6.今後の防災教育支援に関する基本的戦略

1 「担い手」・「つなぎ手」等の人材を育成する

 「教育は人なり」と言われるように、防災教育の積極的な推進を図っていくためには、学校や地域において防災教育に携わる人材を育成していくことが重要である。
 このため、教職員や地域防災リーダーのうち、防災教育の重要性に気付いていない人に対しては、まず教職員の新任研修・定期研修や地域防災リーダーの養成講座等において防災教育の重要性や必要な知識を学ぶ場、防災教育を実践している「担い手」・「つなぎ手」と出会う機会等を設ける。また、その中から防災教育の本格的な「担い手」としての役割が期待される学校の教職員や地域防災リーダーの育成に向け、具体的な教育内容・方法等を学ぶための研修等の機会を設ける。同時に、これらの人々には防災教育の「つなぎ手」として、外部の人材を防災教育の現場と結びつける役割も期待されることから、学校や地域以外の関係者との人的なネットワークを構築するための場づくりを進めるとともに、行政機関、自主防災組織、学協会、NPO、民間企業、経済団体等の防災に関わる者に対して、防災教育への積極的な参加を促す。さらに、地域の災害の実情を踏まえた防災教育の内容の充実等を図り、児童生徒や地域住民等が科学的で正しい知識を身につけるため、防災科学技術の研究成果等を多く有する大学・研究機関、学校や地域と有機的に結びつける取組を推進する。

2 誰でも利用できる学びの素材・場を提供する

 防災教育を効果的に支援していくためには、防災教育に携わる人のみならず、誰もが利用できる優れた「学びの素材」の存在、それらを簡単に揃えられるような環境や場が重要である。
 このため、防災教育に関する優れた取組や事例等で活用されている教材・コンテンツを積極的に収集・提供し、児童生徒等の発達段階や教育課程、さらには地域住民の理解度等、対象者に応じて内容の体系化を図るとともに、利用できる教材・コンテンツの選択肢を多数提示できるようにする。特に、学校においては現行の教育課程の中で、防災に関連する部分に連携させて防災教育を行うことができることから、それらを体系化させたコンテンツが重要となる。また、教材・コンテンツは、子どもや地域住民に何を伝え学ぶべきか、どのような発見をするべきかという具体的な狙いをもったものとするとともに、科学技術の知見や研究の成果が正しく反映されたものとする。さらに、「担い手」・「つなぎ手」である教職員・地域防災リーダーに対して、これらの教材・コンテンツを効果的に活用することができるよう、その活用方法を学ぶ場を設ける。

3 内発的な動機付け、気付きを促す教え方を導入する

 災害の被害から想起されるように、「防災はこわいもの、暗いもの」という認識を持つ人も少なくないが、これは防災の一側面を捉えたものに過ぎない。防災の取組が自らや周りの人々の大切な生命を守ることにつながるということを意識させ、防災を前向きにとらえていくためには、防災教育の成功事例に加え、環境教育・福祉教育等の他分野の取組を効果的に活用して防災の重要性に気付かせ、防災教育への自発的かつ能動的な取組を促していくことが重要である。
 このため、防災教育の重要性にまだ気付いていない人に対して、取組のきっかけをつくり防災教育への興味・関心を呼び起こし、その意義を見出させる「内発的な動機付け」や防災の重要性への「気付き」を促す観点から、学校や地域等における優れた防災教育の取組を評価し、それらを広く紹介していくような仕組み、既に能動的な学びの手法等を用している「担い手」と協働で取り組めるような場・機会、さらに誰でも優れた取組を実践できると理解してもらえるような機会等を設ける。また、児童生徒等の防災に関する興味・関心を呼び起こすような教え方の開発や、休日や夏季・冬季休暇等を活用し、学校・社会教育施設等で様々な防災に関する体験活動や地域住民との交流活動を行えるような仕組み、地域住民のニーズを満たしながら地域の防災の課題の解決を図ることができるような取組等を充実させる。

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