防災分野の研究開発に関する委員会(第41回) 議事要旨

1.日時

平成19年6月28日(木曜日) 15時~18時

2.場所

独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター第1会議室

3.議題

  1. 「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」実施機関の決定について
  2. 平成20年度概算要求における重点事項の検討について
  3. 防災研究成果普及事業の事後評価方針について
  4. 防災研究成果普及事業の事後評価について(非公開)
  5. 大都市大震災軽減化特別プロジェクトの事後評価方針について
  6. その他

4.出席者

委員

 土岐主査、天野委員、荒卷委員、上田委員、大牟田委員、岡田委員、壁谷澤委員、吉川委員、国崎委員、重川委員、寶委員、田島委員、田中委員、林委員、福和委員、山岡委員

文部科学省

 板谷大臣官房審議官、土橋地震・防災研究課長、渡邉防災科学技術推進室長 他

5.議事要旨

【事務局】
 定刻になりましたので、「防災分野の研究開発に関する委員会(第41回)」を開催いたします。
 本日は、現時点で委員13名(後に16名)にご出席いただいております。
 会議の開催に先立ちまして、文部科学省大臣官房審議官の板谷よりご挨拶申し上げます。

【板谷審議官】
 大臣官房審議官の板谷でございます。
 皆様には、第41回の防災分野の研究開発に関する委員会にお忙しい中ご出席いただき、心より感謝申し上げます。
 前回の委員会において、第3期科学技術基本計画、分野別推進戦略、及びイノベーション25に掲げられた、防災分野の研究開発・技術革新の重要性等についてご説明させていただきました。
 その後、3月の能登半島地震に代表されるように、全国どこであっても自然災害に見舞われる危険性が改めて指摘され、この分野の研究開発を早急に推進し、その成果を社会に普及させていく必要性が国民からも強く求められております。
 先日、経済財政諮問会議において閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」においても、「持続的で安心できる社会の実現」を目指し、「治安・防災、エネルギー政策等」の強化が掲げられました。
 また、総合科学技術会議においては「平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針について」が策定され、イノベーション25の早急な具体化、分野別推進戦略の着実な推進等が謳われております。
 これらを踏まえ、文部科学省では、平成20年度予算の概算要求に向けた検討を行っているところです。本日の委員会では、文部科学省が取り組むべき重点課題について審議を行っていただくこととしております。
 委員の皆様には、防災分野における研究開発を推進するため、当委員会において忌憚のないご意見を賜りますようお願いいたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。

【事務局】
 ありがとうございました。
 続きまして、配付資料の確認をいたします。
 ‐配付資料確認‐

【事務局】
 議事に入る前に、前回の委員会以降、委員の異動がありますのでお知らせします。
 ‐資料2に基づき説明‐

 なお、東日本電信電話株式会社の黒岩委員が、平成19年6月22日付けで辞任されております。後任の委員については、現在委嘱の手続を行っているところです。
 あわせて、事務局においても人事異動があり、6月25日付けで、防災科学技術推進室長が阿部から渡邉に代わっておりますのでお知らせします。
 それでは、以降の議事進行は土岐先生にお願いいたします。

議題(1) 「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」実施機関の決定について

【土岐主査】
 それでは議題(1)に入ります。
 今年度から開始される「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」については、昨年度末の委員会において審査作業部会を設置したところです。
 まず、その後の状況について、作業部会の田中主査及び事務局から説明をお願いします。

【田中委員】
 ‐資料3に基づき説明‐

【事務局】
 ‐机上資料に基づき補足説明‐

【土岐主査】
 田中主査並びに事務局からの説明について、ご意見を賜りたいと思います。
 この件については、作業部会に一任というか、そちらで決めていただくことになっていましたよね。この委員会で最終決定云々ではなく、報告を受けるということで、決定はそちらにお任せするという。

【事務局】
 作業部会及び文部科学省において決定するということになっています。
 作業部会で審議した内容については、上の委員会に報告するということになっています。

【土岐主査】
 報告を受けたわけであり、この委員会においてその結果がどうなるというものではありません。ただし、内容についてお尋ねいただく分には結構です。先程、田中主査からも「注文を付けました」という話がありました。したがって、結論は変わりませんが、この委員会で皆様のご意見があれば、その注文の中に加えていただくことはあって然るべきだと思います。
 その注文を担保というか、研究者が注文を聞かなかったらどうするのですか。

【田中委員】
 そのあたりのことについては答える立場にありませんが、本藏先生にプロジェクトディレクターになっていただいており、プロジェクトの審査にも参加いただいています。本藏先生に全体を管理していただくことになっていますので、ある程度評価をいただくことができます。あるいは、3年目の中間評価で議論いただくことになるのではないかと思います。

【土岐主査】
 これは中間評価が行われるのですね。

【事務局】
 5年間のプロジェクトですので、中間評価は行います。

【土岐主査】
 私が気にしているのは、他の大きなプロジェクトでも、当初の約束と違うことが中間評価で指摘されても、事後評価の時には素知らぬ顔をしている人がいる。それは本当はけしからんことなのですが、私はそういう場に出くわしたことがあるので、注文を付けてそれが本当に影響を及ぼすか及ぼさないのか、ここをきちんとしておかないと意味をなさない場合があるのですよね。私は自分の体験を申し上げているのですが。

【事務局】
 今、田中先生からもお話がありましたけれども、本藏先生がプロジェクトディレクターという形であり、あと文部科学省の方でも同様の認識を持っており、推進委員会等を定期的に開いて、中間評価まで放っておくわけではなく、随時進捗状況を把握し、今の土岐先生のご意見についても、それを踏まえて進めていきたいと思っております。

【土岐主査】
 プロジェクト3の代表者はそこにおられますけれども、きちんと課したはずですので。よもや聞き流しはないと思いますが。

【林委員】
 確かに承りました。

【土岐主査】
 後のお二人についても、本藏先生に目を光らせていただいているということで、今の件についてはこれまでにしましょう。

【事務局】
 一点補足させていただきますと、今回のご意見については業務計画書の中に反映させていただくこととしております。

【土岐主査】
 他にご意見はありますか。
 ないようであれば、以上を踏まえて所期の目的が達成されることを願って、この件についてはおしまいにしましょう。ありがとうございました。

議題(2) 平成20年度概算要求における重点事項の検討について

【土岐主査】
 それでは、議題の(2)であります。
 まず、政府の方針、及びそれにもとに考えている重点事項の案について、事務局から説明をお願いします。

【事務局】
 ‐資料4、机上資料に基づき説明‐

【土岐主査】
 それでは、議題(2)について、いろいろとご意見があろうと思います。どこからでも結構かと思いますので、ご発言をお願いします。

【山岡委員】
 最初の、「東海・東南海・南海地震の連動評価研究」の必要性が非常に高いことはよく分かります。これは何年計画くらいを考えられているのでしょうか。

【事務局】
 どこまで結果が出るかは分かりませんが、当面の研究開発プロジェクトとしては5年間を計画しております。

【山岡委員】
 5年ということですが、1の「物理モデル構築・シミュレーション研究」にはかなり基礎的な研究も含まれており、5年でここまで達成するのはかなり難しい気がします。そのあたりの見通しはいかがでしょうか。

【事務局】
 山岡先生にも何度かご意見をいただいていますが、並行して地震調査研究推進本部で次の総合基本政策、現在の総合的かつ基本的な施策は平成11年にでき、10年間の地震調査研究の基本になるものとして位置付けられているのですが、その次の計画を策定しなければならないと考えており、その目玉となるものとどう位置づけるかを検討しています。その足がかりになるものとして、データを提供できるようなものをここから生み出せないかということを念頭に置いています。

【山岡委員】
 地震予知の研究の方で見えてきたものを実用に移すという意味で、目玉の部分であると思いますので、ぜひ上手く推進していただきたいと思います。
 あと、3ページ目で気になったのは、2.のプレート境界地震については云々の赤文字のところなのですが、モデルと数値シミュレーションで予測ができるかというとそうではなくて、現在どういう状況にあるかというモニタリングがないとできないということを明確に主張しておいた方がいいと思います。

【天野委員】
 教えていただきたいのですが、1ページ目に災害情報共有システムとあり、その下に災害情報を伝えるとあります。このシステムは、イメージとしては発災までなのかということなのですが、この災害情報共有システムを発災後にも役立てるというようなイメージがあるとすれば、伝えるだけではなく集めるということも非常に大切なことだと思います。このあたりの事情を調査させていただくと、どちらかというと伝えるということに関しては、ある程度イメージが出来てきているのではないかと。5年かければできるのかなという感じがするのですけれども、集めるということに関しては、壁は法制度という感じもしますが、その前に技術の受け皿が出来上がっていないために、システムが出来難いという状況にあるのではないかと思うので、伝えることを5年でやって、それから集めることをやろうということになると、いざというときの情報システムは何十年後でないと出来上がらないというような危機感を持っています。そのあたりについて、今からでも集めるということを考えておいた方がいいのではないでしょうか。

【田島委員】
 結局、地震が発生した場合にですね、いかにその情報が災害軽減のために役立てられるかという意味でのシステムの構築ということですね。

【天野委員】
 いえ、1ページ目の右下にもありますが、復旧・復興の話です。復旧・復興は現状把握がないとできない話なのですね。現状把握をするためには、情報を集めることが必要ですが、今そのあたりの話がなかったので、せっかくこういうことをおやりになるのであれば、そうしたことを考えてもいいのではないでしょうか。

【福和委員】
 平時に集めることと、発災後に集めることと2つありますから、分けて議論すべきだと思います。平時に関しては、人間関係をきちんと作っておくこと、省庁の壁を崩しておくことが必要です。そうしないと、データはそれぞれ組織から出てこないので、省庁の垣根をどう破って情報を互いにどうやりとりするかということが大事ですよね。発災時については、発災時情報を集める仕組みが今少しずつできてきているので、それを上手くここに組み込んでいければいいと思います。衛星も含めて画像の情報もたくさんあります。それと、せっかく左側のところで地震観測網も含めたモニタリング技術ができているので、モニタリング技術を上手く融合させた情報システムが出来てくるともう少しよくなるのではないかと思います。ついでにもう一点、左側の「構造物の破壊過程解明及び耐震評価」というところですが、現在はE‐ディフェンスを支えるという意味でもこれでいいと思いますが、本当の建物の実力は振動台の上では分からないので、建物の地震観測も必要です。今は地盤ばかりが観測体制が充実していますが、せっかく自然の振動台があるわけなので、どこの省庁が中心になるのがよいか分かりませんが、建物の強震観測を相当きちんと整備しておかないと具合が悪いと思います。今年度の重点事項には入らなくてもいいですが、来年度以降、他省庁との間の中で、破壊挙動を解明するための建物系の観測システムをぜひ加える方向で検討していただけるとありがたいです。

【土岐主査】
 ただ今福和委員から2つのご指摘がありました。その前の情報のことなのですが、災害時における情報は、皆がお互いに共有しなければ役に立たないということは、誰しもが認識していることです。今からさかのぼること3、4年になるでしょうか、内閣府に防災情報の共有化に関する専門調査会ができまして、そこでは省庁だけではなく、いろいろなセクターが関わっているのですね。放送の会社であったり、通信の会社であったり、それぞれがデータの流通の役割を担っています。それぞれのセクターが、どういうことをどういうふうにしなければならないかということを、私も関わって議論しましたが、その後、それが国としてどういうふうに進展したかは、私も確かめてはおりませんが、議論してそれでおしまいになったとは思っておりません。事務局にお願いなのですが、例の専門調査会におけるその後の状況を調べていただいて、次の機会にでも皆さんにお知らせしていただけるとありがたいと思います。その時にも議論になったのですが、震災時の知事であった貝原氏は、既に知事を終えられた立場で委員でいらっしゃったのですが、非常に憤慨しておられまして、自分のところから皆が情報を持っていくだけであって、当事者である自分のところへ何も返ってこない、とんでもないことだと。まさにそのとおりで、情報というのは集めて、届けて、アップデートして、この3つが揃わなければ情報とはいえないわけですよね。今、天野委員からどうやって集めるのですかという話がありましたが、真に大事なことであって、一人ひとりが集められるものは知れていますから、集まったものを皆で共有しようという概念だけはお持ちのようですが、それがどこまで進展したかは私もよく存じておりませんので、情報の共有化に関する話をここで共有させていただいた次第です。
 今、大牟田委員を見て思い出しましたが、震災の時の放送関係の会社の人達は、伝えたいことがあっても伝える情報がない、どこからも入ってこないということで、テレビ局の職員が自転車で走り回って、病院を回って、透析をやってくれる病院はどこなのだろうかと、自分達で自転車で集めて、それを放送していたのです。中身は非常に重要なのですが、情報を共有できていないから、そんなことになってしまった。そうした反省がいろいろなところであったはずなので、よもやそれは皆さんだけをこまねいているとは私は思いませんので、ぜひ次回にでもご披露願えればと思います。

【田島委員】
 先日の作業部会において、プロジェクト3の「広域的危機管理・減災体制研究」、これはこういう情報収集、先程土岐先生が言われたフィーザビリティスタディを行うということが、広い視野ではバックグラウンドにある気がいたしまして、国や地方公共団体の連携、情報の収集や連携においてどういうアクションをとるかということや、情報収集から危機管理に至るソフトの開発、そういったもののフィーザビリティの中心になっていくものと私は解釈しましたが、林先生いかがでしょうか。

【林委員】
 正直言いますと、今の田島先生のお考えは私に言わせれば狭いと思います。天野委員がご指摘いただいたことの中で、2つの指摘をいただいているのですね。一つはこの仕掛けというよりも日本全体がそうだと思いますけれども、どうしても発災前の、ハザード情報をきちんと整理すれば被害は減るという幻想の下に動いている、それが科学だと思い込んでいるというところに対してのアンチテーゼというものは絶対あると思うのです。ですから、ポストイベントの事態の中で、それをどう切り抜けていくのかということに関しての情報の重要性をこのプロジェクトが果たしてどこまで考えるのか、その領域をどう扱うのかということは大変重要なご指摘だと思いますし、見る限りはあまりないように思っているのですが、ぜひそれは広めていくべきことだと思います。
 その中の一つの大きなモーメントというか、局面が情報の収集ということなので、そこはまさしくご指摘のとおりだと思いますが、ご指摘の大きさからいうと最初の方が極めて大きなことで、これはこれからの全体のフレームをどう考えていくのかに関わる大きな問題であると。その技術的な中に情報収集がある。そしてその中で、今田島先生にご指摘いただいたような、情報をどう上手くハンドリングするのかという問題があります。
 ただ、私が田島先生のご意見が狭いと申し上げている理由は、システムがあるからものが動くわけではないのですね。

【田島委員】
 もちろん、そういうことを言っているわけではなくて、京大防災研のように観測から基礎研究までいろいろとやっていますし。

【林委員】
 そこでおっしゃっている観測や基礎研究は、自然現象としてのハザードの観測であり基礎研究であって、今天野委員にご指摘いただいている問題は、それが生み出す社会的な混乱、あるいはそれからの脱却のための基礎的な観測や研究というのは防災研といえどもほとんどやっておりません。もっと言えば、そんなものは科学ではないと思っている人がたくさんいることが問題であって、そこを野放図にしてきている。それを本気でやろうとしたら、大変大きなプロジェクトになるという認識を持っていただきたいことと、それをやるために一つ一つ乗り越えなければいけないことがあって、当然今度の首都直下というのは、そういうことに向けたフレームワークを作ることは当然視野に入っていますが、システムを作るということは目的には置いておりません。そんなにたくさんお金をいただいているわけではないですし、あれだけのお金で何でもやれというようなことを言われたら、私としてもお約束できません。

【田島委員】
 システムということをうっかり言ったかも知れませんが、そういったもののフィーザビリティスタディですね。

【林委員】
 ですから、ポストイベントの首都圏の混乱というのを想定した中で、どういう形にそれを収束させていくかということについての提言はぜひさせていただきたいと思いますが、混乱を指摘するだけで皆聞きたくないと思うかも知れませんが、混乱を収束させることについてきちんとした提言ができるかどうかは、まだ確約できる段階にはないと思っています。

【土岐主査】
 この問題は大変難しいし、なおかつ今日はいろんな人がいろんなアイデアを持っているのですよ。大昔から、災害の起こった後の情報なんていうのは、コンビニを使うのが一番懸命だと、あれは非常にきちんとしたネットワークを持っているし、人口の密度を反映して設置されていますよね。ですから非常に有効だということを大分前に議論したことがあります。いろんなアイデアがありますが、それが即有効かどうかは別の問題であって、そのあたりことを研究されるのだと思います。乞うご期待ということにしましょうか。

【田中委員】
 情報の問題を考えたときに、システムの問題は根底に必ず出てきます。なぜ、今まで情報共有の問題がこれだけ言われながら、上手くいかなかったのかは検証しておく必要があります。情報はそれぞれの機関が特定の目的、特定の精度で取るから、他の機関が使えない、という単純明快な話が出てくるわけです。あるいは、復興の段階にいけばニーズニーズというが、ニーズは見えないということは明らかで、そこをどう上手く作っていくかは必要だと思います。
 それはさておいて、1ページのところで一つだけ言わせていただきたいのは、災害を予測する、伝える、理解するという個別の切り分けをしてしまって、すべての情報問題ができるとお考えなのだろうかと。もっと別の言い方をすると、これは独立ではあり得ない。例えば一つの点でいくと、予測、伝達、理解、のどこかの有効桁が非常に甘いのです。その甘いところに他のところも依存してしまいます。逆に言えば、どこが低いのか、そこにあわせなければならないということも出てくるはずです。もう一つは、相互に連関していますので、例えばある特定の事象に関しては予測、伝達の上に限界がある、そこは事前教育のレベルを上げておかなければいけないよね、とか、多分そういうことがあり得るはずなのです。あるいは対策にこういう使い方をするから、この精度が求められる、例えば1キロのメッシュなのか500メートルのメッシュなのか、現状の対策として求められる。何を言いたいかというと、そういう面で、個々はあるのだけれども、もう少し相互の連携を見る仕組みというのでしょうか、全体を管理する、評価するというのではなくて、そういう仕組みはやはりいるのではないかという気がしました。

【土岐主査】
 新たな見地からのご意見がありました。その前のものは福和委員からの質問ですよね。事務局からどうでしょうか。

【事務局】
 福和先生のご意見は、建物への入力地震動は分かるけれども、建物の揺れは分からないので、建物に地震計を設置して調べてはどうか、ということでしょうか。

【福和委員】
 そうです。せっかく小学校にたくさん設置するのであるから、地盤だけではなくて、建物に設置しておいた方がいいのではないかということです。

【事務局】
 次の総合基本政策の検討というのも、推本において検討していく中で、同様のご意見を何人もの先生からいただいていますので、次の課題として考えたいと思います。

【土岐主査】
 それでは、先ほどの田中委員のご指摘、このように3つばらばらに切るのではなく、少し違った見方があるのではないかというご意見だったと思いますが。

【事務局】
 そうした視点については当方として理解はしておりますが、プレゼンテーションの資料として分かりやすい表現として3段階があって、今回の柱としてはそれぞれこういうものを考えていきたいという形にしています。一見はばらばらに見えますが、当然のことながら施策を進めていく上ではそれぞれの成果を連携させることが重要と考えておりますので、事務局としては十分に重視しながら進めていきたいと考えています。

【田中委員】
 できれば、何となくでも見えるようにしていただきたいですね。

【土岐主査】
 おそらく、渡邉室長が言われたように、物事を3つに区切っているとは誰も思わないのですが、問題があるとすれば、防災の問題はほとんどが国や地方自治体といった行政を通じて具現化されてはじめて完結するわけですよね。そうでないと、研究しました、技術開発しました、で終わったのではほとんど意味を持たない。特に、例えば先端科学技術という分野であれば、プロジェクトで何かを開発しておけば、いろんなビジネスにつなげるということがあれば、皆さん寄ってきますよ。しかし、残念ながら防災の分野はディフェンスでしかなく、オフェンスではないわけですよ。ですから、どうやってお金を投じるかを考えないと具現化されません。その視点をどこかに常に持っていないと、技術開発、研究開発のための研究に終わってしまう。その視点をちらっとでも見せておくことが利口ではないかと私は思います。

【寶委員】
 私の専門は風水害でして、この10枚のカラー刷りの資料を拝見しますと、9枚目くらいにしか関係しませんので、前回申し上げたことではございますが、風水害についてもさらに取り込んでいただきたいと思います。
 9ページの災害リスク情報ステーション構築プランですが、2つ申し上げたいと思います。一つは、先ほど平時とリアルタイムの話がございました。これは一番下にリアルタイム災害情報システムの開発とありますが、特にリアルタイムになりますと、いろんな現業機関があるということで、例えば気象予報、洪水予報を出すにしても、気象業務法等の問題もありますので、そうした制約をどう克服するシステムを開発するのかが大事なのではないかと思います。それからもう一つ申し上げたいことは、こういう情報ステーションをどこかに作るとして、やはりバックアップシステムが要るだろうと。関東に作るのであれば、もう一つは西日本にないと、一つがやられてしまうとにっちもさっちもいかなくなるということがあると思いますので、バックアップシステムをどのように考えておられるのかを教えていただきたいと思います。
 それから10ページ目の防災教育支援推進プログラム、特に教職員研修の実施というのがございますが、これは従前より大変大事なことだと思っておりまして、高校、中学校、小学校の先生方に災害あるいは防災のことについて、今まで以上に理解を深めていただいて、次世代を支える子ども達にしっかり教えていただくことが大事だと思っております。その場合、初等中等教育局ですか、そことの連携をどういうふうにお考えになっているのか。大学の入試でも、物理の裏番組で地学をやって、物理を取った人は地学を受けられないとか、そんな状況になっているのですね。そこで、地球科学系の教員が文部科学省に対して、それはひどい、という抗議をしたことがあるのですが、教職員研修、あるいは災害防災関係のことをどのように授業に組み込んでいただくか、そのようなことについて他局とどのような連携をされるのかお聞かせいただきたい。

【事務局】
 一点目の情報ステーションのバックアップの話でございますが、当省としてはまず研究開発を進めていきたいと考えており、まずはこういうことができるように、ということでございます。寶先生のおっしゃることは、さらに実用化にあたって、ということだと思いますので、その点は先ほどから土岐先生がおっしゃっているように、研究開発をして、実際導入時にどう使えるかという点で問題も生じると思いますが、それはもう少し先の時点のことになろうかと思っております。そういう意味で、寶先生のご指摘の点も考えながら研究開発を進めてまいります。
 二点目の教育の方でございますが、学校安全についてはスポーツ・青少年局の学校健康教育課というところがとりまとめを行っておりますが、この防災教育支援の検討に当たっても、その担当課と連絡をとりながら進めているところでございます。また、現在も教員研修が行われており、その中で防災についてもやっておりますが、そこについてもこの検討を通じて充実させていきたいという思いが事務局にもございますし、今でも小学校、中学校等において、教科の中で防災を教えることは可能なわけでございますが、それをなるべく連携させるような形で、効率よく防災教育がなされるような方法を検討し、推進方策についても懇談会の方で考え、各学校に広めていくための施策を考えているところでございますので、寶先生のご指摘の点も踏まえて引き続き検討していきたいと思っております。

【土岐主査】
 今の教育の問題なのですが、渡邉室長の話を聞いていて思い出したのですが、自然災害特別研究という研究チームがございまして、そこでも20年ほど前に、学童に対する防災教育は絶対大事だということで、副読本まで作ってやったのですよ。しかし、実際には上手くいかないのは、先ほども言いましたが具現化するところで頓挫するのです。なぜかというと、教育委員会です。副読本を認めてもらって使ってもらうためにそこが突破できないのです。材料は作ったが、教育委員会に話が通らない。今は、20年も前の話で状況も変わっていますし、旧文部省の中の研究班ではなくて、文部科学省の中の委員会でやることですから、きちんとした公の道で通すことができるかも知れませんが、そんなこともあって、実際にアイデアを練るだけではなくて、どうやって実際のところに植え付けるかということを考えなければものにならない、といういい例だと思って申し上げました。

【林委員】
 「防災教育支援に関する懇談会」というものをやらせていただいておりまして、寶先生のご指摘の内容についてもできるだけ反映できるように考えています。渡邉室長の話で学校健康教育という話があったように、文部科学省というのは一番付き合いにくいかもしれない、というのが実感なのですが、文部科学省の中で安全安心の取組という位置付けがある。ここでは、防災教育をどう支援するかという、もう一つ周辺から支えるという枠組みを構築しようとしています。そういう意味では、ユーザーとしての先生方であるとか、あるいは地域のリーダーの方達が、優れたコンテンツを有効に使えるような枠組みというのを考えています。
 中間報告があと1ヶ月くらいの間で形になるので、今ここであまりはっきり言えないところがあるのですが、ここからは座長や懇談会から離れて個人としてお話させていただきたいのですが、科学技術をどう防災教育の中に活かしていくかという枠の中でやっておりますが、やはり今、日本は科学技術立国を目指している。そういう意味では、サイエンスエデュケーションやテクノロジーエデュケーションのようなものは極めて重要なことなのですね。それを、いかにいろんな場を使って、早く、確実に、的確に関係する人達に伝えることができるのか、教育というといろいろ難しい問題がでてきますが、そういうインストラクションの仕組みの構築というのを個人的には目指していくべきではないかという思いで、教材であったり、実際の教育の媒体になっていただくインストラクターの養成であったり、効果的な場の作り方のようなことを考えることに3つの箱があるのだという目で見ていただけたらと思っております。
 一つだけ好きなことを言わせていただくと、この10枚を見ている中で、全体を整理する非常に良い絵がこの9枚目の右側の絵のように思うのですね。1枚目にある災害を予測する、伝える、理解するというのは、実は情報の処理の仕方に関わってきます。そう考えると、先ほど天野委員にご指摘いただいた収集というのも、同じ意味で必要なことになるのですが。それから、一つのレイヤーをどう作り、理解する、予測するというのは可視化すると言ってもいいかも知れませんが、ここで表現できるか、皆に伝えられるか、皆に分かってもらえるか、それに必要な情報をどうやって集めるか。さっきの山岡委員のモニタリングは集めるに入るのですが。それがハザードにもあるし、脆弱性を評価するようなところにもこの全部が出てくる。実際の被害状況を集める部分にも出てくるし、社会がどう対応しているかを理解する上でも、同じように集めて可視化して、伝えて理解してもらうというステップがある。そういう意味で、このレイヤーをそれぞれの専門家が作って磨いて分かってもらえるようにしている、その同じプロセスをやっている。それが何層にも重ならないと、防災や減災の全部のステップが回っていかないフレームワークなのだという。そういう意味では、これは単にメタファーとしてこういうレイヤーの絵があるのではなくて、実際にGeographic Information Systemという名前でテクノロジーとしてあるわけですから、それをどう実用にするかというところが今まで非常に無視されてきたというか、軽視されてきているので、この5年なり10年なりの中で本当に災害情報というのをキーワードにして進めていくのであれば、GISを使った形での災害情報共有システムを、各分野がそれぞれ共同して、磨いていくフレームワークがいいのではないかと思います。

【岡田委員】
 災害情報の共有や、こうしたシステムは、土岐先生のおっしゃったとおり、随分昔から重要性が言われていながらなかなか実現しないのですが、研究としてやっているうちは実用化の段階に進まないような気がします。内閣府等、こうしたことを標準化して広めないといけないところが、現在は研究だけさせておいて、その間は実用化の努力をさぼっているという気がしてしようがない。こういうGISを使ったシステムはいろんな人がいろんな提案をしていて、私の研究所の中でも角本さんがやっている時空間GISとか、社会システムのチームがやっているマルチプラットフォームだとか、この分野は研究者の数だけシステムがあるような状態になっている。いい加減にどこかで標準を決めて、常に進歩はしていくのでしょうけれども、まずはこれでいく、ということを誰かがしないと、研究者というのは人と違うものを作るのが研究者ですから、標準化って絶対にしないですよね。研究としてやっているうちは本当の最終目的である防災、減災に届かないという逆説的なことを常に感じるのです。

【土岐主査】
 おっしゃるとおりですね。標準化しようとするともっと大変ですよ。ですから標準化ではなくて、ケーススタディだと思うのですよ。いろんな研究成果や技術開発があるから、それをどこかの場に持ち込んで、まずやってみる。成功か不成功かを確かめ、成功ならば次々と移していけばいいのだから。標準化をしようとすると、100年待ってもできないかもしれない。私はそう思っています。岡田委員のおっしゃるように、いろんな人がいろんな事を考えるのですから。

【寶委員】
 これはオールジャパンの災害リスク情報ステーションを作ろうというものではないですか。

【土岐主査】
 システムを作ろうとすると、ある程度検証しなければならないじゃないですか。全体に行き渡るものでなくてもいいから、とりあえず作ってみるということです。

【土岐主査】
 この件は、20年度の概算要求に向けて文部科学省がいろいろとお考えになるに際して委員の皆様のご意見を伺いたいということですよね。従って、もう一度くらいは今の意見を集約した形で、あるいは反映させた形で役所がお作りになると思います。もう一度くらい議論を行う機会はありますか。

【事務局】
 本日、ご意見をいただきましたので、ブラッシュアップした形で研究計画・評価分科会の方にご説明することになります。概算要求の中でも、今いただいたご意見を加味しながら施策を詰めていきまして、今後は事業評価という形で、8月の後半になろうと思いますけれども、施策を評価していただくことになろうかと思います。

【土岐主査】
 お聞きいただいたように、今一度ご意見を伺う機会があると思いますので、その時にお伺いするということで、この議題を閉じさせていただいてよろしいでしょうか。
 今後は議題の(3)(4)(5)と進むわけでありますが、(4)が非公開ということですので、まず(3)(5)(4)という順番で進めたいと思います。

議題(3) 防災研究成果普及事業の事後評価方針について

【土岐主査】
 まずは、防災研究成果普及事業の事後評価方針について、ご説明をお願いします。

【事務局】
 ‐資料5‐1に基づき説明‐

【土岐主査】
 議題(3)について、ご質問等はございませんでしょうか。

 ‐特になし‐

議題(5) 大都市大震災軽減化特別プロジェクトの事後評価方針について

【土岐主査】
 続いて、大都市大震災軽減化特別プロジェクトの事後評価方針について、ご説明をお願いします。

【事務局】
 ‐資料6に基づき説明‐

【山岡委員】
 この別紙4は、どういう基準で決められているのか説明いただきたいのですが。
 所属機関が関係しているということでよろしいですか。

【事務局】
 委員又はその所属機関が課題に参加している場合、という整理をさせていただいています。

【山岡委員】
 所属機関というのは、大学レベルか、部局レベルかどちらでしょうか。

【事務局】
 部局レベルです。

【山岡委員】
 それでしたら、私は3月まで東大地震研にいましたので、大大特の1に関しては評価に携わらない方がいいと思います。

【事務局】
 分かりました。

【土岐主査】
 何か大大特の事後評価について、触れておくべきことはございますでしょうか。
 次回、プレゼンテーションがあって、それを評価するということですね。評価というものはできるだけメリハリを付けないと何の意味も無いし、かといってメリかハリを付けることはつらいことでありますし。
 いずれ、次回に今一度お話いただくことになると思います。それでは議題の(5)はこれで終わらせていただきます。

議題(4) 防災研究成果普及事業の事後評価について(非公開)

【事務局】
 議題(4)については、委員会運営規則第4条第3項に基づき、非公開とさせていただきますので、文部科学省関係者、委員関係者以外の方は退席をお願いいたします。
 プレゼンについては15分とさせていただいています。終了1分前に1回、終了時に1回ベルを鳴らしますので、時間厳守でお願いいたします。

【土岐主査】
 進め方については、議題(3)でご意見を伺いませんでしたが、よろしいでしょうか。
 これは今日この場で評価を済ますということですね、基本的には。

【事務局】
 それは難しいと思いますので、お手元にご用意しております評価票についてはメモとしてご活用いただき、事務局からはメールで改めて様式をお送りしますので、後日記入の上返信いただければと思います。
 今日評価を記入し終えられた場合は、そのままご提出いただいて結構です。

  1. 「行政・住民のための地域ハザード受容最適化モデル創出事業」
    ‐資料5‐2(非公開)に基づき名古屋大学より説明、質疑応答を経て評価を実施した‐
  2. 「迫り来る宮城県沖地震に備えた地域防災情報の共有化と防災力高度化戦略」
    ‐資料5‐3(非公開)に基づき東北大学より説明、質疑応答を経て評価を実施した‐

議題(6) その他

【土岐主査】
 今後の予定についてご説明をお願いします。

【事務局】
 ‐資料7に基づき説明‐

【事務局】
 第42回の委員会で評価いただく大都市大震災軽減化特別プロジェクトは、かなり大きなプロジェクトでございまして、委員会の場で全てを把握するのは難しいと思いますので、総括成果報告書を郵送させていただきますので、一度お目通しいただければと思います。
 もちろん、委員会の場でも研究代表者からご説明いただきますが、補足資料としてご覧いただければと思います。
 委員の方から他に何かございますでしょうか。

【荒卷委員】
 先ほど触れました地震マップ、私どもで平成13年に作ったのですが、18年度に若干リニューアルいたしましたので、お申し付けいただければお持ちいたします。

【事務局】
 長時間にわたりご審議いただきまして、ありがとうございました。
 それではこれで閉会といたします。

‐閉会‐

お問合せ先

研究開発局地震防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震防災研究課防災科学技術推進室)