防災分野の研究開発に関する委員会(第36回) 議事要旨

1.日時

平成18年6月5日(月曜日) 14時~17時

2.場所

三田共用会議所 第2特別会議室

3.出席者

委員

 岡田(恒)主査、岡田(義)委員、片山委員、壁谷澤委員、鎌田委員、栗田委員、佐藤委員、島崎委員、中尾委員、永島委員、林委員、村上委員、渡辺委員

4.議事要旨

(1)防災に関する研究開発の推進方策について

【事務局】
 新委員として、兵庫県企画管理部防災企画局長の長棟健二氏と、東洋大学社会学部教授の田中淳氏に、本日6月5日付けで発令を行った。
 これにより、委員の数は21名となり、13名出席いただいているので、定足数を満たしていることを報告する。

【委員】
 それでは第36回の防災分野の研究開発に関する委員会を開催する。
 本日の議題は、前回委員会からの継続として(1)防災に関する研究開発の推進方策について、それから4月10日の第34回委員会で設置を決定した作業部会の開催結果報告として、(2)「地震・津波観測監視システム構築に向けた作業部会」の審議結果について、である。
 後者については、当該プロジェクトの委託先の選定に関わるものであるため、非公開とする。
 事務局から配付資料の確認をお願いする。

【事務局】
 ‐資料を確認‐

【委員】
 前回、各委員から出された意見は議事録として資料36‐1に記載されている。これが今回どのように反映されているかについて、事務局より説明をお願いする。

【事務局】
 ‐資料36‐2‐1に基づき、概要を説明‐
 ‐参考資料1に基づき、全体構成を説明‐
 ‐「はじめに」について説明‐
 変更点は、防災分野の位置付けが不明確であった点を修正したことと、これまでのレビューの効果については、第1章に記載したことである。

【委員】
 何か質問はないか。
 なければ、第1章について説明をお願いする。

【事務局】
 ‐第1章[1](防災分野における研究開発の現状)及び[2](推進方策の位置付けと基本方針)について説明‐

【委員】
 3ページの基本的考え方の2段落目は聞いていて据わりが悪い。防災対策は国内のあらゆる地域に求められるものである、それが産業のシーズになりにくいという。最後の3行は正しいが、そこへの持っていき方がよくない。

【事務局】
 防災分野の研究開発は日本全国で共通するといいたかったのだと思うが、そうだからといって直ちに国が、ということにはならない。そこで、他の分野と比較して産業のシーズになりにくいという理由を挙げ、国が推進すべきということにしている。

【委員】
 中身はよいと思う。文章を工夫したほうがよい。

【委員】
 3ページの最後のところで、スマトラ沖大地震に伴う津波は、途上国で起こったから大災害だ、という風に読めるが、そうではない。日本でおこると相当な大災害だ。途上国でなくても相当なものだと思うがどうだろうか。

【委員】
 狭い経験・知識で想定外なことが起きたということだと思う。

【事務局】
 ここについては、一般的に見ても大きな地震であったということがあり、さらに知識不足など、途上国特有のことがあったので、さらに災害が拡大したという整理にしてはどうか。

【委員】
 最初の原案は、後の国際協力に必要だということを示すために書いた。つなぎを消したために、後ろにつながらなくなり、被害の大きさばかりがクローズアップされる文章になってしまった。ここの文章は、国際協力が必要だという趣旨だ。ここでは津波の大きさを議論する必要はない。

【事務局】
 修正する。

【委員】
 ここに書かれている事柄そのものを、もう少し深く考えてもいいのではないか。RRもそうだが、都市部に対して、比較的注意してなかったことを反省する意味での課題の提起を行い、都市部にフォーカスしている部分は当然あって、それも片が付いたわけではない。三宅とか中越とかの災害は、日本の中でも中山間というか、いろんな意味で都市とは対極というか、自助力・共助力が弱いところで起こっている。同じようなことが、途上国という名前だが、自助力・共助力が弱いということでスマトラなども同様なので、途上国であるか先進国であるかという問題ではなく、経済や社会機能が集中していて、波及効果が大きい地域をどうどう守るかという課題と、そういう意味での集中はないが別の意味の脆弱性が高い地域をどう守るか2つの課題を択一できないような状態になった、という認識を持てないものか。

【委員】
 認識としてはそう書いたつもりでも、うまく表現できていないということだ。

【委員】
 経済や社会が集中することによる脆弱性という問題もあるし、古いというか、自給自足的な生活をしているところに巨大な外力が加わり、とても耐えられない状況となった例もある。スマトラは短時間だったが、三宅は5年、雪害も数ヶ月に及んだ。脆弱性の形が多様化しているので、両方見ていかないといけない。

【委員】
 経済的な状況からいくと、途上国に限らず、海辺の観光地などの先進国でも十分あり得る話だ。スマトラの津波を引き合いに出すのであれば、殊更低開発とは直接結びつかない部分が多く、先進国であってもああいう形態をとっている観光地は多いから、ちょっと違う気がする。

【委員】
 今の意見に賛成して、修正案だが、人々の意識を含めて、防災インフラが相対的に小さい社会で起きたため、とし、開発途上国という特定の単語を使わないようにすればよいのではないか。

【事務局】
 3ページの前段では、都市部の話に関して据わりが悪かったという話があった。後段では途上国というよりは都市部、人の多い所で起こった、そして防災に対する対応力が弱かったということに集約させて、さらに国際的な視点を含めてもう一度作文することにしたい。

【委員】
 この委員会がスタートする時には、スマトラだけが大きな問題だったが、パキスタンやインドネシアの災害が発生した今になって、スマトラだけに着目するのは、読むほうからすると、不思議な感じがする。

【委員】
 それこそ社会基盤分野に防災が属しているならば、先程の防災インフラという概念をもっと重要なキーワードに使うことはいいと思う。パキスタンもジャワも、そういう意味での防災インフラは弱いかもしれない。逆に都市部は、ある程度のインフラ整備はされているけれども、集中のためにあまりにも破壊効率が大きくなっていて、ただものを強くすればいいというリミットを超えるような危険性があるという意味で、そのあたりの認識も書いていいのではないか。

【委員】
 事務局の方で整理をお願いする。
 それでは第1章の[3]について説明をお願いする。

【事務局】
 ‐第1章[3](推進方策の基本的考え方)について説明‐

【委員】
 7ページの2行目、災害の外力は物理的現象とあるが、自然現象ではだめか。社会的現象と対比するのであれば、物理というより自然とした方がよい。
 それから8ページの2段落目だが、予知が極めて困難なため被害は甚大、とあるが、たとえ予知ができても、被害は甚大である。予知が困難な上、被害が甚大、とした方がよい。
 さらに9ページの最初、自然現象としての災害、とあるが、先程の7ページと合わせるのであれば、自然現象の外力を可能な限り再現した、というような表現にすべき。

【委員】
 先程の意見はしっくりときた。それこそ自然として災害を捉えていることのすべてではないかと思う。そこの枠で閉じるか閉じないかということが、これからの大きな分かれ道になる。今までは、自然現象として、応用物理学の世界で全部説明がつくようなものを考え、データをしっかりと集め、メカニズムを考え、それを基にしたところで対策を打つ、という閉じた世界であったと思う。それを超えたところに社会現象としての災害があると思う。被害の発生には、社会的現象が深く関わっているということはもちろんそうだが、被害を社会現象として見るか、自然現象として見るかでは、同じものでもずいぶん違う。

【委員】
 8ページに関して、防災インフラの観点で都市化型災害ならびに都市型災害とあるが、何か考えがあって分けているのか。

【委員】
 都市化型災害ならびに都市型災害というのは、河田委員の「都市大災害」という著書の中で記述がある。私もJICA(ジャイカ)の「防災と開発に関する基礎研究」という資料の中で使っている。例を挙げるまでもなく、都市型災害というのは極めて複合化し、拡大・増幅するという特徴がある。都市化型災害でも、情報化やネットワーク化によって連鎖反応を起こすという特徴から、こういう分類は現実を説明する上で都合がいい。

【委員】
 都市化型というのは、人口が今まさに増えつつある、拡張しつつあるという意味か。

【委員】
 説明しないとわからない。それは避けたい。

【委員】
 さっきの話の続きで、2つの次元を考えてもいいのではないか。ひとつは防災インフラの整備の度合いが高いか低いかという次元がひとつ。もうひとつ別の次元に、破壊効率の拡大、複合化の度合いがあって、ここでいう途上国は、防災インフラの整備が低いまま人口集中がどんどん進むと被害のスケールが大きくなるということ。しかし、例えば東京はそこそこの防災インフラはあるけど、あまりにも集中が大きいから破壊効率が高くなっている、というHigh‐Highのゾーンにいる。逆に今度は、防災インフラが整っていて、集中していない環境が作れたら、非常に安全なものになる。都市化というのは、破壊効率を上げる方向の話で、防災インフラを整備することとは独立の変数のような気がする。せっかく話を展開してきているなら、それをうまく使って説明した方がよい。

【委員】
 2‐2のマトリックスが見えていない。それをはっきりさせるということか。

【委員】
 それに加えて、3つめのファクターとして、それぞれの地域がもっているハザードの強さというものがある。それをクリアしていれば、防災インフラは一応高いと判断していいいと思う。必ずしも絶対レベルで強い弱いということがあるわけではなくて、あるにしても、日本は強くても問題点はある。それはハザードが非常に高いことによる。

【委員】
 今の話は、[1]と一緒に考慮してもらいたい。流れとしてはそうなっている。はっきり見えないだけで。

【委員】
 ここで、すべてを3字とか4字で表現することに無理がある。きちんと言葉で表せばよい。例えば、集中に対策が追いつかない災害と、集中が大きいことによる災害と表現し、それを都市型とか都市化型とか言わなければもっと分かりやすいはずだ。説明が必要なものは、それがなくても済むようにうまく言葉で表せればその方がよい。委員が、自然現象としての災害と社会現象としての災害という分け方が分かりやすいと言われたが、果たしてそうだろうか。災害はやはりあくまでも社会現象ではないのか。

【委員】
 そこでそれをいうと、話がこんがらがる。皆さん社会に対するインパクトの強さでもって災害を定義されると思うが、それに対してどういうアプローチで立ち向かっていくかという姿勢をいっている。やはり自然現象の枠の中で、閉じた世界として災害現象を描いていこうということを自然現象としての災害、と言っている。
 最近驚いたのは、河川工学の方は、本質的に河川整備をしてダムを整備すれば水害が無くなる、という考えを持っていると聞いたことだ。そういう確信をもっていること自体が、自然現象として災害を捉えていることだと思う。起こってしまった災害は、過渡期の悲しい出来事であって、本来自分たちが夢に描いていることが実現すればそれは無くなる、という風に、自然現象として災害を見ている。

【委員】
 100年とか200年に一度の災害であってもか。

【委員】
 それはまた200年、300年と描いていくことになるが、1、2年の間に、そういうことはできないという、彼らが根幹の所で悟ったということで、彼らが減災、減災と言うようになった。災害は起こるものだと考えたときに、どうするか。自分たちがこれまで武器として考えていたものを超えたところに踏み込んでいかないと被害は減らないということに気づき、戸惑っている。それは、社会現象として災害を見始めた瞬間に武器が無い、ということで困っているのだろう。ずいぶんとハザードによって、認識が違うということに驚いた。

【事務局】
 整理すると、災害というものは自然現象として発生するが、ここは社会の脆弱性について書いてある部分であり、それについての話ということになるが、都市型災害、都市化型災害というのは災害の受け手の、社会の話であると思う。先程から問題になっているのは今話した捉え方のようなので、[1]のところでも事務局で考えると申し上げたが、ここのところもいただいた意見をストーリーとなるよう流れをとらえてまとめることにする。

【委員】
 7ページの上から2行目の、「災害の外力は物理的現象であるが、被害の発生には社会的現象が深く関わっている」という部分について、先程訂正があったが、「災害過程で作用する外力は自然的要素であるが、被害の発生には社会的要素が深く関わっている」とした方がよいと思うが、いかがか。

【事務局】
 現象というより、要素という捉え方がよいということか。

【委員】
 そのとおり。現象というのは、いろんな要素が相互作用を起こした最終結果である。

【事務局】
 今回の文案は前回から変わっており、ニュアンスも違っているので、現象という言葉をそのまま使ってよいかどうかは確かに考えなければならない。

【委員】
 この6ページから7ページにかけての2(幅広い分野間の連携による総合科学技術として推進)というのは、先程の話と同じことで、第1段落から第3段落まで、基本的に同じことを繰り返しているので、先程の整理の仕方によって全体的に書き方が変わってくる。

【委員】
 それでは第2章の説明をお願いする。

【事務局】
 ‐第2章(重要研究開発課題)について説明‐

【委員】
 前回出席されていない方のために言うと、1についてはリスクマネジメントという言葉を前面に出してある。

【委員】
 11ページの付け足した文章、テロに関してだが、「ただし、リスクマネジメントの枠組も防災の全てではないことを考慮する必要がある」という部分が非常に分かりづらい。

【事務局】
 前回の委員会では、リスクマネジメントが重要であるという意見が多かったが、ただ一方で、それだけに溺れてはいけないということもあり、ただし書きとして加えたものである。

【委員】
 リスクマネジメントという言葉が、私が認識している言葉と違う。リスクの予測、事前対策、緊急対応、復旧・復興の全過程を視野に入れたリスクマネジメント、というのはおかしいのではないか。リスクには同定・評価のようなものがあって、何が危機かをまず見て、それに基づいて戦略計画を立てて、先程の言い方をすれば防止か軽減かを基本的に分けて、それに基づいて、いろんな対策を組み合わせていくのがリスクマネジメントの考え方である。そう考えると、リスクマネジメントの枠組も防災の全てではない、という表現はあまり意味をなさない。自然現象として災害を捉えているというのは、むしろそちらの方が限定的な枠組の中で災害を捉えてきているということで、もっと広い意味で災害を捉えれば、そういった構造的な意味での対策だけではできないものもあるから、保険を買うとか、それでもだめなら被害が出ることを前提にして対策を打っておくとか、その全部の組み合わせがリスクマネジメントだと理解している。リスクマネジメントを考慮した、というのでは及び腰であると思う。
 もうひとつ気になるのは、先程せっかく防止と軽減という2つのキーワードを使って話を通しているときに、ここでいきなり低減と出てきている。これをどう定義するのかが気になる。12ページの想定外の災害に対するリスクマネジメントという表現だが、言葉遣いが間違っている。未来のことを考えるのがリスクマネジメントであって、想定外の災害は既に起こっているはずだから、そこでできることは想定外の災害に対するクライシスマネジメントしかない。リスクマネジメントという言葉が、社会現象としての災害と似たような使われ方をしているような気がする。もう少し正確な意味をもたせて、使っていくべきではないか。

【事務局】
 冒頭の赤字の部分は真中へ持ってきて、前回の委員会ではこういったところがリスクマネジメントの枠組であると当方で理解しており、決して林委員のおっしゃったことと全く違ったことを意味しているわけではないと考えている。

【委員】
 リスクの同定・評価というときの同定には深い意味があって、例えば自分の地域なら地域で、自分が何に襲われるかと考えるところがリスクの同定になる。全部から守ることはあり得ないので、大きなリスクを取り出し、それに対しての対策を考える。だから、想定外のものも当然出てくる。そうしたものは発生してしまうのを前提で対策を用意しておく。用意しておく対策は、回避と縮減と転嫁と受容とがあるが、受容というのは皆嫌がる。しかし起こることを前提に皆やっているわけだから、想定外のリスクに対するクライシスマネジメントというのが本来である。

【委員】
 前回リスクマネジメントについて議論したとき、非常に低頻度だけれども大規模な災害に対して、事前に様々な対応を組み合わせて被害を軽減するということについても言及する必要があるのではないかということでこの文章が入ってきたものである。言葉は少しまずいかもしれないが。

【委員】
 趣旨はわかるが、せっかくだから言葉も直してはどうか。

【委員】
 11ページにリスクの予測、事前対策、とあるが、どう修正すればよいか。

【委員】
 リスクの同定・評価を足して、リスクの予測は取ってもいい。事前対策、緊急対応、復旧・復興というのは、リスクに対する対処法を選ぶ際に、どこに切り分けられるかの結果だと思う。ごく一般的な言い方をすると、リスクコントロールかリスクファイナンスという言い方をされる方も多い。せっかく戦略計画という言葉が後ろにあるのであれば、同定して評価したリスクに対してどういう風に取り組むかという戦略計画を掲げて、その中に事前対策として、防止するのか軽減するのかを基本的に分けて対策を選ぶ、ということが中身になる。
 ここに書かれている全過程というのは、いわゆるディザスターマネジメントサイクル(Disaster Management Cycle)、Preparedness、Response、Recoveryというものだが、これはリスクマネジメントには入ってこない概念であると思う。MitigationかPreparednessかを選ぶところがリスクマネジメントのポイントと言える。

【委員】
 「想定外の災害に対するリスクマネジメント」という言葉の矛盾はそのとおりである。
 それから、下のただし書きはいらないのではないか。重要だと言っておいて、自己否定しても仕方がない。

【委員】
 こういうものが、文章の吟味までいったということは進歩ではある。

【委員】
 10ページの標題を考える必要がある。減災という言葉は使わない方がよいか。

【委員】
 個人的には、減災という言葉も使うが、ここで言うなら防止と軽減の両方を混ぜて低減と言っている。Disaster Reductionを意味するときに低減と言い、Mitigationを私は防止と言わずに抑止と言っており、Preparednessというときは低減と言っている。そういう意味では、意図的に減災対策と言っているということはよく分かるが。意味からいえば総合的な防災対策ということ。リスクマネジメントに基づく総合的な防災対策というのが表現したいことの意味かなと。

【委員】
 ここで、減災という言葉を使う必要なない。

【委員】
 防災で十分日本語として分かる。むしろ総合的という言葉を付けた方が、いろんな手段で対応すると意図していることが分かる。

【委員】
 11ページの下から9行目、社会・経済活動の中枢管理機能、文化財、教育施設、医療施設等、とあるが、前にも議論があったかもしれないがこの並びは重要である。どんな並びでもいいわけではない。一方、14ページでは、水防施設が入っているが医療施設がない。前には水防施設がない。順番だが、文化財は後だと思う。医療や教育施設は上にしないと議論がおかしな方向へ行ってしまう。
 それから、14ページは標題そのものに既存構造物が入っているので、文章中の「また、既存構造物、特に社会経済の」というところの「既存構造物」は書く必要はない。

【委員】
 同じ14ページのところで、「合理的な費用で」の7文字を削ればよい。
 それから、住宅もないと据わりが悪い。4(既存構造物の耐震性の評価及び補強)ところに医療施設や教育施設があるなら、住宅も入れて欲しい。
 先程16ページの7(先端技術の災害軽減への積極的利活用)のところでGPSを外すという話があったが、どう表現するのか。

【事務局】
 たとえば第2章、10ページにGPS観測のところを衛星測位連続観測としているが、衛星測位連続観測という言葉もあまり聞かないので、表現を考える必要がある。直したところは衛星観測あるいは衛星情報という表現になっていると思うが。

【委員】
 衛星観測という言葉は正しいか。

【事務局】
 当省の宇宙開発の方で、衛星だとユーザーが非常に重要だということで、防災に役立つ衛星の利用技術の開発を進めていきたいという話があった。こちらとしてもそういうことであれば、文言に盛り込もうと考えているが、まだ若干平仄がとれていないところがある。
 想定しているのは、人工衛星を使った防災マップを作成するとか、通信とかを記載しようとしている、ということである。

【委員】
 衛星観測と宇宙測位連続観測とは意味が違う。宇宙測位連続観測という言葉は聞いたことがないのだが、GPSだけではなくグロナス(ロシアの測位システム)とか、最近では準天頂衛星とか、そういうのも含めてこういう言葉を作ろうとされているのか。測位だけでなく、干渉SAR等の衛星技術を含めるのであれば、宇宙技術利用測地観測という言葉がすでにある。もっと広くするなら、地殻変動観測とすればすべて含まれるし、どこを意図しているのかということが分からない。

【事務局】
 少なくとも測位だけに限るものではない。

【事務局】
 対象としているのは測位の話がまず一つ、それから上からセンサーを使って地上の様子などを見るという2つが大きな柱である。

【委員】
 衛星情報という言葉はたくさん出てくる。一番典型的なのは17ページの枠内に災害情報、衛星情報と並んでいる箇所だが、その上に災害情報の的確な収集という項目があり、この中には衛星を使った情報収集も入っているはずだ。災害情報と衛星情報とを殊更分けるというのが不自然だ。衛星に関しては微妙なニュアンスの違いで色んな言葉が出てきている。分かりやすく整理してほしい。

【委員】
 ハザードマップの話も含めてだが、日本の都市部、河口、海岸等でレーザープロファイラーのデータが大分手に入るようになって、高さ15センチ、横が30センチ角の測量ができるようになっている。そういう意味では、水害の予測などをするときには堤防だから、ある程度わかるが、レーザープロファイリングのもたらすデータは将来有望だと思う。それが衛星の中に入るのか、あるいはそれを特出しして書いてしまうのか、それは国交省との関係もあるが、非常に役立つのであるなら使った方がいい。可能であれば、特出ししていいのではないか。

【委員】
 いずれにしても、いろいろなものを含めて大きな概念を作ったということを、どこかで定義しておく必要がある。

【委員】
 16ページに関して、先端技術の災害軽減への積極的利活用というところで、近年発展の著しい情報通信技術においては、研究段階から防災への利活用を前提とした試みを積極的に行う、とある。その中の一つとして、地域の防災力を高めるためのリスクコミュニケーションにも新しい技術を利用していこうという研究が始まっているが、そういう若干性質の異なるものについても入れておいたらいかがか。

【委員】
 入れておいたらいいのではないか。
 現在は2つの例、災害対応シミュレーションと、無人航空機・ロボットが記載されているが、それに加えて記載すればよい。

【委員】
 11ページで一箇所だけマネージメントと伸ばしているところがあるので直す必要がある。

【委員】
 言葉に関して言うと、18ページの機関名で「国連」を外して「UN」を入れたというのが引っかかる。国連が付いていないと、地域開発センターというのはどこかわからない。全部に「国連」と付けるべきだ。国際連合の諸機関を始めとする、と言えばわかるが。

【委員】
 14ページの災害時要援護者救援策の充実に関して、救援策の充実としたのは文言としてはよいが、主要研究開発課題の中にいきなり介護型防災ベッドが出てくるのが、いかにも素人がやっているという風に見える。順番を変えた方がいいのではないか。実際には、災害時要援護者に対する情報提供ツールというのはかなり難しい。むしろ近年の水害や地震の要援護者の実態を見ていると、一番最初にやらなければいけないのは要援護者の安否確認で、そのための情報ツールがあってもいい。しかし、ここでは要援護者に情報を渡し、要援護者がそれを理解するという書きぶりになっているが、それができるくらいなら要援護者になっていない。要援護者の問題というのは、援護、支援する人達をどうパワーアップさせるかが課題であることを頭に入れておく必要がある。そうすると、単なる情報提供ツールを「要援護者の安否確認のための情報ツール」、と変えるか、「避難のための情報ツール」とすれば、だんだん支援者側がどうパワーアップするかと読み替えられるようになる。支援する側の人の力の拡充があった上で、寝たきりの方もいるので、介護型防災ベッドの話も出てくるのかなと。

【委員】
 災害時要援護者といってもいろいろなレベルの方がいるが、委員がおっしゃるようにいきなり介護ベッドは唐突で、14ページの最後にあるように、「普及、災害時要援護者の救援を補助するための地域社会のあり方や地域社会のあり方や制度的枠組みに関する研究」というのは、本人をどう説得させるかとか、本人が必要性を自覚して備えましょうということを感じていただくための研究が大事だと思っている。その意味では、先程の順番の問題が一つ。
 それから、上の4(既存構造物の耐震性の評価及び補強)に「普及」ということを入れていただきたい。

【委員】
 5(災害時要援護者救援策の充実)は、主要研究開発課題の順番を変えるのと、文章の書き方も変えなければならない。
 先程の情報提供ツールについてはどう記載すればよいか。

【委員】
 「災害時要援護者に対する情報提供」はやめたほうがいい。

【委員】
 避難等の支援システムの中に入るのではないか。

【委員】
 むしろ避難システムという風に漠然とは書かずに、まず安否確認をする。結局は肉親、近親の人が最初は動かすのだが、そのあとケアマネジャーが入ることでつながるのが実態なので、むしろケアマネジャーが自分の努力でやるのだが、そこを制度化してあげないと取りこぼしができてしまう。そこは特出ししないと、避難等の支援システムと書いたのでは単に幅広になっただけで終わってしまう。

【委員】
 今の話はこの支援システムの中に入るのか。

【委員】
 支援まで行く前に、安否確認ということを記載したい。中には自宅が全壊でも、行ったというケアマネジャーもいるし、すごくそこにオーバーロールがかかっていくことを解消する必要がある。そういう意味では、情報提供ツールが無駄だとしたら、災害時要援護者の安否確認のための情報ツールの開発・普及とした方がよい。

【委員】
 むしろ情報提供ツールは下の支援システムに入るということか。

【委員】
 そのとおり。
 よく分からないことが多い。要介護度3以上の方を考えているので、高齢でもあるし、だいぶ記憶力が悪くなっているし。

【委員】
 そういうツールの開発は、始まっているのか。

【委員】
 まだである。やっと関心が出始めた。福祉の人達がフロントラインを作っていただかないといけないが、中越地震の時まで福祉の分野にそういう認識がなかった。これからどう制度が変わっていくかということにかかっている。

【委員】
 先程4のところで、既存構造物に住宅を含めるべきだという話があったが、住宅のことを考えると、住宅のライフサイクルに渡った維持・保全を視野に入れた補強の推進策とか、補強を行うインセンティブを導入するとか、そういう仕組み作り、研究が大切ではないか。

【委員】
 主要研究開発課題の3つ目(耐震性能再生技術)はそういうことを言っているのではないか。

【委員】
 ハード的な再生技術も大切だが、住宅を補強して、住宅を維持・保全していくことが経済的に評価され、その住宅が売れるということで高齢者が安心して暮らせるような社会システムが、住宅も長寿命化するし、安心して暮らせ、資産を維持していく社会づくりにつながるのではないか。

【委員】
 ハードの話が2つ目(耐震補強技術の高度化)に記載されているにも関わらず、3つ目(耐震性能再生技術)が書かれているということは、そういう話があったのかもしれない。

【委員】
 それから、ハザードマップのところで、前半で、非常に重要でそれに応じた防災計画を立てていくのが重要なのに、まだ十分じゃないとか説明があるが、ほとんどの所でつくっているというのが既存の事実だと思う。問題は、作られたものをどう活用していくか、それに応じてどう対策をとるのか、住民がもらっただけで使っていないとか、そういうことだと思う。それを利用してのリスクコミュニケーションの話が先程あったが、経常的に使っていくとか、住民と自治体がハザードマップを使いながら災害への備えを高める技術とかをどこかに入れてはどうか。

【委員】
 13ページの4つ目の主要研究開発課題には「・」がないが、同じか。
 入れるとすればここに入れてはどうか。
 事務局で検討してほしい。それでは、事務局より第3章の説明をお願いする。

【事務局】
 ‐第3章(研究開発を推進するにあたっての重要事項)について説明‐

【委員】
 防災科学技術を防災分野になおした理由は。

【事務局】
 防災科学技術という言葉が、防災科学技術研究所法で定義されており、その定義に従わないといけないという懸念がある。
 前回までの案では、両方の言葉が理由なく併用されており、どちらかに統一しようとしたわけだが、防災科学技術というと意味が多少狭くとらえられるかもしれない。

【委員】
 自分で自分を縛っているのではないか。世の中の人は、防災科学技術が法律の言葉であるとは、まず思わないだろう。

【事務局】
 確かにそうであるが、どちらかに統一しようとしたときに、全体の文言として、日本語的に見やすいということもあり、防災分野の研究開発におきかえたという状況である。

【委員】
 どちらが正しいというわけではないが、理由づけが薄弱だと思う。本当に分かりやすいのだろうか。特に研究開発は良いが、研究成果というときは、防災分野の研究成果、防災科学技術の研究成果、どちらがいいのだろうか。

【委員】
 前回か前々回に、色々な言葉が混ざってきた。そのときは、全部入れるように統一してしまった。統一して、読んでみると、防災科学技術というのが、たくさん出てくるので、わずらわしくなってきた。

【事務局】
 いろんな似たような言葉が、混在していた。それぞれに対して、どういう違いがあるのかと聞かれると、ほとんど同じ意味を別の言葉で使っていたものだから、それならば統一しようということになった。

【委員】
 重い方へ統一したから、時間が経つと違った意見が出てくるということではないかと思うが。防災科学技術研究所は固有名詞だから、決して短くはしていない。

【事務局】
 確かに、どのような文脈で使われるかによっては、統一した言葉では意味が通じないケースがあると思う。

【委員】
 ちょっと補足したほうが分かりやすいところもあるかもしれない。

【委員】
 長いのは認めるが、科学技術・学術審議会なので、防災分野における研究開発とは防災に関する科学技術及び学術をいう、というのが正しいのではないか。ここで定義してはどうか。

【事務局】
 文言的にはそれが正しい。しかし逆にいうと防災科学技術を使わないと説明できないかというと、そうでもない。事務局としては、防災科学技術と防災に関する研究開発とある中で、研究開発という言い方を選んだ。逆に、防災科学技術を重視した方がよいか。

【委員】
 私自身は、実はあまり好きではない。一般的な用語の方が読むにもすらっと読めてその方がよい。

【委員】
 別紙についても修正したところがあるということなので、説明をお願いする。

【事務局】
 ‐別紙について説明‐

【委員】
 用語集におけるハザードとリスクの定義は、我々は想像がつくが、何も知らない人が読んだら、何のことか全くわからないだろう。他の用語の定義では長いものもあるのだから、分かりやすく説明できるのであれば、説明したらどうか。

【事務局】
 それは、例を示したほうがよいか。

【委員】
 その方がよい。よく言われることだが、砂漠で地震が起こってもリスクは高くないとか。

【委員】
 それなら、ごく一般的な定義をした方がよい。
 特定のハザードが起きる確率とそれによって生ずる被害の大きさの積、というのが基本的な定義である。そう考えたらいいのでは。説明するなら、起きる確率は低いけど、非常に大きな被害をもたらすようなものとか。そういうものの大小を比較するときに使うということを書けばよい。

【委員】
 他の用語も、だいたい3~4行で定義されている、ちょうどそれくらいの文章にしたほうが分かりやすい。

【委員】
 カタカナの用語については、英訳して括弧書きしているようなので、抜けているところに付けること。
 中身についてだが、災害のメカニズムとか予測のところで、物理現象とか社会現象とかいう言葉がぞろぞろでてくる。最初に議論した基本的考え方のところで、物理的現象、社会的現象という言葉は自然要素、社会要素とした方がいいという話があったが、ここに適用すると項目によっては不自然なところがでてくる。考えてみると、物理的現象、社会的現象という仕分けは、ここの物理現象、社会現象にひきずられたのかもしれない。

【委員】
 先程34ページの津波のところで、海洋構造物について調べなおすということだったが、前回の推進方策作成時のアンケートでは、海洋構造物はあまり具体的に大きな意味を持っていなかったと記憶している。海洋構造物専門の方が見て疑問に思ったということだと思う。ちょっと調べてほしい。この場合だと、繰り返し来襲する津波に関する研究開発が主だったのではないかと思う。ついでに、津波に関して、41ページの防災力向上のところだが、実は最近、海岸の保全施設だけではなく、津波が予測されたときの津波非難ビルの研究が始まっていて、実際に施策をやってもらおうということがある。観光地であるスマトラにも関係するが、海水浴場は逃げるところがない。津波がきたら高いところに逃げることになるが、高いところがない人は、ビルに逃げてということだ。しかし、そのビルが大丈夫かどうかは誰も分からない。実際に避難ビルとして造り始めているところもある。まだよく分からないが、入れておいた方がよいかもしれない。

【事務局】
 避難ビルの強度に関する研究ということでよいか。

【委員】
 そのとおり。構造設計技術を開発・高度化するという言葉で受ければよい。避難施設の中に入れてもいい。

【委員】
 44ページに「外国人を含む災害時要援護者」とあるが、特段、外国人を強調しなくてもいい。通常なら災害時要援護者と言えば外国人を含むということになると思う。
 第3章だが、第1章のところで、NPOという言葉が2箇所出ているのに、第3章になると、ぱったり消えている。第1章の5ページと7ページで、一緒にやったらどうかという提案をしておきながら、研究開発推進していくにあたっては別にNPOはいらないという書き方なので、叱咤激励の意味を含めて、例えば22ページの3の地域の特性に応じた緊急開発の推進のお手伝いだとか、25ページの普及・啓発活動の充実についてはNPOの得意分野だと思うので、ぜひNPOとの連携だとか、NPOとの協力という言葉を入れていただきたい。

【事務局】
 例えば、22ページから23ページにかけて連携の話がでているが、ここに入れてはどうか。今のところ、自治体の防災実務者と密接に連携と書いているが、このあたりに入れるということでよいか。

【委員】
 いいのではないか。
 全体を通じて意見はないか。まとめていく方向性に関する意見は大体出たと思う。
 なければ、今日いただいた意見を事務局で文章化し、もう1回委員会を開く余裕もないので、メールでご意見等いただくことにする。
 それでは、もう一つの議題に入る。

(2)「地震・津波観測監視システム構築に向けた作業部会」の審議結果について(非公開)

【委員】
 議題(2)の「地震・津波観測監視システム構築に向けた作業部会」の審議結果についてだが、冒頭でも申し上げたとおり、この議題は非公開とするので、傍聴者の方々はご退席いただくようお願いする。
 それでは事務局より説明をお願いする。

【事務局】
 ‐資料36‐3‐1~資料36‐3‐3に基づき説明・報告を行い、委員の了承を得た‐

(3)その他

【委員】
 今後の予定を事務局からお願いする。

【事務局】
 先程のとおり、推進方策については研究計画・評価分科会で審議いただくが、その結果によっては修正を行うこともあり得る。
 次回は、概算要求に向けた事前評価を7~8月にかけて行うことになる。日程は別途連絡する。

【委員】
 以上をもって、第36回の防災分野の研究開発に関する委員会を閉会する。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室)