防災分野の研究開発に関する委員会(第43回) 議事要旨

1.日時

平成19年10月15日(月曜日) 10時~12時

2.場所

科学技術政策研究所会議室

3.議題

  1. 今後の防災科学技術の研究開発の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 土岐主査、荒卷委員、碓井委員、岡田委員、岡委員、片山委員、壁谷澤委員、吉川委員、国崎委員、重川委員、寶委員、田中委員、林委員、福和委員

文部科学省

 青山大臣官房審議官、渡邉防災科学技術推進室長 他

5.議事要旨

【事務局】
 定刻になりましたので始めさせていただきます。
 防災分野の研究開発に関する委員会は、本日が第43回の開催となります。
 開催に先立ちまして、事務局からご連絡申し上げます。
 本日は、委員21名中、14名にご出席いただいており、定足数を満たしております。
 議事に入る前に、新たに御就任いただいた委員の方にお越しいただいておりますので、ご紹介いたします。岡政秀委員でございます。

【岡委員】
 NTT東日本の岡と申します。黒岩の後任で6月末に着任したのですが、着任早々新潟の方で地震がありましてばたついており、なかなか参加できませんでした。よろしくお願いいたします。

【事務局】
 続きまして、配付資料の確認をいたします。
 -配付資料確認-

 それでは、以降の議事は土岐先生に進行をお願いいたします。

議題(1) 今後の防災科学技術の研究開発の在り方について

【土岐主査】
 それでは代わりまして、議事を進めさせていただきます。
 本日の議題は、「防災科学技術の研究開発の在り方」という、やや漠としたものであります。漠としたものほど、中身は重要というか、それが常ではなかろうかと思います。本日2時間ほどでありますが、議論をしてまいりたいと思います。どうやら、これから先の防災研究に関わる重要な事柄ということでございます。
 まず、事務局から本日の審議の趣旨についてご説明をお願いします。

【事務局】
 文部科学省においては、第42回の委員会までにおいて皆様にご審議いただいた内容を踏まえ、現在、平成20年度予算の概算要求を行ったところです。
 本日の審議の趣旨ですが、文部科学省、あるいは防災科学技術の研究開発の中核を担う防災科学技術研究所として、実際の防災対策に役立つ、本当の意味での防災科学技術の研究開発を行うことを目指すことにあります。
 そこで、現在、あるいは来年度以降実施することとしている主な施策の実施計画を検討する上でも、事務局よりいくつかの点から問題提起させていただき、委員の皆様のご意見を賜りたいと考えております。
 また、最近新聞等でも話題になっております独立行政法人改革等に見られるように、防災科学技術を取り巻く状況についても大きく変わる可能性があります。こうした国全体としての方向性も適切に踏まえながら、当方の研究開発の在り方についても検討して参りたいと考えております。
 それでは、資料に沿って説明させていただきたいと思います。資料43-1に本日議論いただく内容をまとめております。なお、これまでご紹介していない政府方針として、資料43-3がありますので、先にご説明いたします。

 -資料43-1、資料43-3に基づき説明-

【土岐主査】
 ただいまご説明がありましたように、これから研究をしていく上でも色々な動きがあるようですが、そのうち特に「選択と集中」を考えていくことになると思いますが、今日は11時頃からはこの問題についてご意見を伺うことにしております。それまでに、もう少し具体的な研究の在り方等の文科省の考え方をお伺いしますが、とりあえずここのところでお尋ねいただくことがありましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
 私が気になったのは、資料43-3の最後の行ですね、12月下旬に「独立行政法人整理合理化計画」の決定、とありますよね。12月下旬といえばもう2ヶ月ちょっとしかないわけで、そのときには決定するわけですよね。

【事務局】
 はい。

【土岐主査】
 今のご説明を聞いていると、有無を言わさず行われてしまうわけですよね。今ここで議論しても、それが反映される余地、可能性は非常に薄いと思ってしまうのですが、いかがでしょうか。

【事務局】
 実際にこういう動きを受けて防災科学技術の研究開発はどうあるべきかということを予め議論しておくことは必要かと思います。そこで得られた意見等、インプットできるものについてはインプットしていく必要があると思います。
 当方でも、行革事務局からヒアリングや資料の提供を求められることが想定されますが、その中に防災科学技術の研究開発の進め方なり、政府としてやっていかなければならない研究開発は何で、そのために必要なものはこれである、ということについては反映して、理解を求めていきたいと思っています。

【土岐主査】
 行革の担当のヒアリングが12月の計画決定以前に行われるということを想定しているんですね。

【事務局】
 現在、色々な法人についてヒアリングが行われているところでございます。ただ今のところ、防災科学技術研究所に関しましては対象となってはおりません。どうなるかは分かりませんが、今後ヒアリングなり資料の提出があり得るということです。

【土岐主査】
 お話を伺っていると、合理化計画が12月中に定まったとしても、それが具体化されるのはもう少し先だろうから、その時のためにきちんと整理をしておこうというふうに考えておけばよいですか。
 例えば、独立行政法人のうち防災に関しては防災科学技術研究所ですよ。それを単独ではなくて、近いようなものとドッキングしなさいという話が出てきたときに、それは困りますと言うのか、いいと言うのか、そういうものに対する理論武装というか、どういう考えに立つかということを定めておかなければいけないわけですよね。それが12月末という目標であったら、それを過ぎたのでは意味があるのかないのか。それはどうですか。

【事務局】
 整理合理化計画の中では、組織論についてはある程度方向性は出されると思います。それまでに、先ほど申し上げたように、文科省として防災科学技術の研究開発を進めなければいけないということは言って参りますが、また組織なりの方針が出た後もその中でどう進めていくかという詳細はまだ先で決まっていきますので、そこでの議論を色々と伝えていくことはできると思います。

【土岐主査】
 分かりました。私の疑問はそういうことだったのですが、お分かりいただけたと思います。
 12月の末というのは整理の方針として流れていくけれども、それとは別でもしっかり議論しておきましょうということですね。

【事務局】
 12月の方針もある程度の方向性ではございますが、詳細な体制についてはその後の動きというのもございますので、そういった中でも必要な部分については委員の皆様の意見をもとに進めていきたいということです。

【土岐主査】
 特になければ、この問題は後ほど11時過ぎからも議論いただくことにします。
 次の資料の説明をお願いします。

【事務局】
 -資料43-2、資料43-4に基づき説明-

【土岐主査】
 ただ今ご説明いただいた内容について、ご意見等があれば承りたいと思います。
 これらについては、これまでも議論をしてきたところですので、あまり細かいところではなくて、研究の内容の一つひとつについてはここの場での議論ではないと思いますので、大きなところでご意見をいただくことにします。

【片山委員】
 今一つひとつご説明いただいたことは、これまでにも聞いていたことです。文科省の関連部局が独立行政法人防災科学技術研究所というものをどれくらい本気で守るつもりかということを聞きたいですね。それが基本的にはこの問題を決めると思うんですけれども。何でも巻き込まれるという気でいるのだったら、何を議論してもしようがない。

【事務局】
 整理合理化の中でなかなか難しい問題ではありますけれども、防災科学技術について文科省がやっていくことは必要ですので、その重要性については引き続き訴えていきたいと思っています。そのために必要な組織であれば、そうでなければいけないことを訴えていきますが、先方は防災が独立行政法人という形でなくても委託なり色々な方法でできるではないかと投げかけられているところです。そういったことも踏まえながら、独法がいいのか、他のやり方もあるのかということについて検討し、返していきたいと思っています。
 独法でなければならないのかということを問題として投げかけられているわけですので、やらなければいけない部分についてはそういう説明をしなければなりません。

【土岐主査】
 片山委員のご指摘については、11時頃から全体に関わる話をしましょうと言いました。そこに関わる最も根源的なところですので、しばらく預からせていただけませんか。
 しばらくの間は資料43-4、絵があるので分かりやすいですが、内容についてはこれまでも議論してきましたが、ハコ、こういうハコがないじゃないかということはありませんか、という趣旨で質問はございませんか。

【碓井委員】
 災害リスク情報プラットフォームについて、おそらく地理空間情報活用推進基本法に掲げるGISの活用と関係すると思いますが、それと防災教育のところとはどのようにつながるのでしょうか。と言いますのは、そこにありますように、様々なリスク情報を出されるわけですけれども、それが防災教育とリンクしていなければ非常にもったいない。
 それから、私は学術会議の中で自然災害の対応方法というところで委員会の先生と一緒に作らせてもらったんですが、災害認知型社会における基礎教育のところで、文科省は地学とか地理とかが衰退してきています。それに対してどのようにお考えか。つまり、ハザードマップにしても、学校教育とリンクしていなければ、防災教育というのはなかなか難しいと思うんです。

【事務局】
 プラットフォームと防災教育の関係でございますが、今回当方の目玉として要求している災害リスク情報プラットフォームは、地震から風水害まで様々な情報をもとにハザードマップ等を作って、リスクにも変換して、それをなるべく広く提供していこうというものでございます。まずプラットフォームでもってその情報を集約する、そして今回の防災教育についてですが、地域や学校での取組がまだ不十分ではないか、当方で行っている防災科学技術の研究開発の成果を、地域の方々、学校の児童・生徒によく知られていないのではないかということで、一つの問題意識がございますので、プラットフォームでできた情報、コンテンツについては、積極的に分かりやすい教材等に活用していただいて、地域の人々、学校の子ども達に伝えていきたいと思っておりますので、連携をとりながらやっていければと思っております。ただ、若干並行して進む部分がございますので、すぐにプラットフォームの成果が学校なり教育現場に伝わらないかも知れませんが、考え方としてはそういうすばらしい研究成果なりをどんどん一般の方に知っていただくツールとして、防災教育支援を行っていきたいと思っております。先ほど、ハザードマップ等は学校にあまり取り入れられていないのではないかというお話もございましたけれども、それについてはそういう専門家なりを通じて学校の先生方を教育・研修したり、難しいようであれば専門家の方に直接入っていただけるようなシステムを作って、子ども達にも伝えていければと思っているところでございます。

【碓井委員】
 基礎力としての地図力が相当落ちていますよね。このことについては、初等中等教育とリンクしていかなければならないのではないかということです。

【事務局】
 防災教育に関しては、初中局や学校安全の部局とも連携をとりながら進めていきたいと思っておりますので、絵に描いた餅にならないようにしたいと思います。

【寶委員】
 20年度の概算要求額が205億円ですか、19年度の予算が131億ということですが、19年度の今の時点での概算要求額はどのくらいだったのか、それより増やしている方向なのかどうか。

【事務局】
 19年度の概算要求額は、今回要求している額より少ない額でした。

【寶委員】
 今回4つ新規を出しているので、年末になると削られて復活折衝ということになるんですかね。例えば、下のプラットフォームと防災教育支援の推進が両方とも採択されない可能性はあるんでしょうか。あるいは、どちらかに絞らなければならないときにどちらを優先するか、そのあたりのお考えはあるのですか。

【事務局】
 今回は概算要求の際に中越沖地震が起きたことが大きく、防災に関する重要性も省内では高く、来年度の予算要求についてはかなりチャレンジングに昨年度より増やしている状況でございます。それから、年末の話につきましては、今まさに当方で財務省に説明に行っているところでございますが、全部倒れるということにはしたくないというのが正直なところでございまして、最後の資料にありますように、予測して、伝えて、理解する、という流れにのった説明をしているところですので、全部がこのままということはなく、多少小さくなっていく方向でございますが、ゼロにはしたくないということを説明して理解を求めているところです。

【寶委員】
 減額はされてもこの4つはキープしていくと。

【事務局】
 厳しい状況でございますが、なんとかそうしたいと考えております。

【土岐主査】
 予算のことなんですが、後ろから2枚目の絵です。右下に棒グラフがありますね。この地震・防災研究関係というのは何が入っているんですか。例えば、大学の研究等は入っていませんよね。交付金の中のどれくらいが防災なのかは分かりっこないですから。

【事務局】
 最後の資料に入っているような地震調査研究と、防災科学技術研究所を中心とした研究、あとはJAXA(ジャクサ)の防災にかかる衛星の分が入ってございます。大学に関しては学術ということで大きく囲われていますので、計上していません。

【土岐主査】
 主としては防災科学技術研究所と考えていいですか。

【事務局】
 あとは地震調査研究推進本部の方針に基づく委託事業等もかなりございますが、一番大きいのは防災科研です。

【土岐主査】
 推本(地震調査研究推進本部)の予算小委員会に出てくるようなものですね。例えば海底地震の観測計画とか。

【事務局】
 防災に関する衛星が入ると申しましたが、ここにある数字では、我々の課内でやっている防災科研の研究と推本の研究が入っています。
 グラフに出ている額と、次のページの右肩の部分の額がかなり違っていますが、その差額数十億円が衛星関係の金額になります。それを含めてグラフを書いております。

【土岐主査】
 分かりました。
 他にどなたか。

【福和委員】
 防災の研究は実践の社会と近いですよね。先ほどキーワードとして省庁連携という話が出てきていて、内閣府の科学研究系の流れと防災系の流れもあるし、国交省もあるし消防庁もあるし、その中で防災研究をどう位置付けていくかという話は自主的にはやられているんでしょうか。それとも、ボールが投げられてそれぞれの組織であたふたしているという感じなんでしょうか。

【事務局】
 研究推進という意味ででしょうか。

【福和委員】
 研究推進といっても総合学問なので、研究から実践への距離が近いんですよね。

【事務局】
 国としては総合科学技術会議になろうかと思います。

【福和委員】
 研究に関してはですね。実践の方だと、中央防災会議がありますよね。

【事務局】
 どちらかというと中央防災会議は実践という思いが強いとは思いますが、橋渡しのような部分もございますので、こういう研究が必要ではないか、こういう成果も取り入れて欲しいという話はして、連携はとってございます。中央防災会議と総合科学技術会議の間については、当方から連携をとって欲しい旨の話をしておりますし、向こうも内閣府の中の部局ですので、相談はされていると聞いております。

【土岐主査】
 今の福和委員の話ですが、中央防災会議は国の方針、方策を決めるところであって、実施をするところではない。先生がおっしゃっているのは、社会との関わりが大事であるから、それをいったいどこがどうやるんだという話ですよね。

【福和委員】
 防災は大事だよという言い方は、向こうも言ってくれないとなかなかつらいですよね。連携して、これは落とせないものだという雰囲気を作っていかないと、研究予算だけだとどうしても削られがちになるような気がします。

【土岐主査】
 中央防災会議については、そういう国の方針ですということは言ってくれるわけです。事業はしないけれども。

【事務局】
 例えば現在新規で要求しているプラットフォームでございますが、その成果であるハザードマップやリスクマップはすぐに現場で使って欲しいものが成果として出てきますので、そこの進め方については総合科学技術会議の方でも研究開発の推進体制を考えておりますが、中央防災会議についても、我々や国交省の関係者が集まってですね、まだ予算要求中でございますけれども、付いた場合にはこういうふうに進めていけばいいのではないかという議論はしています。出口の部分についても、実際に使う方々が使いやすいように、中央防災会議等にも呼びかけをしております。

【重川委員】
 今渡邉室長が予測し、伝え、理解するという3つの流れでお話されたんですが、予測するということと伝えるということ、特に伝えるということは、国民一人ひとりにまで適確に・迅速に・正確に伝える道具を開発するということなんですが、それだけで世界一安全な国・日本というのはできなくて、今一番防災科学技術の研究で遅れているところが最後の理解するというところに関する、いわゆる科学的な研究なんです。お話のあったように、内閣府の防災担当とか消防庁とか、国交省でやっている調査研究は、直接的に政策に生かせるような実務的なものが多くて、今一番手薄になっている、伝えるとか伝えた情報をどう理解し、どう最善の行動を一人ひとりの国民が振舞えるようになるのかというところを科学的に研究するというところは今どこの省庁でもなされていなくて、多分他の省庁ではそこまでやっていくゆとりはないんだと思うんですね。そうすると、文科省の防災研究の中でも、今回も防災教育支援の推進ということで盛り込んでいただいているんですが、一つの防災科学技術の柱として立てていくことが、今回色々と前段階でご説明いただいた政府の様々な方針を実現するためにはやはり不可欠なのではないかという気がしているんです。そのあたりの位置付けについてはいかがでしょうか。

【事務局】
 もっともなご指摘でございまして、先ほどの説明で資料から落ちていたと申しました、基本計画に基づく分野別推進戦略に、机上資料の6番、287ページに社会科学融合減災技術とあります。研究開発、特に防災分野については、研究開発を行った成果を社会への取組に還元していくようなつなぎの部分の研究が重要だということで、今回も基本計画が作られた時に新しく強調された部分でございます。
 当方もこれについては認識しておりまして、例えば大大特のプロジェクトであるとか、今ですとちょうど林先生がいらっしゃいますが、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの地震の調査研究と耐震技術に加えて、3番目として社会にそういった研究の成果を還元していく、地震が実際に起こった時に被害を軽減していくような方法について研究をしていこうというようなことも始めておりまして、それが少し弱い分野であることは認識しておりますが、当方としても推進していきたいと思っております。

【林委員】
 行政減量・効率化有識者会議について調べてみると、4つハードルがあるらしい。1つ目が、こういうことが提供されないと著しい悪影響がある事業かどうか、これはクリアしていると思うんですよね。

【事務局】
 そうですね。防災に関しては、まさに公(おおやけ)としてやっていかなければならないものですので。

【林委員】
 イノベーション25にしろ、総合科学技術会議の提言にしろ、ここは文科省としては心配しておられるところではない。でももっと吹いてもいいような気がするんです。東海・東南海・南海の切迫性とか首都直下地震とかね。
 それから次のハードルとして、民営化の検討とある。要するに民間でやれないかどうか。ここはどうなんですか。

【事務局】
 産業ベースではなかなかできないものなんだろうと思ってございますので、制度を整えれば民間で転がっていくというよりは、国として何らかの予算的措置をしながら研究を進めていかなければならないだろうと考えております。

【林委員】
 外交、軍事、徴税、とは言いませんけど、防災というのは国が最後まで見るべき事業だ、みたいな議論があってもいいのではないか。
 3番目は、市場化テストをやれるか。例えば、防災科研がやるのと他がやるのと、どっちの方が効率がよいかという比較対照ができるかどうかというのが3つ目のハードル。日本で今そういうことを受けるとしたら、ここからは実は質問なんですが、先ほど渡邉室長は学術ということで大学を全部括っちゃいましたけれども、こういう方針等は防災科研の研究だけを規定しているわけではなくて、大学なんかの研究も含めて考えていかなければならないと思うんですね。国全体として、公が主体となってこれからも推進すべきものであれば、市場化テストというのは、実はそれができるところはないと思うかも知れないけれども、学術というものと、例えば防災科研との関係みたいなものについて何か突っ込まれるとか、そこについて説明を求められるというニーズはあるんでしょうか、というのが質問です。

【事務局】
 特に防災科研の話になってしまいますけれども、基盤的な役割というものが非常に重要だと思っております。例えば、市場化という話がございましたけれども、地震観測網をどこかに委託してやってくれるだろうかとか、E-ディフェンスに関するものをまるまるどこかでやってくれるだろうかとか、という点については疑問を持っております。
 委託でできるような研究というよりは、集中してやるようなものについて、市場化という言い方はおかしいかもしれませんが、組織をもたないでできるものについては、委託をしているというところでございます。ある程度、独立行政法人という組織をもって長期的にやっていかなければならないものが現状としてあるわけですので、仕分けとして必要だとは思いますが、まったくそういうものを市場化なり競争入札に付すというのはおかしいのではないかとは思っております。

【林委員】
 今室長がおっしゃったのは、防災科研として既存の走っているプロジェクトというか、事業の市場化テストについてですが、さっきの重川委員のおっしゃったことも含めて考えると、防災科研が全部の防災研究なり開発のカバーをしているとは思っていないので、そういう防災科研がカバーしていない部分についての防災研究の体制とか、そこらへんくらいまで議論の前提を置いて、そこの中に防災科研を位置付けておくような論理構成がいるのではないかと感じています。

【青山審議官】
 ご指摘になっている点は2つあると思うんですね。一つは、今あるシステムとしての防災科学技術のうち、民営化できないものは何か、あるいは民間のアイデアで、少なくとも採算に乗る部分としてこういう仕事はつくりだせるのではないか、と考え出していくこと。もう一つは、防災科学技術が世の中に適用されるためのシステムとして、民間も含めて巻き込んだ形で考えなければいけないということ。この2つがこれからの議論になると思います。

【土岐主査】
 先ほど片山委員のご発言に対してしばし預からせてくださいと申し上げたのは、今始まったような大元の議論なんですよね。今その議論が始まってしまいました。資料43-4に対しての質疑はもう大体いいと思いますので、これから大元の議論について再開いたしましょう。
 例えば、最初に説明がありました資料43-1の一番下の3ですね。国として推進すべき防災科学技術の云々という。ここに出てきている選択と集中であるとか、防災力の向上であるとか、担当者のニーズであるとかいろいろありますが、こういう事柄について順序は問いませんので、1時間程ですがご意見を議論いたしましょう。その一つが片山委員のご発言であり、今の林委員のご意見だと思います。

【事務局】
 まさに林先生がおっしゃっていたことが当方も考えているところです。今までの話だけというよりは、今後国として、どういう防災科学技術が重要かということを言った上で、独法として担う部分、大学や民間に協力していただいて担う部分といったことを書いていかないといけないので、その上で今後、こういうことが重要ではないかという視点をいくつか並べさせていただいた、という資料でございます。

【土岐主査】
 分かりました。そういうことで、これからしばし、国の方針としてやっていること、例えば資料43-1の一番上に出てきています関係する政府方針の中での防災科学技術研究はいかにあるべきか、という議論をします。これについては、本日だけでは終わるわけではないので、今一度、次回もかけて議論しようということで事務局の方もお考えのようですので、焦らず大元のところから議論いたしましょう。
 では、片山委員のご意見に対して、いかがでしょうか。

【事務局】
 冒頭の話と重複する部分もあると思うのですが、基本的に防災科学技術は重要だと思っております。そして法人としても担っていかなければならない部分があると思いますので、なるべくそういった部分を議論の中で明確にしていただいて、当方としても色々なところでプレゼンテーションなりしていきたいと思います。

【片山委員】
 他の独立行政法人がやっている研究と防災研究とは、非常に異なるということは、強く主張されていいと思うんですよね。これが民間に委譲されるということはあり得ない。軍隊を民間に委譲するのと同じようなものですから、相手がただ自然か隣の国かというだけで、国が基本的には取り組むべきものであるという原理原則で強く主張していただきたい。他のと横並びにして、ここがこうだからここも3パーセントとか、そういう議論ではないと思うんです。

【土岐主査】
 防災研究の重要性はご指摘のとおりなんですが、似たようなところで文部科学省が所管する独立行政法人もありますよね。例えば美術館だとか博物館。ああいったところも部分的に民営化せよとか、定員を減らせとか、出てきますよね。私も少し巻き込まれているんですが、ああいうことは国がやらずして、行政がやらずして、一体誰がやるんですか。よその国を見たって、民間がやっているところなんてありっこないじゃないですか。だからそういうふうなところと、むしろ組んで、ある部分ですよ、国の責任としてやらなければならないという分野として抵抗できないんですか。議論の中でですよ。これとこれはだめだと。先ほど林委員がいくつかハードルを言いました。そういうところから見ても、このカテゴリーのものは他のものと議論を一緒にしては困ると。文部科学省の傘下だけでも結構あるじゃないですか。それは考えられないんですか。

【事務局】
 防災のみならず、文部科学省内で行革に関する担当部局の方で色々ととりまとめをしたりですね、なかなか美術館とまではいかないですが、研究開発の部局内ではですね、どういう研究開発を全体としてやっていて、そこをどの独法が担っていくかというような話はしているところです。
 整理合理化について、無駄なところがあるのではないかという議論に対してはやっていかなければならないと思いますが、ゼロということはないのではないかと思っておりますので、そこは必要性について色々と申し上げていきたいと思っております。
 ある種個別の部分はございますが、まとまれるところについては、一緒になって守っていきたいとは思っております。

【土岐主査】
 そういう議論はしてはいるんですね。個別ではなくて。

【片山委員】
 資料43-2、イノベーション25の1ページの一番下のところに書いてあるんだけれども、分野別の戦略的な研究開発の推進として、関係府省の連携を強化せよとある。これはどうやって具体的に進んでいるんですか。

【事務局】
 全体のとりまとめは中央防災会議だと思いますが、当方が今回やろうとしているプラットフォームに関してはですね、当省のみならず国交省や自治体等からも情報を持ってこないといけませんし、使っていただくのも消防であったり自治体や国交省の担当部局であったりして、集散が必要になってきますので、中央防災会議とも連携をとりながら中心となっていただいて、関係省庁とも関わりながら進めているところです。これを一つのモデルとし、他の実際の研究成果についてもそのシステムなりを現実に使っていただけるような方法を考えていきたいと思います。

【片山委員】
 そこは本当にどんどん進んでいるんですね。

【事務局】
 進めていかなければいけないと。
 具体的に、イノベーション25に関するプロジェクトとして、社会還元加速プロジェクトがあるということは先ほどご説明させていただいたかと思うのですが、それを実現するために文部科学省、防災科学技術研究所では、今災害リスク情報プラットフォームというのを立ち上げているところであります。他の省庁でも同じように、災害情報通信システムの構築に向けてプロジェクトの立ち上げ等を行っているところでありまして、そういった機関が集まって、今後どういうふうにシステム全体を完成させていくかということに関して打合せを実際に行っているところです。これは、内閣府、国土交通省、文部科学省、関連機関等が実際に集まって議論を行っています。

【片山委員】
 それは、文部科学省が局、室としてもかなりリーダーシップを取ってやっておられるのですか。それとも、あとは任せたよという程度か。

【事務局】
 そういうわけではありません。
 ただ、実際に防災対策ということで旗を振るのは内閣府ですから、内閣府とりまとめということになりますけれども、単に全てお任せということではなくて、各省庁が自分達で担うべきところについて責任をもってやっていくという形で進めているというところであります。
 特に、イノベーションに関して、研究開発に関して言いますと、総合科学技術会議で取りまとめをしているところでありまして、こういう社会還元としてもいくつかプロジェクトがあるんですが、それを総合科学技術会議でチームを作って、推進の委員会であるとか、そういう体制づくりは進めているところでございます。

【田中委員】
 今までの話を伺っていて、私のような防災オタクから見れば、防災は大変重要だと思っているわけですが、やはり社会に対してかなり理論武装が必要になってくるというのが事実であります。そういう中で、時代も分野も違うんですが、いくつか理論武装の参考にするところを見ておいた方がいいのではないかと。今の話では、NTTが民営化されるときに、通研(情報通信処理研究所)をどうするかという議論をかなりシビアにやられています。基礎研究から商業化まで、どういう仕組みで全体をやって、その中でなぜ通研がいるのだ、という議論がされました。やはり呼び水であったり、なぜ一箇所に集めて研究所を作る必要があるのか等、色々と参考になる議論があったと思います。一番大きいのは、最終的に今の世の中、経済的にどう見せるか、経済効果をどう見せるのかという、その屁理屈は結構すごいんですね。特にアメリカのベルラボ(Bell Laboratory、ベル研究所)なんかはすごい、こんな屁理屈あり得るのかみたいなものを出していました。やはり経済的な見せ方を含めて、少し理論化をした方がいいのかなと思います。

【碓井委員】
 今、プラットフォームづくりということで、国交省が中心となって都市地域では5メーターメッシュで作るとか、いろいろ基盤情報が出てきますよね。その中で、それぞれの省庁が連携しながらその省庁が得意なところでデータを出してくることが基盤整備の大きな柱ですよね。そうすると、その中で文部科学省としてはやはり地震観測網のデータが一番ユニークであり、これが他のところではない。それがプラットフォームの中で常時更新されて載っているということですね。他でも使えるようになるというところは大変重要なところではないかと思います。
 例えば国土地理院では基準点、XYZで200メートルに1点整備するわけですよね。そのデータは地震にも使える。地震調査研究の視点で出てくる文部科学省にしかないデータの維持・更新これはものすごく重要ではないかと。そういうものを出していって、文部科学省はここは他の省庁にはない、というところで、連携してやっていかなければならない。

【事務局】
 当方では防災科学技術研究所等がデータを持っており、そのデータを集めてハザードマップ等を作る技術は持っているのですが、地震以外のハザードについてはデータがばらばらに存在しており、そういったものを一元化してハザードマップなりリスクマップに出していけるような研究開発をしていくことにしています。そういう能力があるところは決して多くないと思っていますので、防災科研としての役割を見出してやっていくということでございます。
 実際、各省庁には得意分野があるわけで、文部科学省であれば地震ということになりますが、もちろん地震のデータだけでは最終的に災害の情報を伝えるということは難しく、プラットフォームで例えばGISを使う場合には基盤地図情報が必要です。そういったところは国土地理院の力を借りることになります。そういう意味で、現在関係省庁、各機関と連携を図りつつ、それぞれが持っている能力を生かしつつ、全体として進めているところでございます。

【碓井委員】
 その中で、教育のところでは初等中等教育、やはり文部科学省として他の省庁にはないところをもう少し整理して、そこでどう貢献できるかということを出さないと、やはり政府ですから、基盤のところだと思うんですね。今、国土交通省もプラットフォームを作っていますが、要は日本列島のプラットフォームを作るわけですよね。そこに、文部科学省の特徴とするところを出していく、そしてそれが民間で維持管理できないのであれば、防災科学技術研究所の一つの使命だ、という書き方をしていかないといけない。

【事務局】
 補足しますと、地震に関して言えば当方が持っているデータに加えまして、推本において気象庁や他省庁のデータも一元化しているという実績がございますので、そういった経験やノウハウを使いながら、他の災害にも広げていきたいと思っています。
 また、おっしゃるとおり教育分野も持っておりますので、学校へのつなぎであるとか、社会教育上のノウハウも活用していきながら、防災教育や成果の普及啓発を図っていきたいと思っています。そこのところは他省庁、中央防災会議等もですね、当方が防災教育を始めたということについてはかなり期待感を持たれておりますので、文部科学省らしさというか、できることをやっていきたいと思っております。

【寶委員】
 碓井委員や福和委員からもお話がありましたが、基礎データの収集から基礎研究、応用研究、それから現場の災害、教育の話、今の一連の話からいくと文科省は両サイドのところ、基礎データの収集と教育ということになります。防災科学技術研究所でも応用研究をやっておられると思いますが、風水害の観点では重点が低いですね。どうしても省庁連携ということになると、国交省とも連携することが重要になってくると思うんです。中国の例を申し上げますと、教育部と公民部、公民部は少し名前が怪しいですが、教育部は文部科学省ですね。公民部は国土交通省に相当すると思うんですが、その2つが名前を明示したまま、災害及び減災管理研究院という組織を作っているんですよ。研究所の統合というと、どこの省庁が管轄するのかということに日本ではなりがちですが、異なる省庁が複数で一つの研究所を支えあうようなシステムにすればいいと思うんですけれどね。国としてではなく、どうしても文科省として、と聞こえてしまうので。国全体としての考え方からすれば、省庁連携で一つの研究所を支えるという、もう少し大きな見地から組織を考えていってもいいのではないかと思っています。

【土岐主査】
 寶委員のご意見では、文科省のみならず、他のところとも場合によっては連携したり統合してもいいのではないかと。

【寶委員】
 その時に、統合した時にどこに所属するとか、どこが管轄するとかではなくて、複数の省庁が支えあうというか。

【土岐主査】
 それはどうですか。省庁をまたぐような統合・集中は議論には入ってくるんですか。

【事務局】
 共管という法人もございまして、例えば宇宙でございますと、多くはうちが担っている部分ですが、通信では総務省の旧郵政省とか、原子力に関しても経済産業省が見ている部分もございますので、場合によってはそういう方法もあろうかとは思っております。

【土岐主査】
 今の枠組みの中でもあり得るわけですか。

【事務局】
 はい。ただ、2つにぶら下がった時に上手く進むかどうかについても含めて議論が必要だとは思います。

【片山委員】
 寶委員の意見に大賛成であって、例えば京大の防災研と防災科研と東大地震研を一体にして、本当の災害の研究所を作るとか、それに土研や建研の一部が加わって一つの研究所を作ることができれば、それは一番いいと思うんですよね。それくらい本当に積極的に動けるかと。

【土岐主査】
 多分ここにおられる大半の方は同じような思いがどこかにあると思うんですよ。ただ一方では、私は大学にいる人間ですが、大学を巻き込んだそういう種類の統合というのは現実の問題としては大変難しい。あり得るとは思いますよ。ただ、大学を巻き込むともうごちゃごちゃになりますよね。ですから文科省としてはなかなか踏み込めないのではないかと。私は賛成だけれども、大変失礼ながら。なぜかというと、こういう場では理想を掲げることは大事です。かくあるべし、という。一方では、それができるかどうかということも考えておかないと。そうすると、非常に悩ましくなります。

【事務局】
 議論としてあるのは、防災という括りではそういう話になるのですが、大学サイドとしてこういうところは取っておきたい、防災というよりは、国交省でいえば建築技術の観点からこういうふうに切りたいとか、やはりある程度重複みたいなものがある中で今の考え方としてこういう分かれ方になっているのだろうなと思います。そういう意味で、防災上の理想の絵と他分野の理想の絵があった上で考えていかなければならないのだろうと。防災研究をさらに積極的に進めていく姿というのはあると思うのですが、他の分野も勘案して現実的な案に落ち着いていくのだろうと思います。

【土岐主査】
 次回も話ができるということでお許し願いたいのですが、他省庁との内外に関わる研究の部分を、あるいは技術開発を一緒にやりましょうというよりは、内部を基本に考えれば大学との方が本来はやりやすいはずなんですよね。同じ省庁なんだから。それをやろうとするかどうかは、最初に片山委員がおっしゃった、どこまで本気なのかという意見とオーバーラップすると思うんです。それに対してきちんと答えられなかったら、なかなか全面的に信用しますとは言えない、という意味なんですよ。少しきつい言い方かも知れませんが。

【事務局】
 大学の方の議論のあるとは思うのですが、大学では現在第1期の中期目標期間に沿って一生懸命やられていて、終わった時に何らかの評価の見直しがあると思いますが、その中で独法の見直しをするのがどうかという議論はあると思います。ある程度大学に関する議論が進む中で、他の独法についても再編するという流れは考えられると思いますが、逆の言い方をすると今大学では大学でやっていただいて、独法の中で考えるというものではないかと思います。

【土岐主査】
 今までの話は大学からは絶対に出てこないです。こういう場か、文科省からでないと出てこない。

【寶委員】
 オールジャパンの研究所も一つの考え方かも知れませんが、そうするとまたちょっと変なことも起こり得るので、研究所としてオールジャパンのしっかりしたものは省庁連携であって、それを補う基礎研究なり応用研究、社会科学研究を含めた学術的な観点からも、大学の防災、災害科学関連の研究組織というものは当然維持されるべきだと思うんですよ。それは時折競争的な関係にもなります。基礎的な面、あるいは応用的な面でも。ごっそりまるごとという考え方だけではないと思うんです。大学は大学である程度人材は確保すると。

【土岐主査】
 防災科研のところもあるし、大学のところもあるし。それと他省庁のような極めて実利に近いところの研究もあるし。そういう中で、文科省の所管する防災研究はいかにあるべきか。ここの議論を本当はしないと、そういう国としての流れが来たときに議論、太刀打ちできないですよね。

【林委員】
 その話がいつ出るのかなと思っていたんですが、その前に、渡邉室長がぽろっとしゃべったのが次のソリューションになるのではないかと。というのは、推本をどういうふうに考えるかで、推本は一つのモデルかなという気もするんですよ。中に防災科研もいるし、いろんな大学もいるし、各省庁もきれいに入っているわけですね。その全体の方向性を出すイニシアチブを文科省、ここが握っているわけです。組織的な統合までいくと、かなりきついしそれは無理だろうと。ではどういう形が現実的にありうるのかを考えると、一つの例が推本ではないかと。ただ、推本というとあまりに地震調査研究、限定的なフィールドについてやっているだけだけれども、防災科学技術の研究推進を考えると、あれは一つのエレメントであって、ああいうものがもっとたくさん存在して、それが今度クラスターをつくって融合体を造っていく、とフィールドを定義すると、推本モデル的な形での、例えば耐震技術クラスターとか、減災社会の実現クラスター、あるいは風水害のクラスターみたいなものもつくりながら、比較的ルーズな連携でもって進んでいくというモデルはあり得るんじゃないかなと。

【土岐主査】
 推本のようなものを分野ごとにつくると。

【林委員】
 本来、こういう会議はそうした分野の連携を図るような議論をしたらいい。

【土岐主査】
 私が思ったのは、推本は地震をやっていますよね。しかしあそこは方針を、ポリシーを定める場所であって、研究や技術開発を実際に自分でやるところではないんですよね。ですから、それをやるところとしてもっと発展的にやれということを言おうとしているのかと思ったら違いましたね。

【林委員】
 違いました。そこまでいくとかなり難しいから、あそこに書かれているようなある種のマスタープランのようなものがなかったら、省庁連携なんかは実際にはできないし、大学との連携も難しいと思うんですよね。マスタープランを作る努力に、どこが主体的になるか、ということを考えた時に、それは防災科研ではないだろうし、ここの大学の研究所でもないだろうと。もう一つ高い推進本部みたいな、そういうものがあって、形を作っていくという。今日の議論を聞いている中で、一つのモデルとして提案したい。

【土岐主査】
 お話を聞いていると、推本のようなものをつくって、そこが予算を握ってやれば、非常に強力なものになる。今日議論したような、いろんなものを統合したものに近い。今のままの推本では何もできない。

【林委員】
 でも、例えば地理院がGPSのデータをどうしましょうとか、そういうところの議論、それこそ効率化の議論になることは分かるし、お互いの資産をどう連携させるかというフォーラムというかプラットフォームがなかったら難しい。土岐先生のおっしゃることはよく分かるが、いきなりそこまでいけないとしたら、最初のステップとして地震以外のフィールドで推本モデルというものも十分あり得るのではないかと。

【土岐主査】
 究極的な目標を議論するのか、それよりも下がった、しかし今よりももっと強力な目標を定めるのか。落としどころというほど下卑たものでもないんだけれど、それを定めないと、国全体の流れが資料43-1のように出てきているわけだから、その中で防災研究をこうやれ、と意に沿わないことを言われた時に、言い返さなければならない。それは目標を持っていないと議論ができない。

【林委員】
 逆に言えば、4つのハードルがあって、最後に防災科研をどこかと統合、という話に行くまでの最初の2つのステップは、私はクリアできていると思うわけですよ。防災というのはこれからも我が国が公を中心にして是非とも推進していくべき研究領域である、ということのある種のコンセンサスみたいなものは、こういうのを見ている限りはあるかなと。では、それを次にどういうふうに具現化するかという時に。

【土岐主査】
 それは、先ほど田中委員がおっしゃったように、我々はある部分では防災オタクなんですよ。我々がいいと思っても、世の中全体がそうとは限らない。防災は絶対に国家の名において、行政がやらなければ誰もやりません、民間にはできっこないと我々は思っていますけれども、社会全体が本当にそう思っているかというと、必ずしもそうではないかもしれない。
 例えば、自分のことで申し訳ないですが、文化遺産の防災をやっているんですが、そういう議論を講演ですると100人中99人は大賛成なんですよ。反対する人はほとんどいません。しかし、何も動かない。ということは、伝えてはいるんですよ、伝えてはいるんですが、それが何かの形をとるかというと、とらない。皆さんだって経験あるように、防災の研究や技術開発の重要性ということを、一般の方に伝えようと努力されているはずですよ。それで、本当に彼らがリアクションしてくれますかと言ったら、大事ですね、と理解してくれるだけで終わっているじゃないですか。林委員は、クリアしているとおっしゃるが、それは我々がそう思っているだけで、本当に世の中の人が、防災の問題は誰もが国がやるべし、と思っているかどうか。

【林委員】
 少なくとも、この行政減量・効率化有識者会議程度のレベルはクリアしていると。

【土岐主査】
 だから、ある意味我々だけの視点では危険かもしれないことは、先ほど田中委員の話を聞いて、そうだと思った。

【岡田委員】
 行政減量・効率化有識者会議で、研究開発型の法人については、国の方針等との関係について精査する、というところが入り口になっているんですけれども、具体的には国の防災に関する研究開発ですと、第3期科学技術基本計画と、この委員会が定めた防災に関する研究開発の推進方策ですよね。これに照らして、うちの研究所がちゃんとやっているかどうかを見ていただけると思うんですが、一方で検討の視点において、選択と集中を考えると。これは毎年のように言われているんですが、推本がない段階では、地震以外ではこの委員会が役割を担うと思うんですが、ここで作った政策みたいなものが机上資料の一番最後にある推進方策なんですが、はっきり言ってこれは総花的なんですよね。お前のところで考えろというのではなく、こういう推本的なところで、例えばこの分野の研究はもう少し少なくしてもいいんじゃないかとか、こちらで選択と集中を図って降ろしてくるという立場で、我々が国の方針を受けていくということになりますので、林委員がおっしゃるような各分野の推本ができればそれはそれで望ましいんでしょうけれども、その前段階として、まさしく地震の場合ですと総合的かつ基本的な施策にあたるようなものをここの委員会で作っていくということが、段階として必要なのではないでしょうか。できれば予算小委員会のようなものを作って、事務局でやっておられることについてもいろいろと議論できる場があればと思いますが。

【事務局】
 まさに岡田委員のおっしゃる視点もございまして、昨年方策を作ったものの、社会的な情勢の変化が速いこともあり、無駄を省いて必要なことだけやりなさいと強く言われておりますので、そこについて推進方策以上にですね、何らかの方針を委員会で出して、総合科学技術会議等に対して、国としての防災科学技術として進めていくべきだと言えるものがあれば、それを積極的に打ち出していった上で、例えば防災科研でやるのか、国が委託研究等によりやるのかといったことを検討することは可能だと思っております。それは前のことだと一方で言われるかも知れませんが、現在でも、あるいは新たにこういうことが大事だということを言った上で、どこでやっていくべきかということに深入りできれば、説明をする上でかなり強い柱になっていくとは思います。

【林委員】
 岡田委員のおっしゃっていることは個人的にもすごく賛成なんですけれども、この委員会のリーダーシップを発揮することが大事なんではないかと。悪い言い方をすると、何となく事務局が作ってきた次年度の予算案をはいはいというだけの委員会では、やはり本来の意義を果たしているとは思えないんですよね。事務局が通常の業務をいっぱいやってくれるのであれば、5年、10年というものを踏まえたある種のロードマップを作るのが本来の役目だから、そうした議論をすることが大切ではないかと。しばらくこういうのはなかったんですよね。ですからこれは非常にいい方向に向かっているのであって、だからこそいろんな議論ができる。

【土岐主査】
 根源的な議論ということですね。

【林委員】
 ある意味で、社会にまだ十分認知されていないというのであれば、そういう十分な認知を得ることもミッションの一つに置いて、どのような活動を考えるべきかというグランドデザインの設計を、本来やるべきなのではないかなと。その時に、ここに集まって2時間好きなことを言っただけでそれができるかというと、それは難しいのであって、基本的な、推本モデルではないですが、それを実行するための組織の在り方とか、課題とか、学ぶべき知恵は全くないわけではなくたくさんあるので、地震調査研究の推進だけをやっていれば防災が全部クリアできるというのが嘘だと言うのであれば、当面は組織がないからこういうところの活用も含めてやるべきだと思います。

【田中委員】
 防災は、いろんな意味で社会的にも理論武装を要求されているような気がします。今の林先生の話も含めて、要するに理論武装をやるような、きちんとした、研究なのかどうかは分かりませんが、スキームは一度作った方がいいと思いますね。ある意味では、来年度の予算案を見ていても予測する、伝える、理解する、の個別要素が多くの省庁で展開されているという議論です。ところが、林先生風に言うと、どこかにやはり制約議論があって、そこを重視しないといけない。誰が見ていくのかというと、ちょっと横並びの議論なんですね。非常にしにくい。そういう仕組み、場ができれば、とてもよいのではないかという気がします。

【事務局】
 この防災分野の研究開発に関する委員会は、文科省全体の防災科学技術を推進していく司令塔というか、アドバイザリーコミッティーとして位置付けられているわけでございますが、防災は実施機関や関係者が多いかどうかのバウンダリーが結構厳しいというか、なかなか上手くいかない部分が他の分野より多いのかなというところがございまして、教育や普及啓発はしっかりやっていかなければならないということは議論になっていて、そのために防災教育支援ですとか、今回のプラットフォーム等の出口の部分を強くやろうという意思は事務局の方にはございます。今後進めていく方向性については、こういった場で先生方のご意見を聞きながら、考えていきたいと思っております。林先生が久しぶりだとおっしゃいましたが、そういったこともあり議論の場を設けた次第でございます。

【国崎委員】
 いろいろお話を聞いていて、私自身、どのような科学技術があれば国民の防災力の向上につながるのかを考えていました。一つに、今回の新規の中に入っている防災教育の重要性があります。この防災教育を進めるにあたっては、やはり文科省が主体的にやっていく必要がありますし、文科省でなければなかなかそれを実行していくことは難しいと感じているんですが、本当に国民の防災意識というのは私が感じるだけでも、阪神・淡路大震災から12年経ってどう変わったのかといっても、被災した人でさえも意識が風化して、国民もなかなか防災意識が向上しないという現実があります。その中で、例えばなんですが防災教育の中で、子どもを教育するフィールドは学校がありますけれども、大人を教育するフィールドはあるんだろうかということを考えております。例えば、この災害リスク情報プラットフォームの構築をして、有効なデータがある、私達にとっては有効なデータと認識していても、国民の方からすればですね、そのデータをどうやって自分の防災力の向上につなげればいいのか、その抽出というか理解力というか、実際の防災につなげていく部分のところがなかなか技術として難しいのではないかと思うんですね。ただ、そういうところを私達が伝えていくということも大事なんですが、一方でそういう技術を自分の防災力の向上に生かす力を国民に持ってもらう必要もあって、そういう意味での防災教育ですよね。そういうところも推進していく必要があるのではないかなと思います。

【碓井委員】
 やはり文部科学省ですから、世界に誇れる技術というのは主張すべきだと思いますね。それがちゃんと国民に伝わるようになっているかどうか。何となく分かる防災ではなくて、ちゃんと地球の内部からですね、きちんと分かるようなものがないですよね。つまり、最先端の研究が日本にはある、それをもっと進めていくことと、それをそのレベルで国民が理解できるようにすることですね。そうでないといけない。そのためにはプラットフォームも使えますけれども。やはり、研究の進化を文部科学省としてはまず言わなければならない。これは世界に誇れる日本の研究分野なんだと。そこを衰退させることは、国力に関係しますよ、国民の安全に関係しますよという柱をばしっと持って、それから教育をやっていかなければ。やはり文部科学省ですから、科学と教育ですよね。

【土岐主査】
 お話を伺いながら頭に浮かんだのは緊急地震速報ですね。国民の方々が、あ、そうかと理解し始めていますよね。あの背景には、地震学の最先端のところが入っているわけですよ。まさに岡田委員の防災科研が気象庁と組んで、表向きは気象庁しか見えませんが、殆どのところは防災科研がやっていたんですよ。そういうところは大きく言うべきなんです。実際の事実はそうなんですから。私に言わせれば気象庁に譲りすぎだと思っているんですが、そういうものが重要な研究に基づいているんですよということを。

【事務局】
 緊急地震速報についても、研究成果が生かされているといことはできるだけ広報してはいるんですが、おっしゃるとおりのところもあります。

【土岐主査】
 天気予報の延長くらいにしか思われていないです。まるっきり違う。

【事務局】
 防災というのは特に、利用する者が、企業や産業化に結びつくものでもないので、他の分野に比べると広報等の活動は特に一所懸命やるべきものだろうとは思います。まだ足りないというふうに当方も思っていますので、教育等の連携できる分野ともやっていきたいと思います。

【土岐主査】
 防災はディフェンスであり、オフェンスではないから。放っておいたらなかなか身につかない。

【碓井委員】
 ジオテクノロジー分野は今学校教育では衰退していますよね。地学も地理もがたがたです。そういうところも考えておかないと、災害地震国なのに、地球の内部構造も知らない、地形も分からない子がいっぱい増えてきますよね。文部科学省はやはり人材でしょうね。次の科学者を担うところじゃないですか。そこが脆弱になっているところは問題です。

【壁谷澤委員】
 ごく卑近な話として、E-ディフェンスとか、ここの目玉になっているようなプロジェクトがあると思いますが、それをやはりここの中だけでやっているのではなくて、民間という話もありましたが、せめて他省庁が乗ってきて利用するということをもう少し考えて欲しいと思いますね。どう進めたたらよいかはよく分かりませんが、他のところは自分に予算がないと何もしないということになるので、せめてこっちが少し呼び水を出してとか、もう少し省庁間、あるいは例えば文部科学省の中で言えば、文部科学省の施設があると思うんですが、あれは文部省系と科学技術庁系で分かれているわけですよね。本当は学校の耐震という問題だって、もう少し中で上手くできると思うんですが、そういう話にどうもなりにくいというか。どちらかがちゃんと声をかけないとなかなか動かないのではないかと。そのあたりから垣根を取り崩すような取組があってもいいのではないかと。

【事務局】
 基盤的な研究設備を整備して、いろんなところに使ってもらうというのは一つの役割ですが、財政的な制約として、利用者負担が重要だということもあってですね、その中でもせめぎ合いがあるんですけれども、なるべく広く使えるようなスキームで運用していきたいとは思っております。学校耐震の部局とは、どうも対策と研究開発が分かれてしまっているところがあるので、そこは考えたいと思っております。

【福和委員】
 最近、少し社会還元加速プロジェクトをお手伝いする機会があって、何となく感じるんですけれども、すごく立派な方針が立てられているけれども、それを総合科学技術会議側でやろうと思っても、あそこには人がいない。実質的に専任の人は一人もいないし、予算も何も出す権利もないし、そういったところでやるぞということだけを言っていても、なかなか動かないですよね。その受け皿は今どこがあるかというと、防災研究に関しては多分ここしかなくて、省庁連携をやるといっても多分リーダーシップは総合科学技術会議でできるけれども、実質的にやろうと思ったら林先生がおっしゃったように、推本的なものを、一番たくさん防災関係の研究予算をもらっているのは文科省だから、連絡会議的なものとか、あるいはここの後ろに各省庁の防災研究を推進している方がオブザーバー出席するとかしないと、なかなか実質は動いていかないんじゃないかなと。防災研究は各省庁ですごくたくさん目玉予算として取っていますが、どういうところで何が動いているかということを推本のように見合うことができないんですよね。実際の施策にも非常に近いものですから、防災研究と防災施策とを連携させたような形で、オブザーバーもいっぱいいながら、今後の戦略を総合科学技術会議の方々と一緒に手を携えてやる、そういう部分もやっていいかなと思います。総合科学技術会議が連携調整すると言ったって、人がいないので、多分無理ですよね。今防災で人が集まっているのは、内閣府の防災部局とここだけなので、実務面で上手くやっていけるような方法を探せるといいかなと思います。

【事務局】
 まさに、地震調査研究推進本部以外の研究分野については総合科学技術会議がやっているところですが、おっしゃるとおり分野が多いこともあって人がなかなか少ないこともあろうかと思います。当課はある程度のボリュームでやっているので、きちんと進めていきたいと思うのですが、他省庁への声かけとかについては、内閣府が全体の省庁のとりまとめということもありますので、そこでやってほしい、若しくはやってくれないと回らないのではないかなという部分もございますので、そこは上手く役割分担をしながら進めていければいいのかなと思っております。当方で実務的にやらなければならない部分、向こうで全体を調整する部分、やりながらでないと上手くいかないと思いますので。

【荒卷委員】
 合理化計画が12月下旬に決定ということですね。時間的には非常にタイトな中で、資料43-1の3のところで、考えられる方向性が示されているんですが、これに対する解決策、戦略化というか、それはどのようにお考えなんでしょうか。

【事務局】
 次回、今日いただいた意見をもとに事務局で案を作って、それをもとに議論いただくことを考えてございます。その中でご紹介しようと思っていることがあるんですが、現在行革の本部の方ではいろんな省庁を呼んでヒアリング等をしているんですが、国民からも広く意見を求めたいということで、大臣自らパブリックコメントの指示を、というようなこともやっておるようでございます。
 向こうでは、役所の意見と国民からの意見を聞きながら、ある程度タイトな時間ですので、政治的な流れも踏まえながら、最後は判断がなされると思っております。まだまとまっておりませんので時期としては難しいのですが、必要な情報については随時入れていきたいと思っております。

【土岐主査】
 そろそろ時間がまいりました。
 今、渡邉室長から本日の意見を踏まえて案を提示するとおっしゃったのですが、それはそれで結構ですが、事務局が出してきたものを議論してお終いというのもよくないので、少し、僭越ですが、委員の方々に、本日の意見を踏まえて、自分が事務局であればこういう案を出すというものを、書いて出してくださいとは言いませんが、頭の中でおまとめいただいて、次回にでもご披露いただければよりよいものになるのではないかと思います。いかがでしょうか。ご協力いただけますでしょうか。

【事務局】
 行革をトリガーとして本日こういうお話をさせていただいたんですが、そうではなくても、例えばプラットフォームのようなものが立ち上がるとか、E-ディフェンスをどう具体的に使っていこうかとか、そうしたことを考え、昨年推進方策を作りましたが、新たに防災科学技術の在り方を検討したほうがいいのではないかという思いも事務局にはありましてですね、年明け、12月までに終わるのではなくてですね、それ以降にもご意見をいただく機会をもたなくてはいけないのではないかと考えてございますので、引き続きご相談させていただきたいと思います。

【片山委員】
 その前に、在り方が決まってしまうのではないですか。

【事務局】
 それも踏まえて、ということでございます。一つの制約が決まった上での話になってしまいますが。

【土岐主査】
 当面は、12月までは変わらないことを前提にしないと、議論のしようがないですね。

【事務局】
 少し博打にはなりますが、そこで議論することには意味はあるものと考えます。

議題(2) その他

【土岐主査】
 よろしいでしょうか。そろそろ終わりにしたいと思います。
 事務局から連絡事項がありましたらお願いします。

【事務局】
 たくさんのご議論、ありがとうございました。
 次回も引き続き議論いただくこととしており、現在の予定では11月29日午後に行うこととしております。ただ、実際には整理合理化等の動きもありますので、日程はご相談させていただければと思います。
 先ほどお話しましたとおり、年明け以降も議論を続けさせていただき、最終的には来年度いっぱいあたりを目途に進めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日言い足りなかった点等については、事務局で検討する上での材料にもしたいと思いますので、お伝えいただければと思います。
 本日はありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局地震防災課防災科学技術推進室

(研究開発局地震防災課防災科学技術推進室)