寄与できるチャンスを失わせているのではないかと思う。

【委員】
 書かれている評価の理念に合致する研究は少ないということか。

【委員】
 少ないのではなく、抜け落ちる部分があるということである。

【委員】
 多くの研究者をディスカレッジせずにエンカレッジするには、研究者の目線に合った、あるいはその状況を把握した上での評価が必要だと思う。
 指摘のとおりで、アメリカのグローバルスタンダードで何でも測れば、全部うまくいくかというと、決してそうではないと思う。それについてもどう書き込んでいくのか。小さな大学の研究者が指針を読んだ場合に、よく理解できず、何を言っているかわからない可能性はあると思う。これは評価の目的に依るものであり、評価をして非常に大きな賞を出すとか、校費を傾斜配分するとか、評価の目的によって、物差し・見方は違ってくるということだと思う。

【委員】
 今日は目的型の研究開発ということで、その面に絞られてはいるが、大学等で、萌芽的なことをやられているところに、まだ日が当たっていないことは私も十分よくわかっており、ぜひやっていただきたいと思う。

【委員】
 横の多様性も大事だが、縦の多様性もあるので、現実問題としてそこも配慮しなければいけないということだと思う。

【委員】
 目的型ということから言えば、かなり先端的な先鋭的な研究が多いと思う。評価者の議論があったが、私のいるプロジェクトでは外国人の評価委員が必ず半分位いる。日本にない視点、国際的なレベルからの視点が入り、これは非常に重要だと思う。そこで非常にいい成果を上げると、そういう方々を通じて、いい研究が日本にあることが世界に発信されることにもつながる。
 そういう意味では、可能であれば、外国人の評価委員を入れることは非常に大事なことではないかと思う。ただ、そのためには、英語でやるとか、作業的に非常に難しい問題はある。

【委員】
 議論をまとめると、目的型の研究といえどもいろいろな意味の多様性があり、それに即した評価が必要だということになると思う。
 また、評価には相対的評価と絶対的評価があり、評価結果が次の国としての研究の施策に反映されるようなものであって欲しい。評価・採点をやりっ放しということではなく、次の日本の戦略に反映につなげるということは共通する意見だと思う。
 最後に、今後の指針の検討について、事務局からスケジュールの説明をお願いしたい。

【事務局】
 資料1-2に今後のスケジュールを示しているが、次回は1月28日を予定している。今までの意見等を踏まえ、もう少し骨格的にまとめたもの、更にその中に重要事項を盛り込んだ、少し具体的な姿を見せながら議論をいただきたいと思っている。

(2)事務局より資料に基づき説明を行い、引き続き、各ワーキンググループの主査より評価報告が行われた。引き続き、質疑が行われた。

(3)第4回研究評価部会議事録(案)について、所定の手続きの後、公開の手続きが行われることになった。

-了-

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)