防災分野の研究開発に関する委員会(第30回) 議事要旨

1.日時

平成17年1月7日(金曜日) 15時~17時

2.場所

経済産業省 別館 1111号会議室

3.出席者

委員

 岡田委員、上田委員、片山委員、壁谷澤委員、亀田委員、佐藤委員、田所委員、土岐委員、永島委員、林委員、古谷委員、村上委員、渡邉(興)委員、渡辺(正)委員

4.議事要旨

(1)「第3期科学技術基本計画策定」に向けた取り組みについて

【委員】
 防災に関する基本計画は、文部科学省のみならず他省庁にも関わる問題であるが、どのように考えているのか。デルファイ調査については共通の認識であると思うが。

【事務局】
 第3期科学技術基本計画は、次年度の総合科学技術会議で議論され、3月位に決定される。それに向け各省庁がそこに盛り込むべき内容を検討していると聞いている。
 文部科学省は、所管分野について基本計画特別委員会を設け、盛り込むべき内容を検討している。防災委員会として、基本計画特別委員会に提言するための基本的な方針を1~2ページ程度で提出できればと考えている。

【委員】
 基本計画特別委員会は文部科学省の話である。防災については国土交通省なども各自行っていると思うが、総合科学技術会議では、各省庁バラバラに行うのか。

【事務局】
 現時点ではそうである。総合科学技術会議において、それらを取りまとめることになっている。

【委員】
 省庁が異なっても、デルファイ調査の扱いは同じか。

【事務局】
 これは総合科学技術会議に提供するので、全省庁に対して公開される。

【委員】
 共通性、普遍性があるものだという認識でいいということか。
 例えば、防災技術は高い評価を受けていたが、文部科学省と国土交通省が考える防災技術は異なるのではないだろうか。総合科学技術会議でいきなり議論をして大丈夫だろうか。これから議論をする際にも、これは文部科学省に限る話である、ということを念頭に置いておかねばならない。

【事務局】
 文部科学省の議論だが、資料30‐1‐1の2ページ目に「知的資産増大への寄与」、「他分野発展への寄与」については評価が低かったため、重点化しようという動きがある。防災分野は第2期の科学技術基本計画の重点4分野にも入っておらず、社会基盤の中の1つという位置付けになっており、全体的な予算配分においても劣勢である。それを何とか挽回したいと思っている。

【委員】
 「現行8分野の改変を当初から議論するのではなく」とあるが、4分野に次ぐ4分野では駄目だというのが事務局の考えか。

【事務局】
 我々だけの考えではないようだ。

【委員】
 そういったことを打ち出そうとしているようだが、この文章では見えてこない。

【事務局】
 まだ議論の最中であるので公にはしていないが、そういった流れである。それが本当に良いかについては議論をできればと考えている。

【委員】
 文部科学省に4分野の委員会があるが、それに次ぐ4分野の委員会の1つとして、この防災委員会が設置されているが、事務局としては4分野のレベルまで持っていこうと考えているということか。

【事務局】
 そのようにしたいと考えている。

【委員】
 「知的資産増大への寄与」、「他分野発展への寄与」で勝負をするには力不足ということか。平成15年に提案した推進方策の重点項目を少し見直し、昨今発生した災害とも関連付け、新たな提案の仕方についての意見がほしいということか。

【委員】
 1月31日までに、1~2ページの報告書が求められていると言うことだが、そのイメージが分かったほうが議論をしやすい。それは箇条書きとしてか、文章としてか。

【事務局】
 簡潔にできればと考えている。重点開発領域が7つ、全体の中で、国際分野の重要性や知的資産や地球環境は上位に入っており、そういった観点が取り上げられているので、その中でも推進方策の8~12ページにおいても、どういった観点が重要になっているなどもあり、あまり網羅的に行っても仕方ないと考えている。
 また、災害の種別ごとに分けるのは良くないと考えている。若干、抽象的になってしまうかもしれないが、地震だけに焦点が当たるといったことなどは避けたい。

【委員】
 キーワードは必要になるが、どのレベルで必要になるのか。デルファイ調査も行っているので、全ての分野でフィックスされて領域名や分野名は出てきていると思うが。
 例えば、“安全・安心社会の宇宙・海洋・地球技術”は、何かよく分からないという印象である。こういった表現を磨き上げ、防災の専門家として意見を出すのか、あるいはどの分野に重きをおくかを議論するのか、どちらなのか。

【事務局】
 後者である。

【委員】
 キーワードは変えないということか。

【事務局】
 必要に応じて可能だが、基本計画特別委員会が想定しているのは、領域名単位で重要なものを取り上げてほしいということだ。領域名だけを見ても何かはよく分からないので、領域の概要、想定されている内容について分かる資料を用意させていただいた。

【委員】
 内容をもう少し検討してほしいのか。

【事務局】
 どの領域が重要かについて検討していただきたい。必要に応じて、領域内でも括り方の変更や、重要性についての議論があっても構わない。

【事務局】
 領域のタイトルよりは、推進方策の重点領域の分け方で議論を進めていったほうが上手くいくかもしれない。

【委員】
 それを一番気にしていた。デルファイ調査と推進方策の領域の対応は心配である。
 配置の仕方についても、先頭に一番魅力的なものを持ってくるなどで工夫することが現実的であると考えるが。

【委員】
 少なくとも対応はつけなければならない。例えば、防災に関する研究開発の推進方策の「防災対策の戦略の構築」はデルファイ調査ではどこに入るだろうか。それは防災技術だろうか。ハザードマップの高度化も防災技術に入るだろうか。

【委員】
 水資源など、他にも多くの分野に入る。

【委員】
 参考資料30‐3はデルファイ調査の課題名を抜き出したものか。

【事務局】
 事務局で分かりやすいように用意したものである。

【委員】
 課題の一つ一つは実際に調査されたものか。

【事務局】
 そうである。

【委員】
 デルファイ調査の課題名と推進方策をどのように対応させるかということか。

【事務局】
 デルファイ調査で挙がっている項目は、必ずしも防災に絡んでいるわけではない。防災委員会としては、重点領域として報告書にまとめていただいたものを主に開発していくことになる。それについては推進方策の領域で主張していったほうがいいと考える。デルファイ調査については、次期計画を作るための一つの手段に過ぎない。

【委員】
 推進方策の「防災対策の戦略の構築」はデルファイ調査の防災技術の中を見ると、大体読める。デルファイ調査のほうが、少し幅が広いようだ。「地震による破壊過程の解明」は防災技術と建造物の性能向上の両方に入る。「既存構造物の耐震性の評価及び補強」は構造物の性能向上に含まれる。「復旧復興過程の最適化」はキーワードとしては出てこないようだ。

【委員】
 デルファイ調査の「大規模停電や長期断水」、「地震リスクマネジメントの一般化」、「情報システム・社会制度構築」などが対応するのではないだろうか。リモートセンシング、ロボット、GISなどは技術としてほとんどの場所に散らばっている。

【事務局】
 宇宙海洋地球技術にも災害監視衛星などがある。そういったものにも含まれてくる。

【委員】
 基本的には推進方策の7項目に沿うようにし、デルファイ調査の結果も踏まえながら調整する方向でいいだろうか。新たに7項目に入れなければならないもの、外したほうがいいものがあったら、意見をいただきたい。

【委員】
 推進方策の7領域はデルファイの領域に対応していないので理解が難しい。デルファイ調査の領域の中身、例えば水資源や、総合的な水管理技術の領域はそれぞれがどのように分けているかが分かりにくい。国土交通省の河川局との議論もかみ合わないのではないだろうか。推進方策の7項目を念頭においても、対応が難しいと考えるが。

【委員】
 デルファイ調査には環境災害が多く含まれているが、必ずしも推進方策の7項目に含まれる防災ばかりではない。7項目に含まれているものは、防災技術や建造物の性能向上に多く含まれており、7項目になかったものが、若干散らばっている。7項目を検討するのであれば、デルファイ調査の中の課題がそれぞれどのような評価を受けているのかを元にして精査をしなければ、難しいのではないだろうか。

【事務局】
 本日はそこまでの資料は準備していないが、個々のデータはある。

【委員】
 文部科学省が総合科学技術会議に提出する際には、デルファイ調査のカテゴリで話を進めるのではないのか。

【事務局】
 3つ程度考えている。デルファイ調査だけでなく、安全・安心など、分野として必要なものと、基幹技術の3つをメインにしようと考えている。基本計画特別委員会で検討中であり、決定しているわけではないが、デルファイ調査の結果だけではない。
 防災委員会としては、デルファイ調査を参考にして次期科学技術基本計画において重点化すべきものを主張していきたい。

【委員】
 政府の関与が必要であるという評価が付いているものを上手く活用していくことが重要になってくるが、8つのカテゴリで言うと、推進方策の7領域がよく含まれている防災技術をメインにしていき、その中で次の議論を進めることが得策だと考える。

【委員】
 マーケティングの場合、まず商品を4つに分ける。現在ではマーケットシェアも低く、問題がある商品であっても、将来性を見込み先行投資する「問題児」的な商品。開発には資金がかかっているが、競争優位を取るべく頑張るべき「花形商品」。「金のなる木」は技術として完成し、低資金で利益を生んでもらえるもの。また、主力から淘汰されていくもの。4種類に分け、一つの商品の寿命が10年程度と考えると、次の花形商品を作っていかなければならない。この8つの領域をこのように分けると、2つないし3つに分類できるのではないだろうか。はっきりとしているのは、総合的な水管理技術、建造物の性能向上、防災技術は共通性があり、これらに関しては、国はそろそろ手を引き産官学連携に任せ、むしろ、適正に伸ばすべき分野の規制緩和などの環境整備に移行して行くべきだろう。また、地球環境高精度観測・変動予測技術、安全安心社会の宇宙・海洋・地球技術、地球レベルの環境などは、政府の関与が必要であり、資金をこれから作り、人材も投入して盛り立てていくべきテーマだと認識している。中間の環境災害、水災害の特徴は曖昧であり、それぞれに必要性はあるのだが、明確な方向が決まっていない。しかし、政府がまだ関与すべきであると考える。また、2回目の調査結果を踏まえながら、グループごとに、こちらから重点的に推進する、しないといったことなどを考えてもよいのではないだろうか。

【委員】
 違う観点から意見を言うと、資料30‐1‐2、26ページのように、産官学連携分野の点数が高いので、そちらに任せてもよいのではという話であったが、国際展開推進の点数は低い。こういったものは国際協力の必要はなく、独自で行えると考えていると思うが、インド洋の津波などでは援助資金の半数は日本が出している。復興など次の段階や、ボーリングシステムなどの構築の段階になれば、必ず日本は技術面での協力が求められる。技術は国際的にも高く評価されているので、必ず期待される。それは政策の話であり科学技術の話ではないという意見もあるかもれないが、今まで我々が開発してきた防災技術は国内での適用がメインである。今後は、災害に弱い国、技術の不十分な国に特化したものを我が国が推進することも求められるということを、総合科学技術会議において提案すべきポイントであると考える。デルファイ調査からは直接は出てこないが、関連付けをすることは可能である。これらを捨てることはなく、違う観点からも考えられる。

【委員】
 捨てるというのではなく、3つは違うアピールの仕方をしたほうがいいということだ。
 下に位置するものは、どちらかといえば花形商品および、金のなる木であるが、これを国際マーケットに展開していくことは賛成である。しかし、これらを単品で出していったのがこれまでの失敗であると考える。日本の高い技術をODAの枠組に出していくと、周囲と不調和を起こすことになる。技術的には低くとも、総合的にシステムとして取り立てる欧米のコンサルタントに流れてしまう。そのため、難しい技術だけ、日本が単品で受注していたのが今までの現状である。今回の結果を見てショックを受けたのが、マネジメント技術が欧米と比べ低いことである。防災技術や建造物の性能向上、水資源管理は日本が世界に誇る技術であり、これは国際マーケットに出していくのが筋ではないだろうか。

【委員】
 ディスプレイやデジタル家電は手助けがなくともビジネス社会で浸透は進む。しかし、防災技術はマーケットが形成されるものではないので、国家が手助けをしなければならない。

【委員】
 私の意見の結論も同じであるが、フィールドを育てるのではなく、それを商品として世界へ売っていくことを国は支援すべきと主張していくべきだと考える。それはこのデルファイ調査のデータが示してくれていることだ。同時に、防災技術などは世界で競争している技術であるので、花形商品として研究開発を促進するような仕組みの構築があってもいいと位置付けられる。環境と水は対象が広すぎ、少々攻めても直に効果が出ないような印象を受けた。

【委員】
 国際展開の推進で点数が低いものは、技術を実現するために国際展開が必要ないということか。

【事務局】
 日本は十分な能力を持っているので、一緒に行う必要がないということである。

【委員】
 完成したものの国際展開をしないとは言っていないということか。

【委員】
 環境災害などは点数が低い。これは、自分達だけを見ていても駄目で、世界を見なければならないといった意味か。

【委員】
 建造物の性能向上は規制緩和なのか、強化なのか。

【委員】
 規制のあり方そのものを変えようとするなど、両方なくてはいけない。むしろ、資料30‐1‐2の13ページで、劣位にあるものは防災の分野で認識もされていないが、推進方策の“防災対策の戦略の構築”を意識すると、劣位なものに重点をおくべきだと謳ったと思うが。日本が外国に比べて劣位に立っているマネジメント技術を強化していかなければ、結局は外国へとニーズが移っていくことになるのではないだろうか。

【委員】
 デルファイ調査の防災技術の57~59番は、まさにマネジメントの問題ではないだろうか。これらがどのように評価されているかを知りたいが。

【委員】
 作った技術が現実にどのように役に立っていくかの過程は、マネジメントの中に含まれるのだと思うが、マネジメントの技術は単独で重要であり、日本のレベルが国際的に低いということは、努力が必要であると考える。それと同時に、具体的に技術開発を行っている部分の中に、マネジメント的な発想がどのように組み込まれてくるか、研究者が意識を持つことが重要であると考える。両方で変わっていかなければ、総合的な防災技術や国際的な場での総合力は育ってこない。それらを包含し、体系化していくことがリスクマネジメントだと思う。そういうことは、推進方策では明確には謳っていないので、表現をグレードアップし主張していければと思うが。

【委員】
 デルファイ調査の結果はまだ出ていない。研究トピックの国際的な地位を教えてもらったが、低いからといって引き下がるわけにはいかない。

【事務局】
 研究のレベルが低いから辞めるというのは、企業ならばあり得るが、国家政策は一概にはそういえない。低くても重要なものもある。

【委員】
 防災は国防と似ていると話したが、それを捨ててしまっていいのかという問題がある。自国の安全・安心を守る技術は我々が持たなければならないが、これが劣位にある事を見ると、大至急、重点的に開発すべきである。それは、食の安全・安心など色々なものと関連付けてもいいので促進するといい。

【委員】
 防災技術は出来上がっているので、研究しなくてもいいとも言われかねないが。

【委員】
 国際展開については新たに研究していかなくてはならない。日本が持っている、数少ない世界に誇る商品なので、範囲を広げる研究はあってもいい。

【委員】
 適用性の研究はされていない。日本にあるものを対象としているものは、なかなか利用してもらえない。

【委員】
 資料30‐1‐2の13ページの点数が低い分野の研究を進めたら、防災技術には必ず新しいテーマが起こるはずである。

【委員】
 事務局でまとめたものをメールで送っていただきたい。委員の方には意見を返していただきたい。

【事務局】
 “防災や安全・安心は他の分野の基盤となるものであり、防災なくしては、これだけ災害が起きている中で他の4分野も~”という表現でアピールをしたいと考えている。

【委員】
 是非、国際性も強調してもらいたい。

【委員】
 それを入れなければ、これだけ立派な技術が既に確立していると判断されてしまう。

【委員】
 防災技術が国家戦略として力を発揮していけるような基盤を育てていけるようにしてほしい。

【委員】
 マネジメントと国際化を付け、主張してほしい。

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研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室)