研究評価部会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成13年11月21日(水曜日) 16時~18時

2.場所

虎ノ門パストラル 牡丹

3.議題

  1. 大綱的指針の改定および文部科学省における評価指針の策定について
  2. 科学技術振興調整費による基礎調査報告について 科学技術にかかるモラルに関する調査
  3. 科学技術振興調整費による基礎調査報告について 生命倫理に関わる諸問題に関する研究開発動向及び社会的合意形成に関する調査(1)
  4. 科学技術振興調整費による基礎調査報告について 生命倫理に関わる諸問題に関する研究開発動向及び社会的合意形成に関する調査(2)
  5. その他

4.出席者

委員

 野依部会長、田村部会長代理、浅井委員、大内委員、奥田委員、小幡委員、加藤委員、北澤委員、渋谷委員、平澤委員、福山委員、行武委員

文部科学省

 科学技術・学術政策局 磯田政策課長、川上計画官、佐伯評価推進室長
 研究振興局 松川学術企画室長

5.議事要旨

(1)事務局より資料1‐1から1‐7に基づき説明を行った。

<質疑>

 

【委員】
 資料1‐6を見ると、学術研究の特性と評価の際の留意点が詳述してある。学術研究の持つ特性がまず考えられている。また、評価に関しては学術研究だから、学問的意義についての評価を中心にするという記述がある。
 企業の代表ということで、世間的な観点からの発言になるかもしれないが、歴史を見ても、学問も結局は社会の要請だろうと考えている。ただし、あまり短期的にリターンを求めてはいけないという面も、多分にあると思う。
 例えば社会科学的、社会経済学的、あるいは人のビヘービアみたいなことから経営を考えることだとか、そういう研究分野は大変必要性を増しており、新しい学問要請は、社会から来ているように思われる。
 もう少し身近な例として、私の関係している情報関連産業について、情報分野の人材が大変不足している。このような分野は研究も世界に比べて弱いと言われており、研究人口も大変少ない。したがって、研究テーマを選ぶのは基本的に研究者の自由であると思うが、こういう研究分野をもっと活性化したい、分野のないところを育てたい、こういう分野は弱いからもう少し強くしたい、といった観点を常に持つべきではないかと考える。
 研究者が選んだテーマの中での評価と言われると、もう少し外側から物を見たくなる。もっとこういうテーマを取り上げていただきたいとか、テーマのバランス、それから今は研究されていないが、こういうテーマはどうするのだといった議論をしていかないといけないような時代に今はなっているのではないかと思う。
 機関評価に関しては、常にそういった観点から、もう1回外側から見てみることが必要だと感じる。学術だからテーマの選択はされないのだというところから始めるのは、少し問題ではないかと考える。

【委員】
 個々の学術分野は文学から医学まで大変広く、専門分野の特質があると思う。社会性についても、その様相が濃いところと、薄いところとあると思う。
 個人的には、各分野がそれぞれの時代に応じて、高い質の教育や研究をやることが必要だと思うし、勝手にテーマを選んで研究するという趣旨ではないと思う。

【事務局】
 資料1‐6は、あくまでも学術分科会の中での議論である。ご指摘の社会のニーズや我が国が当面する状況を踏まえ、科学技術政策全体の中で、いかに科学技術を推進するべきかという観点から、科学技術の研究を評価し、より良い研究につなげていくという全体の議論こそ、本部会で検討いただきたい事項である。
 学術分科会での議論は、全体的な議論の中で、ボトムアップの研究評価についてどういう留意点が必要かということである。例えば、大学が学術の観点に立って、一切トップダウンの議論を排除するということではない。気付いた点はどんどん指摘していただければ、学術分科会に伝えたいと思うので、よろしくお願いする。

【委員】
 資料1‐3のマトリックスの各セルの分類の仕方、枠組みの作り方自身に関わる議論として、基礎科学の研究と、応用分野に関係したものとは、評価のあり方を変えないといけないという議論になると思う。
 基礎科学について言えば、趣味的な研究ではなく、知的フロンティアの開拓が期待されるのであり、そういうクライテリアで選ばれていればいいと思う。どのような知的フロンティアが重要かは、やる前から議論できないので、チャレンジしていることが基本的に重要だと言いたい。こういう自由度は、研究者、特に新しい分野を開いていこうとする研究者には重要なことだと思う。
 また、研究の特質(カテゴリー)に合わせた枠組みを据えて議論しないと、議論が散漫になる。大綱的指針の枠組みでは、研究開発課題の評価が三つに分けてあるが、これは研究を進めるカテゴリーではなく、お金をつけていく概念程度で分けている気がしなくもない。したがって、この部分は、文部科学省の行政対象の実態に合わせたものに作りかえていいと思う。
 評価者のあり方についても同様で、文部科学省が担当する主な部分は基礎科学の領域で、いわゆるピアレビューの話だと思う。ただ、旧科技庁系の長期大型研究に相当する部分は巨大な資金を投下していくので、これに対する評価者のあり方は別途考えなければいけなくなる。
 また、評価についてのマネジメントのあり方も重要である。評価者の選任方法とは別に、評価システムを設計し、評価を実際に運営していくためのマネジメント側の人たちをどうするかということが、大きな課題としてある。しかし、大綱的指針の大枠の中には、あまり明確には出されていない。
 資料1‐3の枠組みの各項目を細かく詰めるのではなく、大綱的指針の趣旨を踏まえた上で、実態に合わせて柔軟に枠組みを作り直してもいいのではないかと思う。

【委員】
 資料1‐3の「対象」と、資料1‐7は大体対応しているが、文科省で指針を検討する際に、そういう観点で整理することになるのか。

【事務局】
 前提として、大綱的指針の中でこれだけのものが対象となっているということである。必ずしもこれと縦横が合うことは考えていない。
 文科省として欠いてはいけない中身を先に議論を重ねていただくために、資料1‐7を用意したわけであり、実際の組み方・構成をどうするかというのは、別物だと考えている。

【委員】
 文科省としてのミッションを踏まえて文科省全体の評価指針を作る必要があると思う。大綱的指針にそのまま対応させただけだと、大綱的指針と同じになるか、あるいはそのニュアンスに強弱がつくだけになってしまう気がする。
 例えば、国際的なネットワーク作り、学生に対する教育、若手の養成等の、総合科学技術会議で対象にされているような研究・教育に関わるものに対し、文科省におけるミッションを掲げておくことは、評価の観点から大事になると思う。

【事務局】
 特に大学、学術に関して、教育等をどうするかという論点で整理していない。今作ろうとしている指針は、研究という切り口で見るということである。大学の評価に際し、「教育」と「研究」という2つの切り口をどうまとめていくかは、別の議論になる。そこの議論を始めると論点が非常に広がってしまうので、今は、大綱的指針の状況を踏まえ、研究という切り口でそれぞれの活動をどう評価するかについて整理をしたいと思っている。したがって、人材養成までを含んだ評価の指針は、難しいのではないかということである。

【委員】
 機関の使命を考えておかないと、非常に一面的な見方からの評価になるのではないかと思う。他の面を配慮した上で研究の評価をしないと、研究の成果が上がりさえすればいいという傾向になる気がする。

【事務局】
 行政行為はすべて評価をしていかなければいけないというところに、出発点がある。大学という場も、国民の税金が使われているという観点からすれば、ある意味で行政行為であり、大学で行われることを評価していかなければならない。
 今は、研究評価のルール作りであり、研究面の評価をする際の観点・方法等を決めていこうということである。
 研究面といった場合、研究と研究以外との間のインターフェースが出てくる。そこで、インターフェースの部分に留意しながら、教育面や人材養成面を考慮した上での、研究の部分の評価を最終的にまとめていただければと思う。
 文部科学省の研究におけるミッションについてであるが、文部科学省の下には大学がある。大学には教育をして、研究をするというミッションがあり、研究面から見ると、学術研究というミッションがある。
 研究についてはもう一つ、学術に対応して、科学技術研究開発がある。科学技術研究開発の場合は、国家や社会がニーズを持ち、そのニーズに対応した研究開発をするというのがミッションとしてある。
 科学技術研究開発について、もう少し細かく見ると、研究開発主体として、特殊法人、独立行政法人、国立試験研究機関がある。研究開発活動としては、大規模プロジェクト、重点的に取組むプロジェクト、競争的な方法で公募で行うものがある。これが文部科学省の科学技術研究開発というミッションである。
 あと、人がある。例えば、大学の教官、特殊法人の職員、競争的資金に応募した人等がいる。こういう人たち全体が、この文部科学省のミッションを担う研究者として評価をしていく対象になると考えていただきたい。
 対象として相当いろいろなものがあり、共通的に定められる部分と、個別になる部分がある。個別の部分は、評価の際に個別で評価のルールを定めて行っていくことになるが、ある程度共通化されるところまで、この部会でご議論をいただき指針として作っていきたい。
 大綱的指針は、国全体のありとあらゆる中から、共通できるところだけを取り上げている。

【委員】
 他省庁とは研究のスタイルや研究に従事する人たちも違うので、文科省指針は、他省と違った内容が盛りこまれていなければならないと思う。文科省の特性、大学では何が大事かを考えると、教育的な配慮を欠いてはいけないことがある。
 例えば、研究成果として論文が出ればいいということであれば、無理をしてでも出すことは可能であるが、単に成果が出ればいいというのは違うと思う。
 評価に際しては、研究を取り巻く状況への配慮をきちんとしないと、評価される側が、研究成果を求めすぎるようになる。論文は少ないがいい若者が育っている、というようなことまで含めた評価が、社会からは求められているのではないかと思う。したがって、文科省での特性を配慮しなければいけないと思う。

【委員】
 今、日本では四つの根拠に基づき評価が行われている。大綱的指針による研究開発評価、独立行政法人の機関評価に相当するもの、政策評価、財務省の査定時の評価である。
 この部会のミッションは、大綱的指針による研究開発を評価することに限定した話なのか、それとも、もう少し施策に広げて、四つの根拠の全体を覆うような議論をするのかを明確にして頂くと、論点がわかりやすくなると思う。

【事務局】
 事務局側としては、大綱的指針を踏まえた部分を考えている。ただ、インターフェースがあるので、大綱的指針だけを見ればいいということではない。
 例えば、研究開発の施策評価であれば、どうしても行政評価とのインターフェースを見ざるを得ないという問題があり、そのインターフェースまで見るが、あくまで大綱的指針の下で行う評価を基本としてお願いしたいと思っている。
 もう1点、大学での研究の評価に関しては、大学には教育というミッションがあり、違う取扱いが必要だろうということで、学術分科会で少しフェーズを変えて議論してもらう。ただ、それ以外の例えば独法や特殊法人の評価は、性格やミッションの違いはあるものの、教育機能は持っておらず、あくまで研究開発に主眼を置いた法人である。したがって、そこの部分をこちらで議論して、教育とのインターフェースについてよく見ていただいた学術分科会のアウトプットをにらみ、全体をまとめていくというように作業をイメージしている。

【委員】
 評価と言えば、今、大学評価・学位授与機構で何かやっている。また、独立行政法人では、評価は独自にやっている。こういうものと、今、文部科学省で作ろうとしている指針は、どういう位置関係になるのかがよくわからない。

【事務局】
 大学の評価は、大学設置基準に基づく自己点検評価などがあり、それに加えた形での大学評価・学位授与機構がある。そこで行う研究部分の評価は、これから作ろうとする文科省の指針と整合をとり、その流れの中で進めていくことが考えられる。ただし教育の部分があるので、すべてそれでカバーされるわけではない。
 研究開発法人としての独法の評価は、基本的にこの大綱的指針の評価をベースにしてやっていただきたいという認識でいる。

【委員】
 文科省の考える研究の背後にあるのは、旧科技庁の国研で行われている研究活動が基本的なイメージにあるように聞こえる。
 一方、大学というとすぐ教育ということを言われる。もちろん大学は教育が重要な役目ではあるが、いい教育には必ずいい研究がないといけない。大学には研究があることが必須であるが、大学にある研究まで評価の対象とするのであれば、評価する際に教育という切り口が絶対に必要になる。人材育成という観点からの評価活動をどうするかは、非常に重要なファクターになると思う。
 旧科技庁、旧文部省が一緒になり文科省となったが、文科省の中の組織全体の研究活動を評価するのであれば、両者が視点に絶えず入っていないといけないと思う。大学における研究活動をどう位置づけ、どう評価するかということが気になる。

【事務局】
 大学における研究活動も当然文科省の指針として視野に入れており、対象としていきたいと考えている。したがって、学術分科会で、かなり教育の部分をにらみながらの議論をお願いしているところである。
 ただ、おっしゃるとおり、少し性格に違いがあり、この部会でお願いしたいのは、教育も含めた大学のところは少し置いておいて、研究に特化した観点からの議論である。その上で、学術分科会での教育を視野に入れた議論いただいたものとを、最終的に一つのものにできるか、できるとすればどういう形になるかということを、お願いしたいのである。

【委員】
 研究を分けるのはよくないと思うが、大まかに言って、トップダウン的なターゲットのはっきりしているタイプの研究と、いろいろやっているうちに大きな発見が出てくるタイプの研究がある。ノーベル賞の対象になる研究は、最初からノーベル賞をねらって、50年間に30人とかいうターゲットをつくって出てくるものではないと思う。
 この部会で議論するのは主としてトップダウンのところであり、大学等で行われている主としてボトムアップ的な研究に関しての評価は、別に置いておくというスタンスなのか。

【事務局】
 基本的にはそういうことで考えているが、理研にしても独法にしても基盤的経費等があり、その中で、研究所の発意でやっているところもある。それを捨象しているとは思っていないが、基本的に大きなミシン目を入れると、中心はその部分になるかと思う。

【委員】
 どこまで書き込むのかという点だが、あまり細かいところまで書き込むと、ボトムアップのところまで類が及ぶので、そこは書かないということなのか。

【事務局】
 まとめるものとしてはトップダウン、ボトムアップの両方全体を考えている。主たるボトムアップの大学、学術といったものは別のところで検討しているので、そこで十分議論した上で、それをこの部会がいただいて最後に仕上げをしていく。
 トップダウンと言われるものについては、ここしか議論の場がないので、まずトップダウンの議論を中心にやっていただき、それにボトムアップについてでき上がったものをまとめるということである。ボトムアップを脇に置くという意味でもなければ、トップダウンのことだけを扱うという意味でもない。
 先程のミッションの話に戻らせていただくと、文部科学省が行うトップダウンのものも、恐らく経済産業省や農林水産省がやるものとは異なったミッションがあると思う。文部科学省が中心になるのは、一つは非常に長い時間がかかり、大量の資金を投入し、我が国において、自主的にビッグサイエンス、ビッグテクノロジーの基盤を作り上げるということである。これは科学技術庁の生い立ちから含め、文部科学省が政府の中で担っているミッションとして非常に大きいものである。
 もう一つ、それほど大きくはないが、10年、20年という将来を見据えて、基礎的、革新的な部分から産業なり社会へ、民間企業等が使えるところまで仕上げていくというものがある。この二つがトップダウンと言われるものの中では、非常に大きなミッションとしてあると考えているす。
 加えて、研究開発の面では最近競争的資金を使って、まず国家社会的な何らかの目標を最初に与え、例えば典型的なのは戦略基礎研究推進制度であるが、戦略目標を最初に提示して、その目標に向けて公募的に研究を進めていく。こういったものが、三つ目の我々のミッションとしてあると思っている。ただし、科研費についてはボトムアップとしてとらえている。
 本部会では主として研究開発の問題を集中して議論いただきたいのだが、文部科学省のミッションとしてはその周辺に、例えば理解増進であるとか、知的基盤を整備するとか、より地味なミッションもあると思っている。周辺部については、三つのタイプの研究開発の議論を通してのアナロジーでこなしていこうと思っている。
 まず、これら三つのタイプの研究開発のミッションを念頭に置いていただきたい。

【委員】
 人や組織を評価するときに、現時点では得てして総合点みたいなものをつけられるところがある。
 例えば、ある国研である人を考えたとき、その人が民間への技術移転みたいなことで非常に成果を上げているなど、何か一ついい取り柄があったら、他のところは不合格で構わないという精神があまり普及していないところがある。仮にその人のインパクトファクターがゼロだとすると、総合点は非常に低くなるという問題が出てくる。
 大学でいえば、教育とか研究とか、あるいはその他にも評価のファクターはあり得るわけで、その人が、私はここで評価してほしいというところを生かせるような評価の仕方、視点が必要ではないかということを、申し上げておきたい。

【委員】
 産学連携の問題などもそれをエンカレッジするのであれば、特許をとってしまったものについてサポートしろみたいなことになる。極論としては、論文などを書いていてはいけないという意見もある。

【委員】
 外部評価になじまないものとしては、個人評価がそれにあたると思う。機関やプロジェクトの評価は、第三者なり外部評価者が客観的に評価できても、研究者個人の評価は、中の事情がよくわからない外部の人には難しいと思う。
 例えば、論文の数とか引用度がどうかということで、結果だけならある程度は外部の人も評価できるが、実際にその人が研究者としてどれだけ優れているかというのは外の人にはわからない。つまり、研究者にはいろいろな能力があり、独創的であるとか、チャレンジ精神に富んでいるといったものは、数量化しにくいところがあり、近くにいる人はよくわかっても、外部の人には難しいと思う。

【委員】
 個別の議論に入る前に、評価全体をどういう立場で考えるのかといった、いわば評価の理念のような話が必要だと思う。
 北澤委員の発言の趣旨は、減点法ではなくプラス面を評価する観点が重要だということだと思う。似たようなことで、被評価者が評価してもらって良かったと思えるようなサポーティブな評価が重要だと思う。気付いていないことを指摘したり、研究を伸ばすにはどうしたらいいか、欠点を直すにはどうしたらいいかといったアドバイスを含んだ感じの評価で、しかもそれは減点の対象としてではない、こういった評価も、評価の理念の一つとしてあると思う。
 通常、自然科学の研究者が評価を考えると、ある種のスケールでの測定により対象が測れるとして評価していくことにとらわれがちである。しかし、人間的な側面を重視して考えると、評価者と被評価者との間に、人間として信頼できるような関係がある中で評価が展開されるという種類の理念が重要だと思う。
 評価全体の考え方みたいなものが、議論されてもいいのではないかと思う。

【委員】
 私も評価者と被評価者の間の信頼関係は、何よりも必要だと思う。癒着ととられかねない場合もあるが、そうではなく信頼関係あるいは尊敬し合う関係というのが、評価に一番大事だと思う。それを避けて数値的な評価だけに陥ることは、学術に限らず、研究活動全体を損なうことになるのではないかと思う。

【事務局】
 文部科学省のミッションの特徴を考えたとき、例えば、学術の成果は何であるのか、そしてそれをどう評価すべきかというのは非常に難しい。
 大規模プロジェクトで非常に長いものも、中間評価を繰り返していく際に何を基準にして評価をすれば良かったとするかは、非常に難しい面がある。
 大綱的指針は、客観的指標の導入を強調しているが、文部科学省として考えなければいけないのは、客観的指標の導入は非常に難しいということである。何に対しても客観的なものだと追い込んでしまうと、恐らく文部科学省がやろうとしているものはうまく行かなくなってしまう。
 客観的という要求に対して、文部科学省のプロジェクトなり研究なりを進めていくに当たって、どう工夫して取り入れていくのかということをご示唆いただけると、私どもとしては非常にありがたい。

【委員】
 学術研究を始めどのような性格の研究でも、結果の出たものに対しては、はっきりポジティブだということはわかる。結果が出ていないものをどう評価するか、出ていなくて水準の高いものをどのようにエンカレッジしていくかということが、文科省の研究としては一番大事ではないかと思う。
 そのときには、時間軸が問題になると思う。文科省で行われるような研究の多くは、例えば3年、5年とプロジェクトの期間が定められていても、決してその期間で終わるわけではなく、その先、10年、20年と続いていく、その中の3年、5年である。結果は定着していないがすばらしい研究を、どのようにサポートするのかが、文科省の長い目で見たときの研究のあり方だろうと思う。最終的には客観的評価ではなくて、見る人が見て、良いと言えばいいのではないかと思う。
 私は自然科学をやっており、証拠主義が大事で基本だが、証拠を持ってこい、見せろということをあまり早く言われても困る場合がある。結果が出ていなくても、面白くて、レベルが高い研究はたくさんある。そのような研究をどうエンカレッジして、継続をサポートしていくかというところに、文科省における評価の大きなポイントがあるのではないかと思う。

【委員】
 研究者には常にそれはジレンマである。客観的な指標に沿う形で出さないと、評価のしようがないことも事実である。
 研究者側からすると、そこまでは行っていないが、努力を評価してくれと言っても、論文数も一つの評価スケールである。量だけではだめで、質で行けと言われても、量の多い人でアクティビティーの低い人はいないということもある。
 自分は今の段階ではここで評価してほしいという、評価される側の主張があると思う。いろいろな評価のスケールがあり、一つに絞られると非常に困ることがあると思う。例えば、論文の被引用度が客観的指標だと言われる方もおり、それで評価してほしいという人はそれでしてもらえばいいと思う。それから、今はとてもサイテーションは少ないが、この数で見てくれという人がいても悪くないと思う。あるいは、民間企業がこれだけ私のところに来ていますということでもいいと思う。
 「私の評価してほしいところはこれです」ということを選択できれば良いのだが、あらゆるところの総合評価になると、どこか一つに秀でた人は困ってしまうと思う。したがって、いろいろな評価の尺度があるということを認めてほしいということになると思う。

【委員】
 例えばそれは全然出ない場合も、高い山に登ろうとするチャレンジが一番大事である。構想が大きければ大きいほど、何も出ない。明らかに10年かかるという仕事もある。

【委員】
 何も出ないという尺度ではなく、これだけ努力していると言い張ればいいわけであり、そういう尺度があればいいということ。

【委員】
 尺度ではなくて、説得力の問題だと思う。数値目標で何センチとか何キロと測るのではなくて、文章力等で表現することもあり得ると思う。それが客観的かどうかというと、やはり主観的だろうと思う。そういうことも受け入れるということ。

【事務局】
 もう一つの考え方として、例えば評価に対する責任を記述している。そこはある意味で、主観的な評価を行った場合、評価側が責任を持ってそれを保証するという考え方もかなり入っている。そこも含めていろいろご示唆をいただければと思う。客観的なものがある場合、ない場合のそれぞれでどうするか、馴れ合いではなくきちんと評価をしていることをどうすれば示せるのか、お知恵を拝借したい。

【委員】
 あるものはある。しかしないものでも、価値の高いものはたくさんある。
 納税者である国民も専門家が認めていれば納得すると思う。
 私も税金をたくさん納めているが、10年、20年かかる壮大な仕事をされている方に、あなたは論文を出していないからけしからんという気持ちは、納税者の立場からして言えないと思う。

【委員】
 私は企業の中で、部下のボーナスや給料を支払うために査定はしてきた。本来、査定というか評価は、神様のすることではないかと思っている。
 1人の人間あるいは一つの仕事を評価するにしても、いろいろな切り口があると思う。それをどのようにまとめていくかは、何人かの人間が協力しても、とても成し得ないのではないかと思う。
 ただ、そうは言いつつも評価しなければいけないので、できるだけ客観的に不公平のないようにするようなルールを作ることは必要だと思う。
 与えられた研究テーマを達成できたか、できなかったかということは、期間を定めてテーマをはっきりすれば、そのこと限りにおいては多分できると思う。会社の話で言うと、その仕事に携わった人間はある目的の商品を例えば3年なら3年でやれと言われたら、それは何らかの形でやると思う。ただ、それが市場で役に立つものであるか、ないかは別の話である。
 次に、大学の先生方の研究が役立つかどうかと言われてきているが、評価の面に光が当てられて、大学の先生方の研究が市場競争の中に入ってきた。要するに市場競争の結果によって、価値を決めればいいのだということ。結局、社会的ニーズのないテーマは、論文発表され、世の中に知られたとしても、学術的なものであったとしても顧みられなくなり、それは自然に世の中から消えていく。そういう意味で、個々の研究がいわゆる市場競争にさらされるようになってきたのではないかという観点で物事を考えたらいいのではないか。
 もう一つ、教育も含め、共同研究者を肉体的にも限度いっぱいまで尻をたたいて、とにかく研究成果を上げることに専念される先生方も確かにいる。しかし、指揮とか命令によってすると、心から自分を慕う弟子とか協力者は、結局失うことになる。
 最終的に大きな成果を上げられるのは、研究のオリジナリティーや中身にもよるが、やはり人格的なところも大きい。総合力として教育者としても立派であり、研究テーマ等も社会的意義があり、人間のために役に立つテーマを人格でやられる先生方が、最終的には物すごく大きな成果をおさめられる感じがする。

【委員】
 振興調整費の中間評価で、私の関係する分野で評価委員会を作り、実際に先日、関係する分野のヒアリング等を行い、現在は評価報告書を作っている段階である。大綱的指針にあげられているように、国際的に高い水準の研究開発の課題の他に、新しい学問領域を拓くことを主眼とする課題も含まれているが、この場合も、目標に向かって努力がなされているかどうかについては十分配慮して、評価はできると思う。

【委員】
 定量的評価や手法は、ある意味では使わなければならないと思う。ただ、最終的にはそれを超えて評価する評価者の見識みたいなものが、必ず重要になると思う。
 その意味で、評価者の問題が決定的に重要である。評価される側が、この評価者が言うことならばと納得して、評価を研究に反映させるようになることが基本的に重要だと思う。同時に、評価システムには信頼性や公正性も重要である。こういう話は下手をすると、評価者ににらまれると終わりということにもなりかねない。
 そうならないための保障として、見識の高い評価システムということと、どれだけ多くの人がそういうところに参加していくかということがあると思う。若手や中堅であるとか、海外の研究者を、ピアレビューにどううまく取り込んでいくかということになると思う。
 一方で、我々がよくお願いする見識のある先生方は大忙しで、評価で日本中を飛び回ってご自分の研究ができなくなったりしている。両方のシステムをうまく組み合わせ、信頼性の高いものをつくることが重要ではないかと思う。
 もう1点、安定して研究ができるようになることが、結局は創造的な仕事を育てていく一つの保障になる面があると思う。アメリカは競争社会と言われるが、アメリカで30数年間全く同じテーマで、NIHから数千万円をもらっているという例がある。いい研究がきちんと評価されて、長い間続けられ、その中から出てくるものはあると思う。日本の場合は、プロジェクトを立てるときに、いつも目新しいように表面を変えないとなかなか採用されないという状況がある。その点も考えていくべきではないかと思う。

【事務局】
 次回は本日の議論を踏まえ、事務局側でもう少し絞ったものを事前にお見せして意見を伺いたいと思う。

【委員】
 今日の議論を踏まえて、どういう課題に対して、また、文科省のある種のミッションというかスタンスから、議論が必要な点を整理し直していただきたい。

【事務局】
 本日は、事務局として事務的、専門的にいろいろ議論しなければいけないことを全部挙げた。今度は、事務的にこなせるところについては、次々回に骨子を出して、こういうふうにやりたいがどうでしょうかという形でお伺いする。
 それで議論をいただきたいところを絞って、事前に届けるので、検討していただいた上で、次々回に全体をもう一回振り返るということでお願いしたい。

(2)科学技術振興調整費で平成12年度に実施した科学技術政策基礎調査の3テーマ(資料2‐1、2‐2、2‐3)について、事務局より調査を行った背景の説明を行い、各調査委託先より調査報告が行われた。

(3)第2回研究評価部会議事録(案)について、所定の手続きの後、公開の手続きが行われることになった。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)