防災分野の研究開発に関する委員会(第51回) 議事録

1.日時

平成21年7月15日(水曜日) 10時~15時30分

2.場所

文部科学省 3F 1特別会議室

3.議題

  1. 第4期科学技術基本計画における防災科学技術の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

濱田主査、天野委員、荒卷委員、今井委員、上田委員、碓井委員、岡田委員、折坂委員、木村委員、国崎委員、佐土原委員、重川委員、清水委員、首藤委員、寶委員、武井委員、田中委員、福和委員、松澤委員

文部科学省

鈴木地震・防災研究課長、南山防災科学技術推進室長 他

5.議事録

 【事務局(富田)】

 おはようございます。定刻になりましたので、防災分野の研究開発に関する委員会、第51回を開催させていただきます。

 まず、事務局内の人事異動がございましたので、新たに着任いたしました地震・防災研究課長の鈴木と防災科学技術推進室長の南山よりごあいさつを申し上げます。

-鈴木課長・南山室長 あいさつ-

【事務局(富田)】

 本日は、本日は中尾委員と林委員がご欠席、委員21名中19名に出席いただいております。会議開催の定足数を満たしていることを報告申し上げます。

 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

-資料の確認-

 では、進行を濱田先生にお願いいたします。

【濱田主査】

 本日も長時間になりますが、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、早速、議題1の「第4期科学技術基本計画における防災科学技術の在り方について」に入ります。前回の委員会では、10名の委員の先生方からご意見と発表をいただきました。今回はそれに引き続きまして11名の委員の方と山岡科学官にご意見をいただきたいと思います。皆さんからは意見書を出していただいておりますので、それに基づいてご説明をいただきたいと思います。

 本日のご説明をいただく前に、前回10名の委員のご発表について事務局より説明をしていただきたいと思います。お願いします。

【事務局(富田)】

 それでは、資料51-委員配布2について簡単に説明をさせていただきます。

 これは前回、各委員の先生方からいただいた主な意見の要旨を取りまとめたものです。「第4期科学技術基本計画における防災科学技術の在り方について」という議題の中でいただいたものですが、以下のように1から4まで大きく主題をつけて取りまとめております。

すなわち、「1.防災科学技術推進に当たっての理念」として、各委員からのご意見を集約すると「国家存亡の危機につながる自然災害を克服する頑健な国づくり」、「国際社会への貢献」、「防災分野と環境保護分野の連携研究による自然災害対策の推進」、「国民生活に根ざした防災科学技術研究の推進」という大きな4つの柱にまとめることができるかと思います。

 「中長期的視点に立った我が国における今後の防災科学技術推進の方向性」につきましては、5つの大きな丸にまとめることができるかと思います。「防災分野の研究成果の社会への還元」、「中長期的に実用化を目標とする防災科学技術」を推進すると。そして「地球規模的な気候変動に対応した自然災害研究」、「防災科学技術の推進体制の構築」、「防災分野の研究開発を進める上での留意事項」といった点を挙げていただいております。

 「今後の防災科学技術の重要課題」については、以下のように集約できるかと思っております。「自然災害全般に関する課題」、「地震災害に関する課題」、「地震災害以外の災害に関する課題」、「情報システム等に関する課題」、「災害後の復旧・復興に関する社会科学的な課題」、「事前対策に関する課題」、「研究体制や人材に関する課題」。

 最後「その他」につきましては、社会においてコンセンサスが得られるとか、防災教育ソフトを充実させるとか、火災旋風を出さないとか、国際交流において関係諸国の事情に応じた援助を行うべきである等々、をいただいております。

 以上、すべてを網羅してないかもしれませんが、事務局では主な点として、このように集約させていただきました。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 本日、12名の方から新たにご意見を頂き、それを含めて文部科学省として第4期科学技術基本計画への提言として、それをまとめるということになろうかと思います。今、ご説明しましたのは、前回のキーワード、キーフレーズということでございます。よろしいでしょうか。

 それでは、本日のご説明いただく進め方につきまして事務局からご説明ください。

【事務局(富田)】

 それでは、本日のご発表いただく方針につきましてご説明させていただきます。

 6月に各委員にお願いいした見出しの1から3までについて、各委員に説明をいただくという段取りになっております。まず、防災科学技術推進に当たっての理念について、次に中長期視点に立った我が国における今後の防災科学技術推進の方向性について、3つ目として、今後の防災科学技術の重要課題について、ご説明をいただく予定です。

 ヒアリングの進行につきましては、各委員、説明時間は10分です。その後、質疑応答10分ですが、明確に時間を分けているわけではございませんので、説明が早く終わっても結構です。全体として説明、質疑応答合わせて20分と考えておりますので、18分ごろに一鈴を鳴らせていただきます。

 午前の発表者は今井委員、寶委員、上田委員、碓井委員、折坂委員、木村委員の6名、午後の発表者は重川委員、武井委員、松澤委員、首藤委員、福和委員、山岡科学官の6名という時間割で進めさせていただきます。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。まず今井先生からお願いしたいと思います。

【今井委員】

 私は、新米の委員ということもありまして、勉強不足で的外れなことを申し上げるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。

 私は、電力会社で防災を担当しておりますので、そういった立場からちょっと考えた点についてもご説明をしたいと思います。その辺は資料の2ページ目の3の「重要課題」のほうで少し反映した意見をまとめてございます。

 1番の「理念と方向性」に関しましては、社内では技術開発本部という組織の中の部署があり、そういったところで社内の技術開発戦略をまとめております。本日の発表内容については、その辺の部署とも相談した上でまとめてございます。こういった社内の意見は、電気事業連合会(電事連)とか、あるいは日本経済団体連合会(経団連)、そういった場でも議論の取りまとめをされておりまして、その内容については関係官庁にも提言、あるいは意見、要望として出されているということだと思いますが、この辺の議論を参考にまとめたものが1番と2番の「理念」と「方向性」でございます。

 では、1番の「理念」のほうでございますが、これは理念というよりも、第4期の科学技術基本計画をまとめるに当たっての論点に近いような内容かもしれませんが、「理念」のところを少しご説明させていただきます。

 1つ目のブロックですが、中長期にどんな科学技術の貢献を経済社会の中に実現していくかということを具体的に研究開発、我が国のイノベーションシステムにぜひ方向性を打ち出して示すべきでありましょう、というのが1つ目です。

 それから、第3期の計画の中で、「成果の社会還元」、あるいは「イノベーションの視点を一層重視」ということが挙げられておりますので、将来を見据えた我が国の課題解決、あるいは経済社会システムの実現、こういったものに向けて具体的な技術開発の成果目標を時間軸とともに、例えばロードマップとして明確化していく、あるいは実現に必要な戦略をとりわけユーザー側の視点ですね――私どもライフラインもこういった基礎・基盤研究から実用化までされた技術開発の成果を使わせていただく立場ではありますが――、ユーザー側の視点を取り入れつつ、ぜひ実用化まで展開していただきたいというところであります。

 それから、2つ目の「方向性」についてですが、先ほどの理念の中でも挙げました「成果の社会還元」、これを一層推進する観点から政策課題、目標ごとに戦略を策定して研究評価を含めてPDCAのサイクルの中で目標に対する具体的成果、課題、こういったものを、くどいようですがユーザー側の視点、マーケティング的な発想、企業とかあるいは国民の皆さんがぜひ使いたいと思われるような技術開発の成果を、そういった発想から「見える化」していくべきでありましょうということです。

 それから、2のところですが、基礎研究から実用化に至るイノベーションプロセスの各段階における資源配分のあり方です。人・物・金、そういったものを基礎研究の重要性については産官学、皆さん共通認識として共有していると思いますが、それぞれの目的に応じた資源配分方法を総合的に検討すべきでありましょう。とりわけ革新的なイノベーション創出を目的とした基礎研究、こういったものへの資源配分に当たっては、研究開発の成果を享受する側、またくどいようですがユーザー、国民、こういった視点の反映される仕組み、これが重要であろうと思います。

 それから、基礎研究とは別に応用開発といった分野におきましても、イノベーション創出の観点から、大学あるいは公的研究機関が実施することが望ましい研究、こういったことが応用開発の中にもあると思いますので、そういったことも企業等との連携を促進する方策に関する検討もあわせて必要であろうと思います。

 それから、芽が出てきたシーズを着実にイノベーションに結びつける、こういったことの方策に加えて複数の技術を全体的な社会システムとして、個々の技術はいろいろ、かなり実用化に近い技術があると思うのですが、社会システムの中にそれぞれ複合的に組み合わせていって実証研究をする、そういった環境整備が重要であろうと思います。「こうできたから使ってください」、「使ってみたら使えないね」、ということではなく、ぜひ実証研究をしっかりとやるべきであろうと思います。

 それから3つ目ですが、「成果の社会還元」、これを一層推進する観点から文部科学省と、イノベーション創出の出口側を担う企業並びにそういった実用化段階で責任を有する官庁、経産省とか国交省、厚生労働省、こういった省庁との関係についても検討が必要だろうと思います。

 課題解決とか社会システム改革に向けて基礎研究から実証研究を経て実用化に至るまでのイノベーションプロセスを一貫して推進するための学術分野を超えた──これは前回からもかなり議論されておりますが――学術分野を超えた体制整備、あるいは文科省と関係官庁の共同プロジェクト、そういった連携、さらなる強化が必要ではないかと考えております。

 それから3番目、2ページ目裏側になりますが、「今後の防災科学技術の重要課題」といったことについてまとめております。これについてはにわか勉強ではありますが、内閣府の「平成21年度防災白書」の中でさまざまな技術開発が防災に関して取り組まれていて、テーマもかなりたくさんあると。そういった中でさまざまな災害の予知、予防、対応力強化、これは例えば耐震強化とか、そういった技術開発がされておりますが、このような中で国家存亡の危機につながるような大規模災害への対応力、こういったことも重要であるとして掲げられておりますが、私どもライフラインの、こういった科学技術のユーザー側の立場から申し上げますと、例えば被災直後の状況把握ですね。情報提供、これもマスコミを通じてということもあれば、国民1人1人が自由にアクセスできるような情報を収集できるようなシステム、そういった被災直後に状況把握、情報提供、情報収集、こういったことを確実に実施するための研究開発も、これまでもずっとやられておりますが、重要課題として掲げていいのではないかと考えております。これは、国家存亡の危機に当たって国、自治体、あるいはライフライン企業、国民の皆さんも災害後の復旧・復興計画・戦略の迅速・的確な立案・策定、そういったことにも資するものではないかと考えております。

 「例えば」以降は、これはその次の資料1ですが、これも首相官邸のホームページに出ていた資料ですので公にして構わないと思うのですが、「我が国における人工衛星・ロケットの開発・利用状況について」という資料が宇宙開発戦略本部事務局でまとめられておりまして、これの2ページになりますが、ここに「我が国の宇宙開発・利用の状況例」というのがございまして、この中でも防災、災害被災状況の把握というのが2ページの円の一番上のちょっと左側、この辺にも災害情報を宇宙衛星を使って把握していこうというようなものが掲げられています。ちょっと字は小さいですが、「だいち」という衛星を使って地上の様子を把握するというような技術開発もなされているというものであります。

 この辺の技術開発がこれだけ進められているのを把握した上で、先ほどの資料の2ページの3のところをご説明させていただきます。「例えば」のところですが、これは今ご説明した資料の中にもございますが、この中で文科省さんが中心になって進められています衛星等による自然災害観測・監視技術、こういったものをぜひユーザーサイドとして有効に使えるような技術開発を促進していただければと思って、重要課題の一つに挙げさせていただいております。

 現状、私どもどんなことをしているかと申しますと、ここには書いてございませんが、災害状況を把握するために、ふだん送電線の巡視に使っているヘリコプターを被災地に飛ばして上空からビデオカメラで撮った映像を本店の災害対策本部へ送って、災害状況を把握するとか、あるいはテレビ局でもお使いになっているロケーションポーターというビデオカメラの映像を携帯の電波や通信回線を使って本店本部まで届ける。そんなことをして現地映像を収集しようということをやっておりますが、この技術開発、文科省さんが進めておられるこういう技術を実用化していただくことによりまして、静止衛星上の画像から、即座に、被災直後にそういった被災状況を把握できる、こういったことで被災状況を把握した上で復旧戦略の策定、そういったことがすぐに進められるということで有益、有用な技術であろうと思っております。

 ただ、現状ではどんなものになるのかというと、衛星からすごい高精度の画像が撮れるのですが、それを私どもライフラインがいただくとすると、防災無線を使う関係で高精度の映像がどうも私どもにはもらえなくて、ほんとうに役立つ映像がもらえる技術になるのかなという疑念を抱いているという状況でございます。ぜひ、こういった衛星技術を使うにしても、ユーザーサイドが満足できるような仕様で技術開発を進めていただけたらと思ってこの3番をまとめております。

 以上でございます。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 今井委員の説明に関しましてご意見をいただきたいと思います。

 前回も少し話題にでましたが、いわゆるBCPですね、ビジネス・コンティニュイティ・プラン、事業継続計画と訳したほうが妥当であるということだと思いますが、電力エネルギーの早期回復、これは早期復旧に欠かすことができない一番重要なポイントだと思いますが、そういう点に関して何か、例えばこういうことを研究すべきだとか、そういうお考えはおありになるのでしょうか。

【今井委員】

 日ごろからの防災業務計画というものを私ども策定してやっておりますが、まずは先ほども出てきました耐震能力といいますか、災害に強い設備づくりというのをまずやって、被災しないという設備づくりをするのですが、それもやはり自然相手ですと幾らお金をかけてもそんなものできませんので、次にやっておりますことが、多重化をすると。1つ壊れてもほかの方法で電気エネルギーをお届けするというやり方をしております。

 そして3点目は、万一広範囲の停電が起きたときにどう早期に復旧するかということなのですが、早期に復旧するためには、やはり被災状況をまず把握をして、どういう復旧戦略を立てていくかというのを早期に掲げるということとともに、日ごろから訓練をして、あるいは復旧資材を備蓄しておいて、あるいは他電力会社間での協力、これは協定を結んでおりますが、そういった人海戦術も含めて復旧を早期にやるという方針でやっております。

【松澤委員】

 御存じであれば教えていただきたいのですが、緊急時にはデータ通信というものがなかなか、ほんとうの情報が欲しいところにデータが行かないということがあると思うのですが、その場合、例えば衛星を使ったシステムというのは、現在どのぐらいのデータを電送できる技術があるか御存じでしたら教えていただきたい。

【今井委員】

 私は、詳細わかりませんが、現状では衛星と地上局の間ではかなりの情報量のデータが送受信されているのだと思うのですが、その後、地上で、例えば防災無線を使うとなると、ほとんどデータ電送能力が低いものですから、もともとが高精度の画像があったとしても、私どもに届けられる画像としては、拡大していってもぼやけちゃうという、そんな画像しかいただけないということで、トータルで高性能の情報が電送できるような情報電送技術も含めた技術開発をしていただくとありがたいなと思っております。

【松澤委員】

 この4ページに超高速インターネット衛星というのが書かれているので、衛星通信、データは漏れてくるが、そこからの配信もインターネット衛星を使えば、発電機さえあれば電気は使えますから、そういう設備をこれから伸ばしていくことが重要と思いました。

【今井委員】

 おっしゃるとおりだと思います。地上の光ファイバ通信もあれば、衛星を介してのやり方もあると思いますので、そういった技術も含めてトータルで技術開発をやればいいのかと思っております。

【岡田委員】

質問というか、技術に疎いのであれなんですけど、静止衛星で被災状況の把握ができるというのは確かに有効だと思うのですが、静止衛星というと3万6,000キロ上空ですから地球の半径の6倍ですよね。そういうところから、市街のどこの道路が壊れているとか、そういうのが見える技術開発は可能性があるものなのでしょうか。

【今井委員】

 私がお答えできないのですが、これは映画の世界かもしれませんが「エネミー・オブ・アメリカ」なんていう映画の中で犯人ではないのですが、犯人の追跡を地上の解像度10センチぐらいまでやって、表情までわかるような技術が映画の世界ではあります。今回の「だいち」に搭載しているカメラがそれほどの解像度があるかどうかはわかりませんが、そういった技術をぜひ開発していただいて、使えるようになればと思っています。

 あとは、夜間とか、雲があるときに使えないようですと、ちょっとこれもまた困るということですので、かなりの技術開発が必要なのかと思っております。

【上田委員】

 静止衛星等に期待して、画像が必要というお話だったのですが、高分解能の画像になるとすごいデータ量が多くなると思うんですけど、それを電力関係のところでは、特にデータを受信すれば独自に解析して防災に役立つ情報に変換するというようなことをお考えなのでしょうか。

【今井委員】

 まずは外観上で、設備が壊れているか壊れていないかということがまず把握できれば十分かなと思っています。それがどれほど解像度が高いものになるかわかりませんが、どこの電線が切れているとか、あるいは赤外線センサーであれば、どこが発熱しているとか、そういったことまで我々が求めて、その技術開発が可能であればそういったことも可能であるかと思っております。今はまだ普通のビデオカメラによる上空からの画像を使って被災状況を把握するという程度なんですが、情報量によってはそういうこともできるのだろうと思っております。

 それから、電力会社の立場で申し上げておりますが、経団連の首都直下地震対策ワーキングの場では、ライフライン、鉄道の方とか通信の方々がおっしゃっていたのはやはり同様のことでして、特に鉄道の方は徒歩巡視で線路を全部見ないと電車を通せないが、全体が把握できれば電車の開通も早くできるというようなこともおっしゃっていました。

【碓井委員】

 「だいち」のデータのことですが、現在でも10メートルぐらいはありますが、将来的には25センチ、十分いくと思います。ですから、これはかなり今、研究が進んでいて、あともうちょっとプッシュをして予算が出れば、次の衛星が飛びますから、そこのところはやはりそれが飛ぶようにやはり政策をすべきかなと思います。

【濱田主査】

 今井さんのご指摘の中で文部科学省と関係官庁の共同プロジェクト等の連携強化が必要であると。これは重要なご指摘だと思いますが、防災の研究というのはどうしたって、出口を見据えた研究です。出口を担うのは、実際にいろいろな施策を実行されている国交省とか経産省とかになりますので、これは非常に重要なご指摘ではございますが、なかなか難しい話だと思います。

【鈴木地震・防災研究課長】

 ご指摘の点は非常にごもっともと思います。しかしながら、何についてどこまでできるのかということについては、いろいろ関係機関と相談しながら、共通の認識をまず持って、同じビジョンで取り組めれば、いろいろなことが少しずつ進むというふうには思います。今後私自身としては、それを頭の片隅ではなくて中心に置いて、いろいろ考えていきたいと思います。

【濱田主査】

 ありがとうございます。

 それでは、次のご説明に移りたいと思います。次は寶先生、お願いします。

【寶委員】

 寶でございます。

 アンケートに3ページ、回答しておりますので、それに従いましてご説明したいと思いますが、まず、「防災科学技術推進に当たっての理念」というところでありますが、人間及び人間社会の安全・安心を確保するということは当然、この委員会でも課題であって、議論になっているわけですが、地球社会の環境はますます複雑化し、かつ厳しいものになりつつあると。この認識も皆さん当然お持ちであるということで、従来とは異なる災害の様相が出てきていると。すなわち、従来型のほうで十分に対処できない局面にさらされていると言える。これも背景ですが、要するに過去の経験則が役に立たない状況になっているということです。したがいまして、地球社会における災害に対する脆弱性ですとか、適応力、回復力、vulnerabilityとresilienceといったものは、ほったからかしておくとますます悪化していく方向に行くと。したがって、それを悪化させない、あるいは改善していくような科学技術は何かと、そういった方向でこれを明らかにして推進する必要があるということで、そのときに地球規模でものを考えると。

 すなわち、日本の国策として防災という非軍事分野で全世界に貢献するという心構えが必要であろうと思っております。日本の技術というのはかなり進んでおりまして、いろいろなことができるわけですが、その場合にかなりお金をかけた大がかりなシステムであったりするわけですね。それであるがゆえに性能も高いわけですが、必ずしも日本の得意とするところがほかの地域では経済的観点から着手しにくいと。あるいは着手して完成しても維持管理しにくいと。あるいは、日本国内においても、これからの経済情勢等を考えると、そういうことも言えるのではないかということがあります。先端的な知識や新技術を活用した防災、これは当然推進していくべきもので必要でありますが、伝統的な知識や旧技術で対応できる防災も依然として重要であるということであって、これらをうまくミックスしたものが先進的な防災科学技術であるというふうに考えております。

 例えば、自分自身のことを考えましても、同じ場所に住んでいて、周りの環境がほとんど変わらないとしても、自分自身が年をとっていくわけですね。そうすると、自分自身の脆弱性ですとか、あるいは適応力、回復力というものが衰えていくわけですよね。日本の国ということを考えますと、高齢社会になっていっているということでありますから、そういうふうに何らかの手をどんどん打っていかないといけないというふうなことであります。

 それから2番、「中長期的視点に立った我が国における今後の防災科学技術推進の方向性」ということで、これは3つの観点から書いております。1つ目は地球物理学的視点、2つ目は地球社会学的視点、それから3つ目は国際的リーダーシップの確保の観点からということで書いておりますが、まず1番目の地球物理学的視点ということですが、地震の発生ですとか火山の噴火といったものは、長期的な周期性があるということで、どこで起こるか、いつごろ起こるかということはおおよそわかっているということでありまして、低頻度激甚災害、そういう特性があります。一方、気象災害とか水災害は毎年起こり得ると。ことしものすごい台風やハリケーンが来たとしても、また来年も来るかもしれないということがあるわけですね。そういう毎年起こり得る高頻度災害であると。たまにはものすごい激甚なものも来ると。それが連発するということがあり得るわけですが。それから、気候変化による災害の慢性化ということで、気象災害、水災害の頻発化も関連するのですが、もう少し長期的なんですね。砂漠化ですとか海面上昇ですとか、それから氷河・氷雪や万年雪の融解、こういったものがじわじわと広域に起こるということで、10年、20年、何十年とたつと、いつのまにかかなり深刻な状況に陥ってしまっているということもあるわけですので、そういったじわじわと起こるようなものについてやはりちゃんとモニターしておいてやっていかないといけないということで、それぞれ特徴のある災害が地球物理学的視点からあるわけですが、こういったものについては、予見的・予防的科学技術を推進するということが重要だと思っております。

 それから、地球社会学的視点からということで、次のページにまいりますが、人口・経済の地域的インバランスというものが社会格差を拡大していると。これは国内的な都市化と過疎の問題もありますし、世界的な南北問題、先進国と後進国の問題があるわけですが、貧困というものが社会を脆弱にして、脆弱な社会が被災すると。被災するとさらに貧困になると。そして貧困になればさらに脆弱性を増すと。そして、災害が拡大していくと。こういった悪循環に陥るわけですね。こういったものを中長期的に考える必要があるということで、天災、いわゆる自然災害に対応する防災科学技術から、天災プラス人災、こういった社会的な要素も含んだものに対応する防災科学技術というものを志向していくべきであろうと思っています。

 そして、国際的リーダーシップの確保の観点からということで、我が国は国連防災世界会議を2005年に主催したわけでありますが、兵庫行動枠組み、兵庫フレームワークフォーアクションというものをそこで宣言されているわけですね。これは国際的な約束ということになっているわけですが、これを中期的には2015年までですからあと五、六年の話なので、これを推進して仕上げていくということが明らかな中期的な方向性である。これに沿った防災科学の振興と技術の開発が必要であるということで、国際的な約束事とか宣言とかいろいろなものが国際学会なり、こういった会議で、あるいはサミット等で約束されるわけですが、いつの間にか忘れ去られてしまって進んでいくということも多々あるわけですので、そういったものをしっかりリファレンスしつつ、行政を進めていくと。あるいは、我々ですと研究を進めていくということになると思います。国連国際防災戦略というものがあるわけですが、これをさらに活用していくと。

 それから、長期的には、2015年以降の兵庫行動枠組みにかわる新しい概念を我が国がリードしてやっていく必要があるのではないかと考えております。

 世界の防災に関する最大のドナー国ということであるとすれば、非軍事面での国際貢献としての防災というものをさらにアピールして、実際の国際政治的アジェンダをリードするというような防災科学技術政策を推進するということが重要でありまして、科学技術外交ということが最近言われているわけですが、そういった中で防災をさらに強化していくことが一つ重要なのではないかと思っています。

 学会のほうでは、国際科学会議(ICSU)が向こう10年間の災害リスクに関する総合研究のIRDRなんて言っておりますが、これを採択しておりますので、今後10年間、この線に沿って科学研究が進められていくということですが、それに対して我が国はどういうふうに戦略的に対応していくかということであります。それを考えていくと。我が国の科学アジェンダというものを策定して、それを国がサポートしていってはどうかということで、戦略性、計画性、継続性を持った施策を国として推進するということで、研究推進は当然ですが、研究者の育成と、こういったものも重要ですし、防災技術の実践、あるいは海外政策立案、こういったことができる国際エリートを育成していくということが中長期的に絶対必要だと考えております。これにつきましては、濱田先生も委員長としてご活躍になっておられる日本学術会議もこの役割を果たしていくことになるんじゃないかと思っております。

 それから、国際的な活動の中で防災に関して我が国が主導しているものが幾つもあります。ここで幾つか例示しておりますが、地球観測十年計画(GEOSS)です。それから、これはJAXAが関係しておりますが、センティネルアジア、これは災害が起こったときに衛星で災害の現場を観測して、そのデータをアジア各国に発信するというような、情報提供するというようなプロジェクトですね。それから、JICAのプロジェクトのアセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト、AUN/SEED-Netと言っておりますが、これ昨年からディザスタマネジメントの分野を立ち上げましたので、3月にクアラルンプールで国際会議をやりまして行ってまいりました。

 それから、神戸にありますアジア防災センター、ユネスコとWMOがやっております国際洪水ネットワーク、国際洪水イニシアティブ、それから防災科学技術研究所が中心となって行っております防災科学技術情報基盤。これは防災に関するさまざまな技術情報をデータベース化して、知識ベースみたいなものですが、これをコンテンツをどんどん整えて、ある国で利用されている防災技術が、他の国でも応用されないかというような形で、こういうふうな情報基盤を整備するということをこれまで数年やってきたわけですが、それをさらに推進すると。それから、斜面災害につきましても国際的なネットワークが構築されていると。こういったものを支援していくということが必要ではないかと思っております。

 3番の、今後の防災科学技術の重要課題。ここでは1、2、3というふうに分けて、1番目は基礎医学みたいなもの、2番目は予防医学、3番目は臨床医学と。防災というものと医学みたいなものを対比させて仕分けしたものでありますが、1番目は基礎医学に相当する基礎科学技術ですね。先端的科学と技術の飽くなきチャレンジということで、自然ハザードの解明。これは従来からやっているハードサイエンスの部分でありますが、これは当然やっていくと。それから、観測・監視、モデリング・シミュレーション、予知・予測の技術の高度化。これは人工衛星やペタコンも活用するということで、これは先端的な医術を自然ハザードに適用していくということであります。

 それから、3つ目の丸は、先ほど申しました、天災プラス人災のメカニズムに関する知の体系の確立ということで、これは局所的なものもあれば地域的なもの、地球規模のものもあると思いますが、要するにこれは分離融合のようなアプローチでやっていかざるを得ないものでありまして、こういう分離融合的な研究を推進すると。

 それから4つ目は人間工学、人間居住空間科学に基づくセンサーやロボット技術の開発ということで、いろいろなセンサーがあると思いますし、それを応用した防災ロボットのようなもの、こういった技術を開発していくと。既になされていますが、さらにこれを推進していくということです。

 それから、次のページに行きまして、世界人類の基本的人権を守るという観点からの防災学の構築ということで、地球社会に貢献するといいましても、多種多様な地域、国があるわけで、それを一律に西洋化すると、あるいは先進国化するというのは、これはばかげているわけでありまして、その地域の実情ですとか風土ですとか文化に応じて、かつ、その国の状態に応じて、少なくともその国、地域での基本的人権を守っていくという観点からの防災学の構築というものが重要だと思っています。

 それから、地球環境や生態系を守るという観点からの防災のあり方。これについては前回もお話があったようですが、当然これも重要であります。

 それから2のところは、これは予防医学的な観点ということで、予防科学技術と書いてありますが「戦わずして勝つ人智の統合」と書いてありますが、例えば危ないところに住まないというのが一番いいわけですが、日本の場合は、日本全国危ないところですが、それにしても洪水災害に遭わないようなところに住むような行政をするとか、人々がそういうふうな意識を持つということは大変重要でありますので、でき得れば災害に遭わないようなところに居住をして生活するということが重要であります。

 防ぎきれない自然ハザード。これは台風にせよ地震にせよ、当然、防げないハザードでありますが、これをいかに回避するか、被害を軽減するかという、そういった知恵を総合化していくと。

 それから、計画予知。これは長期予測と言いかえてもいいかもしれません。それからリアルタイム予知、短期予測。これの効果的利用ということで、幾ら立派な防災計画を立てておりましても、そのレベルにまで社会のシステムが到達しないということは当然あるわけですから、リアルタイムの予測を生かしてやっていくとか、これもいろいろあると思いますが、こういう計画予知とリアルタイム予測とは別ですので、メカニズムはもともと一緒ですが、局面が違うということがありますので、そういったものをうまく仕分けしつつ両方考えながらやっていくと。

 それから、災害予防のための社会システム、これは工学技術、あるいは社会技術、あるいは法制度、こういったものに関する研究。

 それから、防災投資科学、防災経済学の推進ですが、いずれにしても防災のことを行うにしても、どういう分野に、どのように、あるいはどういう場所に、いつ投資したらいいのかということについて、あまり行き当たりばったりにならず長期的な視点でやっていかないといけないということですので、こういう学問が発達すれば、さらによい施策ができるのではないかと考えております。

 それから、災害認知社会の構築と。これは住民の皆さんがアウェアネス、プリペアードネスを高めていただくというふうなための研究なり政策が必要であると。

 それから3番目が臨床医学に相当するもので、これは実際に災害が起こったときにどうするかと。病気になったときにどうしたらいいのかと、けがしたときにどうしたらいいのかという話と同じように、被災したときにどうしたらいいのかということでありまして、このときにどういうふうに資源を投入するかと。「手術をどうするか」と書いてありますが、どんな手当をしたらいいのかということに関する方法論ですね。

 それから2つ目は危機管理体制に関する研究ということで、医学のほうで言えば、病院、医者、救急車をどう配置するかということになると思いますが、防災の施設をどういうふうに配置するかと。これは防災の計画的な話もありますし、リアルタイムの話も当然あるわけですが、特にこれは現象が起こってからの話ですね。

 それから、復旧・復興の技術的方法、社会システム的方法ということで、投資、融資、法制度、こういったリハビリに関する方法論に関する研究が必要だろうと思っています。

 それから、その他、これは省庁連携の話ですが、防災に関する行政の連携強化、それから2番目が防災科学の振興のための研究支援。それから防災技術の開発のための民間支援。それから、環境・防災分野で科学技術外交を推進する国際エリートを育成していく。それから、学際・複合的研究教育の推進。政策と科学をさらに結びつける方策。防災を科学技術基本計画の重点分野にしていけないかと。それから7番が種々の防災技術や知恵を体系的に整理して国際的に供するDRHのような活動をさらに拡充することが必要ではないかと思っております。

 ちょっと国交省という名前が抜けているのですが、いろいろなところに入ると思います。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 今後の防災研究のあり方について、大変包括的なお話と具体的な課題を挙げていただきまして、本委員会の今後の議論に有益だと思います。最後のその他の6は重要な問題だなと思います。防災というのは非常に重要な課題であると国民も含めて認識をしているわけですが、総合科学技術会議の中で、これから第4期の計画を策定するのですが、なかなか表には出てこない。文科省としても防災が計画の中にはっきりと明示されるような戦略を考えて頂きたいと思います。

【梅田地震・防災研究課長補佐】

 今、まさに文部科学省としても第4期科学技術基本計画の策定に向けて議論を始めたところであります。これまで確かに防災分野を含む社会基盤分野というのは、重点4分野以外の分野に分けられています。資源の配分等も重点4分野に今までは重点的に投資されてきました。もちろん我々としては、社会基盤分野は重要と考えておりますし、そういった声もあります。第4期に向けて文部科学省内でも議論を始めたところなので、この防災の委員会で防災分野の重要性をしっかりと打ち出していきたいと考えていますので、積極的なご審議を宜しくお願いします。

【鈴木地震・防災研究課長】

 濱田主査の言われたように働くのが地震・防災研究課長である私のミッションです。ただ、重要な分野が並んでいる中で、全体として納得をいただける提案を出していかないかなければなりません。そういう点で先生方から、ぜひとも我々に提案を出していただき、それを、ほかの課とも調整しながら、まず文科省で、そして総合科学技術会議でということで運んでいきたいと思います。

【濱田主査】

 はい、わかりました。

【山岡科学官】

 寶先生のお話の中で、2の中の国際的リーダーシップの確保、それから科学技術外交の中の防災をさらに強化していくというのは、まさにそのとおりで、多分日本はこの分野では、科学技術はもちろんそうですが、これについても紛れもなくリーダーシップをとれるものを持っていると思うんですが、必ずしも外交と結びついていないというか、あまり強くやっていないように思えるし、それから、たくさんあるのだが、その相互の関係は今どういうふうになっているのかというのは、必ずしも僕はよく見えないのですが、もうちょっと戦略的に国全体としてやっていくというような点について何かご意見があればお伺いしたい。

【寶委員】

 やっぱりそういうことを専門にする人材を各省庁がそろえていただくということは大変大事だと思いますし、国連機関にももっと人を送っていかないといけないと思う。ですから、そういう情報発信なりコーディネートなり、政策立案なりできる人をもっと育てないと、我々、大学の教員が片手間にやっているようではいつまでたってもだめなんですね。あるいは現場で働く方々もたくさんおられるのですが、もっと日本人が1人だけでも世界で活躍できるような、そういう能力を高めないと。グループ作業は日本人は、各企業も得意なのですが。

 そういう、やはり一人一人、個人がいろいろなことができると、そういう国際エリートを育成して、そういう人たちを世界にどんどん送り込んでいくことが大事だろうと思っております。

【濱田主査】

 よろしいですか。

 それでは、時間もありますので、次のご説明に移りたいと思います。次は上田先生からお願いしたいと思います。

【上田委員】

 私からは、冊子の中にある内容を別途、カラーのページで補足を加えて用意させていただきました。これに基づいて説明させていただきたいと思います。

 私の説明は、防災に関しては各個人がいろいろ必要な情報を得て、その情報を使って自分で判断できるようになるといいなと思っています。そういうことができるようになるために、国として政策を考え、研究開発を推進すると良いと思います。第4期の科学技術基本政策に盛り込んでもらうようなものになると良いいと思っています。

 防災にはたくさんのテーマがありますが、具体的に水災害を取り上げて説明させていただきたいと思います。

 最初に、防災科学技術の推進に当たっての理念ですが、これまでのいろいろな研究開発を振り返ってみますと、干ばつですとか冷害ですとか、広域の大雨による洪水など、こういったことに対する対策というのはかなり進んだと思います。それは持続時間が長い現象ですと、現象が始まってから情報を出してもいろいろな対策ができるということだと思います。それに対して、災害を起こすような現象が発生してから情報伝達するまでに非常に時間が限られているようなものについては、観測・監視情報、それから予測情報を出す研究をもっとやってほしいという要望が高まっているのだと思います。

 発生したら、すぐ被害が起きるというような現象の場合にはなかなか難しいのですが、発生しそうだ、あるいは発生したという、「災害をもたらすような現象が始まった」というのがわかって、それを数分、あるいは数十分の間に、情報伝達すれば、被害が起きるまでにある程度の時間の余裕があるものは、自分で判断することが可能になってきているのではないかと思います。今、パソコンでインターネットを見て、いろいろな情報を得るとか、携帯電話のコンテンツに気象情報等がたくさん入るようになっていますので、今後10年の間にそういう研究を進めると、そういうものが実現するのではないかと思います。そういう情報が各自に、例えば携帯とかに入るようになりますと、自分の五感と情報の両方使って判断ができるようになる。そうすると、自然災害だけではなくて、ほかの人災にかかわる問題も情報が入るようになるり、情報をもとに行動を変えて避難を行うことができ、防災、減災に役立つのではないかと考えます。

 ですから、理念としては、「国民が各自の判断で防災に必要な行動をとることができるよう、防災・減災に必要な情報を全国民に瞬時に自動的に伝達するシステムを構築することをめざして、防災科学技術の推進をはかる」というようなことが考えられています。ただ、これは長いので、具体的には、こういう研究を重視すべきだというふうな短い言葉で最終的には出す必要があるのではないかと思います。

 そういうことを考えるときに、最近問題になっています、よくマスコミでとりあげられるゲリラ豪雨という現象がありますが、そういったものが現在どういうふうに観測、監視されているかということを見てみたいと思います。1枚めくっていただいた上の図がそうなのですが、丸で囲っている、例えば低気圧ですとか、台風ですとかという現象から、左下の竜巻等の現象まで、気象現象としては横軸に時間スケール、縦軸に水平的な広がりを示す図に現れます.特に問題になっています都市の集中豪雨とかというのは、真ん中付近にあります雷雨というものです。数十キロの広がりがあって、時間的には1時間程度の現象なのですが、台風からこのぐらいの現象までですと、現在ある気象レーダーや気象衛星の赤外線の画像を見て監視することができます。

 それに対して、それよりも小さなスケールの、積乱雲、それから積雲、さらに、その中に起きている竜巻というのは、現在の観測網ではなかなかとらえきれません。そういう現象を見るためには、ドップラーレーダーですとか、マルチ・パラメーターレーダーが必要になります。それから、雲を見る雲レーダーというものが必要になってくるのではないかと考えられます。

 それをどういうふうに見ているかといいますと、その下の欄で、左上の(a)というところで、北極側から見た、周りの波動を見ているような感じです。その中に青い丸がありますが、直径500キロ以上のレーダーの範囲ですと、非常に狭い範囲になるわけです。ですが、低気圧システムになりますと、その下の図の青い丸のところが、例えば前線の近くの強い雨のところがどういうふうになっているかというのがわかります。右上の(c)のところが、実際にレーダーで見ている画像で、濃いところが強い雨が降っているところと思っていただければいいのですが、数十km程度の広がりを持つ強い雨が降っているところはどこにあって、どういうふうに移動しているかというようなことは、今のレーダーでわかります。それから、左のほうに「渦を見る」と書いてありますが、竜巻をもたらすような親雲の渦ですね、そういうものは見ることができる。その下に500メートルより小さいような竜巻の渦ですね。そういうものもレーダーで見ると分解能の範囲でどこにどういう渦があるかというのは現在では見えるようになっている。それをきちんと見るためには、空間分解能としては100メートルぐらい、それから時間分解能では1分間隔というようなことが求められますが、これは現在の気象庁、それから国交省のレーダー網では無理でして、今後に新しい観測システムの導入が必要です。それがありますと、数値モデルも使って短時間予測ができるようになるということになります。

 こういった現象というのは、実は東南アジア、南アジアでも、大都市では同様の問題を抱えていまして、各国でドップラーレーダーの導入が進んでいるところです。そういうドップラーレーダー、それからさらに進んだマルチ・パラメーターレーダーを使うと何が見えるかというのは図を見てください。断面図で積乱雲の寿命を書いています。40分ぐらいの間に起きているのですが、最初、例えば10と書いてあるところに雲と書いてありますが、雲ができ始めて10分ぐらいでかなり発達することを示しています。15分ぐらいで中に雨ができて、20分ぐらいになると上にあられができて、下に雨粒ができる。その後、下降流が広がって突風が吹くというような寿命を持っているのですが、これの雨ができ始めてからは通常のレーダーで見えますし、通常のレーダーにドップラーレーダーの機能を持たせると風もわかります。それから、マルチ・パラメーターレーダーの機能を持たせると、どこにあられがあるとか、雨があるか、あるいは強い雨なのかどうなのかと、そういうこともわかります。

 現在、この技術が大体でき上がってきて、今後はソフトウエアの開発ということになります。ただ、これは雲ができ始めてから15分ぐらいして、やっと雨ができてから見ることができる装置ですので、それよりも前に、雲ができ始めたときに急激にその雲が発達しているかどうか、将来、大雨をもたらすような積乱雲になるかどうかというのを見るためには、雲粒を見る、波長の短い雲レーダーやレーザーレーダーが必要になります。これが導入されると、予測も非常に精度が上がります。ただし、狭い範囲なので、大都市圏とに限られているのですが、技術的には可能になってきています。その下の段で、短時間の情報伝達ができるかということを考えますと、以前は新聞とかラジオ、テレビで情報を出していたのを、今、インターネットとか携帯電話が普及していますので、瞬時にデータが転送され画像情報を見ることができるようになっています。

 以前の情報伝達では、例えば伊勢湾台風のころですと、ラジオが主力で、テレビがあまり普及しなくて情報が少なかったのが、最近はマスメディアによる情報伝達がそういう対策が進んできました。ところが、今度は非常に局地的な豪雨という問題が出てきました。例えば東海豪雨ですとか、去年の8月末の関東や中部の豪雨という問題が出てきました。こういう現象に対しては、今の技術をもってすると10年ぐらいの間に観測、監視、及び予測の技術開発に力を入れればできるのではないかと考えています。そういうことをやってきたのは、伊勢湾台風の後に設置された、防災科学技術センター、今の防災科研です。また、京大防災研はもっと歴史が長くて、防災科学技術に関する広い範囲の基礎的な研究をずっと続けてきています。このような背景を考えると状況が整ってきたと考えられます。

 観測システムは、通常の気象レーダーからドップラーレーダーができて、マルチ・パラメーターレーダーが最近使えるようになってきました。例えば富士山レーダーですと、1964年にできて、半径800キロを見て、台風が日本に近づいてくるのを見ていたわけですが、静止気象衛星が1977年に打ち上げられ、もっと遠いところから台風を追跡できるようになって、富士山のレーダーは2000年前に役割終了しました。しかし、その後のドップラーレーダーとか、その先のレーダーの現業での展開というのはまだ日本はあまり進んでいませんで、中国や韓国からかなりおくれていると言わざるを得ません。もはやこの分野では日本は先進国ではなくなっているわけです。そうはいっても、高い技術を持っていますので、研究はどんどん進めておくべきだろうと思います。そういう国際的な研究の中では、世界気象機構、WMOの中でワールド・クライメット・リサーチ・プログラム、機構の研究、それからGEWEXという、エネルギーと水の循環の研究があって、最近ではワールド・ウエザー・リサーチ・プログラム、その中にトロピカル・メトロジカル・リサーチとかいう、具体的に熱帯の台風から亜熱帯の研究まで進めようというのが進んでいます。

 そういった状況を考えますと、次の図に示したように、中長期的には最新の科学技術に基づいて災害を引き起こす可能性のある現象を観測・監視・予測をするシステムの開発を重点的に行うのが良いと思います。情報処理技術の研究を行って、情報伝達を行い、自然災害及び非自然災害の発生状況を常時国民に発信するシステムをつくるということができると良いと思います。

 それから、今問題になっているのは気候変動に伴う災害です。これはHigh impact weatherと英語で言われています。特にHigh impact weather in changing climate、気候変動の中でそういうHigh impact weatherがどういうふうに起きているかと、今後どうなるかということが非常に国際的に関心が高まっていますので、そういうことをきちんと研究する必要があると思います。そのためにほんとうは基礎的な研究が必要ですので、それも推進する必要があると。ただ、そうはいっても、科学技術基本計画に盛り込んでもらうためには、焦点として、ここでは短時間で、観測できたら予測をして、それを利用してもらえると、そういうものについての研究開発を進めたらいいんじゃないかなというふうに考えています。気象災害ですと突風とか雷とか竜巻、大雨、豪雨、そういうものがあると思います。

 そういうことは実は、発展途上国というところでも大都市化が進んでいまして、そういうことが非常に求められています。ですから、日本の中でそういう技術を高めるということは、即アジアの各地で利用することができるようになりますので、国際貢献にも寄与するものだと考えます。

 そういうことを最終的に基本計画に盛り込んでもらう場合には、何か、ここだというものを言わなければいけないと思いまして、気象学会の理事長さんに防災分野で重要なのはどういうものでしょうねということを聞きましたら、3つ挙げられまして、台風と集中豪雨、それから竜巻というふうにお話しされて、私としては台風というのは結構研究がもう長いですので、特に力を入れるのは、最近問題になっている集中豪雨、それから竜巻ではないかと思います。こういうところに力を入れるというようなことを何らかの形で基本計画に盛り込んでもらえるといいんじゃないかなと思います。そのためには、実際、こういう言葉よりはもうちょっと広い範囲で、理念をしっかりしたものにする必要があるかなと思いますので、皆さんの議論を期待しています。

 以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 具体的な研究課題で、今後極めて重要な問題になることだと思います。ご質問、ご意見等ございましたらお願いしたいと思いますが。

【松澤委員】

 すみません、素人なので、上田先生が考えられていることを実現しようとすると、例えばこのMPレーダーの観測の密度というのはどのぐらいのものを想定されていますか。

【上田委員】

 これは実は20年度の補正予算で国交省が中部地区に3台、近畿地区に4台導入を決めています。おそらく今年度末には設置が終わって、次年度からは利用が始まるんじゃないかと思います。ですから、例えば名古屋ですと3台、それから大阪周辺ですと4台とかで当初はスタートできる。実際には現象は移動していきますので、その周辺を見ようとすると、もっと台数を増やす必要があると思います。、スタート時ではそういったことをすぐ実施するのは難しいと思います。

 防災科研でも既にドップラーレーダーとマルチ・パラメーターレーダーを関東地区に配置し、研究されています。それですと、今7台ぐらいを考えて進めていると。そこに国交省が2台導入して、それとどういうふうに協力するかというのを検討中だと思います。それぐらいの台数でできると思います。

【岡田委員】

 今の松澤さんの質問に補足しますと、MPレーダーの観測範囲は一応半径80キロということになっていますので、大体50キロ四方とか100キロ四方ぐらいをカバーできると思います。

 それから、国交省の計画について、今、上田さんに名古屋と大阪のことをご紹介していただいたのですが、関東地方ではもっと大々的に防災科研がMPレーダーのネットワーク考えており、それから北陸と九州でも整備する予算が今度の補正予算でついたと聞いています。

【濱田主査】

 こういう情報はもちろん国民に伝えるということは非常に重要ですが、今井さん、例えばライフライン事業体でこういう情報を、例えば1時間前とか30分前にもらったときに、どういう活用の仕方があるのかというようなこと、どうでしょう。

【今井委員】

 私ども、雷のレーダーとか、電磁波を使ってどこら辺に落雷が集中しているとか、分単位ぐらいで把握しながら、停電に備えるとか、機器が壊れたときに対応しようということはやっておりますが、まだ突風とか竜巻、そういったところまでは私ども対応できていないという中で、こういった研究が進んで、詳細が事前にわかるようになってくれば、それなりの準備、あるいは設備づくりの段階から対応するということに役立つのではないかと思います。

【山岡科学官】

 きのうもちょっと別のセミナーでゲリラ豪雨の話が出て、要するに現状だとほんとうに降り始めたタイミングと情報が来るタイミングがほぼ同時ぐらいで、なかなか準備する時間がない。特に岡崎の場合は深夜だったので、すべてが終わってからみんな情報を知ったという人もすごくたくさんいる状態である。なので、こういう、比較的、現象が1時間スケールとか、そういうスケールのものを、例えば半日ぐらい前に、非常に厳重に警戒すべきというような予測というのは可能なのでしょうか。

 そのぐらい前じゃないと、多分、なかなか住民的には心構えを持って準備できない。台風は数日前からわかっていて、とりあえずそれに向けた準備をみんな何となくするのですが、ゲリラ豪雨に関してはそこまでは今できていないのが現状なので、やはりそのぐらいが必要だと思うのですが、そのあたりの見通しはいかがなのでしょうか。

【上田委員】

 半日前、あるいは1日前にできるのは、ポテンシャル予報で、例えば東京地方だとそういう現象が起こる可能性が非常に高まっていますということは言えると思います。東京の中で練馬区のどこどこに何時に豪雨が起きますというのを半日前とか1日前から行うことは、今の技術ではもちろんできませんし、将来的にも無理だと思います。それは確率であって、現象の発生の可能性のある地域の中のどこかということは、前日に予測することは難しいことです。

【山岡科学官】

 そうすると、例えば10キロメートルぐらいのスケールで1時間ぐらいのものを半日前ぐらいだとすると、100キロぐらいのスケールで起こり得るというような予測になるというふうに思われますが。数字的に見ると。

【上田委員】

 そうですね。東京都とか、関東でもいいのですが、その中でどこかでそういうものが起きる確率が非常に高まりますという予報は十分できると思います。

【山岡科学官】

 そうすると、今度は、そういうものをどう伝えて、どういう言葉で伝えて、心構え、準備行動につなげていくかというようなこととも多分関連すると。

【上田委員】

 そういうことは今でも、1日前ですとか半日前ですと、テレビの天気予報とかありますから、そういうのはできているのですが、私が特に強調したかったのは、発生直前ですね、10分前とか5分前でも、どこに現象が移動していくのかという予測は精度が高いのです。通勤に行くとか、電車に乗るとか乗らないとか、そういうことに各自が自分で判断できるようになることが大事だと思います。

【山岡科学官】

 確かに、警報ももう少し切迫感を持った警報でないと、警報なれをしてしまうようなところがあるので、そうですね。わかりました。

【上田委員】

 出し方とか、それは人間の行動の仕方とか、そういった研究をきちんとしなければいけないのですが、情報を出す技術というのは、空間スケール、時間スケールでもっときちんと開発しておく必要があると思っています。

【国崎委員】

 今のお話の中で、時間的に余裕のない現象、いわゆるゲリラ豪雨等の局所的に、しかも集中的に発生する災害現象において、私自身も監視予測、情報伝達の技術開発が求められると強く思っておりますが、1つ問題になってくるのは、総務省を含めた情報伝達のあり方だと思います。韓国ではCBSを用いて、災害救難情報を確立しておりますが、日本においてはいまだ通信と放送の世界で統一できないというような問題も抱えております。

 その中で、局所的に、地域で発生した問題をいかにその地域に住んでいる方々にリアルタイムに伝えるかという部分においては、予測だけでなく、どのように伝えていくのかという部分も重視した技術開発が望まれると思います。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 時間が過ぎておりますので、次の話題に移らせていただきたいと思います。次は碓井先生からお願いしたいと思います。

【碓井委員】

 今の話題にも関係するのですが、まず、一番最初に理念の問題ですが、私ども、濱田先生が中心になられたのですが、2007年5月30日に学術会議から「地球規模の自然災害の増大に関する安全・安心社会の構築」という提言を出させていただきました。その中で非常に重要なテーマになっておりますのが、そこにありますように、パラダイムシフトであろうと思います。安心・安全な社会の構築を最重要課題とするような社会をつくっていかなければいけないのではないかということで、災害認知型社会というのをキーワードとして出しているわけです。今、上田先生がおっしゃいましたように、国民がどの程度災害を認知するのかという問題、その仕組み、教育体制、あるいは科学的なものも含めて、個々人が判断できる社会づくりをしていかなければいけない。

 例えば、先ほどの集中豪雨においても、どこにゲリラ豪雨が起こっても、それが災害になる場合とならない場合とあるわけですね。地形的に非常に低いところであると、それは災害に繋がるわけでありますから、日ごろからここはゲリラ豪雨に対して危ないところだという認知ができておれば、そういう警報が出たときにそこへ行かないという行動をするわけです。ですから、そのような国民一人一人が災害を科学的に認知して、そして行動できるような、そういう判断ができる、そういう社会づくりをしていかなければいけないんじゃないかというのが、災害認知型社会の構築であって、それ自体が災害だけではなくて、日本の社会構造、国土構造の変化とあわせて非常に重要になってきているというようなことをこの中で書いているわけであります。それは脆弱性の問題と絡めまして、今後、国がすべての地域に対して公共投資をまんべんなくすることはできないので、国民に判断をしていただいて、居住地の選択においても、この場所は非常にリスクが高いのであれば、初めからそういうところは居住地として選ばないような、そういうふうなことができるような、科学技術成果を生かせるような、通信もありましょうし、システムをつくっていくというふうなこと。そういうことがこちらに書かれているわけであります。

 ですから、日本社会全体を見ていく上で、防災という問題を最重要課題のところに挙げてもいいのではないか。賢い日本人をつくっていくことによって、経済的なコストも下げていこうということになっております。

 2番目でございますが、同じなのですが、災害認知型社会を中長期的に構築していくときに、やはりリスクコミュニケーションの技術をかなり開発していかなければいけないだろうと。このリスクコミュニケーションの技術というのは、現在でも防災科学技術研究所が中心にいろいろなされているわけですが、まだまだこの分野はイノベーションを必要としている分野であります。

 その一つが、私が関係しております地理空間情報技術、これは先ほどありました衛星で地形図をつくるという「だいち」もそれに含まれてまいりますが、この地理空間情報技術というものが最近非常に基盤技術として注目を浴びてきているわけです。その中で先ほど「だいち」の話もありましたが、現在のアブニールの位置精度は、一般的には10メートルぐらいですが、プリズムの衛星画像を使いますと2.5メートルぐらいの精度までとれていますから、もちろん2万5,000レベルは十分いけるわけですが、それだけでは足りないんですね。やはり最低2,500レベルの地図が衛星でつくれるようになろうとすると、1メートル以下の位置精度が必要です。さらに、今後打ち上げられようとしているものだと明確ではありませんが、将来、25センチとかそれぐらいになってくるとk聞いていますから、500レベルの電子地図作製も不可能なことではないわけです。そうなってくると、これは国土情報基盤としても非常に関係してきます衛星の打ち上げに関してゴーサインをしていただくということが、文科省としてもいるんじゃないかなと思います。

 それからSARの衛星とか、これも天候に影響されませんし、地盤の動き等の観測にも使えます。この前、濱田先生と一緒に四川の交通大学校のほうへ行き寄付講義をしてきましたが、やはりALOSや地図に関するニーズは高かったし、SARに関する技術は日本が先へ行っていますから、そういうものを国際協力してほしいという意見がありました。

 今のは、衛星の話なんですが、もう一つ、ユビキタスコンピューティングという技術があるんです。これは東京大学の坂村先生が以前からトロンの技術のもとに研究され、日本が誇るIT技術でありまして、この技術は、家電などの中に組み込みコンピュータ技術として発展しているわけです。このユビキタスコンピューティングの技術と、防災GISの技術において、今、連携がまろうとしているわけなんですね。その一つが基準点、全国にたくさんあるわけですが、その基準点に全部、Uコードをは埋め込むということです。そうしますと、その位置のXYZ、これが現場で瞬時に精緻にわかります。基準点のUコードから防災情報を取得できるような仕組みが可能になります。こういうものが道路上にどんどん埋め込まれていくわけです。今、200メートルに1点ぐらい、街区基準点がありますが、50メートルに1点ぐらい埋め込まれていきますと、それをぴっとやるだけで、いろいろそこに関係する防災の情報も瞬時に見れるというふうになってくる。つまり、個人が判断できるような情報をどのようにしてわかりやすく提供していくかということで、ユビキタスコンピューティング技術も重要です。そのときに心理学的な研究も要ると思うんですね。どういう情報の出し方をしていけばわかり易いかというようなこと。

 それから、もう一つは、地理空間情報活用推進基本法ができましたので、地理空間情報の利活用のために社会情報基盤として順次、正確な基盤地図情報の国民への無償提供がインターネットで始まっています。出していくということがあります。防災技術としては、それとのリンクも可能になってきているわけです。ですから、もう少し地理空間情報技術とリンクした防災技術研究、これを進めていただきたいと思います。3番目のところにも入っているわけですが、そういうふうなものを受けられる素養を子供たちからつくっていかなければいけないのではないか。防災に関する教育の問題は重要です。

 私は地理/GISが専門ですけど、地理も地学もあまり学校で勉強しないような教育体制ができ上がっておりまして、地図がわからないとか、空間が認知できないとか、いろいろあるわけですが、災害認知型社会というものを構築していこうとすると、文部科学省の分野でもあります初等中等教育においても、そういうふうな地理空間情報技術の習得や空間的思考育成を日常的に教育の中に取り入れるような、取り組みも必要なのではないかと思っております。学校の教育、それから地域教育、これが果たす役割も大きいですから、科学技術をいかにして小学生でもわかるように伝達する技術、これをやっぱり開発していく必要があるんじゃないか。科学技術自体は非常に進歩しているのですが、それを伝達していくとか、個人が判断に使えるようなところの技術開発がどうもおくれていると思うわけです。そこのところをぜひ開発していただけたらと思います。

 次に、3番目のところに入るわけですが、科学技術としては日常的なモニタリングの技術、これは地味ではありますが、ずっとお金をかけて継続していただく必要があるんです。特に火山なんかに関しましても、最近、そういうモニタリング、あるいはいろいろの観測所が閉鎖されるとかということをよく聞いております。そういうところこそ文部科学省は継続的にお金をつけて維持をしていく。それを社会に生かすようなところの、先ほど言いました技術も進めていく。

 それから、国土構造や社会構造の変化に対応した防災性向上のための研究・開発ということが重要です。これは農村におきましても、あるいは過疎地域におきましても、防災に対する脆弱性というのが高まっているわけです。高齢化が進んでくると。その中でどのようにして住民を守っていくのかというところも、国土構造、社会構造との関係で非常に大事です。例えば首都圏、この東京に一極集中しているわけですが、その東京に大地震がきたら、日本は沈没するのはわかっているのですが、 首都機能をどう分散しながら、どこに東京のデータをバックアップするかというようなことは、意外と防災とは関係がないように思われるのですが、そこも絡めていくような大きなスキームを出していくことによって、安心・安全社会の構築が可能になるのではないかと思うわけです。

 先ほど言いました、災害リスクコミュニケーション、それから地理空間情報技術を活用した防災科学技術の研究、これは今、いろいろな段階に出てきております。ALOSやSARなどの衛星の技術を含む、地理空間情報技術そしてユビキタスコンピューティング技術、これらは、日本がこの分野ではおそらくリードができるだろうというイノベーションを持っている分野なんですね。今、全国のあらゆるところに基準点が埋め込まれていて、そこにUコードが埋め込まれ、どこでもいつでも必要な情報が得られる。ユビキタスコンピューティング技術の骨格にあるところのトロンの技術というのは日本の優れたIT技術なんですね。GISと家電とがリンクしてくる。さらにGISの基盤技術としては世界的に見ても、最も精緻な基盤地図情報が今、つくられようとしている。それを電子国土Webで発信しているわけですね。地理空間情報技術によって電子国土づくりといいますのは今、非常に進んでいます。そこれらと防災をリンクしながら安心・安全な社会づくりのところに、次世代防災技術に関するキーワードに出していただけたら、日本の防災技術は、より進展すると思います。

 もう一つは、アジアを中心にした災害研究の国際ネットワークであります。これは四川の地震が起こったときに、濱田先生とか入倉先生とかを中心にして学術会議から声明を出して、アジアの災害技術をサポートをしていこうというようなネットワークづくりを出そうとしたのですが、ちょうど学術会議が20期から21期への移行期に入っていたものですから、それが実現しなかったのですが、今でもこの構想は、あるんですね。今後、アジアにおける災害研究の国際ネットワークを日本がリードしてつくっていくということは非常に重要ではないかと思っております。

私は日本学術会議の第1部(人文社会科学)の地域研究委員会に所属しておりますが、この委員会の中にも国際貢献と災害支援分科会もでき上がりまして、災害や紛争に関する国際支援をサポートしていこうという活動が日本学術会議の中で始まりました。、アジアにおける災害研究の国際ネットワーク、これを国際貢献というふうなスタンスも入れてやっていたらどうかなと思っています。

災害に関しては、日本学術会議の第3部(自然・科学)を中心にした地球惑星科学委員会地球人間分科会でも扱っており、私は、地理学ですので、自然科学系のこの分科会にも属しております。地理学は、文理融合の学問なので災害を研究対象としています。災害研究には、文理融合の視点が必要です。もう時間が来たのですが、私は地理教育をやっているのですが、教育というものが非常に重要であって、特にハザードマップ、今、たくさん出ていますが、それをもっと現場教育で使っていけるような、そういうところにももう少し研究予算もつけていただけたらと思っています。防災教育には、地理教育のような文理癒合教育の視点が必要です。

 それから、学術会議の地球惑星科学委員会から日本学術会議としての展望をまとめています。その中の大きな柱に「地球が好きになる教育」という提言があります。今、災害を理解するためには基礎的な知識といいますか、正確な科学知識を子供たちにつけていかなければいけないんじゃないか。それのスローガンとして「地球が好きになる教育」。これは環境も関係しますが、防災が非常に大きなテーマになっています。そのように、もう少し文科省は科学技術と教育とをリンクするようなスキームをお考えいただけたらなと思います。

 以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 災害認知社会というキーワードから学校教育、地域教育の課題、いろいろご説明いただけたと思いますが、文科省も防災教育をおやりになっているわけですよね。そういうものが日常的な小学校、中学校の教育カリキュラムの中に組み入れられているかというと、必ずしもそうではないのではないかと思います。その辺はどうなのでしょうか。

【梅田地震・防災研究課長補佐】

 実は、研究開発局の防災科学技術推進室でも、昨年度より防災教育支援プログラムというものを実施しております。教育委員会などの教育部局と、自治体の防災担当と、地元の大学とが連携して、応募していただき、その中から優れた取り組みを支援するというプログラムを始めております。研究開発局のプログラムですので、最新の防災科学技術の成果活用の観点もありますし、地域の三者が一体となって手を挙げて頂くこととしていますので、プログラムは2年、3年と限られていますが、こういったものが呼び水となり地域の防災コミュニティーの連携を促進するという狙いもあります。

 一方で、定常的な防災教育についてはスポーツ青少年局とか生涯学習局がそれぞれ推進しており、これらの局と我々がしっかり連携を図ってやっていかなければいけないと思っています。

【清水委員】

 今のことに関してなのですが、今の碓井先生のご意見には私も全く同意で、私もそういう考え方で、なるべく地元で取り組もうとしていまして、今、文科省から説明がありましたが、防災教育支援プログラムについては、我々の地域でも提案をして、幸いに採択されて、ことしから動き始めていますが、ただ、やっぱり期間は短い、額は少ない、それで基本的にそれを学校の現場でやろうと思っても、そういう地学とか地理の知識を持った先生方が非常に少ない。私みたいな研究機関というか、近くにそういう施設、大学があれば協力はできるのですが、そうじゃないとなかなかプログラムに手を挙げにくいということで、やはり大きく広がっていくというのは非常に難しいのではないかと思っております。

 そもそも大学受験に地学がないとか、最近、地理を取る人も少ないとか、その辺のところから抜本的に改善しないと、なかなか地学とか地理とかそういうもののリテラシーが上がらないということなので、この辺、国としてもうちょっと抜本的に考えないと難しいかなというふうには思っております。

【国崎委員】

 防災教育の件でお伝えしたいことがあるのですが、私自身も防災教育を実践してきた中で、さまざまな学校とも話し合ってきて思うのですが、やはり先ほど先生がおっしゃったように、抜本的な改革というのが非常に必要だと思います。小学校や中学、高校において、専門の先生がいらっしゃっいます。例えば保健の先生、音楽の先生がいらっしゃいます。そこで防災社会学というような科目を1つ立てることを提案します。今、小学校でも生活安全を実施していますが、そこから独立して、よりしっかりと根づくような体制、抜本的な改革が望まれます。学校に自然災害・防災の専門の先生を置いてしっかり伝えていく体制がないと、その学校の校長先生の意識、または担当指導の先生の意識に委ねられている現状の防災教育では、根づかないと思います。

 今、科学技術で切迫性が指摘されている中で、例えば地域を限定して首都圏や、東南海地震の懸念される地域において、今後30年は学校において防災社会学の教育を推進すべしという集中した対策ががあっても良いと思います。オールジャパンではなく、集中して特定の地域に防災教育を施すような、制度体制を確立する必要があると思っております。

【田中委員】

 防災教育って割といろいろと議論されていて、必要性というのは皆さん、多分だれも否定しないんだと思うんですね。ただ、私の目から見ると、実は防災教育というのを語るときに幾つかクリアをしておかなければいけない問題があって、まず一つは、やはり全般的に幾つかのトーンでも出ていますが、科学技術を教えようとするんですね。それは防災の基礎としては大事だが、防災行動に役に立つ情報になっているかというと、なっていないんですね。そういう面では、やはりトータルに有効性という議論をしておかないと難しいと。

 同じように、それと近い感想を持つのは、多分、清水先生も相当苦労されていると思うのですが、防災教育プログラムも地震は地震なんですね。火山は火山なんですね。

意外に特定の分野、地震なら地震をやるんですね。その地域にほかにハザードはないんですかというと、そんなことはないんですね。トータルにどうするのかという部分が欠けているということが非常に大きいと思います。

 それから3番目には、小学生の理解度、例えば4年生で1割という概念も習っていない子供たちにやる防災教育のレベルというのが、ほんとうにここで議論されている防災教育のレベルと合っているのだろうか。やはりそれは小中学生の防災教育と、高校生、大学生、あるいは社会人とかなり違う中で、何かそれが一緒に議論されてしまっているような気がするんですね。そういう面では、本来はドクターを出ていらっしゃった先生方がやっと理解できることを小学生に伝えるというのは大変難しい部分があるので、ある意味では大学生、あるいはほんとうはこれ、内閣府がやる仕事だと思いますが、国の上級国家公務員に必ず防災分野が出るとか、そういう仕組みも含めて議論すると。

 例えば、FEMAはアメリカの大学向けの教科書をつくっていますね。シリーズで。災害の社会学に関する教科書をFEMAがつくっている。そういうチャレンジングなこともなさってもいいのではないかと思うんです。

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。

 次は折坂委員からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【折坂委員】

 折坂です。よろしくお願いします。

 先ほどの上田先生とか碓井先生のお話が、ほとんど私の言いたいことを網羅されているような気がするのですが、A4判1枚、短い中でちょっとお話しさせていただきます。

 初めの1の理念なんですが、ここでは2つ考えまして、災害弱者のいない社会と高い防災意識を持つ社会と2つ考えさせていただきました。今、20年前、40年前に比べると、かなり、特に気象災害においては人的な被害は減ってきているのは確実なのですが、それでもいまだゼロには至らない。特に最近に至っては、台風が近づいたときなどもそうなのですが、高齢の方が亡くなっている例が多いように感じます。なので、非常に台風情報や防災情報というのは格段に進歩しているのですが、それを受け取って使う側にまだ十分に理解されていないというか、利用されていない状況があるのではないかということです。

 そういう意味で、災害弱者のいない社会ということで、十分に全員に、高齢の方にも、それからインターネットや携帯などをまだ使いなれていない方にも、十分に情報が行き渡るようにすることも必要なのではないかと考えています。

 あとは、これは特に若い世代の方がそうだと思うのですが、生々しい災害の体験がないといいますか、台風が来たらこういう恐ろしいことが起こるとか、そういったものを経験する場が少ないんじゃないかと思うんですね。昔の木造家屋とかと違って、コンクリートの住居の中にいると、大雨や、暴風雨が吹いた際の恐怖感というのは全く違うように感じるんですね。そういった生活様式の変化で、自然の驚異というのを実感していないと幾ら情報を出しても「じゃあ、逃げよう」とか「避難しよう」とか、実際の行動につながらないのではないかという意味で、それに対するいろいろな教育というんでしょうか、情報の中にも実際の行動につながるような情報を含めることが必要だろうということを含め、このあたりで自然の驚異を実際に実感として持つ高い防災意識を持つ社会ということで書かせていただいています。

 その後の2番目についてですが、具体的にはインターネットや携帯の情報というのは個人に直接行く情報だと思うんですね。非常にリアルタイムで注意報や警報が伝わるシステムができていますし、実際にそれを利用されている方も多いとは思うのですが、その情報を受け取って、じゃあどう動くかというところまでは、その情報の中にはあまり含まれていない。なので、その情報をどう使うかという知識を事前に持っていないと、実際の防災の避難行動につながらないのではないかと思うんですね。

 それから、先ほど言ったように、実際に暴風雨が吹いたときや大雨が降ったとき、自分の住んでいるところでどういうことが起こるかというのがわかっていないと、これもやはり自分のところは大丈夫と思ってしまって動かないのではないかという2つのことが考えられます。なので、情報内容の中に、そもそもそこの地域では何が起こるかまでを含めて伝えることも必要だと思いますし、あとは事前の知識として、住んでいるところや自分がいる場所の危険がどういうものかと、それを回避するにはどうして行動すればいいかというものを、実際、実感としてわかるような情報を出す必要があるのかなと。

 これは教育に関係してくるのですが、そういった知識というのは、おそらく小さいころっから刷り込まれるようにして持っていないと、大人になってもなかなか動かないんじゃないかという気がしますので、そういう意味では大人への知識の普及だけではなくて、皆さんおっしゃっているように、教育の段階から防災情報の使い方を教えてあげていくことが必要なのかなということで書かせていただいています。

 3つ目は、具体的になのですが、先ほど言ったインターネットや携帯を十分に使いこなしていない場合には、それは実際に例えばお年寄りのいる家を回って伝えるとか、非常にアナログですが、その地域に合った情報伝達の方法も必要だろうというのが1番目のところですね。

 あとは、低いところでは当然、洪水などの被害がおきますし、がけの近くではがけ崩れなど、それぞれの起こる災害特性というのもやはり知っていないといけませんので、それをハザードマップなどをいっぱいつくられていますが、実際に住宅情報の中にもそれを組み入れて、例えばアパートやマンションを紹介するとか、そこまでやってもいいのではないかと考えます。

 あとは、これはちょっと実際あるのかどうかわからないのですが、台風や大雨について幾らスライドや、あるいは文字情報で、こういう恐ろしいことが起こると言っても、それが実体験にはならないんですね。だからといって台風の中に出ていって暴風雨を経験するというのは危険ですから、それの疑似体験を、例えば小学生や中学生のうちにしておけば、大雨、1時間50ミリの雨が降ったときはああいう状況なんだというイメージがわくんじゃないかと思うので、そういう意味のバーチャルシステムのようなものがあってもいいのかなと考えています。

 あとは、重なりますが、知識の防災分野を組み込んだ教育課程というものが必要なのではないかと感じます。これは特に教育を専門にしているわけではありませんが、気象キャスターの経験と、あとは情報を発信してテレビやラジオ、インターネットなどを通じて届ける側として、届けている情報がきちんと使われていないんじゃないかという観点からこの意見を書かせていただいています。

 以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

【寶委員】

 関連しまして、一時期、情報公開法、それから水防法ですとか、土砂災害防止法でどんどん被災の可能性の情報を住民に知らせるようになってきて、それは行政が小さな政府を目指すとか、予算が縮小してきたということでソフト対策ということで、自助、共助、公助から言いますと、自助のほうを結構強調してきたところがあるんですね。ところが、災害弱者というのは、やはり今後さらに増えると思われるわけですが、そうしたときにやはりもう一度、自助、自己責任の世界から、もう少し共助、公助のほうへもう一度シフトし戻す必要があるんじゃないかというふうなことを僕は考えておりまして、情報が広く行き渡るにしても、デジタルデバイドの問題がおっしゃるようにあるわけですし、災害弱者のいない社会というのが望ましいのですが、やはり災害弱者は増えるとは思うんですね。ですから、災害弱者がいても安心して暮らせる社会といいますか、そういうことだろうと思うのですが、したがいまして、申し上げたいのは、自助あるいは自己責任が一時期かなり強調され過ぎたところがありますが、もう一度、共助、公助のほうに揺り戻す必要があるのではないかと思っております。

【天野委員】

 全然違う観点のお話をしていいでしょうか。PTA活動ってありますよね。小学校や何かに。あのPTA活動というのは、ある程度、文科省さんが仕切られているものなんですか。たしか、活動の補助金が出ていたと思うのですが。

 何でいきなりこんなことを言ったかというと、いろいろお話を伺っていて、確かに小学生の段階から教えるというのは非常にいいと思います。子供と一緒に小学校のPTA活動に参加したときに、夏休みに補助金を受けて、必ず地域のお父さん、お母さんが参加して何かやらなければいけないというのがあって、当番が回ってくるとイベントを考えなければいけないわけです。そのときに、私も2人子供がいましたので、PTAのそういう役目を複数やったのですが、非常にやりやすかったのが、イベントとして、社会科の内容を取り上げることでした。例えば人命救助みたいなこと、火事のことを習った後に、地元の消防署に頼んで人工呼吸のやり方とか、怪我の応急処置の方法等を教えていただくような場にして、地域のお父さん、お母さんも含めて参加するとか、そういう場を結構企画しました。そういうことをやると、お父さん方の参加率も高かったんですよ。

 また、例えばうちは練馬区ですので、井戸が結構あるんですね。そうすると、井戸がどこにあって、いざというときにはどういうふうに使うかということを班ごとに見にいったりしましたが、防災的なことというのはイベントとして人気がありました。

 あのころはまだそれほど防災のお勉強という意識はなかったのですが、今、お話がいろいろ出ているように、防災の勉強として、ハザードマップ等を見せても、皆さんの意識には届かないと思うんですよね。実際に、例えば地震が起こったら、今、地域の皆さんに知れ渡ってきているのは、とにかく近所の小学校に逃げるんだと。それは、よく認識されていると思うんですよ。だけど、雨が降って洪水のときどうしたらいいかとか、ほかのことというのはよくわかっていないような状態で、「いざというときに学校に逃げろと言っているんだから逃げればいいんじゃない?」というような感覚だと思うんですね。

 防災というのは、やっぱり非日常のことなので、それを日常的なものにどう結びつけるかということを地域にお知らせすることが大切だと思います。それは、字面で全部、まあ、絵もあるかもしれませんが、発信するだけじゃなくて、それを実体験としてやっていただく場所という意味では、PTA活動の親子の一緒の活動というのは結構いいんじゃないかなと思います。ただ文科省さんとPTA活動はたしか補助金ぐらいのつながりはあったと思うのですが、どうつながっているのかよくわからないので、それをお聞きしたかったんです。

【梅田地震・防災研究課長補佐】

 教育関係なので私も不勉強ですが、直接PTA活動を補助するというものではなくて、「放課後子どもプラン」などの地域全体で子供を支えるさまざまな取り組みに関して補助している制度は多々あると思います。ですから、その一つではないかと思います。

【天野委員】

 教育の場の一つとして、もしお考えになるのであれば、それこそ実体験型の結構おもしろい場だとは思います。ちょっと参考までに。

【濱田主査】

 地域の活動をされた荒巻さん、ご意見があろうかと思いますので。

【荒卷委員】

 参考まででございますが、横浜市では、実際に学校と連携をしておりまして、保護者会の方から防災教育について指導する場を設けていただいて、私どもも協力しているというのが実態でございます。ですから、やはり何かしらの文科省からの働きかけはもちろん、各教育委員会にあると思います。

【濱田主査】

 ありがとうございます。

 先ほどの寶先生のご指摘で、自助、共助、公助と言われると「ああ、なるほど。そういうものか」と我々は思ってきたのですが、やっぱり防災力を高めるということの第一義の責任というのは、それは公的機関にあると。国、自治体。そういうことをやっぱり認識しておかないと具合悪いのじゃないかというふうに思いますよね。

 他にいかがでしょうか。

【松澤委員】

 今のに絡んで思いましたが、子供会が主催となって防災マップのコンクールとかいうのがやられていますよね。多分そういうことも利用できるんじゃないかと思います。

【濱田主査】

 では、木村先生からお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。

【木村委員】

 兵庫県の防災企画局長の木村でございます。

 趣旨に沿ったものかどうか自信がありませんが、ペーパーに従いまして述べさせていただきます。基本的に地方自治体の立場から考えてどうなのかというスタンスでまとめて記述をしております。

 1番の理念の部分でございますが、防災科学技術は、何よりも安全・安心な社会の実現に具体的に貢献するものであるべき、あってほしいということであります。極論をするならば、そういう貢献がほとんど期待できないならば、意味がないと言い切ってもいいのではないかと思います。ただ、それは研究者だけではなくて、行政等も含めたすべての主体が共同して責任を負って進めていかなければいけないものだと思っております。

 そういう観点で言いますと、一番気になりますのが、住民が安全・安心に関して何を求めているか、どういうニーズを持っているかということを的確に押さえることが大事です。そういう観点で考えますと、今、防災、基本的には自然災害が対象になっていると思うのですが、実際の住民、あるいは住民生活の観点から見ますと、災害だけではなくて、いわゆる健康危機等を中心にしまして、いろいろな分野の危機事案に関する、ニーズが高まっており、当然、我々としてもそれらに総合的に対処していくことが求められているのではないかということであります。

 今起こっております新型インフルエンザなどは最たるものであります。兵庫県で成田の検疫でチェックできたものを除きましては、国内で初めて感染者が確定されたということで、以来、いろいろ対応に追われているわけでございます。

 ちょっと余談になりますが、弱毒か強毒かというような議論がされておりますが、幸い、今回のインフルエンザというのは感染力は結構あるのだが、毒性は弱い、季節性のインフルエンザにほとんど類するものではないかと言われているのですが、実は、後になってそういうことがわかってくるわけで、また、そういう毒性というのも途中で変異することもあるので、結局、季節性のインフルエンザと同じだから大丈夫ですよと言われても、行政として大丈夫と単純に言い切るわけにいかないというような問題がございます。

 また、事案の対応ですね。患者さんの対応とか、あるいは濃厚接触者の対応とか、具体的に進めていくとともに、その後の予防対策と同時並行で進めていかなければいけない。例えば、災害の場合でしたら、一たん事が起こると、それはそれで事案を処理して、その後の予防対策というのは、少し一段落してから進めていくことも可能なのですが、そういうタイムラグが許されないというような問題もあります。

 あと、当然のことながら、こういう事案は終わりがないというんですか、災害の場合は普通、初め、災害が発生すれば、あとは終息に向かう方向なのですが、こういう健康危機の事案につきましては、必ずしもそうじゃない。災害は今日より明日がひどくなることはないわけですが、今回の事案なんかはそういうことじゃないということで、非常に戸惑いがあるところでございます。

 その中で科学技術の観点で言いますと、例えば検査がございます。簡易検査をして、次にPCR検査に回すということですが、こういう検査がもっと簡便に迅速にできないかということも痛感しております。主に医学、医療等の分野ですが、即座に検査の結果がわかるということになれば、対応もかなり効果的に打っていけると思っております。

 このほか、住民のニーズ、安全・安心のニーズは、いろいろほかにも広がっているわけでありまして、そういうことに対応するように科学技術の分野におきましても、もちろん防災の話が中心であるのでしょうが、そのほかのさまざまな危機の事象を視野に入れた研究へ切り口を変えていく必要もあるのではないかということであります。

 2番目に、中長期的視点に立った防災科学技術の方向性ということでございます。防災科学技術は、社会に貢献するものであるべきだということです。3つの側面があると思います。一つは、技術そのものの研究開発、次にその研究開発された技術を周知、普及していくということ。それから、もう一つ、これは住民なり、社会の側ですが、そういう技術を活用できるだけの人材の育成、こういう3つの側面があるのではないかと思われます。

 現状を見ますと、当然のこととはいえ、1番の研究開発そのものにウエイトが置かれている。その周知、普及なり、あるいはそれを活用する人材育成の面は、付随的な位置づけにとまっている感がある。いろいろ、そういう面を補うプロジェクト、事業等も出てきておりますが、大まかに見ると依然としてそういう状況にあるのではないかと思います。

 私が特に思いますのは、この3つ目の、技術を活用できる人材の育成という面、言いかえれば防災学習なり防災教育ということになるのかもしれませんが、防災技術というものを受け入れられるだけの社会的土壌が、そこまで熟していない、それが実態ではないかという感じもいたします。

 例えば、災害対応面で、最近、防災情報技術はかなり開発されて、新しい技術がいろいろできて、浸透をしてきております。ただ、自治体等の担当者の中にはやはりハイテクよりローテクだと言われる方は結構おります。むしろそういう方のほうが多いんじゃないかという気さえいたします。また、なかなかそういうものを素直に受け入れないというのですか、これは地域社会の問題ですが、昨年、神戸市で都賀川という都市河川がありまして、ここで集中豪雨で急激に増水をいたしまして、何名かの方がお亡くなりになったという、事故がありました。

 それを受けて、県及び神戸市のほうで増水の警報システムを設置しようということで、都賀川を含め表六甲の都市河川、全部で100カ所ぐらい、設置をしたわけであります。具体的に言いますと、気象注警報が出ましたら、その警報装置をで自動起動させて住民に知らせるというものです。

 その際、設置場所とか注意喚起の方法として、回転灯をつけるか、サイレンまで鳴らすか、結局、回転灯のみになったのですが、こうした話で地元調整に結構時間がかかりました。これは一例ですが、こうした話でさえ、事業化していくのも困難がであるというのが実情であります。これも結局はそういう防災の科学技術といいますか、防災の施策をストレートに受け入れない、住民意識、地域の土壌というのが一つの要因じゃないかと思っております。

 防災科学技術の推進を政策として進めていくとするならば、特に活用する側の人材の育成、あるいは意識の改革、そういう面にもウエイトを置いて進めていく必要があるのではないかということでございます。

 防災意識の向上ということで、我々もいろいろ努力をしているわけですが、阪神・淡路大震災の被災地の住民でさえ、被災体験のある者でさえ、やはり15年経ちますとそれが風化してきているというのが実情であります。いわんや同じ県内でありましても、被災地以外のところはもっと風化が進んでいる状況で、そういうことも含めて啓発あるいは教育を進めていく必要があるということであります。

 3番目に課題について幾つか書いております。地震調査観測体制の強化、これも住民との関係ということで記述をしております。調査観測体制の一層の強化ということはもちろんでございますが、その結果をもう少し地元の自治体とか、あるいは住民に公開していく場を持っていただいてもいいのではないかと思います。

 具体例を申しますと、岡山県から兵庫県の南西部にかけて山崎断層帯がございます。延長80キロほどの断層なのですが、これを京都大学の防災研究所のほか、幾つかの機関がそれぞれ調査をしていただいているわけであります。防災研の観測は中国自動車道の地下に観測器を置いていると聞いていますが、恒常的にといいますか、定例的にそういう情報をいただけたら非常にありがたい。さらに住民にもそういう情報を公開していく。例えば見学会でありますとか、シンポジウムの中でご説明をいただくとか、そういう取り組みを重ねていけば啓発効果が期待できるのではないかということであります。

 それから、防災情報システムにつきましては、これも3つ、いわゆる気象観測のような災害の事象、原因になるものの観測、あるいは通報する仕組みで、2つ目は結果を予測するシステム、それから3つ目にその後の被害状況あるいは対応状況を把握したり、あるいは通報する。大きく分けたらそういう側面があるのではないかと思います。本県では特に地震被害予測システムを阪神・淡路の後に整備をいたしまして、運用をしております。ある地震が発生すると、あらかじめ入力している地盤データあるいは建物データ等々から予測される被害量を導き出すというものでございますが、これもデータ更新等が大変という面がございます。

 そういうことで、こうした情報技術をできるだけ住民に提供していただきたい。例えば防災訓練の場で研究者の方などに来ていただいてデモンストレーションをしていただく。緊急地震速報などはそういうこともさせていただいたわけでありますが、そういう機会をもっと増やしていければということであります。

 最後に、E-ディフェンスのことを書いてあります。これは兵庫県として触れないといけないと思いまして書かせていただきました。さらなる有効活用を期待しているところでございます。岡田理事長さんがいらっしゃいますので、これ以上のことは申しませんが、引き続きよろしくお願いしたいということでございます。

 以上でございます。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 木村委員は自治体の防災の実務にかかわっている方でございますので、この防災科学技術の研究のあり方については厳しく注文をつけていただきたいと思います。最初の理念の1行はかなり厳しい意見だろうと。「具体的に」というのをゴシックにしてもいいんじゃないかなというぐらいのところだと思います。

 今、いろいろご説明をいただきましたが、ご意見があれば伺いたいと思いますが、どうでしょうか。

 私からちょっとお聞きしたいのですが、2の3の「技術を活用できる人材の育成」とお書きになったのは、主に例えば自治体で防災を担当される方、指揮をされる方、こういう人材が足りないという観点が一番強いのでしょうか。

【木村委員】

 そうですね。もちろんそれもございますし、先ほどの例でもちょっと申しましたように、住民一般というんですか、広く国民に対してもそういう取り組みを進めていく必要あるのではないかという意味でございます。

【濱田主査】

 自治体によっても違うのでしょうが、例えば防災担当の方がある任期になりますとほかへ移られると。2年とか3年で。そうじゃない自治体ももちろんありますが。そういうようなことも非常に大きな問題になっているんじゃないかといいますか、プロが育たないといいますか。その辺は兵庫県のほうはどうなのでしょうか。

【木村委員】

 確かに行政、自治体は数年おきにローテーションで異動しますので、そういう部分は否めないと思います。ただ、消防とか警察、自衛隊など、部隊の方はずっとそこにいらっしゃるわけで、どうしてもそのギャップといいますか、格差が出てきて対応できないということがあります。

 ただ、兵庫県では、防災から一たん出てもまた戻ってくるというシステムを、人事の際にいくらか意識をしているということであります。

【濱田主査】

 それから、もう1点だけ私から。一番最後の(3)E-ディフェンスの問題でありますが、これは我が国として非常に強力なツールであるということは間違いないと思います。次回からの研究の評価のときにこの問題も出てきますよね。ただし、今後どういうような活用のされ方をお考えになっているかということについては、やはり一度ご説明をいただきたいと思いますが、どうでしょうか。

【南山防災科学技術推進室長】

 これにつきまして具体的にどうなっているかということをE-ディフェンスのほうから直接ご説明をするという場をつくりたいと考えております。

【岡田委員】

 このことについては、実は、昨年度の最後に、E-ディフェンスの10年計画をこの場でご説明させていただいたのですが、何度でもご説明可能ですので、要望があればいつでもさせていただきます。

【田中委員】

 私もきのう実は兵庫県のインフルエンザ委員会に出ていたのですが、兵庫の都賀川とインフルエンザの件を拝見していると、やっぱりほんとうに災害間の相互防災というのが必要だなと思うんですね。これはもし違っていたら、木村さん、訂正していただきたいのですが、都賀川の親水機能というのは阪神淡路大震災のときになかなか川に入れなかったという問題も含めて、親水機能を上げたといううわさを仄聞したのですが、そうではないんですか。

【木村委員】

 阪神・淡路大震災以後、特に意識的にそういう整備をしたということでもないのですが、もともと神戸・阪神間の都市河川についてはそういう要請がありましたので、その一環として進めているのではないかと思います。

【田中委員】

 ありがとうございました。ちょっとそんなうわさも聞いていたので。そうすると、地震の体験というものがやっぱり水害に対して弱い文化をつくり出していたら困ったなと思ったのですが、そういうわけではなさそうだということです。

 それから、あとはインフルエンザ対策を見ていても、640人の発熱外来でパンクをしたんですよね。阪神淡路大震災のときにはやはり量の問題というのが大変問題になった。それが全くインフルエンザ対策に生かされていなかったという、災害間のノウハウ移転というのがない。やっぱり災害が全部縦割りになってしまっている総合化というのは、やっぱり今度ちょっと、ひとつ踏み込んでいってもいいのではないかという気がしてしようがないんですね。先ほども防災教育でもそんな話をさせていただきました。

【濱田主査】

 ほかにいかがでしょうか。

 ございませんようでしたら、午前の部のご説明はこれで終了させていただきたいと思います。

-休憩-

【濱田主査】

 それでは、会議を再開したいと思います。

 次にご説明いただきますのは、山岡科学官でございます。よろしくお願いいたします。

【山岡科学官】

 一番最後のページのことについて重点的に、お話をしたいと思います。

 科学官というよりは一個人としてなのですが、まず理念ですが、日本というものを考えると、特にアジア諸国ですが、突然の自然災害によって人的にも経済的にも大きな打撃を受けるおそれを常に持っている地域であるというのが、多分、基本的に持たなければいけない認識だと思っています。

 アジア防災センターとかいろいろなところの統計によると、世界じゅうの災害のかなりの部分は日本も含めたアジアに集中しているという現状であって、一方、先進国のヨーロッパ、アメリカというのはそれに対して比較的少ないと。その結果何が起こっているかというと、経済発展上、やはり日本はその分ハンディを負っているという認識をまず持つ必要があるのかなと思います。

 ここからスタートして、戦後の高度経済発展が日本の中で必ずしも自然とか自然災害に対する理解は十分でなかった状態で高度経済成長がなされたということもあって、さまざまな問題が現在にまで引き継がれてきていると。例はいいか悪いかわかりませんが、原子力発電所の中には、活断層の真ん中につくってしまったようなところもあるとか、要するにそういう基礎的な地球科学、それから災害という知識がやっぱり国民の基本的な知識になっている必要があると思います。そういうところが基本的な理念として掲げるべきであって、そのためにはどういう必要があるかということでした。

 必ずしも具体的なところはほとんど何も書いていないのですが、基本的な考えというのは、やはり昔から言われていますが、予測事実の高度化と効果的・効率的な災害軽減技術の開発が必要であると考えております。

 予測技術の高度化というのは、自然の現象の仕組みを理解した上で、短期・長期・中的な現象をできる限り精度よく予測をして、その結果として限られた費用と時間の中で効率的な災害軽減対策にかける努力の効果と効率を上げるためのものであるというふうに思っております。必ずしも予測が入力で、災害軽減が出力というよりは、何もわからない災害を何となく理学が掘り起こすというよりは、むしろ実際に精度を上げることによって、それがどのように実際の災害軽減とか経済発展に役立つかということを考えるというのが基本的に必要だろうと考えています。

 その中で具体的には、私はどちらかというと理学系でありますので、もう少し基礎的な研究をどう発展させるかというところに少し重点を置いてここではお話をしたいと思いますが、今までここ15年ぐらい、非常に地球科学的にはイノベーティブなというか、非常に新しい発見があったことは皆さん御存じだと思いますが、例えば、特にプレート境界の滑りの不均質性、微小地震の発生、GPSによる地殻変動というのがありました。それは例えば20年前を考えてみると全くわからなかったことなのですが、それはそういうものを発展させようと思ってさせたわけではなくて、例えば全国を1,300点のGPSネットワーク、それから大学、防災科研も含めて1,200点、1,300点の地震観測点という、そういう基礎的な情報があって、それが共有されることによってそういう新しい発見があって、それがひいては予測精度の向上とか、多分後から松澤さんがおっしゃるかもしれないが、プレート境界の地震の予測精度の高度化とか、そういうモデルとかシミュレーションというところにつながっていく。どういうふうにつながっていくかに関しては、総合的基本政策の中でも述べられておりますが、そういう新しいものを発見するためには、やはり発見するために何かをするのではなくて、基礎的な情報がきちんと共有されることが必要なのだろうと思っています。

 現状では、GPSとか地震計のようなハード的なものはかなりでき上がっているところもありますが、もう少し視点を変えて、いろいろな成果を少し集約して、これは例えばですが、3次元の地下構造情報の整備とか、そういうような成果をさらに積み上げてそれが共有されるような状態にしておくことによって、ある意味で研究の底上げをして何か新しいものができ上がるというようなことを考えるのがいいのではないかと思いました。

 それで1つ思いついたのが、3次元の地下構造だったのですが、先ほどGISという話も出ましたが、地表より上についてのXYZの3次元情報というのはかなり整備されつつありますが、それも日本列島は地震、火山噴火、いろいろな災害があるということもあるので、例えば地下30キロとは言いませんが、3次元の地下構造情報というものを国として整備をしていくと。その中には活断層の3次元構造とか、それから深部構造、それから浅部の地盤構造、地殻構造、変形構造とか、いろいろなものがあると思いますが、そういうものを共有化していって基礎研究のレベルを底上げをすると。そのことによって何か新しいものが見えてくると。新しい研究というのは、基本的には個人の独創的な発想によるので、それはやれと言ってできるものではないので、できるようなバックグラウンドをきちんとつくっていくことが大事だろうと考えています。

 とかく何かをやるというときには研究成果を出すとか、ハードウエアというところに行きがちなのですが、それを支えるような情報というものの共有化というものも必要なのではないかと思っております。特に、一番最後の3のところに書いてありますが、GPS、高感度地震計などの整備が非常に大きな知見をもたらしたという教訓から、さらにそれに加えてもう少し各種の情報、データというものを共有化していって、革新的な防災会議室の発展に期待するというところが必要なのではないかと思っております。

 詳細に関しては特に私のほうでは書くことはあまりなかったのですが、これをお題としていただいたときの考えは以上のとおりです。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

【佐土原委員】

 今、3次元の構造モデルという話が提案されていまして、私もこの3次元の足元の構造を見える形できちんと構造化してわかるようにしていくということは非常に重要だと思います。共有化していくということ。地震ということだけでなくて、やはり水の循環とかを含めて、総合的に環境をとらえるという意味で、この3次元構造モデルをきちんと共有化していくということ、これが非常にこれからのいろいろな科学技術を進めていく上で基本になるんじゃないかと考えております。

 それから、午前中にあった防災の教育というような面から考えても、やはり足元の状況が視覚化されて、だれが見てもわかりやすい形で、子供がそれをきちんと理解していくということは、防災とか環境に興味を持っていくことへの一番の出発点というふうに考えますので、こういった3次元構造モデルというのはぜひ進めていただきたいと思います。

【碓井委員】

 私もそうでして、今、GPSもあり、先ほど言いました基準点が時系列で管理ということが決まっています。そうするともっと細部まで3次元化できます。地域的な動きというものはもっと微妙だと思うのですが、それもわかってくるというので、地震予知のほうにも大きな影響をもたらすのではないかと思っています。

 それから、今、地理空間情報の基盤地図情報ということで、デジタルモデルの生成が非常に進んでいまして、今10メートル全域ですが、都市部では5メートルなんですが、もっと詳細なものもできるわけです。今、それもみんな無料でインターネットから、国土地理院のサイトからダウンロードできるわけです。そういうふうなものも日常的に使うような風土ができてくれば大分違うと思うんですよね。

 ここの分野の技術というのはものすごく今進んでいますので、これを1つのベースにしていただくのと、もう一つ、さっき言った、ユビキタスコンピューティング技術というのは、そういう基準点にももちろん埋め込まれますが、ほかにも埋め込まれるんですね。そうすると非常に身近なところで防災の情報なり、その地域の情報がぱっと取れるので、ここは以前地震があった場所ですよというのがすぐ入ってくるわけです。それが今までは、ぱっぱっと張りつけてなんて言ったのですが、国土として基準点にもそんなものをつけるとなると、恒常的にきちんとしたメンテナンスもされていくはずですので、以前はユーコードを張りつけてもなくなっちゃうんじゃないかとか、いろいろあったのですが、なくなるのはもちろんあるでしょうが、そういうきちんとした国土の基盤みたいなところに埋め込まれていくと、それはずっとメンテナンスされていくわけですから、そういうところからも防災情報が、その地域の、ここは地滑りが起こったとか、ここは非常に危ないとか、ハザードマップでぱっと見えるようにもなるでしょうし、幾らでもできる技術なんですよね。

 ですから、ユビキタスコンピューティングの技術と3次元の技術とをくっつけていくと、さっき言っていた、いつでも、どこでも、みずから情報を得て考えるという環境ができてくるので、ぜひこのあたりはもうちょっとプッシュして、日本が誇れる技術なので、そこはもうちょっとプッシュすれば随分変わるかなと思います。防災だけでなくて、ほかでもいろいろ、トレーサビリティーもあるし、何でも使えるんですよね。

【天野委員】

 地下の情報ということで申し上げますが、いわゆる地表面の話、地形の話は既にいろいろな情報があると思います。地下の情報、つまり地質の話になると、ボーリングデータなんですよね。それで、大深度地下法ができるまでは、大体地表面から25メートルぐらいまでのボーリングデータって結構あったのですが、それより深くなると全然なくて、今、新しくシールドトンネルをつくろうとした場合でも、40メートル以深では過去のボーリングデータがなくて、ほんとうに見事なほど空白なんですね。ボーリング一つ掘るととてもお金がかかるのですが、国が、大きなプロジェクトをおつくりになるときには地質条件は調べるはずなので、そのデータをいただくシステムと言ったらいいんでしょうか、そういうのが必要だと思うのですよ。

 やっぱり地形表面だけ見ていても、地震の波形をつくるにしても何にしても、それではできないはずなので、ボーリングデータ、地質情報を国交省さんのほうからもらってくるような仕組みをお考えになるといいと思います。最近、ゼネコンは総合評価方式で自前で結構調べていたりしますので、そういうデータもプロジェクトの中では吸い上げられると思うのですが。

【濱田主査】

 よろしいですか。

 今の天野さんのご意見は私も賛成で、非常に浅い部分、工学的な問題になりますが、地盤データというのがそれぞれみんな持っているわけですが、その共有化というのが進んでいない。お金かけてボーリングするものだから、なかなか出さないという面もあるのですが、そういうことも念頭に入れていただきたいと思います。深い構造ももちろん重要ですし、それから浅いものもあわせてデータベース化、情報化し公開していくことが必要だろうと思います。

【碓井委員】

 私もそれ、大賛成で、浅いマップを大学でつくろうとしても、ボーリングのところがネックになって計算ができないんですよね。ああいうふうな業者さんが持っているボーリングのデータを防災情報の基盤だということで集めてきて、それはもう無料で見れるというふうにできると、全然違うと思うんですよね。今、一番苦労しています。ないですから。

【山岡科学官】

 多分、そういう割と基礎的なデータで苦労していると、それが足かせになって次に進めないという部分が随分たくさんあると思うんですよ。だから、そういう共通的なところはできるだけ国で一元的にやって、研究者の人がもっとそこから上に羽ばたけるような基盤をつくるというのが重要かなと。

 GPSにしても微小地震観測網にしても、昔は研究者がやっていたことが共通化されたことによってさらに次へ進んだという教訓があったので、それのある意味でデータベース版というか、ソフト版みたいなものかなというふうに僕は想像はしています。

【碓井委員】

 国土空間データ基盤という、いわゆる国土の基盤というのは国土地理院がつくっていますよね。その上に乗っかるデータが各省庁でやっぱり基盤として要ると思うんですよね。防災情報基盤みたいなものがあると。ボーリングデータは一番困っていますので。

【岡田委員】

 ご参考までに、御存じの方もいらっしゃると思うのですが、今、文部科学省の振興調整費で、地下構造データベースの構築というプロジェクトが走っていまして、うちと産総研、それから地盤工学会等が協力して、集められる範囲のボーリングデータをすべて入れて、今、3次元モデルを作っていまして、それはプロジェクトが終わればみんなに公開するような方向で動いています。毎年シンポジウムをもやっていますが。

【福和委員】

 今おっしゃったプロジェクトはすばらしいプロジェクトだと思うのですが、地盤データの多くは市町村とか、あるいは都道府県レベルで集められています。トップダウン的に集めていくときには、国の機関のデータまでは比較的集めやすいのですが、都道府県とか市町村のところのデータを集めにくい状況にあると思います。

 それから、さらにたくさんあるのは民間のデータです。これは仕組みだけの問題だと思っています。建築確認申請を出してくるときに、このデータについては、みんなの安全のために使うので公表してくださいというような文書に、印鑑をついてもらうというようなシステムをつくれれば、それでデータベース化ができるんですよね。ただ、そこを主導してくださる機関がありません。これが問題です。これは地震調査研究推進本部では難しく、できれば中央防災会議とかで音頭をとっていただけると、前に進むのだと思います。仕組みだけの問題で、集めることはすごく簡単なんじゃないかなと思っています。

【碓井委員】

 東京大学の空間情報科学研究センターがどんな地理空間情報が必要ですかという調査をしたら1位がボーリングデータなんです。基盤のほうはそろってきているので、その上に乗っかるデータとしてボーリングというのが1位でした。そのアンケートも調査もありますからお渡しいたしますが。

【濱田主査】

 よろしいでしょうか。

 それでは、次のご説明を伺いたいと思います。次は武井先生にお願いしたいと思います。

【武井委員】

 地震研の武井です。

 今、山岡委員の話で私が言いたかったことをほとんど言ってくださったので、ああ、よかったなと思ったのですが、私も地球科学の理学の分野の人間なので、とにかく対象をきちんと理解して成功法的に備えるというのが重要だと思っていて、それを理念に書きました。

 それから、山岡委員がやはり言われたように、日本というのは災害が多い宿命の国だから、そのことは国民全体がきちんと知らないといけないというので、地震の発生の図があったのでそこに張りつけましたが、日本じゅうどこでも地震が起こる。起こらない国に比べたら、どうしても危険が高い国だというのはきちんと教育で教えて、日本という特殊性もそうだし、地域にそういう災害の特殊性があったら、そういうのをみんな一人一人教育としてきちんと学ぶというのが重要だろうと思っています。

 それから、次に、方向性で、中期、短期というのは、私はあまり社会の仕組みとか防災の具体的な人間的な部分は不得意なので、ここは前回、皆さんの話を聞いて、なるほどと思ってまとめたところで、あと、中期、長期という部分が基礎研究、理学的な研究が必要になる部分がそちらに入るだろうと思ったので、そちらを特に重要課題の中で書いていて、仕組みをきちんと理解すること、それから予知につながるというのが特に重要だと思っているのですが、そのための基礎研究として非常に具体的には書いていなくて重要なこと、やるべきこと、当たり前のことが書いてあって、ちゃんと地震が発生するような領域をのぞくと、見ると。地震が起こるような10キロぐらいの深さのところがどういう状態にあるかを情報を得るという技術、それから、先ほど出てきたGPSのように微小な連携を図って、どんなふうにひずみとか応力が蓄積しているかを見るということと、それから、直接的でなくても間接的に小さな微小地震を見ることで、そこが大地震への準備をしているとか、そのような間接的に情報を得る方法もあるので、そういうのが3つぐらい大きく挙げられるかなと思って書いてあります。

 特にいろいろな方向から攻められると思うのですが、最後に書いたのは、やはりこれは絶対やるんだという人が必死でやらないと進まないので、ここに書いたのはみんな科学的にもチャレンジングな課題なので、やるという人がいて進んでいくのだろうなというのが書いてあります。

 ちょっと勧められたのが、この『地震予知の科学』という本を今持っているのですが、東大出版会から出ていて、地震予知に成功法的に科学として取り組んでいる最近の取り組みが紹介されていて、非常にいい本であると勧められたので私もこれから読むのですが、お勧めします。

 以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

最後1行に書かれている研究者や人材が少なくなってきているという現状があるのでしょうか。

【武井委員】

 いや、たまたま私が、これは今だれがやるかなというのを知らなかったので、具体的にやる人がいないと進まないから、それでこれをやるべきだなどということはちょっと書けなくて、具体的にはやる人がいて初めて進むから、やる人がいるかどうかを知らないとここに書けないので、それであまり具体的なことは書いていないということです。だから、こういった本で、どういった人がどういうことをやっているのかを知らないと。

【碓井委員】

 それに関して、やっぱり資料が出ていまして、地球惑星科学分野でいろいろ調べると、やっぱりそれを専攻する学生が減ってきている。ですから、防災とかそういうものに携わる将来の研究者層が薄くなってきているという現状はあるようです。ですから、これも何回も言いますが、小中高と、やっぱりそういうものが好きになる教育を抜本的にやらないと、この分野の人材が減ってきているということです。

【武井委員】

 確かにちょっと少なくなってきているというのを感じるのですが、ただ、割と最近の学生は環境問題とか人類の問題に結構興味がある。昔、私たちの時代はもうちょっと理学的に役に立つかどうかわからなくてもやりたいという人が多かったのですが、最近の学生の傾向として、役に立つことをやりたいと、面接なんかでもはっきり言う人が多いんですよね。地球科学に来る人でも。「地震予知がやりたいです」とか。そういう意味では、何か役に立つ、直結するというのが若者を引きつける要素というのはどうもあるみたいな気はしているんですけど。

【松澤委員】

 うちの大学でも環境をやりたいという人は非常に増えています。ただ、地震をやりたいという人は残念ながらあまり多くなくて、そこが頭が痛いところです。

 あと、もう一つ問題として、こういうことを言ってしまっては失礼かもしれないのですが、いろいろと今、研究者の評価というのは英語の査読つき論文を何本書いたかというので評価されるようになってきて、地球科学関係のある分野とか、あるいは防災関係のある分野とかは、そういうことじゃなくて、世の中の役に立って何ぼの世界というのがあるので、なかなかそういうところで芽が出てにくくなっているという、そういうプレッシャーは最近感じているので、それを何とかうまく調整、折り合いできないかなということは感じます。

【濱田主査】

 ほかにどうでしょう。

 これは武井先生だけの質問ではないのですが、例えば2ページ目に中期、短期、それから長期、中期、これは一体どれぐらいの時間のスケールを考えているのかと。これは非常に難しい問題でしょうが、時間軸でどこまでだったらここまで達成するとか、そういうものがあると、一般の人の理解を非常に得やすくなるんじゃないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。

【武井委員】

 私は、長期というのは10年ぐらいかなと思って書いたのですが。

【濱田主査】

 武井先生のご説明だけでなくて、我々の研究もそうなのですが、そういうタイムスケールというか、スケジュールをきちんと示せないところがまた苦しいところなのですが、そういうものも必要じゃないかというふうには思いますが。

 ほかにどうでしょう。

【松澤委員】

 それに絡んで、前に天野委員からも言われたと思うのですが、やっぱり納期とか工期とか、その発想というものがやっぱり我々は大事で、どこかで妥協しながら動かなきゃいけないんだろうなというのが、前回非常に勉強になりました。

【濱田主査】

 よろしいでしょうか。

 それでは、次に移りたいと思います。次は、松澤先生からお願いしたいと思いますが、よろしくお願いします。

【松澤委員】

 松澤です。私もあまり防災の専門家ではないので、ちょっと的外れなことがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

 1番、2番、3番とあって、1番と2番はなるべく一般的な話にしたつもりです。3番だけは申しわけありませんが、私の専門分野で、そのかわりなるべく実用化のめどが立っているものに限らせていただきました。

 まず1番の防災科学技術推進に当たっての理念ですが、この理念というのがよくわからなかったので、とりあえずキーワードというか、スローガンというか、そんなようなつもりでちょっと書いてみました。理解に基づく対策の構築ということで、ちょっと固いなと思ったので、Whyに基づくHow-toの構築、How-toないしノウハウが多分重要だろうということで、そういう書き方にしています。何かというと、当たり前のことですが、災害発生原因の理解を進めることなしには対策は進まないと思います。災害がなぜ、どのように発生するのか、ここで災害というのはハザードとレザストの両方を含んでの話ですが、その理解がなければ対策は当然進まない。だけど、我々理学屋が自戒しなければいけないのは、理学だけ進んでも、それを対策に結びつける努力がなければ意味がないわけで、それはやっぱり自戒しなければいけないだろうと思っています。

 一方で、理解が不足している中で対策を構築するというのは、あるときには危険な場合もありますので、それはやっぱり車の両輪として進めなければいけないだろうという考え方です。前回お話がありましたE-ディフェンスの成果をもとにした地震・防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会というのがつくられたわけですが、これは非常にいい部会だと思います。同様なことが今後も進むことをきたいしたいと思います。

 2番目の海外諸国との安全の輪の構築というのは、今までお話があったような国際協力の話ですが、多少違う切り口で申し上げると、一言で言えば「情けは人のためならず」ということなのですが、外国のためにやるように見えても、実際は日本の役に立つんだと。日本の周辺国の安全性の向上というのは絶対、日本の安全性の向上につながるわけですね。例えば、自然災害でもって難民が発生したらどうなるんだとか、そこの国の偉い人が自暴自棄になってしまったらどうなるのかとか、あるいは国際協力によって今、プレート運動というのは非常によく進められています。あるいは気象情報に関しても同様だと思います。そういう国際交流というのは絶対日本の役に立つんだということが1点。

 それから、その国の自然環境、あるいは社会環境に合わせた技術開発を進めるということは、必ず日本の国内の防災技術の向上につながるはずですので、そういう面でもシステムの頑強性とか汎用性を進める意味でも国際協力というのは重要だろうなと考えています。

 3番目に、非常時に稼働する頑強なシステムを確立しようということで、国際協力というのは重要なのですが、一方で、例えばアメリカがそっぽ向いたらば使えなくなるようなシステムというのはやっぱり避けたいと。例を挙げれば、後で言いますが、GPSとかいうシステムは、アメリカに完全に依存しているわけですので、それを何とか国内だけでもできるようなシステムをつくる必要があるだろうと考えております。

 それから、災害時に多くのインフラがダウンすることが予想されるわけですが、そういった場合でも緊急通信が確保できるようなことがやっぱり重要だろうなと思いました。先ほどもちょっとお話がありましたが、衛星の通信システムとか、あるいはバッテリーを積ませることが多分重要になってきますが、そうなってくると、バッテリーをいかに大容量化、あるいは小型化するか。それから、バッテリーは寿命が短いので、それが結構な価格につながってきますので、いかに長寿命化するかとか、そういうことにまで多分つながってくるだろうと考えています。

 それから、先ほど折坂委員のお話を聞いていてなるほどなと思ったのですが、情報伝達というのは、やっぱり確実に伝わらなくてはいけなくて、私はここではハードのことばかり書いてしまったのですが、ちょっと自分のことの話になりますが、田舎に80を超えた両親を2人残していて、もう耳は遠いんですね。防災無線はあるのですが、多分、夜中に流れたら気がつかない。補聴器外していたら多分気がつかないと。そういうシステムはやっぱりまずいなと思って、地元にいる人たちの助けをかりて、アナログ的な部分でのサポートというものを同時に動かさないと、二重、三重のセーフティロックをかけないとやっぱりいけないんだろうなということをちょっときょう勉強しました。

 2番目の、中長期視点に立った我が国における今後の防災科学技術推進の方向性で、1番がハザードと被害の現状把握の迅速性、正確性、頑強性の向上です。このうちの被害の状況把握については、きょう今井委員のほうからご説明がありましたので、ここではハザードのほう、それについて今のところ迅速性というのはかなりよくなってきたと思うのですが、それがいかに正確性を保つか、上げていくか、それから頑強性、どんなに伝えようとしてもインフラが切れてしまったときにどうやってそれを支えていくのかとか、そういうことに関して頑強性を向上しなければいけないだろうと考えています。

 2番目がリスクの可視化と書いていますが、これも今まで皆さんいろいろ言われてきたように、GIS等を使ってハザードマップ、あるいは脆弱性マップといったものをやっぱりつくっていく必要があると思います。きょう、資料が配られたEMC REPORTですかこれは地震が起こった後のいろいろな対策にかかわる地図の話ですが、そういうシステムというのも重要になってくると思います。

 一つ、やっぱり重要だなと思うのは、それらのハザードマップを全部重ね合わせると、地震、火山噴火、洪水、地滑り、その他いろいろなハザードを重ね合わせてみて、自分の住んでいる場所というのは一体どういう危険があるのか。それがもし同時に起こったら何が起こるのかという想像をたくましくしたシナリオというのは多分重要になってくるのではないか。例えば、大雪の後に火山噴火があったらどうなるのか。これは火山噴火のほうのハザードマップでは必ずやられることですね。あとは、最近気になっているのは、大雨の後に地震が起こったらどうなるのか。これも結構、地滑り等でもって気になることです。最近特に気になっているのは、もしパンデミックの最中に大地震が起こったら、一体どういうことになるのかというのは非常に心配になっておりまして、そういうことに関してはシミュレーション等も今後重要になっていくのではないかと考えています。

 3番目に、いわゆる脆弱性の提言。これは言うまでもないことですが、建造物を地震にも災害にも雪害にも強風にも強くする。「軽くて丈夫で燃えにくい」という書き方をしましたが、軽いことが台風に強いかどうかちょっとわかりませんが、いろいろなものに強くする研究開発が多分今後も重要で、ポイントはハザードというのは減らせないのだが、脆弱性は減らすことは可能なのだから、その研究というのは当然のことながら今後も続ける必要があるでしょう。

 4番目に、国際協力と人材の養成ということで、きょう寶委員からもご発言がありましたが、やはり諸外国に実情に合わせた技術の開発と人的な交流を図って、そういう人材を育てていくことがやっぱり重要なのだろうなと思いました。

 最後に、3番目の今後の防災科学技術の重要課題で、ここでは私の専門で知っている範囲で実現可能な技術のみを、そのうちで重要なものを3点挙げさせていただきました。1点目は海底地殻変動観測網の構築で、これは技術開発段階からほぼ実用段階に入ったと考えられます。先日、海上保安庁が行った音響-GPS結合式海底地殻変動観測の記者発表がありましたが、2005年の宮城県沖地震の前後の固着状況の変化というものを見事に海底地殻変動の観測点でとらえています。残念ながら1点しかありません。数点だが、それをとらえたのは1点だけなので、必ずしもそれでほんとうに固着が行われたのかどうかとなると、確実だとはちょっと言えないわけですね。でも、GPSは今、観測網がありますが、海底下はやはりなかなか分解能がわかりません。海底地殻変動も観測網として、網にかえることによってプレート境界の固着状況のモニタリングというのができるようになってきます。モニタリングが完全にできるようになっていけば、例えば30年間、宮城県沖が固着していれば、それはもうそろそろ危ないぞということが言えるようになるわけで、それは確実に地震発生予測の研究に役立つと考えられます。

 それから、津波予測の高度化ですが、これは現在の津波予測の迅速化というのは非常に進みました。ただ、残念ながら、相変わらず起こっている地震をもとにして津波の規模を予測していますから、限界があります。これは今、海底津波計がもし複数点あったらばどの程度の予測ができるかという、緊急地震速報の津波版みたいなものですが、海岸よりも沖合のところに海底津波計を置いて、そこの振幅を調べることによって、海岸でどのぐらいの津波がいつごろ到着するかとか、そういうことがもうできる時代になっています。これはもう金さえかければできる状況に今あります。

 3番目、最後に、国産の衛星システムの充実ということで、先ほど言いましたように、GPSというのは今のところ、アメリカの技術におんぶにだっこなわけです。それに対しては欧州とかロシアとか中国では自前のシステムを上げようとしています。実際、国際協力で行われると思いますが。日本でも、先ほどもちょっとお話がありましたが、JAXAによる準天頂衛星システムとか、衛星による測位システムというものを今、開発中です。これは残念ながらまだ開発中のようですが、こういったものに関してやはり充実していく必要があるだろうと思います。

 4番目として、ちょっと関係ないのですが、こういうことを文科省だったらできるんじゃないかなと思ったのは、教職免許更新講習等の有効利用です。これは地震学会のほうでアイデアが出てきたのですが、地震の知識を広めるにはどうしたらいいかということで、教職免許更新講習があるじゃないかと。地震学会が主体となって講習を開いて、それで学校の先生にいろいろな知識を伝えていこうということが今、実際行われています。防災に関しても同じことが多分使えるんじゃないかということは思いました。

 それから2番目に被災時の行動指針の検討と普及ということですが、先ほど言いました、地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会の設置というのは非常に重要だと思います。同様なことをいろいろなことに進めるべきで、例えば幾つか例がありましたが、山間部で地震に遭ったら沢から上がるというのは、この間の岩手・宮城内陸地震の大きな教訓でした。あるいは、実はその昔、長野県西部地震でも同じ教訓があったにもかかわらず、今回生かされなかったということで、これは一般常識として広めたいと考えております。

 それから、その下にいろいろ津波のことが書いてありますが、これ、実は東北大学の名誉教授で津波の専門家である首藤先生から、私、講演のときに津波に対するいろいろな事前の対策はわかった。でも、いざ自分が海岸にいて、津波に遭ってほんとうに逃げられないときにどうしたらいいかということを講演会のときに聞いたんですよね。そうしたらその先生が「しゃがんでください」と言われたんです。何でかというと、日本海中部地震のときに防波堤のそばにいて立っていた人はみんな亡くなられて、だが、しゃがんでいた人、たまたま座っていた人は助かったということがあったんだそうです。それはなぜかというと、ほとんどは津波でもって、立っている人は倒されて頭をぶつけて、気を失って、それで亡くなっている。しゃがんでいる人はそのインパクトが少ないので、助かる可能性が高くなるということで、非常に理にかなった話で、でもこれは別にそんなに一般に広まっていないような気がするんですね。

 同じような話は多分いろいろなところにあると思うので、そういう知識というものを整理して、それをちゃんと、なぜそうなのかということも、理屈も一緒に示すことによって記憶の定着に役立つだろうと思います。単に頭ごなしにこうしなさいと言っても、それは記憶の定着につながりません。なぜそれが必要なのかということがやっぱり重要で、それが一番最初に言ったWhyに基づくHow-toの構築ということにつながっています。

 以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 その他の事項でご指摘のあった、教職免許更新講習、これは既に、いわゆる理学的なものは入れておやりになっているんですか。

【松澤委員】

 うちの大学でもやっています。あと、地震学会のホームページを見ていただくと、地震学会としてどういうことをやっているかというのは既に。

【濱田主査】

 提案をされているということで、文科省が実際にやっているわけではないですよね。

【松澤委員】

 地震学会としてやっているだけで、文科省としてやっているわけではないと理解していますが。

【濱田主査】

 防災の知識のある教員を養成していくという一つの手段として、地震学会が出されているアイデアがあるわけですけど、これが広く活用されなければ意味がないと思います。何か、機会をとらえて実現して行かないと、なかなか進まないことになります。

【梅田地震・防災研究課長補佐】

 そうですね。今すぐには回答できませんが、確認させていただきたいと思います。

【濱田主査】

 そうですね。それから、もう少し理学的なのは地震学会がおやりになっているのですが、防災的な工学、社会学、そういうもので何を講習していただくかというようなこともまとめていく必要があるんでしょうね。

【福和委員】

 愛知県の例になってしまいますが、愛知県では、初任研修の中に1こまだけ防災にかかわるような講義枠を入れていただいています。ただ、そこに研究者が行くのではなく、防災局のスタッフの人が1人、このスタッフの人は教育委員会から出向して防災局に入っている人ですが、その人が初任研修の中の一コマを使って防災研修をしています。

 それからもう一つは、日本教育会という先生方の会があります。日本教育会では、支部ごとに定期的に講習会をするのですが、ネタがあまりないものですから、防災の講演が喜ばれます。そうすると全教員が聞いてくれます。こういう機会は意外とたくさんあるような気がします。

 免許更新とかというと、これは相当タイトなスケジュールだと思いますので、先生方が集まるほかの場というのを積極的に利用すると、よいかなと感じます。

【碓井委員】

 今度、高校の地理Aに防災が入ったんですよね。それで、私たちのほうの地理学会関係でも、教員免許更新にあわせてハザードマップだとか防災のことをやっていこうと。防災って広いですから、いろいろな学会と連携したりしながらやっていかなければいけないなと思っていますので、ぜひそういうところでまたご一緒していただけたらなと思います。

【濱田主査】

 ありがとうございます。

 小中学校、高校においてそういう防災に詳しいといいますか、そういう知識のある教員を育てるということは非常に重要なポイントだと思います。現状だと、やっぱり熱心な先生方はやるのでしょうが、なかなか学校の先生もお忙しいからできないんですよね。実際には、文科省のでも検討していただければと思います。ほかにいかがでしょうか。

【国崎委員】

 ふたたび防災教育関連についてですが、どうしても「教育」と名前がつくと、文部科学省で防災教育もぜひと思ってしまうのですが、実際には科学技術の部門と教育というのはかなりかけ離れていて、ある意味、省庁の横断が言われているように、ほかの省庁と仲よくするほうがやりやすい面があると思います。むしろ、文科省内をまとめたり、意思疎通を図る方が難しいという話を聞きます。そのため、10年以上たっても、防災教育の必要性をいくら訴えてもなかなか進まないという現実があります。この私見について率直なご意見をいただけるとありがたいです。

【梅田地震・防災研究課長補佐】

 先ほど少しご紹介しました、昨年度から始めている防災教育支援プログラムも教育部局と調整の上で進めています。先生がどのようにお聞きになったのかは存じ上げませんが、それぞれの部署にはそれぞれの所掌があり、我々は研究開発局で防災科学技術を推進する立場であります。防災科学技術を推進する観点でも、防災教育の推進は重要であります。ですので、どういった観点で防災教育を推進するのか、よく教育部局と話をして、効果・成果が最大となるよう連携してやっていくことが必要と考えています。昨年度の防災教育支援プログラムは、十分調整した上で進めていますので、従前までの連携がとれていないということはないと思っています。

【濱田主査】

 機会がありましたら、今進められている防災教育についても、この場でご紹介いただきたいと思います。

【天野委員】

 それに絡めてお話しします。

 土木学会をはじめとしていろいろな学会で、多分、地震学会もそうだと思うのですが、一生懸命防災教育用ビデオとか副読本系のものをおつくりになっていると思います。地盤工学会なんかもつくっていたと思うのですが、これらの成果物を総合学習や何かで活用してもらえるような働きかけを各々の学会レベルでばらばらに働きかけているのが現状だと思います。今、総合学習の時間が減っているので、そういう学会活動の場も少なくなっていると思うんですけど、逆に、文科省さんのほうでいろいろな学会や何かに、そういうネタがあるんだったら出してくださいと働きかけて、以前に集められたことがあったような気もするんですけど、その内容を吟味されて、それぞれの学校にこういうものがありますよというリストを渡すだけでもかなり防災教育には助けになるんじゃないかと思うんですよね。

 別に学会だけじゃなくて、地方公共団体さんでおつくりになっているものもいいかもしれませんが。世の中にはもう既にあるような気がするので、それを有効活用されることをお考えになってもいいのではないかと思うのですが。ちなみに土木学会もたくさんつくっています。

【濱田主査】

 前に何か、いろいろヒアリングをされたことがありましたね。文科省が各学協会に対して。

 よろしいでしょうか。

 それでは、次に移りたいと思いますが、次は首藤先生、お願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【首藤委員】

 首藤です。まず最初に自己紹介しなければいけないと思うのですが、私は、ここにいらっしゃる多くの方と違いまして、理工系ではなく、完全な文系でして、しかも大学を卒業して以降はずっと民間のごくごく小さな会社で防災や安全をソフト面についてだけやっているという立場です。そのような立場ですので、いまだかつて科学技術のあり方について考えたことなどございませんし、よもやそのようなお題をいただいて何か意見を言うとは夢にも思っておりませんでしたので、大変難しい設問で、なかなかいい答えが見つからなかったというところです。ただ、そのような一風変わった立場から見てということで、ごく簡単に意見を書かせていただきました。

 まず1で「理念、または方向性と思われる事項」と書きましたが、様式には理念と方向性が分かれていたのですが、ちょっとその両者の区別が私にはうまくできませんでしたので、大きな方向といいますか、目指すべき方向の考え方としてまとめてお書きしました。それが2つございます。

 1が「安心」から「正しく恐れる」への転換というふうに書きました。これも、こう書いたのですが、先ほど別な先生の資料を拝見しましたら、日本学術会議では安全・安心社会と言われているで、決してそれに盾突くつもりはなかったのですが、特にソフト面の防災安全対策をやっておりますと、非常に大きなジレンマがございまして、人々に安心していただくことのリスクが非常に大きいなというふうに感じております。きちんと恐れていただかないといけないということで、恐れている限りは、それは安心という姿からは遠いのではないかと思いました。

 特に、昨今、もちろんハードの対策も大切ですが、人々がきちんと判断して行動できるということも重要だということは、これは多分皆様、合意されている事項だろうと私は思っておりまして、そうであれば、その人たちには安心していただくのではなくて、適切に恐れていただいて、災害への備えをしていただくということが大切だろうと。その意味で、ここおそらく十数年、安心ということはどの分野でも、防災だけではなく、例えば原子力安全の分野でも言われておりますが、そのお題目から安心をぜひ外していただきたいというふうに私は思っております。

 2点目は、これは私どもが民間でやっているからこそ感じることかもしれませんが、前々回、初回のときにもご質問させていただきましたように、科学技術開発と実践というのはどういう位置づけにあるのかということをもう少し整理が必要なのではないかなと思っております。

 と申しますのは、前々回も申しましたが、防災が進むには実践ということが非常に重要であると私は考えております。同時に、実践がきちんとなされて社会に定着するためには、例えば科学技術なら科学技術なりが使われるものとして、産業として社会に根づくということも一つ重要な側面ではないかと考えております。その意味で、私どもも細々とやっておりますが、同様に防災、安全を職業として、なりわいとして人が生きられるということが社会の中で防災が根づく意味で非常に重要ではないかと思いますので、その意味でも大学の先生方、あるいは研究所の方々がなさることと、そうではない、よりなりわいとして人々がその活動をやっていくような場面をきっちりと仕分けていく必要があるかなと考えました。

 それが大きなお話でして、2点目の「まず特に行わなければならないと思われる事項」とお書きしましたのは、これはちょっと理念や方向性とはやや次元が異なるお話なのですが、特に私がかかわっております、いわゆる人文社会系と言われるような防災対策に関してですが、そもそもどんなことが必要で、どんな方が、今までどのような研究をされており、どのような知見が蓄積されているかというような全体像すら、私があまり存じ上げていないだけかもしれませんが、まだ十分に体系整理はできていないように感じております。これらを全体整理することがまず今後の研究の方向を考える上で必要ではないかと考えておりますので、そのようにお書きしました。

 参考例として、すみません、その次のページから、大変小さな図で申しわけないのですが、これはつい最近、原子力の安全とか信頼というところの分野で私どもが委託をいただいて整理をしたものです。例えば、1枚目の横長のものですが、原子力施設の安全性を確保するには、ソフト面でどういったことが必要かということをトップダウンで整理して、事業者さんの人や組織の状態ですとか、マネジメントシステムの仕組み、それから規制当局がどのようであるべきかですとか、そういったことをまとめ、その下も、文字が小さくておそらく見えないと思いますが、上のような人や組織の状態をつくり出すために必要な知見や研究としてどのような項目があるかということを全部整理いたしました。

 加えて言えば、この各整理された知見や研究のテーマについて、過去十数年どのような研究が行われており、主要研究者、研究機関としてどのような方がいるかということも実は整理したところです。このような整理が防災のソフト面の分野でできるのかどうか、あるいは、この整理がいいのかどうかはちょっと別ですが、まずこういった形で整理をして、何が必要で、それに対して今までだれが、どんなことをやっており、その研究成果がどこまで出ているのかを全体整理をしないと、今後のあるべき姿を考えるための土台の整理ができないのではないかなと考えた次第です。

 以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 安全・安心という言葉は最初にだれが使ったかというのは、総合科学技術じゃないでしょうかね、最初は。それ以来、我々はやっぱり安心という言葉を安易に使い過ぎてきたというような示唆をいただいたというふうに思います。確かにおっしゃるとおりじゃないかと思います。

 今のご説明につきましてご質問、ご意見があればお願いしたいと思います。

【福和委員】

 今、首藤先生がおっしゃったとおりだと思うのですが、科学技術と実践とのすみ分けということを考え過ぎると、ここの文科省では扱いにくくなるような気もします。特に、防災の問題というのは、被害を減らすという目的が非常に明解な学問なので、科学技術の中でも実践も含めて考えていくという視点を持っていたほうがむしろいいんじゃないかと私は思っています。そうじゃないと、根っこのない科学技術になってしまいます。

 先ほど、まさしく梅田さんがおっしゃったことに通じると思うのですが、ここは防災科学技術を進めることを主管としている部局であるから、教育の部分は別の部局になってしまうとおっしゃいましたが、それではほんとうはいけなくて、災害被害を軽減するという目的のために科学技術のことをやっていると考えると、積極的に教育にもおせっかいしていくとか、しないと、実が得られないのではないかと思います。ですから、科学技術と実践を分けるのは正論だとは思うのですが、防災科学技術については、これを分けないことを良しととするという言い方もありかなと思っています。

【首藤委員】

 私も防災という意味では実践が非常に重要だということと、科学技術と実践がはっきり分けられるかというと、非常に難しいということは承知しておりまして、ただ、例えばこの場で防災教育のことを検討するということは当然必要で、重要なことだと思いますが、この場の方々がみずから防災教育をするのではなくて、防災教育のあり方ですとか、あるいはより効果的な手法ですとか、そういったことを考えるというのが、多分、科学技術としてやることではないかと思うんですね。主たる部分はですね。

 それと同じように、例えば防災の教育以外の面での普及ですとか啓発といった部分も、それをみずから研究者がやるということももちろん必要ですが、よりよいやり方を研究するですとか、よりよい教材のあり方、あるいは教材をつくるですとか、そういった形で実践する方の手助けになるようないろいろな知見を蓄積していくというのが防災科学技術の主たるところではないかなというふうに私は考えます。

【清水委員】

 今のことに関してなのですが、私、今のご意見、要するに実践とあれを分けるという話なのですが、基本的にはやっぱり分けずにやるということがいいとは思うのですが、ただ、今、首藤さんからも言われたように、実際、この研究開発に携わっている防災分野は人が少ないというご指摘もたしか前回ありましたし、研究者の評価の問題なんかも考えたときに、例えば英文の論文になりにくいような、特に地域と密着して、実践も含めた形で研究もやるというような形になると、相当難しい。片手間でできない。

 そういういろいろなことを考えると、一緒にやるのだが、でも、民間組織とかNPOとかを積極的に活用する。そういう人たちを育成して活用する。そういうところをある意味、研究者側から見ても、そういう防災教育を研究した人の一種のキャリアパスというか、そういう人たちを増やす、そういう方向にうまく持っていけたらいいのではないかと思います。

 なかなかうまく言葉でまとまらないのですが、そんなふうに思っております。

【松澤委員】

 これは多分、前回国崎委員がおっしゃられた、いかに民間の人に入ってもらうかという議論につながる話じゃないかなと思うんですね。だから、研究者がもちろん実践にもコミットするが、でも、研究者だけじゃ絶対実現できないのもおっしゃるとおりで、民間の人たちに入ってきてもらえなかったらば、それはもう根づかないというのは多分、前回国崎委員がおっしゃったことだと思うので、それに通ずるようなお話のように伺いました。

【田中委員】

 私自身もシンクタンクにいたので、首藤さんがそういう意味で言っているわけではないと思いながらも、非常にラディカルな言い方をすると、素人が玄人の領域に入ってくるなと。やはり実践というのは相当ラポールも含めて大変なことなのですよね。今までのお話は、ただ、首藤さんはそういうことをおっしゃりたいわけじゃないと思うのだが、ずっとその後に出てきた発言は、民間も活用するとか、NPOも手伝ってもらうとか。でも、実はほんとうにそういう力関係なのですかということは防災教育を考える上でぜひご検討いただきたいという気がするんですね。

 やっぱりそれは上意下達、川上発想なのだという気がいたします。ちょっとそこがあって、ただ、研究開発としていろいろな幅を持ってここでは議論をしていて、という必要はもちろんあって、特にその中でも、今までずっと幾つか出てきたいろいろな方向性、山岡先生に始まる2つの応用と理学というのか、あるいは、次にも松澤先生が「両輪」という言い方をされたが、それをどうつないでいくのか、それぞれを独自に保ちながらどうつないでいくのかというのは、かなりここではきっちり議論するべきことなのだろうという気はしています。

 ただ、多分、ラディカルに言うとそういうことなのだろうと、僕は首藤さんの話を聞きながら理解しました。

【天野委員】

 私も以前から繰り返し申し上げているのですが、研究者の方がこの分野で育たないということですが、これはやっぱり研究をやっても、教育を受けても、学校を出た後、稼ぐ場所がなければ学生さんは来ないだろうなというのは素直に思います。民間の防災ポテンシャルをなるべく有効活用してくださいというのはおとなしい言い方で、民間というのはお金もうけしないと成り立たないので、防災を産業としてとらえて、ちゃんとそれでお金、つまり対価に結びつくようなシステムをお考えにならない限りは、民間活力というのは活用できないと思います。

 防災産業を育てるようなシステムを考えるのは文科省さんでは難しいのかもしれないと思いながらいつも言っているのですが。でも、どこかで国全体の防災対策を考えなければならないということであれば、防災産業を育成することは必要なことだろうと思います。そういうことまでイメージしていただきながら研究者の育成とか民間活力の有効活用というようなことをお考えいただくほうがいいかなと。

 なので、「NPOを活用する」とか、「ボーリングデータを無償で提供させる」とか、そういう発想だけではよくないと思います。別に、お金を払えと言うわけではないんですけど、民間を使うということはどういうことなのかということをよくお考えいただいたほうが、いずれこの防災分野が発展する上では重要なことだと思います。

【濱田主査】

 この委員会は文部科学省の委員会で、学術とか科学技術の発展とか、そういうことを議論する場なのですが、私の思いはやはり、もう差し迫った災害に対してどういう手を打つかと。我が国として。そういうことに迫られていると思います。ですからやはりどう実践をしていくかというようなことも常に頭の中に入れて、この場で議論をしていただきたいと思います。

【鈴木地震・防災研究課長】

 赴任して間もないので、研究開発局の公式な見解ではなく、個人的な経験に基づく見解ですが、申し上げさせていただきます。

 私は農林水産省において、食品関係の研究開発を担当していておりました。そこでは、食品がどう使われるかということを考えながら研究の設計をしないといけませんでした。そうでないと、成果は出るが国民が享受できないというものが多く出てくる。出来てしまってから成果のPRをする、あるいは、後から「使ってください」というのではなくて、もっと手前から使う人と一緒に考えるとか、その後どういうシステムで使うのかをあらかじめ考慮しておかないと、なかなか広がらないという面が非常にあると感じておりました。

 それは、天野委員がおっしゃられた、無料で企業のデータを活用なんてと言われても難しいということもわかりますし、大学の先生方の研究されたものをすぐさま実践に持ち出して、国民の安全性が高まる、リスクを減らすという行動に結び付けるのは難しいこともよくわかります。そういった状況のなかで、この場では、科学技術基本計画へ、研究の方向性や具体的な研究課題を挙げて頂きたいと思います。その次に、我々は、少し広く、いろいろな関係の部署と話し合いをして、連携がとれるものを多くしていけたら良いなと思います。そういうことですので、忌憚なく、意見をお出しいただければ非常にうれしいです。

【濱田主査】

 第4期の防災基本計画に防災に関して文部科学省としてどういうことを言っていくかと。それが今議論をしている目的ですが、第4期の防災基本計画が出た後、文科省として、じゃあ防災の研究をどう進めるかという基本計画を求められますよね。前回と今回の委員会における委員の方々のお話はそのときのベースにもなるんだというふうに理解をしております。

 それでは、次に移りたいと思いますが、次は福和先生、お願いします。

【福和委員】

 私、3ページも書いてしまいましたので、かいつまんで申し上げたいと思います。

 まずは、立場を明解にしたほうがいいと思います。一応、私の立場としては、天野さんと同じように、ゼネコンでずっと仕事をしていましたので、ゼネコン出身者の立場で、原子力の耐震をずっとやっていましたから、そういう立場で半分書きました。で、建築屋ですから建築の立場、今は地方の大学にいますから地方という目線でどう考えるか。それから、振興調整費のPOとか、社会還元加速プロジェクトの取りまとめとかしていることもあって、どういう形でアウトプットをしたほうがいいかというようなことをお話しをしたいと思います。それと、ほとんど土日はNPO的に国民運動をやっていますので、首藤さん的に言うNPOの目線も入れています。ですから、ちょっと支離滅裂かもしれませんが、一応話をしたいと思います。

 まずは、理念ですが、先ほど濱田委員長がおっしゃったことと同じ理念が書いてあります。来ることがわかっている大きな災害に対して被害を減らすということをしない限り、科学技術としてはやっぱりぐあいが悪いということです。じゃあ、どういう災害を相手にすれば、この国が不幸にならないのかで、まずターゲットとすべき災害は何なのかということを明らかにしたほうがいいかなと思います。

 それは、国として取り組まなければいけない災害とは何かという意味であります。どうしてそう言うかといいますと、この場は、科研費的研究について議論をするというよりは、国として引っ張っていくべき研究は何にすべきかという、国家プロジェクトを考えるという立場であれば、国家的に取り組むべき課題を同定するということが必要だと思います。ただし、このような課題は幾らやっても成果が短期間では見えないので、やっぱり二枚舌を使わざるを得ないとも考えています。すなわち、ほんとうにやらないといけないのは、被害を抜本的に減らすための本気になる研究。だけど、防災研究の成果を国民に、いつも実感してもらわないとこの種の研究を続けることができないので、これも合わせて行う。実感しやすいふだん高頻度で発生する災害に対して、確かにこういう研究があったおかげで我々はメリットを受けているなと実感できる成果も同時に達成しなければいけないと思います。

 それから、災害被害軽減という意味で言うと、科学技術が幾らうまくいっても、社会システムとか人間が変わらないと無理なので、かつての日本人や日本社会が持っていたようなほんとうの生きる力を再生するようなことをしなければいけなくて、これは多分、首藤先生がさっきおっしゃった「安心」という言葉じゃなくて、「正しく恐れる力を持っていく」というような言葉になるかなと思います。そこの部分は多分、環境分野とか福祉の分野とほとんど共通するので、環境や福祉の分野と共有していくことが必要であろうということが1つ目の話題です。

 2つ目のところに書いてある方向性ですが、基本的には主として検討するものは、超低頻度、超巨大災害である、巨大地震であるという立場でいいんじゃないかなと思っています。この災害に対して次世代や国際社会に迷惑をかけないようにするために何をしなければいけないかということで、それは被害を減らすということしかないので、被害を減らすための研究をする。でも、被害を減らすための研究をするためには、先端研究だけをやっても被害は減らないので、あらゆる国民が手にできる簡単で安価な防災対策技術の開発、そういうような視点を持たないといけないと思いますし、国民の心を変える教育や啓発を可能とするための方法論を構築するというような科学技術も必要であると感じます。

 被害を減らすためには、徐々に防災工学的なこととか、社会システム改革的なことに重点を移さざるを得ないですが、そこまで文科省がやるべきかどうかということは議論が必要だと思います。

 ただ、国民がこの種の成果を短期的に実感することは難しいので、社会還元効果の説明性という立場では、マスメディアが頻繁に報道する中小災害に対して、研究成果を実感できるようにする道もつくっておかなければいけないと思います。ここでは、多くの国民が持っている携帯端末を利用したユビキタス型の災害後対応システム構築みたいなことをやっていくのだろうなと感じています。

 それから、科学技術だけでは災害被害軽減には結びつきにくいので、経済財政施策とか、防災施策と一体化することが必要になります。ここでは、府省間の連携がどうしても必要ですし、中央省庁が幾らやったって都道府県が動かなければだめだし、都道府県が幾ら言っても市町村が動かなければだめなので、全体が動くようにするとともに、最終的には産業界や市民が動くようにすることが必要だと感じます。

 結局、地域での暮らし方や個々人の生き方も含めたような政策の立案とか推進にどう持ち込めるかということが課題になってきそうであります。今、総合科学技術会議の社会還元加速プロジェクトをやっていると、府省連携と言いながら、実態とは乖離しているなと感じます。縦割りも横割りもすごくあります。今の時代はそれぞれの組織が主役にならないと評価がされないものですから、連携がしにくくなっています。みんなが主役になると災害被害軽減のための効果的な施策はできません。互いに脇役になるような役割分担をしないと、なかなか災害被害軽減を達成できないかなと思っています。

 それから、こういうことをやろうとすると人材育成が大事になります。人材育成もいろいろなタイプの人材をつくっておかなければいけないかなと思います。現場感覚を持って、他領域について深い理解力と複眼的な視点を持っている研究者を養成しないといけないということであります。よく文理連携とか、分野間の連携と言いますが、なかなかうまくいかないと最近感じています。どうしてかというと、相手の立場を理解した上で連携することができなければ連携はできないので、単に一緒にやるのではうまくいかないということです。各人がプロダクトアウト的なことをしていてはだめで、マーケットイン的な思いを持った連携じゃないとうまくいきません。マーケットインをしようとすると、相手の立場で仕事をした経験が必要になります。ですから、複眼的というのは、パイ型人間のような形の人を育てるということですが、この種の人材を育成しないとほんとうの意味の連携というのは進まないかなと感じています。

 そのほかにもいろいろなタイプの人をつくる必要があります。高邁な理念と社会的責任を実感できるタイプの人とか、俯瞰的、複眼的な視点で考えることができる、目利きの養成が大事だと思います。それから、人におもしろい話ができる人、ほんとうに基礎学力のある人、応用力のある人、コーディネーター能力のある人と、こういった個性を持った別々の人を育てていかないといけません。スーパーマンはなかなかいないのであらゆることができる人を養成するのは少し無理かなと感じています。ある点に秀でた人たちのプラス面だけを評価するようなシステムを研究者サイドでつくることができるといいかなと思っています。

 それから次は、いつも濱田先生がおっしゃっていることだと思うのですが、ここは科学技術だけをやらないといけないと言っているのでなかなか話が進まないので、全体的にかつ総合的に推進できるような会議体が必要だと考えています。こういった場がないので、なかなか国のBCPができてきません。ほんとうは国のBCPをちゃんとサポートできるような科学技術研究体制をつくる必要があるかなと思います。

 その次がお願いですが、今のように東京に人材を一極化させることが一番防災上はよくないことなので、各地域に防災の科学研究を担う人を残すような仕組みづくりということをしなければいけないと感じます。特に東京にある必要がない機関は積極的に地域に移管していただきたいと思っています。

 神戸の地震以降、京阪神地区に人が育つようになってきて、そこが非常に力を持ってきていて、その効果が実証されてきています。

 それから、防災ではグローバルなことばかり考えていても、なかなか実践ができないので、「Think Globally, Act Locally」という視点で、地域の中で活用できるモデルをつくって、それを国際的に通用するモデルに持ち込むという考え方もあるかなと感じています。

 ちょうど建築の分野では、ことしから3カ年、中国の耐震技術者を毎年数十人ずつ受け入れて、日本で教育をして、その人たちに帰ってもらって中国で5,000人の耐震技術者を養成するプロジェクトが始まります。だから、日本で数十人掛ける3年養成して、彼らを中国に返して、向こうで5,000人を養成するというようなプロジェクトです。こういったような形での国際化も必要かなと思います。

 以上のことを受けて、一応10個、テーマを書いてみました。それが3番です。

 1つ目が、世代の間の不公平感とか地域の間での不公平感というのをやめて、互いに共存できるような社会をつくるための研究。

 2つ目が、大きな災害だといろいろなものを切り捨てなければいけないと思いますから、何を切り捨てるのかということを、そのときの災害対応力に応じて決めていくための、災害対応トリアージに関する研究。

 それから3番目は、建築、土木のところですが、建物の実力とか構造物の実力がわかっていないということと、軟弱地盤の地震時の強度が全然わかっていないという面がありますから、それらを明らかにするとともに、ほんとうに役に立つ耐震改修法をつくる研究。

 それから4番目は、これだけ高機能化してしまうと、単独のものだけを扱っていても意味がないので、都市全体の災害連鎖を考えてシミュレーションをする研究。

 それから5番目が、多分これから何十年かで日本の人口は半分になりますから、人口が減ったときにどこに住むべきかかということを含め、将来の姿を見越した災害後の都市復興・コンパクトシティ作りに関する研究。

 それから6番目が、多分、電気、ガス、水道がダメージを受けると社会が成り立たないので、社会を維持するための基盤施設を守るための研究。

 それから7番目は、国民一人一人がちゃんと動くように誘導していくための教育に関する研究。

 それから8番目が、地域減災モデルの水平展開ができるようなベースをつくるような研究。

 それから9番目が、これが短期的な成果で、ユビキタス型災害情報システム。

 それから10番目が、別の視点の、環境・福祉・防災などが共通で作るべき学理の創生。

 

 それから4番は、その他ということで下記ました。今はどちらかというと国の力が強くなって、一本化する研究という色彩が強くなってきているのですが、これからは地域を興すためには多数の学派が共存するような研究という方向に移ってもいいのではと、書いてございます。

 それから、若者を引きつけるためには、先ほど武井先生もおっしゃいましたが、防災科学技術研究が将来の社会に希望を与えるすばらしい学問であって、ものすごくみんなに感謝されるということを伝えて、自由闊達な雰囲気の中で社会と協働して研究成果が社会に役立っているということを実感できるような環境をつくることが効果的だと書いてあります。

 それから、若者ばかり言っていても、若者は減るので、年寄りをちゃんと活用するという方向をつくったほうがいいと考えています。シルバー世代の研究者や技術者の活用とか、民間の技術者を研究者に戻すようなキャリアパスづくりとか、そういったようなことを考えれば、研究者は増えるような気がします。特に工学分野では、下から上がってくる研究者よりは、1回社会に出てから大学に戻ってくる研究者のほうが多いような気がいたします。

 それから、実際、防災力を上げようとすると、社会に出ている技術者とか、あるいは行政担当マンに対する生涯教育をきちんとしていく必要があるかなと思っています。

 それから、最後に、研究者に必要なのは金よりも時間と書いてあります。今はみんなお金は要らなくて、時間が欲しいという人が多いので、あらゆる人たちの時間を確保させてあげるような場づくりというようなことをしていただきたいと思います。

 以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

【碓井委員】

 私も全く同感で、国土構造が変わろうとしているわけですね、21世紀。多極分散型にもっとなっていかなければいけない。一つは地方分権時代というのが来る。そういう中における防災技術研究のあり方というのは、深刻に考えないといけないと思います。

 学術会議でも国土構造の変化を誘導するような、それが防災研究の一つでないといけないというような書き方をしてあるのですが、まさにそうでして、東京一極集中、これ自体を変えないと、一国が滅んでしまうということがありますので、防災とそういうふうな国土構造とを絡めていくといいますか、それはやっぱりちゃんとやるべきかなと思うんですね。

 そのときに国民の理解が要るので、災害認知型というのを出していただいたんですね。もう一つ、先生のところでユビキタスって出ていますが、GISとかとユビキタスコンピューティング技術が今、融合しようとしていますから、これは新しいイノベーションを起こすので、ユビキタス防災といった言葉を出された先生がおられましたが、あれはそのまま使えるかもしれません。

【濱田主査】

 さっきご説明がありましたが、地震調査研究推進本部というのが今ありますね。それから、中央防災会議がある。ただ、防災そのものを研究する国の機関、例えば防災研究本部とか、そういうものを今の地震調査研究推進本部と並列で設けたらどうですか。

 それは国交省の役割だという話になるかもしれませんが、現状ではそういう機関がない。中央防災会議は政策、実際の施策を議論する機関で研究機関ではありません。防災研究本部のような機関を作るとすればどうすればよいのでしょうか。

【梅田地震・防災研究課長補佐】

 地震本部の10年計画を策定する時にパブリックコメントをしたのですが、その際にも、こういったご意見を頂戴しました。福和先生他からも、専門委員会の場等でご意見をいただいており、非常に理解しております。ただ、行政改革が進められている中で、行政の立場から新しい組織をつくるべきというのはなかなか言えません。

 総合科学技術会議で、第3期科学技術基本計画のフォローアップをした際には、そういった声が上がっているという意見は出しました。

【山岡科学官】

 福和先生のヒエラルキーをつくらないことというのは、まさにそのとおりだと思っていて、要するに協調と競争の部分をうまく僕は分けるべきであると。何となく協調するばっかりに競争がなくなってしまって、オールジャパンじゃなければいけないというのはよくないと私も強く思うので、かといって完全に分けてしまうと、投資にむらができる。だから、協調すべきところは協調しつつ、やっぱり幾つかのグループが競争すると環境をうまくつくるという考え方というか、ポリシーが必要なのだろうと思います。

【天野委員】

 前回のときに、国のBCPなり何なりを意識した防災研究の最終的な成果は予算化計画だと申し上げたのですが、それは背景に非常に災害に強い国土計画みたいなものがある程度イメージができていて、それに対する予算化計画だろうと思うんです。だから、やっぱり防災の研究の一番最終的な目標というのは、国土づくりに行くはずだと思うので、今、岡田先生もおっしゃいましたが、あるところでは文科省からリーダーシップをとって、内閣府なり他の省庁なりと連携しつつ、国の最終的な理想像を目指しながら、それをつくり込んでいくというような気構えと、それを考えられる十分な場づくりというんですか、それをおつくりいただくといいかなと思うのですが。

【濱田主査】

 防災研究の全体の枠組みとかそういう議論はまた全部終わった後、少し時間を取ってやりたいと思います。それでは、最後になりますが、重川先生からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【重川委員】

 もう最後でございますし、言いたいことはもう各先生皆さんから言っていただいているような気がいたします。私自身もお聞きしていてそう思いますが、一応書きましたことをかいつまんでご説明させていただきます。

 まず、1つ目の「防災科学技術推進に当たっての理念」というところですが、ここで第4期の理念を書けと言われたときに非常に困りました。というのは、特に防災科学技術の基本とする理念というのは1期5年ごとにそんなにころころ変わるものではなくて、第3期の基本理念と一体何を違えればいいのだろうというふうに、非常に頭を悩ませました。防災科学技術というか、防災が目指すことというのは、例えば災害とか、あるいは戦争とか、あるいはテロとか病とか、いろいろな災いから人の健やかな生活を守っていくことと、それと、やっぱりいろいろな条件が変化する中で地球の上に住んでいる命みんながサステイナブルに繁栄していくということを、やっぱりすべての科学技術が目指すのであり、特に防災科学技術というのはそうではないかと思っております。

 ですから、第3期の中で出てきたものと大きく変わるところは何らなくて、なお一層第3期で指摘されていたように少子高齢化であるとか自然災害もこの5年で起きなければ次の5年の発生確率は高まるわけですから、第3期で基本とされていた理念がより一層、もっとしっかりと基本理念に据えなければいけない。それから、それに伴って右肩上がりのころの日本の科学技術の開発ではなくて、右肩下がり、国力が衰退していく、高齢化が進む中での科学技術開発ということを一体どういうふうな見方でやればいいのか。そうするとやはり世界じゅうの科学者がしのぎを削るような、もちろん最先端科学技術の開発参加というのも日本の生き残りとしては当然必要なのですが、ただ、いろいろな生産活動に高齢者の参加を促すような技術開発であるとか、自立分散型の危機管理システムとか、高度成長期の終焉を迎えつつある日本でも、やっぱり国民が豊かさを感じることのできる社会システムをつくり上げるのに寄与するような科学技術開発であることが基本理念になるのではないかと思いました。

 それともう一つは、巨大災害発生までの間に費やせる時間は刻々と短くなり、しかも予算には限りがあります。そうすると、防災科学技術開発とその結果もたらされる減災効果との関係性を考慮した取り組み、もっとわかりやすく言うと予算配分を考えるべき時期に来ているのではないかと考えました。

 それから2つ目の「中長期的視点に立った防災科学技術推進の方向性」ということなのですが、これは御承知のとおり、根拠法になっている科学技術基本法の中にもはっきりと科学技術の振興に当たっては広範な分野における均衡のとれた研究開発、それから自然科学と人文科学との調和に留意されなければならないというふうに明記してあります。

 特に3期の科学技術基本計画の中で、送っていただいた資料を拝見すると、3期の中で政策課題対応型研究開発における防災というのは社会基盤分野の中に位置づけられているのですが、この全8分野の中で唯一防災のところだけに「社会」という言葉が使われています。この言葉が示しているとおり、やはり科学技術開発の中でも防災分野というのは社会、もっと言うと社会を構成する人なり組織なり人間の側を研究の対象とした科学的な研究でなければならないと理解すべきではないか。

 それから、さっきちょっと話が出ましたが、我が国の防災対策の基本をなしている防災基本計画、これは災害対策基本法に基づきますが、この中にも実は「国などが推進する防災研究のあり方」という文章があります。その中にはこう書いてありまして、災害そのもの理学的、工学的研究のみならず、災害時の人間行動、情報伝達など、ここには「社会学」と書かれていて、これは狭義の社会学ではおそらくなくて、社会科学的という意味合いではないかと思うのですが、その分野についての研究を積極的に行うものとすると書かれています。

 災害発生の原因となる自然現象を研究対象とする分野、それから以外抑止を目的とする、工学系が中心となるような分野、それから現に災害が起こった後の社会の混乱を最小化する、それから被害軽減のために寄与するような社会科学的な分野、その3分野の研究開発が一緒に推進されることで初めて、委員の先生皆さんもおっしゃっている実際の減災効果が生まれてくるということになろうかと思います。

 この3分野の研究開発ということで、私、最近すごく将来を危惧するような場面にたびたび出くわしています。まず一つは、静岡県内の進学校の高校の校長先生たちとお話をしていて、「富士常葉大学の環境防災学部というのは防災という名前がついているから、やはり地震予知の研究をされているのでしょうね」というふうにおっしゃるんです。これは我々、ふだん防災の仕事に何らか携わっている者にとっては、そんなことはないんだと思っているんですが、実はそれは大きな間違いで、世の中の多くの人たちにとって防災という言葉が持っている意味というのは、もう地震予知なんですね。

 これは私が参加させていただいている中央防災会議でもそうなのですが、あそこには各大臣が出てこられていて、大臣というのは、防災の分野に限って言うと、とっても普通の人感覚なんです。とても普通の人の感覚で見ていらっしゃるんですね。ですから、どういう反応をするかを見ていると、普通の人たちってこうなんだろうなと思うのですが、やっぱり一番話題になるのが「予知ってできるの?」「東海地震っていつごろ起きるの? どれぐらい前にわかるの?」。今でもそうです。それから、もう一つ話が出るのは、「災害が起こったときに情報収集とか人命救助でヘリって、自衛隊どうなっているの? 警察、消防どうなっているの?」というぐあいに、ハザードというか、研究の対象が非常に狭い。

 それから、この後に書いてあるんですが、防災というのは事前、それから緊急、応急、復旧、復興と非常に広いフェーズを対象とするのですが、その射程に入っているフェーズも極めて狭い直後のことでしかない。これは我々以外の普通の人たちは、まさにこういう意識だと思っています。

 ここから、じゃあ、防災科学技術が生き延びていく、具体的に言うと予算を増やして、たくさんの人たちがいろいろな研究に携われるようにしていくためには、一つは、今のままではこの科学技術基本計画の中で防災と言ったら「ああ、予知ね」と。まあ、予知をゼロにするわけにはいかないから、若干は地震予知研究にお金はつけましょうと。でも、もっともっと重要な案件がいっぱいあって、ゼロにすることはできないが、もうここのところ、ちょっと大きい地震ないし、減ることはあれ、増えること、今後増やしていくことというのは実は非常に難しいんじゃないかなと思っています。

 それを考えたときに、防災科学技術、防災をやっている人みんなも、そのあれを増やしていくために、一つには、本気で防災という言葉で皆さんが連想する内容を変えていくために、理学だ、工学だ、社会科学だとか、研究だ、学者だ、実学だとか、そんな狭い範囲での何とかではなくて、本気でみんなが変わるように働いていく必要があるということが一つと、もう一つは、防災という言葉を使わなくする。この防災という言葉を使っている限り、非常に先が苦しいなというふうにすごく感じることが多いです。そういう対象の問題とフェーズの問題があります。

 それから、下の段落に書いてあるのですが、既に我々の中ではいろいろな研究分野での連携ということが指摘されて実践をしているのですが、実は、これもたくさんの先生が指摘されているのですが、研究成果のエンドユーザーの立場となる行政とか企業とか地域コミュニティーとかと研究推進者がお互い対等な立場に立って、協働で仕事を進めていく体制を本気で考えなければいけない。我々もいろいろな中で行政との連携とか、やっぱり現場の人たちの声を生かしてという研究は、各先生方がされていると思うのですが、本当に対等な立場でやっているのだろうか。

 例えば、具体的なことを言うと、自治体の方たちに入っていただいても、遠慮して本音はおっしゃいません。例えば「こんなものやったのですが役に立ちますかね」と聞いたら、使えないなと思っても、絶対そうは言わないです。「あればいいと思います」とか「こんなものがあればこういうふうには使えると思いますね」とはおっしゃいますが、じゃあほんとうにそれをやって使えるかというと使えないんですね。そういうことというのは、例えばアンケートで量的な調査をやっても、そこら辺は見えてこないです。アンケートって、聞くと「あったほうがいいと思う」とか「こういうふうに使えると思う」とか言うんでうが、じゃあ今までたくさんのお金を使って開発されてきたいろいろなシステムという名前のついているものが、今、自治体とか現場で使われているかというと、ほんとうに使われているものというのは極めて少なくて、研究開発にはお金を使っているのですが、なかなか現場に結びついていなくて、そこのところの現場のニーズのくみ取り方に、そここそがまさに防災研究の一つの非常に重要な分野でもあるかと思います。

 3つ目の「今後の防災科学技術の重要課題」なのですが、繰り返しになりますが、やっぱり現実社会への実装・貢献ということで、真に防災のエンドユーザーのニーズを的確に把握すること。例えば、私自身が直面することとして、実際に災害が起きてしまったときに、自治体の行政関係機関というのは膨大な資料を災害対応業務の中でつくることを余儀なくされています。紙の量にするとどれぐらいになるのでしょうか。見当もつかないような紙の書類をつくります。それに多大な力を費やし、人件費も費やされます。でも、それは環境面、それから経費の面、それから災害対応の効率化の面から考えても全然望ましい姿ではなくて、何でこれだけ技術が進んでいるのに、この手書き、パソコン入力、膨大な紙の消費に置きかわるような、代替するような、信頼性の高い、ほんとうに現場で使えるような災害対応支援システムってできてこないんだろう。

 あるいは、ハザードマップってたくさんできているのですが、例えばほんとうに微妙な土地の高低差が認識できるような微地形がわかるような詳細な地質とか地盤条件が普通の人たちがパソコンで見られるような情報提供というのがなぜできないのだろうか。エンドユーザーが使う端末というのは非常に単純なものなのですが、でも、その中のプロセスというのはとても最先端の技術を動員していただくという、そういったような研究開発の分野というのが、今後、ぜひ進められるといいなと思っています。

 以上でございます。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、ご意見、ご質問等お願いしたいと思います。どうぞ。

【天野委員】

 今、重川先生のおっしゃった、実際の現場で使えるものにするということに関連して、ゼネコンの技術開発状況をお話しします。総合評価方式が始まるまでは、ゼネコンで行われていた技術開発というのは、開発する側つまりシーズサイドでこういうのがあったらいいだろうと考えた工法なり機械なりをつくっていたんですね。そうしますと、現場側つまりニーズサイドでは、新しくつくられた工法や機械ができても、試しに1回くらい使っても、「まあ、使えないことはないよ」と、さっきおっしゃったようなことをそのまま現場の人間が言って結局は新しく開発されたものは使われずにいたんですよ。要するに、シーズ側つまり開発する側で一生懸命考えて、これがあったらいいだろうというものを開発しても、ニーズに合わなくて、使われない成果が多かったんですよ。

 それが一挙に現場(ニーズ)と結びついた開発が行われるようになったきっかけが総合評価方式だったんです。総合評価方式というのは、発注者側から出されたテーマに対応する開発成果を提案して、仕事をもらって、それで利益を出さなければいけないので、完全に技術開発成果がニーズと結びついて、それでお金を稼ぐなり、いいものをつくるなりというようなものになっていったんですね。

 さきほどのお話を聞いていると、総合評価方式が始まる前のゼネコンの技術開発の状況とよく似ていると思って聞いていました。前回のときに緊急地震速報について国崎さんがおっしゃいましたが、成果ができ上がって、皆さん1回は使ってみたと。けれど、現状では、運営会社がおかしくなったり、実際に実務に使おうと思っても機械がうまく合わなかったりというので使えなくなっているような状況が発生しているということですね。これは研究開発した成果をまず現場に持っていっても、第1段階のところで実情にまだ合っていない状態だと思うのですが、こういうものをほんとうに使えるものにするためには、使った側はどういう不ぐあいがあったのかということを開発側に戻して再度、開発を行うという、そういうやりとりがあって初めて有効活用されるような成果になっていくと思うんですね。

 なので、そういうシーズ側とニーズ側の意見を一致させる場、研究基本計画や何かに直接結びつくかはわかりませんが、そういう場をつくっていくことは必要だと思います。

【濱田主査】

 エンドユーザーが何を要求しているか、これは非常に重要なポイントだと思うのですが、ライフラインの代表じゃないのですが、今井さんがお見えになっているのですが、私、いつも感じているのは、一体何を研究する必要があるかと。というのは、社会的に、私の専門は構造ですが、国土構造とか、そういう社会システムも入っていて、何が弱点になっているかというようなことが掘り起こされていないと。それは、ちょっとこれ、大変失礼な言い方ですが、ライフライン事業体の方にお聞きすると、「いや、もう大丈夫だ」と。「兵庫県のあの地震以来、我々はよく勉強したから大丈夫ですよ」というようなお答えがいつも返ってくる。それは東京メトロでもそうですね。だから、何がぐあいが悪いのか、何を緊急に研究しなくちゃいけないかということがどうもよくわからないところがあるのですが、どうでしょうか。

【今井委員】

 何が足りないかというと、おそらく中央防災会議での首都直下東京湾北部地震の想定であれば、東京電力ほかのライフラインもそうなのですが、あの程度であれば、大きくはやられないと。やられたとしても電力は1週間で、ガスは1カ月で復旧できるというような想定はしているんですね。ほんとうに私どもが知りたいのは、想定でいくと、大きな活断層は東京にもあるでしょうから、そこがやられちゃって、道路が寸断される。そうすると、どこの地下変電所とか地中送電系統が分断されちゃう。あるいは橋梁にもライフラインが添架されている橋があるわけですが、そういったものが具体的に落ちちゃう。そうすると東京大停電になっちゃいます、復旧も1カ月以上かかると。そういうような想定が全体的に平均的にこうですよという想定よりも、具体的に、ここは断層でこの道路は寸断されちゃうとか、そういう想定があると、もっとひどい、ライフラインもだめになりますという回答が出る可能性もあります。

【濱田主査】

 ということは、やっぱり全体で考えていかなければよくわからないということになるのでしょうか。

【今井委員】

 全体的な議論だと平均的な回答しかできないんですね。そうすると、それを想定するのも難しい技術課題になってくると思うのですが。

【福和委員】

 今、システムを幾らつくっても根づかないという話がありましたが、ほんとうにそのとおりだと思います。根付かない理由は、我々自身が相手側の世界で生きていないということが一つの理由なので、相手側の世界で生きる人を何人かつくればよいと思います。そうすれば、相手のニーズを踏まえたものがつくれるから、生きたシステムになります。ただ、多くの場合、我々研究者の会話する相手のほとんどが、きょうのように中央省庁の方であったりして、実際に使う方々とは違う人とつき合ってしまっています。このため、実際に手を動かしている人たちの目線でものを考えることができていないという気がいたします。

 使われるシステムを作るためには、最初につくるときに、実際に使う人たちと一緒に議論し、その人たちのニーズというか、その人たちにこういうものが欲しいと言ってもらう必要があります。あるいは、こちら側が時々向こうに出向して現場体験をしてくるということをしないと、この問題はいつまでたっても片づかないかなという気がします。

 ただ、多少状況が違うのは、地方です。名古屋でもまだちょっと大きくてだめで、もう少し小さな地方になると、先生方が現場の中で一緒に働く機会がすごく多いので、むしろそういう地域のニーズをちゃんと聞き取ったシステムをベースにすれば、いいものができていくような気がしています。

 それが如実にあらわれているのが、地震動予測地図です。地震調査研究推進本部でつくるものは、先に国のものができて、徐々に精度を上げていくという方式になっていますよね。多分、そのスタイルをやっている限りは個人目線や使い手視線にはならないと思います。先にどこかで、一番具体的なところでプロトタイプシステムを作って、それが成長して徐々に国全体のものを作っていくというようなシステムじゃないと、個人まで使えるものにはならないような気がしています。どう発想の転換ができるかによって、防災科学技術が国民一人一人に根づいていくかどうかが決まるのではないかと感じています。

【重川委員】

 今の福和先生のお話、すごくよくわかります。先生がおっしゃったみたいに、地方でほんとうに現場の人と一緒にいろいろな使えるものを開発されている先生たちに、実は大きな研究費って行っていないんですよね。今おっしゃった、大都会でやっている大きなシステムに億単位のお金がつく。ですから、まさにいい研究をするにはきれいごとではなくて、やはりお金が要りますし、お金があれば若い人もその分野に入ってきてくれますし、院生だって来ますし、そういうことを考えると、現場ですごくうまく連携がされている部分に、なかなか研究開発費が行きにくいという現実もあるような気がするのですが。

【碓井委員】

 阪神・淡路大震災の直後からGISというのは国家的政策になるんですけど、あれはやっぱり震災が契機になっているんですよね。そのときに言われたのが、日常性から緊急時へのスムーズな移動、これをしないとシステムも生きないだろうと。それで、日常的に使っているシステムが緊急時にもそのままぱっと動くようなシステムにしていこうということで、復興というのは日常性に戻ることなんですよね。ですから、例えば固定資産の管理にしても何にしても日常に戻ることなので、そこのところの土地の管理であるとか、そういうものが電子化されていなかったり、明治以来のものであったりというようなところから固定資産税システムというものが入っていくわけなんです。そういうふうなシステムがきちんとしていたところは、山古志でもみんな復旧が早いんですよね。復興のレベルにおける。

 ですから、防災システムというのは、防災だけ持っていってもだめなんですが、日常的な業務の連動で、日常から緊急へすぐスムーズに移行できるところをちゃんと考えておく必要があるかなという気はするんです。ともすると日本の防災情報システムというのは、いわゆる災害時のときだけ考えているようなのですが、日常使われていないんですね。日常使われているところからいく。結局、阪神・淡路大震災でGISが国家的政策になっていって、その中で地図データが日常更新が要るというところから、全国都市部に、今見ていただいたら基準点が埋め込まれていると思うんですね。そこへ今、ユーコードがついてユビキタスコンピューティングとつながりますというので、それもやっぱり同じで、日常的なデータの更新をどうしたらいいかということを考えていく中で、基準点ベースのGISをつくらなければいけないという形で、今ずっと十何年来て、今それが政策になってきているんです。

 ですから、1つのキーワードとして「日常性から緊急性への連動」と言うと、防災というのはすべてに浸透するんですよね。しかし、緊急のときにぱっと動かなければいけないという特殊性もあるというので、このあたりのところというのは、普通のシステムのこともわかっていながら緊急時のことも知っていなければいけないという、そこはものすごく特殊性があるので、何かそういうスローガンじゃないですけど、キーワードを1個見つけてやっていくと、すべてを束ねられるといいますか、本当に防災システムというのは命を守るという視点から。私、あのときたしか「生命を守るのは防災システムだ」とか言ったことがあるのですが、そうすると、全部の頂点に防災っていうのが来るんですよね。だから、何かもう一度、どんと大きく出たらどうですか。

【岡田委員】

 関連してですが、狭い世界なので皆さん御存じだと思うのですが、今まさしくおっしゃったような日常から非常時につなげるということで、京大防災研の亀田先生が打ち出したRARMISコンセプトというので、時空間情報のシステムをつくって、実際に地方都市に行って実践している研究者がうちに1人いたのですが、この間やめました。先ほどの首藤先生の話じゃないんですけど、実践のほうがおもしろくなって研究所にいないんですよ、地方を飛び回って。確かにすばらしいシステムで、自治体でも職員が実際に動かして、それを鳥インフルエンザに応用するとか、そういうふうな成果も出てきたので、我々としてはいい方向だと思ったのですが、本来の研究開発とは関係ないほうに行っちゃって、日常業務までやるから、税務だとか、その町の図書館管理だとか、そういうものにも使えるんですよね。だけど、そういう目的で研究費を出しているわけじゃないから、それは余分なことなんですね。

 ですので、既存の研究所の枠にだんだんはまりきれなくなってきてしまって、多分一番いいのは、そういうふうなほんとうに有用なシステムであれば、ベンチャービジネスを立ち上げて、それを商売にして日本全国に広げていってくれればいいと思うんですね。その辺が研究と実践というか実務というか、そこの境目が大変難しくて、研究者もその辺、どこまで公務員の倫理を保ちつつやるかというところが現実の問題になってくるんですよね。ですから、いわゆる防災システムというのは、多分、世の中にたくさんあるのだろうと思うのですが、そういうものを比較研究する研究というのは、これまであったのでしょうか。そういうのがあれば聞いてみたいなと思っているのですが。

【荒卷委員】

 長年、防災・危機管理業務を第一線でやってきた身から言わせていただきますと、システムの充実というのは非常に重要な部分でもあるのですが、その一方で、システムだとかマニュアルというものを充実していくと、想定外のことは職員が思考停止に陥りやすいんですよね。もうそれ以上考えなくなってしまう。自ら考えなくなってしまうために指示待ち人間をつくりやすいという、システム等ができた当初はいいのですが、やはりそこに何年か経ってしまうと、そういう弊害要因があるということを御承知いただければと思います。

 以上です。

【濱田主査】

 ご発言はないでしょうか。

 ないようでしたら、前回と含めて22人の方々からご意見をいただきました。これをまとめるのは事務局だと思います。もちろん第4次防災基本計画に何を文科省から言っていくかというのは、この防災分野だけじゃなくてほかの分野ともあわせて出されるわけですね。ただし、非常に有益なご発表、それからいろいろ討議もあったので、ぜひともこの場の2回にわたる委員会の議論をまとめたものを資料として残しておきたいというふうに思いますが、そういうのでよろしいのでしょうか。

それでは事務局のほうで取りまとめをしていただいて、次回かその次の回ぐらいにそれをお示しください。

【天野委員】

 委員配布2という資料が前回いろいろ出た意見をまとめたものですよね。ちょっと気になったのが、今回も同様な意見が出たと思うのですけど、ある割り切りが必要だとは思うのですが、一つの具体的なシナリオを意識して、それをある程度初めから最後までイメージすることで新しい研究課題が出てくるんじゃないかというディスカッションが前回結構出たと思うのですが、そういった話というのは、この委員配布2の中のどれが……。

 結構、私は大きな話かなと思って理解していたのですが、そういうのはどこかに入っているんですか。

【濱田主査】

 今回提出された資料は単なるメモ程度のものと理解しています。

【天野委員】

 あ、そうですか。

 先ほどもお話がありましたが、やっぱりニーズを把握しないと研究課題は出ないと思うのです。発災した直後には、現場の情報を、例えば国交省のテックフォースや自衛隊が収集することになると思いますが、実際には緊急避難道路自体は大丈夫でも、周辺の建物が倒壊して全然通れないとか、下町のあたりの火災が発生している地域では緊急避難道路も全然通れないし、その辺は火災が発生すれば大きな気流が発生するので、ヘリコプターも飛べなくて情報が全く得られないということは多いにあると思います。そのような場合には、どのように情報を収集したらよいのかということがあります。また、沿岸部のタンク、たくさんありますよね。あれは長周期の地震波が来れば、どれかのタンクに周期が合ってしまいますので、火災が発生すると思います。それに沿岸部の護岸や桟橋は、明日に壊れても不思議はないというように痛んでいるものが多いですから、発災後にそういうところで船で使おうと思っても全然使えない状況になっている場合もあると思います。その際には物流をどうすべきかということもあります。発災後の対応について具体的なイメージをストーリーとして一度持たれるといろいろなニーズが明らかになると思います。それは技術開発課題に結びつくと思いますので、ぜひ具体的な災害シナリオを作ることも入れておいていただければと思います。

【濱田主査】

 どういう順番なんですかね。というのは、この2回の委員会の議論をまとめた小冊子というか、そんな立派なものじゃなくていいと思いますが、まとめ、そういうものがあって、我々こういう議論をしたよと。その中から文科省として防災の分野で第4期基本計画にこういうことを提案しますよという順番になれば一番いいと思うのですが、そういう順番じゃ間に合わないの? どうなんでしょう。

【事務局(富田)】

 9月の末までに、この上位の会議にこちらの意見をまとめて上げるのが今年度の第1の目的であります。それが第4期科学技術基本計画への反映のための提言です。こちらの会議は年度末まであります。来年度の各分野ごとの推進戦略、第4期科学技術基本計画の下の各分野の推進計画的な具体策は総合科学技術会議で取りまとめられ、進められていきます。それに向けての全体の提言として、こちらの最終報告案を充てていいきます。次回の9月までに、大まかな本計画、第4期科学技術基本計画に反映すべき数行程度をどう盛り込むかを議論し、それを上の会議に上げるというのが9月までの作業になるかと思います。

【濱田主査】

 9月末までであれば、次回の委員会までに議論を少しまとめていただいて、その中から抽出されるものはこういうことだというような形で基本計画に提案をするというのはどうでしょうか。

【事務局(富田)】

 そうです。9月に中間報告的なものを上げていくようになるかと思います。

【濱田主査】

 そういうプロセスを踏みますので、8月に委員会があって、9月にもありますよね。どちらかの委員会でその議論をするということにしたいと思います。

 本日ですが、これ、総括しろと言っても、なかなか総括できるものではないと思います。けれども、いろいろな話題が出ました。まず一番大事なのは防災研究のあり方ということで、ニーズの問題とか、社会還元の問題というようなことが出ました。それから、情報とかデータベースの整備、それは科学的情報の精度をどう上げていくかとかいうことが議論されました。情報の入手の方法、それからユビキタス社会での災害情報の伝達のあり方なども話題になりました。さらに、災害認知社会という言葉が出まして、防災教育のことも議論の対象になりました。これは重要だと思いますが、国全体としての防災研究の枠組み、こういう議論もあったかと思います。言い残したというようなことがあればご発言をいただきたいと思いますが、いかでしょうか。

【岡田委員】

 実は寶先生から防災経済学という言葉が出てきて、どういうお考えなのかもう少し詳しく聞きたいと思っていました。また、何人かの先生方から、各地域の災害特性を知って賢く生きましょうというような趣旨のことがあったと思うのですが、それを進めれば進めるほど、危険なところと安全なところのめりはりが出てきますよね。危険なところは住まなければいいのですが、寶先生がおっしゃっていたように、貧困と災害の連鎖みたいなものがあって、危険なところは安くて、経済力のない人が住むようになっていきますよね。そういうものとのジレンマですね。地域性なんかがわかってきたときに、それでもここは絶対住んじゃいけないというようなときに、そういうところにしか住めない人たちをどうやって救済していくかというセーフティネットの問題がありますし、建物にしても危険な建物に住んでいる人はいっぱいいるわけですよね。そういうことがわかっていながら、これは科学技術じゃ多分ないんでしょうが、そういうことについて考えるというのも、社会科学系の中でしなければいけないことなんでしょうかね、やっぱり。

【濱田主査】

 そういう議論ももちろん必要でしょうね。災害の総量を減らしていくということで、ただ時間的に十分やれるかどうかというのもまた問題だと思いますが。

【天野委員】

 でも、キーワードは福和先生から「トリアージ」というキーワードが出ましたよね。あれの中の一つじゃないかと思いますが。

【田中委員】

 トリアージは後でしょう。

【福和委員】

 僕がさっき言ったのは、災害発生後の、何を大事にしていくかというトリアージですね。

【天野委員】

 ええ。あのときは発生後ですけど、トータルで見たら有効だと思います。

【福和委員】

トータル、そうですよね。事前に何を優先すべきかというようなこともありますよね。それだから国全体のBCPの研究を進めていって、国全体で持っている我々の災害対応力との間で事前にちゃんとやっていかなければいけないことは何なのかと、後でやれる範囲は何なのか、これを災害規模別に作っておかなければいけないと思っています。

【濱田主査】

 ほかにご発言どうでしょうか。

 なければ、いいですか、これで委員会を終了したいと考えます。

 2回にわたって長い間、貴重なお話を伺いましてありがとうございました。これだけの人が集まっているというのはあまりないと思いますので、いろいろなご意見が出て、大変私自身も勉強になりました。これを次のステップにつなげていきたいと思います。

【事務局(富田)】

 それでは、最後に事務局のからご連絡を申し上げます。

 次回の本委員会は、8月13日の13時30分から17時まで開催する予定でございます。よろしくお願いいたします。 ありがとうございました。

以上

 

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(研究開発局地震・防災研究課)