防災分野の研究開発に関する委員会(第44回) 議事要旨

1.日時

平成19年11月29日(木曜日) 13時30分~16時

2.場所

三田共用会議所 第三特別会議室

3.議題

  1. 今後の防災科学技術の研究開発の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 土岐主査、天野委員、荒卷委員、上田委員、碓井委員、壁谷澤委員、吉川委員、国崎委員、寶委員、田島委員、田中委員、中尾委員、山岡委員

文部科学省

 増子地震・防災研究課長、渡邉防災科学技術推進室長 他

5.議事要旨

【事務局】
 委員会を開会させていただきたいと思います。
 本日は、委員21名中、14名にご出席していただく予定でございます。過半数に達しておりますので、定足数に達していることをご報告させていただきます(最終的に13名出席)。
 配付資料の確認をいたします。
 ‐配付資料確認‐

 それでは、以降の議事は土岐先生に進行をお願いいたします。

議題(1) 今後の防災科学技術の研究開発の在り方について

【土岐主査】
 それでは代わりまして、議事の進行を務めさせていただきます。ただいまご確認いただいた資料の一番表に議事次第がございます。ご覧いただきますように、本日は「その他」を含めて議題は2つでございます。言うなれば、案件は一つということかと思います。
 議論の中身は資料44‐1、あるいは44‐2に示されておりますが、これは一遍にではなく、切って議論することになると思いますが、とりあえず最初のところのご説明をお願いします。

【事務局】
 事務局よりご説明いたします。
 前回より、本件に関する議論を行っておりますけれども、国、あるいは文部科学省において研究開発を行う上で、実際の防災対策に役立つということを考えていかなければならないのではないか、という視点の下、これから実施していく主な研究開発施策につきまして、事務局からも前回の議論を基に資料を提供しながら、先生方のご意見を賜りたいと考えているところでございます。
 前回、独法の整理合理化計画等の話もいたしましたけれども、社会情勢等も踏まえまして、今後の研究開発の在り方について検討していただければと思っております。
 本日は、前回いただいたご意見をまとめまして、文部科学省が研究開発を行う必要性、位置付け等について、資料等を提供させていただきまして、基本的な考え方について議論いただければと思っているところでございます。

【土岐主査】
 何かご質問はございますでしょうか。
 それでは、資料44‐1について説明をお願いします。

【事務局】
 ‐資料44‐1に基づき説明‐

【土岐主査】
 ありがとうございました。
 議論の中身を整理していただいたもので、議事録のようなものですよね。これをもう少し進めた議論を頂戴する、ということだと思います。この資料の中で、そうではなかったのではないか、これは違う、という点はお伺いした方がいいと思いますが、議論については、ぜひ言いたいということであればやぶさかではありませんが、いかがでしょうか。

【田中委員】
 言わずもがなのことで恐縮ですが、1の2つ目の○(丸)に「防災」は、とあるのですが、後の議論を考えてもこれは「防災研究」であるし、もう少し議論した方がいいのではないかと。文言上、いくら何でも「防災」ではないだろうと。

【土岐主査】
 後の議論になるかも知れませんが、研究だけではないでしょうね。防災教育も考えられる。ここにある「防災」というのは、非常に幅広い範囲だと思うのですが。特に、テーマによれば「防災研究」と書いた方がいいものがあるかも知れませんが、一般的には「防災」という広い意味で書かれていて具合が悪いでしょうか。

【田中委員】
 あえてこだわりませんが、住宅の耐震も防災ですよね。それら全てが民間では担えない、という表現とつながると、文書が外へ出て行く際に引っかかるというだけなんです。中では土岐先生がおっしゃった趣旨であることは理解していると思いますが。

【事務局】
 事務局でまとめる際に言葉が足りなかったところがあるかも知れませんが、今後まとめていく際に田中先生の視点にも配慮させていただきます。

【土岐主査】
 これは議事録として残るのですか。

【事務局】
 これでもって方向性が決まるものではなく、事務局で整理した資料で、即何かをやらなければならないものでもなく、参考的な位置付けですので、特段問題はなかろうかと思います。

【土岐主査】
 「防災」という言葉が出てきて、私も読んだ瞬間考えました。もうちょっと幅広かなと思って治めたのですが、今の話、ご検討ください。今日のところは、全体の話を理解する上でのこととして、了解しましょう。
 他に何かございませんでしょうか。よろしければ、この中身ついては議論をいただくことになると思いますので、次へ進みましょう。

【事務局】
 ‐資料44‐2の1に基づき説明‐

【土岐主査】
 これも、前回の議論に基づいての話ですので、ただ今行われた説明とも強い関連があると思いますね。何かお気づきの点はございましょうか。
 今後、ゴシックで書いてあるところが、ご意見をいただきながら変わっていくということかと思います。
 2ページ目の長期戦略指針「イノベーション25」とありますよね。括弧で括ってある下から3行目に「社会基盤」とあります。私が、とある原稿を書くにあたって「社会基盤」という言葉の定義を広辞苑で調べると、ないんですよ。国語辞典にもない。英語ではinfrastructureと言いますよね。infrastructureで調べると、下部組織、下部構造としか出てこない。どうやら社会基盤という言葉は、まだ日本では認知されていないというか、言葉として人格を持っていないようです。もちろん、社会資本というのはありますよ。これはれっきとした言葉で、我々が言ういわゆるインフラですよね。広辞苑の第6版が1月に出るそうですが、そこには入ってくるかもしれませんね。新しい言葉が1万語程入るというから。どうも、我々の社会だけで社会資本を勝手に社会基盤に置き換えているかもしれない。大学でも、特に大学院になると、社会基盤という名前がいっぱい付いている。東京大学をはじめ、いろんな大学が社会基盤と付けている。ですから、社会基盤と書いてよいか、少し気になっているんです。
 ついでに余談ですが、社会基盤という言葉がないのであれば、定義しませんかというペーパーを書いているんです。社会資本のことを社会基盤と言っているのだけれど、社会資本はいわゆるインフラでいいのだけれど、社会基盤となると、社会を構成する基盤でないといけない。そうすると、いわゆる社会資本だけが社会を構成する大元ですかと。私は違うと思っている。我田引水と言われるかもしれませんが、文化遺産のような、先人の精神活動に基づくものだって重要な社会基盤ではないかと。もちろん、道路や鉄道等、物質活動に関するものも当然社会基盤ですが。ですから、私は社会基盤として、物質的活動、精神的活動両方に関するものを社会基盤として定義しようと提案しているのです。
 いかがでしょうか。3ページの2以降でご意見を頂戴すれば、また上に繰り上がってくることですので、先にやりましょうか。

【事務局】
 今までのところは導入部分でしたので、これからそういった背景の下、ご意見をいただきたいということですので、先に進みたいと思います。
 ‐資料44‐2の2に基づき説明‐

【土岐主査】
 今度は、重要な視点を明らかにしようということで、非常に分かりやすい議論だと思いますが、いかがでしょうか。例えば、民間に任せることはできない、と言い切っていいのかというような議論ですね。あるいは、社会に対してどういう説明をするのがいいのかと。あるいは、教育には文部科学省が近い、教育というのは初等教育から高等教育まで含めてのことだと思いますが、場合によっては社会教育も入ってくるかもしれませんが、これを防災の問題と結び付けられないか、ということだと思います。そういった重要な、大きな視点、目標ですよね。それをこれから掲げようということだと思いますが、いかがでしょうか。次の3では、「文部科学省が重点的に取り組むべき課題」が出てくるわけですが、課題を束ねた、もう一段高いものがこの視点だと思いますね。ひょっとしたら目標という言葉が近いのかもしれませんが。ものによっては、次の取り組むべき課題に入るものがあってもいいと思いますが、いかがでしょうか。

【天野委員】
 ただ一人の民間なので、発言しないといけないかと思いまして言わせていただきます。
 「民間にはできない」という意見がありますが、実際の状況で言わせていただきますと、現在、社会基盤施設の工事発注に対しては、設計施工方式や性能設計方式等が採用されるようになってきており、設計荷重等も提案できるようになっています。ですので、ゼネコン系、特に研究開発機能を持ったゼネコンでは、こういう災害の評価等は、かなり力を入れてやっています。入力地震動の評価のためのデータベースですとか、地震・水害・火災などによる被害の評価ですとか、被害を減じるための対策とかは、かなりポテンシャルは高いと思います。ただし、その評価結果から生じるリスクを考えると、この結果を絶対値の評価としてお使いいただくことは、民間からは申し上げられないですね。あくまで、予測ですとか、事前にこのような被害が考えられるのでこういうレベルの対策を立てましょうという防災・減災計画のストーリー作りのためにはお使いいただいています。例えば、都市型の水害を予測するために、下水道と地表面や河川を連携させた予測システムを持っていまして、幸いにも非常に高い評価を得ています。防災科学技術研究所から、雨が降った時に、そのシステムで解析した結果を予報と一緒に出したいという申し出があったんですが、それはお断りしました。というのは、やはりこれはリスクというか、補償問題が絡みますので、民間ではとてもできることではないんです。ですけれども、事前にある地方自治体のところでどういう雨が降ったらどういう洪水が予測される、ということはかなり精査できるんですね。ですから、民間には任せられないという中身が、ポテンシャル的なことではなくて、結果の使い方ではないかという気がしています。

【土岐主査】
 そうですよね。
 天野委員がおっしゃったように、ポテンシャルという意味においては、民間にはできないということは間違っていると思います。その結果をいかに使うか、そこのところでは限界があるということだと思いますね。
 天野委員は鹿島建設の方ですが、先般お亡くなりになった小堀先生は超高層の建物の制振構造の世界の第一人者であったし、彼が旗振り役でやってきたわけですよね。なおかつ、大学にいるときもやっておられましたが、むしろ会社に行かれてから強力にやられている、日本だけではなくて世界でもですよ。学術・研究においては、明らかに民間においても、国よりも、大学よりも強く推進し得る立場の人もいるし、現にやっているということもありますので、制振構造についても、これを使いなさい、と国として言うかどうかは別の話なんですが、少し表現には気を付けた方がいいかもしれませんね。

【天野委員】
 大大特の成果を見せていただいた時に非常にすばらしいと思ったのですが、皆さんがおやりになっていることは、特に防災系の成果は住民の方にお知らせするときに、身近な事象を定量化して具体的にしないと分かってもらえないんですね。データを取る範囲が、例えば橋にしても、皆さんがなさっているのはせいぜい国土交通省が管理しているレベルの橋のデータしか入っていなかったんです。これは質問して確認させていただきました。現実に、地方自治体の地域防災計画に落とし込む時には、県・市町村レベルの管理の橋くらいまで入らないと、やっぱり現実は見えてこないんですね。
 定量化するということは、非常に細かくて、膨大なマンパワーがかかる話なので、ここまでやって実務に結びつけるというか、民間の方に分かっていただくということをやるためには、どうしてもある意味、民間の力が必要になってくるのではないかなという気がするんですけれども。

【土岐主査】
 私自身は全く異論ございません。
 またしても天野委員の尻馬に乗るような形で、先ほど引き合いに出しました小堀先生なんですが、小堀先生はそういうハードの専門家中の専門家でありながら、防災に関する研究の蓄積がこんなにたくさんあるのに社会の人々が活用しない、一体なぜなんだ、これは非常に歯がゆいという思いで、私も引っ張りこまれまして、先般お亡くなりになった廣井先生、日本女子大学の石川先生、小堀先生を入れた4人でもって「災害観の文明論的考察」という研究を4~5年かかってやりました。なぜ、一般の社会の人々が、これだけたくさんの蓄積があるものを使わない、我々も議論を重ねましたけれども、どうやら日本人の災害観ですね、天災、ある種の天命だと、諦観、諦めですよね、そういうところに根ざしているのではないかという議論まで結局来てしまいましたけれども。そういう話も関わってくるんですよね。教育というと誤解を受けますが、もっと広い意味での教育ですが、そういうことをもっとやらなければいけないと思っているんです。
 ちょっと演説してしまっていますが、全体に関わることなのでお許し願いたいのですが、文部科学省なり他の役所にしても、あるいは独立行政法人にしても、防災に係る技術のところは一生懸命やっているわけですよね。地震観測やります、あるいはE‐ディフェンスを使ってどんな建物がいいかをやります、それは技術や研究に関わる人達が自分達の世界で一生懸命やっているわけで、それをどうやって一般のところに使ってもらうか、そこのところまでセットで研究しているか、となってくると、私は必ずしもやりきってはいないと思うんですよ。例えば地震観測をやる、地震観測の研究者が一般の人々にどうやって活用してもらうか、あるいは自分がしなくても誰がどういうチャネルを通したらそれが伝わるのか考えているか。あるいは、E‐ディフェンスを使って、こうやったら木造家屋が安全になるということを研究する、それはいい。それをどうやって一般の人々に理解をしてもらうか。活用してもらわないと意味がないんですよ。活用してもらうところまでセットで考えているだろうかということになると、多分私はしていないと思う。大変失礼ながら。できないと思うんですよ、一緒には。ということは、何を言おうとしているかと言いますと、そういう風に研究や観測のような基礎的なことをやるのは絶対に必要です。それは否定しませんが、それを今度は一般の人々に伝え、活用するというそこのチャネルを誰かが作らなくちゃいけない。それが今できていないんですよ。だから先ほど小堀先生の例を出しましたが、ああいう民間の人がどうやってそれを伝えたらいいんだろうか、たった3~4人の人間でできるわけはないんですよ、それでもやらざるを得ないもどかしさがある。そこのところをどうするのかということをよく考えないと、研究や技術の成果がたまるだけで使い道がなくなる。死の谷ってあるじゃないですか。死の谷の傍らにはどんどん蓄積されるが、もう一方の使う側に架ける橋がないわけですよ。省庁なんかはもっと具体的なところにある可能性があるんです。それは、先端研究なんかはですね、自己満足でもいいから研究をしておれば、それを取りに来る人がいるわけですよ。事業化したり利益に繋がる人達が。それはそちらから橋を架けてやってくれるわけですよ。それでも十分ではないから、かつては文部科学省なんかは大学の基礎的な研究成果を社会に活用するためにTLOを作りましたよね。ああいう、企業化されやすい分野でもTLOを国の名において作らなければならなかったわけですよ。防災のような問題は、利益を生まないから誰も取りに来るはずがない。私はいつも言っていますが、防災の問題はディフェンスオンリーなんですよ。アメリカンフットボールのオフェンスの部分がないわけですよ。先端科学の分野ですらTLOを作らなければならなかったのに、防災に関してはTLOに相当するものがないじゃないかと。それが私の年来の不満なわけで、こういう場がそれを真剣に考えないと、いかに研究を推進すべきか、いかに技術開発を進めるべきかということだけをやっているのでは、この場の本当の使命を果たしていないじゃないかと思うわけですよ。ですから、新しい視点を掲げようというのであれば、そこのところを頭に置いておかないと、自己満足に終わってしまう、死の谷の一方だけをどんどん高くして、対岸に渡すべきものが何もない。そういう種類のことをこの場で議論して、少しでもそっちを向いてくると、この委員会の意義が高まってくるのではないかと思います。

【国崎委員】
 今の主査のご意見の中で、個人的な意見なんですが、私は具体的に生活者の視点での防災対策という形で、一般市民の方に防災の大切さを伝えている立場なんですけれども、例えばこういった研究成果なり技術に関して、いかに一般市民の方が理解しやすいような形に換えて伝えるかということをやっているんですが、例えばどこかの会社なり大学に属して防災の講演をしている人ならばいいのですが、防災の専門家の世界で言われておりますのは、防災だけでは生きていくことはできないということなんですね。というのは、講演会の中でも割とボランティア的なところがあって、なかなか高い講演費用をもらうことができなかったりとか、定期的に講演依頼が来ないということもありますから、なかなか防災の専門家も国の技術や研究成果を上手く伝えきれないというところもあるんですね。生計が成り立たないということもあります。
 それでは、民間の防災の専門家に頼るのではなくて、講演をする際に、国や自治体等で防災担当の方が、これまでの研究成果を国民の方が理解しやすいような形に変換して伝えていければいいのではないかということなんですが、現実には自治体の防災担当の防災意識に委ねられているところがありまして、頑張っている自治体は積極的に行っていますが、意識格差というか、なかなかそれができていない気がします。私達も奔走し、どうやったら生活者、一般市民の方に防災意識を高めてもらうかというところもあるんですが、そういった現状を踏まえてですね、私達のような防災の講演をしている者として、いかに国の技術、開発したものを伝えるかということを念頭に置きながら、一方では防災一本では生計が成り立たないというところもありまして、かといってそれを自治体に求めるにも異動が激しいという問題もありまして、例えば○○(丸丸)県の○○(丸丸)さんにずっとお願いしていこうということであっても、実はもう環境に移りましたというようなことで、自治体の方でもなかなかエキスパートが育たないということも聞いております。そういったところから、ジレンマというか、いつまでたっても地域に根付いていかないという問題があるのではないかと思いました。

【土岐主査】
 今の国崎委員のご意見に関して、結局は私が言っているようにディフェンスだからなんですよ。オフェンスではそうはならない。

【寶委員】
 防災という言葉を使った時に、大学で防災をやっていますと一般の方に言うとですね、防災って研究開発なんですか、と言われることが時々あるんですね。一般の人は発災後の緊急対応や復旧・復興が防災だと思っている人が多くてですね、研究開発ではないと思っている。
 それともう一つは、災害というものは台風にしても地震にしても、防げないものだと。私が防災研究所にいますと言った時に、大学の教授ですら、台風や地震が防げるわけがないじゃないかと言う。説明するのは、そういうハザードは防げないけれども、それによって起こるディザスターは防げるし軽減できると。台風が来れば逃げれば、あるいは無人島に台風が来たってディザスターはないんですとか、そういう言い方をして防いだり軽減したりできるんですと言うんですけれども、そのことがあまり分かってもらえてないということがあるんですね。
 時々医学の世界と例えて話をするんですけど、緊急対応とか復旧・復興は臨床医学といいますか、病気になったりけがをしてから医者へ行くわけです。災害についても、起こってからのことが防災だと思っている人が多いんですが、最近は予防医学がかなり強調されていますよね。予防医学の前にも、どうしてそういう病気が起こるか、どうしたら防げるかという基礎医学があって、予防医学に結びつくわけなんですね。災害については、もちろん基礎研究があって、予測・予防研究があるわけです。ですから、基礎医学と防災の基礎研究、予防医学と予測・予防研究ということになります。メカニズムが分かってこそ、予測ができるわけですから。それと臨床医学と緊急対応、復旧・復興、というアナロジーがあると思うんですよね。
 予防研究は、地震なんてどうせ予測できない、台風の進路すら予測できないじゃないか、と信用されていないことが一つにはあると思うんですよね。ただ、基礎研究をやることによって、だんだん予防研究の精度が上がってきているということをもう少し知ってもらって、我々がやっている基礎研究は基礎医学と同じようにメカニズムを研究していて、それが予防医学のような、予防災害研究につながるのだと。そうすると被災してから大きなお金を払うのではなく、被災するまでに小さなコストで災害を防げるんですよ、という宣伝が上手くできていないのではないかなと思うんです。

【土岐主査】
 今のお二人の委員のご意見、結局は研究や基礎技術に関わる部分とそれを本来受け取る側、享受すべき側とのギャップが大きいということですね。お互いの理解がない。私が申し上げたのも同じことだと思いますが。そこのところがどうも滑らかでない。それがここにある重要な視点でしょうね。そこをどうきちんとするかが次なる議題だとは思うんですが、視点とすればそこの谷が深いということなんでしょうね。他の分野に比べてもなお、この分野の特徴、宿命というところもあって。

【事務局】
 次のテーマとしている「文部科学省が重点的に取り組むべき課題」においても、そういうところが重要だと思ってまとめておりますので、つながってくる話として進めながら議論いただければと思います。
 ‐資料44‐2の3に基づき説明‐

【土岐主査】
 今のご説明でお分かりのように、少し先まで議論していたようであります。いずれにしましても4ページに書いてあるように、基盤整備の重要性、これは色々と議論してきたところです。あと2つあるのは、発信者側に問題があるのではないか、もう一つは受け手側にも問題があるのではないか、結局この3つの点に整理して議論しましょうというのが、事務局が用意された資料だと思います。
 基盤整備のところは、これまでも議論されてきたところですので、結局はその次の発信者側、受信者側の問題はどうなのか、ということだと思いますね。ぜひ、ご発言いただきたいと思います。

【寶委員】
 先ほど申し上げたことと関連するんですけれども、ここの文面でも「災害そのものを理解する」と下線が引いてあるのですが、この災害が災害事象のことを指しているのか、実際の被害ですとか損害ですとか、それを指すのか、被害・損害を受ける過程も災害なので、それを理解するところまで入っているかどうかが分からないんですね。ですから、「災害を理解するための研究」というところは、例えばもう少し丁寧に書いて、「災害を理解し、損害・被害を受けないための研究」ですね。教育の方も、「教育・普及啓発」と言うんですけれども、何のためかと言えば「災害を理解し、損害・被害を受けないための教育・普及啓発」であると書いた方が分かりやすいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【事務局】
 これはまだラフなまとめ方をしておりますので、自然災害の状況も理解としては必要ですし、建物の被害等も分けて考えることが必要だと思います。また、国民の側に立ってみれば、どういう災害が起こって、実際に自らがどういう被害に遭うかということを分けた形での理解をしていくことは当然重要だと思っておりますので、分けた形で必要な研究開発があればそれに沿った形で進めていくべきものであると思っております。

【寶委員】
 「災害を理解するための研究」とだけ書いてあるのであれば、予算要求する時にしても、これは今までにやっているではないか、基礎研究でやっているではないか、と言われるので、「災害を理解し、被害を受けないための研究」とすればもっと説得力が出るのかなと。

【土岐主査】
 今はまだ議論のための材料として出しているので、表に出すときにはぜひ忘れないようにしてください。

【事務局】
 今の寶先生のご意見は、まさに災害のメカニズムだけではなくて、被害を受けないための研究、そこにもきちんと重点を置いていくべきだということで当方としても理解いたしましたので、その方向で考えていきたいと思います。

【碓井委員】
 警察が今まで検挙、犯罪が起こってからの検挙率を上げるということが大きな課題だったんですけど、最近は犯罪を未然に防ぐという形に変わってきたんですね。それはなぜかというと、アメリカ等で、マップを使って地域にどのような犯罪のリスクがあるのかということを分かりやすく伝えることによって、住民が自ら防犯意識を持つようになる。クライムアナリシスというGISとも絡めた専門のプログラムがあるんですけれども、GISはそういう部分がありますので、先ほど先生がおっしゃった架け橋のところに、国民がまず分かりやすいリスク情報なり何なりを提供する。そして、自分の意見を行政に言うことによって、それが受け入れられる。どういうことかと言いますと、横浜だったと思うんですが、揺れやすさ等を示すハザードマップがあったんですよね。それを見た住民が、自分の家は危ない、それで行政に耐震化をしてくれと言い、行政が補助金を出す。それからそのマップが見直されていって、色々なマップが作られるようになったんですけれども、これは一つの大きな流れだと思うんですよね。国民が分かりやすい媒体をベースにして架け橋を作る。その時にマップというのはやはり重要ではないかと思っています。

【土岐主査】
 それはハザードマップという形で、いろんな自治体が詳細なものを出していますよね。中には問題にならないのかと心配になるくらい詳細なものを。それではだめだということですか。

【碓井委員】
 マップを出しても、それを有効に利活用する仕組みを地域に作っていかないとだめだと。

【土岐主査】
 今思い出しましたが、円山川の水害がありましたよね。あの時に、水害で被災をした人がテレビのインタビューに答えて曰く、「ハザードマップが行政から出ていて、我々のところが危ないことは知っていた。でもまさか、それが本当に起こるとは思わなかった」と。私はあれを見て、ああこれなんだと思いました、防災の問題の難しさは。皆、自分には起こらないと思っているんですよ。私は講演で言います。神戸の地震で6千数百人が亡くなったが、5千人の人は10秒間で命を失っているんだと。5千人のうち誰一人として、翌朝自分が死んでいるかもしれないと思った人はいない。あなた方は今度はそのうちの一人かもしれませんよ、と脅かしますが、あまり効きませんね、最近は。でも本当にそこなんですよ。結局は、自分は何とか逃れられるという下心を持っているんですよ。くどいようですが、小堀先生の災害観の云々、というのはそこに行き着くんですよ。日本人の諦めの問題、あるいは天災の問題。そこを何とか克服しないと、今の話は乗り越えられないですよ。ハザードマップはたくさん作っているんです。

【碓井委員】
 そうです。ただ、残念ながらそれが理解できていない。

【土岐主査】
 理解できていても、自分は違うだろうと思っている。浅はかなんです。

【田中委員】
 浅はかというと厳しいかも知れませんが、今2つ話があって、一つは分かりやすさ。実はこれは、誰が分かりやすさを判定してきたのか、ということだと思うんですね。発信者側が歩み寄って分かりやすさということを言ってきたんだと思うんですけれども、それは相当難しい。逆に言うと、普通の人がどういう情報を欲しいと思っているのか、とういところの研究がここではなされてきていないと断言されていますので、旧廣井軍団としては厳しい思いをしながら見ているんですけれども、確かにそこが弱いことは弱い。
 そういう中で、実は一つ気になっていたのは、典型的には被害想定に出てくるんですが、情報発信者側の地震の姿から、揺れから耐震から、さては経済波及まで被害想定をしているんですが、その過程で様々な不連続が起きてしまうんです。実は我々がやっている研究の間にも、きちんとした受け渡しなり連携が取れていないのではないかと。そのことが利用者側から見ると、最後に非常に使いにくい情報になっているのではないか、という気もしていて、これは基礎研究を議論する一つの場でもあると思っているので、基礎研究の仕組みが少しそういうものをはっきりと明記しておかないといけないのではないかという気がしています。
 最後に、主査に逆らうようでありますけれども、多くのこういう場での議論を聞いていると、防災研究者と一般住民、一般住民は理解しようとしない。言葉は悪いけれども非合理、不合理であると言っているわけですけれども、彼らには彼らの合理があるんですよね。そこが、知恵の量ではなくて、彼らにそうする合理的な理由があることをもう少しきっちりと我々も理解し、あるいはもう少し深めるべきだと思います。

【中尾委員】
 基本的には同じことなのかも知れないのですが、簡単に言って抜けているのは人の研究が足りないと思います。つまり、諦めとかいう話が先ほど出ましたが、それをきちんと専門的に研究した例は、この中では多分どなたもいらっしゃらない。

【土岐主査】
 なくはないです。先ほど申し上げましたように廣井先生はその専門家で、私も一緒にやってきました。

【中尾委員】
 極端に言わないとあれですが、人間の研究、社会の研究が簡単に言って欠落しているからだと思います。基礎研究というのは、基本的にはほとんど理系の研究のことを言っていて、人間の心がどう動くかという基礎研究や、あるいは、例えばE‐ディフェンスができた時に、それがなぜ社会に認知されないのか、ということを社会システムとして研究する、あるいは施策を実施した時に、それを人々がどう理解し、どの程度理解する等、今まで施策が出たときの人々の理解を歴史的に研究するとか、社会的な人間の研究の蓄積が非常に乏しいということが一番大きいと思います。そういう基礎研究に、今特に重点を置くということが必要なのではないかと思います。

【土岐主査】
 今日は林委員がいらっしゃいませんが、彼がいれば意見をおっしゃるでしょうね。

【田中委員】
 故廣井軍団としてもなかなか難しいということがあって、あと一つは、我々が我々だけでやっているというのは、またそこで分断されてしまっているんですね。やはりそこは中尾先生なり土岐先生なり、そこときちんとコミュニケーションしながら人間研究ができるか、ということはとても大切なことであって、典型的には河川情報の水位の表現を変えた時にですね、その水位を決定するということは技術的な分野からできるんですね。その時に我々として2時間時間がある。つまり避難を意思決定するまでに2時間かかっているんだから、そこをなんとかする。でも技術論的にはできない。ではどうするかというと、教育も含めて次のステップが必要だということになる。どこかの領域が弱いということを、もう少しお互い上手く議論できるような研究スタイルがとても大事なのではないか。林さんと違う、ちょっと穏やかなコメントですが。

【土岐主査】
 こういう議論は激烈な方が面白いんですよ。いずれどこかに落ち着くんだから。

【中尾委員】
 今おっしゃったのは、先端性と絡むと思うんですよ。防災の分野もそうですが、一般的に科学者の自主的なテーマの設定とかですね、そういうのは往々にして先端性を狙います。先端性を狙うということは、自分の得意な専門分野を詰めていくわけですね。そうすると、いい論文になるとか、世界で初めてとか、賞をもらえるとか、評価されるとか、研究者の性みたいなものがあって。ですから、先端性と妥当性、と言いますかね、いろんなバランスが取れているとかですね、それは先端性と相容れないところがあって、そういうのが今おっしゃった一緒に協同しながらということを阻害している一つの要因だろうと思うんですよ。だから、問題を設定した時に、先端性で行くのではなく、妥当性で評価するということをしないとなかなかそこは埋まらないんじゃないかという気がします。

【山岡委員】
 仕組みを研究する側は、することをやって、そのうち一般向けに講演してくださいということになって、その部分になると完全に素人ですね。できるだけ分かりやすくして、聞いている方が面白いというところまではできるけれども。それを今おっしゃったように、具体的にどういう戦略をとるかということは、私達は実務部隊なのでやっていない、ということはよくある。
 そういうことが分かる人が周りにいるかというと、例えば大学では人文系・社会系の学部はあるんだけれども、そういう先生は私はこれをやります、と言って、ある意味で防災に関係する人達が非常に少ないということが事実であると。聞くとですね、防災は飯の種にならないと言われてですね、結局は理学・工学というのは非常に人間が多くてですね、石を投げれば当たるとは言いませんけれども、お互いに議論する相手はたくさんいるんです。では、それをどう使えるかと言った瞬間に、あまり人文の方が防災に興味を持ってくれない、モーションをかけてもなかなかレスポンスがないということも多々あってですね、例えば心理学科ですとか社会学科ですと10人先生がいらっしゃっても、本当にいるかいないかくらいだと思うんですよ。田中先生くらいなので。それが現実であると。もう少し、受容というか、そういう分野で学問が発達してくると、もう少し具体的なディスカッションができるようになるのかなと。こういう場に出てくると、もちろん議論できる方が多々いらっしゃるんですけれど、それぞれの地域に戻っていくと多くはいないのが現状で、実際の自治体の委員会等でも、工学や理学の先生が中心になっているのが現状であると思います。

【土岐主査】
 それは、自分達は科学的な、先端的なところをやらざるを得ないため、一般の人々まで届かない、あるいは近くの人が目を向けてくれないということは事実だとは思うんですよ。私が思うのは、山岡先生に10のパワーがあれば、9は本来の業務でも、1だけは一般の人に向けて、私達はこういうことをやっている、こうやれば役に立つ、というメッセージを出すことに割けないか、ということなんです。私自身はハードのがちがちの人間なんですよ。でも、私は自分ではやっているつもりなんですよ。一般の人々にどうやって分かってもらうか。少し脱線しますが、私は文化財の災害の問題をやっているのですが、そんなもの歴史書を読めと言ったって誰も読むわけがない。結局、自分達が読んで、克明なデータベースを作って、それに基づいてパソコンで遊びながら歴史が頭に入る、ビジュアルなアニメーションで。私自身はそうやっているんです。本来の仕事ではないが、結果を皆に理解してもらわないと一文の値打ちもない。仕事の中身としてはまさに情報処理の人の仕事なんですよ。情報処理の人はそんなことはやってくれないから、自分でやらざるを得ない。そうすると、これは面白い、情報処理で特許を取ったらどうですか、と全く違う分野で特許の話が出たりするわけです。先ほどから色々な議論がありますが、やはり少しくらいは自分でもしなければいけないと思うんですよ。誰かがやってくれないという苦情を言わないで、先ほど橋の話をしましたが、誰かが橋を架けるのを待っているのではなくて、橋を架けるにはまず一本の細い糸を誰かが向こう側へ投げて、それに基づいてだんだんと太くしていくわけですよね。その細い糸を架けるくらいのことは、めいめい自分で少しくらいやってほしいと思うんです。それをやらないといつまで経っても解決しないと思っているんです。

【天野委員】
 難しいことは分からないのですが、多分災害時に要求される危機管理に関する学問というのはある程度はあると思うんです。どこにあるかというと、自衛隊なんですよ。というのは、最近市町村レベルで防災の教育が成功している例がぽつぽつと出始めているんですね。それはどういう形で行われているかというと、自衛隊を定年退官された方が防災の市民教育の指揮官になって、小さいコンサルタントを立ち上げて、その地方自治体の教育を継続的にやられている。そういう方が私の知っている範囲でお二人あって、どちらの方もおっしゃったのが、防災教育というのは軍事教育と同じで、戦略性と継続性なんだと。割と日本では軍事的なところには触れてはいけないようなところがあると思うんですが、多分自衛隊にはそういう危機管理のための理論がある程度ちゃんとあって、相手が国か武器か自然かという違いがあると思うんですけれども。昔からロールプレイングゲームってありますよね。まだ小さな動きだと思うんですけれども、そういう方達が地元にお帰りになって、自分がどこの役に立つかを考えた時に、地域の防災教育だとお気づきになって始められているところがあります。なので、軍事とは言いませんが、そちらを少し参考にされるといいのではないかと思います。

【荒卷委員】
 自治体の立場で発言させていただきたいんですけれども、分かりやすく発信するという部分については、自治体としても横浜の例の地震マップですね、あるいは地震マップをさらに噛み砕いて地域単位で加工できるようにインターネットでも公表してやっているんですけれども、なかなか我々が発信していても市民レベルから取りに来ていただけないというのが実態なんですね。取りに来ていただけないために広報よこはまという全戸配付の広報誌にも、色々とこういったもので情報提供しますよ、ということをお知らせするんですけれども、つまるところ市民の方々にお聞きすると、広報誌はつまらないので見ない、ということが実態なんですね。ですから、パンフレット類についてもしっかりしたものを、「危機に備えて」というものを作っているんですね。まさしく今天野先生がおっしゃられたとおり、軍事イコール危機管理という鉄則になってまいりますよね。そういったことも踏まえてパンフレット類もお配りするんですけれども、イベント等でお配りしてもほとんどそのままゴミ箱行きと。先ほど、やはり人の研究という部分では、どう受け手側にアプローチしていくのが一番いいのかということは、我々も非常に興味を持っています。
 それと一方でですね、資料の方に戻らせていただくと、3ページのところでですね、今後の在り方を検討する上での重要な視点の中で、「防災に関し万全の措置を講ずる責務が国にあることは論を待たない」ということは非常によく分かるんです。分かるんですが、その責務は国のみならず自治体、国民にもあるんじゃないかと。当然、万全の措置ということを我々としても言いたいんですけれども、やはりそこには理解を得るとか、同意を得るとかいう問題があって、諸般の事情でここまではできないということも結構あるんじゃないかなと思うんです。自助・共助の視点の中で、それを全体を束ねる国という視点では当然ありますし、また自治体としてもしっかりとした対応を取っていきたいと常々思っておりますので、そのような視点で研究をいただければありがたいと思っております。

【土岐主査】
 研究とおっしゃいましたが、大学の研究だけではなくて防災に係るめいめいが、という意味ですよね。

【国崎委員】
 先ほど天野委員のご紹介で、自衛隊のOBの方を活用しているというお話があったのですが、そういったOBの方の活用も含めて、パイプ役の人を作っていく必要があるのではないかと思いますね。情報伝達者の育成と活動をバックアップするようなシステムを構築していくことが必要なんではないかと思ったのと、それからもう一点、文部科学省の方にご理解いただきたい、再考していただきたいのが、教育現場における避難訓練の見直しなんですけれども、おそらく日本で防災教育を唯一されているのは学校で行われている避難訓練だと思うんですね。もちろん避難訓練以上のことをやっている学校も増えてきておりますけれども、意識のない学校ではまだまだ避難訓練が唯一の防災教育になっていると言っても過言ではないと思います。その避難訓練なんですけれども、全く応用の利かないマンネリ化した内容を、保育園、幼稚園から高校まで毎年繰り返しております。やっている方も受けている方も飽き飽きしています。全く応用が利かず、外に一歩出たらどうするのか。
 それから、揺れたら机の下に、と言いますけれども、起震車の上に今学校で使われている机を載せてみていただければお分かりだと思いますが、すぐ倒れます。倒れる机にどう潜ったらいいのかというところの実態ですね。本当にそれで子どもの命が守れるかどうかを検証して、推奨しているのかどうか。机がばたばたと倒れる状況、そして倒れた机が滑っていく中で、頭を守ろうとしても直撃されてしまうことを考えて、本当にこの避難訓練、防災教育でいいのかということを再考していただきたいと思います。
 それから、大人を教育するフィールドについてなんですけれども、愛知県の実例を申し上げますと、愛知県では5ヵ年にわたりまして、あいち防災カレッジというものがありました。災害時のボランティアを養成・育成することを目的として作られているんですが、残念ながら昨年度終わってしまいました。大変素晴らしい企画でして、日本の名だたる先生方、大学の先生や防災の専門家を集めて、長期間1年を通じて市民を教育していくというシステムだったんですが、そういった企画を他の自治体でもできるようにしていくということが大事なのと、国民側の防災をすることによるメリットをもう少し明らかにした方がいいと思うんですね。例えば、防災対策が上手く進まない理由の一つに、多くの方と話をしていく中で、一体いつ起こるか分からないものに対して、どれだけのお金を払えばどれだけの安全が確保できるかということが分からないので、今直面している生活の問題に関わらざるを得ない。まずお金の面で、対策を施しても本当に効を成すのかどうかという不明さがあるということも感じています。例えば、防災の大切さを訴えるためにはですね、生活者のメリットとして、防災カレッジを受講すれば何らかのメリットがある、ということにすれば、もう少し積極的に参加してくれる、また、家の耐震化をすればこういうメリットがありますというところを持っていくと、積極的に講じられるのではないかと思います。
 一つ、これはいい取組だなと思うのが免許なんですけれども、ゴールド免許ってありますよね。交通事故で車という財産であったり、乗っている人の生命を守るために、やはり交通マナーを守りましょうというところで、優良ドライバーにはゴールド免許を提供する。更新時に保険料が安くなったりとか、それから更新する時期が広がることで、いろいろとメリットを感じるわけですよね。防災に関しても、個人の財産や命を守ることに対して、積極的な住民には何らかのメリットを享受させられるようなことがあれば、メリットを受けられるならやってみようという方も出てくるのではないかと思いました。

【事務局】
 研究成果をちゃんと伝えて、その情報はデマではなく確からしい裏づけがあって、それを伝えば国民には理解してもらえるという流れなのかなということで、今後研究を進めていく中で、今までこういうことが不足しているという話がありましたけれども、それをつなげていく形で施策を打ち出していく必要があると思っており、今後進めていく方向性の上でいいご助言をいただいたと思っております。

【土岐主査】
 先ほどあいち防災カレッジとおっしゃったのは、研究者が人を集めて、専門的な話をして噛み砕いて理解させるということなんですね。

【国崎委員】
 県が主催しているものです。

【土岐主査】
 私が思うのは、受講した人達が自分の地域、日本で言えば町内会に帰って、そこの仲間に対して自分が勉強してきたことをこうだよと、こうしたら自分の命が助かるかもしれないよと、二段階でやらないと広がらないし、説得するのも難しいと思うんですよ。大学の先生なら、大学の先生からカレッジで受けようというレベルの人と、それをもう一段階噛み砕いてやらないと自分のものにしない人はやっぱりあると思うんですよ。その手間をかけないとなかなか行き渡らないと思うんです。どこかの行政でやっているのではないかと思うのですが、横浜はどうですか。ないですか。

【国崎委員】
 実はこのあいち防災カレッジは災害ボランティアを育成することを目的としておりまして、地域の防災リーダーが参加したりですとか、市町村の防災対策の担当の方が参加して、地元で知識を伝えようとされています。もちろん一般の方もいらっしゃるんですけれど、多くの方が知識を持ち帰り、自主防災組織なり、災害ボランティア組織から徐々に伝えていこうとされている成功例ではないかなと思います。

【土岐主査】
 あいち防災カレッジの受講者が、地域へ帰って伝えるべき人ですね。そういうことですよね。それはいいことだと思います。二段階でやらないとなかなか広まらないと思います。要するに地域の人々の代表の人が聞きに行って、自分達の言葉で解釈をして伝えないと。研究者が直接言ったってなかなか伝わりませんよね。

【荒卷委員】
 防災カレッジ的なことはやっていないんですが、横浜の場合は地域の防災リーダーを育てるために防災ライセンスという資格を付与しているんですね。地域防災拠点が横浜市内に、避難所ですけれども、そこには備蓄庫がございまして、454箇所、そこにはですね、各種の防災資機材がありますので、その防災資機材を住民自らが活用できるという形にするために、地域のリーダーとして育てて、その方々が中心となって、教育に携わるというシステムを作っています。ライセンスとしては現在、1,000名を超えております。

【土岐主査】
 多分、そういうものがあるところとないところでは、災害が起こった時に被害の度合いは違うような気がします。

【碓井委員】
 文部科学省なので、文部科学省がすぐできることを提案したいのですが、例えば学校教員の免許に関しては介護体験が義務付けられていますよね。先生になる人は皆介護施設へ行って体験しないといけない。それと同じことをやればいいですよね。要するに先生になる人に防災体験というか、ぼうさいカレッジなり何なりを受けることを義務付けるんですね。それを受けないことには免許状を取れない。やはり学校の先生の啓蒙は大事ではないかと思うんです。今までされたことはあるんですか、防災に関する実習とかを受けないと教員の免許状が取れないという。

【事務局】
 学校で防災訓練をやっていることを考えると、研修等において防災をやっていることは確かでございますが、学校の先生には防災以外にもたくさん求められているものがあるので、数が限られている中では難しいですね。

【碓井委員】
 先生になる卵ですね。免許を取る段階。

【事務局】
 免許を取る段階でもそういった観点は重要だと思いますが、どのくらい重要性をもってやられているかについては、専門家から見れば不足する部分もあるのかなと思っています。

【碓井委員】
 介護体験は受けないと免許を取れませんからね。

【事務局】
 世間的にそちらの方がより重要性が高いという判断でそうなっていると思うのですが、我々防災の関係者から見れば、国民の意識が防災に対してより高くなってもらうようにしなければという議論になると思います。逆に先生だけということでは、免許を与える側も説明しづらいと思うので、国民全体として防災の意識が高まっていくということも重要だと思います。

【碓井委員】
 幼い時から防災の意識だとか災害の意識を付けていかないと、やはり人はなかなか育たないんですね。その一環として、文部科学省ができることであればということですね。

【事務局】
 当課で防災教育支援に関する懇談会というものを開催しているところなんですが、学校教育サイドから見るとですね、一応メニューとしては用意してあって、ちゃんと教えることにはなっているということなんですけれども、そうすると先生方、学校、地方自治体の熱意によって取り組み方が違っているということが実際だと思うんです。なるべく広く防災に取り組んでほしいと考えておりますので、自治体なり先生なり、あるいは防災のリーダーなりの協力を得ながら、もしくはそういった方々の数を増やしながら、自主的に下から盛り上げていくことが重要だと思っております。それに対して、国としてとり得る施策があれば考えていきたいというのが実情でございます。一足飛びで、現時点で学校にあれをやれということはなかなか難しいと考えておりますので、周りの意識もだんだんと向上させていきながら進めていきたいというところでございます。

【荒卷委員】
 今の自治体の熱意という部分に関連して。横浜の場合は、学校単位に学校防災計画というものを、平成17年度までに全ての小中学校で制定してもらっているんですね。それを制定する一環で、先生に対する防災危機管理教育も充実させていきたいという調整を図っていったんですが、教職員団体との問題がありなかなか進まなくて、結局横浜では、教師になりたいという学生や社会人の方々を対象に教師塾というものをやっているんです。1年間、100名の方がですね。その中で防災教育も含んでいただいていると。18年度からやっているところであります。

【碓井委員】
 なった方よりも、なりたいという方に対してやることが重要ですよね。

【荒卷委員】
 教師塾を足掛かりとして、今後充実させていきたいという方向でおります。

【国崎委員】
 今の話のような卵の先生ではないですが、東京都では職員研修で職員10年目研修というのがあるんですね。国土交通省が一緒にやっているんですけれども、荒川の河川局の施設で、10年目を迎えた先生に防災学習をしているんですね。水害なり地震なりというところで2日間か3日間かけて、体験学習という形で起震車に乗ったり水害時の堤防を見たりとかしています。それが東京都だけなのか全国でやっているのかは分からないんですが、10年目を迎えるとそういう研修を受けないといけないというところは私自身が把握しております。

【寶委員】
 一般市民の方に防災意識を高めてもらうことと、それによって防災に関する研究開発が一般市民により広く強く認知されるためには、やはり住民の皆さん一人ひとりにインセンティブを持ってもらわないといけない。先ほどゴールド免許の話が出ましたけれども、ゴールド免許ですと車の保険料が安くなりますよね。そうすると5年間無事故でいようというインセンティブが高まるわけですね。例えば、防災ライセンスを持っている人とか、地域の防災リーダーとか、あるいは講習会やカレッジに5年続けて出たとかですね、地域の防災のイベントに5年続けて出た人は、例えばですよ、社会保険料が免除されるとかであれば、行こうかという気になりますよね。国民広く全般に行き渡るはずなんですね。ただその仕事自体は文科省の仕事ではなくて厚労省かどこかの仕事ですが、文科省については防災意識を高めるための政策に関する研究、どういう政策を出したら皆さんの防災意識が高まるか、防災に関する研究開発に関心を持ってもらえるか、という研究をプロモートしたらどうかなと思いますけどね。

【事務局】
 防災に関しては自然科学だけではなく、社会科学との融合が重要だと今の基本計画でも言われたところなので、今後はきちんとやっておくべきところだと思っております。

【土岐主査】
 災害の対策のインセンティブを引き起こすという意味では、例えば耐震補強をしたものについては税金を安くします、という話はあり得ますよね。ですけど、そういうものを広めていくとなると、税制の問題になってくるので、国家の体系に関わる問題になってくることもあるから、それはいいと思ったところで難しいということはあるでしょうね。寶先生のおっしゃることは大変賛成だし、試みてほしいとは思いますね。ただ実際には今言ったように難しいことがあるかもしれないけれど、そうでないと先ほどから渡邉さんの話を聞いていると一般の人々の意識が高まったらという話がたびたび出てくるんだけれども、放っておいたら高まらないので、高めることを国としても考えないと、私はできないと思うんですよ。できるかどうかは考えてほしいんですけれども、考えとしてはいいと思います。

【田中委員】
 補足的になりますけれども、そういう時は経済効果がきっちりと出ない限り成立しない話ですよね。これだけ国家財政にプラスになるからできる、とう議論が必ずあるはずなんですよね。こういう時になぜ経済学者が一切入ってこないのか、ということは、基礎研究としてお考えいただきたい、あるいは我々が考えるべきです。やはりなかなか例えば経済学者の人から見たら経済の分野に防災のテーマで研究費を申請しても通りにくい。やはりそこの仕組みは振興調整費という仕組みを使うのかどうかは分かりませんが、呼び水にしていかないとなかなか難しい。
 この前、防災オタクの話をさせていただいた時に、かつてAT&Tのベルラボで大口割引、大企業に大口割引をすることが経済的に妥当だ、という議論を経済学的にやるんですね。そういう仕組みをこういう場でも持っていかないと、ただ国の責務だとか必要性を言っている時にそれが200億なのか、300億なのか、500億なのかという議論の根拠にならないので、そこはちょっと詰められるといいな、と思っています。関心のある人はいることにはいる。
 あともう一つ、アメリカのFEMAが大学の教科書を作っていますよね。災害の。あれはなかなかよくできた教科書でしたけれども。災害経済学という教科書ができるかどうかは疑問ですけれども、そんなこともやっていますよね。

【土岐主査】
 災害の経済の問題については私は全くの門外漢ですが、被害予測をせざるを得ない立場に追い込まれると、一応の数字は弾くんですよね。その時に一番困るのは、災害が起こったことによる直接的な被害はなんとかなるわけですが、問題は間接被害なんですよね。間接被害になってくると、これだけ複雑な社会システムですから、いろんなリンケージがあって連関しているわけですよ。どれがどこまで影響するとか、影響の度合いも全く違う。1.0から0.01まで。そうなってくると、怪しげといってはいけませんが、分からなくなってくる。ですから、経済学者は私は入ってこないと思います。

【田中委員】
 例えばですね、発展途上国がどういう条件が揃うとテイクオフするか、という問題がありますよね。首都直下が起きたときに、いくらくらいの被害でどれくらいの条件がないならば、復興できて、それを超えるとできない、という理論モデルはできるはず。それは経済学的にも非常に面白い。そういう設定をしてあげれば。

【土岐主査】
 その時に入ってこないのは、逆に我々が提示するデータが十分でないとか、怪しげであるから経済学者が相手にしてくれないということもあると思いますね。その間接被害が大事なんですよ。数字が一桁くらいすぐに変わってしまうし。だからこそ、本当はきちんと研究をしないといけないんですよね。

【中尾委員】
 先ほどから皆さんがおっしゃっている架け橋の研究が抜けているということなので、先端性というより妥当性、対象としているそこがすぽっと抜けているわけですよね。ですから、そこに力を入れるべきことをここに書き込むべきだと思うんですよ。寶先生が言われたように、実践すれば税法等が関わってきますので難しいですが、研究の結果としてこうしたらこうなることが予想されるとか、そういう研究成果を出すことはいくらでもできるわけで、ただしそういうことをやる人が非常に少ないので、防災では食えないという話ですけど、食えるようにするということは文科省ができることだと思うんですよ。例えば京大の防災研にしろ、林先生のような方は非常にマイナーですよね。数から言ってという意味ですけれど。防災研のやるべきことから言うと、ポジションがいっぱいあればそういう人達がいっぱい就職するわけです。防災科研に至っては、理系の人がいっぱいいるだけで、あれも半数くらいがそういうポジションになったらそういう人がいっぱい出てきますよ。つまりそういう方向での施策を進めるべきということをここに書くべきではないかという気がします。

【土岐主査】
 尻馬に乗ってばかりですが、大変僭越ながら、私は皆さんのお考えのことをもっと前から考えていました。だから私が尻馬に乗ってしまうのですが、実はもっと前から考えていた。防災科研については、私はそれこそずっと言ってきているんですよ。私が言っている谷間を埋めるのは防災科研が一番いいところにいるし、一番最たる仕事だとずっと言ってきているんですが。それで昔と比べれば随分変わりましたけれどね、だけどまだ十分ではない。防災科研こそ、中尾委員がおっしゃったように、ああいうところこそ半数がそういう研究をやったっていいんです。多分皆さんが思っているような橋を架けるとすれば、一番架けやすいのはあそこだと思っているんです。あそこができなければ、他のところではできない。大学ではまずできない。私はやっているつもりですけれども、多くの人はやろうとしない。それで私は防災科研に非常に期待しているし、そのことを言い過ぎたためか評価から外れましたけれども、本当にそうなんですよ。

【事務局】
 防災科研の話がありましたけれども、来年度やろうとしている災害リスク情報プラットフォームというのは、情報を集めて提供するという意味では、架け橋的な要素をより強めていく方向かなと思っております。
 もう一つ資料がございますので、説明いたします。
 ‐資料44‐3に基づき説明‐

【土岐主査】
 いかがでしょうか。違うのではないか、あるいはこういったことも入れるべし、といったご意見はございませんでしょうか。

【国崎委員】
 2番のハード面のことなんですけれども、お伺いしたいのが、耐震補強技術の開発ということなんですが、今問題になっているのが学校の耐震補強だと思うんです。実は、某テレビ局がまさにここに焦点を当て、学校の耐震補強をどうするかという番組を企画するんですけれども、色々取材をしていく中でですね、やはりお金のある自治体とそうでない自治体との温度差というか、学校の耐震補強の進み具合がかなり変わってくるというところがあります。一方で、学校を避難所として運営しようとする避難所運営委員はですね、学校は耐震補強されている安全なものという定義のもとに運営マニュアルを作っているんですね。学校が避難所として使えないという前提ではないわけです。学校の耐震補強についてどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいのですけれども。

【事務局】
 専門ではないところもあるんですけれども、文部科学省は耐震基準を満たして欲しいということを積極的に言っているわけですけれども、初等中等教育は市町村であったり県であったりが権限を持っている、地方分権としてそうなっているわけですが、実際に耐震補強について国も補助金を出しますが、100パーセントではないというのが現状でございます。国として、補助金でもって、防災拠点として使われることが想定されているわけですから、ある程度優先的に、優先順位を上げて対応して欲しいと積極的に働きかけております。あとは、市町村の体力の違いがあるわけですけれども、強くお願いをしている状況であり、それ以上は国と自治体との権限上、なかなかやらせるというところまではできない歯がゆい状態ではございますが、積極的には進めていきたいという方向で政策をとっております。

【天野委員】
 今学校ということでお話がありましたが、現実問題としては、学校だけではなくて、地域の防災拠点もどのように耐震化を進めたらよいかということは全国の地方公共団体がお困りになっているんですね。先ほど土岐先生がおっしゃいましたけれども、ハザードマップはあると。また、防災拠点一つずつの耐震診断、簡易診断くらいのことはできると。だけど、これをどう位置付けして、どういうふうに耐震化の予算化計画に持っていくかということを現実に考えられている地方自治体はかなり力のあるところでないとできていないんですね。ある意味、コンサルタントのように、指導というとおこがましいのですが、そうしてあげる人達が必要だと思うんです。
 なぜ、ここでこのような話をしているかというと、研究開発に係る基本的な考え方と書いてあるのですが、私も自社で研究開発をしているので、すごく悩んでいるところなのですが、研究開発は研究開発をしただけでは成果は絶対に展開できないんです。まず、成果を展開するための具体化(一次展開)が必要なのですが、一次展開のためにお金がかかるんですね。その一次展開の費用をゼネコンのR&Dなんかは、R&D費用として位置付けて確保しながら成果を完成させていくんですね。文部科学省の研究開発の場合は、第一次展開、第一次展開というのもまだ問題山積なので、R&Dの課題を持っていたりするんですけれども、その第一次展開にかけられる費用というのはお持ちなんでしょうか。続けて言いますと、例えばハザードマップをいかに使って、実際の実務に役立てるかとか、防災教育のネタでどういうふうにして住民の方を教育していくかという、成果を実際に有効なものにするための費用は絶対に必要だと思うのですが、それは地方自治体の努力の範囲なんでしょうか。

【事務局】
 一次展開の概念は難しいと思うんですけれども、基本的に文科省がやっているところは基礎・応用、そのあたりが大体一次展開だと思います。実際に実用化まで持っていくところの過程は非常に難しくて、一気に実用化まで持っていけるようなプロジェクトもあると思うんですが、実用化まで持っていく過程では、産学連携しながらとか、実用化するための委託費のような研究費、例えば科学技術振興機構のような橋渡し的なところのですね、成果展開のところの費用もかなり出しています。そこがいくらあって、二次展開にいくらという整理はしていないのが現状です。基礎・応用や開発研究の予算の統計はありますけれども。

【天野委員】
 先ほど防災がお金にならないという話がありましたよね。結局そこだと思うんですよ。その仕事をやっていく人が、生活をできるようなお金が出るビジネスモデルがあれば、人が寄ってくると思うんですよ。自衛隊のOBの方が小さいながらコンサルを立ち上げて、地方自治体で地域住民の教育費用みたいなものをいただきながら、住民を教育していくとかですね。そういうところの仕組みづくりみたいなのは、とても必要なのではないかと。ターゲットは地方自治体だからだと思うんですよね。国土交通省は大きなお金をお持ちだと思うんですけれども、言うと怒られるかもしれませんが市町村レベルの地方自治体は総務省系なんですよね。消防庁系の話になるとなかなかお金は出てこない。そのあたりが問題なのではないかと思っています。

【事務局】
 昨日渡邉室長と話していたのはですね、防災科学技術や防災の研究開発の実用化とは何なのかと。例えば、ものを作ったりとかプロジェクトを動かしたりしますと、なんとなく実用化したものが、原子力とか宇宙とか海洋でもあるんですけれども、防災科学技術の面で実用化とは何なんですかという答えが非常に見えづらいんですよね。最終的には、防災という、身を守るとかそういうものにつながるわけですから、今まで例えば大学とか防災科学技術研究所がやっているような研究は実用化とは全然違う分野だと思うんですね。そこをもう一回整理しないと、例えば大きな溝があるという議論がありましたけれども、そういうソフト的なものだけでそういう実用化という概念まで行くのか、というと多分ノーだと思うんですよね。どういうところが防災科学技術に必要なのかというところを掘り下げてみないと、例えばライフサイエンスの分野では、今重要なのは臨床まで行かないということで、そこで今トランスレーショナルリサーチみたいなものでシステムや研究をどう進めるかを相当議論されて、文科省だけではなく厚労省を巻き込んだりしながらやっているわけです。防災科学技術について振りかえってみると、どういうものが必要なのかということをもう少し掘り下げないと、結局推進側と受け手側がそれぞれのことを言っていても、上手く橋渡しができないんじゃないかと、大きな溝が埋まらないんじゃないかと。今までいろんなご意見を聞いていて、正直痛感しているところです。

【土岐主査】
 それはね、私は異論がありまして、橋を架けても役に立つかは分からないというお話なんですが、そんなことはない。私は自分である種のNPOをやっていて、研究の分野の成果を実際の場に持っていって、役に立っていますよ。立たせなければ意味がない。役に立つ橋を架けることも我々はやっています。

【事務局】
 実用化という、例えばE‐ディフェンスを使ったりして、橋を実際に揺らしてみてですね、それが耐震性の向上につながるとか、そういう工学的な分野については分かるんです。では、例えば地震の研究をやったり火山の研究をやったり、そういう理学的な面が工学につながって、ちゃんと溝が埋まる仕組みとしてはどういうものがあるのかと。そこは多分全然概念が違うと思うんです。

【土岐主査】
 それはおっしゃるとおり。

【事務局】
 そういうところをもう少し広く掘り下げないと、なかなか自治体や国民といった受け手との間の溝は埋まらないんじゃないか、つまり防災科研や大学がやっている研究の成果と、受け手側の間のギャップ、私が言っているのはそこです。

【土岐主査】
 工学的なアプローチのその前に、かなり理学の問題もあるわけです。そういうものを、実際に一番近いところにいる学問・技術の分野の人間、例えば工学の人間が咀嚼・解釈をして、橋を架ければいいわけですよ。災害に関わる全ての学問・技術の人間が橋を架けるのに参加しなければならないとは思わない。ただし、自分は全く知らない、というのはけしからんと言っているわけで、頭の隅に留めてほしいということです。山岡先生に言ったように、全部とは言わないが、10パーセントでも、という。その意識改革は必要で、ある程度の濃淡はありますが、やはり一番近いところにいる人間が、役に立つものをやらなくてはいけないし、それはやっていますよ。十分に埋めきってはいないけれども。もっともっと強くしなければならないということは誰も異論がないと思います。
 一つだけ、単純な質問なのですが、3番の具体的な視点において、「地震の切迫性が高い地域」とありますが、この地震というのは曖昧なんですよ。地震の発生なのか、地震の災害の発生なのか、切迫度なのか。例えば近畿地方なら、南海地震の切迫性は高いが、南海地震による災害は近畿地方ならたいしたことはないですよ。内陸の地震の方が切迫度が高い。ここの地震の切迫性というのは、私にとってみれば少し曖昧なんですよ。もう少しきちんと書いておかないと、私でも分からない。
 物事によっては曖昧でいいものもあるし、それが逆のメッセージになっては困ることはきちんと書かなければならないということです。

【上田委員】
 科学技術の成果を普及させるということは非常に大事なことなんですが、国の施策を考えた時に、防災科学技術で何が重要かという他の観点からの議論も必要かなという気がしました。と言いますのは、今日の議論は、基本的には防災科学技術の技術が完成したので、あとは普及であるとか、そこが大事だという観点のような気がするのですが、防災科学技術の技術に関しては、例えば強震計の展開にしてもサイエンスとして長い時間がかかって展開してネットワーク化して実用化するという歴史があると思うんですね。
 そういう意味では、例えば私の専門の分野では、昨年佐呂間で竜巻が起きて、気象庁にドップラーレーダーが入るようになったのですが、そういうものができたというので私も講演に行きました。ドップラーレーダーができても、竜巻は半径30キロメートルくらいまでしか見えませんよと。新聞では釧路にドップラーレーダーができれば佐呂間の竜巻が見えるというように報道されるのですが、そういうことを気象台に行って話をしてもですね、気象台の職員自体が初めて聞いたと言うんですよ。科学技術でどうしなければいけないかということは、防災科研等が将来の構想として、国の政策として、次世代の観測ネットワーク化を考えることを、この場としても言っていく必要があるのではないか。今の技術をどう普及させるかということは一所懸命議論して、非常に大事だと思うんですけれども、将来の社会の生活の仕方が変わる、災害の起き方が変わる時に、将来を見越して新しい技術をどうするかをこの委員会で十分に議論した方がいいと思います。

【事務局】
 事務局といたしましても、本日は教育・普及啓発に重点が置かれたきらいはありますけれども、当然、何が技術開発として足りなくてですね、それを考えた上で展開の方法も考えるということは重要だと思っております。出口だけではなくて、今後防災に役立つための研究開発は何かということをとらえて、つなげていく方法も考えることが重要だと思っておりますので、上田先生の視点からも是非ともご意見をいただきたいと思っているところでございます。

【寶委員】
 1の「国民の防災力の向上につながる研究開発」ですが、資料の○(丸)2つに当てはまらないこととして、先ほど政策に関する研究の推進と言ったのですが、もう一つ○(丸)を付け加えるとしたらですね、社会の脆弱性の解消、国民の防災力の向上につながる政策に関する研究の推進と、政策の実際化ですね。まず研究をして、それが良さそうであれば政策として、実用化ではなく実際化だと思うんですが、進めていくと。そして、政策立案者・担当者の意識啓発、そのあたりが入るのではないかなと。ここには国民の防災力の向上とあり、行政は防災力が十分であって国民の防災力が足りないという表現にも読めるんですが、もっと書くならば国、地方、国民、言ってみれば社会全体ですけれども、その防災力の向上につながる研究開発ということで、それにつながる政策に関する研究の推進と政策の実際化、政策立案者・担当者の意識啓発も一つの○(丸)になるのではないかと思います。これは、毎年数千万円から1億円くらいあれば、10件から20件くらい新しい研究が立つと思いますので、お金があればそういう研究も進むと思います。ひょっとすると経済学者の方も、研究費が1千万、2千万あるのであればやってみようという人もいるのではないかと思います。

【土岐主査】
 さて、いかがでしょうか。この委員会は防災に関わる広い分野の研究開発の問題を扱っているわけですが、将来、といっても遠い将来ではなく5年10年のオーダーでどういうことを考えなければならないかという大きな枠組みを議論する場であろうと理解しております。したがって、1回2回議論してできました、という類のものではないと思います。よろしければ今日はこのくらいにしておいて、今後、資料44‐2、44‐3に今のような議論が加わって、再度提示されるものと思います。そうやって最後に、報告書の形になるかどうかは別ですが、こういう姿が本来望ましいというものが出来上がるのだと思います。よろしいでしょうか。それでは事務局にお返しします。

議題(2) その他

【事務局】
 長時間にわたる議論、ありがとうございました。
 情報提供でございますが、独立行政法人に関する整理合理化のその後の動きなんですが、あまり動きはなく、有識者会議でもヒアリング等が行われてきたのですが、防災科学技術研究所についてはヒアリングの対象とならなかったというところでございます。随意契約であるとか給与水準も含めて検討されてきたのですが、先日27日に有識者会議から総理に、「独立行政法人整理合理化計画の策定に関する指摘事項」が示されたというところでございます。あと一月足らずですが、指摘事項を踏まえて年末に向けて整理合理化計画がとりまとめられることになっております。
 今後の日程でございますが、年明けになろうかと思いますが、今日いただいた議論を更に具体化したいということと、予算案を受けての来年度の評価でありますとか、新しい施策の進め方も含めて議題になると思いますので、内容についてはまた日程調整とともに相談させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 以上を持ちまして、本日の委員会を終了させていただきます。
 ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局地震防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震防災研究課防災科学技術推進室)